――64Fは多数のガンダムタイプの預かり場所としても機能しており、Z系を幹部が好むこともあり、特に可変系統が保存されていた――
――64のメンバーが持ち回りで動かしているのが、ZZガンダムである。なのは用に用意されたもののついでに調達された個体である。元々、ZZはアナハイム・エレクトロニクス社で重装備テストに供されていた個体がいくつもあり、64Fの保有機は『その名目で新造された』個体の一つでもあった。強化型ZZは連邦軍内では『重装改型』という通称があり、その火力は第二次ネオ・ジオン戦争、ザンスカール戦争を経ても、連邦系最強と謳われる水準にあった。細かな改良が続けられた事で、空間機動力自体はZ系の名に恥じぬものを獲得済みであるのと、比較的に軽装甲なZと違い、重装甲が売りである事から、複数のパイロットによる持ち回りで使われていた――
――ZZの火力は『軍用MS』という括りでは最強クラスを維持しており、その完成度はコズミック・イラ歴世界のモルゲンレーテ社に『いくら戦争続きで技術融合が進んだ結果とはいえ……』と唸らせるほどである。また、フェイズシフト装甲やフェムテク装甲よりも耐弾性能が高い『ルナチタニウム』を『理想的な装甲』と評した。未来世界のMSが重量機でも100トン超えは珍しく、ガンダムタイプでは平均で『40~60トンの全備重量しかない』ことは驚きであった。フェイズシフト装甲を採用したMSの全備重量は70トンを超える場合が多いからである。また、関節部にPS装甲を使わないと『反応速度が異様に早い』パイロットへ機体が対応しきれないという問題は『マグネットコーティング』が解決した。マグネットコーティングを可動部に施せば、ニュータイプに対応できる反応速度を機体にもたらすからである。オーブにもたらされた『ガンダリウム合金』は(公には)オーブが領収した扱いの(元・プラントの)ガンダムタイプの高性能化に貢献。また、アカツキの防御性能向上(動力の核融合炉化と装甲のガンダリウム合金への換装と次世代型『ヤタノカガミ』の処理。『ヤタノカガミ』をミノフスキー物理学に対応させたもの。バスターライフルでもなければ破壊不能)にも効果を挙げていた。オーブ首長国連邦は自分らが『日本国の系譜を間接的に受け継ぐ国』という歴史(元々、オーブは南方系の原住民と、コズミック・イラ歴黎明期の戦争で日本列島から落ち延びた日系人が作った国である)もあり、『地球連邦の内部の派閥抗争で日本が優位にある』事を受け入れているためか、公式文章は日本語で交わされている(これは未来世界では英語が公文書に使われている事を逆手に取ってのもの)。こうした技術交流は盛んに行われた――
――コズミック・イラ歴の世界は二度の絶滅戦争が行われた影響で、プラントは人的資源の余裕が尽き、地球連合は経済的に死に体、ジャンク屋組合はボロ儲けと、大規模勢力が衰えたら、衰えたで、世界は回っていたわけだ。予てからの調査の結果、プラントの公式記録では『ミネルバ隊はアークエンジェル麾下のMS隊に敗北し、人員の殆どは戦死した』となっており、月面にもミネルバの残骸が擱座していた。シンとルナマリアも記録上では『戦死』扱いになっており、『別時空に飛んだ個体とそうでない個体に分裂したのでは』という仮説が立てられていた。実際、撃墜されたMSの残骸は確認されており、パイロットの生死不明と記されていた。これにはシンも、ルナマリアも大いに困惑したのは言うまでもない。とはいえ、戦いの結果、プラントが1番に『損をした』(連邦軍の二度目の介入で軍備と人的資源を大きく損失した)と言えるため、内部で不満が蓄積していた。だが、プラントにはもはや、戦争を遂行するだけの体力は残っていない。故に、外部の力を必要としていた――
――地球連邦軍が現地に派遣した軍事力は停戦監視団の役目も担っており、連合とプラントの衝突防止の監視と、脱走兵らの掃討も担当していた。旧・ザラ派のコーディネイターらは意外に多くが脱走兵になっており、コズミック・イラ歴のテロの温床になっていた。コズミック・イラ歴世界は中国・ロシアの地域であったところがテロと戦争で衰退しており、代わりに日本列島が地理的な意味合いで経済特区のようになりつつあった。地球連邦軍はコズミック・イラの日本列島に本部を置き、同世界の秩序再構築へ動いていた――
