――オトナプリキュアの世界の地球を襲った白色彗星帝国の残党の本隊がシリウス星系付近から出撃を始めた。この状況を観測した地球連邦は土星の衛星群に建設中の基地の完成を急ぐと同時に、地球にいる先行部隊の殲滅を急いだ。台湾の解放はその一環であった。台湾は『メガロポリス』(23世紀世界での地球連邦の主要都市。旧関東圏の統合都市である)の喉元にある地なためか、妙に充実した戦力を送り込んでいる。地球連邦は性能が良い艦艇と精鋭でその殲滅を図った――
――大人のぞみもいつの間にか、鼻テープを験担ぎという名目でするようになっていた。同時期に少女のぞみが『継承』現象に遭遇したためである。また、現役時代には下手だったはずの歌も上手くなっているなどの変化も起こった。その副産物として、強い闘争心も備わったため、彼女は教師に戻るのは『だいぶ後の話』になると実感していた――
「学校から学園閉鎖の知らせ、か。こうなるとは思ってたけど。失業手当の手続きは『事が終わってから』でいいか」
自分の勤務していた学園から閉鎖の知らせが舞い込んだ。これにより、大人のぞみは『失職』した事になる。今は軍人として生活しているので、衣食住の心配はないが。
「これから高雄に?」
「そうらしい。台湾陸軍の救援だって。地球連邦は今、あちらこちらで連中の撃滅を図ってる。本隊がやってくるみたいでね」
「本隊?」
「有に億単位のいる大艦隊さ。それで今、連邦も艦隊をかき集めてる。無人艦隊を含めて、ね。一時は排斥されたけど、最近は人的資源の都合で復権してるみたい」
モビルドールなどは非人道的兵器とされたが、人的資源の枯渇の問題などもあり、補助兵器の名目での一定の配備は認められた。パイロットの全員がエースではないからである。これはガトランティス戦役などで、せっかく育っていたパイロットの多くが戦死したためで、騎士道精神の強い『プリベンターの幹部層』も『あまりの戦死者の数に、さすがに認めざるを得なかった』という。
「向こうの世界の地球の生え抜きの人口は減ったからね。戦争で。それもあって、無人艦隊や無人機が使われだしたんだ。本当はBC兵器と同義の扱いだったらしいけど、なりふりかまっていられないのが宇宙戦争だし」
美々野くるみ(大人)は宇宙戦争の厳しい現実をここで示された。地球連邦はガトランティス戦役であまりに多くを失い過ぎた。育っていた若い人材、それを統率すべき提督や将軍。結局、地球連邦が反対を押し切る形で、沖田十三の蘇生を強行した背景には、この『やむにやまれぬ事情』があり、後に知らされる佐渡酒造もうなだれるしかなかった。沖田と同世代の土方竜やその直後の世代の提督がガトランティス戦役で大半が戦死していたからだ。
「だから、一握りの精鋭に地球人類全体の運命を託さざるを得ないわけ。これは兵士一人で100人の敵を倒せっていうのに等しいから、軍からもすごい反対があってね。結局、無人機が大手を振って使われるようになった。パイロットはすぐには育たないのに、戦争が続いたからなんだけど」
「パイロット一人や艦一隻に、どれだけの働きを求めんのよ」
「昔の戦艦大和がそうだったみたいに、一騎当千さ。で、批判が大きくなったから、無人兵器が一定の制限付きで配備が拡大された。流石に人的資源に限りがある状態で、何回も恒星間国家とやり合う戦争しちゃえば、ね」
地球連邦の本国たる地球圏の人口そのものは増減を激しく繰り返した上、生え抜きの地球人類の人口比率は大きく減っている。また、地下都市を21世紀から整備してきたが故に、比較的に人数の生き残っていた日本人が連邦の主導権を握るようになった事に侮蔑の感情を持つ欧米系の人々も多い。ジオン公国は日系も少数いるが、多くは欧州系、それもドイツ系が6割以上と、独系が多い。その割にザビ家の人間らは複数が日本的趣味に傾倒していたとも言われるので、大日本帝国とドイツ第三帝国のキメラと、ジオン公国は後世に評される。そのジオンを打倒した地球連邦の祖の一つが戦後日本なのは、歴史の皮肉であろう。地球人同士では非人道的な兵器とされる無人兵器も、対外戦争では積極的に使われるのである。
