ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

635 / 788
前回の続きです。


第六百五話「宇宙戦艦ヤマトにて」

――地球連邦はガトランティスの蘇生技術を手に入れた。ガルマン・ガミラス経由での入手であり、その最初の被験者が『沖田十三』であった。言わずと知れた『宇宙戦艦ヤマトの初代艦長』である。沖田は人材不足を呈する地球連邦にとってはかけがえのない逸材であった。宇宙放射線病で自然死を迎えたとされていたが、ヤマトの最初の航海の後に(埋葬のために)回収された遺体を調査された結果、かすかに生命反応が残っており、地球連邦の首脳部は沖田の経験、知略などの喪失を『栄光ある地球連邦艦隊の総司令官たり得る逸材が失われてしまう』とし、宇宙随一の蘇生技術を彼に注ぎ込んだ。膨大な費用と共に。沖田はこうして、黄泉の国から呼び戻された。佐渡酒造、藤堂平九郎などはこの連邦政府の決定に激昂したが、ガトランティス戦役で膨大な人的資源を失った地球連邦は『人的資源にますます制限ができた』ことを理由に、沖田の蘇生を閣議決定した。続々と帰還し始めた『銀河中心殴り込み艦隊』のクーデター抑止のため、彼らの出立時に既に名将として名を馳せていた沖田十三のネームバリューを以て、彼ら艦隊の人心掌握を図ったのである――

 

 

 

 

 

 

 

――こうして、極秘裏に蘇生された沖田十三。公の死亡時の年齢はなんと、まだ52歳。まだ壮年期の年頃である。彼は公には死人扱いではあったが、実質的にVIPと同様の扱いで遇された。本来、彼には病死した妻の他に、実子が一人いた。だが、ガミラス戦役時の冥王星海戦の折、『駆逐艦・磯風』と運命を共にし、戦死している。それを好都合と考えた連邦政府の意向で、彼は蘇生されたわけだ。彼を知る者達の思いと裏腹に、ヤマトの勇名は地球の移民領域どころか、別銀河にまで轟いていたので、傍迷惑にも、23世紀初頭は戦乱期と言っていい有様であった――

 

 

 

 

――蘇生後の沖田は『アースフリート総軍司令』の職を任せられていた。名誉的な意味合いだが、『宇宙戦艦ヤマト・初代艦長』の肩書きもそのまま持つ。無論、これは極秘事項であり、司令長官級のセクションでなければ、知ることもないことであった。沖田自身も死人であった自覚からか、積極的なアクションは起こさなかったが、銀河中心殴り込み艦隊のクーデターの動きを抑止し、地球連邦政府に再び帰属させるのに多大な貢献を果たした。そして、彼がかつて指揮を取っていた宇宙戦艦ヤマトは今、オトナプリキュア世界を救うべく、颯爽と同世界の日本を発進した――

 

 

 

 

 

 

――かくして、ネメシス率いる艦隊へ合流したヤマト。この時に、古代の軍階級が将官になっている事、本来なら、水雷戦隊の長でいいくらいの立場であることも示された。だが、古代は有事にはヤマトの戦闘班長かつ、艦長代理の地位であり続けた。その功績を鑑み、正式な艦長となったのである。この頃から、一人称が『私』になり、どことなく『魔術師』とさえ言われるほどの話術を見せ始め、今までとは異質の雰囲気を纏い始めたのである。それはガトランティス戦役での膨大な犠牲への自責の念が残っており、その悔恨が彼を変えていったからであった――

 

 

 

 

 

――そうした変化を受け入れていく古代とは対照的に『せめて、変身している時くらいは昔に戻りたい』という心境があるからか、無理に振る舞いを往時に近づけようとしていた、大人のぞみ。その事をその古代に指摘されていた。

 

「少佐、我々の世界ならいざしらず、この世界では成人済みなのだろう?無理に昔の自分を意識しなくともいい」

 

「古代さん、私はどうすればいいんですか……」

 

「時の流れは人を変えていく。君も昔のままではいられなくなっている。だからこそだ。無理に大人を演じなくともいいし、無理に子供じみた振る舞いをしなくとも良い。私はそうする事にしたよ」

 

古代はかつてとは違い、紅茶を嗜みつつ、兄の守が着用しているものと同じジャケットに身を包んでいる。沖田十三や土方竜の着ていたそれは艦隊司令級用のもので、駆逐艦戦隊の長や水雷戦隊の長は水色が指定されている。

 

「君は我々の世界の君とは違う存在なのは承知している。だが、我々と共に行動するために、そう振る舞っている。それは個人の自由だ。私は咎めんよ」

 

