――かくして、RX-78以来の歴代ガンダムタイプのデータは正式にモルゲンレーテ社にもたらされた。彼らはそのデータを使う形で、極秘裏に保有するガンダムタイプに未来世界のミノフスキー物理学前提の改良を施した。結果は極めて良好。動力は未来世界のハイエンドモデル用の融合炉に統一され、武装も未来世界の技術前提のものとなった――
――彼らは特に、RX-93系と『MSZ-010』系に強く惹かれた。その研究は熱心に行われた。特に使用者への負担の少ない『サイコミュシステム』と『ZZのアイデンティティたる、ハイメガキャノン』の搭載への情熱は凄かった。前者については比較的容易に達成したが、さすがのモルゲンレーテも『ハイメガキャノン』のような超高出力火器をMSに内装するには、しばしの時間を要した。さらに言えば、ZZのように『外観から搭載が判別可能な超高出力火器』をラクス・クラインが政治的意味での懸念を伝えたことで余計に難航したとも言える。とはいえ、既にデストロイガンダムがあるので、それは杞憂であった感は否めない。とはいえ、開発開始から二年あまりで、ストライクフリーダムガンダムへの搭載改修に成功したあたり、モルゲンレーテ社の超人的努力は褒められるべきであろう(未来世界からの技術供与はあれど)。また、グレートマジンガーの技術情報も一部が開示されたことで追加バックパックとなる航空機によって『複座式』になる案もあるという――
――予てより、ラクス・クラインは『生死不明』扱いになり、キラと隠遁生活を送る機会を願っていたが、自身の立場と、未来世界における『リリーナ・ドーリアン』外務次官という偉大な先達の存在により、隠遁生活を立場が許さない事に思い悩む日々を送っていた。元々、両親に『指導者と歌姫の双方になりやすい』コーディネートがなされたとはいえ、本人はその双方にさほどの執着がない気質であったのと、リリーナ・ドーリアンのような『生粋の政治家』ではないのに、父の派閥から後継に祭り上げられてしまい、後に引けなくなった。未来世界におけるリン・ミンメイのような『歌で戦争が終わらせられる』わけでなく、リリーナ・ドーリアンのような政治家としての胆力もない。良くも悪くも、『中途半端な才能』に留まっている事で『どっちつかず』になっていた点で、彼女の悲劇があった。故に、愛するキラ・ヤマトに『フリーダムを、ストライクフリーダムをも超える』絶対的な力を与えたかったのだろう。フリーダム系統は二度の大戦での圧倒的戦果で危険視されており、キラ・ヤマトといえど、無傷で生還できる見通しが未来永劫に渡ってあるわけでもないというシミュレーション結果が出ていたからだ。故に、未来世界の歴代ガンダムの強さに惹かれ、その力を欲したのだろう――
――とはいえ、キラは一度目の大戦で精神が疲弊しており、第二次大戦時には仙人のようだと揶揄されたが、それは度重なる戦争で、精神が殆ど死に体になった故で、コズミック・イラ75年の段階(当時は20歳を迎えたばかり)では回復の兆しが見えていたが、それ故にメンタルの弱さが浮き彫りになっていた。似た境遇のアムロ・レイが『支えになる者のおかげで精神的に成熟していった』のと対照的であり、ある意味で『戦士に向かないメンタルに育ちながら、その分野で最強クラスに育ってしまった』という点で、ラクス・クラインとの相似があった。また、彼自身、13歳で戦争を終結させた実績があるウッソ・エヴィンに自身の戦法を『自己満足では』と指摘されたり、似た境遇でありながら、名実ともに軍人となったアムロの存在を知った事から、皮肉にも、メンタルの回復が急速に進み始めたという――
