――「オトナ」世界のアメリカ上空を抑えている白色彗星帝国の艦隊。その陣容は戦艦が1000隻を超えていた。四桁の数は白色彗星帝国の艦隊にとっては分艦隊程度であった――
「米軍は彼らへ核ミサイルを撃ち込んだ。無論、この時代の標準的な威力の弾道弾だ。彼ら米軍は『隕石』か『流星』と思ったそうだ。観測能力の都合と、光学迷彩の効果だな。その結果は……みらいくん。君も知ってのとおりだ」
「米軍は圧倒的物量で降下してきた爆撃機に対処しきれず、西海岸やハワイの防衛を放棄した。米軍は弾薬の尽きるまで戦ったが、せいぜい数百機を落とす程度で終わった。冷戦の後の時代は弾薬の備蓄がな」
白色彗星帝国の爆撃機は万単位で降下した。米軍は冷戦後の時期、全作戦機をかき集めた場合は10000近いが、戦闘機は旧式込みで2000機ほど。白色彗星帝国との戦闘では、一回で消える程度の数である。そのため、米軍は弾薬の備蓄具合を名目に、西海岸やハワイなどの地を実質的に放棄したのである。地球連邦軍も有人機だけで空母機動部隊は賄えず、やむなく、無人機を多く積んでいる(無人機を『戦争をゲームにする』と唾棄していたプリベンターには皮肉な結果となった)。仕方ないが、パイロットの全てが一騎当千の猛者ではないのだ。比較的に練度が高い部隊の集まりであるアースフリートとて、『フェーベ航空決戦時』当時の練度の六割に届かないのだから。
「米陸軍もこの戦闘で壊滅した。まぁ、この世界の軍隊はアテにならんがね」
トチローはこの世界の地球と白色彗星帝国との互いの技術の差が顕著なのを知ってるので、『当てにならん』と断言した。やっと衛星軌道に進出したばかりの時代の技術では『カカシ』という事だろう。
「のぞみ。別のお前がいる世界のほうがまだマシくらいな差だ。現地の軍隊が戦力外じゃないからな」
「言えてますね」
白色彗星帝国と21世紀地球の戦力差が端的に表される。ちょうどその頃、魔女の世界では、『重巡・高雄の史実での顛末で義憤に駆られた元乗員によるブリタニア大使襲撃事』の裁判が始まっており、ブリタニア側が扶桑側に譲歩する形での結審の方向性が議論中である。これは扶桑人が激昂し、ブリタニアを経済的に破綻させ、連邦の形骸化か解体に持っていかれる事を恐れていたためで、大使には涙を呑んでもらう(どのみち、刀で職務不可能な傷を負っており、本人も精神的に立ち直れない状態であるが)ことになる見込みであった。
「別のお前の世界だが、戦争より、大使の襲撃事件の裁判のほうが紙面を飾ってるそうだぞ」
「日本の意向ですよ。戦争のことはどうしても反戦寄りの報道にしたいそうですけど、扶桑の方に大義がある上、リベリオンの裏に非道で鳴らしたティターンズがいるから、報道はしないことに。日本の連中、国防省の発表も大本営発表だって言って、まるっきり信用してませんし」
「お前んとこも大変だな……」
「国防省の連中も泣いてますよ」
日本連邦体制の苦労の一つに、国防省の発表の扱いであり、軍の戦果報告の迅速な報告は天皇への上奏などに限られるようになっていたが、市井の人々の軍人への取り扱いの急速な悪化などの問題も出たため、結局は『月に二度ほどの政府発表で、その時点で戦功顕著な軍人を表彰する』という妥協案で軍人への目線の冷却化を図った。
「あれ?なんで、スラスラ言えんの?」
「記憶が共有されてるからだよ。パソコンみたいに。平行世界のあたしがヒトの領域を超えた存在になった影響なんだ」
「その辺は俺たちも研究中だ。全ての個体にに適応されるわけでもないみたいだからな」
