ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オトナプリキュア世界編と休息編の補完話です。


第五百八十話「幕間・ジャンヌダルク、そして……」

――少年のび太の話した通り、コズミック・イラ世界由来のモビルスーツたちは64Fの遠征と時を同じくして、オーブ首長国連邦のオーダー通りの改修を受けていた。オーブが現地世界で相互安全保障組織の設立を志向し始め、それに反対する者たちを鎮圧するために必要とされた改修であった。そのテストに動員されたのが、元のパイロットであったシン・アスカ、ルナマリアを素体に転生した『ジャンヌ・ダルク』だった。二人はこの時既に、自分たちの世帯を持っており、ジャンヌ・ダルクは公には『ルナマリア・ホークがジャンヌ・ダルクの記憶と能力を得た状態』という触れ込みになっており、そのように公表されていたが、実際はその逆の状態にあった――

 

 

 

 

 

――未来世界のギアナ高地に呼ばれた二人は(元々、コズミック・イラ世界の住人であったことで)プラントから『組織再編を行うから、籍だけでも戻してくれないか』という打診を受けていた。既に連邦の市民権を得ていたシン・アスカからすれば『今更……』であったが、シンほどのエースパイロットは反クライン派への抑止力として、是非がでも取り戻したい逸材であったのも事実であった。そこで、彼の生まれ故郷であったオーブ首長国連邦から『籍だけはザフトに復帰し、普段は新設の相互安全保障組織の勤務にする。これでどうだろう』という打診があり、キュアサンシャイン(ステラ・ルーシェを素体に転生した明堂院いつき)の後押しがあり、連邦軍を介する形で、古巣に復帰した。階級は(転移前とパルチザン時代の戦功で)大尉とされた。ステラが(変則的な形で、だが)生存し、ルナマリアの転じたジャンヌと家庭を持ったことで精神的に安寧を得たためか、転移前と比較し、本来の性格に立ち還った面が多く、(史実と異なり、第一次大戦当時の人間性を多少なりとも維持していた)キラ・ヤマトになつき、元上官のアスラン・ザラを真顔にさせる(彼曰く、『何があった!?』とのこと)という珍事を起こしつつ、(ルナマリアと)世帯を持ったと報告し、彼を卒倒させてもいる。シンは本来、天然な性格であったのが窺える。ジャンヌ・ダルクは(魂に肉体が馴染んだため)ルナマリアの容姿を任意に取れるようになっていたので、プラントには『ルナマリア・ホーク』として所属。ただし、以前のような勝気な性格から一転して『超然的にも思えるような落ち着きを持つ』性格になっていたので、こちらも(元のルナマリアを知る者からは)『悪いものでも食べたのか?』と言われる始末であった。(元のルナマリアは『良好ではないが、悪くもない素行』という、良くも悪くも、時代相応の若者然とした振る舞いであったため)――

 

 

 

――地球連邦からの機密通達として、ラクス・クライン以下の上層部の人物に伝えられたのは『人類史上の英傑が転生の素体となった人物に扮している』という突飛なものであったが、ルナマリアが『ジャンヌ・ダルクの関わった出来事を正確かつ『見てこないとわからない』事柄まで話してみせ、ジャンヌ・ダルクとしての戦闘服姿も見せたことの威力で納得させた。ある意味、人類史上に燦然と輝く英傑が『プラントの一将校に扮している』状態であるので、ラクス・クラインも圧倒されてしまった。この事実の通達により、ラクスは『組織の表の顔』としての業務に邁進する事になる他、組織の戦術はジャンヌの担当となった。(生前に『無学』であったためか、戦略については他に任せた)実際、英霊であった頃の能力を使用しているとはいえ、そのカリスマ性は伝説通りのもの。ザフトの『赤』であった者の肉体を得たため、戦闘能力については生前より遥かに優れている状態になっている。また、MSの技能もそれ相応になっており、キラ・ヤマトやアスラン・ザラなどの最強格には及ばないが、それに次ぐレベルにあった。(一応はルナマリアに扮する都合で)乗機はプラントの次世代機(第一次大戦時にルナツーへのハッキングで得られた基礎設計由来の)が予定されたが、国力が史実より低下した事による、プラントの有する設計局の開発力低下で遅延したため、地球連邦軍に接収されていた機体の返還を求めた。それがのび太らの言っていた『改修計画』の発端であった――

 

 

 

 

 

 

