――宇宙戦艦ヤマト以下の先遣隊は開き直って、アメリカ上空を飛行しているが、米軍は『戦力温存』の指令でも出たか、動く気配はない。ヤマトは主力戦艦を五隻、空母を四隻ほど従えており、空母機動部隊との一戦を前提にしての編成であった――
――地球連邦軍・アースフリートはこの頃にはコスモタイガー、コスモ・ゼロを主な主力に用いている。改良も進められており、もはや一年戦争中のセイバーフィッシュなどとは比較にならぬ高性能であった。イスカンダル由来の技術が戦闘機の制御技術を飛躍させたためである。一年戦争中と異なり、重力・慣性制御などの技術の発展で、戦闘機の挙動に第二の革新が起こったために、以前のような(極初期のVFまでのような)スラスター前提の姿勢制御があまり必要なくなったため、宇宙戦闘機の価値が見直されたのである。コスモタイガーはその開発プロジェクトとしての第一弾であった。ここ数回の戦乱での実績から、地球連邦軍の主力とされているが、アースフリートなどに優先配備されていた都合上、実は末端の部隊には滅多に出回っていなかったという――
――のぞみの別個体がヒトを超えた存在へ進化していたことに伴う並行世界への影響。大人のぞみはその恩恵で、一定範囲の若返りを果たし、プリキュア化能力も取り戻した。ただし、いくら肉体的に若返りを果たしても、ここ十年ほどの基礎体力の減退は覆しようがないため、ここ最近は変身しっぱなしであった――
「みんなにも、別の個体が?」
「いるよ。今はオリンポス十二神の意思で、ランダムに全部の次元から資格者が集められてるみたいで、あたしらのチームも、全員が違う歴史の世界の出身。だから、現役時代の話は避けてるんだ。微妙な差があるからね」
のぞみAが当初に悩んでいた事がそれである。この頃には、全員がそれを理解した上で接し合っている。共通項も多いが、違う点も多いのだ。
「この世界じゃ不思議な事に、現役期間から一定時間の経過で変身能力が失われる。それで、みんなが『戦いたくても戦えない』。集められるだけは集めたいけど、全員は無理だろうね」
大人のぞみはこの辺は割り切っているようである。現役期間を終えると、変身能力がなくなるプリキュアも増えたからである。壮年ココの計算外は『突発的な危機の可能性は消えない』ことを考えていなかったことだろう。
「ガチの宇宙戦争だから、あたしはみんなに無理強いはしないけど、国連にああいう決議を出されちゃうと、肩身が狭いと思うよ?」
「言えてる。どうするの?」
「暫定的なリーダー格として、決議に返答するしかないっしょ?全員が変身能力を持ち続けてはいないから。記者会見のセッティングは連邦軍に頼んであるから、今日はその仕事がある。それと、若い子をなんとか戦えるように鍛えないと……」
――大人のぞみは『この世界の元資格者らへの配慮を兼ねて、『プリキュアの現状』を公表し、世界に許しを請うことにした。変身で容姿は変化するが、元の面影を見いだせる者も多いからだ。大人のぞみは炎上も覚悟の上で、キュアドリームとして会見に臨んだ。会見で、『自分は既に成人済みの身である』と断った上で、自分は『夢原のぞみ』という日本人である事、プリキュアに覚醒した時は『14歳の少女』であった事、その時の容姿がプリキュアとしての姿の基本ベースになっている都合上、『成人した状態で変身しても』ミドルティーンの少女の形態を取っているのだと説明していった――
――別個体が複数の言語を使える状態にある恩恵で、英語・日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語などの言語を使っての説明がなされていった。後日に動画配信も予定されており、プリキュア全体の暫定リーダーとしてのポジション故に、こうした『政治的な仕事』も必要なのである。中学時代の『劣等生』『天然ボケ』『国宝級のドジ』な姿を覚えていた者ほど、長じた後は『国語教師』をしていた時期があったり、軍隊でもエリートの登竜門たる階級の『少佐』に登りつめているなど、現在進行型で『社会的成功者』に属している事に驚愕したのは言うまでもない。また、プリキュア5として、巨悪に立ち向かった経験を持つ事、自分たちが必要とされたのならば、異星人の脅威に立ち向かうべく、起つ決意であると述べた。また、自分を始めとして、『プリキュアへの変身能力は不変ではなく、時と場合で失われる』儚い奇跡であると前置きした上で、元の資格者は多くが市井に溶け込んでいる事、元の資格者を責めたところで、往時の能力は戻らないと述べ、彼女らを擁護した。現在も戦える者は立ち上がるが、若い時に資格者であっても、現在はそうではない場合もあると――
