――魔女の世界の列強諸国が大和に対抗して建造を予定していた戦艦は多いが、大半が情勢の変化と空母機動部隊への志向でペーパープランに終わった。だが、空母機動部隊の高額化でそれも中止になったため、列強諸国は戦艦に回帰した。潜水艦がそれほど重要な兵器とは見做されていないからである。怪異に直接の打撃を保証できる兵器が戦艦の砲弾というのも理由であった。その内、国土の奪還と復興で、ロマーニャは新造が叶ったが、能力的には見劣りした。大和型のような大口径砲塔が制作できなかったからだ。日本連邦は友好国の協力でなし得たが、46cm砲の時点で砲身命数が実用に耐えないのでは?という懸念があったのも事実だった。それが欧州海軍の懸念であったわけだが、日本連邦の超戦艦は最低でも『長砲身46cm砲』を備え、最大で56cm砲となることで、開発意欲を無くした国は多い。その兼ね合いで、日本連邦が他国の代わりに戦艦を維持するという状況が生まれていった――
――カールスラントは雇用対策として、ビスマルク級に代わる戦艦の保有は認められた。だが、一からの新造ではなく、鹵獲したナチス・ドイツ海軍艦艇の修繕工事という形であった。日本連邦から譲渡されたものの修繕であったので、海軍は乗り気ではなかった。だが、国情が荒れ果て、何年もかかって築いた戦艦用の海軍工廠は灰燼に帰す寸前の有様であったので、やむなく妥協した。とはいえ、同位国の船であったので、扶桑式の内装をカールスラント式に変更しなくともいい点は工事関係者に好評であった。唯一、無事であったドッグを何年も占領する難工事であった。能力的には、1940年代後期には二線級とされているH41型及び、H42級であったが、同国にとっては最大の戦闘艦であり、復興の端緒につくという政治的意味合いでの保有とはいえ、かつての大洋艦隊の後継者としての意地であった。この時、既にカール・デーニッツは偏った造船施策の責任を問われて失脚しており、その次の世代の者が暫定的に海軍の指揮を取っていたわけであるが、戦前の『Z計画』を一からやり直す国力は既に失われている事から、1939年前後の状態に毛が生えた程度までの復興が第一目標とされた。ビスマルク級(実艦)の修繕も進められ、1948年度にはビスマルクが自力航行可能なくらいに回復したが、既に、ビスマルクの戦闘能力は陳腐化しており、政治的意味合いの強い復帰となった――
――それはロマーニャも同様で、せっかく完成させた『インペロ』も二線級扱いの有様であった。リベリオンは46cm砲に主力を移行させ、扶桑は53㎝砲を搭載し始めたからだ。ロマーニャの砲熕技術の立ち遅れの象徴となったが、竣工間近の時期に地球連邦の技術提供を受け、主砲の換装が決議されていたが、過度な大口径化を嫌う現場が反対してしまい、議論が延び延びになる。その間に日本連邦は53㎝砲搭載の新型を作ってしまったわけだ。46㎝砲はこうして、なし崩し的に普及していく――
――とはいえ、46㎝砲はそれに耐える船体強度も必要である。艦載砲は列車砲よりハードルが高いわけで、ロマーニャには46㎝砲の開発自体が困難であったのだ。日本連邦の内部では、少なからずがこの有様に落胆していたという。他国に攻撃軍備の多くを担わせたかったからだという。それはそれで問題であったので、結局は扶桑の戦艦保有枠の純減は議論に至らず。むしろ、巡洋戦艦の枠が増えてしまう結果であった。空母の保有枠を大きく減らし、潜水艦の保有枠も縮小させた結果であった。しかし、戦後と違い、海戦が頻繁に起こる世界なので、空母の立場が却って、危うくなりかねないという点が指摘された。妥協的に『超大型化で数を補え!!』という結論となった。その兼ね合いで、大戦型空母の大半は旧式扱いに落ち込んだ――
