――しずかの説得は一筋縄ではいかない。そう感じ取ったのぞみAは、しずかの発言がジオン残党の激昂を招いた~云々の是非は後で問いかけるとして、頑なになった思考を解すことにした。その事をのび太に報告した――
「カミさん、子供の頃から頑固なとこあるんだよ。昔、ピリカ星に行った時の事だけど、カミさん、自分の大事にしてたぬいぐるみが消えたってわかると、その日の暮れるまで探させた事あるからね。あれはまいったね」
「なんで、ジオンに否定的なの?」
「そりゃ、ブリティッシュ作戦のあれだよ。僕たちの末裔の支族があれで全滅したからね。カミさんがそれを知ったのは、高校の時だ。知らせるのは迷ったよ。もっとも、カミさんの子孫でもある事を言ったのは、結婚の後だけど」
「それだけ?」
「考えられるのは、ボクにバレてないつもりだけど、カミさん、タイムマシン開発の部局の監視についたのが公安の初仕事でもあったからね。それもあって、ジオンに否定的になったのさ。セワシは次男一家の全滅が理由だけど。それに、君たち(プリキュア)やウマ娘の子たちへの礼がなってないとか言われそうだけど、ウチの財団から礼金を払ってるんだけどね。それと、僕と倅が直接、礼をルドルフちゃんに言っているんだよ?向こう側も後ろめたい事に手を貸してるとこあるから、大っぴらには言えないしね。それに、カミさんは礼を言いたいらしいが、タイミング合わなくてね。仕事柄、頻繁に連絡入れらんないし」
公安警察は偽名での潜入も多い仕事であるので、休暇のタイミングが夫とは合わないのが常。しずかはベビーシッターなどを使わない方針であったので、のび太が仕事をセーブしてきてきたが、2010年代後半に昇進してしまい、そうもいかなくなった。のび太も流石に『鍵っ子に育つなぁ……』と諦めかけていたが、プリキュア達が、次いで、ウマ娘(ゴルシ)が面倒を見ることを申し出てくれ、安堵した。ノビスケが幼稚園の頃の話だ。ゴルシはウマ娘と野比家の仲立ちもしており、なんとかのび太親子が『日頃の礼をいう』機会を儲けようと奮闘してきたが、自身のキャリアがちょうどシニア級に入ったり、生徒会も関わる事になった事による事務手続きの都合もあり、ノビスケの小学校入学後までそれがずれ込む事態となった。
「街の住民に犠牲が出てることだけど、カミさんは『予想よりはマシだ』ってさ」
「わーお……。いいの?」
「昔の冒険でも、救えない命はあったしね。それに、カミさんは海底鬼岩城の冒険でのバギーの犠牲を目の当たりにしてからは、死生観がガンギマリしちゃったからね」
「あー……」
しずかは意外にも、いざという時には自己犠牲もやむなしと考えているところがある。西遊記の冒険(歴史修正の旅)では、玄奘三蔵法師に扮していたこともある上、その時には牛魔王に食われそうになっていたし、アニマル惑星の冒険では、対ニムゲの戦線に立って、勇ましく戦った実績もある。しかも、それらは全て子供の頃のことだ。
「それに、なんと言おうか、二回も自己犠牲で事態が解決に向かう場に居合わせた上、その内の一回は、ドラえもんが自分の意思で特攻したんだよ?その犠牲を目の当たりにしても、天上人達は意見を変えようとしなかった。もし、キー坊がいなかったら……」
しずかが争いに対し、悲観的にすらなっているのは、過去の冒険で『ポセイドン』(アトランティスの自動報復装置)、リルルの自己犠牲、天上人の身勝手さを見てきた故であろうと、のび太は言う。ドラえもんの自己犠牲がなければ、雲の王国の冒険は最悪の方向に事態が動いていたという事実がしずかの思想に強く影響を与えたのは、間違いないだろうと、
「それもあって、カミさんは敵と判断した者には情け容赦がなくなったんだろう。ピリカ星の冒険で、パピくんが自分のせいで捕まったのを気に病んでたこともあるし、リルルが結局、消えることでしか地球を救えなかったのも、トラウマなんだろうな。それに、ドラコルルのような卑劣漢がいることも知ったし」
ピリカ星の冒険の際に対峙した男の名を出し、しずかが卑劣漢という存在を知り、成長と共に嫌悪感が強まった存在があると教える。その男がピリカ星の諜報機関の長であった事、恐らく、事後に『パピの手で然るべき措置が取られた』と思われる(クーデター以前にも、パピとの約束を破りまくった前科があったという)が、ドラコルルが卑劣な手段も用いる諜報機関の長であった事も、一応は軍隊である『ジオン残党』への苛烈さに繋がっているのだろうと。