「和解もクソもない連中だから、ゼントラーディの巨人達は例外さ。だから、首都を波動砲で消し飛ばすのが一番の終戦への近道。奴隷か、死か。これだよ?ガイアのイスカンダルの戯言は聞いてられないよ。波動砲も似て非なるものだし」
サレザーイスカンダルは別次元の自分たちが与えた力でアースが壮絶な生存競争を生き延びてきた事、波動砲すら効かない相手がいた事に震撼し、口出しを止めた。彼らにとってのイスカンダルは『サンザー太陽系のイスカンダル』であり、サレザー・イスカンダルではないのだ。
「あなたがそういう事をいうなんて…」
「相手が相手だしね。元々、アンドロメダ星雲を力で征服してた連中だし、地球の倫理観で動いちゃいない戦闘的な種族だ。奴等にとって、地球人類なんて『汚物』にすぎない。だから、こっちも生かして返さない。一兵たりとも、ね」
実際、和解の余地が薄いか、余地のない敵性国家がこの後も出てくるため、アース(地球)は次第に『宇宙戦争=生存競争』という図式を持っていく。例として、ウィンダミア王国の穏健派が地球本国を強く恐れたのは、この『切れたら怖い』地球人類の気質も関係する。だが、ウィンダミア王国は破滅こそ免れたものの、ゲッターエンペラーの介入でいくつもの惑星を失う羽目となった。新王も『ただでさえ短い寿命』を浪費する事になり、遠からぬ内に『王政が終焉を迎える』事を確定させてしまう。それが遠からず起こるであろう、彼らの運命である。
「それに、本当に危なくなったら、『皇帝』がお出ましになるしね」
「皇帝……?まさか……いつかの戦いで見た…あの……」
「見たことあるんだね、皇帝を」
「あれはなんなの……?」
「究極のゲッターロボさ。宇宙の外にある空間を支配する何かと戦うために生まれる…ね」
大人くるみはエンペラーの存在を知っていた。漠然とした記憶であるが、地球がビー玉以下の物体に見えるほどに巨大なロボットが自分達に味方をしたという記憶があったらしい。
「究極のゲッターロボ……」
「ゲッターロボGの進化した先の存在さ。それも、時間も空間も全て超えられる力を持つ、ね。それくらい持たないと、宇宙全体を征服できないからね」
「スケールがインフレ起こしてるわよ…」
この発言から、大人くるみは『大決戦に参加していたミルキィローズである』事がわかる。
「エンペラーは宇宙を相手に闘うマシンだからなぁ」
「あの記憶は……私の記憶違いじゃなかったわけね…?」
「オールスターズの戦いは、メンバーの全員がランダムに呼び出されるからね。ジャンヌ・ダルクさん曰く、英霊を呼び出していたシステムに似てるそうな。」
「なら、みんなの記憶に差異があったのも…」
「うん。もっとも、今は戦うのを選んだ全員が同位体の記憶を与えられたけどね」
「記憶って、ホイホイ移植できるものなの?」
「アカシック・レコードに介入できる存在なら、好きにできるからね。うちらが学生時代にTVゲームのセーブデータをあれこれしてたじゃん?あれと同じ感覚さ。あたしはその中でも、最上級の措置だけどね」
「あなたはどうする気なの?」
「この世界を守っていくさ。若い肉体に戻されたのも、そのためだろうし。教師はやりたいようにやるさ。」
大人のぞみは若い肉体を取り戻した事もあり、これからも、プリキュア戦士として生きていく事に抵抗が無くなっていた。また、軍人としての仕事をこなせるなど、能力が普通に上っている事をも示している。
「それに、教師ってのは、思ってたほどには夢の持てる仕事でもないからね」
大人のぞみは教師という職業に、一種の幻滅と失望を感じていたようである。かと言って、軍人というのは『かっこいい』商売ではない。扶桑軍の高級将校がそうであったように、愚行を起こせば、一族郎党が社会的に抹殺されるのも珍しくはない。
「軍人もかっこいい商売じゃないわよ?」
「そりゃ、わかってるさ。職業ってのは、光と影があるからね」
大人のぞみはキュアドリームの姿だが、のぞみBと比較すると、明らかに成人した女性としての発言をしていた。職業軍人として生きているAに比べると、一般人寄りの感性である。
「向こうのあたしは生粋の軍人だけど、あたしは昔でいうところの『召集組』だからね。それなりの振る舞い方ってのがあるもんさ。もっとも、向こうの身分借りてるから、士官学校卒にびびんなくていい。そこは楽だけどね」