――地球連邦軍の軍事力はコズミック・イラ歴世界にすべての情報は開示していない。とはいえ、一度目の介入時に部分的にハッキングで得ていた情報から『MSの動力が核融合炉である』ことは知っており、その部分的な情報で『レーザー核融合炉』の小型化に成功し、搭載を試した。レーザー核融合自体は核融合炉の第一段階と言えるものだが、旧来の原子炉より高効率なエネルギー発電が可能であり、ニュートロンジャマー関連のものの影響を受けない。その利点から、オーブはアカツキをテストベッドにし、レーザー核融合炉を搭載し、極秘裏にテストを繰り返した。また、『コンパス』用に用意される新型機にも搭載予定であり、ここまでは『予定調和』というべきものであった。オーブはオーブで、地球連邦軍から『クラップ級巡洋艦』や『アイリッシュ級戦艦』などの艦艇を人員ごとリースを受けており、宇宙艦隊の近代化を急いでいた。MSは輸出用としての生産ラインが設けられた『ネモⅡ』(元はロンド・ベルの主力機候補であったが、より新しい世代の『ジェガン』が選ばれた)やZプラスC1型などの機体が供与されており、万一の有事に対応可能になりつつあった。第二次大戦で大量に失われたムラサメやシュライク装備のM1の代替として『リゼル』(ウイングバインダー装備)も供与された。これは可変機を大量に有している同国の要請でもあり、国力的に『通常型を大量に配備するのは難しい』故、可変機に重点を置く軍備となっている。地球連邦軍の装備テストの意味合いも含まれており、オーブの腕自慢たちは『まともな装甲がある!!』(コズミック・イラの量産機の装甲は戦艦のファランクスに蜂の巣にされる程度でしかない)と大喜びであったという――
――オトナ世界での戦闘で地球連邦軍の機体として、先行して運用されたデスティニーやインパルスは地球連邦軍による改造を受けている都合上、史実でのSPEC‐2相当に当たるかもしれないが、インパルスは部分的に『ムーバブル・フレーム』へ改修されたり、合体ジョイント部分の強度向上(史実のデスティニーインパルスが『欠陥品』とされたことの一端は『各部を繋げるジョイント部分の強度がデスティニーシルエットの想定した高機動に追いついていない』事であった)などが施された。関節部にはマグネットコーティングが施されており、連邦系の高性能機に『慣れた』ルナマリアが違和感を感じないように工夫が施されている。デスティニーも改修の後、成長したシンに合わせての再調整(装甲にガンダリウム合金を導入した事による軽量化によるもの。これはインパルスも同じで、フェイズシフト装甲の比率を減らし、より耐弾性能の安定するガンダリウム合金を導入することで、動力への負担を軽くした)がなされている。これはコズミック・イラの世界で治安維持に用いるための『前段階』であり、地球連邦軍の技術を入れることで『ファウンデーション王国の機体へのアドバンテージを持たせる』目的があった。また、MS用の実体剣のデータ収集の意図もあった――
―オトナプリキュアの世界の北米の上空――
「コズミック・イラのジャンク屋がMSに刀持たせて戦うそうだけど、その影響?」
「技術屋的にはそうでしょうね。未来世界としても、データは欲しいそうです」
「だろうね。あたしらが斬艦刀持ちと言っても、滅多に使わないし」
「でも、使ったら使ったで、大暴れじゃないですか。普通の刀モードでも、普通より強力だし」
「まぁ、ねぇ。現役時代はフルーレ使ってたんだけど、パワーアップ形態取んないと使えなくてね。通常フォームのは『合体技』用だったし。別個体が剣術の師範級の腕前なおかげで、チャンバラこなせてるけど、現役時代はがむしゃらでさ。一回こっきりで良かったよ」
大人のぞみは剣戟の素人である。一回こっきりしかなかったというように、『ムシバーンとの一戦』が剣戟の最初で最後の機会であったようである。のぞみAが転生前後で達人であり、黒江たちのもとで研鑽してきたのとは対照的である。最も、現在はAの技能が反映された状態なので、正真正銘の達人であるが。
「今はチートで技能を引き上げたけど、本当は剣に縁がなくてね。現役時代は部活追い出され王だったし、剣道は取らなかったし」
「え、それじゃ柔道を?」
