――結局、蛮族寄りのメンタリティを持つ白色彗星帝国の侵略には、力で対抗するしか方策がなかった。その第一撃を担ったのが、ZタイプのMSである。ある種の航空機とロボットの任務を両立できる利点から、未来世界では多くが現役の座にあった。その第二世代のフラッグシップが『Zプルトニウス』であった――
「日本上空のワープ妨害装置は排除に成功しました!」
「うむ。艦載機隊に帰投命令を出せ。通常型のMSはウェーブライダーに運搬させて、降下させろ。そのほうが作業を迅速に行える」
「ハッ。なお、日本上空の空間が落ち着くには、しばらくの時間が必要と」
「仕方あるまい。第一陣の到着は?」
「予定より一週間は遅れる見込みです」
と、ワープ妨害の影響により、スケジュールに大幅な遅延を余儀なくされた地球連邦軍。その間の時間を人員の錬成と、各地のワープ妨害装置の排除に費やす事になった。白色彗星帝国のナグモー提督の思惑は成功したわけである。
「Zタイプの数が足りん。フォン・ブラウンに増強を要請したまえ」
「補給便は手配済みです。ですが」
「やれやれ」
補給にも重大な影響が生じてしまい、頭が痛い思いの山南。彼らはまだ幸運なほうである。扶桑など、魔女の部隊の何割かは『使い物にならない』のを前提に、作戦を練る必要が生じているのだから。1940年以降、対人戦争に忌避感を持つ魔女は増大しており、ダイアナザーデイ以来、軍の作戦に多大な支障が生じている。それ故、プリキュア達に過大な期待がかかるのである。精鋭とされても、対人だと尻込みする魔女は多く、怪異の活動が小康状態に突入した時代になると、彼女らは『お荷物』扱いされているのだ。地球連邦軍の場合は『スピードで一撃をかける』戦術が以前より重視された事、外宇宙戦闘での小型機のデメリットの増大で、小型機が廃れ始めた等の理由により、『一定の大型化は仕方がない』という結論に達したため、Zタイプは花形となったのである。また、可変戦闘機の隆盛で可変機構のコストが気にされなくなった(普及により、製造コストが下がった)のも、その増産の助けになった(一般的な小型機の複雑な内部構造がゲリラ戦に不向きとされたためもある)。V2系がその究極と言えたが、ミノフスキードライブの製造難度の高さなどが仇となり、細々と残存機が使用される程度に留まっている。また、マジンガーの量産も弓教授の反対で(マジンカイザーの『魔モードの標的になる』という意味で)潰えたため、代わりにゲッターロボが量産されていた――
――量産型ゲッターロボG。オリジナルと同等のスペックをほぼ維持しての量産であった。量産と言っても、MSに比べれば『少数生産』であった。これはゲッターロボの戦闘に耐えられる人材が多くいないためである。その更に廉価版の『D2』はMSよりは高パワーだが、けして強力なゲッターロボではないので、オリジナルであるゲッターロボGの量産が取りざたされたのだ。マジンガーの高スペック量産が頓挫したためである。そのため、ネイサーもゲッターロボの量産には積極的ではなかったが、情勢の悪化で量産が進められた。初代・二代の両ゲッターチームにひたすら頼ってもいられないからである。地球は多くの移民星を抱えるようになり、地球に取って代わろうとする野心を抱く移民星も生ずるようになってきたので、それらからの防衛のためには必要であった。波動砲艦隊を通常の連邦軍編成から外しているように見せているのも、移民星の反乱対策であった。ゲッターエンペラーがシリウス星系を蹂躙した事はある種の反乱への無言の抑止となった。シリウス星系は白色彗星帝国が過去に拠点を置いたほどの地であり、かなり栄えていた。だが、一部の反連邦主義者が扇動していたのが仇となり、ゲッターエンペラーに蹂躙される結末となった。そんなシリウス星系の顛末は本国に移民星の大規模反乱の可能性を認識させ、『アメとムチ』の統治を地球連邦政府に始めさせた。この方針転換により、一定規模(かつての先進国一個分程度の軍備)の独自戦力の保有を認められた移民星は各政府の裁量により、ある程度の軍備を自前で揃える必要が生じたため、財政的負担は増した。ただし、装備の生産権は開示されていったので、負担はそれまでより軽くされていた。こうして、地球連邦は23世紀において『文字通りの星間国家連邦』に成長を始め、かつては庇護される側であったバード星をも実質の勢力圏とした。21世紀以降の相次ぐ不祥事、ベテラン宇宙刑事たちが色々な都合で内勤になり、現場の制圧力が弱まった事、若手のみならず、上層部の汚職が相次いだ事で、銀河連邦警察は往時の組織力を喪失していたため、地球の資本で立て直すしかなかったのだ――