――そのうちのデスティニーガンダムとインパルスガンダムはアナハイム・エレクトロニクスの規格に沿う改修を段階的に受けていたので、中身は『地球連邦軍のガンダム』と化していた。また、ビーム兵器の登場で存在意義の薄れている『フェイズシフト装甲』を廃し、未来世界での『ガンダリウム合金』(最新のεタイプ)にされていたので、それで良ければという条件で『貸与』とされた。実際にデスティニーガンダムは、既にユニバーサル規格の『全天周囲モニターとリニアシート』に改修済みであった。シンも『地球連邦のコックピットレイアウトに慣れちゃったんだよな…』と述べており、むしろ、コズミック・イラ歴のコックピットレイアウトに違和感を感じてしまうようになっていたので、これには大助かりであった。コズミック・イラの技術者は全天周囲モニターの実用化に成功しつつあったが、より完成度の高い代物を持ち込まれた形になり、瞠目せざるを得なかった。また、コズミック・イラ歴には存在しなかった『ミノフスキー物理学』を前提にしての対ショック機構にも度肝を抜かれた(デスティニーの特徴を強化するため、メインエンジンが『ミノフスキードライブ』となっていた)。デスティニーガンダムは元々、アップデートを前提にしていたために内部容積に余裕があった事から、大手術に耐えうる余地があった。その結果、別世界の大型MSでありながらも、究極の小型MSたる、V2ガンダムに迫る攻防速を手に入れたのである。インパルスについては(コアファイター類似の機構を持っていたためか)、デスティニーに比して軽度な改修に留まった。それでも、シルエット込みでの改修であったため、相当な性能向上が起こっており、未来世界での第一線級の性能水準にまで引き上げられた。なお、両機の装甲はフェイズシフトでは無くなっているが、未来世界最新世代のガンダリウムに変更されたため、戦場での性能は却って向上。内部機構もフィールドモーター仕様へ、デスティニーはムーバブルフレーム仕様へも刷新された影響で第一線級へ一挙に躍り出た。未来世界では『ありふれた技術』で改良されただけで、第一線級の性能になれる時点で、両機の素性の良さが窺える。こうした内部機構にまで手を入れる改修は予算もかかるが、オーブ首長国連邦の負担であったので、アナハイム・エレクトロニクスは制約なしに、未来世界の技術での改修が行えた。また、元設計がプラント製であるが、他勢力の技術も入っていたフリーダム/ジャスティス系統は『この機会』に未来世界の技術も取り入れられる事になり、フレーム構造は未来世界のムーバブルフレーム(マグネットコーティング込み)へ、武装も(未来世界の核融合炉前提の)強力な武装に統一された。プラントにしてみれば『屈辱』だろうが、文明レベルそのものが一歩上(恒星間文明レベル)の世界の技術はオーブ、地球連合、プラントの三大勢力の技術水準を大きく超えているのは事実であった。いくら根幹となる理論が異なるとはいえ、モビルスーツの性能水準の平均はコズミック・イラより遥かに高い。既に核融合炉を根本で超える動力すら一部で採用されている(V2)ので、技術者らはそのレベルに唸る事になった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――かくして、M粒子はモビルスーツがある世界では、地球文明圏にインパクトを起こす存在であった。既存の兵器の照準システムの動作を阻害するため、マルチロックオン機能を前提にしての対多数戦を想定していたフリーダムやジャスティス系統の機体は(量子通信にも多少の影響が出るため)、その状況に対応を迫られたのである。その流れでクローズアップされたのが、OSに潜む『バグ』である。未来世界は戦争続きという、ある種の罰ゲームのような環境に置かれて久しいので、OSの欠陥は発見次第、適宜に改善されている。特に、コンピュータウイルスによる工作が行われていた『ニューディサイズの反乱』の後からは相応の体制でチェックがなされている。地球連邦軍の気づいていない『バグ』を利用されては、軍のメンツが潰れる。反連邦の風潮の強い地域の組織が既にその研究を行っているという情報があることから、『OSのバグ潰し』はかなりの高給が軍や、アナハイム・エレクトロニクス、サナリィから支払われる仕事であった。ガンダムF90がOSのバグで動作不良を起こした事例があるのは、軍内で有名な出来事であったからだ――

 

 

 

 

 