「ありがとうございます」」

 

「戦う大義名分は必要だが、君たちのしてきた事は自警行為に近い。法務局に一応問い合わせたが、君は我々の世界の君自身として振る舞ったほうが無難であると通達してきた。それは合意してくれるね?」

 

「ええ。教師の身で戦ってるなんて、ウチの親たちが知ったら、泡吹きますから」

 

古代は既にのぞみの秘密を全て把握済みであったが、のぞみの意を汲み、敢えて触れない事を約束した。愛する何かを守る事は戦う理由になるからだ。

 

「古代さん、どうして、この子にそんな計らいを?」

 

「夢原君の戦う理由が私の婚約者に似ているからだよ」

 

「雪さんに…ですか」

 

付き添っていた大人りん(こちらもキュアルージュの姿である)の質問に、古代はそう返した。

 

「愛する何かを守るために戦う事は恥すべきことではないよ。それが生物が戦う故での原初の行動原理でもある。私は彼らとの最初の戦いでそれを痛感した」

 

古代は『愛ゆえに戦わなくてはならない瞬間がある』事をデスラーやズォーダー大帝との死闘、沖田十三の『死』で痛感し、テレサが島大介との愛を胸に秘め、地球のために殉じてくれた事で確信へと変わった。それ故に、大人のぞみがプリキュアの力を欲した理由も察していた。古代は身近な人間たちの死をいやという程に見せつけられてきた。両親とその係累一同、苦楽を共にした同期のヤマトクルー達……。空間騎兵隊の斎藤始…。その屍を踏み越えざるを得なかった。

 

「軍人という商売を長くしていると……。前の日に飲み交わした者が次の日に戦死したというのもザラでね。大事な誰かの屍を踏み越えざるを得ない時というものは存在する。私はデザリアム戦役までに、それを充分すぎるほどに味わった。君は心の底で、りん君を始めとした、大事な者達が失われるのを恐れるが故に、自分一人で、この戦いの業を背負い込もうとしている。私にはそう見えてならない」

 

「のぞみ、あんた……!」

 

「のぞみ君。私が言えたことではないが、師や兄として頼った方々から受けた恩、それは愛情でありまた友情でもあり信頼だった、それらに恥じない様にわたしは戦っていきたい。今までも、これからも。一人で抱え込んでしまえば、行き着く先は『プロメシューム』と同じものになる」

 

「プロメシューム……?」

 

「20世紀まで地球を統治していた、『最後の1000年女王』のことだよ、りん君」

 

古代はプロメシュームがこれから辿る悲劇を知っているようであった。故に、引き合いに出す形で『仲間に甘えてもいい』事を諭した。

 

「教師だからと、肩筋を張って生きていく必要はない。周りには君の仲間がいる。たとえ、職業固有の苦しみは理解できなくとも、それをこぼせる仲の友はかけがえのないものだ。私はガトランティス戦役で恥ずかしくとも、自覚したよ」

 

古代はそこで紅茶を飲み干す。意外にも、紅茶党であり、チェスが下手の横好きであるなど、勇名を馳せる軍人とは思えない一面もあり、若かりし頃は血気盛んであったというのが、島大介や真田志郎の人物評だ。

 

「あらあら。古代くん。人生観を他人に語れるような齢でもないでしょ?」

 

「よしてくれ、雪。せっかく決まったところだというのに」

 

雪に茶化される古代。二人は婚約の状態が続いているが、殆ど事実婚状態である。籍を入れてないだけで、周りからは夫婦扱いであった。

 

「古代サンはスッカリ落チツイテシマワレタ。ワタシはハリアイがナインネン」

 

次いでやってきたアナライザーもこれだ。

 

「こら待たんかいーー!!」

 

不意に佐渡の怒声が響いたと思ったら、なんと、ヤマトの甲板に肥え太ったブタが現れた。佐渡がまたしても、食用ブタを逃がしたらしい。

 

「おお、ちょうどいい!古代、捕まえてくれんか!!」

 

「つ、捕まえると言っても……佐渡先生、こいつ、見かけより素早いですよ!?」

 

豚の鳴き声が響く。古代は捕まえようとするが、豚もさるもの、意外と俊敏な動きで翻弄する。

 

「豚にあんな知能あったっけ…。のぞみ、捕まえるわよ!」

 

「YES!アナライザー、あんたはいつでも豚を料理できるように、炊事班を待機させといて!それと、エサと水場の用意!!」

 

「ガッテン!!」

 