――雲龍型航空母艦は竣工から半年も経たない内に『旧式』の烙印を押され、空母として使われなくなっていった。とはいえ、戦車輸送艦、病院船などに転用していっても、尚も数が余っていたため、練習空母として生涯を終えていった個体も多かった。既に第一線空母は戦後米軍式空母を範とする次世代空母が担う手筈となっていたが、練習空母は必要不可欠であったのだ。そのため、戦後米軍の空母戦闘群を範にしての再建が始まる時代に残る『栄光の日本海軍』の名残りとして、雲龍型航空母艦は最後の『日本式運用がされた空母』として、名を後世に残した――
――空母機動部隊の通常兵器主体への切り替えと強襲揚陸艦の艦隊への組み込みはM動乱とダイ・アナザー・デイでの戦訓により、太平洋戦争中に進められた。怪異対策の強襲揚陸艦と対航空機対策の航空母艦とで、役割分担がなされた事になる。魔女の航空戦での優位性が『防弾に優れるリベリオン機』との戦闘で大きく揺らいだ事もあり、第二世代宮藤理論式ストライカーの製造数は(魔導触媒物質の必要数の増加もあり)伸びず、エース部隊に優先配備されるのみな状況が続いた。教練を接近戦をも考慮に入れたものに改訂しようにも、『怪異相手に、接近戦用武器を当てられる魔女は多くない!!』との反対で、なかなか進展していなかった。とはいえ、手練れ達は敵を問わず、接近戦用武器で致命打を与えている実情もあり、扶桑軍の面目は辛うじて保たれていた。扶桑の伝統として、『将校(士官)たるもの、接近戦ができてナンボである』という空気があったからだ――
――斬艦刀は元々、連邦軍独自に開発予定であったスーパーロボット用の武装として構想され、等身大サイズの試作品が存在したものであった。その個体は黒江、黒田と、時間と共に主を変えつつ、最終的にその弟子扱いの『夢原のぞみ』(のぞみA)が継承した。大人のぞみもその別個体を取得。ガトランティス残党との戦闘で大いに活用している。また、決め技も『プリキュア・シューティングスター』が効かない事が多かった教訓から、同系統ながらも、それを超越する『シャインスパーク』を使用するようになっていた。これは少女・大人共に共通する。大人のぞみには明確な敗北の記憶があるので、その経験も大きかった。VFで敵を撃退した後はプリキュアの姿で斬艦刀を日本刀形態で帯刀するようになっていた――
――かくして、大人のぞみはVF-19での戦闘を終えた後はプリキュアの姿で刀を帯刀する事にした。プリキュアになっていると、見かけは14歳当時のものになっているので、この世界の各国軍の軍人たちに舐められる可能性があったからである。立場と実年齢の都合も絡んでいたのは言うまでもない――
「ど、ドリーム。刀を差すなんて……いいの?」
「あたしは実年齢が26だしね。それに、まどかちゃん(キュアセレーネ)の親父さんみたいに、見かけで『子供』と侮る大人も多い。一種の験担ぎに近いけど、大人の精神状態で変身すると、色々な都合考えないとさ」
「そういえば、アクアも白衣を羽織ってたね?」
「あれは本当に医者になってるからさ。アクア、今となっちゃ、27だから、15歳当時の姿に戻るのは抵抗あったみたいだけど、慣れたって。エールみたいに、今は学生してる年齢じゃないし、あたしら」
「そういえば、5のみんなはもう就職してる年頃なんだっけ?」
「うん。それに、別の世界の自分の身分を借りてる身だから、恥ずかしくない戦果挙げないと、その世界の自分の評判に関わるんだよね」
「何、その切実な事情~……」
「仕方ないさ。別の道を辿った自分の身分借りないと、戦う大義名分が得られないんだもん。あたしだって、普通に私立校の教師してたんだよ。いくら地球の平和を守るためったって、法的にあたしらの戦い、けっこう厳しいんだから」
真面目にプリキュアの戦いを法的に考察した場合、現代日本の法律に触れてしまう事は多い。ドラえもん世界での2010年代後半頃に日本連邦が出来た際、ヒーローたちの実在の公認とプリキュアの登場で警察組織や法務省などが大パニックになったのは、そんな法的事情による。その事を意識したのか、大人のぞみはのぞみAの持つ『軍人』の身分を大いに活用している。自らの階級が『少佐』であることも含めて。
「プリキュアが普通に銃と刀を持ってていいの?」
