ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オトナプリキュアの世界編です。


第五百七十八話「動乱と一つの可能性」

――のぞみAは休暇を終えた後、21世紀の新野比家に顔を出したところ、ナリタブライアンに取引を持ちかけられ、それを了承。ナリタブライアンはのぞみAの体を借り、闘争心を全盛期の状態に戻すための戦いに『キュアドリーム』の姿と名を借りて赴き、のぞみはナリタブライアンとして、ウマ娘世界に身を置いたのである。生徒会長であったシンボリルドルフも了承済みであり、のぞみは(周囲のサポート込みであるが)ウマ娘として、高校生活をエンジョイしていた。大人として成長した世界線の彼女が白色彗星帝国の残党との戦闘に従事しているのとは対照的であった。二人はマジンガーZEROの持つ力により、存在が同一化しており、『どこにもいるし、どこにもいない』という『シュレディンガーの猫のような状態』と化していた。記憶はもちろん、能力も共通化しており、大人のぞみは図らずも、現役時代より遥かに強大な力を得た事になる。ノワールフォームもその産物であった――

 

 

 

 

 

――道中――

 

「のぞみちゃん。どうして、別の世界の自分自身と同一人物みたいに振る舞うの?」

 

「そのほうが戦う上での大義名分を得られるからさ。大人になると、子供時代の論理じゃ動けなくなるからね。それに、あたしは教師だよ?それが昔はプリキュアだったからって、戦いにホイホイ参加したら、どこかからのクレームでクビにされる。だけど、幸い、プリキュアになってれば、別人って事になる。現役時代のあたしを覚えてる人以外はね。それに、向こうの自分と記憶が共有された状態になったから、めんどい説明はいらないし」

 

ゆい(キュアプレシャス)に答えるのぞみ(キュアドリーム)。戦う上で、キュアドリームとして働いたほうが『事後に波風を立てない』し、地球連邦が偽装工作をしてくれるので、表向きは『夢原のぞみは国連のボランティアに志願して、被災地の支援をしていた』と取り繕われる。地球連邦が国連の後身である故の偽装工作である。これは他のメンバーも同様で、プリキュア5の面々が『魔女の世界』に同位体がおり、皆が便宜上の理由で地球連邦軍の軍籍を与えられていた故に可能な芸当である。

 

「今回の事が終わったら?」

 

「本来、起こるはずだった出来事が起こるだけさ。本当はその事件で、あたしらは引退するはずだったと思う」

 

オトナプリキュアに至る世界線では、26歳でプリキュアを完全に引退するはずであったが、地球そのものの存亡の危機、彼女らを求める声がそれを否定したようなものであった。要するに、地球の人々の意志が彼女らを戦士に戻らせたと思っていいだろう。

 

「それ以前の問題だけどね、今は」

 

地球連邦軍の介入で、どうにかいきなりの滅亡は免れたが、地球連邦の力なくば、破滅ミサイル(惑星破壊プロトンミサイルの一種)の一発で地球が消し飛んでいた可能性が大きい。ましてや、月軌道より遠いところから打ち込まれれば、月より遠い場所の探知の手段もない21世紀の地球は終わりである。オトナプリキュアの世界線でも幸運な事に、『5の後続のプリキュア達が順当に出現していった』世界線であるため、本当なら、のぞみ達が戦う必要はない。だが、あえてそうしたのである。

 

「台湾のどこに降りるの」

 

「台湾の行政府と提督が話して、空港に何隻か降ろすそうな。台湾は九州くらいしかないけど、ある程度の陸戦兵器は降ろさないといけないからね」

 

波動エンジンの戦艦は空間圧縮技術で内部容積を稼いでいる。ガイアの同規模艦艇よりも優れている点はそこがまず挙げられる。再生産された61式戦車も一定数が(デストロイドの補助で)積まれており、白色彗星帝国の戦車に対抗する上で『安価な手段』となる。既に台湾の各地では、空挺降下したガトランティスの機甲師団が台湾陸軍と戦闘中であり、(当時の時点で旧式の車両も多いため)火砲の性能差により、押されている(虎の子のM1戦車が温存されたため)。現地軍は航空支援で持っているようなところがあった。状況は予想以上の悪さと言っていい。

 