――地球連邦軍は人的資源が銀河の超大国に比して、絶対的に少ないのが分かっているので、無人兵器を手放せないのは分かっていた。だが、その主力化は色んな人々の努力と戦争の様相で潰えた。だが、一握りの超人だけで戦線は支え切れないのは歴然たる事実なので、縮小されつつも、ゴースト無人戦闘機の開発と保有は続いている。また、補助艦艇という枠組みで『無人戦艦』の開発は行われており、その大規模投入になる見込みの戦が『オトナプリキュア世界の残党狩り』であった。暴走の抑制のため、擬似的に人格を持たせる実験も行われているが、統合戦争前のようなレベルには到達していない。その関係で、如何にアナライザーがすごい存在であるかが間接的に証明されていた。(負の事例としては、シャロン・アップルの事件があるが、超レアケースによるものだ)無人兵器への強い忌避感をに由来する『兵力不足』を補う手段として、連邦軍は『パワードスーツの研究開発』に傾倒しだした。それは自主開発だけではなく、異星や異世界の技術も使うという、ある意味では軍の少数精鋭化を求める議会の意向も含んでの開発であった。箒たちはそんな状況の地球連邦に協力する見返りに、改修したり、パワーアップした機体の以後の所有・使用権を要求。連邦軍はそれに応じた。パワードスーツの開発は予想以上に難航していたからで、それは意外なようだが、地球連邦軍も流石に、パワードスーツの研究については、研究の立ち遅れを感じていたからであった――

 

 

 

 

 

――その開発の遅れは如何ともし難かったので、応急処置的に提案されたのが、既存の機動兵器の一部を秘密道具で縮小し、操縦システムを『神経接続による五感の機体のセンサーなどへの置き換え』に対応できるようにするという擬似的なパワードスーツ的な運用であった。ちょうど、その考えを実現できるシステムが実用段階に達した(元は障害者への医療用に開発されていたという)ため、いくつかの機体で実験を行い、その運用データを基に改良が続いた。そのシステムでの稼働テストの対象になっていたガンダムの一体がインパルスガンダムであった――

 

 

 

――未来世界の日本の演習所――

 

「あなたも遠征前最後の休暇の申請を?」

 

「ええ。プリキュアとして戦うので、この機体のテストは一段落しますが」

 

「素体となった者達はお互いに敵同士であったあなたと、こうして語らう時が来ようとは」

 

「今度は生身でお会いしましょう」

 

「ですね」

 

ジャンヌはインパルスを、明堂院いつきはガイアをそれぞれ動かしていた。それぞれのパワードスーツとしての使用感を確認するためのテストなので、機体サイズは等身大に縮小されている。お互いの素体となった人物は敵同士であったが、なんとも不思議なめぐり合わせで、共闘という運びになっていた。

 

「等身大になっていると、通常の歩兵用の武器も使えるのはいいのですが、傍から見ると、子供のごっこ遊びのようですね」

 

「そう見えるのは確かですけど、専用武器をいつも使えるわけじゃないし、壊されたり、内部の故障もあり得る。そういう時に『ユニバーサル規格』ってのが役に立つんですよ」

 

二機の細かいパーツは未来世界のユニバーサル規格品に取り替えられているため、未来世界の機体の武装は支障なく使用が可能。機体のパワートルクも遥かに向上しているので、細めのボディであるガイアでも『斬艦刀』を振り回せる。ある意味、対艦刀をより突き詰めた武器とも言える斬艦刀は、特殊な液体金属で通常の刀身を包み込むという仕組みである。ビームサーベルのエネルギー切れなどの対策としての増産が決まっているが、エース級への支給になるだろうとの事。

 

「それにしても、公にしたとはいえ、恥ずかしいですね……」

 

「あなたはルナマリア・ホークを素体に転生してきましたからね。私もプリキュアの前世で、転生の素体が強化人間ですからね。あなた方と異なる世界線のコズミック・イラでの」

 

この頃には、ジャンヌはシン・アスカとの入籍を公表していたし、いつきも自身の素体のことは公にしていた。ジャンヌ・ダルクがシン・アスカの伴侶であるのは、ルナマリア・ホークを素体にしての転生であれば、当然の流れである。既に英霊としての自分とは別の存在に転じているので、その時代のことを言われると、逆に恥ずかしいのだが。

 

「しかし、あなたも大変ですね。元の世界から『戻ってくれ』って言われるのは」

 

「ええ。参りましたよ。まぁ、ルナマリア・ホークの姿で活動しますが」

 

「機体のシステムは偽装して?」

 

