――コズミック・イラ世界にもたらされた技術はオーブ首長国連邦に数十年分の軍事的優位をもたらしつつ、ミノフスキー物理学の門戸を開かせた。ストライクフリーダムガンダムなどはそれをいい機会とし、大規模近代化改修が施された他、極秘裏に地球連邦軍より一時返却されていたデスティニーガンダムとインパルスガンダムの細かい武装の更新も行われた。地球連邦軍はオーブを味方につけておくことで、コズミック・イラ世界の平定を図ったわけである。その交流の過程で、カガリ・ユラ・アスハは連邦の歴史にある『ジオン公国の蛮行』について、ある時にこう断言した――
「同胞を数億以上も核や毒ガスで殺しておいて、宇宙移民の代表を気取るなど……イカれてるのか、彼らは?」
と。ジオンは実際、ザビ家やジオン公国という存在に泥酔した者ほど『宇宙に住んでいても、自分らをまつろわぬ民に生きる権利はない』という思考回路を末端から高給将校までの大半が持っており、それがザビ家の蛮行を誰も制止しない有様として表れ、結局は戦乱を何度も撒き散らした果てに消滅に向かう結果となったのを『自業自得』とした。似た立場のプラントも下手を打てば、コーディネイターの減少で自然淘汰されてしまう事を第二次大戦で認識したため、以後は穏健派が主導しての舵取りが定着していく。ある意味、ジオンという自分たちと似た立場の国家の末路から、身の振り方を学んだのだろう。とはいえ、ブルーコスモスのテロはロゴスの解体後も健在であり、キラ達はその残党狩りが第二次大戦後の仕事となっていた。プラントの『歌姫』である『ラクス・クライン』は自分の立場をミーア・キャンベルの死で認識した故に政治を『仕方がなく』しているが、本質的には政治家ではない。そこが根っからの政治家かつ、高貴な血筋の出でもあるリリーナ・ドーリアンとの差であった。
――新組織用に設計されていた『フリーダム』と『ジャスティス』の系列機は当初、コズミック・イラ世界の三カ国の技術の結集で作られる手はずであったが、地球連邦の技術供与でガンダリウム合金が使用できたり、サイコミュシステムが使える見込みとなった事、未来世界の介入で、フリーダムの第二の強奪事件が起きなかったことから、それぞれ別枠での設計と改修となった。新設計機には『Zガンダム』と『ガンダムエアマスター』の双方が参考にされた可変機となる見込みとなり、後者には部分的にだが、『ゲッターロボアーク』の技術が使用されたという。フリーダム系の設計と改修の過程で、キラ・ヤマトの影武者を務められるパイロットが必要になったが、コズミック・イラ歴で最高のパイロットであるアスラン・ザラは諜報が主となり、それに次ぐシン・アスカは専用機ありきの腕前ともされたため、彼らに比肩しえるパイロットが必要とされた。その白羽の矢を立てられたのが、奇しくも、新進気鋭の若手エースとして台頭していた、夢原のぞみであった。だが、当人は『プリキュア5の世界』で戦っているという報告が入ったために窮していたが、別世界線における彼女に代行させるという妙案が生まれ、実際に実行されるのである――
――その白羽の矢を立てられた大人のぞみは、久方ぶりにキュアドリームとして振る舞える嬉しさもあったが、往時と比較にならぬ力を得られたこともあり、『オトナプリキュアの世界』での台北に降り立っていきなり、空挺降下してきた陸戦部隊相手に戦闘を繰り広げていた――
「せっかく台湾グルメを楽しもうと思ったのに、あんたら……何してくれてんの!」
青年期を迎えた後の変身であるためか、姿は現役時代と同じであるが、精神的には成人した状態であるためか、現役時代と違い、荒々しい戦法上等の大人のぞみ。話し合いの余地のない侵略者(しかも、死人を爆弾に変えられる技術持ち)相手であるからか、手持ち武器もコスモドラグーン、『別の自分の使う軍刀と同型の軍刀』であるなど、手加減無しで殺しにかかっていた。