――会見は主に大人向けに行われた。プリキュアやヒーローの言うことを素直に聞く子供と違い、大人は『悪意が心を支配すると、子供のする場合より悲惨な結果を必ず起こす』からで、元のプリキュア資格者が針の筵にされないように、という趣旨であった。呑気に構えていたところに『有事』が起きると、人間はその鬱憤晴らしをどこかでしたがるものだ。大人のぞみは教師生活でそれを実感したため、何かしらの声明は必要と判断したのだ――
――オトナプリキュア世界は『本来起きるはずの出来事より遥かに危険極まりない』状況になっていた。地球連邦と彗星帝国の第二ラウンドの場と化したからで、既に旧東側諸国は『先制核攻撃』が仇となり、組織的抵抗力を早々に喪失。中国に至っては、政権中枢の全滅で政権があっさりと崩壊。瞬く間に五代十国、五胡十六国時代もかくやの乱れように陥っていた。辛うじて統制を残した西側諸国も、持ち前の核戦力が『戦力外通告』を受けた事による軍事的混乱が大きく、結局は軍事的には傍観を決め込み、プリキュアに全てを託すしかなかった。大人のぞみは結果的に人々の期待を背負わされ、名実ともに戦士へ戻っていった。結局、ココは『地球が滅ぶか否かの危機に、資格者たちから力を奪った元凶になってしまった』という事実のショックで意気消沈し、自分の現在の想いを伝えるどころではなくなってしまった。彼はこのショックで塞ぎ込み、鬱病に近い精神状態に陥った。症状の重さから、宇宙刑事ギャバンの保護下でしばらく匿われることとなった――
――地球連邦軍の無人機はゴースト無人戦闘機に代わり、主力機からは外れたが、その性能に定評のある『コスモ・ゼロ』を無人化した『ブラックバード』が多くなっていた。ゴースト系統の『ユダシステム』の危険性がクローズアップされたことによる措置でもあり、ゴースト系と半々の割合で搭載された。これはコスモ・ゼロの『癖が強すぎる飛行特性』を使いこなせる戦闘機パイロットの数が多くないためで、世知辛い事情が大きい。また、主力にはオーソドックスなコスモタイガーの系譜を継ぐ機体が早くも内定している事による選定でもあった。その初期生産機の全てが動員されていた。21世紀とは別の仕組みのシステムで稼働するが、これはM粒子や異星人の電子妨害装備で、21世紀の延長線上の技術での無人兵器の多くが容易く無力化されたことの教訓による。無人機は多くのパイロットの嫌われ者故、露払い目的での使い捨てが予定されているが、実際は有人機温存のための盾役が決定されている。白色彗星帝国の艦隊の艦上機の数は少なくとも『ゼントラーディ軍も真っ青な数』である。地球連邦軍は兵器一個あたりのキルレシオを極限まで向上させることで、数に対抗しようとしている。皮肉にも、知性なき敵たる『宇宙怪獣』とほぼ同列の扱いなあたり、白色彗星帝国への地球連邦軍の見方がわかる――
――プリキュア関係者のうち、複数が(比較的に手隙であれば)A世界にいた者から動員されている。オトナ世界にいるプリキュア資格者の多くが『往時の能力を既に喪失済み』である事が判明したからである。オトナ世界の個体であっても、記憶と能力が共有されるケースもあるが、それは宛にならない確率なので、基本的に『魔女の世界』から動員されたか、オトナ世界の個体が強い意思で変身を取り戻し、新たに加わるケースに二別されつつある――