――地球連邦によるコズミック・イラ歴世界の平定の第一段階として、オーブ首長国連邦の地球連邦政府へのオブザーバー参加が公表され、同時に東アジア共和国とスカンジナビア連邦の二カ国の地球連邦への準加盟の公表がなされ、大西洋連邦の加盟検討も報じられる。これはどの国も二度の戦争で疲弊し、ロゴスの解体で経済もガタガタになった故に、確かな安全保障を求めての事であった。ニュートロンジャマーの影響を受けない『核融合反応炉』の輸出とM粒子の存在判明による文明の変化が起こり始めたからでもあった。その変革の一環として『世界平和監視機構コンパス』がオーブ首長国連邦主導で創設された。地球連邦もオブザーバーとして関わり、ジェガンとリゼルを提供し、地球連邦は『局外者』として承認国の仲介を行う形で存在感を見せる。プラントは二度の大戦で、もはや『戦争できない』というほどの人的被害を被ったため、この動きに同調。戦死扱いであったシン・アスカらを送り込むことで関わり合う意志を見せた。シン・アスカがキラ・ヤマトと面識を持ったのは、この準備期間の時期にあたる。また、コズミック・イラ歴世界の固有技術と未来世界の技術の融合期でもあったため、フェイズシフトの栄華に終止符が打たれた時期でもあり、以後はガンダリウム合金を表面装甲とし、フェイズシフトは二次、もしくは最終装甲やフレームの可動部に用いられるなどの用途に転じていく。コズミック・イラ歴の世界の月面は民間利用目的の開発がされていなかったため、実は良質な『ルナチタニウム』が確保可能な環境にあった。そこに気がついたオーブは未来世界でいうフォン・ブラウン市の位置に当たるクレーターに基地を極秘裏に建築を第一次大戦終結直後に開始。オーブのそれまでの宇宙基地はせいぜい、旧時代の『宇宙ステーション』レベルの代物であったので、大いなる飛躍であった――
――その基地は二次大戦後に完成を見た。未来世界のフォン・ブラウンに比べれば、ささやかな規模だが、ある意味ではコズミック・イラの世界での大いなる一歩であった(将来の都市化を前提に整備するという点で)。オーブはそこでルナチタニウム鉱床を発見し、まずは保有するガンダムタイプの性能向上に用いた。皮肉な事に、通常金属でありながら、発泡金属とは比較にならない強度(未来世界の高出力かつ、ミノフスキー物理学前提のビームでなければ傷もつかない耐弾性)と一定の量産性も担保されていたルナチタニウムは第二世代相当である『旧式』のガンダリウムβ合金であろうと、コズミック・イラのPS装甲以上の『耐弾性』を備えていたので、オーブ首長国連邦が入手した『ガンダリウムγ合金』はオーブの軍事力を飛躍させた。また、アカツキに施された『ヤタノカガミ』の改良も進み、コズミック・イラ歴世界の標準的なビームであれば、相手が戦略兵器でも耐えられるほどに性能が向上した。それらは全て極秘裏に進められ、キラが20歳となる『コズミック・イラ75年』を(ドラえもん世界からもたらされた『極秘情報』を前提に)オーブは軍備を整えつつある状況で迎える事になった――
――プラントにはジオン系MSの情報が開示されたため、ザクウォーリアの後継として、『ゲルググメナース』が開発された。外観がゲルググ寄りになったのは、ジオンへの開発陣の敬意であった。だが、ザクシリーズでさえ、戦後の配備数が充分でないのに、さらなる新型というのは、如何にプラントといえど、大規模に生産ラインを刷新するだけの余裕はなく、しばらくは先行生産でエースパイロットに回すのが精一杯であった。また、史実と違い、高機動型ゲルググとゲルググJのデータを参考にしての『高機動バックパック』が採用されていたのが違いであった。また、デュランダルの負の遺産ということで、インパルスやデスティニーはオーブに正式に(書類上で)放出された。そのため、保管されていたデスティニーの別個体は一号機の予備機として保有される事になり、『ターミナル』で一号機と同様のセッティングに直された上で、オーブで保管される事になるなど、デュランダル体制との離別が図られた。シン・アスカとルナマリア・ホークは『ギルバート・デュランダルの尖兵であった』経歴が戦後のプラントではマイナスに働き、『飼い殺し』に遭うのは既定路線であった。その事は二人も既に想定しており、ザフトの軍籍は復活したものの、二人は『地球連邦軍人』という帰属意識を持つようになっていたため、戦後のプラントに勤務せず、未来世界からの帰還の暁には『世界平和監視機構コンパス』の所属という形を取り、オーブに滞在する手筈であった――