「ええいっ!!」
コスモドラグーンは低出力でも、白色彗星帝国の戦車を余裕で鉄屑にせしめる。大人のぞみはキュアドリームに変身した状態で使っているが、それでも反動の制御の問題により、長時間の使用はできない。小型波動砲である故の発砲の反動は(プリキュア化していても)抑えきれるものではないのだ。
「戦士の銃は多用できないな……プリキュアになってるってのに、五発で手が痺れてくる」
戦士の銃を支給されたホルスターにしまう。外宇宙任務につく軍人には必須の備品であり、コスモガンを持ち歩く時に使われるものだ。プリキュアの姿になってから着用したので、(本来の変身アイテムであるキュアモがコスチュームの裾あたりの収納袋に入れられているので)左利き用のものをつけているが、のぞみAが転生後に両利きで訓練されていることもあり、使用に支障はない。
「さて……ぶっ飛んでもらおう!ゴッドサンダー!!」
ここで始めて、大人のぞみは別世界の自分とマジンガー由来の力を使用した。ゴッドサンダーである。雷をシンプルに召雷し、相手に落とすものだが、サンダーブレークの比でない破壊力を持つ。そして、軍刀を空中元素固定能力を駆使し、超合金製の『ショルダースライサー』へ作り変え、長期戦に備える。
「ドリーム、大丈夫?」
「まーね。後輩に背中預けるの、ずいぶん久しぶりだよ、プレシャス」
「え、そうなの?」
「エールの時代に呼ばれた後に、もう一度あるだけだからね。機体はひとまずチェックのために預けてきた」
それはプレシャスの一期後輩のキュアスカイの時代のことで、大人のぞみの記憶では、それが現役時代最後のオールスター戦であった。その時に出会っていた『キュアバタフライ』が自分の教育実習時代の教え子である事に気づいたので、教え子の彼女が戦っているのに、自分がぬくぬくと平和に浸っていいのか?という気持ちが湧いたことも、大人のぞみが戦線に立ち、現役時代以上に苛烈な道を選んだ理由だ。
「なんか、重装備だね」
「軽いもんさ。武器は手近な物体があれば、自前で簡単な構造のくらいは作れるからさ」
ショルダースライサーを腰に下げ、戦士の銃を左のホルスターに入れている。プリキュアではおおよそありえない装備だが、浄化しようにも、善の心が存在しない相手であるので、プリキュアの固有技はその威力を減ずる事を知っているため、既成の武器も躊躇なく使う。また、別次元の自分が使う『草薙流古武術』もこの時点で使用可能になっていた。
「ま、こいつらは死体も生き返らせて、爆弾にするからね。アクアが勤務してる病院、それでやられて、機能が麻痺したし。情けは無用さ」
白色彗星帝国はテレサの特攻で滅ぶ世界線でも、敵兵の遺体を蘇らせる『蘇生技術』を持つ。それを応用した人間爆弾』を使い、キュアアクア(水無月かれん)の勤務する総合病院を爆破し、医療スタッフに甚大な被害をもたらしている。大人かれんはその現場に居合わせたが、難を逃れている。その悲劇が大人かれんを戦場に戻した理由である。とはいえ、現役時代からの10年以上のブランクは大きく、少女かれんほどの戦闘ポテンシャルは出せていない(戦闘から離れている時間が長く、加齢で咄嗟の機転が効かなくなっているのも大きい)。
「あたしたちの固有技は浄化にパワーソースが割かれてる分、純粋に悪意しかない連中には普段の威力は出せない。だから、別の手段を講じるのが一番さ。ブレストバーン!!」
ドリームは胸のリボンを放射板代わりにし、ブレストバーン(摂氏四万度の超高熱を発する熱線。グレートマジンガーの技)を放つ。別世界の自分がデザリアム戦役以降に多用する攻撃である。
「摂氏四万度の熱線だよ。たいていの敵は溶解する。向こうの世界のあたしがパワーアップで手に入れた力さ」
数秒の照射で、白色彗星帝国のデスバテータータイプの輸送機は溶解する。物理強度は高い(23世紀の対物カッターの殆どを受け付けない)が、耐熱性は意外と普通の飛行機の範疇であるらしい。
