ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百四十五話「SAILING FOR MY DREAM 3」

――多元宇宙の存在により、プリキュア達は複数の次元で異なる道を歩んでいたことが判明した。オトナプリキュアの世界も、その一つに過ぎないわけだ。のぞみAはそのことをウマ娘世界で知らされていた――

 

 

「ありがとう、それじゃ。……ややこしくなったな。別の世界にいる大人のあたしか……」

 

ナリタブライアンとして、ウマ娘世界で高校生活を久々に満喫していたのぞみA。卑弥呼の力により、大人のぞみと記憶が共有されたためか、ドラえもんから知らされた事を冷静に受け止めていた。ブライアンは当代(ただし、次が控えているが)の三冠獲得者であるので、その復活と有終の美を望む声は多い。その関係で、メディアへの出演も多く要請される流れは続いており、この日も応対を終え、ドラえもんからの定時連絡を受けていた)

 

「ご苦労さまです、夢原女史」

 

「グルーヴちゃん、そっちはどう?」

 

「孫……ここでは従妹ですが……のドゥラメンテのフォローが大変でして……」

 

キタサン、ダイヤと同期のドゥラメンテ(史実では、その子供達が2020年代の競馬界に君臨したり、自身も2010年代半ば当時に世代最強を誇った)は口数の多いほうではない上、口下手(史実では凱旋門賞を目指したが、自身の競走馬生命が絶たれてしまい、断念)であるため、従姉である自分がフォローしないと、何を言い出すのかわからないと、エアグルーヴは漏らす。エアグルーヴの妹(史実での子、ドゥラメンテの母)のアドマイヤグルーヴはまだ赤子であるので、史実と異なる関係性になったため、エアグルーヴも(史実の記憶が蘇りつつあるので)頭がこんがらがりそうな有様に陥ったようで、いつになく疲れている。

 

「食堂でなにか奢ろうか…?」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

かくして、二人は学園の食堂で食事を取った。ブライアンの体はのぞみ本人の数倍以上のエネルギーを必要とするため、元の体では入らない量も入ってしまう。

 

「しかし、女史。追い込み戦法をよく、思いつきましたね?」

 

「差しはこの子の体に負担がかかってたようだしね。戦法を変えた。現役時代なら、入れ代わりはできなかったけれど、転生した後の常人よりは鍛えられてたから、なんとかなった。この体のポテンシャルも当代屈指だから、どうにかなったよ」

 

「当面はこの状態として、G1には?」

 

「出るさ。復活をアピールするには、デカいレースを二個くらい勝つ必要がある。無敗じゃないとはいえ、その時点で七冠になる。ここの時代がもうちょい進めば、九勝するのが出てくると思うけどね」

 

「ああ、例の……」

 

「そう。日本歴代最強の牝馬と言われた、あの子だよ」

 

日本の歴代の名牝の中でも最強と言われ、キタサンブラックの引退後に王者として君臨したその名馬。エアグルーヴはススキヶ原への来訪でその存在を知った。同時に、従妹のドゥラメンテが史実では自身の孫にあたることも。そのため、頭がこんがらがる思いのエアグルーヴ。

 

「ブライアンちゃんは子をそれなりに為したけど、子の世代に重賞勝ちすら出せなかったから、ごく僅かに末裔がいるらしい以外はわからないらしいよ」

 

「対する私は……ひ孫に至るまで、G1を制する者を輩出する……か。喜んでいいものか」

 

「何を話してるんですか」

 

「……ローレルか。聞き耳を立てるとは、無粋な真似だぞ」

 

のぞみAは転生後に鍛えられた演技力でブライアンのキャラを演じてみせた。多少不快感を見せつつも、諫める雰囲気も醸し出せている。

 

「ゴメンね。でも、急にどうしたの?グルーヴさんと食事なんて」

 

「生徒会長がテイオーに代替わりしたろ?そのことで話し合いもあったからな…。奴は青二才だからな」

 

史実でのテイオーとの年齢差は逆に、ブライアンが『青二才』と呼ばれていいくらいだが、ウマ娘としては、ブライアンが『年上』であるという逆転現象が起こっている。そのため、テイオーを青二才と表現しても、おかしくはないのだ。

