ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オトナプリキュア世界編です。


第五百八十八話「大人のぞみの持つ闇、和実ゆいの決意」

――一年戦争は野比家にも浅からぬ傷を残した。野比セワシは後半生、オーストラリア在住の次男一家が都市ごと消し飛んだ事により、反ジオンに転じ、ティターンズにこそ与しなかったものの、財団に反ジオンの姿勢を取らせていた。その姿勢もノビタダへの代替わりで終わりを告げた。その時期にネオ・ジオンが消滅したからで、その頃から、ジオン系スペースノイドの保護と移民星への移住の斡旋を事業として展開し始める。連邦では『ジオンを根絶やしにする事への論調に(シドニーやダブリンなどの一件から)一定の支持が未だにあるからだ。また、ジオニストの言う圧政の根拠となるコロニーや月面都市の維持費も、生命維持管理装置の技術革新で『タダ同然にまで低下した』事、スペースコロニーの『脆さ』が大衆に知れ渡った事により、デザリアム戦役以降は移民星への移住が大規模化。スペースコロニーは(技術的に最も発達した『ネオコロニー』以外は)一時的な仮住まいという認識に変わり始め、移民星から別の開拓星にいくことも本格的に始まった。宇宙怪獣が天の川銀河から駆逐された事が契機となった形であった。サイド3を改組した移民船団は銀河系の周りにある伴銀河を目的地にする予定で組織された――

 

 

 

 

 

 

 

――そんなわけで、コズミック・イラ歴の世界の持っていた技術の一部は未来世界に評価され、未来世界の地球の復興や医療技術の発展などに使われた。その一環で製造されたのが『フリーダムガンダムのコピー機』であった。コズミック・イラ歴のMSは異常な発展の仕方であったが、理由の一つが『ルナツーが転移していた時期に、部分的に技術情報を得た』勢力が『得られた物の再現を試みた』からであったという。わずか数年で未来世界が10年単位の時間(史実より遥かに短いが)で達した進化を成し遂げようとしたので、MSが型落ちを数ヶ月で起こすのは当たり前となってしまった。これは第一次世界大戦中の航空機ほどの進歩速度であった。それを政治的に抑止しようと試みたのが『ユニウス条約』の一つの目的であった。だが、地球連邦との接触で、オーブにミリタリーバランスが大きく傾く事になった。オーブに地球連邦の優れた技術が一挙に流れたからである。プラントは二度の大戦で多大な損害を被った(軍務についていた青壮年層が多数戦死した)ため、『数十年は戦争を起こせない』と強硬派に嘆かれるほどの大損害を被った。二次大戦で宇宙軍の軍備がほぼ壊滅したからである。地球連合軍に至っては、ほぼ全滅の有様であった。オーブは残された『有力国』として、世界の安全保障を担う事になったわけだ。一方で地上の軍備は健在であったので、地球連合軍はブルーコスモス派と非ブルーコスモス派とが内部分裂を起こし、内戦に突入。地球連邦がオーブを介しての介入に舵を切ったのは、そんな惨状が理由であった――

 

 

 

 

 

 

 

――そんなコズミック・イラの世界の人類をどうにかして『存続させる』ため、オーブ首長国連邦を動かし、軍事力が壊滅した東アジア共和国に、日本列島を拠点として提供させた地球連邦軍はコズミック・イラ方面軍を結成。コズミック・イラの世界の新たな安全保障機構『コンパス』に基幹戦力を供出する運びとなり、その威光を使う形で介入行動を行う方向にシフト。キラ・ヤマト達もその組織に組み込まれる形で加入していた。のぞみはオーブに示威外交をしたい地球連邦政府の意向もあり、『エースとしての箔付け』としての派遣が模索されていたが、本人は『プリキュア5の世界で戦闘中』と軍部から通達が来たので、議論が棚上げされた。だが、『オトナプリキュアの世界』の発見で、その世界線ののぞみに代行させるという案が通り、本人も(生活費工面の必要もあり)承諾したために正式に通達された。機体がフリーダムガンダムになったのは、キラ・ヤマトの居場所を欺瞞するためのデコイとしての役目を期待されたからである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――のぞみAが休暇中に調整したフリーダムガンダムは彼女の休暇が完了した後、大人のぞみのもとに送られた。大人のぞみにパイロット技能が引き継がれているが故に可能な芸当であった。本人は台湾上空を飛行中であったが、そこめがけて、輸送船から機体を射出し、空中で受領させるという無茶な送り方であったが、大人のぞみは幸い、ノワールフォームの状態であったため、空中でフリーダムを受領。即座に起動させた――