――かくして、大人のぞみはワープ妨害装置の撃破に成功した後、戦闘空母ではなく、ヤマトへの乗艦を正式に命じられた。(地球連邦にとっての)政治的都合もあっての辞令であった。要請を出していた『斬艦刀』もヤマトに届けられていた――
「あたし達、ヤマトに乗れって?」
「うん。正式な辞令が出たよ。斬艦刀もヤマトに届けられた」
「あんたも物騒な武器を手配したわね」
「向こうのあたしが使ってるからね。フルーレは本格的な剣戟には向かないし、スターライトフルーレを何回か折られた記憶あるしね、向こうで。それに、あたしの右腕は今や、『聖剣』になったしさ」
「うへぇ……」
「ヤマトの士官室に荷物を移してもらってるとこ。と、言っても、教師の仕事は否応なしに休みになったから、あんまないけど」
のぞみAが(卑弥呼が力を与えた時点で)聖剣を与えられていた都合上、大人のぞみも『聖剣』を放つことが可能になった。つまり、手刀が立派な攻撃手段として成立することになるのだ。のぞみAは会得後にそれを用い、B世界のブンビーが使役した『ホシイナー』を一刀両断している。
「ウチの親には『学校が休校になったから、国連のボランティアで、しばらくは外国に行ってくる』って言っといた。幾分かは嘘じゃないし。今、住んでるマンション(実家暮らしではないとの事)の家賃は連邦軍に頼んで、半年分は払っておいた。今は実家暮らしじゃないしね~…」
のぞみとりんは就職後に実家を出て、一人暮らしをしていたようである。また、空襲でうららの出演予定であった舞台(正式には、役を降ろされてはいなかった模様)も中止になる、咲と舞の街も空襲で被害を被るなど、重大な影響が生じている。
「あ、りんちゃん。うらら、予定の舞台の役は降ろされてなかったみたい」
「良かったじゃないの」
「よかぁないって。今回のことで、舞台自体がぶっ飛んじゃったんだって」
「あ~……」
「その埋め合わせをしようにも、戦争じゃねぇ…。シロップも当分は戻れないし」
「空間が落ち着かないと、行き交う事もままならないってことね」
「そういう事。うららに埋め合わせをしてやりたいけど、今回の事が決着しないことには……」
「確かに…。あんたもココとの関係はどうするのよ」
「続けたいのが本音だけど、結婚は無理だし、パルミエ王国に行くにしても、夢を諦めることになるからなぁ。向こうのあたしが羨ましいよ。ココも地球人になったから、結婚できたし」
「向こうのココ、何してるのよ」
「高校教師とサムライトルーパー?」
「はぁ?」
「いや、本当」
のぞみAが結婚した『コージ』は烈火の鎧と輝煌帝を纏う『サムライトルーパー』であると同時に、とある高校の教師である。二刀流の剣士で、サムライトルーパーで最高の戦闘能力を誇るという。
「夫婦でドンパチする事に縁があるっていうか、なんて言おうか。まさか、ココと一緒に戦う事になんてさ」
「昭和のイケメンって感じの顔だけど、極端過ぎない?」
「それがココの願いだったからじゃ?」
「かもねぇ……」
大人のぞみはヤマトに運びこまれた荷物を新たに割り当てられた士官室(空き部屋であった箇所。ヤマトは第1世代クルーの殆どが白色彗星帝国戦役で『還らなかった』ため、お祓いもする必要があったという)に置く手伝いをりんに頼んでいた。ヤマトは下士官以下は複数人が一緒である兵員室の作り(軍艦の伝統的な作り)であるが、飛行隊長などの幹部級には個室が割り当てられる。のぞみの場合も、ヤマトのクルーで言えば、かの加藤三郎や山本明と同等の扱いなので、比較的に広い個室が割り当てられたわけだ。