「ええ。普段は通常の操縦ですね。それでも、反応速度は格段に早いですが」

 

「昔を1とするなら、今は6か、7くらいは動いてるくらいの差ですからね。マグネットコーティングを施したフレームに取り換えるだけで、機体の反応が早くなるとは」

 

「貴方もモビルアーマー形態は封印を?」

 

「四足歩行は弱点も多い仕組みですからね。テストはしたんですが、ドムを起源とするホバー移動が普及してる世界では、なる意味が半減しますし」

 

「なるほど、それで、あなたの宝具は?」

 

「この状態でも使えますよ。魔女の世界で使ういった時、妙にシャルル・ド・ゴール将軍が食いつき良くて、あしらうのに苦労しました」

 

ジャンヌは生前から持つ宝具の使用は可能だと述べる。実際に、ダイ・アナザー・デイで使用したと言い、シャルル・ド・ゴールが狂喜乱舞していたとぼやく。

 

「そりゃ、あなたは聖女ですからね」

 

「死後に祀り挙げられても、私自身は火炙りされた身なので、喜べませんけど」

 

「引きずってますね」

 

「私の死後における、ジルドレの末路を知ってしまえば……。よほどショックだったのでしょうが……」

 

「……犯罪者に成り下がってましたからねぇ……」

 

「アルトリアさんの話によれば、生前の思考が残ってない有様だったといいますし……。今なら、脳天に踵落とししてやるのですが」

 

踵落としという発想になるあたり、思考にルナマリアの影響が少なからずあることがわかる様子のジャンヌ。

 

「シンに言われて、生前にしていた戦闘服姿をルナマリアの姿でした事もあるのですが、『コスプレ』と言われた時は、さすがに往復ビンタしました」

 

「うーん……シンらしいっていうか…」

 

「しかし、まさか……」

 

「まさか?」

 

「黒のライダーが現在は女で、しかも、あなたの後輩に転生していたとは……」

 

「あ、それですか」

 

「私はどこかの世界線での戦いで『彼』の『ナニ』を見る羽目になった事があるんですよ……あの時は悲鳴挙げたんですよ!?」

 

「ああ、彼女、それを話の種にしてましたよ」

 

「あ・ん・に・ゃ・ろ~……」

 

アストルフォは現在、キュアミューズとしての生活を満喫中だが、時々はアストルフォとしての本来の容姿も使う。ただし、生前の性別は素体の関係で引き継いでいないので、本当に21世紀日本のメイド喫茶でバイトもしているなど、現代人ライフに最も順調に順応している。曰く、キュアミューズとしてだと、小学生くらいの背丈してないと、ぶーたれられるんだよね~との事。

 

「あなた方、意外と現代に適応してますよね……」

 

「英霊であった頃、生前から時を隔てた時代に呼ばれるのはザラでしたからね。アルトリアさんは日本の食事にご執心ですよ」

 

「あの方に日本の食事がわかるんですか?」

 

「あの方は私よりも古い時代に生きた方ですからねぇ。それもブリテン……」

 

「イギリスの食事はなんで、アレなんですか?」

 

「産業革命で、それまでの時代にあった料理の伝承が途絶えたからでは?私も生前は黒パン食べてましたし」

 

と、二人はアルトリアの異常な(転生後は英霊時より食事量に制限が出るはずだが)食欲が不思議なようであった。本人曰く、『私の時代は調味料が少ないだけで、味覚はまともですよ』とのことで、産業革命を境に、味音痴に堕ちたブリテンを嘆いていたという。

 

「戦うと、腹減るんですよねぇ」

 

「ええ。貴方方もそうだと思いますが、特殊技能を使うと、カロリーをかなり使うんですよ。あの方は聖剣持ちですから」

 

「今となっちゃ、バーゲンセールですけどね。のぞみにすら与えられたし」

 

「別の世界の自分自身を助ける時はどうするつもりですかね、あの方」

 

「今度からは『ノワールフォーム』で介入することにしたとか」

 

「ああ、あのダークプリキュアっぽいカラーリングの」

 

「ほら、ケイさんがゲッターの正規パイロットスーツの黒い奴を着込んでた事あるでしょ?あれみたいな感覚。デザリアムの時に闇落ちの一歩手前にいった時に偶発的に生まれた姿だけど、正規のプリキュアの闇落ちフォームみたいなものだから」

 