「こりゃ、今日のヤマト亭の晩飯は焼き豚じゃわい」

 

「佐渡先生、これで何匹目なの」

 

「これで3匹目じゃな」

 

「佐渡先生ったら……」

 

雪に呆れられるが、佐渡が処理を行う都合もあるが、敵もさるもの、こうした食用動物の脱走はヤマトの風物詩であった。

 

「コスモガンのパラライザーモードで気絶させちまおう。のぞみ君、りん君、豚をうまく誘導してくれ。コスモガンの射程に入れさえすれば、一瞬で済む」

 

「了解っ!」

 

のぞみとりんは豚をうまく誘導しようとするが、豚もさるもので、うまく動き、逆にのぞみとりんを追う立場になる。

 

「はひ~!古代さ~ん!!早くぅ~!」

 

「もう少し引きつけろ!拳銃型だから、射程はそう長くはないんだ」

 

お馴染みのコスモガンを構え、パラライザーモードに切り替える。のぞみとりんをブタが追跡し、十数mほど走ったところで。

 

「今だ、二人とも、飛べ!!」

 

のぞみとりんが大きく跳躍したのに呆気にとられた部下が正面を向き直した瞬間、コスモガンが発砲され、ブタはそのままその身を横たえた。

 

「ふう。佐渡先生、この間は牛が逃げて、けが人続出じゃないですか」

 

「すまんすまん。しかし、こいつは良い豚肉になるぞい」

 

「炊事班のヒラタさんから連絡デス。ブタをさばく準備はスンダト。ワタシガ運んでイキマス」

 

「その前に平田を呼ぼう。あいつに相談してみるか。アナライザー、呼んでこい」

 

「アイアイ」

 

それから五分ほどで、炊事班長の平田一が姿を見せた。意外にも、イスカンダル以来の古参で、ガトランティス戦役も生き残った強運のコックである。古代より歳は上だが、士官学校の同期にあたる。

 

 

「給養員呼んでくれ、平田」

 

「古代、絞めちゃって良いのか?」

 

「度々脱走されてもたまらんし、コイツは締めて、カツと生姜焼きだな」

 

「モツと骨はつっこんでいいな?」

 

「ああ。色々使いようはあるだろ?」

 

「こいつはいい出汁が取れそうだ」

 

「あの、ツッコむって?」

 

「ああ、有機物のリサイクルシステムだよ。ヤマトで始めて搭載されたものだ。けっこうすぐれものでね」

 

平田が仕組みはぼかして、二人に説明する。色々なものをリサイクルするのが恒星間航行の戦艦での食料事情だ。

 

「それじゃ、それまではどうやって?」

 

「真空パックに入れたものを渡すか、君たちの時代のように、流動食のように加工したモノを流し込むか。内惑星内用の駆逐艦と水雷艇じゃ、まだ使ってると聞いたぞ」

 

「え、そうなんですか?」

 

「軍艦でも、水雷艇や古い駆逐艦は航空機に近い構造なんだ。ガミラスの時に現役張ってた磯風型とかはそうやって済ませてた。俺の親類曰く、戦艦でないと、まともな食事は出てこなかったとか」

 

平田が言う。笑い話になっているが、意外と切実な事情として。

 

「昨今は恒星間航行が当たり前になったから、海軍もまともに食事が食える様になったって、坂本が言っていたぞ」

 

「そうそう。近頃は駆逐艦も舟形になったしな」

 

「宇宙軍が海軍の扱いなんですか?」

 

「ああ。宇宙は海。そう考えるのが、我々の世界では当たり前でね」

 

「戦艦と空母に配属されれば幸運。それが俺達の間の笑い話さ」

 

「ヤマトは特に絶品だ。俺がいるし、雪さんが紅茶の茶葉を仕入れてくれるし」

 

「え、雪さんが?」

 

「私、レーダー主が本業だけど、平時は主計科に回されてるの。個人的に趣味で買ってるところもあるけど」

 

「主計科?」

 

「昔の日本海軍の頃からの言い回しで、兵站を所管する部署だ。陸軍での輜重科にあたるものさ」

 

近頃の地球連邦軍では、日本連邦が力を持つ都合もあり、日本風の主計科という言い回しが復活しており、ヤマトの艦内組織にも存在する。雪は複数の業務を兼務しているが、主計科はそのうちの一つである。正式には船務科の一部局であり、雪は看護師と船務長を兼務する多忙な立場であり、司令部からは将来の幕僚入りを薦められていた。

 

「カツに使う塩は現地で仕入れてもいい?」

 

