ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百四十三話「SAILING FOR MY DREAM」

――かくして、オトナプリキュアの世界の動乱は新たな段階に突入しつつあった。プリキュア5の現役時代から生まれた『いくつもの分岐した未来』。そのうちの一つが『オトナプリキュアの世界』である。かれんとりんはココの煮えきらない態度に激怒していた。ココ本人にしてみれば、『種族が違うし、自分は一国の王だから』という事で、ちゃんとした『別れ』を切り出すつもりであったが、のぞみを絶望させてしまう可能性を危惧し、ズルズルとのぞみが26歳を迎える時代にまでもつれ込んでしまった。その事自体が彼自身最大の危機を呼び込んだわけだ。りんとかれんは、のぞみがその可能性を予期し、独身を貫くと言いだしたことに憤り、のぞみ本人の冷静さと対照的に、ココへの意趣返しを目論んでいたのである。ちょうどその頃、オトナプリキュアの世界に滞在していた『シロップ』は春日野うららに会い、地球の動乱を知らされ、パルミエ王国にそのことを伝えた。ココとナッツは地球へ向かおうとしたが、次元の謎の歪み(白色彗星帝国のワープ妨害装置の副産物)で地球へ行けなくなってしまったのだった――

 

 

 

 

 

――宇宙戦艦ヤマト ――

 

「ブリーフィングを始める。今回は敵のワープ妨害装置の破壊にある。敵の妨害装置は各地に設置されてしまっているが、我々はこれを順に破壊する。敵空母艦隊がいると思われるので、今後の憂いにならぬように殲滅するように」

 

各艦の艦載機部隊の指揮官が集められ、作戦が伝達される。プリキュアでは、のぞみと咲が(操縦経験があるので)代表で参加していた。使用機は決められていない。これはありあわせの機体を動かせというのが、古代の方針だからだ。

 

「原理はデザリアムのそれと同じものだ。我々にとっては、波動エンジンの出力にデバフがかけられる、ワープを封じられるなどの難行になる。総員、実体弾を重視したセッティングにせよ」

 

こうして、各艦載機は実体弾重視のセッティングで武装が統一されることになった。MSであれば、実体弾式の射撃兵装だ。スーパーロボは援軍待ちであるが、それを見越してのワープ妨害だろう。

 

「実体弾重視か……今回はハイパーバズーカを持っていくか」

 

大人のぞみは機体は決めてないが、ハイパーバズーカを持っていくつもりである。

 

「今回は反応弾マシマシして良いのー?」

 

「コスモタイガーに波動弾頭ミサイルだって、マシマシくらいなら申請通るぞ」

 

と、艦載機のパイロット達はこの調子だ。

 

「真田さん、ハイパーバズーカに波動弾はありますか?」

 

「ああ。まだ開発されて間もないものだがな。ドレッドノート用の砲弾を手直ししたものをラインに乗せてある。対艦用だから、戦闘機相手には使うな」

 

「真田、こいつにあれをテストさせろ。ほら、俺が改造した、ジム用のレールガンだ」

 

「いいのか?」

 

「弾薬の規格は変えてないから、陸軍の在庫が使える」

 

「ああ、のぞみくん。今回はプルトニウスを使え。混戦が予想されるし、あれであれば、フレームが頑強だから、無茶も効く」

 

「わかりました。整備班にあたし用のセッティング値を伝えといてください!」

 

「分かった」

 

「あたしは格納庫にあった『ガンダムマークⅢ』を借ります」

 

「咲くん、マークⅢはフルアーマー化してある。今回は射撃武装は宛にせず、サーベルの近接戦闘で対応したまえ」

 

「わかりました」

 

この頃には、ガンダムマークⅢは製造台数が比較的多かった事が判明しており、その高い操縦性から、キュアフェリーチェの愛機として知られるようになっていた。予備パーツを含めれば、10数機分は有にあった。これはクワトロ・バジーナに回される予定があったかららしい。また、操縦性が素直で『扱いやすい』ことから、『ガンダムへの入門』扱いにもなっていた。フェイスデザインはZ系だが、特性は初代(RX-78)に近いのだ。二人が格納庫に行くと、その二機が待機状態であった。

 