「少佐、山南提督からの伝言だ。アナハイム・エレクトロニクスが、君にデルタガンダム系を回すそうだ」

 

ネメシスの艦長からの通達が伝えられる。

 

「はぁ。自分は扶桑で、テストパイロットの経験はありますが……デルタガンダムって、百式の間違いでは?」

 

「確かにそうだが、デルタプラスが開発された後にTMSとして開発が再開されていたのだ。X系は過剰火力という意見が議会であってな、それでアナハイム・エレクトロニクスが送ってきた。一度、使ってみてくれ」

 

「ハッ……。……参った、仕事が増えたよ」

 

「仕事?」

 

「ちょうどいいから、新型のガンダムのテストやれって」

 

「あんた、スーパーロボットだとか、ガンダムに乗れって……大変ね」

 

「純正のガンダムタイプはエース級しか乗れないからね。それも落とされる心配のない、ね」

 

ガンダムタイプはアナハイム・エレクトロニクス内部でも、その存在を疎んじる風潮もあったが、地球連邦の人類生存権確保の意志のイコンとして再確立させる流れとなり、ガンダムタイプは開発が再度の活発化を見た。その流れで生まれたTMSの一つが『ガンダムデルタアンス』であった。原型機はかのガンダムデルタカイ。同機の系統は元ティターンズ系派閥主導で開発されていたが、ナイトロシステムがサイコガンダムの系統のサイコミュを祖にしている事が露見し、テストが中止となった。だが、デルタカイの機体設計そのものは評価されており、ナイトロシステムを排除した仕様がアナハイム・エレクトロニクスの手で開発され、補給として輸送されてきたのである。また、キュアドリームの言うように、一年戦争でガンダムタイプを『ちょっと腕のいい』程度のパイロットに回したら、あえなく落とされた事例があったため、ガンダムタイプは8割方が『時代を変えられる力を持つ者』に与えられるワンオフ機としてのポジションで安定していた。実際に、ガンダムタイプは当代の最高性能を目指しているため、操縦性が犠牲になる傾向が続いていたからだ。

 

(ま、扶桑海軍航空の技術士官連中よりはマシだけど。連中、零戦ん時は『パイロットを守るために速力や上昇力、空戦性能を上げて攻撃を最大の防御にした』と言ったら、日本の連中に『鬼の首を取ったように否定された』んで、一時は仕事しなくなったって、坂本先輩が愚痴ってたな。まぁ、あれは先輩みたいな古参が老害化してたって話だけど)

 

のぞみも『坂本が零式ストライカーの後継機開発で格闘性能にこだわっていた』逸話は伝え聞いている。1942年頃だという。おそらくは史実の烈風の事を知っていて、敢えてそうしたのだろうが、烈風の立場は無くなったも同然であった。実際、坂本のような昔気質の者たちの内、海軍系の魔女は史実通りに『格闘戦重視』であり、扶桑の環境は欧州流の機体を必要としない。ダイ・アナザー・デイでは、その傾向が思わぬ方向で作用。長距離侵攻が当たり前となったため、欧州用の『航続距離を切り詰めた機体』は逆に不評であり、(太平洋戦線を見据えて)1950~3000キロ前後の航続距離が求められた。そのため、雷電はそこで不評であり、紫電改が甲戦にも転用された。海軍航空が独自性を保っていた最後の時代のことだ。

 

「でも、お台場のあれの実物が本当にあって、あんたがそれに乗るなんて」

 

ミルキィローズが言う。

 

「それの親戚だけどね。彼らの機体は初代ガンダムから始まったから。可変機はZガンダムだね」

 

「拓海がプラモ持ってたなぁ。どうして乗れるの?」

 

「向こうのあたしが訓練受けてたからさ。技能がインストールされたのは、乗り物の運転技術も入るんだ」

 

「へ~」

 

のぞみAがニュータイプ化していた事の反映か、大人のぞみも空間認識能力が同等にまで向上しており、MSの操縦技能も同様になっている。のぞみAが黒江らの意向で、なし崩し的にMSなどのパイロットをさせられていた事がこの戦いで間接的に大人のぞみを助けたのである。

 

「これでも、エース級の自負あるからね」

 

「いいわよね、あんたは。ガンダムとか乗れて」

 