 

「テイオー会長は?」

 

「しばらくは『あちらの世界』にいる。ルドルフの残務整理は私らの仕事でもあるし、シンザンさんが送りこんでるOGの連中の顔を立たせないといかんからな。テイオーにはしばらくは広告塔になってもらうという、御大のご判断だ」

 

「非三冠馬の会長就任は久しぶりじゃ?」

 

「ルドルフの先代だった『トウショウボーイ』さん以来だ。ルドルフは現役後期の頃には、もう会長だったから……ずいぶん長かったぞ?」

 

「あの人に代わり得るウマ娘は、今まで現れてこなかったから」

 

「私はガラじゃないし、エアグルーヴは選挙で負けたろう?」

 

「若気の至りだ」

 

「そういう歳でもあるまい?」

 

「うるさい」

 

と、エアグルーヴも咄嗟に合わせる。こういう時の対応力は流石だ。

 

「お前は次に何のレースに出るのだ?」

 

「やっと、足の調子が安定してきてね。来年の中山金杯かな」

 

「そうか。バクシン(サクラバクシンオー)のヤツから聞いたが、お前は凱旋門賞を目指してるらしいな?」

 

「バクちゃんったら……」

 

「洋芝はこちらの芝とはまったく、性質が異なる。向こうでいきなり走るのは無謀だ」

 

「うむ。サトノ家に依頼し、感覚を掴めるように、VRの開発を依頼した。来年度中には完成させるそうだ。彼らも凱旋門を走るのが悲願だからな…」

 

凱旋門賞は日本競馬界の夢である。だが、スピードシンボリ(ルドルフの祖母)、エルコンドルパサーが挑み、跳ね返されてきた。史実では、ゴルシ、ナカヤマなども挑む事になる。

 

「ゴルシやナカヤマも、いずれいくと言い出したからな。それで、サトノ家に依頼する流れになったのだ」

 

エアグルーヴはシンボリ家、メジロ家、サトノ家といった名門家も長年(ルドルフの祖父母の代から)の悲願としているために、黄金時代と言える『今の時期』に賭けていることをサクラローレルに話す。

 

「それまでは国内で腕を磨いておけ。ブライアンも、体が完治したと正式に確認されれば、最後の花道として、一~二回は挑戦する意向があるそうだ」

 

「姉貴には話すなよ?話すと、やたら心配されるからな。実家の親父と揉めて、実家を出たばかりだからな……」

 

「え、実家を出たの?」

 

「親父はとっとっと引退して、酒屋を継いでほしいと言うが、うちにはまだ、下の妹達がいるからな。そいつらを食わせんといかんだろ。それで親父と揉めたんだ」

 

それについては本当の事だ。ハヤヒデとブライアンの父は『ブライアンに後を継がせたい』と言うが、ブライアンはレースを走ることに『悦び』を見出すような気質であり、相容れなかった。それにより、ブライアンは『高等部を出て、大学部に進学した段階で野比家に正式に下宿する』事に決めたのだ。

 

「大学部に進学したら、知り合いの家に下宿させてもらう。そういう手はずになっている。姉貴も知ってる事だ。大学の学費は既に私個人の口座から払う手はずだ。暗証番号は私と姉貴しか知らん。親父に使われんように、それまでと変えてあるからな」

 

「書類を揃えるのが大変だったがな…。いきなり言われたので、大慌て手続きしたんだぞ」

 

エアグルーヴもそのところは紛れもない真実であるので、ありのままを言う。

 

「ブライアンちゃんはレース一辺倒だと思ったよ」

 

「今の世の中、大学くらい出んと、まともに再就職できんだろう。昭和の昔は高卒でも充分にあったが、今は仕事も複雑になっているからな」

 