――近年のプリキュアは現役期間の終了と同時に能力を失う事が多いため、戦列に加えたくとも、加えられないという事情もあった。平行して、人間の悪意の高まりに反応して、プリキュアの主敵たちが復活しかねない危険もあった故、地球連邦軍は『歴代のプリキュア資格者を集められるだけ集めたい』と、大人のぞみに依頼。だが、オトナ世界では『役目を終えると、返信できなくなる』ケースのほうが普通であったので、北米解放戦の時点では『A世界から呼び寄せた』か、オトナ世界の個体が別個体と記憶を共有して、変身能力を取り戻したかに分類されつつあった。また、オトナ世界の元資格者の少なからずは成人済みの年齢であり、既に手に職を持つ状態であったが、職場の消滅(物理的意味で)失職の憂き目にあっている。そのことで生ずる貧困状態を回避させるためと、万一にも、現役時代の敵が(悪意の高まりに反応して)復活する可能性は排除できなかったために、歴代の資格者らを集める作業は続けられていた。とはいえ、成人後も戦う意思を変わらずに持つ者は少なく、そこは割り切るしかなかった――
――そのため、この時点では、咲、のぞみ、ラブ、響、マナ、みらい、はな、ゆいの合議制によるグループの形成が図られていた。絶対的な中心的存在の『なぎさとほのか』が所在不明であるので、8人の有力な戦士の合議で動くのが最善であったのだ。のぞみ同様に別個体の記憶を与えられた者が多い中、はなとゆいは完全な新入りである。そのうち、はなは既に引退済みだが、ゆいは現在進行系の現役組だ――
――ヤマトの艦内で戦闘科預かりとなったのは、A世界で『既に軍人として熟れている』のぞみ、ラブ、響、マナの四人。ラブはA世界の個体であり、オトナ世界にちゃんと別個体がいる。それは知っており、宇宙刑事ギャバンや仮面ライダーディケイドに保護を依頼済みである――
――ヤマト艦内――
「えー!?ラブちゃんは別世界のラブちゃんなの?」
「そうなんだ。ここの日本にちゃんと『大人のあたし自身』がいる。もう保護は頼んであるよ。美希への説明がややこしくなりそうなんだよな。このままだと」
「あ、キュアピーチがラブちゃんと別のところで戦ってるから?」
「そういう事。あたし自身、一度死んだ後に、のぞみちゃんと同じ世界で生まれ変わってたって経緯辿ってるから、背景がやたらややこしいんだ」
「だから、異様なくらいに落ち着いてたってわけね?」
「精神的には大人だもん。のぞみちゃんもだけど。のぞみちゃんは意識して、昔みたいに振る舞ってたけど、無理してる感出ててね。今は落ち着いた。大変だったんだ。りんちゃんが記憶喪失になった時――……。あ、こっちのりんちゃんだけど」
ラブも軍務が多忙故、キュアピーチの状態を通している。ゆいと響(北条響)にのぞみの別個体(のぞみA)がエターニティ形態を手に入れるまでを簡潔に話す。B世界を結果的に巻き込むことにはなったが、『結果オーライ』には持ち込んだ事、シャイニングドリームを以てしても『手も足も出ない強さの、アナーキストな元軍人』が普通にいた事、その彼が率いる反政府組織との因縁が生まれ、その組織のあまりの残虐かつ、手段を選ばぬ狡猾さから、のぞみAは次第に敵愾心と闘争心に歯止めをかけられなくなっていったと語る。りんの記憶を奪われたショックでタガが外れたのだと、周囲は実感したと。
「――それで、極限状態に陥ってきたのを確認したあたしと響ちゃん……こっちのね……ははーちゃんに言ったんだ。ありとあらゆる手段で、かれんさんやこまちさんを連れてこいって」
「それで……」
「うん。そっちの世界を巻き込むことになったけど、結果的には成功。なんとか平静を取り戻させられて、一安心ってところだったんだ。で、漫画みたいな流れで、あのパワーアップフォームが生まれた。シャイニングの力の殻を破ってのパワーアップだから、ものすごく強くなってた。ただ、こっちのみらいちゃんの故郷の世界を滅ぼした怪物と和解したもんだから、大喧嘩になってね。月が良く無事だったもんだ」
「えぇーーーーー!?つ、月!?」
「月のクレーターが10個か20個増えたらしいよ。ただ、あのままやってたら、みらいちゃんは負けてたかも。地力が違いすぎたから」
「そんなに?」