――コズミック・イラ世界の各勢力は第二次大戦中のイレギュラーで宇宙艦隊に大打撃を被っており、数の上でも地球連邦の強大な艦隊に対抗可能な状態ではなかった。また、はったりに近いが、地球連邦はゲッター真ドラゴン(龍型の個体。全長は6000m超えで、デザリアム戦役で鹵獲)の修復を敢えて大っぴらに行っており、その威容でブルーコスモスとプラント脱走兵らを威圧していた。ゲッター真ドラゴンは修復中でも、一機で地球連合とプラントの全艦隊を相手にしても全滅させる力を持っており、プラント脱走兵の一団が攻撃してきた時には、自動で『ゲッターエレキ』を発動させ、全滅に追い込んでいる。その様子は敢えて中継され、科学技術の差を示す材料とされた――
――ゲッター真ドラゴンはこうして、コズミック・イラの戦乱を収束へ向かわせるための道具とされたわけだが、それを快く思わない勢力がいた。ユーラシア連邦から分離独立を宣言したばかりの『ファウンデーション王国』であった。その真の目的を隠しつつ、国の体裁を整えつつあった同国はコズミック・イラ歴世界で最高級の科学技術を以ての反抗を目論んでいたのだが、有無を言わさないほどの差がある事に気づいていなかった。地球連邦の新鋭艦艇は旧式の核弾頭(従来型水爆)くらいでは傷もつかないのだ――
「彼ら(ファンデーション王国)は何かしらのきっかけで世界を恫喝する機会を欲している。だが、手は打ってある。そのための超兵器だ」
ゲッター真ドラゴンの存在はオーブに知らされており、カガリはいざという時には、その力を借りるつもりであった。
「カガリ様……」
「地球連邦の力を借りるしか、この世界に平和にする手段はない。有事に全長6000mの超弩級の龍になるなど、漫画みたいな話だろ?」
軍部の高官に真ドラゴンの存在を伝える。既に地球連邦軍の厚意で、オーブにはゲッタードラゴン、ゲッターライガー、ゲッターポセイドンの一個師団が派遣済みであり、行政府の周りには、片膝立ちの態勢の量産型ゲッタードラゴンが三機ほど待機している。
「あのロボット、デストロイよりも大きいというのに、桁外れの機動力だそうですな」
「民間の研究所があんな代物を作れる時点で、かの世界の軍事力が推し量れる。しかも、あのロボットは超弩級の龍を構成する内の一つに過ぎんそうだ」
「その名は?」
「ゲッタードラゴン。彼らはそう呼んでいる。元になったワンオフの機体の廉価版という触れ込みだが……」
量産型ドラゴンの個体性能はオリジナルのドラゴンより劣る箇所は多いが、機能は同等であるため、シャインスパークも(パイロットが揃えば)使用可能である。また、量産型といえど、装甲強度自体は初代ゲッターより格段に上であり、ゲッタードラゴン形態でも、デスティニーのアロンダイトの刃を通さないほどの硬さを持つ。また、ゲッターポセイドンであれば、陽電子砲を手のひらで弾くほどの強さとなり、オーブの標準的な艦艇を軽く持ち上げられるほどのトルクを持つ。カガリはオーブの海上交通の要所の海底をそれらにパトロールさせており、盤石の布陣を布いていた。
「しかし、地上用の個体は細い外見でありながら、我が軍のムラサメを置き去りにできる速度で飛翔し、地上をマッハ3ですと?イかれてますな」
「向こうでは、作業用の重機サイズでマッハ5以上を普通に叩き出す機体が最新だそうだ」
「まさか」
「さる名家の当主が道楽で試作させた機体と聞いているが、それでマッハ5だぞ?」
カガリの机に置かれている資料には『蒼き流星』と書かれており、レイズナーの情報が開示されたらしい。更には『紅蓮聖天八極式』の写真が横に置かれており、両機がサイズに見合わぬ高性能を持つ事はオーブも警戒すべき対象としているらしい。
「道楽でマッハ5……」
「技術レベルが違いすぎる。かの世界の民間研究所も独自の機体を持つそうだから、かの世界の不況を買ってみろ。オーブどころか、この星自体が消える」