それについては世の中の変化である。昭和の中~後期頃は高卒でも充分に働きぶちがあったが、平成の後期には『院卒でも就職が難しい』という有様である。それで混乱が起こったのが扶桑皇国だ。『大卒こそ正義!軍学校などは穀潰しのいくところだ』な戦後の風潮を持ち込まれた事で社会的混乱が起こり、ドラえもん世界の日本はその社会的混乱を収めるため、扶桑にかなり譲歩した(これにより、扶桑で反戦運動をしていた思想家や過激派は『梯子を外される』格好になり、軍部や公安警察への無謀なテロリズムに走り、自滅していく)。ウマ娘世界も同じような歴史を辿っているため、G1級のウマ娘であっても、大卒くらいの学歴が世渡りのために必要となるのだ。

 

「昔はG1をいくつか勝っていれば、再就職が約束されてたんだけど」

 

「それでも、食いっぱぐれたヤツはいただろ?口下手だと余計にだ。私もそれなりに考えているんだぞ、将来を」

 

のぞみはブライアンから聞いていたことを口にする形で、その場を凌ぐ。ブライアンは口数は少なめだが、口下手ではないのだ。

 

「午後はトレーニングがあるけど、ブライアンちゃんは?」

 

「併せをしたいのか?付き合ってやる。やりたそうな顔しているしな」

 

と、ローレルを『くすぐる』。流石に前世で教職にあっただけあり、のぞみはこういう事に気がつきやすい。

 

「最近はマスコミ対応が多くて、運動不足だからな。すまんが、勝負服で走らせてもらう」

 

「いいよ。こっちも勝負服でいいかな?」

 

「構わんよ。こちらも実戦の雰囲気を体に再度、叩き込まんとならん身の上だからな」

 

と、それらしく乗せる。のぞみは前世での教職の経験と転生後の軍人生活で『相手をうまくその気にさせる』ことを覚えており、それを活用したわけである。もっとも、のぞみ本人としても、『ウマ娘の体をうまく扱い、ブライアンに体を返却するまでに、ブライアン本人の全盛期と同等以上の状態に仕上げる』目的があるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

――かくして、その日の午後――

 

普通はジャージで行う『併せ』だが、二人の意向で勝負服で行われた。いずれも(史実での最盛期の実力は)G1級の実力者。ローレルはこの時期、自身の『ガラスの足』が原因でG1にはまだ出走していなかったが、本来の実力の片鱗が表面化し始めた頃。ブライアンは既に三冠を取っていた。史実では引導を渡されたわけだが、この時はローレルが(身体が精神に追いつききっていないが)遅れてきた全盛期を迎えつつあった頃であり、既に能力が下降線に入り始めたブライアンは不利と思われた。実際、どんな強者であれ、ウマ娘は肉体のピークが過ぎると、身体能力が大幅に減退してしまうという種族である。それはサラブレッドの特徴とも一致している。そのため、下馬評はブライアンに不利であったのだが。

 

 

「!!」

 

昇り龍の状態であるサクラローレル相手に、引けを取らないどころか、全盛期と変わりない走りを見せるブライアンにギャラリーは騒然となる。コースの第四コーナーを曲がり、直線に入ると。

 

「あ、あの炎は……!?」

 

ブライアンの目から鬼火のようなものが現れたのを視認したのは、ブライアンと同様にナリタ一族である『ナリタトップロード』であった。

 

「ブライアンさんは追い込み型じゃなかったはず……それに……あれはタイシンさんが前に見せた……!?」

 

「ブライアンは走り方を変えている最中なんだ」

 

「オグリ先輩」

 

「用があって、こちらに一旦戻ってきたんだが、どうやら、ブライアンは大丈夫なようだな」

 

自身とタマモの歴史改変後はブライアンと実質的な師弟関係にあるため、今回の事は知っているオグリキャップ。そのため、のぞみに手を貸しており、引退後の『スピカのご意見番』的なポジションを活用していた。現役時代は口下手な部類に入っていたオグリキャップだが、引退後は後輩たちを導く立場にあった。また、歴史改変後はブライアンの事実上の師である。

 

「現役時代の私もだが、ダメだと思った時こそ、負けん気が燃え上がる。君も知っているだろう?私の現役末期のことは」

 

「え、ええ」

 