「それに、ジオンが約束を守った事が一度でもあるかい?」
「……ないね。連中の決まり文句は『我らには優先すべき大義があるのだ』だもんなぁ。本来の故郷のサイド3も『ジオンの魂を忘れた売国奴』と見做して、無慈悲にテロ攻撃したのも一度や二度じゃないし。それに共和国は知らぬ存ぜぬを通してきたし」
「それだよ。うちのカミさんがジオン残党の始末に燃えてる理由は。だから、できるだけ情報から遠ざけてたんだが……」
「あー……」
「ボクは彼らにチャンスを与えたいのさ。全員が悪ではないからね。もっとも、シャア大佐からして、連邦との条約を破ってたけど」
「あれなぁ。本人のいいわけでも聞く?」
「ミネバ・ラオ・ザビもユニコーンガンダムを自分たちの手で秘匿するのが多数派だそうだから、条約破りはジオンのお家芸だよ」
二人はしずかがジオン残党に苛烈な理由を電話で話し合う内に、ジオンの『条約破りの正当化』もある事に気づく。シャアは『正式な連邦議会の承認を得てなかったものだから……』と戦後にいいわけし、アムロに盛大に巴投げされたとの事。そこまでしても勝てないあたり、ジオンという国と組織には『一週間戦争で死んだ何億人もの人々の呪詛がかかっている』とも取れる因果応報な結果がふりかかる。
「しかし、連邦も連邦で、白色彗星帝国の時に、実施途上の完全平和主義を捨て去る選択を取った時に、相当に荒れたからな。それはやむなき事ではあったけど」
地球連邦もその選択で、軍を存続させた事は当時の政権が結果的に倒れる事にはなったが、腐敗官僚と政治家の多くが倒れたので、気骨ある者たちが政府を運営するきっかけにはなった。
「タイムマシンがある世界での責任はそれなりにある。だから、ぼくはその責任取りも兼ねて、財団を作った。カミさんはぼくの子孫の存在を知っていても、ぼくとセワシがタイムマシンで何をしたかは知らせてないから、当事者~云々言うのさ」
「あー~……こりゃ長丁場になりそうだ」
「カミさんは一本気と言おうか、頑固と言おうか……。そんなだからね。ぼくの方でも、街に犠牲が出たことを咎めておくよ。それと、アムロ少佐を通して、『彼女』に言付けを頼んでおくよ」
「お願い」
電話はそこで終わる。のぞみAはしずかの考えを正すのが、予想以上に長丁場になる事を実感し、大きいため息をつくのであった。
――大人のぞみはのぞみAの地球連邦軍人としての役目を実質的に代行する形で勤務し、自分の世界にふりかかる脅威を祓おうとしていた。レプリカのフリーダムガンダム、ガンダムデルタアンス、ガンダムXといった、当代屈指の最新ハイエンド機を与えられ、白色彗星帝国残党に立ち向かっていた。生身でも、斬艦刀を取り寄せ、別の自分の持つ技能を活用する方法を取るなどの方法で戦闘を披露し、戦闘面では完全に遜色が無くなっていた――
「隼人さん、あなたが出向いたってことは」
「お前に橘博士からの預かりものを渡すためもある。ゲッター斬のマニュアルだ」
「やっぱり」
「最悪、お前一人で運用する事も考えられたからな。その備えでもあった」
「でも、デルタアンスまで与えられちゃ、手が足りませんよ」
「それは状況に応じて、どうにかしろ」
のぞみは(地球連邦では)ロンド・ベルの所属である分、ハイエンド機に何かと乗せられる。ガンダムタイプだけでも、有に三機である。自分がプリキュアであるので、プロパガンダ的な意味合いもあるのだろう。
「お前も可変機に縁があるな」
「元々、ネオジャパンから調達したシャイニングブレイクが始めてでしたからね。それと、戦闘機を動かせるからだと思いますよ」
「TMSを好む連中は減っているからな」
と、VFの台頭もあり、TMSは相対的に人気が落ち気味である事が語られるが、VFは新鋭機では『バトロイド形態での物理強度の低さ』は解決されているものの、そういった新鋭機は配備数が少ない。多数派は旧式のVF-11のままである。これはVF-171が史実と違い、低評価のままで終わった関係であり、VF-19はエースパイロット専用機の体裁の強い機体と認識されている都合上、再生産開始後も基本的にエースパイロットに与えられるからである。
「ZZの量産がされる世界で?」
「あれは下手なジムより…な発想の代物だよ」
