――大人のぞみの得た戦力は強大なものであった。かれんとこまちはそのプレビューとも言える『大決戦』に参戦した記憶を得た二人なので、その力のほどを理解していた。くるみはその戦いには参加していない(別時空の個体が参加していた)ので、この時に、二人から事の次第を知らされた。地球連邦軍のデータベースに記録されていた、その時ののぞみの強大な戦闘力は瞠目に値するもの。さらに自分たちは異能の存在に力を与えられたため、タイムフラワーの存在とは無関係に、変身能力を取り戻した事も知らされた――
「それじゃ、のぞみはココ様と……」
「恐らくは別れる事を考えてるわ。このままだと話がもつれて、取り返しのつかない事になる。だけど、今回の戦争はパルミエ人にはどうする事もできない。下手したら、地球を弾道ミサイルの一発で消し飛ばせる、宇宙からの侵略者よ。更に、のぞみは異次元の自分の記憶を持っている状態。この世界のココとは、考えが相容れなくなっているだろうから……」
「じ、じゃ……!」
「くるみ、あなたの使命はココとナッツに今回の動乱と、わたしたちの変身がタイムフラワーに関係しない事を理解させる事よ。もう一度、彼女らに会えればいいのだけど……」
と、かれんが気を揉んでいると……
「その心配はありません」
「クレオパトラ様……!!」
「!?」
二人の前に、クレオパトラが姿を見せる。往時の服装そのままである。既に肉体は朽ちているので、魂のみの状態である。魂のみの状態であるので、異世界にも自由に行ける。その彼女がココとナッツに全てを伝えたという。
「そうか、あなたの肉体は数千年の昔、王国が攻められた時に朽ちている!だから……世界の境界も!!」
「その通りです。肉体はとうの昔に朽ちましたが、精神は永遠不滅です」
「ち、ちょっと、かれん!!話を勝手に進めないでよ!!この人は誰なのよ!?」
「あなたも学校で習ったでしょ?クレオパトラ女王よ、エジプトの」
「は、はぁ!?それって、数千年も昔の……え!?ゆ、幽霊ぃぃ!?」
「そういう事になるわね……。まさか、魂だけの存在と会話できるなんて思わなかったけれど……」
「あなたの主には、私が直接、話を通しました。ですが、この場には来るなと止めました」
「え、な、なんでですか!?」
「来ても、この戦には役に立てないからです」
「そ、そんな!!」
「ガトランティスの宇宙艦隊は惑星をたやすく破壊できるからです。それもミサイルの一発で」
「なっ……待ってください。あなたが数千年前のクレオパトラなら、それから遥か後に発明されたはずの武器のことをなんで!?」
クレオパトラは言う。
「……私は地球人として死にましたが、そもそもは地球人ではなかったからです」
「!?」
「元々はラーメタルという星で生まれた者だからです」
「それじゃ、あなたは……異星人?」
「私だけではありません。歴史上のある時期までの女王や妃の多くは我々と同様の存在……1000年女王なのです」
くるみはここで初めて、1000年女王という存在を知った。複数の次元の地球を統治していた(ラーメタルが植民地と扱っていた)という存在であり、多くが超常的な能力を何かかしら持っていた事を。その力は『加齢したプリキュアを本当に若返らせることが可能かつ、プリキュアにまつわるアカシックレコードに直接の介入をする事すらもなし得る』ほどだ。
「あなたの主にも告げましたが、戦士なら、危険をかえりみず、死ぬと分かっていても、行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても、戦わなくてはならない時があるのです」
「ええ。私も……キャプテンハーロックにそれを説かれましたから……」
かれんも続く。別の自分がキャプテンハーロックと出会い、彼の生き様を目の当たりにした事で『そのこと』を学んだことの記憶が宿った事も、今回の出来事に関わった理由だと。クレオパトラの最期についても諸説あるが、戦う意志があったのはわかっている。ある意味、『パルミエ人に理解できない』のは『地球人には、危険をかえりみず、死ぬと分かっていても、行動しなくてはならない時がある』という、ある種の独特な死生観が種族全体で『戦士の美徳』として根付いている事だろう。