オグリキャップは現役末期には往年の走りができなくなっており、見るも無惨な有様であった事がある(最後のジャパンカップは11着である)。その事実から、当時は『燃え尽きた』、『オグリ屈辱の11着!!』などと書き立てられた。だが、最後の有馬記念で全てを覆し、有終の美を飾った。その実績はウマ娘史上に燦然と輝くものだ。

 

「でも、なんで差し型だったブライアンさんが追い込みに?」

 

「おそらくは体への負担を考えての事だ。ブライアンは股関節炎に一度なっている。そのことへの恐怖で自然と能力をセーブしてしまう癖がついてしまっていた。精神的なトラウマだから、精神的な要因ばかりは、他人にはどうすることはできない。あの子が自分で克服するしかない」

 

それはオグリが推測した、ブライアン低迷の原因であるが、見事に的中していた。引退後は現役時代より聡明になった振る舞いもするようになっていたが、これはその最たる例であった。

 

 

 

 

――ローレルは自身のトップギアの一歩手前までの加速で直線を逃げ切ろうとしたが、ブライアン(中身はのぞみA)はトップギアでこれを見事に抜き去る――

 

「嘘……!?」

 

「悪いな。たとえ模擬とはいえ、誰かに負けるのは嫌いなんでな!」

 

『信じられない』と言わんばかりのローレルにそう言ってのけ、微笑みと共に抜き去っていくブライアン。元々、ブライアンは三冠獲得者。全盛期のポテンシャルが戻ったのなら、その実力のほどは誰もが納得する。ローレルは能力の飛躍がやっと始まったばかり。その差は容易には埋めがたいものであった。オグリはのぞみAが『仕事を果たしてくれている』事に嬉しさを覚え、現役時代とは打って変わっての『師としての嬉しさと、ブライアンに光をもたらした者たちへの感謝』を見せるのであった。

 

(のぞみには感謝しなくてはな)

 

オグリは引退して久しいが、自身の渾名である怪物の名を継承した後輩の復活のお膳立てをしてくれたのぞみAに後日、彼女なりの感謝を伝えたという。

 

 

 

 

 

――オトナプリキュア世界と『プリキュア5の世界』。二つの世界での動乱は地球連邦軍に少なからずの労力を割かせていた。特にオトナプリキュア世界は『地球存亡の危機』であるので、波動砲艦隊の総出撃と相成った。『自分』がその世界で戦いの先頭に立った事に劣等感を覚えたのぞみB。Aや大人のぞみと違い、現役真っ只中である故か、動乱で戦力外通告も同然の扱いを受けている様に思い悩んでいた――

 

「私じゃ……力になれない……。悔しいよ……」

 

プリキュアに変身しても、敵に歯が立たないという事実は、のぞみBにショックを与えるのに充分であった。特に彼女はかれんとこまちの事で駄々をこね、後輩たちに叩きのめされるという醜態を見せたり、シャドームーンに敵と見做されないという屈辱を味わうなど、現在までに確認されている『夢原のぞみ』の同位体の中では、最もヤキが回っていると言っていい。

 

「向こうの私や『大人の私』はプリキュアのエース格扱い……。同じ私のはずなのに……」

 

敗北続きが彼女に劣等感を植え付けた感は否めないが、敵が『世界を支配しうる力を持つ』改造人間であったり、強大な軍事力を誇るナチス残党であるので、現役真っ只中ののぞみBには荷が重いのも事実であった。実際、シャドームーン相手には、B世界のプリキュア5が全ての手段を用いても『かすり傷程度も負わせられない』ほどの力の差があり、救援が遅れていれば、のぞみBは間違いなく戦死していた。B世界のプリキュア5の完全な敗北であった。

 

「別の歴史の私のように……ドリームキュアグレースになれれば……」

 