「あたしは現役のプリキュアじゃなくなってたし、現役張ってた時期にも、フルーレは使ってたしね。武器は躊躇いなく使うよ」
「他に理由はあるの?」
「……覚えてる?あのシュプリームの事」
「忘れたくても、忘れられないよ。やっぱり、あの時の事を?」
「あの時に最後まで残ったキュアスカイの謎が解けたから言うけど……次々に仲間が倒されていくのは……ね」
大人のぞみはその事が心の傷になっていたのである。少女のぞみより記憶が明瞭である分、それだけ傷は深い。特に、大人のぞみにとっては……。
「あの時、あたしをかばって、ルージュが倒された時、頭が真っ白になってさ……それでプリキュア・シューティングスターを使ったけど、弾かれて叩き落された。トドメにエネルギー波を食らわされて…。あの時ほど、自分を惨めに感じた事はなかった」
「復活出来ても、負けた事には変わりないからね…」
「うん。だから、後で『和解したし、あいつは本当にプリキュアになったから』って言われても、許せなくて」
「のぞみちゃん……」
「あたしの心残りだったんだよね、実は。あいつに一太刀浴びせるのが」
「あの時は78人もいて、まるで歯が立たなかったからなぁ……マーブルスクリューとスパイラルスタースプラッシュを基軸にした合体攻撃でも、びくともしてなかったし……」
その世界でのプリキュアオールスターズの敗北の因果をZEROが見つけていた事が、みらいとリコがZEROに倒された理由である。少女のぞみはその事に取り乱していたというが、大人のぞみにとっては、時と共に『屈辱』の感情が大きくなる出来事らしい。
「だから、今回の出来事を受け入れたの?」
「半分はね。実はさ、大人になって『なれなくなった』時、虚無感をすごく感じたんだ。心に穴がぽっかり空いたような……青春そのものだったからさ、あたしにとっては…あの時の日々は」
大人のぞみにあり、少女のぞみにない感情。それは『プリキュアとしての自分』との決別を(したくもないのに)させられた事による虚無感であった。大人のぞみにはそれが『自分の青春の否定』のように思えて仕方がなく、せっかくの高校・大学時代を(心に穴が空いた状態であったために)心からは楽しめなかったという後悔もあった。故に、キュアドリームに戻る事に抵抗がなかったのである。
「だから、戻れるって聞かされた時、モノにしたいと思った。誰がなんて言っても……あの時が……あの時代が、私には一番に幸せな時間だったから……」
「のぞみちゃん……」
「大人になる事自体は受け入れてたけど……力が無くなった時に気づいたんだ。みんなとのつながりは……プリキュアだったから、保たれてたんじゃないかってね……」
大人のぞみは高校以降にそんな気持ちを抱くようになっていた。少女のぞみと違い、高校以降に戦友たちと疎遠になっていったからだろう。口では平静を装っていても、命を預け合うほどの仲であったはずの自分達がこうもバラバラになるのかという落胆があった。それ故に『昔に戻りたい』という感情が強かったのである。
「だからって、過去にすがるの…?」
「過去を守っちゃいけないって理由がある?失っている過去を守るのは間違いで、今ある現実を守ることだけが正しいの?それを決めていいのは自分のはずだよ、はなちゃん」
大人のぞみは奇しくも、シン・アスカに似た心境を抱いていた。シンとは状況は違えど、大切なものを失い、それを経た現実の非常さに打ちのめされつつも、過去の記憶を糧に生きようとしていた。だが、恋人のココは『過去を振り切らせよう』と考えていた。そのすれ違いは悲劇の芽となり得る。
「決めたんだ。過去を放ってはおかない、決着をつけるって」
「だから、プリキュアに戻ったの?」
「……大切な何かを守るために、力をもつ事は罪じゃないから」
話を聞くキュアエールの表情は、どこか悲しげであった。戦友がその心の闇を曝け出したからだろう。
(ココが知ったら、なんていうんだろう…。いつだったか……のぞみちゃんを戦いから解放させてあげたいって言ってた記憶がある。今の言葉がのぞみちゃんの本音なら……)