「体が格闘の受け身とか覚えてたからね。一応、現役時代のうちに単位は取れてる。私立の学校なら、中高のどこかで機会はあると思う。合気道も覚えときゃよかったな。軍隊式格闘術が身についちゃった身で言う事でもないけど」
大人のぞみは就職の不安要素を減らすため、体育の選択を柔道にしていた事、戦っていたことで比較的に動きに慣れており、楽であったのもあり、授業で柔道を取ったと話す。とはいえ、戦いで飯を食う身になるとは思ってもみなかったとも。
「今は戦いで飯を食う身だしね。ここを生き延びないと、元の教師生活にも戻れやしない。しばらくは軍隊生活で貯金して、なんとか資金を貯めないと……」
「ど、ドンマイです」
「ありがとう」
大人のぞみは自衛官になったという風に処理がされるにしても、失職期間はある。おまけに、正規の方法で軍人になってはいないので、そこもややこしい。
「自衛隊に事務処理はさせるそうだけど、それが終わるまでの間は、公には失職中。親が聞いたら、目を回すよ。衣食住が保証されてるから、贅沢はいうまい」
地球連邦軍は『オトナ世界』の国連加盟国の軍隊を『国連という錦の御旗』で指揮下に収め、軍事行動の円滑化を図っている。大人のぞみはその過程で『自衛隊に幹部扱いで入隊した』という風に事務処理をさせているのである。国連たっての要望とあれば、日本政府も断れないからだ。国連そのものも東側諸国の『体たらく』に失望した層が各機関を抑えつつあり、おそらくは『戦後』には元の西側諸国の手で組織改編が行われるものと思われる。
「でも、東側諸国をどうするつもりですか、連邦は」
「中国とロシアさえ屈服させれば、芋づる式にこっちになびくさ。最も、白色彗星帝国を全滅させれば、あいつらは勝手に内戦で自滅するだろうけど」
「あの二カ国は俺達の世界でも、いい評判は聞きませんね。どこでも同じなんですね」
「日本みたいに、判断一つで千差万別の未来が生まれるほうが珍しいらしいよ。日本はシンの世界じゃ『歴史上の国』って扱いじゃん?」
「確かに。オレの先祖の出身地で、昔は軍事と経済の双方で栄えた事のある国で、オーブのもとになった……ってことくらいですね」
コズミック・イラでは、日本は『オーブの基になった過去の国』という扱いであったのが、シンの口から語られる。二人は出撃前の待機所におり、のぞみはキュアドリームの姿である。
「のぞみさん、今回は何を?」
「対艦戦闘メインだから、重装改型でいけってさ。あれは腕っこきじゃないと、ただの砲台にしかなんないからね」
「未来世界に住む事になった後、アナハイムのバイトの合間に、Z系のシミュレーターした事があるんですけど、あんなにピーキーなマシンはないですよ」
「Z系は操縦がクソみたいに高等向けなんだよ。ZZの改良型はまだいい方だけど」
「あれで??」
「バイオセンサーの補助が入るからね。元のだと、ジュドーさんやカミーユさんクラスじゃないと、まともな戦闘は無理だよ。強化型は操縦性に改良入ってんだ。機動力を使う局面だと、普通のゼータやクスィーとかあるけど、対艦戦は重装型が使いでがある」
ダブルゼータは対艦戦闘等に用いられる。火力重視の武装構成である故で、アムロ、カミーユのような手練れでもなければ、高機動戦闘は困難な操縦難度である。また、性能のアップデートが続けられた都合、機体の操縦性はある程度の緩和がなされた事(これは連邦軍の制式採用である管制OSのバージョンアップが三世代ほど起こった結果であり、コズミック・イラ世界のモルゲンレーテ社の技術協力で成し得たもの)が語られる。
「クスィーが大型化の?」
「小型化が始まって初期の頃のミノフスキー・クラフトを積んだから、グレートマジンガーよりデカくなったんだって。デザインの違う個体がいくつかあるけど、連邦軍が領収したのは他のガンダムタイプに近い外観のものだけど、反政府組織に渡すつもりで、外観をバケモノ然したものに変えてあるのも用意してたそうな」
「同じ機体なのに、どうして外観が?」
「まさか、連邦軍がガンダムタイプの運用に積極的になるとは思ってもなかったんだって。それで、従来のガンダムタイプに一番近いものが領収されて、マルセイユに引き渡されたってわけ。で、アナハイム・エレクトロニクスも同じデザインの予備機を作って、ニュータイプの素質があって、ロンド・ベルに籍のある連中に回すようになった。先行して、他の隊にペーネロペーが回されてるけど、あまり芳しい結果は得られてないようでね」