「流石に士官級は上等な作りね」
「日本の軍艦の伝統的な作りだからね、ヤマトは。自衛隊の時代には差は縮まったけど」
「あたしらは個室かぁ…。空き部屋多くない?」
「仕方がないよ。ヤマトは第1世代のクルーの八割方が死んでるから、中堅幹部級が不足してるんだ。それで使わなくなった士官室も多いんだって」
ヤマトは第一艦橋勤務のメンバーが意思決定権を持つが、それを支える中堅層の不足が顕著であった。それを担うべき者達の大半が白色彗星帝国戦役で戦死したからだ。そのためか、のぞみはかつての坂本茂に相当するポジションを期待されている(コスモタイガーでの出撃がノルマになるが)と言っていい。
「でも、飛行分隊長って事は出撃にノルマあるんじゃ?」
「コスモタイガーで出る機会も増えると思うな。ヤマトはコスモタイガーを艦載機にした艦としちゃ、一番の古株だから」
「コスモタイガー、か。その前のブラックタイガーっての……向こうのあたしの記憶で覚えがあるけど、なんかかっこ悪くない?」
「仕方がないよ。あれは元々、ヤマトができる前にあった戦闘機の中で、一番に新しい機体にオーバーテクノロジーを入れただけの機体だもの。それでアクティブステルスの時代が来たから、形が先祖返りを起こしたのが、コスモタイガー。あたしらの時代でいえば、アメリカのF/A-18みたいなもん。宇宙戦艦は積める機数が多くないからね」
「そりゃ、素人目でもわかるけど、なんで、戦艦にまで戦闘機積むのよ」
「純粋な宇宙空母は高くつくんだよ。無人機は連邦軍の一部に強く嫌われててね。その兼ね合いもあるんだって。パイロット不足だけはどうにもできないからね。ヤマトは戦闘用の無人機を積んでない古風な艦だよ。最近は20機くらいは補助で積むのが当たり前だからね」
連邦軍の無人機嫌いの風潮は(歴代の大物たちの影響もあり)強いが、度重なる戦争での人手不足だけはどうにもできず、無人機も『やむなく』積むようになった。ゴーストもそれに含まれる。普通はゴースト戦闘機を数十は積むが、ヤマトには積まれていない。その分、パイロットの練度は高いが。
「なるほどね。家族には、アンタのつきそいで外国に行くって事にしたから、口裏合わせてよね」
「わかってるって」
医師であるかれんには、長い間を留守にできる口実がいくらでも用意できるが、自分たち(教師とアクセサリーデザイナー)にはそれがなかなか存在しない。それが二人が家族への(今回の従軍での)方便に四苦八苦している理由であった。20代後半になったとはいえ、生来のドジっ子ぶりから、親にかなり心配されているのが、のぞみなのだ。(りんは『のぞみのつきそい』と言えば、家族全員が納得するが、外国に行くというのは珍しいので、でっち上げる理由をひねり出すのに苦労した)
「出立までに時間もできたとはいえ、どうすんの、それまでの暇な時間」
「完全に引退してるチーム以外の子を中心に声かけを続けるよ。結構、引退してる子多いんだ」
かつてのプリキュア戦士の多くは加齢で変身能力が喪失した状態である上、立場と心境の変化で往時のような度胸を持てないことがままあり、のぞみの声かけに応じられないケースは多い。チーム全体が解散状態にある事も見受けられ、のぞみは往年のようなオールスターズ集結は不可能であることは既に承知していたが、一縷の望みをかけていた。
「何人が集まれる?」
「さぁ。マナちゃんたちが参加してくれたのは奇跡みたいなものだからね。オールスターズで戦った、最初の数回の時の人数が集まればいいほうだと思う。一番多い時で80人近くだったのに、この有様か……」
プリキュアオールスターズも最盛期には80人近くがいたはずだが、この次元においては『世代交代で引退する』ケースが増えた事に伴い、この時代には現役と直近の数世代、更にそこから数世代の古いチームしか活動が確認されておらず、初代の三人の行方もわからぬままである。声をかけられない(市井で平和な暮らしを謳歌している)者もいるため、大人のぞみは『20人前後が集まれば御の字』としている。