「ドリルプレッシャーパーンチ!!」
先に降下してきた敵兵には、胸を貫く『ドリルプレッシャーパンチ』(ブローブを射出するが、ドリルプレッシャーパンチと同じカッターが生成される)を見舞う。もっとも威力が出せる『ターボスマッシャーパンチ』でない分、一応の慈悲はある。蘇生できぬよう、わざわざ胸を貫くように当てている。
「わーお……エグいね」
「これでも、加減してる方さ。最高位のターボスマッシャーパンチは戦艦の装甲もぶち抜けるよ」
「うっそぉ!?」
「プリキュア由来の技じゃないけどね」
「え!?」
「向こうの世界にあるスーパーロボットの技なんだ。こういう相手なら、ためらいなく打てる」
「間違いなく、殺せる攻撃だからねぇ」
「この地区はデストロイドの部隊に任せて、あたしらは別の区域にいくよ」
「うん!」
ドリームの言通り、地球連邦のデストロイド部隊が展開し、戦線を構築する。MSはこの時期には、元々の地上用量産機『ジェムズガン』が完全に現役を退き、より性能の良い『ジャベリン』が多数派になっている。しかしながら、いくらジェガンを発展させた基礎設計だといえども、ジャベリンは元々、宇宙専用機であるので、地上適応には『小改造』が必要であった。さらなる後継機種のジェイブスはジェガン同様の全領域機に戻されている。ジャベリンはフィールドが移るたびに改造するため、整備の手間がかかるのが整備班に不評であるからか、迅速な展開任務では、単純な構造のデストロイドが重宝されていた。
――行く先の区域では、空間騎兵隊が降下後進撃してきた機甲師団と戦闘中であり、既に彼らに死傷者が出ていた。性質上、歩兵である彼らは白兵戦では精強でも、機甲師団との戦闘では不利は否めないからだ。。
「おお、すぐに戦線に加わってくれ!戦車の砲撃で既に死傷者が出ている!」
「わかりました!」
二人は空間騎兵隊の部隊長に促され、そのまま戦闘に加勢する。
「2000キロカロリーぃぃぃ……パーンチ!!」
2000キロカロリーパンチを敵戦車に叩き込む。戦車の重量はおおよそ数十トン。それを吹き飛ばすのに、生半端な威力では無理だと悟ったキュアプレシャスは個人技で最強クラスの『2000キロカロリーパンチ』を用いる。だが、膨大なエネルギーを使う都合上、そう連続は放てない。また、軌道が直線的であるので、攻撃を先読みされ、回避行動を取られると、為す術もない。そのため、他のプリキュアの援護が必須である。だが、敵戦車はかなりの重量であるからか、真正面からのパンチにさほど堪えない。
「うそぉ!?硬っ!?」
「プレシャス、どいて!スクリュークラッシャーパーンチ!!」
ドリームが追撃でスクリュークラッシャーパンチをぶち当たる。これは本来、マジンガーの技ではないが、奇縁のある機体なので、使えるのである。
「スペースサンダー!!」
トドメのスペースサンダーで粉砕する。グレンダイザーのそれと同等以上の威力なので、戦車くらいは児戯のごとく破壊できるのだ。
「うわぁ……すごい」
「ま、向こうの自分と融合したマジンガーに縁のある機体のものは基本的に使えるみたいだ。あたしも存在が同一化してきてるから、地球連邦軍に残るつもりだけど」
「どうするの?」
「教師はいくらでも続けられるからね。でも、家は焼け出されたし、当面の生活費は稼がないといけないから。教師やれる情勢でもないし」
「生活費かぁ……」
「家賃、半年分払ってきたばかりなんだよ?それがパー。返金されるにしても、管理会社が生きてるかどうか。だから、地球連邦軍に残る事にしたんだ」
それが、大人のぞみが戦いをまた始めた理由の一つである。教師はいくらでもやりようがあるが、プリキュアとして百戦錬磨の自分は戦いから逃れられない宿命であると悟ったのも大きい。