ペーネロペーはいくつかが製造され、ロンド・ベル以外に配備されたが、芳しい結果は出ておらず、その内の一機はジオン残党にあっさりと中破させられた事例があるなど、どうにもパッとせず、その改良型とも言えるクスィーがロンド・ベルと実質の下部組織である『64F』のフラッグシップとして活躍しているのと対照的である。
「小型MSはどうしたんですか?」
「電子機器の複雑化で整備性が悪化したのもあって、最近は下火。V2の改良型を作るって話があったようだけど、ほとんど立ち消えらしいよ。VFとMFからのスピンオフで、既存の機体でも格闘戦に耐えられるように改造できるようになったから、小型にするメリットが軍事的に薄れたんだそうな。それに、宇宙怪獣との戦闘も想定されるからね」
宇宙怪獣は殲滅にスーパーロボットクラスの力がいる強大な存在であり、他の銀河に、別の軍団がいる可能性は充分にあった。また、一種の超能力を得た人間の成れの果てという仮説も出ているなど、謎の多い軍団である。また、未来世界の元来の木星はブラックホール爆弾に使用されたが、程なくして、反地球とともに『平行世界の木星』が同じ位置に現れ、代替物として置かれるはずであった『予算の都合で廃棄されたヱルトリウム級の船殻』は結局、対ボラー連邦用に完成させることとなり、三番艦として竣工の見込みとなった。また、木星以外にもヘリウム3ガスを採取できるようになったりした(ガス型惑星など、宇宙にはいくらでもある)事から、核融合炉の資源枯渇の心配はない。
「それに恒星間航行艦をぶった斬るには、高出力型のサーベルが必要なんだ。あるいは相手の装甲を上回る金属でできた刀。それが斬艦刀。MSサイズのが本物だけど、あいにく、主計科が断ってきてね。それもあるのさ。ダブルゼータはハイパービームサーベルを使えるから」
「そっちだと、つば競り合いできるんですよね。あれ、こっちだとできなかったんで、面食らいましたよ」
「ああ、ドラグナー遊撃隊に返り討ちにされた事があったんだって?」
「ええ。参りましたよ」
この頃になると、シンも本来の性格に立ち戻っていたため、転移当初に比すると、だいぶ年相応に戻った感があった。未来世界で苦労したためか、物腰もだいぶ落ち着いたらしく、精神年齢は『男子高校生』(見かけ相応)に落ち着いている。ルナマリアが(英霊の転生体として)姉さん女房であるため、バランスが取れていると言える。
「でも、波動エンジンってすごいですね。マスドライバーも無しに、宇宙に出れるなんて」
「ある程度の恒星間文明かつ、超文明アケーリアスの栄えてた空域なら、どこでもたどり着くものらしいよ。核融合炉搭載艦の改装も検討されてるらしい」
「なんでですか?」
「予算だと思うよ?連邦も復興事業のほうに金かけたいから、状態のいい従来機関型を波動エンジン搭載に直す事業を始めたんだって」
「リサイクル、ですか」
「それに近いね」
二人は北米の真上に当たる宙域で待機中であった。二人の会話の通り、地球連邦軍も予算削減と差し迫る脅威の関係で、旧来型(カイラム級やペガサス級など)の艦艇を波動エンジン搭載型へ改装し、頭数を揃える方法を取り始めている。特に設計が割に新しく、MS搭載数も多いカイラム級は機関換装型の開発が要望されており、次期主力となる『次期ドレッドノートタイプの開発までの場繋ぎ』で完成済みのカイラム級の全てが改装の対象とされた。当然ながら、戦没艦も生ずるために全艦が改装を受けられたわけではないが、艦載式ビームシールドの追加などの改良は受けている他、波動エンジンの搭載スペースの確保による艦の全長・全幅の延長などがなされる(艦艇部の放熱板は撤去される)。マゼラン級に代わる主力を期待されたが、波動エンジンの台頭で頓挫し、ここでまた再利用される。その点にカイラム級の流転の運命があった。(クラップ級と違い、MS格納設備がきちんと整っている事も好評であった)
「さて、出撃だね」
「ええ。俺の機体、ライフルの新造が追いついてないとかで…。何をもっていけば」