日本軍と扶桑軍などで見られた『士官学校未卒の士官は士官学校卒の将校に見下される』風潮は地球連邦軍でも名残りがあるが、長年の戦争で関係性が逆転している。結局のところ、士官学校は『法律などを学び、士官としての公的身分を得る部署』としてしか機能していないという『戦乱期ならばの事情』がある。大人のぞみはその辺の事情を知っていたようだ。
「なんで、ドリームの姿のままなのよ」
「いつ出動かかるかわかんないし、変身してれば、無茶も効くからね。26歳の体だと、体力落ち始めてたし、肝臓の数値は悪くなり始めてたし…」
「それは飲みすぎよ」
「飲まなきゃ、教師やってられなかったからね。せっかく若返ったから、酒は控えるよ」
「あんたねぇ……」
「でも、この姿だと楽だよ。体力にブーストかかるし、体も柔らかいし。20代も後半になると、体が固くなっててさ……」
アラサーに入ってくると、30代以降のことも考え始めないとならないが、若返った事で、体力の消耗は気にしなくて良くなったことが嬉しいらしい。素の肉体も全盛期である高校生当時のものに戻ったので、26歳という実年齢を気にしなくていい。それが大人のぞみが一番うれしい点だ。
「その姿で仕事してるわけ?」
「うん。そのほうが揉め事を回避できるし」
「そういうもの?」
「くるみだって、ミルキィローズになってる方がフリーパスだよ」
「あのねぇ。ホイホイ……」
「はーちゃんなんて、向こうでそうやって生活してたよ」
「!?」
「ほら、あの子は元が妖精だから、見かけはティーンエイジャーでも、精神面は子供じゃん?それで向こうのあたしの義父も学校通わせることにしたけど、中高はまだいいけど、流石に大学にあの言動はまずいじゃん?」
「……まさか」
「後から聞いたけど、2011年ごろには、大学生してたって」
「は?すると、何?あの子、キュアフェリーチェの姿で大学生に?」
「なってれば、外見年齢通りの言動になるから、そこはしょうがなかったみたい」
「よく、普通に大学生できたわね?」
「オバQやパーマンがいた世界だし、そこは普通に受け入れられたみたい。むしろ、在学中にカミングアウトしたら、人気者になったって、一夜で」
「何よそれーーーー!?」
「その頃には、あたしらの存在、世間に知られてたからねぇ。その一人で、当時はまだ未知のプリキュアだよ?人気者になるって。で、在学中は映画サークルにいたみたい」
「映画サークル?あの子にしては……」
「養子になった家の家主と息子さんが映画オタクだったんだ。その影響。その息子さんがココの生まれ変わった青年の義父。あたしはその嫁。記憶持ってたから、すんなり…」
「はぁ!?」
「しゃーない。はーちゃん、その息子さんの妹ってことで過ごしてたし、チームのメンバーが復活するのにも10年以上かかったんだから。くるみも向こうじゃ、普通に高校生だし、歴女だし……」
「どうなってんのよーー!!」
「転生すりゃね。いいじゃない。向こうじゃ人気者だってよ」
くるみは別の自分が『転生した後も』ミルキィローズになれる事、それで色々と得をしている事を知らされた。これは複数のプリキュアに当てはまる。プラウダ高校のカチューシャとノンナなど、二人してプリキュアの過去生を思い出し、プリキュアに戻ったが、立場上、カチューシャは戦いに参加できない。だが、隊長と副隊長が二人してプリキュア化したため、歓声で学園艦が揺れたという。
「やよいちゃんとユニなんて、転生先で同じ学校になって、同じ部活してたんだよ?ありすちゃんとマナちゃんは向こうじゃ、転生した後の事情で揉めてたけど」
「え?本当」
「うん。詳しくは後で本人たちに聞きな。記憶戻ってからは昔の関係に戻れたけど」
逸見エリカとしては、西住みほへのコンプレックスにまみれていたが、プリキュアの過去生を思い出した後は相田マナとしての万能選手ぶりを取り戻したため、細かい戦術眼以外は互角、人間性も逸見エリカとしてのヒステリックな面がマナの博愛主義で上書きされたので、求心力が大きく増した。マナがエリカとして過ごすにあたって起こした奇跡だ。