のぞみAの記憶と能力は『戦う意思を持つ別個体に優先して共有される』のは確実だが、Bには不思議と継承されていないなど、その仕組みには謎が多い。何らかの理由があると思われるが、その仕組みは不明である。だが、大人のぞみは明確に戦う理由があり、全てを擲つ覚悟もある。それが継承の理由だと思われる。
「あたし、超常の存在との接触で、素である程度は若返ったんだけど、ヤマトのいる世界でのあたし自身みたいな戦闘訓練なんて受けてない『ズブの素人』だから、体力が自信なくてね。デスクワーク主体の仕事だったし。それで、ここ一週間は変身しっぱなし」
「軍隊はハードな仕事だ。本来、この子のような素人を一線で働けるようにするには、数ヶ月から一年半の訓練期間はいるが、元のプリキュア資格者は経験が活かせるところが多いからね」
プリキュア資格者は身体能力の増強などを理由に(喧嘩殺法とはいえ)、ある程度の格闘がこなせる。それは大人になっても失われない経験値である(自転車のコツのようなもの)。大人のぞみは思いきりの良さが現役時代より向上したり、保健体育の授業に立ち会うこともあった関係で、知識としての格闘技は把握していたので、(たとえ、『タイムフラワーによる一時の奇跡』であろうと)ブランクを感じさせない戦闘をこなせた。継承で恒常的な変身能力を取り戻した都合上、戦闘面ではAに遜色ないレベルに向上したが、10年単位のブランクは基礎体力の差で顕著に表れ、職業軍人として完成され、驚異的な体力を誇るAに持久力などで数段落ちる(平均的な20代後半の働く女性の体力値の平均こそ上回っているが)事がわかっている。それを補う目的で、継続的に変身しているのだ。
「とはいえ、10年のブランクはデカくてね。現役時代に比べると、体力とか持久力が落ちちゃってるんだ。いくら肉体的に若返っても、そう都合よくいかないって事」
のぞみは15歳前後の最盛期には『体力が有り余っていた』が、オトナプリキュアの世界線では、デスクワークが多い都合もあり、26歳時には、かなり体力が低下している自覚があった。肉体的に若返っても、最盛期の体力を取り戻せるとは限らないということだ。
「うーん……姿が若返ったとしても、全部が前と同じようにはならないってことかぁ。そう思うと、はーちゃんの魔法はすごいんだなぁ」
「そう。素も高校生くらいに若返ったけど、それじゃ、みんながあたしってわかんないっしょ?」
「たしかに」
みらいもそうだが、プリキュア仲間が記憶しているのは『プリキュアとして活動していた時期の容姿』であり、多くは『13~4歳前後』である。成長で印象の変わる人がいるように、加齢で少女時代の面影が見出せなくなる人もいるので、大人のぞみはキュアドリームの姿を保つことで、その問題を暫定的にクリアしている。
「それもあるんだ。みんなが覚えてんのは、キュアドリームとしてのあたしか、14歳ん時の姿だし」
「そういうの聞くと、大人になるのも良し悪しっていうか…」
「いいじゃん。みらいちゃんは昔とヘアスタイルも変わってないけど、あたしは大学以降は変えてたから、昔の友だちに『変わった』って言われるのが当たり前になってたんだよ」
「なんとなくわかるなぁ」
みらいやリコは成人しても『往年からヘアスタイルが変わっていない』が、のぞみは大きく変わっていた。それもあり、この時点では現役時代に近めのスタイルに素で戻しているが、手入れの暇がないので、変身しっぱなしである。
「昔の髪型で働くわけにもいかなかったからね、ガチで。気にしなくて良くなったけど、ウチの両親を心配させちゃうから、変身したままでいるほうが手っ取り早くて……」
「世知辛いなぁ」
「次元世界の説明に入ろう。元々は――」
ここで、真田志郎は次元世界にまつわる説明に入る。同一人物でも、異なる道を辿った世界線は無限に存在する事、その内の『戦士として、最強の力を持つ』世界線との統合が進んだ結果、のぞみは恒常的に『超プリキュアとなっている』と説明される。