カガリはオーブ内部にある一つの強硬的な論調を気にしているようである。また、彼女は第一次大戦でマクロスキャノンや拡散波動砲を目の当たりにしていたため、恩を仇で返した瞬間に反応兵器どころか『波動砲』が惑星を撃ち抜くことすら想定していた。実際、第一次大戦では、それらがジェネシスを相殺したばかりか、単機のMSの光の翼が戦場を支配した。誇張ではない。デスティニーはその光の翼の模倣を目論んだのでは?と推測されている。
「カガリ様……」
「先の大戦(二次大戦)の損害はオーブも無縁じゃない。キラでも被弾したほどの艦隊戦だったのは知っているな?」
「はっ、私もあの場に『イザナミ』の副長としておりましたから」
「あの戦は彼らなくば、人類は全滅だった。私もやむなく宇宙に上がったが……よく生き残れたものだ。ラクスはその時に魅せられてしまったんだろう」
「彼女が何に惹かれたと」
「ガンダムの魔力に、だ」
カガリが二次大戦の戦いにやむなく参戦した事が本人に明言され、ラクスがその時に恋人を守ってくれた『別世界のガンダム』の力を目の当たりにしたのをきっかけに、『取り憑かれたように』ガンダムタイプの改良をターミナルに至上命令として発した。カガリは『負担が大きすぎる』と諌め、自国のモルゲンレーテを関わらせた。ストライクフリーダムを以ても、キラの反応速度に追従しきれず、あわやという局面があった事、彼を救ったのが、アムロの『『Hi-νガンダム』であった事がカガリの見ているファイルには記されている。
「このシンプルな機体は……?」
「あちらでの連邦のシンボルの一つとなっている『ガンダム』の一機だ。RX-93-ν2『Hi-νガンダム』。ドラグーンシステムよりも高度なオールレンジ攻撃端末を持つ以外はストライクのようにシンプルな機体だ」
「大仰なランチャーを持っている以外はオーソドックスですな」
「ところがだ。ストライクフリーダムでも避けきれないビームを避けるわ、敵艦の艦橋を殴って潰すわ……。完全に戦場を支配していた。私はその時は見ているだけだったが……」
アムロ一人にアークエンジェルを襲った多数の敵が蹴散らされたこと、プラントには彼を止める術はなく、一機で要塞の防空網を無力化させた事は戦場にいた誰もが目撃している。また、プラント側がオールレンジ攻撃端末を積んだ実験機まで駆り出したが、何かかしらの手段でハッキングされ、自滅させられていたことも戦場写真に収まっている。
「この機体が緑色の光を発したと思えば、敵の艦砲を寄せ付けないわ、サーベルが巨大化して、ゴンドワナ級も斬るとか。おかしーだろ」
「……言えてますな」
それはハイニューのサイコフレームとサイコミュシステムの力であった。かつてのZガンダムと同様にハイパー化したらしく、ビームサーベルの刃が巨大化し、プラントの虎の子『ゴンドワナ級』の二番艦すら飴細工のように斬られた。二人は未だに現実と思えないようだ。同級の喪失はプラントに極大の打撃をもたらした。乗組員はもちろん、その搭載機とパイロット、内部で修理中の複数の艦艇も失われたからだ。シンたちがその場にいたとしても、彼を止められたかはわからないと、コズミック・イラの戦史家は後に記録に記す。
「あの機体はスペックもさる事ながら、パイロットも一流だそうだ。情報が開示されたが、アムロ・レイ。向こうの世界での初代のガンダムを動かしていた人物……バケモンかよ」
あまりに目撃者が多かった事もあり、オーブ首長国連邦も撃墜スコアを公認している。プラントの主要艦艇の多くが含まれているため、プラントからは恨み節も聞こえてくる。混戦であったとはいえ、アムロは補給を受けるまでに、プラントの主力艦隊を単機で突破し、主力艦の多くを戦闘不能に陥れた。信じられないが、真実だ。同機が継戦能力に優れた設計であるとはいえ、短時間に撃破した艦艇はプラントの主力艦隊の所属。それも高練度で鳴らしていたモノばかりだ。