「エンジンは温まってる……さすがにヤマトの整備班はレベルが高い。咲ちゃん、今回は衛星軌道まで一気に行くから、カタパルトで打ち出されたら、あたしのウェーブライダーに」

 

「そのウェーブライダー、衛星軌道まで行ける?」

 

「コスモタイガーの技術で作られた第二世代のウェーブライダーさ。伊達じゃない」

 

「体が自然に動くってのも、変な感覚だね」

 

「別の若いあたし達はこれが飯の種だからね。体に染み付いてるんだろうね」

 

機体のシステムがオールグリーンになった後、のぞみ(変身して搭乗)のプルトニウスはヤマトの特設格納庫からカタパルトで打ち出される。次いで、咲のマークⅢも続く。すぐにマークⅢがウェーブライダーの上に乗り、そのまま衛星軌道に上昇していく。その後を、本来は要撃用のZプラスC4型が続く。衛星軌道まで迅速に行ける機体だからであろう。コスモタイガーがその周りを固める。

 

「玲、ベータ編隊を指揮して、敵の護衛機を引っ剥がせ。アルファ編隊はあたしが指揮する」

 

「了解」

 

仕事モードに頭を切り替え、口調を立場相応のものへ切り替えるのぞみ。僚機はZプラスC4型の編隊だ。

 

「各機、波動弾と反応弾のロックを解除しろ。射程に入り次第、ぶっ放せ」

 

「了解。少佐、直に衛星軌道に入ります。マークⅢのスラスター推力でも、単独で飛べるようになりますよ」

 

「分かった。咲ちゃん、戻る時はあたしに連絡入れて」

 

「分かった」

 

「よし、全機、敵の空母に狙いを定めろ。なるべく、この一撃で数を減らすぞ」

 

と、連絡事項を伝えた後……。

 

「「アルファリード トゥアルファチャーリーズ、ヘッドオンターゲット トゥ キル」

 

「ラジャー」

 

と、戦闘機の時代からの無線通信符号を用いる。それから数秒のうちに、全機が全ての手段で反応弾と波動弾を放つ。完全なる奇襲であった。敵が気づいた時には手遅れ。反応弾の炸裂時の光球に呑まれたり、波動弾の発する青白い閃光を伴う爆発で、敵空母は轟沈していく。

 

 

「チャーリー5、スプラッシュ」

 

「チャーリースリーダブル」

 

「チャーリーツービンゴ!」

 

「チャーリーフォア、スプラッシュ」

 

と、編隊から次々と戦果報告が入る。中には、一撃で二隻を沈めた猛者もいたらしい。そこに至り、遅まきながら、空母の回転速射砲塔が狂ったように対空砲火を打ち上げてくる。

 

「奴ら、気づきましたぜ!」

 

「だが、もう遅い!!全機、対空砲火に当たるなよ、引っ掻き回せ!!」

 

各機が自由戦闘に入っていく。のぞみもMS形態に機体を変形させ、波動弾装填済みのスマートガンで狙撃していく。MSの真骨頂は戦闘機よりも機動に自由度があるところにある。死角である下方から撃ち抜いたりし、敵の裏をかく。

 

(アムロさんは昔から、艦隊相手の時は遠距離から艦橋を狙い撃ちにしてたって言うけど……よくできたよねぇ)

 

アムロが自分の全盛期と述べる、一年戦争後期の頃は遠距離からムサイに奇襲を仕掛け、一気に轟沈させた事がある。アムロ以外の歴代のガンダム乗りの多くは彼のような戦法は取れていないため、アムロの技量の高さの証明ともなっている。のぞみも大物食いで名が通っていた魔女を素体に、転生した同位体の記憶と経験があるので、それなりに自信はあるのだが、セオリーに則っての攻撃である。

 

 

(そういえば、カミーユさんが前に愚痴ってたっけ。ニュータイプ能力が最高のカミーユさんより戦闘技能高いんだな、あの人)

 

カミーユも水準以上の技能持ちだが、アムロよりは落ちるので、アムロの戦闘技能が歴代でも最高クラスを維持していることを、彼らが乗った機体の系列機に乗ることで気づくのぞみ。

 

「いけっ!」

 

スマートガンの最大望遠で、斜め下の高速中型空母の艦橋に波動弾を叩き込む。瞬く間に轟沈に至る脆さに、純然たる空母という艦種の脆さを実感する。

 