「その辺は話すの恥ずいって…」
「どうやら、そっちもあたしと同じ状態になったようだね?マナちゃん」
「おかげさまで」
「マナ?なんで、あんたまでキュアハートになってんのよ。おまけに、何よその格好」
「あたしも、のぞみちゃんと同じ状態になったからだよ」
と、その本人がやってきた。こちらはずっと現役で戦っていたため、肉体年齢の若返りと技の取得以外に変化はない。服装はプリキュアとしてのコスチュームの上に、黒森峰のパンツァージャケットを羽織っている。
「あたし、のぞみちゃんと違って、戦車乗りだもの」
「61式の改修型には慣れた?」
「なんで、ガンタンク系じゃないのよ」
「ラインが戦後に止まってたんだってさ、ガンタンク系統は」
ガンタンク系は戦後、安価で優れた『デストロイド』がその地位を奪う形になったので、ガンタンクⅡも戦後に生産が止まっていた。だが、デストロイドも高性能化の進展で高価となったので、61式戦車の再生産が紆余曲折の末に始まったが、中途半端なガンタンク系はガンタンクⅡに続くものが現れずじまいとなったらしいと、のぞみはいう。
「デストロイドも大艦巨砲主義になったよね」
「モンスターの系統なんて、戦艦の砲塔が動いてるのと同義だもの。あんなの、市街戦じゃ使えないよ。陸軍の連中の神経疑うよ、まったく…」
「でも、ケーニッヒは二回の一斉射撃で弾切れニャ。だから、旧型のトマホークとかもまだ現役なわけニャ」
「ユニ。来たんだ」
「えれなの盲腸の手術を終えたら、超特急で戻ったんだニャ」
「話を聞いた時、正気?と思ったね」
「失礼な!ちゃんと医者のアドバイスは受けてるニャ!」
と、憤慨するユニ。こちらもキュアコスモの姿だ。
「デストロイドは基本、陸戦兵器だし。今回の戦じゃあまり出番ない。今が華だと思う。でも、あのモンスターの試作品、デカすぎだって」
「まぁ、デストロイドとしての発展だし」
「どこで撃つんだ?あんな大口径の実体弾。艦砲射撃の代わりにしか使えないし」
「とはいえ、現用の戦車よりは圧倒的に強いのは変わりないからなぁ、旧式のトマホークでも。台中はそれで解放したってさ」
「そりゃ良かったけど、台湾には、地震が起きやすいとこあったよね?」
「あそこでしょ、名勝地の割に、地震が起きやすい…。ドリルミサイル撃たれないように、防空艦を配置済み」
「ドリルミサイルはガトランティスもあるんだよなぁ。こっちはまだマスプロだと、試作の段階だってのに」
「波動掘削弾は?」
「要請は出したけど、台湾の地盤が耐えられるか。おまけに、名勝地だから、政府が渋ってるみたいなのよね」
「やれやれ。とはいえ、高雄を解放しても、港は使えないよ?」
「民間港湾としちゃ大きいけど、とても戦艦は停泊出来ないからなぁ。ドレッドノートにしても、40000トン超えの排水量だし」
「近海に停泊させるくらいしか出来ないな。ヤマト型で停泊できる、ぎりチョン?」
「民間のコンテナ港だもの」
「台湾海軍、艦艇は旧型のフリゲート艦やコルベットだしねぇ。あたしらからすりゃ、ほとんど沿岸警備隊だし」
台湾は戦艦級の大型艦を整備可能な港湾がほぼない。深さがないのだ。ヤマト型などの戦艦は着水時の喫水線がかなり高いが、台湾の港湾では、戦艦や空母は沖合への停泊がせいぜいである。
「駆逐艦やパトロール艦でもアップアップだから、あそこは補給拠点くらいしか使い道ないよ」
「まぁ、無いよりはマシだね」
「補給拠点が増えるだけでも、大助かりだ。台湾軍はなんて?」
「食料品とかを回してくれるって」
「そりゃ朗報だね」
「今、作戦を提督たちが会議してる。空間騎兵がパワードスーツの試作品を投入したいんだって」
「ああ、機動甲冑の新型?」
「ガイアの上が開発を止めてたのを、うちらが引き取って、アナハイム・エレクトロニクスとヴィックウェリントンが共同で開発させてた機動甲冑。採用前だから、試製だけど」
「まぁ、見かけが装着者まるだしのISより、外見上はマシだしね。箒の姉さんは『ホビー』だって、せせら笑ったらしいけど」
「あの博士はマッドサイエンティストだからなぁ」