「なんか、有名な漫画みたいだなぁ……」
「あの漫画に近いよ。限界を超えるって意味じゃ。向こうのあたし、シャイニングドリームの殻をぶち破ったらしく、こういう姿になれるみたいだ」
「うわっ!風と光……!?」
激しい風と閃光が走ったと思えば、姿がシャイニングドリームのそれをベースに、より『神々しくなった』フォームへと変わっているドリーム。そのフォームに熟れた時点の熟練度が引き継がれた都合もあるのか、オーラを発している。また、時たま『火花が散る』のもあり、漫画で描かれた複数のパワーアップの要素がごちゃ混ぜ状態であることがわかる。
「すごい……漫画みたいなオーラが出るなんて……」
「プリキュアであれ、なんであれ、ある一定の領域を超えると、オーラが出るみたい。現役時代のような『ボヤッとした』感じじゃなくてね。この姿なら多分……あいつ相手でも、初見で対等に戦えたかもしれない」
大人のぞみは『プリキュアがアニメである世界線』での『プリキュアオールスターズF』の出来事を経た経験がある故か、早々に倒された事を根に持っているらしく、エターニティ形態なら『初見で倒せたかもしれない』という確信があるようだ。
「このフォームの力はまだ未知数だが、アレキサンドライトスタイルの君を圧倒するほどの能力を誇る。魔法攻撃を諦め、ステゴロを選ぶしかないと判断させるほどだ」
「うそぉ!?アレキサンドライトスタイルの金魔法を無効化できるの!?」
「向こうのあたしはそれをしたみたい。で、喧嘩で危うく、月を壊すところだったらしいよ」
「その時に君等がパンチでへし折った『通りがかりの宇宙戦艦』の竜骨の一部がこれだ。仮にも『惑星間航行を前提に造られた戦艦の竜骨』をパンチでここまで変形させ、へし折るとは……」
「う、うん…。思ったよりパワーが上がるみたいでさ……」
のぞみはそこはバツの悪そうな顔だ。大型戦艦をへし折るほどの威力が出るとは思わなかったらしい。
「攻防速の全てが飛躍しているようで、並の戦闘力では、その場から退かすこともできん。通常フォームでは、初代といえども相手にならんだろう」
それほどの力を持つ姿だと説明される。無論、多少の誤差が個体によってあるだろうが、それでも攻防速の全てを『通常の超プリキュア』以上に飛躍させるのは確実という。
「お前らは代によるが、強化フォームがまったく存在しない事もある。だが、別の異能の影響で、新しい能力が生まれる事もある。これはその最たる例だ」
そもそも、エターニティ形態は大決戦で黒江が入れ替わっていた時に小宇宙の力で発現させたのが最初なので、必要条件に小宇宙が絡むのは確実である。Aは草薙流古武術を継承したので、そこの側面で条件を満たしたのは間違いないだろう。
「それははーちゃんもですか?」
「そうだ。もっとも、あの子の場合は神に匹敵する敵の手で大地母神の属性から切り離された後に、その代替となる異能を得たようなものでね。姿は通常時と同じだが、能力は全く違うものに変化している」
真田志郎の説明の通り、キュアフェリーチェの場合は『大地母神の属性』を奪われたが、プリキュア戦士であることは改変できなかったためもあるのか、アレキサンドライトスタイル以上の形態にはなれなくなったが、通常フォームの姿で遥かに強大な力を奮うようになっている。ただし、ゲッター線の力を取り込んだためか、怒りが頂点に達した場合などで『顔にゲッターの模様が浮かび上がる』ようになっている。
「この写真が証拠だ」
「!!」