「お互いに頭に血が上ってたから覚えてないけど、金魔法のエネルギーをかめはめ波で押し返してたからね。のぞみちゃんに聞いてみたら、覚えてないって言ってた」
「うへぇ……あの子、撃てるのね……あれを」
「漫画の技、撃てるんだ……」
「たぶん、融合したヤツがもたらした能力の恩恵だろうね。もっとも、こっちののぞみちゃんは格闘技の素地ができてたからなんだろうけど」
「あれ自体はコツさえつかめれば、簡単な技って設定だものね」
「一定の戦闘力がいるけどね。漫画だと、少なくとも三桁くらい。あれ、最新のだと、兆も超えた単位になったらしいから、途中で形骸化してる設定だよな」
「親戚の子がそんな事言ってたっけ」
「あ、見たことあるんだ」
「そりゃ、親戚にちょっと年上の男の子がいれば必須科目みたいなものじゃない。あの雑誌の系統は」
響はそう言い、自身が男まさりなのを差し引いても、その漫画は『必須科目』とした。彼女はこの世界では『力を保った』希少なケースなので、現役復帰に備え、何かしら参考にしていたらしい。
「見てたんだ、あの雑誌」
「そりゃ、自分が戦う立場に置かれれば、否応なしに参考にするわよ。それに、少女漫画の分野自体があたしらの時代には衰退してたし」
「そういえば。惚れた腫れた……とかのパターンだもんね」
「時代が進んで、漫画の男女と年齢層の区分が薄れたせいだと思うよ。新規のヒット作もずいぶんでてないし」
ラブと響は現役時代に少年・青年漫画のほうにハマっていたし、ゆいの頃には異世界転生モノが流行ってきており、かつてのような厳密なジャンルと性別の区分はあまり意味がなくなっている。その姿からは、純粋な少女漫画は衰退しつつある事がわかる。
「でも、格闘技の経験はないんだ、あたし」
「それはあたしもだよ。響ちゃんは一応あるんだっけ?」
「現役時代、部活の助っ人してたから、空手や柔道の経験はなくはないけど、昔のことよ。ラブ、そっちのあたしは?」
「アメリカ人になってて、正規の職業軍人で、スピード狂」
「はぁ!?」
「転生した先がアメリカだったんだって。今はプリキュアになったから、日本の永住権取ったけど」
A世界での北条響はシャーリーが辿った過程の一つという位置づけである。そのため、この場の響自身と違い、女性言葉をほぼ使わず、口調もぶっきらぼうとガサツの一言。また、完全にキレると、周囲が恐怖するほどの様相を呈する。現役時代の響とは(ある意味で)対極に位置するような立ち位置だ。
「あんたもスピード狂でしょーが!」
「そ、そう?」
「つぼみちゃんが昔に言ってたわよ」
「あー……」
苦笑いのラブ。現役時代に会った(初期のオールスターズでの話)時、ゴーカートを爆走させた事があり、つぼみがそれをぼやいたらしい。つぼみは別個体が『あの時は死ぬかと思った』とボヤいていたが、この世界でも同じであったようだ。
「あの時のこと、覚えてたんだ……恥ずかしい話」
とのこと。
「話は戻るけど、のぞみちゃんのパワーアップ具合ははっきりいって、あたしらが普通に活動してる範囲じゃ得られないものだよ。星を壊せるほどのパワーはあたしらには過剰とも言えるから。最も、あいつ相手じゃ……」
「あいつは……あのパワーアップなら?」
「ピンで倒せただろうって見立てだよ」
「わーお……」
「技も現役時代とは比較にならない威力だからね。なにせ……」
ラブはその事に触れる。それほどの次元のパワーアップ。純粋な生物としては最強クラスの頑強さを誇る『シュープリーム』だが、逆に『完全な強さである故に伸びしろがない』とも取れる。
「あいつは生物としてのスペックは最強クラスだ。だけど、それ故に伸び代がないともとれる。あたしとのぞみちゃんはその可能性に賭けてる。別次元に別個体がいるだろうから……今度はギタギタのメロメロにしてやるんだ」
「あんたにしては、自信ありげね?」
「前世で死ぬ前、異能に目覚めてたから。それを応用すれば…ね」
ラブものぞみほどではないが、パワーアップはしている。それを示唆する。
「それで、あたしはどうなのよ」