「今、近年のプリキュアの故郷が無事か、軍に確かめさせてる。あたしら古参の故郷は悲惨な事になったけど、ここ10年以内のプリキュアは地方出身だからね」
「そういえば……」
「首都圏出身のほうが少ないんだよ、あたしら」
「でも、近年の子達、前のプリキュアのこと知ってるっけ?」
「ヒーリングっどと、HUGっとがあたしらを知ってるから、あの二つと交流があれば。2016年以前の子までは普通に交流あったけどね」
大人のぞみの世界では、後続のプリキュア達は出現していったが、初期世代がある時を境に引退状態にあった世界なので、世代間の断絶が他より大きい。その事がネックとなり、のぞみの要請に全員が応えられる状態ではなかったのだ。以前のような『オールスターズ集合』は(『オトナプリキュアの世界』では)奇跡でも起きない限りは不可能と言える。
「お、上空援護のコスモタイガーが来た」
上空にコスモタイガーの編隊が飛翔する。現地軍はすでに航空戦力が消耗しており、前線に残存戦力を集中していたため、地球連邦は台北などの地域の安全確保も引き受けたのだ。
「台湾軍は?」
「戦力が開戦劈頭で消耗しちゃって、共同戦線は難しいって。空軍は冷戦が終わった後はせいぜい、数百機くらいしか、作戦機持ってないから。日本だって、2020年代の時点じゃ、世代交代期に入って、作戦機は冷戦期より減ってるからね」
21世紀の空軍は基本的に非対照戦争に適応してしまった兼ね合いで、大戦~冷戦期のような保有数はない。アメリカ軍でさえ、数千機ほど。未来世界では『視界に敵味方が飛び交う』大規模空戦は当たり前なので、そのくらいは数回の会戦で消耗してしまう。ガミラス帝国も白色彗星帝国も基本的に、600~800機ほどの艦載機を普通に投入するためだ。そのため、地球連邦は大艦巨砲主義にならざるをえないのである。
「地球連邦も航空戦力の備蓄自体は数万。本国はね。だから、大艦巨砲主義に走ってる。パイロットは高いんだよ。育てるのが。大戦の頃の日本軍は燃料の備蓄が底を尽きかけたから、特攻させた。向こうの世界でも普通にあるから、最近の子にはショック大きいと思う」
「あの戦争の事、学校でももう、詳しくは教えないからねぇ。」
「あの戦争を生きた世代が殆どいなくなったからね。当時の10代が90代になる時代だよ。一桁でも80の終わりだ。遠くなりにけりって奴だ」
「私の亡くなったおばあちゃんでも、戦後生まれだったしねぇ」
「あたしのばーさまがそのまた親父から言われたっていう事がある。あの戦争を話していいのは、当時に10代後半以上の人間達だけだって」
「どういう事?」
「後世の人間達はその時々の価値観で物を言うからじゃない?当時の日本は大日本帝国。戦後は日本国。その断絶がひいじい様には耐えられなかったんだろうさ。ひいじい様は軍人だったからね」
のぞみの曽祖父は大正中期生まれで、太平洋戦争でバリバリの陸軍軍人だったという。故に、戦後の価値観に馴染めなかったと、祖母が言っていたと言い、時が過ぎ去ると、往々にして『当時の事を変化した価値観で語られる』。それを当時の兵士や将校は嫌ったのだろう。だが、科学技術の差で敗北を喫したのは事実である。その反動で『科学技術の差でリベリオンを滅亡寸前に追い詰めよう』というのがドラえもん世界の日本である。
「たぶん、今回のことも60年もすりゃ、年寄りの笑い話になるだろうけど、当事者からすりゃ、笑い話にさせたくないってなるさ。だけど、時間がたちゃ、自然にそうなっていくさ」
時間の残酷さを思い知った故か、大人のぞみはその身を戦いに捧げる気である。少女時代の奇跡を一度失った身であるためだ。この次元における『ココ』が知れば、その事を止めようとするだろうが、大人のぞみはすでにコズミック・イラ歴世界への出立も承諾済みであった。
「のぞみちゃん、自分のパートナーだった妖精の子に知らせないの?」