 

「フェイズシフト、開始っと」

 

機体のコンソールを操作し、機体を起動させる。フェイズシフトは二次・最終装甲部や関節部のみの使用だが、外観上からはその判別はつかない。機体の外見は完全に初代フリーダムそのものだが、肩に地球連邦軍所属である事を示すマーキングがあり、ロンド・ベルのマークが入っている。書類上、ロンド・ベルからの戦力供出の扱いであるからだ。ある意味、コロニー国家が設計したガンダムが地球側に再生されて使用されるという意味では、皮肉めいた構図であった。なお、地球連邦軍本来の星碇のものではなく、ガイアのものに近いマークになっているが、これはデザリアム戦役の後、アースとガイアの連邦軍に統合の予定が立ち、その外征軍『アースフリート』(アースの太陽系連合艦隊とガイアの連邦防衛艦隊の統合)として新生する故の変更であった。

 

 

「うわーお。フリーダムを本当にコピーしたんだ、連邦」

 

「嘘、巨大ロボが普通に飛んでる……」

 

「うわぁ~。かっこいい~…」

 

「のぞみ、あんたがなんで、ガンダムなのよ!こっちはナイトメアフレームだってのに!」」

 

『仕事の都合だって。囮役やらされちゃうし、こいつで』

 

見得を切るフリーダムに、一同は感想を述べる。ミラクルは連邦の『道楽』に関心し、大人ミルキィローズは圧倒され、キュアプレシャスは見とれ、紅蓮聖天八極式の予備機を充てられた大人キュアメロディはぶーたれた。自分はナイトメアフレームだからだろう。とはいえ、シャーリーの性格の残るAと違い、大人キュアメロディは女性言葉が多めの口調である。

 

『あんただって、最高性能のナイトメアフレームじゃん。動力とか細かいところ以外は完全再現の。ある意味、こっちより小回り効くじゃん』

 

「それはそうだけど、サイズ的に火力が心許ないなぁ。輻射波動の範囲と出力は問題ないんだけどさ……」

 

『その辺は工夫すんだね。あたしは火力でとにかく落としまくるのが設計目的の機体だし』

 

「でも、昔見たアニメだと、専用機だったような…」

 

『初代フリーダムの段階はそうじゃない。専用機は後継機種のストライクフリーダムからだよ。だから、コピーされたわけ』

 

「そうだっけ…あれ、2005年くらいだから、結構覚えてないな」

 

「二人共……あたし、その頃は生まれてない……」

 

『……あ、プレシャスはあたしら(5)の現役時代の生まれだっけ』

 

「嘘、そんな若いの!?」

 

「う、うん……」

 

「のわ~~!嘘でしょ~!?」

 

ガビーンと言わんばかりの悲痛な声のキュアメロディ。彼女の現役時代は2011年。その当時に14歳であったので、90年代後半の生まれということになるからだろう。

 

『いいじゃん。地球連邦の世界に移住したほうの響なんて、転生先の世界が戦中の頃だったから、昭和三年って事になった。あたしも向こうの世界にいるほうの正確な生年月日、昭和三年になっちゃうんだよ』

 

「何よそれーーーー!」

 

『転生先の都合だって。もっとも、タイムマシン使ってるから、そんなのは書類上での事でしかないけど」

 

「私はまた別の世界に、地球人として転生したって聞いたけど?」

 

『ローズは普通に現代の高校生だよ。部活で戦車動かしてる歴女だけど」

 

「はぁ!?」

 

『詳しくはかれんさんに聞きな。向こうのローズ、性格がはっちゃっけてるから』

 

ミルキィローズは大洗女子学園の『カエサル』に転生していた世界線では、美々野くるみ時代の人格にはならず、カエサルの人格が色濃く残った。現役時代の記憶を完全に持つ一方で、カエサルの人格を保ったため、現役時代とキャラが大きく異なる。その兼ね合い上、現役時代より人付き合いに長けるようになっているため、むしろ仲間内に好評であった。元々の美々野くるみとしての高飛車さがないためであろう。

 

「他はどうなの、他は!」

 

『うーん、マナちゃんが『切れると怖い』、『青龍刀振り回す』、ラブちゃんは『仮面ライダーアギトの力を持って転生してた…かな』

 