「かれん……」
「その相容れない何かが、のぞみとココを引き裂いてしまうのかもしれない。あの子は……世界を守るために、我が身を犠牲にする事も覚悟しているから」
「ええ。ある意味、それが戦士の務めかもしれません」
クレオパトラも頷く。地球を愛する故に、我が身を犠牲にする。のぞみもそれを前提に動いているようなもの。くるみはこの世界では『中~大~就職』までの長い時間を地球で過ごした故に、地球人の死生観を理解できるが、ココたちはそれを理解できない。
「ココは善意で止めようとするだろうけれど、それはあの子の青春の否定にも繋がる。祝福が呪いに変わるのは容易いことなのよ、くるみ」
「……!!」
かれんは、のぞみの青春は戦いとともにあった事をよくわかっている。故に、この世界でのココとのぞみを『戦いが終わるまでは会わせないようにする』つもりである。
「だから、あちらの世界のココは地球人に転生した後、あの子の前に現れるのを躊躇ったのよ。あの子がそれを望んでいるのをわかっていても、ね。前世であの子が不幸になってしまった原因の一つが自分の行いだと知ってしまえば……」
「でも、それはその世界のココ様でしょう!?この世界のココ様は……!!」
「仮に、タイムフラワーによる変身が命を削る類のものだと知ったら?」
「そ、それは……」
「ココは絶対に止めようとするわ。でも、のぞみは戦う事それ自体が青春だったわ。それに、初恋だったのよ?あの頃は14歳だった、あの子も……もう26歳よ。新しい人生を生きろと言われても……一からやり直せる年齢じゃないわ……。だから、今回のことは事後に詳しく知らせるつもりよ。ココ達にはどうすることもできない敵だもの」
くるみは複雑である。元々、異星人であった1000年女王たちでさえ、地球のために尽くし、骨を埋めていった。だが、ココ達にはそこまでする義理はないし、のぞみたちに生きていてほしいからと、戦いを禁止するだろう。だが、それはのぞみの今までの12年の否定になってしまう。
「それと、タイムフラワーと無関係だと言っても、往時の姿に戻る変身をどう理解させろと?キュアフラワーだった、つぼみのおばあさまは特殊なケースなのよ?」
かれんは現実を見ていた。今の自分たちは彼女らの力で肉体自体が若返っているのだ。髪型と振る舞いなどの工夫で、なんとか誤魔化せる範囲であるが、確かに若返っている。肉体年齢にして10歳近くは若返っているが、20代半ばからの若返りなので、外見上はさほど変化はない(かれんは元から大人びていたので、27歳から17歳前後に戻ったところで、あまり外見は変わらないが)。
「それに、今の私達の肉体年齢は高校生ほど。大人の精神状態と10代の頃の万能感が両立できる、ギリギリセーフのラインよ」
「そ、そういえば……前に会った時より……」
くるみはなんとなく、かれんの雰囲気が以前会った時より若々しくなっている事に驚く。髪型などで外見を大人に見せているが、実際には10代後半に若返っているのだ。
「おそらく、プリキュア化に適した覚醒の限界年齢が高校生くらいじゃないかと思うわ。覚えてる?あきらとゆかりは高校生で覚醒していたのよ?私達が変身できなくなった時間を考えると、矛盾しているわ。そうでなければ、後輩達と出会えるはずがないわ」
かれんは世界の矛盾点に気づいていた。後輩の剣城あきらや琴爪ゆかりは高校生の年齢でプリキュアに覚醒している。もし、プリキュアが『加齢で資格を自然喪失する』ものなら、自分たちよりも高い年齢で覚醒した後輩達の説明がつかないのだ。
「確かに……」
「ココたちの言うタイムフラワーが奇跡をもたらす代わりの対価が寿命の前借りなら、のぞみは変身に躊躇しない分、寿命を削ってしまう危険がある。それを考えてのことだろうけど、あの子はそれよりも、戦って死ぬ方がいいと思うでしょうね」
「そ、そんな…!?」