「この戦争が終われば、ね。もし、ココに会ったら、元気でいるとだけ伝えて」
「……うん」
後に、ゆいは事の次第を知った小々田コージに『どうして止めなかったんだ!!』と、激しい口調で責められることになるが、ゆいは『のぞみちゃんの望む事をあなたは知ってるの?』と返し、彼の不誠実さを暗に責めた。その負い目(大人のぞみの成人後、一度も顔を見せなかった)があるからか、彼はそれ以上言えずに終わり、ゆいは大人のぞみの想いを伝え、のぞみの選択を示すため、その場でキュアプレシャスになり、無言で立ち去ったという。
――オトナプリキュア世界の動乱は、のぞみらの住む土地の付喪神『ベル』にも影響をもたらした。本来なら、彼女のする行為がプリキュア達の復活を招く(自分が土地の危機のもととなる)のだが、街の人々に非のない外的要因での滅亡の危機には無力であった。そして、彼女が本来しようとしていた事の報いか、この世界で力を失っていた戦士達に、地球そのものの意志が(タイムフラワーによらず)力を戻すという奇跡が始まるのである。皮肉な事に、のぞみの要請を断った者からそれが起こるという流れになるのである。それは地球そのものの『生きる』意志が起こした奇跡であったが、かつてのプリキュア戦士たちはドリームが『宇宙戦争を戦う』姿に発奮させられるものの、要請を断った事が仇となり、二の足を踏む者が続出してしまう。結局、ドリームの意志に賛同し、戦いに参加したプリキュアはオールスターズは主に、往時の彼女に憧れていたり、彼女と共に戦った経歴のある者達となっていくのである。――
――地球連邦はオトナプリキュアの世界、『プリキュア5の世界』での二面作戦を遂行していた。その兼ね合いで、スーパーロボットの投入は避けられていたが、状況の打破のために許可が下り、そのうちの即応態勢が整っていた『マジンエンペラーG』が前者の世界へ出動する運びになった。これはジオン残党の地球圏での活動が沈静化し始めたことによるもので、ジオン共和国も解体が決まったこともあり、拠り所を失った残党たちは次々と火星に向かっていた故の決定である。結局、ジオン残党はお得意の派閥抗争で、共和国とサイド3すら失った事になる。だが、元のエゥーゴ/カラバのジオン系人員がティターンズ残党と合同するなどの糾合も起こっており、ジオン亡き後の抗争の構図が生まれつつあり、連邦は新たな問題をかかえ始めた。連邦軍も次第にジオン残党狩りから『エゥーゴ/カラバ過激派(エグム)、アフリカ大陸解放戦線などの掃討』へと任務を変え始めており、マジンエンペラーGを送る余裕ができたわけである。デザリアム戦役後のティターンズ残党は次第に組織の理念よりも『自己生存』を目的にし始め、在りし日の組織と相反する思想の組織に躊躇なく加入。反木星船団組織に入る例もあるなど、もはや彼らの存在自体が『往時のイスラム過激派よりも厄介』な存在となりつつあった――
――そのティターンズ残党と呉越同舟のジオンは結局、同胞をも『自分らをまつろわぬ民に価値なし』とした事の報いを受ける形で終焉を迎えた。その最後の首魁『シャア・アズナブル』は表向き、『アムロ・レイとの一騎打ちに負けて戦死した』とされた。だが、実際には才が惜しまれ、『エドワウ・マス』と『クワトロ・バジーナ』の二名義を使い分ける形で生存しており、髪型もクワトロ・バジーナ時のものに戻す(肉体年齢もクワトロ・バジーナ当時の年齢に差し戻している)などしている。乗機は『FA百式改』であり、彼がシャアであるのは連邦の『暗黙の了解』であった。シャア本人はアムロに失望されたように、意外に卑小な本質(『家族』への強いコンプレックスがある)が知られたこともあり、クワトロ・バジーナであった時代の性格に立ち返り、普段は隠棲生活を送っていた。住居は北米のシャイアン基地近くの旧合衆国時代の豪邸を手直ししたもので、そこを『クワトロ・バジーナ』名義で購入。