地球連邦は宇宙開拓時代には『数が不利な状態での艦隊戦』を常に強いられる立場なので、史実ではコストを理由に、量産がされていない機種も量産される。また、史実のそれを雛形にした新機種も開発されるので、結果的に、軍縮時代に凡庸な機体の多くが廃棄された事による、それらの不足を補うために『ハイエンド機』が多く造られるのである。
「お前には世界を守る義務がある。俺がゲッターの観測者としての役目を担わされているようにな。そこをよく自覚しろ」
「ええ。そのつもりです」
のぞみは結果的に、1000年女王らが担っていた『地球の守護』を引き継ぐ形になった。後輩のキュアフェリーチェと同じようなポジションになったというべきだろう。別世界の同位体の記憶を共有している故に、地球を守護するために力を持つことに抵抗はないようだ。その後、彼女はフリーダム用の新装備のテストなどの仕事をこなしつつ、他のプリキュアを当面の間、まとめあげるための状況把握などに努めた。参戦したプリキュアは(世界での状況により、『戦車道世界と魔女の世界から呼び出した』者が多数派となった)元のオールスターズの総人数に比して少なく、世代もバラバラであるが、仕方がないところもあった。
――世界各地を偵察していた偵察機からの報告では、大陸間弾道ミサイルの基地が特に攻撃を受けており、主要国は『核兵器が通じない』事も併せての軍事的ショックに見舞われており、通常兵器の増強も難しい状況とも併せ、プリキュアの決起を期待するという『他力本願』な国連決議が採択されるという有様であった。アメリカ軍は戦力の増強を求めたが、。現地の国連も核兵器の代わりに『通常兵器を量産する』議論をしようとしたが、議論が上手くいかず、結果的に、軍事行動の多くを地球連邦に依存する事になった。地球連邦の軍事力でなんとか安全の確保された地域もあるが、核兵器が通じない相手の宇宙戦争に及び腰となる国々も多い。プリキュア達は国連直々に決起が期待される状況に持っていかれたが、『オトナプリキュア世界』でのプリキュア達は多くが力を失っており、往年のような『全員集合』は物理的に不可能であった――
――地球連邦の増援は何回かに分けて到来した。その中には『ジークフリート』という名のZZの城塞攻略用バリエーションが含まれていた。実質的には、かつてのフリゲート艦の代替(一年戦争での醜態により、レパント級ミサイルフリゲートを最後に、ミサイルフリゲートは開発されていない)も兼ねていた。かつてのデストロイド『モンスター』の代わりになる大火力を軍が求めた時代の産物でもあったが、デストロイド・モンスターに比して、使い勝手が良かったのもあり、サイコガンダム系の代わりとしての『特殊MS師団用機材』として生産が続き、通常のMSとは別の扱いで使用されていた。その存在は『艦艇』に近い扱いであった『ジークフリート』。製造コストが『昔のミサイルフリゲート艦よりも高い』からで、量産といっても、かつてのB-2爆撃機同様、ごく少数が生産されているにすぎない。だが、元々、地球連邦で最も火力がある機体であった『ZZガンダム』を巨大化した設計であった分、コストパフォーマンスは極めて良好であり、コズミック・イラ歴の二次大戦にも持ち込まれ、一定の戦果を挙げている。対多数戦に投入されやすい同機はオトナプリキュア世界にも持ち込まれており、示威も兼ねて、台北の市街地に数機が展開していた――
――国連直々に決起を期待されても、この世界ではすでに多数が往時のパワーを失っており、とても参加できる状態ではない者が多数であった。戦車道世界の守護の必要から、そこにいるプリキュアも全員が動かせるわけではないのも、ジークフリートの複数が投入された理由である。本来は廉価版として、改めて開発された量産型ZZ系の機体が望ましかったが、多数の敵を一気に始末する火力を求められた結果、予算食いとも揶揄される同機が五機以上も動員されたのだ。ある意味、ZZのモビルアーマーサイズの派生型が存在する点で、アニメとは違う道筋を辿った事がわかるわけだ。コズミック・イラ歴世界に二機、オトナプリキュア世界には五機が派遣されているが、連邦軍の手駒として、もっともハッタリが効く機体であるのも事実だった――
――台北市街地――
「あんなのが街に鎮座してんのかよ。ハッタリは効くかも知れないけどよ……」
「仕方ないだろ、品田。宇宙戦争に卑怯もクソもないからな。ハッタリも効かせたほうが安全なんだろ」
キュアフィナーレ/菓彩あまねが買い物に出た品田拓海(戦士・ブラックペッパー)と共に行動していた。あまねは状況が状況なので、キュアフィナーレの状態である。