くるみは複雑であった。主であるココにこのことを知らせたいが、かれんのみならず、クレオパトラが動き、事前に手を打っていた事で、事実上はできなくなった事、更に、ココは善意でのぞみを止めようとするだろうが、のぞみはタイムフラワーと違う、1000年女王の持つ異能で変身を取り戻しているために、ほんのちょっとのすれ違いが『破局の原因』になりかねない。二人の恋を応援し続けていた身であるくるみは、自分たちの知り得ぬ第三者(しかも、超常的な存在)がこの事態に介入していた事に驚きを隠せなかった。更に、かれんは異世界の記憶を得たことで、自分の行動を先読みしている。くるみはかれんの指摘に言い返すこともできなくなり、ただ困惑するのみ。
「愛と勇気。それがあなた達の力を呼び覚ますきっかけとなるのです、美々野くるみ。いえ、妖精・ミルク」
「!!な、なんで、私がパルミエ人だと!?」
「私は1000年女王です。その程度の事は容易いものです」
超然たる威圧感を醸し出すクレオパトラ。クレオパトラは歴代の1000年女王の中では比較的に『超能力は弱めであるが、カリスマ性は随一である』特性を持つ。そのカリスマ性の前に圧倒される美々野くるみ(ミルク)であった。――
――一方、秋元こまち/キュアミント(大人)は自身が得た『別次元の記憶』の真偽を確かめるため、ヤマトの資料室に行き、その確認に勤しんでいた。すると、ヤマトの立場を反映し、他の部隊(ロンド・ベル含む)では閲覧に司令部の許可がいるものでも、容易に閲覧できた。これはヤマトが『英雄艦』の立場であるためであった――
「これが平行世界であった出来事……!」
宇宙戦艦ヤマトが関わった戦役で最も激しいものであった『ガトランティス戦役』。地球連邦軍の23世紀時点の主力艦隊の基礎もこの戦役に由来する。こまちが閲覧しているのは、地球連邦軍の艦隊がタイタン基地にいた『土方竜』(世界線によっては、ヤマトの最後の艦長になる)司令長官の号令で、外征できる全ての戦力を集中させている最中の場面だ。
「凄い……その直前に艦隊が壊滅してたとは思えない数だわ」
地球連邦軍の外征艦隊はその直前の時期には壊滅していたが、自動工場の鹵獲などの要因で短期間に物的再建に成功していた。その波動エンジン第一世代の艦隊はこれだけの威容を誇りながら、旗艦・アンドロメダを含む多数が還らず、多数の優良な軍人が戦死する事態に陥った。宇宙戦艦ヤマトの精鋭も八割方が犠牲となったが、テレサの献身的な攻撃で超巨大戦艦は消え去り、白色彗星帝国は滅び去った。その別働隊は行方不明として処理されたが、この世界に転移してしまい、任務を果たそうとしている。だが、23世紀世界と21世紀の地球では、地形にかなりの差異があるはずである。
「彼ら……白色彗星帝国にとっては『奴隷』にするつもりの星だから、地形の違いはどうでもいいことなの……?でも、既に統治者も主要な閣僚も死に絶えてるのに、軍部の生き残りだけが目的を果たそうとするなんて……。いくらなんでも……」
土星決戦のすさまじい光景はこまちを絶句させる。圧倒的数の彗星帝国と渡り合うため、地球連邦軍は空母機動部隊を用いての奇襲作戦を実行したり、拡散波動砲の連射を目論んだ。だが、拡散波動砲の『波動砲戦』は脆くも破綻し、敵の決戦兵器『火炎直撃砲』の前に、多くの艦艇が散る。アンドロメダも艦隊決戦には辛くも勝利するも、白色彗星帝国の本体の前に奮戦虚しくも散り、ヤマトと地上からの援軍であるスーパーロボット軍団が『刀折れ矢尽きる』まで戦う。超巨大戦艦の圧倒的パワーに次々と落伍。ヤマトに最後まで付き従っていたのは、当時の最新最強のスーパーロボであった『グレートマジンガー』、『ゲッターロボG』のみ。後は戦線を離脱してしまう有様。その二体のみは最後までヤマトを守り抜いたものの、ゲッターロボGは打撃力不足を露呈。後にシャインスパークが追加されるきっかけとなったという。
「これがのぞみさんの得た力の由来…‥。偉大な勇者『グレートマジンガー』……、不滅のマシン『ゲッターロボG』……」