隠棲生活を送っている。シャア本人はこのように、『才』を惜しまれて生き延びたわけだが、ネオ・ジオン将兵らの内、根っからのジオン将兵らは『役目の終わり』を痛感し、連邦軍へ転職していった。ネオ・ジオンに在籍した『ティターンズ出身者』の内、ティターンズ在籍中に素行に問題がなく、思想に染まっていない者は偽名で正規軍に復帰していく。問題はネオ・ジオン勃興(アクシズ期)以降の若い世代のジオン軍人で、アクシズに残されていたデータからは『グレミー・トトが自身のメモリークローンを影武者として造らせていた』事が確認されており、旧グレミー・トト派にそれらが連れ出されたとの未確認情報もある事から、若い世代のジオン将兵は思想調査が特に強く行われた他、共和国からも若い世代の将兵が集団脱走を起こすなど、ジオン系の人々の中でも『危険思想』とみなされた故の末路を辿った――
――のぞみはそれらの集団との抗争での象徴を期待された。良くも悪くも、アムロやカミーユなどの大物と違い、軍事関係者からはノーマークであった事、本来は地球連邦時代の人間ではないことで『スペースノイドとアースノイドの対立』の根源たる『エレズム』に染まっておらず、国連時代の価値観を持つ事もあり、地球連邦の融和体制の象徴的な働きが期待された。似た立場であった、少女期のしずかが反ジオンの姿勢であったのは、ジオンが20~21世紀の人々の環境保護の努力を無にした(しずかは『雲の王国』の一件以降は環境保護運動に熱心であった)からであり、のぞみは学生時代にそうした活動に関心がなかった事で、連邦軍と政府に『アースノイドとスペースノイドの和解の架け橋になれる』と期待されていたのである。(しずかは小学生時代から、国連時代の『不毛な宗教戦争や先進国の乱開発』を強く嫌悪していた。雲の王国の一件からは環境保護活動に入れ込むようになっており、その事がしずかの『スペースノイドへの反発』になっている節があり、テロ行為を繰り返すジオニズムを宗教だと見たのだろう)そうした流れがのぞみを祭り上げる動きを起こしたのである――
――過去の人間達は往々にして、地球連邦の実現を喜ぶ。21世紀には夢物語扱いであったからだ。少女期のしずかはまさにそのパターンであった。だが、いつの時代も『ある勢力が統一すると、内部で反対派が生まれる』ものである。ジオンはそのパターンで生まれたが、民主主義を合法的に独裁政権に変え、形式的に民主主義的な機構を生きながせるなどの手法で独裁政権の本質を欺瞞していた。デキンの巧みさはそこにあり、形式的に『議会と首相』を置いておけば、国民は勝手に自己満足するのだとし、議会と首相の地位を儀礼的なものに骨抜きし、実際の運営はザビ家一党が取り仕切った。サイド3の住民はそれで満足してしまった。そこにサイド3の悲劇がある。ジオンの統治は基本的に総帥の独裁に近く、シャアもそれでネオ・ジオンの意思決定をしていたので、ジオンは独裁政権なのだ。シャアが『開明的な独裁政権』という形なら、ギレンは『典型的な独裁政権』であった。結果的にハマーンはジオン残党すらもまとめきれなかったので、シャアよりも指導者として格落ち扱いになる。ギレンとシャアは思想は相容れないものの、手法は似ていた。故に、カリスマ性だけで組織がまとまるのである。大人しずかはそんなサイド3を『反抗したコロニーは波動砲で消し飛ばせばいい』と述べ、のび太を思わず閉口させた事があるというので、のび太の決定である『移民船化』は慈悲深い施策という事になる――
――大人のぞみは台湾到着の直後、ドラえもんとの会話でその事に触れており、しずかの『殺る時は徹底的に』との口ぶりに苦言を呈している。その時の会話は以下の通り――
「ねぇ、ドラえもん。しずかちゃん、過激過ぎない?アレじゃ残党の連中の何を潰しかねないよ」