「波動弾って、要は波動カートリッジ弾の事なんだな。貫通力がすごく増すから、空母の装甲くらいなら、軽くぶち抜けるんだな」

 

波動カートリッジ弾は暗黒星団帝国への特効を有していたが、実体弾という原始的な兵器故か、他勢力の装甲も軽く貫くようである。

 

「おっと、トチローさんから借りたレールガンも試さないと」

 

レールガンは弾速の速さが売りである。一年戦争では陸戦用ジムが主に使用した記録がある。その改装品とのことだ。一年戦争の陸戦用ジムでは、あまり有効ではなかったとも言われるが、一年戦争当時の連邦陸軍では数少ない『ドムに一撃で有効打を与え得る』武器であった。

 

「こいつの威力は未知数だ。艦載機で試すか!」

 

のぞみの機体を発見した『イータⅡ』戦闘機の編隊が一斉に向かってくる。のぞみは狙いを定め、中央の隊長機へと放つ。すると、ビームほどの弾速はないものの、ミサイルより圧倒的に速い弾頭が同機を粉々に砕き、近くにいたのが災いし、他の機体もほぼ同時に破壊される。

 

「さすがに戦闘機だと、威力過剰だな。とはいえ、使える。さすがトチローさんだよ」

 

と、ご機嫌な台詞と共に、護衛機の掃討を行っていく。そんな中、ワープ妨害装置らしき物体が発見される。

 

「ワープ妨害装置らしきものを発見!」

 

「ビーム兵器は効かんだろうから、サーベルか実体弾でぶち壊せ!」

 

「了解!」

 

味方からの報告が入る。

 

「座標は……一個は硫黄島の真上か。連中も変な座標に置いてくれちゃって。咲ちゃん、そっちに一個見つかった、ワープ妨害装置を壊せる?」

 

「膝のハイパーサーベルでたたっ斬ってみる」

 

「お願い」

 

近くにいた咲(フルアーマーマークⅢ)が膝のキャノンと兼用のハイパーサーベルを最大パワーで用い、上段から一刀両断する。その様子が友軍機から中継される。MSでの戦闘が初めてである咲でも、一通りの戦闘を支障なく行えるほど、同機のインターフェースは優れている。

 

(マークⅢは素直な動きだって、はーちゃんが言ってたな、そういえば。向こうのあたし、それだと面白くないってんで、TMSに乗ったりしたんだな。キ44乗りだったせいか?)

 

キ44。二式単座戦闘機(脚)のことだ。同機は日本の戦闘機では珍しい、『一撃離脱戦法向け』の機体であった。魔女の世界では、智子が最初期のテストパイロットを勤めた事により、史実の日本軍より同機を重宝し、名機として評判であった。とはいえ、操縦性はキ43より格段に難度が高く、エース用の機体という評判が立ち、黒江も前線復帰後の最初期まで使用していたという実績を持つ。

 

(そういえば、向こうのあたし、テスパイだったからか、智子先輩がかわいがってくれたっけ。なんでだろうって思ったけど……)

 

智子がキ44の最初期のテストパイロットであったことは、七勇士という箔を持つ者に『裏方をさせた』という世間の反発を恐れた陸軍飛行総監部の手で箝口令が引かれ、開発主任の糸川博士でさえ、名前を出せないほどであった。だが、流石に後任が前任者を知らないのはまずいので、キ44の三型が具体化した時期に解禁され、その時は(中島錦として)『昔のエース』という感覚しかなかったが、上官と部下の関係になってからは、その技能に舌を巻いた。キュアドリームに戻って尚も、自分より接近戦では上である。(普段はヘタレな性格なことにも驚いたが)

 

(普段はヘタレなんだよなぁ、智子先輩。戦場じゃ吹かしまくってるのに)

 

智子は地上ではヘタレ、空中では戦技無双の剣士というギャップが同時代の魔女達の憧れとなっていた。後輩たちからそんな姿が『お伽噺』と言われたのは、事変世代からの世代交代が進み、坂本や菅野のようなタイプが主流になった事、普段と戦場での姿に差があまりない芳佳やリーネなどの新世代の台頭も大きかった。また、未来世界で名を挙げた黒江が、上層部に『事変世代の筆頭格』と見做されるようになったのも、智子のそんな話が『お伽噺』と見做される原因であった。更に言えば、智子の1940年代以降の戦果が極秘扱いになっていたことも、知名度で黒江に逆転される理由であった。