「何よそれーーー!!」

 

『本当に驚いたんだって。本人も前世での後半生で目覚めたのが引き継がれてたっていうから。あんただって、原子崩し撃てて、サーフボードが異様に上手く……』

 

「属性のバーゲンセールやってんじゃないのよ……?」

 

『まさにそーゆー感覚なんだってば』

 

のぞみの言うとおり、北条響らしさがもっとも薄い世界線が『シャーリーに転生していた』彼女であった。口調その他もシャーリーと紅月カレンの折衷であるが、完全にキレた場合は麦野沈利であった名残りか、ものすごく怖くなる。もっとも、のぞみ自身は転生先での素体の技能を受け継いだのと、はるか遠い過去生での操縦技能、その時のかすかな記憶があるため、リーネの声に懐かしさを覚えるが。何故か、リーネと編隊を組ませたら、異様に戦果の上がる時があったので、黒江が調べた結果、判明した事項だ。

 

『あたしだって、名前も思い出せないくらいに昔の過去生の記憶がかすかにあるからね。それでパイロットやれてんだよ。現役時代だったら、車だって無理だよ』

 

「それもそうね……。みらい、あんたも?」

 

「あたしもそのクチなんだよねぇ。もっとも、リコも大変だけど」

 

「どういう事?」

 

「前世の記憶が完全に戻ったから、プリキュア以外の力も使えるし、パイロットできるから」

 

「モフ」

 

「と、いうことはこの子(キュアプレシャス)しかまっさらじゃないってことね」

 

『うん。キュアエースなんて、あたしと響よりも属性過多だし』

 

「あの子が?」

 

『うん。向こうの世界にいるって注釈付きだけど、転生先で大会社の社長令嬢、年齢が20そこそこなのに、プリキュアに戻ったら、わざわざ現役時代の姿になる、普通に野太刀にガバメントを使いこなす……おまけに炎を剣にまとわせられる』

 

「属性多すぎ!!」

 

『で、学生時代の親友が魔砲少女で、あたしの同僚……と来てる。あの子、向こうじゃ金回りいいみたいだよ』

 

「なによ、その属性のバーゲンセール……」

 

キュアエースは元々が成長変身であったが、転生後は現役時代の姿にわざわざ戻る。本来必要のないプロセスだが、本人はルーティンだと言い張っている。逆にアストルフォのように、アストルフォとしての背丈をキュアミューズ形態に反映させ、成長した事を敢えて見せる事を楽しむ猛者もいる。おそらく、キュアミューズがもっとも、現役時代と容姿・性格が違ったプリキュアであろう。(流石に子供の背丈では、行動に色々な支障があったためと、本人は釈明している)

 

「あたしらはパイロットって事になってるから、比較的自由な行動ができる。他の兵種なら、そうはいかない。」

 

キュアミラクルの言う通り、連邦軍に加わった、あるいは協力するプリキュア達は行動に一定の自由が『士官』として与えられているが、それは身分上は便宜的に『パイロット』であるからである。のぞみは遥かな前世でその経験があり、みらいもその経験が『どこか』であったので、本当にパイロットをやれている。本来はまったく別の職業についている者が『畑違い』の専門職についても一流なのは、実のところ、そんなからくりがあるのである。魂のレベルで刻まれた記憶だが、それが目覚めるかは当人次第だが。

 

『でも、向こうの私、どうなってんのよ』

 

『向こうのあんたはぶっきらぼうな口調になってるよ。キレたら怖いけど。で、単独でプリキュアになれる。たぶん、転生でプリキュアの仕組み自体が変異したせいだと思う』

 

『嘘ーーーー!?』

 

『たぶん、そっちも遠からず、パワーアップするよ。あたしがパワーアップしてるし』

 

大人のぞみはAに合わせられる形でパワーアップを遂げた。力の強い方に釣り合いが取られると、マジンガーZEROは言う。この世界では『オールスターズ戦の沈静化』で、古い世代のプリキュアは戦闘を長らく行っていないので、往時ほどの戦闘力は発揮できない。それは『5』も例外ではない。同位体の経験値がフィードバックされたのぞみのみが往時以上の戦闘力を持つ状態である。だが、同位体が特殊な状態であれば、その状態がフィードバックされる。北条響もそれに当てはまる。

 

『説明しなさいよ、アンタ!!』

 