現状、のぞみが現役時に覚醒したフォームの中で最高の能力を持つものの一つが『ドリームキュアグレース』であった。のぞみBはそれを欲するようになっていた。その覚醒にはキュアグレースの存在が必要だが、2008年当時、花寺のどかは一歳未満の赤子であり、のぞみが28歳ほどにならなければ、プリキュアとして覚醒しない(適齢期を迎えない)という事実により、自分が現役の頃には手に入らない力であることを痛感させられてもあり、精神的にかなり追い詰められていた。だが、事態は彼女の想定以上に深刻であり、A世界のプリキュア達は死闘を展開している。彼女はその様子をモニター越しに見、自分の非力さを改めて痛感させられるのであった。

 

「私も強くなりたいよ……強く……!」

 

シャドームーンに敵と見做されなかった屈辱と、後輩らに駄々をこねたことへの自戒か、のぞみBはその想いを強めていく。その想いに力が反応し、自然とプリキュアへ変身させていく。

 

「こ、これは……!?」

 

「あんたも、その答えに行き着いたようね」

 

「もしかして、向こうの世界のルージュ?」

 

「ご名答。あたしはあんたの知るキュアルージュじゃない。だけど、キュアルージュであることには変わりはない」

 

キュアルージュAが様子を見に来た。彼女は記憶の回復後は裏方の仕事が主であり、のぞみAを現役時代と違う視点で支えている。無論、彼女も現役時代よりパワーアップを果たしている。

 

「様子を見に来たのよ、ここの自分自身に頼まれて。あんたは最近、悩んでるようだからって」

 

ルージュは自分同士で上手くやれており、物事を頼める間柄になっていた。のぞみがその力の差により、B側が僻みや嫉妬を感じていたのとは対照的であった。

 

「私……どうしたらいいのかわかんない。色々あって、仮面ライダーブラックと会って……。光太郎さんの力になりたくて……。でも、光太郎さんはどこか近寄りがたい時があって……」

 

仮面ライダーBLACKの南光太郎はゴルゴムとの辛く哀しい戦いの日々に疲れていた故か、できるだけ、のぞみたちを自分の戦いに巻き込ませないようにしていた。それは彼の心の傷が原因であった。だが、自分は彼の忠告を無視し、シャドームーンに一人で挑み、無惨に敗北を喫した。彼からは『その辺を這いずり回る虫』も同然に見られてたことへの激昂から、自分の持てる全ての技をぶつけた。だが、尽くが容易く無効化、あるいは跳ね返され、逆に腕の骨と肉を粉砕される寸前にまで傷つけられ、無様にのたうち回るのみだった。その時の気持ちを吐露する。

 

「ブラックの光太郎さんは……あんたを巻き込みたくなかったのよ。自分の……世紀王同士の戦いに」

 

「世紀王って……?」

 

「RXの光太郎さんが教えるようにって許可出したから、あんたにも伝えておくわ。光太郎さんが仮面ライダーになった経緯を、ね」

 

キュアルージュAはRXの南光太郎から教えられたことを伝える。ブラックの光太郎は難色を示したが、キュアドリームBが先走り、危うく戦死するところであったため、RXの光太郎は若い自分を叱責する羽目になった。

 

「それと、RXの彼から伝言。君のしたことは別の俺の忠告を破ったことになるが、人としては正しかったと、ね」

 

RXの光太郎はドリームBを無謀な戦いに駆り立てたのが、ブラックの自分の突き放すような態度が原因であると知り、ブラックの自分自身を強く叱責した。

 

 

――のぞみちゃんは力になりたいと願っていた。お前はあの子の思いに気づいていたのか!?――

 

自分で自分を叱る。RXの光太郎自身もシュールな構図であると理解していたが、それでも、のぞみBの想いを無下にはできなかった。ゴルゴムとの戦いを終え、11人ライダーとして、バダンと戦うようになったからこそ理解したモノ。それは自分は一人ではないということだ。RXの光太郎はそのことをよく理解していたからこそ、BLACKの自分を叱責したのだ。

 

「あの人は辛すぎる宿命を背負わされた。生体改造だから、寿命はあるけれど、それも万単位の長い年月。しかも、兄弟同然の幼馴染が自分と対になる改造人間になって、自分の命とその力の源『キングストーン』を狙ってくる。しかも、それは全ての世界で同じ」

 