「あ、そうだ。くるみは戦車乗りだからねぇ、向こうだと」

 

「はぁ!?」

 

「そう言われてもねぇ。実際にそうだし」

 

お互いの転生先の都合もあり、A世界の美々野くるみは『カエサル』として、普段は戦車道世界におり、有事にのみ召集されるという体裁で軍籍を得ている事が伝えられる。変身後は生前と同じ姿だが、性格は明朗快活になっており、口調も現役時代とはまったく変わっている。

 

「あとで写真見せるよ。地球人に転生したし」

 

「!?ど、どういうことよ!?」

 

「ミルキィローズに変身する能力を引き継いで、地球人に生まれ変わったって事。普段は美々野くるみとは別の姿で暮らしてるよ」

 

戦車道世界にはプリキュア化能力を維持したまま転生した者が多く、しかも、多くが戦車道部の幹部級である。現役時代の口調、振る舞いを意識的に使える者もおり、プラウダ高校のノンナがそれに当たる。また、その逆に基礎的な人格がプリキュア時代のものに変わったケースとしては、逸見エリカ(相田マナ)が該当する。逸見エリカは基礎人格が相田マナのそれになったため、魔女の世界に通う形になっており、戦車道世界の転生者としては、ユニ=ノンナと並び、戦いに深く関与している。

 

「はぁ!?わけわかんないわよ!」

 

「転生したら、普通は生前の姿や記憶は引き継がないけど、あたし達はプリキュアだったから、きっかけがあれば、プリキュア化の能力が復活して、生前の容姿に戻る事がある。向こうのあたしはそのケースだったわけ」

 

のぞみAはまさに、そのケースの該当者である。もっとも、大人のぞみも変身能力を喪失していたので、今回の出来事で戦士に立ち還っている。また、能力のみならず、記憶も共有する関係になっていたので、本人の申告以外に見分ける手段がない。(大人のぞみも肉体が10代に戻ったので)

 

「もっとも、あたしも若返ったんだけどね」

 

大人のぞみも素の容姿が17歳前後に戻っているので、髪型を成人時のハーフアップのセミロングから、高校時代のハーフツインテールに戻している。そのため、傍から見れば、10代の少女で通る。

 

「それ、どういう理屈よ!?」

 

「さー?1000年女王のサービスじゃないかな?肉体的には、22~26あたりが最盛期(体力・気力が最も充実している時期)のはずだし。プリキュアとしての姿は昔と同じだから、その帳尻合わせかもね」

 

17歳前後は『子供ではないが、完全には大人でもない』微妙な時期である。プリキュア化時と素とで落差が大きくないので、1000年女王らもその年齢に肉体を若返らせ、固定したのだろう。本来の年齢との容貌の差異がさほどないので、教諭の仕事も続けられる。(10代の瑞々しい肌に戻っているくらいの違いがある程度)。もっとも、一度でも、プリキュアであった者は容貌が元から衰えにくい(肉体が強く活性化されてきたため、常人より遥かに若さを保てるのだ)が。

 

「お、沖縄本島を過ぎたな」

 

眼下に沖縄本島が見える。白色彗星帝国の攻撃を受け、かなりの打撃を被ったが、復旧作業が始まっているという。

 

「沖縄、どうなの」

 

「今回のことで、かなり防空意識が高まったと思うよ。とはいえ、白色彗星帝国は星ごと破壊できる装備あるから、シェルターを今さら作ってもなぁって思うけど、無いよりはマシか」

 

沖縄県民も皮肉な事に、白色彗星帝国の情け容赦ない攻撃で『地下シェルターの必要性』を悟ったが、その時には既に攻撃を受けていたのである。これは日本全土に共通することだが、日本人は『起こってしまわないと、何事も認めたがらない』ように。一文字隼人(仮面ライダー二号)はそう皮肉ったという。過去を見ても、黒船来航、ベレンコ中尉亡命事件など、枚挙に暇がない。(ただし、起こってからの対処は早い部類であるが)日本全土も攻撃を受けたが、自衛隊と在日米軍の奮戦、地球連邦の介入で戦局は好転しつつある。とはいえ、那覇市も大被害を被っているし、住民も虐殺されている。

 

 

「たぶん、今回のことで地下シェルターが整備されると思うよ。まったく……」

 