大人みらいは唖然とする。それはキュアフェリーチェがストナーサンシャインを使う際のショットであった。躊躇なく、街を包み込む大爆発を引き起こす技を使う、武器にハルバードや大鎌を使うなど、『姿が同じなだけの別人』であることが容易にわかる。
「嘘……これが……」
「はーちゃんも別の世界で色々あってね。あたしが面倒見てる。その世界でのみらいちゃんは忙しい身の上になってるからね」
のぞみAの世界でのみらいは『一度死んだ』事もあるのか、気質が変化しており、オタク化している。それもロボットアニメオタクであり、地球連邦大学で工学科を専攻するほどになっていた。魔法と科学の双方を極めようとしているようで、自分の手で機体を試作するほどになっている。大学に通い直している都合上、ことはと一緒にいられるわけではないので、のぞみが面倒を引き受けている事が大人みらいへ教えられる。
「うーん……一度死んで、魂を新しい体に移された……。そんなことができるの?」
「別のあたしの上官、生身で冥界行けるから、それで魂を連れ戻したんだって。それと、オリンポス十二神に仕えてるから」
「えーーーーー!?なにそれーーーー!?」
「あたしに聞かないでよ。とにかく、そういうからくりで蘇生したんだ」
「だから、どこをどうしたら、ロボットアニメオタクに!?接点なかったよぉ!?」
「うーん…。生き返った後、はーちゃんを引き取った先の家の家主の息子さんがロボットアニメ好きだったんだって。その人のコレクションを借りて暇つぶししてたら…って感じだって」
「……」
別個体とはいえ、自分自身がロボットアニメオタクになった事は衝撃だった大人みらい。かなり動揺しているようで、語尾が震えている。
「それに戸籍の作成とかで、色々と時間かかったんだって。裏技使ったとかなんとか。そもそも、その世界にいた人間じゃなかったからね。年単位だったらしいから」
大人のぞみも別個体の記憶がソースだが、事情を説明する。A世界のみらいとリコは(お互いに故郷の世界が滅んだため)、ドラえもん世界で生きていくしか方策がないため、黒江たちがあれこれの工作をG機関を動かす形で行った。不自然ではないように装うため、わざわざ使えそうな『直近に死亡済みで、みらいと同姓同名の人物がいる戸籍謄本』を探し出し、それをベースに各種偽装を施すなどの工作を行ったが、時間を要するものであった。
「それに、家主さんがね。ドラえもんのあの家でさ……」
「今、ドラえもんって言った!?」
「うん。あたし、野比家の養子に嫁入りしてるんだよね、別個体だけど。だから、所帯持ち扱いなんだよ。ココの生まれ変わりと転生した後に結婚したみたいで」
「なにそれーーー!?」
「あたしだって、別個体の記憶頼りなんだってば。まぁ、こうやって、ヤマト乗ってるから、信じるっしょ」
「ヤマト……本当に造られる世界があるんだ…」
「オリジナル版のほうだけどね」
「それはトチローさんいる時点で」
「でしょ?」
トチローはある意味、ヤマトのオリジナルとリメイクを区別するためのアイコンとなっているようだ。この場のトチローの末裔こそが、アルカディア号と戦士の銃の生みの親のトチローである。
「でもさ、その姿……アレキサンドライトスタイルより強いなんて」
「超プリキュアを超えた超プリキュアって言っていいパワーアップだからね」
「ますます、バトル漫画じみてきたなぁ」
「あたしらが言うセリフじゃないって。SNS時代、すぐツッコミが入るよ」
「だよねぇ。でも、軍人、それもヤマトやガンダムが普通にある世界に?」
「正確には、そことも別の世界に生まれ変わってたけど、ワープは次元間移動にも応用できるそうでさ。気がついたら、地球連邦軍に入ってて、ガンダムのパイロットさせられてたってヤツ」