「色々とぶっ飛んでるよ、響ちゃんは。異能も複数を持ってるし。あと、ブチギレるとやばいから、周囲から『キレるとヤバい人』扱いだね」
「何よそれーーーー!?」
「転生すると、性格は変わるから、ね?」
「どうなってんのよ、そっちのあたし……」
のぞみもだが、口調が転生後に荒くなるのは、その時点での素体となる人物の影響も大きい。大人のぞみも、この時点では一人称を使い分けるようになっており、新たに『俺』も用いている。これはAが転生で得た『草薙流古武術の継承者』としての顔の反映であるが、炎はりんのお株を奪う能力であるので、彼女には不評である。
「のぞみちゃんも時々、『俺』っていうようになってるよ。色々あったし、20超えの戸籍年齢になってきてるしね」
「いやいやいや!?」
「でも、変身してれば、昔のままなんだよね?」
「姿はね。今の時点で、成人した姿での変身が叶った例はみらいちゃん達しか確認されてないんだ。だから、あたしたち古い世代は現役時代から変わんないんだよね~。メタい話だけど」
「なんか、それもややこしい話ね……」
「仕方ないさ。映画とか、おもちゃの商品展開の都合だろうからさ」
「メタフィクションみたいな事、言ってない?」
「こういうのは大人の事情だよ、たぶん。それに、この世界線は『本筋から派生したもの』の一つでしかないのもわかってる。本当はあたしたち『古い世代のプリキュア資格者の青春に決着をつける』ために生まれた世界線なんだろうね、ここは」
「決着か…。そんな事、望んでないってのに」
「大人になれって事だろうけど、子供の心を持ったまま、大人として生きる権利だってあると思うよ」
古い世代のプリキュア資格者に『青春は青春として割り切れ。これからは大人としての普通の人生を生き直せ』ということを突きつける世界線のはずであった『この世界線』。だが、白色彗星帝国はそれを覆してしまったのだ。
「じゃ、何のために……あたしたちは戦わないといけないの?」
「数多のこの星に住む人たちがあたしたちが立ち上がるのを信じてる。それに笑顔で応えるのがやるべき事だよ、ゆいちゃん。」
ラブは古い世代の資格者であった故に、覚悟は決まっていた。どこかシニカルにも感じられるのは、この次元の自分はもう『資格者』ではないことを鑑みてのことだろう。その代わりに戦うつもりだ。
「ラブちゃん、何のために…?この世界はあなたの……」
「地球に愛がある限り、あたしたちは断固として戦うだけだよ。たとえ、自分の出身世界でなくても。人々の願いがあるかぎり……プリキュアは死なないよ、ゆいちゃん」
それは前世における『シュープリームとの戦い』などを鑑みて、ラブが資格者として導き出した答えであった。この場の和実ゆいは正真正銘の若者だが、キュアピーチ……桃園ラブは『転生者』。その見かけは現役時代から変化はないが、精神的には覚悟の決まった年齢なのだ。その差が現れたのだった。
――『愛ゆえに人は死に、星は壊れ、宇宙は滅びる。地球人は導かれねばならん。個人の寵愛に流されぬ、我らの愛に従ってな――』
この日、白色彗星帝国残党の艦隊司令『ナグモ―』提督は無益な抵抗をした地球の各地域をそう嘲笑した。ガトランティス人特有の『愛』への思考からの一言である。
――そして、この日、白色彗星帝国軍は地球各国宛に、ナグモ―提督の名のもとに、即座の降伏勧告を発信した。ある意味ではちゃんちゃらおかしいが、彼らの艦隊は本来、バルゼー艦隊が地球軍の撃滅に成功した暁には、占領統治軍となる予定であった。その予定通りの行動であった。この時、オトナ世界の各国の足並みは既に揃えられる状態ではなかった。東側諸国、ないしは第三世界と評された国々は即座にそれを受諾した。国は滅んでも、その民族だけでも生き残るためということだが、それは地球人の家畜人化をも意味する。一方、プリキュアの存在を知っていた、元の西側諸国は対照的に、(地球連邦軍側について)徹底抗戦を宣言し、プリキュアの決起に合わせての反抗を方針とし、実質的に『謎の宇宙艦隊』(地球連邦軍)とプリキュアらの支援に回っていく。ここに『オトナプリキュア世界』の動乱は思わぬ展開を見せたのである――