「しずかちゃんは子供時代は大人しい性格だったんだけどねぇ。成人後は公安だから、危険思想には情け容赦しない。のび太くんが閉口するほどの尋問で、反日本連邦組織の構成員を何人か精神的に潰したらしいし……」
「本当?」
「噂じゃ、相当にエグい手口使ったとか?子供時代と違って、大人のしずかちゃんは公安だから、必要に応じて、潜入した組織を裏切って、潰す。一人残らず、ね。裏社会でもかなり恐れられてるってよ」
「わーお…」
「向こうのあたしが『裏切りは女のアクセサリー』って言われたようだけど……」
「しずかちゃん、成人後はすっぴんでライダースジャケットを着込むこともあるから、何を見たんだか」
呆れ顔のドラえもん。
「のび太君は『あの胸にもういちど』じゃないかって」
「いや、ぼくは『黄金の七人』だと思うんだよねぇ。やること派手で、色気を武器に使うとか」
しずか当人は『街の古い映画館で見た映画の影響』だと述べているだけだが、のび太は高校時代の記憶から『あの胸にもういちど』、ドラえもんは『黄金の七人』では?と推測している。
「マニアックだねぇ……」
「うちの街、裏路地に名画座が数件残ってるからねぇ。シネコンじゃないから安いし。高校時代から行き始めたかな。のび太くんとスネ夫は『黄金の七人』が好きだって」
「映画好きじゃないと、分からないって」
「そこはうち(野比家)の環境かな。パパがビデオ嫌いで、映画は映画館で見ろって古風な人だったんだよね。のび太くんもそれで難儀してたのよね、思春期ごろ」
しずかが何に影響を受けたか?それはドラえもんやのび太のちょっとした謎であった。名画座が街にあるためか、一般人はピンとこないタイトルをのび太達は知っていた。大人のぞみは既に配信が当たり前の時代の感覚があるため、名画座でわざわざ見るという選択を『もの好き』と見たようであった。
「この21世紀に?」
「パパが働きざかりの頃は21世紀になって間もない頃だから、そこはしゃーない。世代だよ。映画が娯楽だった時代の最後の生き証人みたいなもんさ」
「映画って、21世紀の始めには、1500円超えでさ、客の入れ替えも定着してたと思うんだけど」
「パパは滅多に家族サービスしない『モーレツ社員』の最後の世代だったから、自分が若かったバブル期以前の感覚で止まってたのよなー。のび太くんはそれで映画館に行く事が多かったんだよ」
のび助は1999年当時に36歳。逆算すると、彼の生年月日は1963年頃だろう。彼の父『のびる』が大日本帝国時代の家長然とした厳格な人物であったため、映画に思い入れ深い何かがあるらしい。それは彼の弟(のび太のおじ)たちも知らないという。
「でも、のび太くんのパパさん、たしか高度経済成長期の生まれっしょ?その割に価値観が……」
「パパのパパ、つまりはおじいさんが厳格だったんだ。それで映画に思い入れがあるんじゃないかって、おじさんらは言ってるな。パパの代は兄弟多かったから」
「なるほど……。でも、なんで、しずかちゃんも映画好きなの?」
「どっかの映画関連企業の重役だったお父さんの影響かなぁ?」
「え、そなの?」
「しずかちゃんのお父さん、やたら詩的な喩えとか多用するから、気になって聞いてみたんだ。そうしたら、映画関連の仕事をしてた事があるからってさ。そのせいか、しずかちゃん、子供の頃はメルヘン好きだったんだけど、大人になると、『ドクトル・ジバゴ』とか『ベン・ハー』を見だしてね…。変わり過ぎで聞いちゃったよ」
「うへぇ。あんな長いの、よく見れるなぁ」
「昔の映画の超大作はクソみたいに長いから。のび太くん、アラビアのロレンスを三回見てさ。二回は半分寝てたって」
「あたしも大学時代、授業で感想レポート書けってんで見たけど、見終えるのに六時間。半分寝ちゃってさ……」
大人のぞみは大人のぞみで、超大作映画は集中力が続かないようである。のぞみAのほうは生きる時代が時代なので、逆に大丈夫だという。