「ミネルバがいたとしても、彼にかかれば……」
「まさか」
「それがあり得るから怖いんだよ」
アムロが自身専用にこさえたガンダムの最新バージョンにして、全ての面で隙のない武装を備えた機体はまさにMSの機能美を凝縮したもの。同機のツインアイが点灯し、シラヌイ装備のアカツキ以上のオールレンジ攻撃をしかける姿は流麗の一言。ラクスが取り憑かれるのも無理はない。
「向こうが派遣したガンダムはそれ一機で?」
「いや、他にもいるが、一つ一つがバケモノじみた戦果だ。量産機はダガー系に似ているが、性能は段違いだ」
「技術部が驚いております。まさか……」
「ある意味、戦争続きの世界故、だろうな。その一方で、予想外のシステムのバグも確認されているそうでな。デバッグ作業が進行中だ。無論、向こうとの取引は成立している」
カガリはなにかかしらの軍事面の取引を成立させたようだった。その証拠がゲッタードラゴン部隊の派遣であり、オーブ主要部の防衛であった。そして、カガリやラクス、更にはコンパス幹部級にしか通達されていない極秘事項が一つある。それはルナマリア・ホークの身に起こった出来事。自我意識の置きかわりとしか言いようのない奇跡。ジャンヌ・ダルクの戦闘服姿、宝具『わが神はここにありて』を持つ姿の写真。間違いなく、大昔にフランスの都合で葬られ、死後の数十年以上も後に『聖人』として祀られたジャンヌ・ダルクその人であると。
(彼女が再臨した際の素体がルナマリア・ホークであり、その彼女の全知識と記憶を持つ状態になっていて、任意に往時の姿になれる上、その奇跡が具象化されたものが生前の武具を通して行使できる。まさに摩訶不思議そのものだ。ユーラシア連邦の旧フランスが聞いたら、彼女の身柄を要求すんだろうな)
地球連邦軍は暗黙の了解で彼女の事を黙認しており、高官が普通に『宝具つかって~!』と言い、彼女を閉口させるほどに活用している。ジャンヌも呆れつつも『シンとの生活を送らせてもらっている礼です』とし、宝具を行使し、度々の危機を払っている。カガリもその事には呆れ顔だが、ある意味、地球連邦軍は藁にもすがる勢いで人材不足な表れであろう。(連邦軍発行の官報には、デザリアム戦役中、ジャンヌ・ダルクに宝具使用を普通にせがむ政府高官、それに呆れつつも、頼まれると断れない性分の彼女が思い悩むところが写真になっており、連邦国民の爆笑を誘ったという)実際、地球連邦政府は彼女が元々住んでいた欧州に住居を提供しようとしたが、ジャンヌはその頃には和食文化に適応しており、『あなたがたには食材への愛が足りない!!』と憤慨し、日本に居を構えるなどの結果になっていた。その事は聞いているので、日本色の色濃いオーブであれば、充分に彼女を満足させられるだろう。
――こちらはオトナプリキュア世界――
「ふ、ふぇっしょいっ!!」
「どうした、ルナ。風邪かよ」
「誰かが噂してるのでしょうか……」
「今のルナなら、噂でもちきりだろ?特にプラントの同期なんて」
「確かに……」
「あ、二人とも、機体を確認しにいくとこ?」
「そうですけど」
「トチローさんからのおごりだって」
「ハンバーガーですか!俺、ガキの頃から大好物なんすよ~!」
のぞみにハンバーガーを渡される二人。トチローが購買部で買ったものであるが、食堂のシェフ達が手作りしたもので、自販機の出来合いのものではない。シンは大喜びだ。
「あたしはゆいちゃんにおにぎり渡されてさ」
「あの子、のぞみさんの後輩なんすか?」
「あたしが現役だった頃に生まれたて。そのくらいの年の差がある後輩だね。プリキュアやってなちゃ、10代の姿でお互いに会うことはない子だね。叱られてさ、炭水化物も取らなきゃダメって」
のぞみはゆいお手製のおにぎりを渡されたようだ。実家が定食屋であるため、具のやたら多いハンバーガーばかりでは『栄養が偏る!!』との弁であり、かれんに頼まれて、のぞみの食事を確認するように言われたようだ。
「ま、扶桑で食ってきてるから、これにも慣れたよ。扶桑だと、地上にいないと、海苔巻いて食べらんないし」