『無理だって。科学じゃ説明つかない現象だし。あ、司令部から伝達。台湾政府が台北松山空港を提供するって。民間機が飛べる状況じゃないし、軍も保有機が減って、持て余してるみたいだし』

 

動乱は台湾をも巻き込んでいる。台北松山空港は民間機の乗り入れが停止状態であり、施設を持て余しているらしい。そのため、空港は実質的に連邦軍の拠点として使われる。普段であれば、多数の旅客機が上空を行き交うだろう空域も白色彗星帝国の無差別攻撃のせいか、閑散としている。空域の安全を確保できないからだろう。台北松山空港は台湾軍が全面的に使用している(元々、日本統治時代には、陸軍飛行隊の基地であった。21世紀でも、軍民兼用である)が、その台湾軍も前線に航空隊を移動させているようであった。(開戦劈頭に攻撃されたようで、先発隊の偵察機が敷地を見回すと、その時に駐機されていた民間機の残骸が転がったままになっている。片す余裕もないのだろう)。

 

『お、台湾が見えてきた』

 

「石垣島から近いってのは本当だなぁ」

 

石垣島を過ぎると、台湾は目と鼻の先であり、上空からであれば、先端部が確認可能なほどな近さであった。

 

『あと10分もあれば、台湾だ。多少は休めると思うけど、現地の情勢は良くないようだ』

 

台湾軍は苦戦を余儀なくされており、既に戦力の数十%を消耗したという。つまり、あまり宛にできない状態である。主力は健在のようだが、弾薬の備蓄が減っている状態(弾薬庫も少なからずを破壊されたため)だという。そのため、リアルロボットの中で『対多数戦』に長けたフリーダムガンダムが送り込まれたのもわかるというものだ。

 

 

「でも、アンタがそれをねぇ……」

 

「まぁ、こいつは火力をとにかくぶっ放すのが本来の運用想定だから。のぞみちゃんの仕事は多数の艦載機を撃滅することだし、リアルロボットで対多数戦をするにはもってこいのガンダムさ。もっとも、ファンが多い機体だから、露出は控えめになるかもね」

 

「なんで、みらいが解説すんのよ」

 

「のぞみちゃん、そーいうの向いてないし」

 

「あなた、魔法つかいでしょうが」

 

「まぁ、そこは気にしない」

 

みらいがくるみ(ミルキィローズ)に言うように、後日、のぞみがフリーダムガンダムも使用していることがドラえもん世界で報じられるが、『メインではない』と注釈がつけられて報じられた。これはフリーダム系列の機体=キラ・ヤマトの機体というイメージが強いためである。もっとも、そうなったのは『ストライクフリーダムガンダム』からで、初代フリーダムの段階では、キラ・ヤマトの搭乗は想定されていない。なお、再建造の際に、オーブを訪れていた現地のとあるジャンク屋の提案で、日本刀状の実体剣が試作され、追加されたという。その名も『カグツチ』とのことで、コズミック・イラのどこかの新興国が『対ビームに特化した装甲を試作中』と彼が伝えたことから試作されたという。未来世界がもたらしたジャパニウムとコズミック・イラ由来のレアメタルを複合して加工した試作兵装である。この試作兵装の正式採用型には『布都御魂』と名付けられるが、名前の響きが『しっくりこない』と言われ、カガリ・ユラ・アスハから『アメノハバキリのほうが良かったんじゃないか』と言われたとか、なんとか。

 

 

 

 

 

――こうして、台湾は地球連邦の介入により、失陥の危機から救われる事になった。既に60機以上の戦闘機を失い、戦車も多くを喪失しており、戦闘機も届かず、ミサイルでは落とせない衛星軌道の宇宙戦艦からの砲撃に成す術もなかったからだ。とはいえ、支援任務のために大気圏に降下してくるため、そこはフリーダムの体の良い獲物と言えた――

 

『さーて、フリーダムの真骨頂、ハイマット・フルバーストを試すか!!台湾到着記念の景気づけだ!!』

 

コックピットにマルチロックオンを示す表示が出現する。M粒子散布下でのマニュアルでの微調整が効く仕様になっており、キラと違い、手加減の必要がないので、全ての照準を急所に合わせる。

 

 

『いっけぇ!!』

 