その当時に最新最強を誇った二大スーパーロボはその後、地球連邦軍の不屈の精神の象徴と扱われていったこと、双方に量産計画が成立した旨の説明が入る。こまちはここで、大決戦で目撃した『真ゲッタードラゴン』の前身たるゲッターロボを知ることとなり、同時に戦闘用マジンガーの基礎になった『グレートマジンガー』の勇姿を目の当たりにしたのである。
「あの人(黒江)は言っていた。自分たちは一つの力に拘泥せずに、ひたすら力となる何かを求め、その研鑽を続けてきた。その成果の一つがスーパーロボの力を得ることだったと。のぞみさんは彼女ほど、転生から時間を経ていない……なら、やっぱり……デザリアム戦役が?」
大人こまちはまだ閲覧制限のある『デザリアム戦役』の項目にアクセスしてみる。ヤマトからのサーバーアクセスであれば、閲覧制限はない。これはヤマトはデザリアム戦役で『敵本星を叩いていた』のが理由だろう。すると、のぞみが地球本星での動乱の中心におり、ネオ・ジオン/ヌーベルエゥーゴの蜂起に当たっては、その当事者であったこと、その次元にいたりんがテロに巻き込まれたことで、のぞみはヌーベルエゥーゴの殲滅に躊躇が無くなったことも記されている。その当時に覚醒しかけていた『闇落ちしかけ』フォームの容姿も載っている。かつてのダークドリームに近いが、本来の色合いの片鱗が残っているなどの違いがあった。強い怒りがトリガーであった変化であったためか、本人の理性が薄れるなどのデメリットにより、一時的な発現に留まった旨の説明がなされている。そして、その戦いで、のぞみがたどりついた究極の形態『エターニティドリーム』のこともちゃんと記録されている。
「これがヤマトのいる世界での、のぞみさんの究極の姿……?昔のシャイニングドリームがベースだけど……翼の形がより滑らかで、神々しくなっているのね……。これがエターニティ……ドリーム。……アレキサンドライトスタイルのキュアミラクルに優勢に事を運べるなんて……」
シャイニングドリームを基本にしつつも、射手座の神聖衣のような神々しさを感じさせるそのパワーアップはのぞみA独自の覚醒形態であった。更に。
『我が拳よ!光の矢となり、眼前の敵を討て!!アトミックサンダーボルト!!』
覚醒直後に、アトミックサンダーボルトを放ち、周囲を驚かせる一幕までがアーカイブにされている。アトミックサンダーボルトは黒江も好んで使用していた『乱打系闘技の一つの究極系』にして、電気属性の技である。当然、プリキュア本来の技ではない。だが、その威力はアイオロス、黒江、ひいては後々の星矢に至るまでが証明済みである。
「雷を纏った拳の乱打……。なんて技なの……。シンプルだけども、光弾の一つ一つが……すさまじい威力なのね」
アトミックサンダーボルトは黒江曰く、『アイオロスの普段遣いであったが、触りの技にすぎない』との事だが、かのペガサス流星拳の上位互換である。おそらく、エターニティへの覚醒と同時に『ZEROが何かの贈り物でもしたのだろう』と、黒江は推測している。極めつけはこれであった。
『─束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流……!!これが『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』だぁーーー!!』
上官である黒江同様、のぞみも聖剣の霊格を具象化できる特性を持ったため、アルトリア・ペンドラゴン(聖剣の持ち主の一人で、史実でいう『アーサー王』)は『貴方方は……何故、聖剣をバーゲンセールのようにお持ちになられるのですかーーー!?』と拗ねたという。仕方がないが、アテナは聖剣を与える権能を有する上、城戸沙織は1990年代以降の人間らしく『意外に手段を問わない』性分である。また、代々に渡って継承されてきた聖剣は紫龍(次代の天秤座の黄金聖闘士)が継承したので、山羊座系の専売特許であった聖剣が次代の山羊座に継承されない事を避けたかったのだろう)。