「のぞみさんは向こうでテストパイロットだったんですか?」
「覚醒前にね。覚醒してからはプリキュアとして戦いの毎日さ」
「私と会ったのはその頃なんですよ、シン」
「へー。向こうでどんな機体に?」
「日本軍のプロペラ機だよ。実家の関係で陸軍系の。あたし、元々は陸軍航空の出身だし。で、プリキュアに戻ってからは時代がバラバラでさ。ダイ・アナザー・デイだけでも、ハチロクに乗った次の日はA-4だったり、その次はタイガーシャークだったり」
「よく対応出来ましたね」
「先輩たちが持ってきた機体はコックピットを共通の仕様に改造してくれていたから。機動力の良いやつが多かったから、小気味よかったよ。プリキュアになってれば、タイガーシャークで急旋回しても、屁の河童だし」
のぞみはシャーリーと並び、プリキュアでもっとも早期に機動兵器の操縦に駆り出されたので、ダイ・アナザー・デイの期間中だけでも、数多くの種類の戦闘機に搭乗している。
「そういえば、デザリアムの時も、タイガーシャークに乗ってましたね」
「あれはF-5の経験があれば、ほとんど同じ感覚でブン回せるからね。ダイ・アナザー・デイで練習代わりに、F-5系に乗せられたこともあったし」
「そういえば……」
「扱いやすいからね、あれは」
携帯食を食べながら、トチローとの約束前に業務を済ませようとする三人。向かう先の艦の格納庫には、レプリカのフリーダム、シンとルナマリアの元々の愛機であるが、改修が済んだ機体が用意されている。
「でも、なんでフリーダムなんすか?俺のデスティニーのほうが年式は新しいのに」
「ラクス・クライン嬢の要請なんだってさ。キラ・ヤマト君の影武者を務められるパイロットが欲しいそうでね」
「それで、彼の代表的な愛機だったフリーダムを?」
「ストライクフリーダムの改修と、系列機の開発を誤魔化すデコイも兼ねてるね。で、空間認識能力が高くて、若くてピチピチなあたしを……」
「そ、そっすか」
「あ、トチローさんも言ってたけど、デスティニーは武装の焦点がボケてるって」
「はぁ?どこがボケてるんすか?」
「全部乗せって料理が難しいんだよ?連邦もいくつか試したけど、うまくいったプラン少ないし。トチローさんの発案で、武装の積み替えが決まってるから、あとで整備班にリストもらいな」
「はぁ!?なんで!?」
「トチローさん、手のビーム砲を問題視しててさ。シャイニングフィンガー系列の奴に取り替えたいらしいよ」
「えーーーー!?」
「それと名無し砲はバスターランチャー、対艦刀は斬艦刀に取っ替えたいから、プログラム調整を手伝えってさ」
「なんすか、それーーーー!?」
「要は武器のテスト台だね。トチローさん曰く『万能性の追求は聞こえがいいが、中途半端になりがちなんだぞ』だって」
「斬艦刀って、あなたとか、あの人(黒江)が持ってる斬馬刀みたいな?」
「元々は機動兵器用さ。あたしと先輩のはそのスピンオフ」
「あれかぁ。よく言われませんか?」
「扶桑の同期からは、薩摩の出じゃないだろとか散々。プリキュア仲間からも『首おいてけ妖怪じゃあるまいし』とか。でも、あれは示現流の心得ないと、扱えないも同然だしね」
斬艦刀の真骨頂をまともに扱うには、示現流の心得が必須であるので、否応なしにその心得のある者か、武術に長けた者に支給される。黒江は開発に関わった都合で、黒田は黒江から預かって、それは今度はのぞみの手に渡ったわけだが、大人のぞみは別個体を新規に受け取っている。当然、斬艦刀の技能も共有している。
「そのデータを見た、あなた達の世界のジャンク屋が『その武器をストライクフリーダムに載せたらどうだ?』って言ったんだって」
「どこのどいつですか、そんな事……」
「うーん。名前は聞いてないけど、プロトタイプのアストレイを使ってるらしいよ?新興の国がビーム防御特化の装甲を実用化したから…とかで」
この構想はのぞみが試す事になり、ライフルやシールドとトレードオフで『カグツチ』という名の大太刀の試作品が回される。その完成品を後にキラ・ヤマトが使用する事になるのだ。