フリーダムの全ての火器(細かい事を言えば、レールガンなどはアナハイム・エレクトロニクス製のものに交換され、頭部バルカン砲はνガンダム系と同じ『90ミリバルカン砲』に変えられていたが)が実弾・ビームを問わずに火を吹く。白色彗星帝国の戦闘機と艦艇は衛星軌道から降下してきたところを撃たれた形になり、不意打ち同然のハイマット・フルバーストで蜂の巣。艦艇は炎上し、戦闘機は粉砕される。オリジナルにはない『ビーム偏向機能』があるため、ビームで薙ぎ払う形になり、白色彗星帝国の空母と護衛艦が哀れにも、ビームで斬り裂かれる。空母の一隻は哀れにも、前後が泣き別れになり、まっ二つの状態で墜落し、内部のあらゆるものを撒き散らしつつ、爆散する。

 

『すごい……』

 

「さすがに、元から対多数想定のガンダムだ。火力が違うなぁ」

 

「みらい、あんたもできる真似でしょ?」

 

「大魔法は魔力食うんだよ。はーちゃんはいざしらず、あたしの魔力量じゃ連射できないよ」

 

ミルキィローズのツッコミに、キュアミラクルはそう返す。ミラクルの単独での魔力は高めではあるが、魔砲使いと恐れられる、なのはやはやてよりは格落ちであるので、彼女らクラスの魔砲はそう撃てないという。

 

「あたしとリコは瞬発力向けで、向こうの世界の友だちみたいな魔砲向けじゃないんだって。だから、ロボットを作ってるんだけど」

 

「アンタ、向こうの世界で何を……」

 

「工学部卒だよ、向こうの世界だと。この世界じゃ国際学部だけ思うけど」

 

「エンジニア??」

 

「ありていに言えばね。もっとも、一度、敵に倒されて、蘇生された先の世界で出たんだけど」

 

「そ、蘇生!?」

 

「向こうについたら、説明するよ」

 

『それ、おまけのもう一回っ!」

 

ハイマット・フルバーストのもう一回の射撃で、台湾に増援を送ろうとした空母主体の敵の分艦隊は全滅した。炎上する空母からは発進口にあった艦載機がずり落ちながら落下していく。

 

『さて、台湾に先発隊がついた頃だよ』

 

「箒たちが参加したんだっけ?」

 

『織斑千冬先生が送るメンバーを限定したらしくてね。箒は聖闘士でもあるから、強制参加だけど、シャルは任意だって』

 

「セシリア達は?」

 

『それぞれの本国のデータ取りに駆り出されたそうな。ラウラは『緑川なお』の名義でプリキュアとして参加するってさ」

 

「機体の不具合でも?」

 

『部隊の連中が見学したいとかで、学園から持ち出せなかったんだってさ。まぁ、マーチとして参加するんだし、機体なくてもいいけどね』

 

オトナプリキュア世界の戦役に参加が当初より決まっていたのは、聖闘士でもある箒のみだった。だが、箒は(姉というコンプレックスを乗り越えたためか)血気に逸る傾向があるため、中庸な性格のシャルロット・デュノアがお目付け役に選ばれた。なお、セシリアと鈴は血気に逸る傾向がある(セシリアは特に狙撃型の機体特性を活かせないことが多かった)ため、除外。ラウラは機体のオーバーホールと改修の確認者が本国から来てしまった都合、機体は持ち出せなかったので、別名義で参加となった。なお、更識姉妹(IS学園の生徒会長とその妹のこと)の参加も検討されたが、姉は織斑一夏の監視兼護衛が優先され、妹は実戦経験の不足と機体の未完成が理由で見送られたとのこと。

 

「なおなら、こっちの世界にもいるけど?」

 

「スマイルの子達は参加しないだろうなと思って、なおちゃんは転生したほうに了解取っておいたんだ。たぶん、それぞれの生活あるだろうし。のぞみちゃんが連絡は入れたんだけど、何年も戦ってない上、力が消えて長いからさ。良い返事貰えなかったみたいで…」

 

のぞみは一応、戦役が激しくなる直前、往時の『スマイルプリキュア』のメンバーに地球連邦軍の力を使って連絡を取ったが、それぞれの生活がある上、『実戦から離れて長い』ために良い返事はもらえず、スマイルプリキュアの全員の参戦は諦めざるを得なかったと、みらいが教える。その一方で、2022年当時最新の『デリシャスパーティ』は全員が参加しているのだ。

 

『あ、のぞみ。司令部から。2021年の『トロピカ~ジュ』も転生者込みでいいなら、キュアフラミンゴが来るし、ここのキュアサマーが参加を承諾してくれたって!』

 