「かれんが見たら、泡を吹くかもしれないわね…。エクスカリバーだもの……。しかも、現役時代は剣に縁がなかったはずの……のぞみさんが……。そういえば、昔……」
こまちは現役時代の前期に、かれんが『プリキュアで最初に剣戟をした』ことをふと思い出す。とはいえ、チームの中心戦士が剣を取った最初の例はのぞみだ。それに、転生後の環境的に、のぞみは当代最高級の剣士の教えが受けられる立場であるし、自分は大決戦で黒江の示現流や飛天御剣流などの混合による『実戦剣術』を目の当たりにしてきた記憶がある。
「かれん、あの時(大決戦。彼女は記憶は得たが、自分で経験したわけではない)は後で落ち込んでたわね……。すごい剣術が目白押しで披露されていったから…」
ヒーロー達は多くが剣の達人であるし、大決戦で『成り代わっていた』黒江と智子は当代随一と謳われるほどの使い手であった。更に黒江が(ネタバレしたとはいえ)やらかしまくったため、剣にある程度の心得があったかれんは『上には上がいる』というカルチャーショックを受けた。それが『魔女の世界にいる水無月かれん』に強い影響を与えたのは言うまでもないだろう。
「向こうのかれんがムキになったの、わかるかも……。若い頃は……」
若かりし頃、かれんは病気にかかったミルクを守るために孤軍奮闘、最終的に馬にまたがっての剣戟に至った。その経緯があるからこそ、剣術に自信があったのだろう。大決戦はその自信を木っ端微塵に打ち砕いたと言っていい。若かりし頃のかれんの孤軍奮闘を思い出したのか、懐かしい気持ちになった。それと同時に。
「のぞみさんは……あちらの世界の記憶を得たことで、戦いの道を選ぶ。でも、それはココさんとぶつかってしまう。ココさんは……異界の人。地球人、とりわけ日本人の武士の頃からの死生観とは食い違っているはず。それは二人の仲が壊れるきっかけになりえる……!」
こまちは地球連邦軍の勇士たちの自己犠牲精神の発露の場面を見た瞬間、ふとひらめいた。それはかれんとほぼ同じ結論である。それはプリキュアの初期世代は平成初期の生まれであり、昭和の残り香の残る時期に幼少期を過ごした故の『昭和の名残り』の倫理観が残る。のぞみが有事の際に『自分の私生活よりも、有事の終息に情熱を燃やす』性分なのは、元々、私生活がダメダメで、自分に自信を持てなかった故の『戦士となることで、始めて輝けた』という自覚によるもの。
(トワさんから聞いた『はるかさんの心が折れた唯一のケース』……たとえ、ココさんのいうことでも……のぞみさんは……。それがのぞみさんの青春であり、拠り所だものね……)
こまちも、かれんと同じ結論に達した。こちらは紅城トワから『春野はるかも、一回だけ心が折れた事がある』と聞いていたことも付随して思い出していた。プリキュアである事。ある意味、それがのぞみの青春そのものであるため、ココがもし、のぞみの現時点の事情を知らずに会ってしまえば、二人の破局もありえない話ではない。二人に認識の齟齬があれば、えらいことになる。こまちはその日、居ても立ってもいられなくなり、かれんに相談するが、かれんはクレオパトラに頼み込む形で、シロップにも一芝居打ってもらうような策を実行に移していた。これはココとナッツを今回の動乱に関わらせないため、ひいてはのぞみ(大人)の変容を二人に説明するための方策を立てるための時間稼ぎのためであった。
――自分たちはタイムフラワーで変身しているわけではない。その事をクレオパトラが説明したとしても、キュアローズガーデンにそれが生えている以上、ナッツはそれを『話半分』にしか聞いていない可能性があるし、ココはテンパってしまうと、周りが見えなくなってしまう。それをよく理解していたかれん、こまちは『のぞみの青春時代からの恋愛』を守り通すため、シロップを強引に巻き込む形で、彼に一芝居を打たせる。しばらく『パルミエ王国に行けない』という風に装ってもらうように画策したのである。これは動乱に二人を関わらせないための苦渋の決断であり、のぞみも『軍人をしている姿』を想い人には見せたくないだろうとの、年長組の気づかいであった――