ISは地球連邦が動力などの変更で試作の生産にこぎつけたが、コスト面の問題で断念。その代替物の一つが『機動甲冑』であった。ISのような万能性はなく、あくまで21世紀の軍用アシストスーツの延長線にある存在だからか、篠ノ之束は『単なる軍隊のホビーじゃん』とせせら笑ったが、双子座の黄金聖闘士の前任者『サガ』にとっちめられ、ユニと箒が『射撃管制装置と個人識別装置の開発』をさせたいう。23世紀時点の科学でのパワードスーツをホビーと言いきるのは、篠ノ之束の並外れた才覚を窺わせる。その束も、流石に、黄金聖闘士の最高位とされた、双子座のサガと乙女座のシャカ(容易に五感剥奪可能)の監視下では、脱走すら不可能であったので、渋々と地球連邦の使いっ走りである。
「だから、サガとシャカに監視を頼んだんだってさ、箒」
「普通の睡眠薬は致死量でも効かないようだし、身体能力も織斑先生と互角だしね。だから、普通に五感を麻痺させられる二人に頼んだんだろうな。蘇生させられた後の任務がマッドサイエンティストの監視なんて、拍子抜けだろうけど、あの二人には」
実際、束は自分が何をしても『手も足も出ない』存在が現れたことで、だいぶ拗ねていたが、箒に説き伏せられる形で地球連邦に(渋々とだが)協力しており、ガンダリウムεやサテライトシステムの開発に貢献している。本人は『雇われ科学者なんて、束さんの領分じゃなーい!!』と不貞腐れているが、一応は実績を挙げているので、制御できれば『有能』といったところか。人間性は大いに問題ある人物だが、ある意味では『幼児性が強く保たれたままで、肉体的な成人を迎えた』とも言えるので、妹からも『哀れな人だ』と評されている(その箒も、実は姉に似た邪な一面を持つ。それは幼少期に起こった事件で証明されていたが、束の手で記憶を消去されていた。また、その事件の『再来』で専用機『紅椿』を喪失する事になっていた)。
「箒も、自分の本来の運命、姉に消された記憶を見ちゃったからな。それで射手座を降りると言ってきたけど、双子座にコンバートさせるみたい」
「で、射手座は?」
「あたしが継いだよ。星矢がなるには、まだ若いしさ」
のぞみの言葉から、その出来事のショックで、箒は射手座の黄金聖闘士を降りると言い出したが、周囲の説得で、強い闇属性を持つ双子座に正式にコンバートする事になり、空位となる射手座は『のぞみが後を継ぐ』事になったことが判明した。以後、箒は残りの任期を務めた後、双子座へコンバートして聖闘士を続けていくのだ。
「!?へ、へ…へ?」
「射手座を持ち回りするのもあれだし、偶然に適性があったから、あたしが継ぐって言ったんだよね。プリキュアの状態で纏う事になるけど。黄金聖闘士って、そう出ないし。所有権はもう移ってる。あたしも本命までの『繋ぎ』なんだけどね」
「何よそれ……あんたら、超絶チートしてんじゃないの……」
「仕方がない。あたしも色々あって、のぞみちゃん寄りになっちゃったし、向こうのあたしから宝具は送られてくるし」
キュアハート(相田マナ)も同位体(便宜上、Aとする)がどこかで『斬り抉る戦神の剣』を手にしたらしく、魔術的な手法でそれを生成し、別の自分にも与えたのである。
「斬り抉る戦神の剣。あれもチートだけど、使いどころ難しいよ」
「わかってるさ。まぁ、いざという時の切り札って奴さ」
「あんたは現役続けてたから、充分に強いじゃないの!!何よこれ……現役時代の能力が戻っただけじゃ、カスみたいな事に……」
「あたしらはまぁ、チートを何重かにしてるようなもんだからさ、くるみ?」
「うん。そんなに落ち込むこと……」
「ひーん!!何よ何よ!あたしはどうせ、クレーターパンチしか能が無いですよーだ……」
「あ、あれ、この世界だと、得意技にしてたんだ……」
「みたいだね……」
同位体の計らいなどで、『チート』を地で行くようになった二人に『戦士としての実力』に差をつけられた事を大いに悔しがる、大人くるみ。とはいえ、この世界では、彼女もミルキィローズになれなくなっていたため、戦士として、大きいブランクがあったのは事実である。ヤマトの甲板で、くるみ以外の三人はそんな姿に、『一旦、なれなくなっていた後に、奇跡的に復帰できた場合の悲憤』を垣間見たか、なんとも言えない表情であった。