「こっちの君は一回で終えたのに」
「勘弁してよ、向こうは普段、映画が娯楽だった時期にいるっしょ」
と、ぼやく大人のぞみ。環境の違いは大きいのだ。
――時間軸は戻って――
「……って事を話したんだ」
「途中から映画談義になってない?」
「映画は嫌いじゃないしね。プレシャスは配信で見るタイプ?」
「時と場合かな。拓海が時々、誘ってくれるんだよねぇ。なんでかわかんないけど」
「……プレシャス、それ…アプローチだって」
「え……えぇ!?」
「……もう、ゴールしちゃいなよ」
「ち、ちょっとーー!なんで、こんな時にーーー!!来るよーーー!」
「ああ、問題ないって。秘技……『神剣抜刀』(エクス・マキナ)!!」
大人のぞみ(キュアドリーム)は敵機と機甲部隊の同時攻撃を『超光速』の神剣(天叢雲)をとっさに衝撃波の形で放つことでいなし、綺麗さっぱりと『まっ二つ』にしてみせた。これが草薙剣の力である。聖闘士の通例通りのオーソドックスな『手刀から放つ衝撃波』であるが、斬れ味は通常の『聖剣抜刀』(エクスカリバー)を超越する。これはZEROが『草薙剣』『天羽々斬』『布都御魂』。その三つの神剣の霊格を(生まれた次元での兜十蔵の手で)宿らせられており、のぞみAにそれらが引き継がれ、大人のぞみもその影響で進化したのである。
「え……何…今の」
「草薙の剣の力さ……天羽々斬と布都御魂も持ってるよ」
「さ、三種の神器!?」
「うん…。その内の草薙の剣。対界宝具だから、衝撃波だけ撃ったんだけど、なにぶん始めて使ったもんで」
「なんで撃てるの!?」
「向こうのあたしが融合した魔神が持ってたんだよね、どういうわけか…。ほぼ全部の西洋の剣より威力あるからね、今の…」
と、大人のぞみにもわからないその理由。なぜ、ZEROが日本の神剣の全てを持っていたのか。草薙は平家滅亡時にオリジナルが失われているはずだからで、どうやって持たせたかは誰にもわからない。草薙や布都御魂は乖離剣エアと同等以上の格のある宝具であるのだから。
「あれ、一個なくない?」
「え、あったっけ?」
「火之迦具土神は?」
「ないなぁ……」
「あれ、火の神なんだけど」
「そだっけ?」
「うち、おばあちゃんが日本神話に造詣深かったからさ」
カグツチ。それは日本神話の火の神であり、それを産んだ剣の名でもあるという。あっても不思議ではないが、ZEROはそれは持っていなかった。しかしながら、宝具の格という点では西洋のほぼ全ての宝剣を超越する『神話の剣』。エクスカリバーとデュランダルも問題としない『東洋最強の神剣』。それが草薙なのだ。
「でも、草薙と布都御魂の霊格持ちじゃ、下手にプリキュアの剣を持つより……」
「練度が上がりゃ、剣を実体化できるんだけどさ、問題にならない?」
「大丈夫じゃない?布都御魂はまだしも、平家の人間が本物の草薙を見た最後なんだよ?」
黒江は『実体化』か『他の武器に霊格を宿らせる』のを得意としているが、のぞみはその領域には完全に到達していない。日が浅いためだ。手刀と足刀で放つのが力の発露という事になるが、黒江は『実体化したほうが、俺たちはやりやすいぞ』と述べている。これは手刀でのリスクを鑑みてのことがあるからであろう。
「それもそうか。かれんさんに言ったら、拗ねちゃってさ……」
「あー……あの人……」
「そ。プリキュアで始めて剣戟したの、かれんさんなんだ。それが剣に縁のないあたしがさ、東洋最強の剣を持つんだよ?それも平家の人間が見た最後だって名高い『草薙剣』。出撃前の診察でさんざんに愚痴られた」
「だよねー……」
剣戟に縁が殆どなかったのぞみが東洋最強クラスの神剣を三つも持つ。これを反則と言わずになんとするか。剣戟に自信があった故か、診察中に大人げなく拗ねたであろう、水無月かれん(キュアアクア)に思わず同意してしまうキュアプレシャスだった。