 

(そういえば、先輩たちが言ってたことあるな。事変当時には全世界で英雄扱いされてたのに、なんで、七年くらいで忘れられてんだって。ミーナさん、書類さえ再確認しておきゃ、先輩達に隊の主導権を握られずに済んだのに)

 

のぞみAはミーナの失脚後にプリキュアに戻ったが、ミーナのことを坂本は『話せば分かる人物だ』と、常々好意的に話していたのは記憶していた。黒江たちに『本来なら、引退している年齢だから』と、ご隠居ポジションに留まるように要請していた一人であったと、ロンメルは事後に漏らしていた。つまり、本来の構想では『現役世代でどうにもできない敵が来た時の切り札』として配置しておき、本来の実力の片鱗を見せる程度に留め、ミーナに隊の運用を続けさせるというものだったのだ。モントゴメリーの元帥昇進がパーになった原因でもある。しかし、ミーナのミスと上層部への不信が重なった結果、本人が責任を取る程度では収まる事態ではなくなり、結局は64Fに統合戦闘航空団そのものを衣替えさせることになった。それはのぞみも事後にシャーリーから聞かされている。

 

(坂本先輩、未練あったみたいだけど、ヒスった時にドン引きして、ウチの部隊に衣替えさせるのに同意したんだっけ。で、そんな時期にあたしが…。本当、可哀想だな。おまけに、それが引き金で、カールスラント空軍全体も……)

 

カールスラント空軍の全盛期はそれがきっかけで終焉を迎え、代わりに、扶桑軍に春が訪れた。その一端を担っていると言われ、早、数年。カールスラントの凋落と自分達の台頭は同期していたと実感しているため、そのきっかけになったのが黒江たちであることに、何かの因果を感じたのぞみ。

 

(日本人を舐めるな……ってヤツかな?MSにも日系の技術者が関わってるし、スーパーロボに至っては、日本製が大半だ)

 

日本は何かがある土地柄だ。世界線によっては、怪獣の住処になっている。プリキュアも大半が日本の地にいた者が覚醒している。

 

(多分、日本って、なにかあるんだろうな。そうでなきゃ…。あたしも……日本にいなかったら……)

 

と、自身がプリキュアにならなかった世界線もあるのだろうかという考えに行きつく。とはいえ、この自分も、ココとの恋はもう続けられないという自覚はある。

 

(多分、きっかけがなければ、戦いに戻ることはなかったし、あの学校の教師として、定年まで働いてたと思う。だけど……学生時代の思い出ってのは……輝いてるんだよな)

 

それはどこまでもまっすぐで、無敵でいられた日々への郷愁。のぞみAの心に影を落としていた最大の要因。大人のぞみも、青春になにかしらの決着がつくのはそう遠くないことを悟っていた。

 

(戦いが避けられないなら、どこまでも戦う。青春時代に答えを出すのは早いけど……ココ、あたしにとっての12年は……)

 

もし、妖精の罪を裁けるのなら、ココは罰せられるべき。かれんとりんはそういう結論に達している。大人のぞみは既に26歳。新しい人生を生きるには遅すぎると言える年頃に入りつつあるからだ。

 

だが、のぞみ本人は卑弥呼に『あなたは成すべきと思った事を御やりなさい、その先に結果は有りますよ』と言われていた。その言葉を支えに、自分の感情に従い、戦士に戻ったのだ。

 

(プリキュアはあたし達の青春時代の象徴。なんでもやれた頃、未来に希望をまっすぐ抱けた頃の。大人の残酷さは、さんざ味わってきた。未来ばかりを見ても……過去ばかりを見ても……だけど……あたしは『守りたいものがある』!!たとえ、不死身になろうが、不老になろうが……!!)