のぞみAは闇属性をデザリアム戦役でのタウ・リンとの戦いで得た。2023年の『キュアスカイ』が一時的に敵に肉体を乗っ取られた出来事が正式な闇落ちフォームの誕生だが、ドリームは『理性で闇属性を強引に抑え込んだ』事により、闇属性フォームとして固着化させた。翼が真ゲッターロボのようなコウモリ型、武器もゲッタートマホークとなり、草薙流古武術継承者としての荒々しさも顕となるなど、精神的影響もかなりである。通常フォームの変則的なタイプチェンジとして扱っているが、ある意味では『キュアブラック』のような姿でもある。

 

「別世界の自分には?」

 

「説明に困る姿だから、使う時は普段の洋服も黒で通す事にしたそうな。今は本人の体を他人が使っているようですが」

 

「報告は聞いていますが……ナリタブライアンとは……大物ですね」

 

「知っておいでで?」

 

「1990年代唯一にして、悲運の三冠馬ですよ。ナリタブライアンは」

 

かつては英霊であったため、日本競馬で一時は最強格と言われた一頭の名を諳んじてみせる。またブライアンがプリキュアに成り代わってまで、運命に抗おうとしている理由についても察していた。

 

「彼女はのぞみにこう言ったそうです。ヒトに近い体を得たのに、生前の繰り返しをさせられるなど、真っ平御免だと」

 

「凱旋門賞に出ようとでも?」

 

「全盛期は北米を考えていたそうですが、今はそれが目標だそうです。あの方達のアスリートとしての寿命は本来は短く、儚い。その魂の因果がそうさせるのでしょうが、のぞみも止めようとしたそうです」

 

「ディープやオルフェでさえ、無理だったのに?」

 

「ええ。ですが、自分たちの運命は決められたものじゃないはずだ。そうでなければ、歴史改変が効くものかと反論したそうです。ナカヤマフェスタが二着なのだから、自分が戦えない道理はないと」

 

「その下地作りに、実戦を使うとは……」

 

「彼女たっての願いですからね。そうでなければ、ドバイや凱旋門は戦えないと」

 

「本気なんですね……」

 

「彼女はまだ現役ですからね」

 

ブライアンは全盛期にドバイや凱旋門賞などの国際的な権威のあるレースで勝った後、有馬記念で有終の美を飾るという構想を練っていた。全盛期には『ラムタラ』や『モンジュー』に対抗し得ると言われていた故であった。なぜ、有馬かというと、自分が師と仰ぐオグリが有馬で有終の美を飾り、間接的に自分に明確な目標を持たせてくれた過去があるからである。ゴルシ、オグリ、タマモはかなりの罪作りであった。間接的に、オグリはその走りで幼少のブライアンを魅了したことになる。それも引退レースで。

 

「それはいったい?」

 

「話せば長いんですが、ゴールドシップが種族の因果を知ってしまった事がきっかけで行った試みの結果だそうです」

 

「そうでしたか、あの方は史実では、短距離レースに最晩年に出、海外どころでは…と考えが及んだので……不思議に思っていました」

 

「当人達はファンへの罪滅ぼしと言っていましたが、ある意味では、ブライアンに罪作りな事になりますよ」

 

ブライアンは明確な目標を得たことで、精神的に立ち直り始めたが、史実では引退が近づく頃合いであったので、本来は能力減退が起こる時期であった。キタサンブラックも基本世界では『G1を5勝目したあたりで、能力の減退が始まった』というので、ブライアンは本来なら、生徒会を退いていいはずである。だが、その事への強い決意が内面の老いを抑え込んだのでは?という推論も出ている。ウマ娘は人間と違い、外見の変化の差が青年期~壮年期のうちは大きくないので、ダイワスカーレットとウオッカも入学後に『本格化』(肉体がレースに最適化された状態。俗に言う全盛期)後は外見に殆ど変化がなく、ブライアン世代との外見上の差が多少なりとも縮まっている。シニア期における能力の減退は各人の気の持ちようにも左右されるだろう。実際、処置の直前に計測された、ブライアンの『ラップタイム』は全盛期よりは遅いものだが、瞬発力の向上などのプラス要素を加味すれば、総合的には全盛期に遜色ない数値であった。だが、周囲のレベルが向上した現在では『心許ない』というのが、ブライアンの結論であった。

 

「ある意味、オグリキャップさんたちは自身の未来をちょっとだけよくできた代わりに、後輩に強すぎる光を残したと言えますね」

 