のぞみはまさかの備えを許さなかった世間が『掌を返したように』自衛隊の微力と地下シェルターのなさを叩いている様子に呆れているようだ。とはいえ、基地に残置してある旧式装備も駆り出して戦った部隊も存在するし、住民の盾となり、散った部隊も多いという。安全の確保まで、地球連邦軍の駐留は続くだろう。また、自衛隊と在日米軍の抑止力低下により、比較的に軍事力の余裕がある中国が事後に野心を顕にする事もあり得る。

 

「それに、今回のことで軍事力を温存してる中国が事を起こすかもしれないしね。そうならないようにしないと」

 

「まさか」

 

「まさかってのがあるのが、世の常だよ」

 

地球連邦の関係者もそれは考えており、事後にも一定の兵力を監視団として置くつもりである。野心のある国が軍事力を温存したままなら、コズミック・イラ世界のような事態になるのは想像できるからだ。地球連邦の軍事力を見せつけ、宇宙の侵略者相手には『20世紀型の核兵器などは線香花火も同然』という事を理解させなくてはならない。

 

「中国は向こうの世界じゃ、落ちぶれてるからね。最盛期に比べれば。そのきっかけが世界大戦の再来だから、こっちの中国がロシアに代わる、東側世界の盟主になる千載一遇の機会って勘違いして、今回の動乱が終わった直後に戦争を起こすかもしれない。それは考えておかないと。そうならないのが一番だけど」

 

実際に白色彗星帝国の攻撃を受けた地域は地球連邦の重要地域をなぞっているため、情報収集の当時には落ちぶれていた、旧東側世界の諸国は比較的に被害を受けていない。ただし、地球連邦の議会が置かれていたアフリカ地域などはメタメタに攻撃されている。統合戦争で特に被害を受け、一年戦争後はジオン残党が跳梁跋扈していた中国は『落ちぶれている』ので、軍事的要所の重慶や成都以外はそれほど攻撃を受けていない。

 

「そんな事……」

 

「ありえなくはないよ。連邦の目がなくなったら、この世界の国々は第三次世界大戦を起こしかねない。だから、連邦は兵力を幾分かは置いていくだろうね」

 

「ありえるの?」

 

「東側は西側の築いた秩序の崩壊を望んでるからね。冷戦の終わりで散々に屈辱を味わった以上、機会を窺ってるのは目に見えてる。まぁ、今回のことで、核兵器の存在意義はだいぶ揺らいだけど」

 

白色彗星帝国の艦艇は普通に20世紀型の核ミサイルを『旧式科学の閃光花火』と扱えるほどに耐性があるが、21世紀後半以降の純粋水爆などの次世代型には普通に耐えられない。そのため、地球連邦はその世代の核兵器を反応兵器の実用化まで一線に配備していたし、本土決戦の際には使われる見込みであった。また、地球連邦は当然ながら、反応兵器を普通に常備しており、ヤマト型戦艦も魚雷型を持っているのは有名である。

 

「連邦は反物質の対消滅反応の兵器を核ミサイルの代わりに持ってるけど、意外に効果が無くてね」

 

反応兵器は純粋な威力で核兵器を凌ぐものの、宇宙時代には意外に効果がない敵が多い。光子魚雷も同様なので、地球連邦は波動砲やマクロスキャノンを決戦兵器に添えたわけだ。

 

「だから、波動砲の類に行き着いたそうな。もちろん、今回は戦場が宇宙に移ったら、撃ちまくるって」

 

「波動砲って、星がぶっ飛ぶよね?」

 

「星に当たればね。もっとも、今回は拡散型が主力だけど」

 

「え、波動砲って、昔のアニメだと、直線ののごん太ビームだよね」

 

「拡散型があるんだよ」

 

「どういうのなの?」

 

「うーん。ごん太のビームが途中で散弾銃みたいに分かれて、その分かれたビームがあらゆる方向から敵を貫くって形だね」

 