エールはその事に気づいた。のぞみとココの想いに決定的なすれ違いが生じてしまっている事に。一歩間違えれば、双方は破局を迎えてしまう。
(かれんさんが聞いた話だと、別の世界じゃ、ココが地球人に転生して『しがらみが消えた』ことで添い遂げられたって。だけど……この世界じゃ……どうしよう)
少女のぞみはデザリアム戦役で気付かされているが、大人のぞみは問題の本質に気づいていない。少女のぞみは周りの者たちが叱咤したりしたことで『自分が本当に求めたモノ』に気づけたが、大人のぞみはそれに気がつかないまで成人してしまっていた。それはある意味での悲劇であった。二人ののぞみは互いに別世界の存在だが、酷似した道を辿った事から、ある意味では同質の存在であった。エールはドリームと別れた後、すぐにキュアエトワールに相談。そこから少女のぞみに連絡がいったのである。
――キュアエールに充てられた士官室――
「は、はなちゃん!?」
「そっちだと、本当に14歳なの、のぞみちゃん?」
「うん。今、先輩に問い合わせて、事情は聞いたよ。そっか、そっちのあたし……」
「なんで、他人と姿を入れ替えてるの?」
「あたし、この体の元の持ち主と約束があってさ。それで。プリキュアの仕事はその子に任せてあるんだ」
ウマ娘世界と結ばれた通信越しとはいえ、キュアエールは『大人のぞみの力の根幹になった、別ののぞみ』の存在を知った。当然、のぞみAはナリタブライアンの姿だ。
「はなちゃんは生きる道を見つけたし、そっちのあたしを憐れむのは失礼だよ」
「そうかなぁ…?」
「そっちのあたしは力が戻った事で、無理に昔に精神状態を近づけようとしてるだけだ。そんな事しなくても、プリキュアの力は応えてくれるし、大人になったら、なったなりのあり方があるさ。あたし、戸籍上は20超えたし」
「え、そうなの?」
「うん。転生した時の素体になった子の年齢、それからの年数を入れるとね。私も転生してからは昔みたいにって思って、無茶とかしてさ。ある時、同じく、転生してたりんちゃんがテロに巻き込まれたって聞いた時、そっちのあたしみたいな状態に陥ってさ。周りに迷惑ばかりかけてさ……」
デザリアム戦役の際に、ヌーベルエゥーゴの構成員を捕まえた際、プリキュアの姿で捕虜に暴行を働いてしまい、黒江に叱責された事を思い出し、その事をぼかしつつも話す。
「仕事でさ、りんちゃんを巻き込んだテロを起こした組織の連中を捕まえたのを聞いた時、頭が真っ白になってさ。そいつがりんちゃんを愚弄した時、目の前が真っ白になって……気がついたら、そいつを血まみれにしてた。当然、厳しい処分受けたよ」
その時の暴行は本人の記憶からは無くなっているが、止めに入った黒江曰く、『よせ!!殺す気か!?』と狼狽するほどに滅多打ちにしていたという。当然、営倉入りにされたわけだが、その時に黒江が監督責任を取ると言い、自分から営倉に入った事に、思わず悪態をついた。口をついて出た言葉であり、本心ではなかった。それで喧嘩になり、殴り合いになった。
「で、そこで先輩が営倉に入ってきた時に、そう思ってないのに、悪態ついちゃってさ。それで大喧嘩になったよ」
「その時、のぞみちゃん、プリキュアの姿だったの?」
「うん。仕事中の時に起こしたから」
「……その人、よく生きてたね」
「先輩、あたしらより強いから」
「なにそれ」
「いや、本当」
のぞみAもその時は頭に血が上っていたので、気がつかなかったが、変身を解いていない状態の自分と普通に黒江は殴り合っていた。普通の人間なら大変に危険だが、黒江にとってはどうということはない。
「先輩は光速の攻撃を普通にする環境の仕事が副業だから、あたしのなまくらパンチなんて、屁でもなかったわけ。だけど、嬉しかったよ。処分が重くなるのを承知でつき合ってくれたからさ」
「め、めちょっく!!な、何それぇ!?」
「あたしのいる職場、ちっとばかり超人が多くてさ。よく考えたら、先輩も超人だから、普通に耐えられるって気づいてさ……」