大人のぞみは苦笑交じりだが、のぞみAは属性が過多気味である。もっとも、彼女自身も固有の属性として『1000年女王』がついたので、似たりよったりの感があるが。教師属性の代わりが1000年女王というのも、まずないものである。
「そこの地球連邦軍、なんでもありなの?」
「戦争の連続で人材不足。マクロス、ガンダム、ヤマトの戦争が立て続けに起こっても、まだ滅びてない世界だからかね。あたし、また別の世界の、それも旧日本軍の将校だった人が転生の素体だってんで、そのまま地球連邦軍の将校にされたんだ。あたしがその個体の記憶と能力を得た時点じゃ『少佐』になってた」
「エリートじゃん」
「元々、旧陸軍の陸士五十二期あたりを出てたからね、素体になった人」
「陸士?その割にパイロットなの」
「航空士官学校だけど、普通の陸士の卒業扱いなのさ。戦時で簡略化される前の教育の最後の世代って感じで」
空軍生え抜きの将校は1949年時点ではいないため、現場の空軍将校は基本的に陸海からの転科であったのが当たり前の時代。扶桑はちょうど、新時代までの過渡期にあった。また、日本の意向により、『戦時下で簡略化された士官教育を受けた者は統合参謀本部内の幕僚職につけさせない』という暗黙のルールが設けられたため、菅野の世代の一期下からは現場で使い倒されることになった(菅野の一期下の代から教育の簡略化が顕著になったので)。現場の新陳代謝の停滞もあり、1949年時点での『新世代の魔女』はその世代のままであった。仕方ないが、『軍人に持たされていた社会的ステイタスの社会的保障が正式になされている世代』が紆余曲折の末に『1946年までに入隊済みの者まで』と定められていたため、その後の数年は志願数が壊滅状態だったのだ。
「日本は正式な空軍なかったし、空自は戦後のことだからね。だけど、今じゃ事実上の『海軍』にいるようなもんだね」
64Fの幹部層は活動範囲が地球連邦のある世界に及ぶため、必然的に地球連邦軍の軍籍も持っている。のぞみもデザリアム戦役に参戦した際に得ており、大人のぞみはその軍籍を借りている状態である。とはいえ、上級将校である佐官の地位という事は色々と融通が効くのも事実だ。アムロとシャアはネームバリューだけで専用機をこさえさせられるが、通常はない。宮藤芳佳も『魔力値にスペックが追いつく機体』を充てがわれ、それが使用機になっていくので、完全な専用機をこさえさせ、任務に用いる事は兵站に携わる士官からは『睨まれる』。黒江たちがミーナに『疎まれていた』一因でもある。とはいえ、エースパイロットはそれ専用の機体を与えられるという風潮が『魔女の世界』でなかったわけではない(マルセイユは過去の体験から、工場からの『吊るし』の専用機を嫌っているが)。
「エースパイロットだから、一応、ガンダムの使用権持ってるよ。地球連邦軍も『地球圏自体の危機が続いた』から、自軍の象徴として積極的に使うように考え直したみたいで」
「反体制のアイコン扱いにされてたもんね、私が見た映画だと」
「あ、閃光のハサウェイ、見てたの?」
「ポップコーン目当てで、ゼミの友達に付き合って。あのガンダムある?」
「姿は違うけど、クスィーガンダム自体は開発されて、隊の先輩が使ってるよ」
「あるんだ。つか、ガンダム、どのへんまであるの?」
「地球連邦軍の純正はF91まで造られてるよ。Vガンダムとかは地球連邦軍の計画じゃないからね。小型の時代が終わったところだな。小型過ぎても、問題あるんだって」