BLACKの時点では『五万年が寿命』である。そのくらいの時間がゴルゴム怪人の世代交代のサイクルであった。全ての次元世界でシャドームーンは生まれ、敵対する運命にある。ブラックはそれを意識しすぎていたのだ。

 

「だから、自分一人でどうにかしようと逸ってたのよ。だけど、結果的にあんたを巻き込んでしまった。あんたのしたことは間違ってたかもしれないけど、人としては正しかった。それは自信を持ちなさい」

 

「でも、私は何もできなかった。全部の技をぶつけても……。ただ、力の差を……。りんちゃん、私はどうしたらいいの……」

 

「あんたは、あんたの正しいと思ったことをやりなさい。昔からそうでしょ?こっちのあんたはそれで、自分が転生した意味を見出していった」

 

「で、でも……私には、そっちの私みたいな力は……」

 

「そうだと思って、ミラクルライトを持って来たわ。あんたの後輩達のエネルギーを充填して、ね」

 

ルージュAは地球連邦製のミラクルライトをおもむろに取り出し、光をドリームBに当てる。すると。ドリームBのコスチュームが変化を始める。キュアレインボーとは全く違うものに。それこそが。

 

「り、りんちゃん……こ、これは……!?」

 

「あんたの後輩達がこめてくれたエネルギーがパワーアップさせてるのよ。そう。これこそが!!これこそが!!」

 

やたらと、ノリがいいルージュA。

 

『重なるキボウノチカラ!!ドリームキュアグレースッ!!』

 

ハモっての名のりであった。

 

「ふ、ふぇぇ!?な、何これーーー!?」

 

「これこそが、アンタのなりたがってたドリームキュアグレースよ!」

 

「えぇ!?いいの!?」

 

「ラブリー、ハート、ハッピー、ピーチ、メロディ、ミラクル、フローラの力を借りて、ならせたのよ。想いの力は偉大よ」

 

ドリームの現役時代に面識がある七人の後輩達の力を受け取る事により、ドリームキュアグレースに変身させたキュアルージュA。サイコフレームの威力に彼女も唸る。

 

「こっちのアンタとは違う進化。本当はグレースにも協力させるべきだけど、そっちのアンタは面識がないでしょ?」

 

「確かに……でも、力が漲る……これなら、戦えるよ!」

 

ルージュからの贈り物。それはドリームキュアグレース形態の先取りであった。ドリームと共闘の経験のある七人の後輩達のパワーを注いで貰い、その超パワーでドリームBの願いを叶えさせたのだ。仕組みはこうだ。思いを込めて持つとピンクに光り、意識してパワー流すと緑色に輝くというもの。ルージュはそれを実践したわけだ。Aの最強形態『エターニティドリーム』が彼女個人のパワーアップである『シャイニングドリーム』の純粋な発展形なのに対し、こちらは『プリキュア5の象徴である蝶を象った』ような印象を受ける。エターニティのような威圧感はなく、コスチュームの印象も柔和なものだ。これは本来は『治癒のプリキュア』であるグレースの力が発現させるフォームだからだろう。ただし、その戦闘能力はエターニティにも引けを取らない強大なものである。

 

「これで、アンタも充分に戦えるはずよ」

 

「ありがとう、りんちゃん。でも、りんちゃんは?」

 

「あたしはシャイニング形態があるから。そっちのあたしには『チートよ!!』って泣かれたけど」

 

「あ、やっぱり」

 

「ほら、ね」

 

「あ、念じればいいんだ」

 

「な~に、ちょっとしたコツを掴んだのよ」

 

ルージュAも、シャイニングドリームに準じたパワーアップを見せる。記憶喪失からの回復後に会得したものだ。

 

「あれ、りんちゃんがそれになれるってことは……」

 

「うん。察しのとおりよ。こまちさんがあたしの次に早かったかな」

 

「え、なんで?」

 

「転生してたお姉さんの関係かな?」

 

「え、まどかさんが?なんで?」

 

「あの人、転生先がキューティーハニーなのよ」

 

「嘘ぉーーーーーー!?」

 