「お前……なんで、プリキュアの状態なんだよ」
「ドリームからの指示だ。このほうが咄嗟の危険に対処できるからでもあるが」
「中国語、できんのかよ」
「伊達に生徒会長はやっとらん」
「そこぉ!?」
「意外に喋れるプリキュアは多いぞ?」
意外にも、キュアフィナーレは中国語に堪能なようである。オトナプリキュア世界では、初期勢は成人済みである上、国際的な仕事もしている者が多いため、バイリンガル、あるいはマルチリンガル化しているプリキュアも多い。また、地球連邦軍での筆記の公用語は英語なので、手紙では、筆記体でやりとりすることも多い。大人のぞみは本来、国語教師であったが、同位体と記憶などの共通化により、マルチリンガル化していたりする。
「ドリームは無理だろ。あいつ、前に会った時、俺に宿題やらせたぞ」
「ところが、のぞみさん。今はネイティブ級の英語力だぞ。普通に軍の兵士と英語で会話していた」
「なにぃぃーーー!?」」
「まぁ、色々とあったみたいだからな…。本来は26歳というのも驚きだが」
「かれんなんて、本当は27なのは参った。俺たちの先生でもいいくらいの年だぞ?」
「プリキュアになった時代が15年ほど昔だというからな、あの方々は。そのくらいのほうが納得がいく」
「プリキュアになってると、一部除いて、全員が同じような年齢の姿になってるからなぁ。協力者ではあるけど、プリキュアじゃないから、前に会った時は説明に苦労したんだけどよ、それがあいつらにとっては、15年も昔のことだって?信じらんねぇ」
プリキュア5と面識があったらしいが、のぞみ達はその時には『2008年』から呼ばれていたという事実の判明により、お互いの年齢差が大きいことに戸惑っている品田拓海。それは大人かれんも同様で、以前に会った少年が自分より一回りも若い世代であった事で、色々とややこしくなっている事に困惑中だ。
「どうなってんだーーー!!」
「……品田、気にしたら負けだぞ」
「その姿で言われると、妙な感じだぜ」
「あら、あなた達も?」
「ええ。プレシャスが胡椒餅を食べたいと言ったもので。アクアは?」
「本来の仕事に関係することよ。漢方薬を調べてたの。仕事柄、西洋医学一辺倒ってわけではないから」
「プリキュアの姿で調べ物かよ、アクア」
「その方が現地の人たちが案内してくれるのよ。見かけはあなた達くらいになるからかしら」
かれんはキュアアクアの姿であれば、学生時代からの悩みであった『年嵩に見られること』はあまりないからか、能力が戻ったのをいいことに、キュアアクアの姿で買い物兼調べ物をしているようだ。医者としての給与を幸いにも、出立前にもらっていたらしく、連邦軍に換金してもらい、漢方薬方面の資料などを買い漁ったらしい。
「そいや、あんたは本当は医者だっけか」
「ええ。研修を終えたばかりのヒヨッコだけども。同位体の記憶も得てしまったとしても、実感はないのよ。ポンと上乗せされても」
「だろうなぁ」
「だから、いつでも病院に戻れるようにしておくために、医学雑誌とか、論文のチェックは続けているのよ。野戦病院も勉強になるけどね」
キュアアクアはこの世界では志望どおりに医師になれたので、職業柄、プリキュア達の健康チェックを担当するようになった。同位体が64Fの軍医であるので、その経験も上乗せされたが、本人は実感がないようだ。
「大変ですね」
「学生時代に比べれば楽になったわ。生徒会長してたから、中高で」
アクア(水無月かれん)は生徒会長属性持ちのプリキュアの初代である。高校でも生徒会長をやっていたらしく、面倒事には慣れてしまっているらしい。また、大病院にありがちの『医局のドロドロした権力闘争』には加わりたくないのは同じらしく、ある程度の経験を積んだら、フリーランスになるか、開業したいらしい。この特異な体験を活かしたいのがよくわかる。
「医局にいるのに?」
「医者というのは、なっても研修はあるし、新技術が生まれたら、それを覚える必要もどこかで出てくるのよ。どこの分野が得意かにもよるけど」
医者は医者なりの苦労もある。地球の医学ではどうにもできない現象には手が出せないことには変わりはないが、現代医学では手遅れであるほどの傷も『別世界の自分が習得した治癒魔法』を適切に使えば、どうにかなる。(キュアハッピー/星空みゆきは宮藤芳佳としての治癒魔法を駆使し、ダイ・アナザー・デイで多くの兵士を救っている)。