『よっし!これでなんとか、十数人は確保出来た』

 

流石に、世界各国が攻撃されている状況では、『夏海まなつ』も座視できなかったようで、(彼女はまだ現役引退から一年しか経っていないので、普通に中学生のままだ)大先輩ののぞみが『プリキュアを集めている』との噂を聞きつけ、自ら志願する形でプリキュアに戻ったとの事。なお、キュアフラミンゴについては、戦車道世界の知波単学園の隊長『西絹代』がその転生体であったため、戦車道世界から直行したとのこと。

 

『意外に少ないわねぇ』

 

『意外に断られるのが多くてね。一番新しい世代のゆいちゃん達が全員参加、古い世代になると、捕まらないこともあるってのはなぁ。』

 

『肝心のなぎささんとほのかさんは?』

 

『北極圏や南極までサーチを広げる。最悪、別世界のプリキュアを助けに行ってるかもなぁ、あの御仁らは特別だし、さ』

 

大人のぞみはなぎさらが『特別な存在』であることが羨ましいようであった。自分は特別な出来事がなければ、恒常的に戦士に戻る事はなかったのを自覚し、皮肉を言いたくなったか、なぎさとほのかを御仁と表現した。多少の二人への僻みが入っているので、なぎさとほのかだけはプリキュアで有り続けている事に妬いているようであった。

 

「あ、やっぱ妬いてる?」

 

『少し、ね。あたしらは引退を余儀なくされてたけど、なぎささんとほのかさんは戦い続けてるのわかったし……』

 

大人になり、プリキュアでなくなっていた時期があるため、大人のぞみとしては(今となっては)なぎさとほのかの『選ばれた戦士』というポジションの意味がわかり、複雑な気持ちになったらしく、みらいに心情を悟られる。子供時代には言わなかった『皮肉を言った』あたり、大人のぞみは『成人したことで、プリキュアになれなくなった』ことが心の傷になっていたのが窺えた。

 

「あんたが皮肉をいうなんて……」

 

ミルキィローズが驚いた表情を見せた。現役時代なら、のぞみがあの二人を皮肉る事はなかったからだ。

 

『そりゃ、なれなくなった時間が長かったからさ。面と向かっては言わないけど、皮肉の一つや二つ、言いたくもなるって』

 

「でも、この時代、なぎささんとほのかさんは三十路の半ばの計算だよ?」

 

『あたしら『5』が20後半なんだから、当然だろうね』

 

大人のぞみは成人したからこそ持ってしまった、先輩へのコンプレックスと僻みを垣間見せた。成人する事は『心に闇が生まれる』ことも意味する。仕事での失敗、嫌味な上司(のぞみの場合は指導担当の教諭)にすり減らされる精神…。大人のぞみが酒飲みになっていたのは、それらと(精神的)に戦うための癒しが必要であったからだ。また、大人として、『子供時代の素直な感情を吐き出せる場がない』事に六年近くも密かに苦しんでいたからか、大人のぞみは『プリキュアになれる』二人の先輩へコンプレックスを抱いていた。その負の感情がある意味、ノワールフォームのこの世界での発現の一助になったのである。22歳以降はココにも会っていなかったため、意外に精神的な意味での闇がある。その複雑極まりない『個人としての感情』がある故に、現役時代の純朴だった時期の自分を思わせる、後輩の和実ゆいに目をかけている節がある。

 

「のぞみ……あんた……」

 

『……ご大層なことを言ってみせたけど、個人としての色々なものをこの際だから、吐き出したいんだよ。個人的な意味での『今後の憂い』を無くすために、ね』

 

(のぞみちゃん……。あたしのやるべき事は……やっぱり…!)

 

社会人として、『大人』として、この六年あまりを過ごしてきたためか、学生時代とは色々と違う立場に置かれたこと、仕事熱心さが逆に職場での疎んじられの対象になるなどの苦境に、精神的疲弊が生じていた事を、ミルキィローズに明言する大人のぞみ。酒飲みになっていた影響で、若返らなければ、30代で肝臓がダメになっていたであろうことも悟っているからだろう。その告白は『現役のプリキュア』であるキュアプレシャス(和実ゆい)のある決意を固めさせ、彼女がこの戦役の後も地球連邦軍に残留する理由となり、後々に彼女の意思で『魔女の世界』を訪れる事になるのである。

 

 

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