「そうだね。ガンダムマークⅢ用のビームライフルでも持っていけばいいんじゃない?Eパックをいくつか持っていけば、継戦時間が上がるし」
「わかりました」
コズミック・イラ歴由来のMSであるデスティニーだが、鹵獲された後の修復の過程で、アナハイム・エレクトロニクス社のユニバーサル規格に取り替えられた箇所が多い。そのため、地球連邦軍の標準装備を使用可能になっている。史実で言う『SpecⅡ』に相当するが、歴代ガンダムの技術で性能は想定以上に上がっているので、『Mk-Ⅱ』と呼んで差し支えないほどのスペックアップである。
「いいなー、のぞみさんの機体は固定装備が多くて」
「シンのは不評だもんね。特に腕の機構。シャイニングフィンガーもどきって感じで……」
「プラントは何考えて、あれをつけたんですかね」
「意表は突けるけど、エース相手には微妙だもんな。モビルファイターは瞬発力でどうにかしちゃうけど、デスティニーにはなぁ」
デスティニーの腕についている『パルマフィオキーナ』はシャイニングフィンガーやゴッドフィンガーと似て非なるものであるので、トチローを始めとする、整備班に不評であった。また、出力的にガンダリウムやチタン合金セラミック複合材の多重空間装甲に通じるかは不明である事から、取り外しが検討中であった。二人はそのまま格納庫に行き、機体を起動させる。
「後続の戦闘機隊の露払いを頼む。敵は人型ロボットを侮っている。艦橋を串刺しにしてやれ」
「了解。エネルギーが少なくなったら?」
「空母に着艦して、補給を受けるように。補給機を出したいが、ガトランティスの物量相手では、その隙がない。重装型の物資が切れたら、替えのゼッツーに乗り換え給え。重装型は整備時間が長いからな」
「わかりました。対艦装備で用意させといてください。シンには?」
「エンジンは替えているが、エネルギー消費の配分を考えろと、大山大尉から伝言を預かっている」
「聞いた?」
「ええ。いくら核融合炉に変えても、エネルギー効率の悪い武器が多いですからね、デスティニーは。トチローさんにはわかってるって伝えておいてください、提督」
「了解した。武運を祈る」
「ありがとうございます。シン・アスカ、デスティニー!!行きます!!」
「夢原のぞみ、ダブルゼータ、出ます!!」
二人はお馴染みのシークエンスで発進する。大人のぞみもすっかり慣れた。シンと違い、プリキュア姿で操縦するわけだが、下手なパイロットスーツを着用するよりも、Gへの耐性が高まるのもあり、のぞみはドリームの姿で操縦するのが共通事項になっている。これは各プリキュアで共通事である。
(全天周囲モニターとリニアシートにも慣れたな。アナハイムのクリエイティブさの証明なんだよな。コア・ファイター採用機に全天周囲モニターだし)
未来世界では、大半のMSに採用されている『全天周囲モニター・リニアシート』。一年戦争のパネル式モニターより視界は遥かに良好だが、慣れないと酔うのも事実である。コズミック・イラでも、輸入機に備え付けられているものの技術にモルゲンレーテ社が着目し、新型機に搭載予定にしているという。未来世界では任意の表示切り替えも可能であるので、全天周囲モニターの技術が熟れた世界故の利点もある。
「シン、全天周囲モニターには慣れた?」
「ええ。戦間期にアナハイムのバイトで、デモンストレーション用のネモを動かした事ありますから。別世界の技術でインターフェースを改良されたなんて聞いたら、プラントの技術者、プライドがズタズタになると思いますよ」
「そこは仕方がないさ。お互いの技術レベルの差だから。MSの技術が確立されて、ずいぶんの世界とたった数年の世界の差だね」
未来世界も(本来の流れからすれば)技術発展の度合いは随分と速い。MSの小型化の限界と
大型への回帰を起こしていることからもわかる。これは戦争続きである故だ。
「ネモか。グリプス戦役の時の余り品?」
「らしいです。納入が遅れるうちに、エゥーゴが取り込まれた関係で」
「まぁ、より新しい型式がどんどん生まれたし、ネモ自体もⅡやⅢが出てるし」