 

大人のぞみは自分の身がどうなろうが、世界を守りたかった。かつてのココのような教諭になれなくてもいい、自分は死んでもいい。皆の笑顔さえ守れれば本望だと…。

 

(でも……みんなを泣かせたくはない……。それも本当なんだよな。りんちゃんは特に、ね……)

 

のぞみAの心の拠り所がりんAであったように、大人りん(仕事がうまくいっていない)の拠り所は大人のぞみの存在であった。自分が姿を消せば、りんは酒に溺れてしまう。それが気がかりであった。だが、りんものぞみと同じ選択をした。

 

(あたし達……、なにかかしらの宿命を背負ってるかもね、どこの世界でも……ねぇ、りんちゃん)

 

プリキュアであった者は、戦いから逃れられない。ある種の因果だが、仮面ライダー達のように『時代が求める限り、仮面ライダーは死なん!!』というような境地には、まだまだ遠い。

 

(仮面ライダー一号(Aはプライベートでも付き合いがあるが、大人のぞみにとっては『面識はない』ためにそう呼ぶ)は『時代が求める限り、仮面ライダーは死なん!!』って言えるけど……あたし達は……どうだろう……)

 

 

仮面ライダー一号のその姿勢に、別の自分は感銘を受け、彼のような存在になりたいと願っている。だが、今の自分はその場の使命感だけで戦っている。

 

(……若い頃はその場のノリだけで戦えたけど、大人になるとなぁ。向こうのあたし、精神的にも若い頃に戻ってるからな……)

 

心も齢を重ねた自覚がある分、若い頃に文字通りに戻った『別の自分』(のぞみA)が心底羨ましい大人のぞみ。同じ自分ながら、感性に至るまでが『若い頃』に戻り、二度目の人生を10代の感性で謳歌している様が羨ましいのだ。

 

「少佐、こちらにもターゲットを発見。位置は…」

 

「了解。座標を転送してくれ。こちらで対処する」

 

「ハッ」

 

仕事で大人を相手にする時は、年齢相応の口調にする。就職してから、そういう癖がついたが、もう何年だろうか。

 

「あたしも、別のあたしと似た道を辿りそうだけど、こっちは独身貴族だな、こりゃ…」

 

Aは所帯持ちになっているが、大人の自分は独身貴族になりそうな予感がある。のぞみの時代には既に、陳腐な響きの言葉になっている。しかし、ココと別れたとして、別の人を好きになる事はないだろうという自覚がある。

 

「親が知らないのが不幸中の幸いかな。知ってたら、騒ぎにするだろうし。親父はちっとは名が通ってたし」

 

のぞみの父は、名が多少通った絵本作家であった。後輩達も名を知っていたくらいの知名度は持つ。

 

「お母さんと親父には『空襲で学校自体が休校になった』って言えるのが吉だな。帰還したら、電話はしとこ」

 

大人のぞみは教師である。かつてのプリキュア戦士としての自分が世に求められることに葛藤はなく、むしろ、それが自分の責務と考えている。後輩達の中には、『プリキュアだったことは青春の思い出』と割り切り、役目を終えた後は戦いと縁を切った者も多いが、初期の世代のプリキュア達は平成初期の生まれ故か、平和を脅かす者と戦うことそのものには、成長しても、その手の葛藤を抱かない。その差が今回の事態での集まりの悪さに繋がっているのは事実であろう。

 

(後輩たちには無理強いはできないけど、こうも集まりが悪いのは……。地球そのものがヤバいってのに)

 

現役世代が召集に応じたという点は一縷の望みだが、引退したとはいえ、地球の危機を傍観していることを選んだチームを残念に思う。

 

(ああ、なぎささんとほのかさんの声かけなら、応じてくれたのかな……)

 

と、なぎさとほのかの偉大さを改めて痛感する一方、別の自分の記憶で『自分を慕っているからこそ、戦いに身を投じてくれた』後輩もいる事もわかっている。

 

(……ないものねだりだけど、どこにいるんですか~、なぎささん、ほのかさ~ん!)