「確かに」

 

オグリキャップらの歴史改変の試みは結果として、ブライアンに『史実に抗う機会』をもたらす事になり、ブライアンはそれを確実にモノにするための方策を(手段を選ばずに)実行に移した。それが減退した闘争心を取り戻すための『成り代わり』なのだろう。二人はそう推測し、自身の休暇前の最後の仕事を行うのだった。

 

 

 

 

 

――二人が行う仕事は『MSをパワードスーツ代わりにする発想』の産物だが、日本で実用段階まで一度は到達していたはずの技術があっという間に失われたのは、2000年代初期の財務省や野党関係者による予算削減の圧力による『後継の開発中止』が直接のきっかけであった。2020年代に現場の要求で、再度の開発が検討されたが、既に往時の技術陣は霧散しており、ヒーローユニオンへの依存の解消には繋がらなかった。その影響が23世紀にまで尾を引いているのである。その代替案が『MSをパワードスーツ代わりにする』というものであった。元々、『人馬一体』とも言うべきシステムはモビルトレースシステムやダイレクトモーションシステムなどで試みられていたが、それを更に押し進めた思想であったが、普通の兵士には荷が重いという意見もあったのが事実だ。なので、現在のところは『名を馳せるエース級専用のシステム』という位置づけになりつつあった。――

 

 

 

 

 

 

――実際に、銃器の出現以前のような『少数の強い将軍が手元にあれば、戦に勝てる』という常識の復古に繋がったのが、モビルスーツなどの兵器の効果であったが、同時に、他兵科をおざなりにするという批判も生まれた。地球連邦はMSや戦闘機、戦艦などのテクノロジーは長足の進歩を遂げたが、その一方で、戦闘車両は(デストロイドの出現もあり)一年戦争当時と大差ない水準で留まっていた。ガミラス戦役以降に開発が再開されていたが、試作車両の多くは(一年戦争後は開発が止まっていたためか)ぱっとしない出来栄え続きで、現場レベルでは、既存の『61式戦車』の改修型で済まされていた。それで充分(デストロイドの肥大化もあり)であったからだ。皮肉な事だが、既に陳腐化したと見做された兵器が宇宙戦争で活躍するケースは多く、実体弾がガミラスやガトランティスに予想外の戦果を挙げた事から、地球連邦軍は21世紀以前からの銃器の製造を続けている。(例として、ガミラス人は火薬を用いる武器を指して『野蛮人』とせせら笑ったが、自分たちがその兵器に散々に叩きのめされ、ついには帝国の実態が失われた事から、逆に恐怖の対象となったという)ガイアも戦訓から、実体弾の使用を再開しつつあり、結局、時には『枯れた技術のほうが戦果を出せる』事の証明がなされた事になり、実体弾の使用が何かかしらの形でできるように、連邦の全艦艇が改修を受けている。波動カートリッジ弾もその発想の産物であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――パワードスーツ代わりに運用される機体は機体管制OSに専用の調整が加えられており、関節などが(用途に耐えるように)強化されている(全ての関節を可動させる回数が飛躍的に増えるため)。インパルスは全てのシルエットが改修の対象であった。とはいえ、実際の戦場でシルエットパーツを交換して戦うほどの状況はそれほど生起しないであろうという指摘もある。実際に、似た方式のF90が戦場でパックを換装してまで戦ったケースがあまりないからだ。また、ガンダムXも設計段階ではバックパックを換装する構想があったが、サテライトキャノン装備で落ち着いたように、バックパック換装式は受けるとは限らないのだ。(換装するための時間確保が難しい事も大きい)少数精鋭には向いていても、大規模な戦場での換装が困難なので、地球連邦軍では最近は忌避される傾向がある。インパルスは半ば、テスト機のような扱いであったので、換装テストも仕事の範囲であった。同じく、等身大に縮小された無人のジオン系の鹵獲機相手に、本来の武装を使っての立ち回りをしてみるが――

 

 

「やっぱり、自分で持つと、対艦刀をツインブレードにするのは疲れるなぁ。二刀流のほうが楽だ」

 

形状故のモーメントなどの問題もあるので、よほどの達人でもなければ、ツインブレードは使わない。二刀流も問題はあるが、歴史上、実際に二刀流をしていた例もあるので、そこはなんともいいようがない。

 