「この時代の台湾ドルはアスカにたんまりあるから、司令が使って構わんとさ」

 

「なら、あなた達の後輩の子を借りてもいいかしら?」

 

「構いませんよ」

 

「それと、艦内の植物園に埋めたいモノがあるのだけど……」

 

「それなら、あたしが付き添います。あたし、実家が花屋で、ちょっとは詳しいつもりです」

 

「久しぶりにりんちゃんがハッスルだー…。何年ぶりかな」

 

船務科の業務は多忙である。艦内設備の点検も入る。なお、ヤマトは警備に専任する人員が長らく置かれていなかったが、斎藤達の事例から、必要に応じて、空間騎兵隊の同乗があり、彼らが警備を担当する。

 

「船医はあなた達の仲間の子が手伝いに入ったけれど、佐渡先生がハッスルしてるわよ」

 

「佐渡先生ー?」

 

「ワシャ、近頃はコンプライアンスに気を使っとるわい」

 

のぞみにジト目で見られる佐渡。近頃はかれん(大人)が見習いという形で手伝いに入っているからだ。

 

「ああ、雪。ユニくんから通達だが、補給艦『おおすみ』からの連絡で、この子達の仲間で、医者志望の高校生という子が合流したそうだ」

 

「名前は?」

 

「えーと…薬師寺さあや、キュアアンジュとか」

 

「さあやちゃんが来たんだ。ほまれちゃんとはなちゃんが会ってるな」

 

のぞみはキュアアンジュこと、薬師寺さあやの合流を知った。子供時代は天才子役であったが、自然に笑えなくなってしまったのもあり、芸能界を引退。プリキュア引退後は先輩であるかれんの影響で医者を目指しているという。また、芸能界に残り続けている春日野うららを尊敬しているという。

 

「HUGっとの年長組は揃ったけど、あと二人は呼べないな」

 

「どうして?」

 

「うーん。なんていったらいいんだろう。あの二人のこと」

 

のぞみは雪への説明に困る。残りの二人の事はタイムパラドックスなどが絡むからだ。特にキュアアムールのことで。キュアアンジュは医学知識があるので、普段は看護師として勤務する事になるだろうが、キュアアムールとキュアマシェリはアムールの出自にタイムパラドックスが絡むため、参加は不可能に近いからだ。

 

「タイムパラドックスも絡むんですよ。それで、HUGっとは全員は揃わないんです」

 

りんが補足を入れる。

 

「アンジュはかれんさんの影響で、医者志望になったんだっけ?」

 

「芸能界は呼ばれれば関わるってスタンスみたいよ、あの子?」

 

薬師寺さあやは元子役かつ、医者志望の属性がある。史実では産婦人科医になったとのことだが、この世界では総合医になる可能性もある。かれんがそうであるからだろう。

 

 

「相原、どうした?…のぞみくん、君にだ。ユニくんからの通信だ」

 

「ありがとうございます。……どうしたの?えぇ、えれなちゃんが盲腸ぉ!?それで手術は?…あんたがすんの!?あんた、怪盗でしょうが、元の本業!!」

 

「なーに、盗みに入る時の潜入で医者に化けた事あるし、ガーデルマン少尉から医学知識は聞いてる」

 

「あの人、実家が医者だったわ、そいや…」

 

天宮えれながなんと、会った途端に盲腸になり、時間が惜しいので、そのまま自分が手術をするというユニ。なんと、ガーデルマンに医学知識を仕込まれたと述べる。ルーデルの歴代の相棒の中でも『医学部出身かつ、実家が医者』という経歴から、特に重宝されていた。

 

「のぞみ君、私だ」

 

「ガーデルマンさん、お久しぶりです」

 

「ユニくんから話は聞いている。彼女は私が遠隔でサポートするから、安心したまえ」

 

「さすが……」

 

「虫垂炎の手術は簡単なものだからね」

 

「あの、どこから回線に割り込みを?」

 

「実家だよ。大佐が義足のメンテで来ておられるのだ」

 

「やぁ、久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、大佐」

 

魔女の世界で、豪快に笑うルーデルが画面に入ってきた。義足のメンテで来ていたらしい。相変わらずの豪放ぶりである。

 

「ガーデルマンにまかせておけば安心だ。なにせ、宮藤少佐を医学校に入れさせたからな」

 

「大佐もお元気そうで」

 

「ペリーヌくんに請われて、孤児院の経営に精を出していたが、そろそろ戦線に復帰しようと思ってな」

 