 

 

と、大人になった今だからこそ、あの二人に酒の席で愚痴りたくなった大人のぞみであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――オトナプリキュア世界の地球は白色彗星帝国の策略により、妖精たちが来訪できなくなってしまった。そのために、プリキュア5の最大技は事実上、使えなくなってしまった事になる。大人のぞみはストナーサンシャインやシャインスパークが撃てるようになっていたので、問題はない。だが、大人かれんとりんは別の自分が『第一線でバリバリ戦うような職責』にはなっていないため、パワーアップをあまりしていない事に困っていた――

 

――宇宙戦艦ヤマト――

 

「りん、シミュレーター訓練を終えてきたの?」

 

「ええ。向こうのあたしもパイロットって事にはなってるんですけど、のぞみが心配して、実戦にはあまり出してくれなくて」

 

「向こうの貴方、記憶喪失に一度なったから、心配なのよ。とはいえ、飛行時間の事もあるから、定期飛行はしているはずよ」

 

「ええ。おかげで、プロペラ機からジェットまで動かせるように。まぁ、こっちの実生活に役には……あたしの収入じゃ、車で精一杯だし…」

 

「でも、思わぬところで役に立つかもしれないでしょ?」

 

「航空パニックものみたいな場面なんて、一生に一度あるかどうか」

 

「確かに」

 

「多発機まで飛ばせるのは喜ぶべきですか?」

 

「向こうのあなたが訓練を積んでたおかげだから、喜ぶべきよ」

 

「うーん……」

 

パイロット技能は普通の生活で役に立つかわからないが、乗り物の運転には役に立つだろう。

 

「かれんさん、別の自分の経験を得た事には?」

 

「私自身は研修を終えたばかりの駆け出しだから、助かったわ。手術の経験も得られたから。それと、野戦病院のような場所で持つべき心構えも」

 

大人かれんの年齢は27歳。研修を終えたばかりの駆け出しの勤務医である。実家の力(音楽で身を立てた音楽家の家系)もあり、研修医としては優遇されたほうであるが、知識があっても、実経験がなければ『絵に描いた餅』でしかない。だが、かれんAの医務官としての経験で自信が持てたという自覚がある。

 

「感覚まで引き継いだのは、変な感じですよね?」

 

「世界は違えど、同一人物だからじゃないかしら。おかげで、現役時代のカンも戻ってきたわ」

 

「かれんさん、昔から思ってましたけど、結構、荒っぽい戦法してません?」

 

「父とじいや(執事)がプロレスのファンなのよ。それで……」

 

「なるほど……」

 

かれん(キュアアクア)は『青のプリキュア』の第一号であるが、現役時代は意外に荒っぽい戦法を取る武闘派であった。その理由の一端がわかり、りんは納得がいったようだ。

 

「でも、不思議ですよね。宇宙に行く時代を迎えたら、大艦巨砲主義の亡霊みたいな戦艦が飛び交うなんて」

 

「ええ。もっと円盤のようなものを想像していたのだけど、実際は大艦巨砲主義が蘇ったようなものが飛び交っている。不思議なものよね」

 

宇宙戦艦ヤマト以前にも、マゼラン級戦艦の時点で、地球連邦の宇宙戦艦は『舟型』が普通である。マゼラン級で廃れると思われたが、ドックなどの都合か、船型をする宇宙戦艦は造られ続けた。宇宙戦艦ヤマトはその流れを再び主流に戻す一大発明であったのだろう。

 

「でも、日本名のフネがなんで多いんでしょうか」

 

「日本が地球連邦で最も有力な地域になったから、らしいわ。地球連邦のできるまでに色々とあったみたいで……」

 

ヤマトが地球の象徴的な戦艦と扱われ、生き残る艦歴の長い空母の多くも、日本名を持つ地球連邦の現状は正に『日本が世界の中心にある』といっていい。

 

「ヤマト、か……。」

 

「大和は国のまほろば……」

 

「え?」

 

「日本書紀かなにかだったと思うけれど、そんな詩があるのよ。宇宙戦艦ヤマトのある世界での戦艦大和の末妹はそのような名前だったらしいの」

 

「日本海軍にそんなセンスが?」

 

「与太話扱いされてたけれど、あるらしいのよ、その船」

 

「!?」

 

それは超時空戦艦まほろばの事だ。戦艦大和の正式な計画としての末の妹が『まほろば』である。最終的に同じ宇宙戦艦に改造され、ヤマトの影として、地球を守護していたという。それこそが宇宙戦艦ヤマトの姉妹艦と言える存在である。

 

「大和の改良型として造られていたけれど、当時の日本の力では、作るのに時間がかかりすぎて……ってパターンよ。でも、よく、大和のような船を自力で作れたものだと……」

 

「日本の戦争中の兵器の話って、そういうパターンですよね」

 