拡散波動砲は要塞への脆弱性が露呈した後には『艦隊決戦用波動砲』とされ、配備が継続された。これはしゅんらんの従事した『コズミック・イラの平定戦』で真価を発揮。しゅんらんの放った拡散波動砲が一発でプラントの主力艦隊を半壊以上に追い込み、艦隊規模の一斉射撃では『地球連合軍の艦隊が消し飛ぶ』という絶大な威力を見せている。このように、艦隊戦で使う分には有効な波動砲であるが、拡散したエネルギー弾の威力不足も指摘済みであり、収束波動砲の改良である『拡大波動砲』が既にテスト段階にあった。

 

「すっごーい」

 

「ま、向こうの世界じゃ、波動砲も色々増えるからね。収束と拡散は基本タイプになって、それから性能特性を変えた奴が試行錯誤中なんだ」

 

このように、アースでの波動砲は『タキオン粒子砲』というべき代物であるため、サレザーイスカンダルの条約にも抵触しないが、ガイアの古代はアンドロメダ級を見て血気に逸った論文を書いてしまい、政治問題にしてしまうという大ポカをやらかし、アースの古代自身がその尻拭いを行う羽目になるなど、アースの古代(第一世代のクルーを殆ど死なせた経験を持つ)を困らせている。

 

(そういえば、ガイアにいた古代艦長代理はこっちの古代さんと違って、感情的だって言うな。ゆりさんが驚いてたっけ。同一人物でも、環境の差で違いが出てくるっていう…。若さで逸りやすいのかな)

 

アースの古代は白色彗星帝国との戦いで多くを失ったためか、輸送船の護衛任務にしばらく従事した事があり、その際には予備役に退くなど、往時の面影がだいぶ薄れ、無精髭も生やす有様だったという。しかし、ヤマトに新世代クルーが配置されるとやる気が戻り、ヒゲも剃った上で、艦長代理に復帰している。また、一人称も俺から私に変遷し、紅茶を愛飲するようになるなど、以前よりぐっと落ち着いた様子を見せている。のぞみはその時の姿しか見た事がないので、若き日の血気盛んな姿は意外な感じがするのである。また、古代進であるので、当然ながら、戦闘機乗りである。アース古代は旧式のコスモ・ゼロでも、ガルマン・ガミラスの新鋭機を圧倒する手練であり、ガイア古代と対照的に『滅多に被弾しない』腕前である。そのため、一時的にヤマトに乗艦したコスモタイガー乗りのホープであった『坂本茂』を『青二才』扱いしたり、コスモタイガー隊長はより見込みのあった加藤四郎に託すなど、意外と人事評価は厳し目だ。

 

「ところで、ドリーム。ヤマトにあった戦闘機を整備班に見させてたわね?」

 

「自分用にセッティングしてもらうためさ。乗る選択肢は多いほうがいいし、ヤマトのコスモタイガーは他の隊のヤツより程度のいい個体だからね。真田さんとトチローさんが小隊長以上だと、チューンアップしてくれるし」

 

この頃になると、ガイアとアースの双方の航空産業の交流が盛んになり、コスモタイガーと基本設計は共通しているが、新機軸を取り入れた新機種が作られていた。コスモパルサーとは別枠で、である。そのうち、補給母艦『飛鳥』や戦闘空母『伊勢』と『日向』に、旧式化していたが、大気圏内での需要が維持されるブラックタイガーに代わって、後継機として載せられた『コスモパイソン』がそれで、アースとガイアの共通採用の試験戦闘機として配備されている。なお、正式な後継機のコスモパルサーの制式配備には、相当に時間を要するということなためか、以前のコンペで落選した『コスモミラージュ』の一部機能を取り入れたコスモタイガーの派生モデル『ストライクタイガー』、『ミラージュタイガー』(コズミック・イラ由来の技術が使われた)も試作段階のものが載せられていた。こうして、コスモタイガーⅡの設計が拡張性を多分に残していた故の派生改造モデルが山のように制作されていくのだが、その流れと一線を画すのが、別ラインの『コスモパイソン』である。

 

「あんた、仕事とはいえ、とっかえひっかえ?」

 

「テストパイロットしてた時期もあるから、違うのを使うの多くてさ。ま、連邦の機体はインターフェースが共通だから、まだ楽なほうさ。昔のジオンからの鹵獲機は難しかったな。後期じゃないと、インターフェースがバラバラで、スロットルも、メーカーごとに取り扱い違ってたし」

 