「あたし、明日からそのテストなんだよ。大太刀のね」
「モビルスーツに大太刀……すか」
「打刀はそのアストレイが試してるから……だって」
コズミック・イラではどういうわけか、MSに日本刀状の武器を持たせる動きがあり、のぞみも面食らったのは言うまでもない。
「大太刀は扱い難しいんだよねぇ。二刀流までしてくれって言うんだけど、モルゲンレーテ」
「はぁ!?大丈夫なんすか」
「キラ君は二刀流を使うからだって」
「二刀流の経験は?」
「身近にそれで鳴らした先輩と後輩がいる(黒田と芳佳)から、コツは掴んでるつもり」
「いるんすか!?」
「うちの魔女、いるんだよ。二天一流の使い手。黒田先輩は自覚なしに使ってたし、芳佳は黒江先輩が小さい内に仕込んだって言ってた」
そのようなわけで、格納庫では、レプリカのフリーダムのビームサーベルがそれぞれ別のものに換装される。斬艦刀とディジェタイプのビーム・ソードだ。のぞみはその確認の作業が仕事だ。ソードインパルスのシルエットには、対艦刀の換装候補か、『エンペラーブレード』の二対が用意されている。MSでも持てるからだろう。他にはソードトマホークの刃渡り大型化版であった。送り主は敷島博士であった。
「し、敷島のジジイ……!いい機会だからって……」
格納庫についた瞬間、梱包の解かれる武器の数々に悪態をつく大人のぞみ。Aと違い、大っぴらに敷島博士をジジイと呼ぶようだ。
「なんで、変な方向に思い切りがいいんだよ、あのクソジジイ~!!」
敷島博士の狂いっぷりを受け入れ気味の少女のぞみはあまり言わないが、大人のぞみは年齢と環境の差もあり、大っぴらにジジイと呼ぶ。大人の視線で見ると、彼の倫理観のぶっ飛びようがよくわかるからだろう。
「のぞみ、こちらだと、敷島博士をそう呼ぶのか。面白いことだ」
「隼人さん?来てたんですか?」
「この武器はネイサーで管理しているものだから、納入を見届けに来た」
「あ、あんたはゲッターチームのおっさん達の1人!!」
「ああ、ザフトの生きの良い小僧か。元気なようだな」
シンからすれば、20後半にさしかかる神隼人は『おっさん』なようだ。
「リョウに言ったら、殴られるぞ?」
「あんなバケモン動かせる時点で、ただのおっさんじゃないのはわかるって」
シンは10代の若者だが、初代ゲッターチームはそろそろ、30の大台もそう遠くなくなってきた年頃だからだろう。ゲッターロボの操縦者であるためか、見かけは若々しいままだが。
「俺や弁慶はいいが、リョウにおっさんというなよ。あいつの空手で医務室送りだからな」
「俺、赤服なんすけど」
「バカ。リョウの空手はお行儀のいいスポーツじゃない。実戦本位の殺人術に近いんだ」
隼人に言われ、シンは息を呑む。竜馬の凄まじい格闘術はデザリアム戦役で見ている。ノワールフォームになりたてで、理性が薄れたキュアドリームを一撃で沈めるほどの拳を異能なしに放つ。その場に居合わせたからだ。
「のぞみさんを一撃で大人しくしましたからね、それも暴走状態の……」
「下手なプリキュアよりあいつの拳は強力だ。お前のような小僧が受けたら、歯の数本か、肋骨の数本は軽く逝ってしまうだろうよ」
「嘘だろ……」
竜馬はそれだけのパワーを秘める。ウマ娘と素で互角の腕相撲が可能であろうとは、神隼人の談。ゴルシは『ジェンティルドンナとやりあえるかもしんねーおっさん』と、その力を称賛した。ウマ娘広しといえど、ゴルシの同期『ジェンティルドンナ』は『鋼鉄の鉄球を素でチョコボールサイズにまで圧縮できる』ほどのパワーで鳴らし、あのカワカミプリンセスから、『パワーでナンバーワン』の地位を奪ったほどの強豪ウマ娘(ゴルシ世代のトリプルティアラ達成者。通算で四代目とのこと)だ。その彼女と腕相撲でやりあえるとゴルシが断言するのは、彼の非凡さの証。軍事訓練を受けたコーディネイターが息を呑むことの意味。それはコズミック・イラではすごい芸当なのである……。