「ええ。でも、有志が完成させて、100年以上も秘匿していた……それを見つけて、宇宙戦艦にしたのもすごいけど……」

 

「日本軍の人たちは純粋な気持ちで作ったんだろうから……。本当、何が正しいかは勝ったほうが決めるってヤツですね」

 

「ええ。ある意味、戦後の日本にとっては忌み子だったから、隠されてきたのかもしれないわね、大和型の生き残りは……」

 

大和型の生き残りたちは日本政府も把握していない、大艦巨砲主義の申し子であった。だが、その性能は大和や武蔵とは一線を画していた。特にラ號はもし、21世紀に出現していたとしても、『無敵』とされたほどの性能を誇っていた。それが波動エンジンを得たのなら、余計にすごいことになっているのは、想像に難くない。

 

「だけど、地球全体の危機に引っ張り出されて、地球を護った…。ある意味、戦後の人間たちには皮肉な結果ですね」

 

「戦後の人間たちには、自分達の血と汗で、世界二位にまでのし上がったっていう成功体験の記憶があるもの。だから、戦中の兵器の多くに偏見があるのよ。だから、もし、ヤマトの出自がこの世界に知られても、与太話同然に取られるでしょうね」

 

宇宙戦艦ヤマトの出自が本当に戦艦大和の後身であることは、たいていの世界の人間たちには『与太話』と取られる。だが、未来世界の過去の大和は史実より頑強な構造になっていたのか、ヤマトへの改造の際に、船体の鋼材が偽装用の外殻に流用できるほどの状態を保っていたほどであったという。つまり、史実と異なり、弾薬庫の誘爆と機関の水蒸気爆発を起こさずに沈んだのだろう。

 

「でも、武蔵は宇宙戦艦にならなくて、その妹がなった。なんなんでしょうね」

 

「色々な兼ね合いがあったんでしょうね。同じ状況なら、宇宙戦艦化されただろうから」

 

「それにしても、私たちの全盛期がプリキュアだった時期ってのは……」

 

「ええ。何か来るものがあるわ……」

 

14、5歳の自分たちがアカシックレコードに『全盛期』として記録されていることに、かれんとりんは複雑な心中なようだ。生物学的には、今がまさに最盛期といえる年齢だからだろう。

 

「だけど、みんなが求めるのは、プリキュアとしての私たち……。なら、少しでもそれに応えるべきじゃない?」

 

「ええ……。あの子(のぞみ)を『ある世界』で一人ぼっちにしちゃった罪を……少しでも償わないと……ですね」

 

「あなたも?」

 

「ええ。のぞみは自分の転生前の世界とは違う世界から転生したあたしを……昔と変わらずに接してくれた。そのことへの嬉しさが……記憶にあるんです。だけど、出身世界の違い由来の負い目があった。そのことををあの子は『些細なこと』って言ってくれた。だから、向こうのあたしは……」

 

「私もよ。だから、向こうの私は自分の世界をヒーロー達に任せて、その若いのぞみのもとに馳せ参じた…。だから、その恩返しで、若いのぞみも、その世界を守ってくれたのだけど……」

 

「今度はその世界のあの子自身が揉め事を起こしたんですよね?」

 

「ええ。上手くいかないものね……あの子はプリキュアになって戦うことで、自分の未来が拓けたようなものだから」

 

のぞみはプリキュアへの覚醒で人生の指針を見つけられたからか、プリキュアである(あった)ことに、ある種の誇りを感じていた。それがシャドームーンという、自分が拠り所にしていた力も及ばぬ存在に蹂躙されたり、仲間が異世界の自分自身を助けに行くと言い、自分のもとからいなくなるという体験があったからか、のぞみBは『自分はなんなのか』と思い悩み、ついには戦士としての自尊心を守りたい気持ち、仮面ライダーブラックの力になりたい気持ちが先走ったことが原因で、シャドームーンに軽く返り討ちにされるなど、踏んだり蹴ったりな有様であった。その彼女の心理を容易に推察できるあたり、世界は違えど、二人が長年の友人であるためであろう。大人りんとかれんは複数の次元にまたがって発生してしまった『複数人ののぞみが抱える心理問題、自分たちの次元におけるのぞみの恋愛の決着にまつわる問題』に頭が痛くなる思いであった。

 

 

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