「平行世界の自分が使う魔法も使えるようにはなったけど、実感がなくてね。おそらく、平行世界との交わりができたことで、徐々に向こうで戦っているプリキュアと別個体でも、存在の同一化作用が起きるかもしれないわね」
「そんなこと、ありえるのか?」
「のぞみがそうでしょう?向こうの世界にいる個体と同一人物のように振る舞っている。仕事じゃ、そのほうが円滑に事が運べるって言っているけど……」
キュアアクア(水無月かれん)はキュアドリーム(夢原のぞみ)の存在の同一化作用により、かつて願っていた職業への幻滅などを要因に、修羅の道に足を踏み入れつつある事を懸念していた。また、本来はダメダメであったはずの外国語をネイティブ級に使いこなせるようになっていたり、銃器の扱いに手慣れるなど、既に進んでいる事が明示されている。軍階級で呼ばれても、すぐに反応できるのもそうだが、パイロットとして戦うことにも違和感を感じなくなっている。教師に幻滅していたAの影響が強まるのなら、教師という職業に明るい展望を持たなくなるのは目に見えている。
「教師に戻る気あんのか?」
「本人はあるって言っているけれど……。教師も楽な仕事じゃないから……」
と、一種の予感を口にするキュアアクア。そして、のぞみがパワーアップした影響で、プリキュア5は変身のパワーソースがまた変化したらしく、変身アイテムを必ずしも必要とせず、基礎パワーがかつての最強形態を上回るようになっているなどの恩恵が生じている。また、タイムフラワー無しに『現役時代の容姿』に戻っているなど、摩訶不思議である。もっとも、素の肉体の容姿も16~18歳当時のものに戻っているのだが。
「でも、素で10歳は若返ってる事をどう説明するのかしら。アンチエイジングどころじゃないし」
「26から16だろ?その年齢なら、肌の張りが良くなったとしか考えねぇよ。20代の内はそんなに学齢期と外見の差がないしな、アジア人は」
拓海の言う通り、プリキュア5の面々はオトナプリキュア世界では、20代後半ほどである。30代に突入しただろう、美墨なぎさと雪城ほのかよりは往時の面影を色濃く残している若さであろう。大人のぞみも10代時の精神性を完全に捨てきってはいなかった事から、有事に往時の力を求め、それを取り戻した後は生き生きとしている。ある意味、それが思春期以降のアイデンティティのようなものであったからだろう。皮肉な事だが、世界が危機に落ちた時に『救世主』は求められるものだが、のぞみはかつての戦いの影響で、本質的に『平穏な生活に馴染めきれなく』なっていた。故に、キュアドリームに戻ることを心の奥底で望み、それが叶った後は生き生きとしている。この世界での『ココ』が恋人の『戦いからの解放を望んでいる』事を考えれば、実に皮肉な事実であった。その点がココとのぞみが『オトナプリキュア』世界で対立するであろう要素である。
(のぞみはこの世界を守るために、別個体の仕事を代行している。ココが聞けば『その世界の君がすべきことで、君がそんな事をする義理はないだろう!』とか言うでしょうね。だけど、私たちが決起しなければ、地球は邪な者の手に沈むしかない。ココ……のぞみはプリキュアである事で『未来が開けた』のよ?)
のぞみはプリキュアにならなければ、落ちこぼれのままで成人し、日々の目標もなく『老人になるまで過ごしていった』であろうことは、長年の戦友であるかれんには容易に想像できた。故に、のぞみは『キュアドリームでである』ことで未来が拓けたという歴然たる事実があり、そのおかげで立派な大人になれたと考えている。ココは『のぞみの潜在的な素質を引き出すきっかけがプリキュア化であっただけだ』と考えているので、そこで隔たりがあった。
(この世界では……結ばれるかどうか。向こうでは、転生でしがらみが無くなったからこそ、お互いに結ばれた。だけど……この世界ではそれが多すぎる。のぞみが『戦士であり続ける』事を選んだ事実を知ったら……)
キュアアクアの懸念はそこにあった。この世界での『ココとのぞみの間にある心境の隔たり』とココ自身の不義理さ。のぞみが『会いたい』と願っていた事を半ば裏切っているも同然の選択。立場と種族の違いがそうさせたのだろうが、皮肉な事に、世界の危機がこの世界での二人の運命を揺り動かす事になり、大人のぞみに『邪な者と戦うための力』を今一度、もたらしたのである……。