ネモ系自体はネモⅢまで発展したが、ジムとの融合でジェガンが生まれ、以後はそれがスタンダードになったため、残存機が各地で細々と使用されている。オーブへは、ネモⅡがM1の代替機として提案され(サブフライトシステムの併用は必須だが)、輸出用として新規製造が始められている。グリプス戦役時の技術では無理であった『原型機からの基礎出力の向上』はジェガンR型用のジェネレーターを使うことで果たされた。性能水準はジェガンD型とどっこいくらいのものであるが、コズミック・イラの量産機の性能水準からすれば『飛躍的な高性能化』である。
「あるんすか」
「オーブにⅡが納入されるってよ。まぁ、試作品は残ってたから、輸出用に量産しようって事になったかららしいね」
「プラントが聞いたら、泡拭きますよ」
「一応、不満が出ないよう、アナハイムがゲルググの概略図を流したそうだよ。連邦の外交の一環で」
「一年戦争の時のものとはいえ、いいんですか?」
「連邦じゃ、モノアイ採用はなくなったから、プラントに作らせるのも一興とは、アナハイムのMS事業部の話。プラントもちょうど、戦争でモデル寿命が尽きたザクウォーリアの後継機を模索してたから、思惑が一致したんだって」
「へー……」
連邦はコズミック・イラの各勢力に平等に接する必要が生じたので、プラント、連合、オーブに『過去の機動兵器の概略図』をそれぞれ渡している。その内、地球連合軍は派閥抗争による内部分裂が激しく、主力MSを更新するどころでは無くなっているが、プラントは外交で得た概略図をもとに新型を作り、オーブは連邦からの輸入と既存機の更新型の開発を並行させている。とはいえ、プラントもザクウォーリアなどからのさらなる機種更新は負担でしかないので、当面は先行試作機によるデータ収集に専念すると思われる。コズミック・イラの『バッテリー』は度重なる技術革新で短期的な出力自体は第一次大戦当時の核動力と同水準にまで追いついているが、スタミナ不足は変わりなく、繰り返し充電すれば、当然ながら、バッテリー自体の劣化は免れない。コズミック・イラのMSは通常、バッテリーの容量などで作戦行動が左右される傾向にあり、ワンオフ機との差も特に激しい部類である。故に、オーバーホールでバッテリー交換の必要がない核動力はコズミック・イラの各勢力には魅力的なものなのだ。シンはアナハイム・エレクトロニクス社の技術で機体自体が軽量化されたデスティニーの操作感覚に多少の戸惑いがあるようだ。また、重武装MSに見えるダブルゼータがデスティニーに容易く追従できる事にも驚いているようである。
「すごいですね、そいつ」
「重装改型はパワーがあるからね。燃費は良くはないけど、瞬間的なパワーは歴代随一さ。空間機動力も最高水準。」
「そんなマッシブ体形で、バカでかいランドセルなのに、デスティニーについてこれるんですね」
「ダブルゼータの推力はすごいよ。熟練者が乗れば、十字砲火もこわかぁない。逆に短期決戦で片付けてるさ」
ダブルゼータは武器のエネルギー消費の激しさなどから、長期戦向けではないとされる。ジュドーの操縦技術はそれを感じさせなかったが、それは彼の個人技量に依存する使い方であるので、それ以外の部隊でのダブルゼータは『火力をフル活用しての打ちっぱなし戦法』で運用される事が多い。とはいえ、戦術的な機動力はデスティニーに容易く追従でき、シンを驚かせるほどである。二機は先行する形で敵空母部隊の『頭』を抑える形で布陣。デスティニーが囮として突撃する。敵の巡洋艦が慌てて無砲身の回転砲塔をフルオープンで撃つが、デスティニーは軽く回避する。
「対艦用にって、整備班がその場でつけたものだけど……喰らえっ!!」
デスティニーは元来の装備の殆どを降ろされている代わりに、地球連邦軍の規格品が使えるようにされているので、高エネルギー長射程ビーム砲の代わりに載せられていた『ハイパーメガランチャー』を使用する。整備班いわく、地球連邦軍がグリプス戦役時代から使用する『年季の入った長物』と評されるそれは『地球連邦軍の高級機種の対艦オプション兵器』としては最高級のグレードのものだ。無論、威力はデスティニー本来の『高エネルギー長射程ビーム砲』の比ではない。
「すげえ。一撃で貫くどころか、へし折った……」
ハイメガランチャーは未来世界では『ポピュラーな対艦オプション』である。それを考えると、量産品でこれなのだから、専用のチューンアップ仕様はいったいどんなバケモノなのか。地球連邦軍の技術力に、改めて身震いするシンであった。