「ち、超人が多いって……」
若干引く、キュアエール。
「前世での職場だと、そこまでしてくれる人いなかったからさ…。ほら、教師ってさ、あたしらの世代だとさ、仕事で助け合うって事……ないじゃん?」
「我、関せずだからね」
はなも、過去にいじめを受けた経験があるので、その手の話になると、当時の傷を垣間見せる。その事から、教師へあまりいい印象は(この時代になっても)持っていないようだ。
「はなちゃん?」
「……今だから言うけど、あたしもなんだ。実は中1の頃、別の学校に通ってたんだけど、そこでいじめられてたんだ。友達をかばったら…ってパターンなんだけどさ」
はなは精一杯に明るく話そうとしているが、当時の心の傷は残っているようである。はなは中1の頃、当時の親友をいじめから救おうとしたが、今度は自分にターゲットがシフトした上、助けようとしたはずの親友は『我、関せず』と言わんばかりの態度を見せ、はなとほぼ絶縁状態になったという惨状を呈した。その親友とは和解したが、以前のような関係には戻れなかった。現実はそういうものだ。たとえ、プリキュア経験者であろうと。
「その子とは、昔の関係には戻れなかった。だけど、それなりの関係を築き直せた。だから、大人ののぞみちゃんは……」
「うん。そっちのあたしは『守ることで必要になる力を求めてる』んじゃないかな。大人になったことで失ったモノ、大人になったことで生まれた『守りたいモノ』。それでプリキュアの力が必要って考えてる。だけど、それだけが存在意義じゃない。それに気づく機会がなかったんだな」
のぞみAは別個体の自分が求めているのは『誰かと絆を築き、それを守れる力』である事に気づいていた。大人のぞみは『キュアモが消えた途端に、仲間と疎遠になった』事が心の傷になっている。
「大人のあなたが求めてるのはなんなの?」
「揺るぎない絆。何があっても不変の、ね。キュアモが消えた途端に疎遠になるような仲じゃないはずって考えてただろうから。命を預けあったはずなのに、こうも簡単に疎遠になるのかっていう落胆がそっちのあたしの負の感情の源のはず。年賀状のやりとりはやってたのかって聞きたいよ、そっちのみんなに。こっちじゃ、できるだけ会ってたからさ」
のぞみAのいた世界での『プリキュア5』は、年に数回は会う機会を設けていたらしく、オトナプリキュア世界での疎遠ぶりは『信じられない』ようだ。だが、当人たちにしてみれば『不思議と、その日を境に、プリキュアになる前の人間関係に戻されたような感じがしてならなかった』と漏らしており、当人たちの意思を超えたレベルの強制力が作用したらしき痕跡がある。
「……ねぇ、はなちゃん。ココが何かいってなかった?そっちで」
「あたしも、それを言おうと思ってたんだ」
二人は同じ結論に達した。『のぞみを戦いから解放させてあげたい』という願いを『オトナ世界のココ』が抱き、それが何かかしらの理由で叶ったためでないか、と。だが、その願いが叶った結果、大人のぞみは願っていたはずの夢を叶えてさえも拭えないほどの虚無感を抱いてしまい、往時の力を取り戻すと、ココの願いとは相反する、修羅の道を歩もうとしている。このままでは『オトナプリキュアの世界での二人の破局』が現実味を帯びてしまう。二人は直感的に気づいた。
「エトワール、そっちのあたしの事を見てて。逐一、あたしに状況を伝えて」
「対策を練るんですね?」
「うん。プレシャスにも伝えてくれる?」
「ええ。そのつもりです」
「頼んだよ」
と、のぞみAはオトナ世界での自分とココの破局を防ぐため、以後、自分に打てる手を全て打つことにする。これ以後、プリキュア間で『若いのぞみ』は『のぞみちゃん』、『大人のぞみ』のことを『のぞみ先生』と呼び分ける風習が生まれていく。キュアエトワールは通信しつつも『ややこしい話に巻き込まれたなぁ』とぼやきつつも、穏やかな表情である。そして、同じ人物でも、世界ごとに心情は異なる実情を知ったため、仕切り直しの意味で、軽いため息をつくのであった。