ルーデルは戦争が長引いていることもあるが、戦い続ける内にウォーモンガーの気質になったため、軍を辞めてはいない。副業で孤児院の経営をするという意外な一面もあるが、基本的には『急降下爆撃中毒』である。

 

「その前に、アンデス登山に行こうと思ってな。ガハハ」

 

「大佐、アイガー北壁でも挑むんですか?」

 

「いずれな」

 

「やるんじゃないですか」

 

「なーに、急降下爆撃に慣れてると、断崖絶壁くらいではびくともせんよ」

 

ルーデルの胆力は凄まじい。話を聞く一同は『ルーデルだし……』である。芳佳やかれんが一端の医者になる道を手助けしたのは彼女である。ルーデルは戦間期には登山家として名を馳せており、魔女の世界の最高峰たちに挑んでいる最中である。

 

「ああ、ヒラリー卿のエベレスト登山に参加することになるかもしれん」

 

「エベレストにいくんですか?」

 

「君も知っていると思うが、我々の世界では、マロリー卿が生存しているが、彼がもう高齢だろう?それで、その弟子であるヒラリー卿がアタックする事になってな。ペリーヌ君のつてで、声がかかった」

 

「登山隊に参加なさるんですね」

 

「うむ。登頂できれば、彼の名は不滅になるからな。卿の妹がブリタニアの元魔女でな。それで依頼を頼まれたのだ」

 

ルーデルはこの後、史実よりちょっと早い1949年の某日、ヒラリー卿のアタック隊の一員として登頂に成功。ヒラリー卿の危機を度々救ったとし、なんと、ブリタニアから勲章をもらうことになるのである。補助隊を率いたマロリー卿曰く、『彼女が本職の登山家でないのが惜しい』と言わしめる活躍であったとのことで、この快挙は魔女の世界のトップ・ニュースを飾ったという。

 

「と、いうわけだ。黒江くんによろしくな」

 

「は、はぁ」

 

と、ルーデルは引っ込む。だが、その存在感は流石であった。

 

「ねぇ、のぞみ。今のドイツ軍の大佐さん、知り合い?」

 

「ああ、向こうのあたしが世話になった爆撃のトップオブトップの人。ハンナ・U・ルーデル大佐。ウォーモンガーなのが災いして、大佐より上にはいけないけど、一人で砲兵師団以上の働きができる方」

 

「何よそれーー!?」

 

「日本語ペラペラっしょ?」

 

「ドイツ人であそこまでネイティブなの、始めてみたわよ……」

 

りんは圧倒されたようだ。ルーデルはウマ娘のゴールドシップとも密接な関係を持つ、とんでもな魔女で、既に30代に片足を突っ込んでいるのに、敵を爆撃しまくる『爆撃魔』である。ゴルシの影響もあるのか、最近は言動がますますぶっ飛んできたと、ガーデルマンはいう。なお、智子もナカヤマフェスタとの繋がりがあるらしいので、酒に酔わせると、最近はナカヤマフェスタ寄りの性格になるらしい。

 

「それに、智子先輩も最近はカジノで当てたってたな。まっさか~……」

 

のぞみは自身の身近な先輩たちがよりによって、『ステイゴールド産駒のウマ娘』と関係があるらしい噂にまさかという心境らしいが、智子が次第に酒が強く入ると、普段が嘘のようなハスキーボイスで賭けをしだすようになってきたので、ある時にゴルシに問い合わせたという。ゴルシは『うちのナカヤマの特徴だ』と延べ、智子のナカヤマフェスタの同位体説が浮上してきている。実際、大決戦で『完全に切れた時に『すごいイケボで煽ってた』という証言があり、また、その時に『分の悪い賭けこそ、賭けの醍醐味だろ』と言ったとのことなので、のぞみは疑いを強めている。

 

 

「隊長が困惑してんだよなぁ。ったく、どいつもこいつも、ステイゴールド産駒ってのは、ぶっ飛んでるのしかいないの?」

 

と、思わずぼやくのであった。ステイゴールド自身が破天荒であったからか、その子にあたる競走馬達は気性難とハイスペックさで慣らした。オルフェーヴルやゴルシがそうである。競走馬の血統でいうと、素晴らしい馬が出やすい組み合わせとのことだが、ステイゴールドの持っていた気性難が子供に受け継がれてしまったことでもあり、ウマ娘としても、二癖あろうかという連中が揃っている。ウマ娘のオルフェーヴルが『英雄王みてぇなキャラしてやがる』との事なので、黒江も言っているが、乖離剣を持たせてみたいという。そんな状況なので、そうぼやくのも当然だろう…。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。