小型機全盛期の頃に『わが世の春』を謳歌したサナリィだが、政府直轄ながら、裏でブッホ・コンツェルンと密約を結んでいた事、一部の支社が公然とザンスカールに協力したという不祥事の発覚で世間から責められ、衰退期に入った。自社製小型量産機の開発の失敗も響いた形だが、星間国家との戦争で『小型機の難点』が次々と露見した事も致命的であった。そのため、逆に『マルチロール化』を名目に、『大型化』へ回帰するという状況であった。ただし、アナハイムのブランドと化した『RGMシリーズ』もジェガンの後継に苦労しまくる有様であったので、ジェガンのリニューアル計画が立案され、実行されている。その一方で、一時はMSの新規開発が止まった影響もあるので、量産機はジェガンの系譜をどこかで継ぐ機体が主な状況であった。これは戦闘機とハンガーを共有せねばならぬ事情がある都合上、それを考慮しない事が多いサナリィの設計が現場に嫌われたためでもある。ジェガンは一時は決戦兵器扱いで量産された事から、製造数は星の数ほどもあり、予備パーツもまだ純正品が潤沢に手に入る。それも戦時が終わると、一気にモデル寿命が尽きる場合が多いMSにしては異例の長寿に繋がった。
「車みたいなもん?」
「車もそうじゃん?あれも事故ったら、小型車だと死ぬし」
「それは当たらずも遠からずだよ。まぁ、小型化の弊害は多かったがね」
「それと、別のお前が直近の特訓で身につけたことだが、ある特別な呼吸リズムが太陽光と同じ波長のエネルギーを生み出す。素質のある『生命力』の強い者が身につければ、肉体の老化を遅らせる事ができ、最盛期の若さを長く保てる。俺達はある世界の観測結果から、『波紋法』と呼んでいる。まぁ、その効果はおまけだというが」
のぞみAは戦間期(1945年九月からの数年)の間、先行して波紋法の特訓を受けていた事、それをものにできたのは『最近のこと』だと、トチローから語られた。のぞみAが変身前でも、現役初期の変身と同等の能力を発揮できるようになった理由づけだとも語る。その効果は(26歳に達していたので、内外で『身体がピークを超え始めていた』)大人のぞみに身体的に最盛期の活力を取り戻させたわけだ。
「そのおかげで、体力は全盛期に戻り始めてるんだけど、元が運動不足だったから、軍人として振る舞うの、素の姿じゃ無理でさ」
「なにそれーーーー!!チートだよぉ!!」
「いやぁ、はーちゃんさえ来れば、全盛期かつ、プリキュアにいつでも戻れる保証もある、みらいちゃんのほうがズルいって…。こっちは『チートをいくつか与えられたおかげで、やっと戻った』んだしぃ」
「あ、自覚あるんだ」
「26歳にもなればね。しがない教師だったんだしさ、こちとら」
自身が26歳の『しがない教師』であった事から、世間的に英雄扱いのAが羨ましい節を覗かせる。これはのぞみAと違い、青春期の後半はどこかに虚しさを抱いたままで過ごしていた反動が強い故で、壮年ココの犯した『大罪』のわかりやすい実害であった。故に、彼は『世界の危機に対処する力をプリキュア達から奪った』と、周囲に白眼視される身に落ちてしまった。本人は宇宙刑事ギャバンやキュアフェリーチェに(言い訳がましく)釈明する羽目となるなど、別個体には『はた迷惑』だが、自分の株を下げていた。
「あたしはこれから、もう一度、青春をやり直していくよ。プリキュアでなくなった後、何をしてても、虚しい気持ちがあったからね……」
「のぞみちゃん……」
プリキュアであった者はそれを無くした後には『虚しさ』からの『傷』を残す。のぞみも、みらいもそれは同じだ。大人のぞみはある意味、プリキュアであったことで『生きる意味』を見出せたため、それを理不尽に奪われた事は青春を奪われたも同然である。ココはそこに考えが及ばなかった。また、かつてと違い、守りたいものが増大していたことで、一度は諦めた力への渇望が表面化した。その精神状態の反映か、大人のぞみは哀しく微笑む。みらいもその気持ちはわかるので、複雑であった。