「あたし達の大先輩よ。あんたの上官達は別次元のキューティーハニーと区別するために、キューティーハニーFって呼んでたわ」

 

こまちの姉・まどかは転生先が未来世界の如月博士が作り上げた女性型アンドロイド『如月ハニー』であった。如月ハニーは『キューティーハニー』というスーパーヒロインであるので、凄まじい強運により、23世紀で最も精巧なボディを持つ、スーパーアンドロイドに宿った事になる。なお、黒江達は別次元にいる『初代キューティーハニー』を確認していたので、それとの区別のために便宜的に『F』の符号を付与して呼んでいる。

 

「こまちさんはなんて?」

 

「目を回してるわ。今は如月博士の残した遺産で建てた家に住んでるわよ」

 

「いいの?」

 

「元々が姉妹だし、いいんじゃない?」

 

と、秋元姉妹は別々のスーパーヒロインになり、それぞれの敵と戦っている事が伝えられる。ただし、ハニーのほうが遥かに戦歴があることには拗ねたという。(マジンガーZが現役の頃には、既にデビューしている)

 

「かれんさんは知ってるの?」

 

「うん。大決戦で共闘したから。ハニーさん、フルーレの名手だから、かれんさんが憧れのまなざしで……。あたしも直接は見てないけどね」

 

「へー…。あのかれんさんが……」

 

ハニーの華麗なる剣捌きと『あなたの人生、変わるわよ』という決め台詞。こまちは大いに困惑、かれんはそのかっこよさに憧れてしまった。ハニーの戦いは華麗の一言だからだ。自分からすれば、容姿端麗、性格も良し、プリキュアとしてもかなり強いはずのかれんだが、いささかパワーファイター寄りの戦い方であったので、華麗に戦いを運べるハニーの変幻自在ぶりに魅了されたのだろう。ハニーは勇ましいという表現が似合うが、その変幻自在の戦法はかれん(キュアアクア)にはないもの。(ある時に、ハリケーンハニーの姿でダブルスペイザーを駆り、グレンダイザーの危機を救う殊勲も挙げている)

 

「あ、それと。うららが愚痴ってたわよ」

 

「え、なんで?」

 

「あんた、カバーだけど、アルバム出すから」

 

「!?」

 

衝撃の知らせに、腰を抜かすドリームキュアグレース。

 

「何のジョーク??」

 

「いや、本当。広報部の肝いりで……おかげで、うららが拗ねちゃって……」

 

「本職だもんね、うらら……」

 

別の自分がまさかのCDデビューを果たすというニュースに腰を抜かし、言葉を失うドリームキュアグレース。

 

「後で、ジャケットに使う予定の写真見せるわ。とにかく、そういうこと」

 

「あ、あたし、音痴だよ!?」

 

「訓練受けたから、こっちは」

 

「そ、そう……。なんで、あ、あ、あたしが!?」

 

「あんたが人気あるから。広報部はそう言ったわ」

 

と、無茶をさせた扶桑空軍の広報部。圭子曰く、『連中は無茶をさせるが、いつものことだ』とのことで、大慌てで訓練をさせられたようで、黒江曰く『付け焼き刃』だ。とはいえ、ブライアンの体に宿った事で、音感を得たのか、レコーディングのために一時的に戻った際には、歌唱力が飛躍していた。

 

「日本軍は広報部まで、根性っていうの?」

 

「これでも、史実よりだいぶいいほうよ。レコーディングの機材は一級だし」

 

「そっちも、けして楽な仕事じゃないって事?」

 

「そういう事」

 

ルージュAは回復後は保護者に近いポジションなため、付け焼き刃の訓練を課される姿を見ている。仕事に手抜きはご法度。その風潮が強い時代の軍隊の仕事は楽ではない。特に、広報部は七勇士にまつわる失態以降、何かと睨まれる立場である。それがのぞみAを苦労させたのは言うまでもない。どこの世界も、どこの時代も仕事は大変なもの。ドリームキュアグレースは妙に世知辛い現実に、大人になるのが、ちょっと怖くなったのであった。

 

 

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