「別の世界から呼べる面々を動員して、だからね。これ」
「リストある?」
「うん。このファイルにまとめてある」
「魔法つかいは全員が、アラモードは来てる限りの面々、プリンセスはトゥインクル以外、ハピネスチャージは二人だけ……かなり虫食いね」
「ハートキャッチは全員いたけど、つぼみちゃんがさ」
「あの子がどうしたの」
「産休だって」
「さ、産休…。それじゃ仕方がないか…。それ以外は?」
「いつきちゃんは呼べる。ゆりさんは向こうでの仕事が多忙で無理。えりかの奴は訓練途上でお呼びじゃない」
大人のぞみは暇な時間を見積もり、プリキュアオールスターズの状況を『魔女の世界』含めて確認し、リストを作成した。リストには、動員可能なプリキュア達の顔写真が(のび太夫婦の持っていた本から拝借)貼られており、コツコツとリストを作っていた事がわかる。
「えりかには、ずいぶん辛辣ね」
「向こうのあたし、大学の教育学部でえりかと一緒でさ……」
「あー~…。だいたい想像ついたわ…」
「でも、あんた、なんで一人暮らしなのよ」
「ウチの親父、知ってるっしょ?大学ん時、せっかくだからって、独立させられたんだよね。仕送りはするからって。その流れで、ブンビーさんに泣きついて、マンション暮らしさ」
大人のぞみはどうやら、大学入学後に独立させられ、実家から多少離れた場所のマンションを賃りたようである。ブンビーのつてで、家賃は安くしてもらっているとのことだ。
「そういうわけね…」
「うん。まぁ、今どきは大学のうちに独立するなんて、過去の事になったって風潮があるからね。親父もバブルの時みたいな事したもんだ」
大人のぞみは両親が『のぞみはいずれ、意中の男性と結婚する』という期待を抱いたかは定かではないが、大学の頃に家から独立させられ、26歳の現在に至るまで、普段は一人暮らしである。かなり給与がいいのか、一通りの家具を揃え、数十万円単位のデスクトップPCを置けている。
「問題はそのマンションが、空襲の被害を免れているか。あーーー!!あのPC、結構高いのにーーー!」
「わかるわー……」
のぞみは教師である故に、意外と高収入である。自分の欲求を概ね満たせるだけの収支があるし、教師であるので、その気になれば『自動車とオートバイ』も買える。だが、PCは本格的なスペックのもの(一般的な用途に供する範囲だが)では20万くらいはするので、おいそれと買えない(PCなどは4~5年は使い倒すものである)のだ。
「白色彗星帝国めぇ~!あたしのマンションに爆弾を落としてみろ、その分、あんたらを宇宙の塵にしてやる~~!!」
と、妙なところで気合が入る大人のぞみ。実際、白色彗星帝国の艦上爆撃機は『のぞみ達のいる街』の全体に猛爆撃を加えており、死者数が被害の割に少ないのが、奇跡なくらいであった。防衛省は出動命令が政府から出ないため、この空爆に無為無策の有様であった。無論、プリキュア5が現役時代に在籍した学園も、彼らの爆撃で手ひどく破壊されてしまっており、政府への批判は大きくなってきている。日本政府は九州方面の有様を目の当たりにしたことで、自衛隊の残存勢力を温存する『現存勢力主義』なる消極的運用に走ってしまい、大都市を生かすため、周辺の小~中規模都市を犠牲にするという方針を極秘に決めていたのである。
「日本政府は今回の動乱で宛にはできないよ」
「どうして?」
「さっき、TVで流れたニュースけど……」
――◯×市の『サンクルミエール学園』の被害はかなり甚大なようです……避難場所に指定されていたところに、謎の航空機が執拗に機銃掃射を加え、生徒、教職員、避難してきた市民にかなりの死傷者が……――
「う、ウチの中学じゃない!?」
「うん。玲の編隊が爆撃機を追っ払ってくれなきゃ、今の在籍中の生徒や職員の殆どが死んでたかもしれない。対空車両の一つや二つでも、街にあれば……」
無論、自衛隊は街に残存する『対空戦闘装備』を展開することを具申したが、政府官僚は『首都防空のためである』として、配置を認めなかった。その誤りを一気に証明してしまったことになる。
「自衛隊はどうしたのよ」