「コズミック・イラじゃ、剣の鍔競り合いなんて起きなかったから、こうも鍔競り合いされると、こっちが面食らう……。しかも、接近戦を人工知能がこうも仕掛けてくるんじゃ……。こちとら、セイバークラスの英霊じゃなかった(適性がないわけではないが)ってののに!」

 

と、ソードインパルスの姿で愚痴るジャンヌ。ザクF2型のヒートホークを対艦刀で受け止め、蹴りで態勢を崩し、両断するのだが。

 

「私は鼓舞するのが役目なのであって、前線でブイブイ言わせるタイプじゃなかったのにーー!!素体がエースだからって……」

 

ルナマリア寄りの愚痴り方なので、普段はルナマリア寄りの振る舞いをしている事がわかる。最も、生前に剣を振るわなかったわけではないので、剣の心得は(素人に毛が生えた程度だが)ある。ルナマリアの持っていた技能をフル活用して、データ収集のための模擬戦闘を行っているが、生前の適性からはズレていることはメチャクチャに愚痴っている。対艦刀が大ぶりなので、『自分で扱う』となると、話は別らしい。とはいえ、ズブの素人でもない。そこは微妙なところである。プリキュアたちにしろ、転生後の環境で格闘術を修めた者もいるが、基本は徒手空拳であるので、剣を扱えるプリキュアは限られている。そのため、転生前の時点で経験無し(キュアアクアは元々、フェンシングなどの習い事をしていたため)なのに、空中での切り合いを経験し、しかも優勢になっていたキュアドリームの戦闘センスの高さが間接的に証明されたわけだ。

 

「そういえば、あの方(キュアドリーム)、ズブの素人のはずなのに、ぶっつけ本番で勝った事があるとか……。歴代のプリキュアの中でも『持っている』方なのだろうか?」

 

この頃になると、元の英霊達にも、キュアドリームが現役時代の末期に経験した出来事は伝わっていたようである。現役を終えた瞬間に世界線の分岐が起こるらしいが、少なくとも、彼女たちの知るキュアドリームは『成人後も力を失わずにいた世界線』の一つにいたようで、オトナプリキュアの世界線の彼女自身とは違った人生を歩んだ事が容易にわかる。また、世界線によっては『想い人と添い遂げられる』ことが判明したが、彼女はそうならず、薄幸な人生を辿った。それ故か、転生した後の姿は往時(現役時代)の容姿、つまりは14歳当時の姿であった。この時点でも、(非変身時には)14歳当時の頃の髪型を通しているあたり、前世での最終的な願いが現役時代への郷愁であったのが窺える。その一方で、英雄に相応しいだけのカリスマ性、全プリキュアでも随一の武勇を持つなど、相反する有り様を持っている。この経緯をまとめるなら、『個人としての幸せを、転生という奇跡でやっと掴んだ世界線』と言うべきだろうか。ジャンヌは模擬戦をしているうちに、のび太(大人)にその考えをまとめたレポートを出そうかと考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――余談だが、いつか、どこかでのオールスター戦。キュアドリームは(ジャンヌ=ルナマリアから話を聞いていたのか)第一次連合=プラント大戦でのフリーダムガンダムのような登場の仕方で後輩を救ったという。その際には、エターニティフォームでの黄金の翼を広げてみせるという『見得』を切り、後輩たちに鮮烈な印象を残し、実際に戦場でも(その世界にいた中で)現役中に相当するプリキュアチームを食う活躍を見せた。その時に助けた後輩が『花寺のどか』(キュアグレース)であった事、そのキュアグレースの転生体である『立花響』が(記憶の覚醒後に)『現役時代にドリームに救われた事があった、ドリームキュアグレースではないパワーアップフォームを見た記憶がある』などの事を話したため、ドラえもんとのび太(大人)はその出来事の調査を始めていた。話を聞くうちに、そのドリームは『自分たちの知るドリームではないか』と推測し、遠征の完了後に本格的に調べようかと思ったら、『オトナプリキュア世界の動乱』が起こったのである。のぞみ本人も(マジンガーZEROのもたらした変容により)、平行世界の自分が『この場の自分自身と同一の存在』として振る舞っている様子に困惑しているという。ひとえに、マジンガーZEROの持っていた力(平行世界のZをZEROに変容させる)によるものだが、その世界の自分がどうなっているのか。それを歴代の1000年女王の魂から聞かされ、自分としては、なんとも言えなくなったという――

 

 

 

 

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