一年戦争期のジオン機は後期の一部機種以外はインターフェースが統一されていなかったので、のぞみもテスト運転で苦労した事がある。中期以前の制作では、メーカーごとに操縦法も異なる有様で、旧日本軍の失敗をなぞるような有様であったのがジオン軍だ。統合整備計画は遅きに失していたのだ。

 

「統合整備計画程度に揃ってたら文句無いんだけどね。連邦もジオンも、末期はインターフェースが同じレイアウトに進化してたし」

 

「そいや、のぞみちゃん。ダイ・アナザー・デイの後、ティターンズの駐屯地からぶんどったジム・クゥエルとかに乗った事あったね」

 

ミラクルが指摘する。

 

「うん。コックピットを換装してない余剰機だったけど、乗りにくいって印象はなかったよ。旧ジオンの残党くらいなら、あれでも充分だったっていうしさ」

 

「まぁ、リニアシートは元々、耐えられるGを拡大させるための措置だったしね。パネル式のコックピットを好む人もいるから」

 

「あ、思い出したけど、リック・ディアスも一部の部隊じゃ、まだ現役だって」

 

「嘘ぉーん」

 

「あれ、見かけによらずに動けるから、ジム系より好むパイロット多いんだって。ドムに近い操作感らしいけど」

 

「へー、あの太っちょがねぇ」

 

ミラクルはこの言いようだが、リック・ディアスはドムの後継機種の一つといえる。原型機のリック・ドムにテスト以外は乗らなかったシャア・アズナブルも惚れ込み、アムロもグリプス戦役時に搭乗するなど、ドム系の血を持つMSとしては大成功といっていい名機である。

 

「それって、ヤマトの格納庫にあった、あの太っちょな機体の事?」

 

「うん。連邦の内戦の時期の設計だけど、評判よかったんだって。現用機の数が足りないからって、倉庫から引っ張り出してしたらしいけど」

 

リック・ディアスは近代化改修が施された個体が現役に復帰していた。ジェガンすらも型落ちモデル扱いの時代であるが、現用機の数が不足した都合上、名機であるリック・ディアスにスポットが当てられ、残存機の少なからずが今回の戦役に参戦していた。

 

「倉庫から?それって動くの?」

 

「各部の修繕はしてるし、変えられる部品は現用品に変えてあるよ。まぁ、数合わせっちゃ数合わせだけど」

 

デザリアム戦役も終わった後では、リック・ディアスは『数合わせの旧式機』という認識だが、ボールのような戦闘ポッドよりよほどマシだという判断から、駆り出された。元々、ジオンの血が入る同機だが、ジオン系のパイロットも多く再就職した後であるので、ドムの傍流である同機は好まれ、アクシズ純正の『ドライセン』よりも『ドムに近い』と評判である(ドライセンは採用時の武装がドム系からかけ離れていたためだろう)。ジオン系組織の多くが活動に終止符を打っていた時期であったので、一時よりはモノアイ使用機への偏見は薄れてきており、数合わせという名目でリック・ディアスが持ち出されたわけだ。リック・ディアスは士官用であった都合上、意外に残存機は多く、軍の管理下では、派生型込みで数百機程度は残っていたという。どの程度が復帰させられたかは不明だが、流石に民間に払い下げした機体をまた接収するわけにはいかず、無人機のモビルドールが政治的制約で使えない故に『旧型でもいいから、有人機をかき集める』方向の施策の結果であった。ある意味、地球連邦軍の白色彗星帝国残党に対しての物量の劣勢の証明とも言える。とはいえ、『一年戦争の量産機を使うよりは、遥かにマシ』というのが連邦軍統合参謀本部の判断であろう。曲がりなりにも、一時はガンダムの後継ぎと目されたほどのマシン(開発当時には、ガンマガンダムと呼ばれていた)なのだから。

 

「古い機種だけど、性能ポテンシャルは保証済みだから、悪くないよ」

 

と、リック・ディアスを高く評価しているようだ。実際、グリプス戦役以降の機体は一年戦争当時の高機動特化型を時代遅れにするほどの機動力が普及型の量産機でも普通にある。リック・ディアスはそのことを最初に証明した機体である。連邦もそこを踏まえて選んだと思われ、旧式機とされても、意外な再評価の機会がある。リック・ディアスはその幸運に肖れたのである……。

 

 

 

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