「大方、政府が首都とその周辺の防衛ばかりに必死になって、87式自走高射機関砲を回さないんだろうね。あれが三両でもあれば……」
とはいえ、自衛隊の高射大隊の主力であった『93式近距離地対空誘導弾』は弾頭自体が高価であった上、急降下爆撃をしてくる『昔ながらの艦上爆撃機』相手に使用するのは、効率が悪かったのも事実だ。彼女らの街にも高射大隊の展開が検討されたが、時の総理大臣の判断で潰えている。しかし、『国連軍に自衛行動を依存している』事が写真週刊誌に不祥事として報じられ、防衛当局の具申を無下にし、三大都市圏の防衛を優先させたことで言い訳に終始していたところに、この有様だ。
「戦時中でなきゃ、内閣総辞職ものね……」
「中規模の首都圏のベットタウンを見捨てたも同然だもん。普通なら辞任さ。こんな損害……」
「玲に今度、なにか奢ってやりなさいよ?」
「わかってるさ。あの子には感謝だよ」
山本玲は街の防空に、自らのコスモタイガー編隊で奮戦。見事に被害を食い止める殊勲を挙げている。後日、彼女は少佐に昇進し、従兄の後継ぎとして、ヤマト航空隊の副官に任ぜられるが、それは別の機会に語るべき話だ。また、のぞみとりんは『魔女の世界の自分の記憶』からか、彼女に目上として接しているのがわかる。
「でも、奴らの爆撃機……『デスバテーター』っての、コスモタイガーのカモなのね」
「あれは所詮は艦攻、純粋な戦闘爆撃機のコスモタイガーに勝てる道理はないね」
意外な事だが、白色彗星帝国は艦載機の攻撃を『デスバテーター』で全て賄う傾向があった。そのため、本職の戦闘機であるコスモタイガーにとってはいい『カモ』であった。コスモタイガーの真の敵は『イーターⅡ』といいう機種だが、少数派だ。
「アレなら、ウェーブライダーでも充分に空戦ができるから、さしたる脅威じゃない。数以外は。問題はイータⅡっていう制空戦闘機。少数派なんだけど、並のパイロットのコスモタイガーより強いって」
コスモタイガーはマルチロールファイターであるが、純然たる制空戦闘機には一歩譲る。そのため、イータⅡには劣勢であり、その点の改良が急がれたのが、コスモタイガーのマイナーチェンジの理由である。
「それが優先目標?」
「うん。あたしや玲くらいでないと、アレに優勢に立ち回れないよ。意外に動きがいいんだ」
「あんた、何気に自慢してない?」
「こう見えても、向こうじゃ撃墜王の端くれなんだからさ~……」
りんに、自分は撃墜王の称号持ちであることを自慢したいらしい大人のぞみ。それは本当だ。デザリアム戦役、ダイ・アナザー・デイでの個人スコアを合計すると、かなりの機数を撃墜したことになるのだから。
「腕っこきって自負していいくらいの手柄は立ててるんだけどねぇ」
「こっちだと、自衛隊に入らないと活かせないけどね、空母に離着陸できる技能なんて」
「そうなんだよなぁ。せっかくの技能なのに」
そう。宇宙艦から問題なく発艦と着艦がこなせ、更には『計器に頼らない』天測航法を完全に身に着けているパイロットは地球連邦軍広しといえど、そうはいない、自衛隊が知れば、是非がでも欲しい逸材だろう。だが、二人は現状、それとは縁がない職業に就いている。だが、今回の動乱には必須の技能だ。
「この戦いが終わったら、セスナ機でも買う?」
「そうだね……報奨金はものすごいと思うから、一機くらいは買えるだろうし。日本じゃ、飛ぶのに、ややこしいことしないといけないけど」
二人は『事後に自家用機を購入し、航空技能の維持に使う』腹積もりであるようだ。せっかくの技能を得たのに、『腐らす』にはもったいないほどに高度であるからであった。とはいえ、自分たちの住む日本では、自家用機を保有、維持するのにハードルがものすごく高いという事情もある。これは日本の航空法が1950年代の時点で制定された古い法律であり、その後に目立った改正がされていないからである。のび太達の世界では、日本連邦化に伴うあれこれで、ついに大幅にメスが入れられたが、それ以外の世界では『50年代の法の基本を2020年代でも守っている』有様であったので、二人の計画が実現するかは不透明であった。