第五百四十八話「入れ代わり・メイクデビュー」
――史実の強制力。それはウマ娘達の世界では運命に強く影響を及ぼしていた。ナリタブライアンはそれを知ってしまった故に、異世界の存在の力を借りることで、それをねじ伏せる選択を取った。ブライアンは史実でいう現役末期に入っており、低迷したまま引退を迎える事を良しとしなかったのだ――
――かくして、のぞみAはナリタブライアンとしての生活を続けた。のぞみ自体がチームを事実上率いる立場であったのもあるが、心に引っかかりを覚えたままで高校生活を終えたという後悔があったため、文字通りに生活を楽しんでいた。なお、寮の同室はタニノギムレットであったが、意外にも相談に乗ってくれるなど、ゴルシと同類らしき性格であった。
「まさか、そういうこととはな。面白い事だ。親父(ブライアンズタイム)が聞いたら、笑うだろう」
「お、おい」
「わかっている。あんたの事は『兄貴』のためにも、黙っててやるさ。オレのガキ(ウオッカ)にもいわんよ」
タニノギムレットはウオッカの実父であった。本人もウマ娘世界では『他人の空似』であったが、前世の記憶があるのか、ブライアンズタイムとナリタブライアンを身内として認識していた。
「ギムレット、貴様……」
「アンタの顔も立ててやるから、安心しな、副会長。オレとて、そのくらいは弁えている」
同席したエアグルーヴにもこれだ。ゴルシの類友らしい。
「この事は?」
「ゴルシの類友のオルフェーヴルとナカヤマフェスタ、『おじ』のディープインパクトには、ゴルシが知らせているようです」
「奴も口では破天荒だが、弁えている時は弁えているという事だ」
「お前もか?」
「……フッ、これでも、日本ダービーを勝った身だぞ」
日本ダービーを勝っているウマ娘であるので、実績は充分である。娘(史実)のウオッカも日本ダービーを制しているので、何気にすごい親子である。(ウマ娘としては先輩後輩関係だが)
「しばらく『兄貴』の体は、プリキュアの嬢ちゃんが使うということか。クククッ、面白い事になった」
「あのねぇ、これでも、1993年生まれなんだけどぉ……」
「そんな事は些細な事だ」
のぞみは1993年生まれで、タニノギムレットの前世の生まれ年よりも前に生まれている。エアグルーヴ(馬)と同世代に当たるので、かなり上だ。中二病患者の彼女には関係ないらしい。
「此奴はこういうウマ娘ですので、お気になさらず……」
「わかってる。レースのために、この世界に来たんだ。せいぜい楽しませてもらうよ」
のぞみAは元から『他人の体を乗っ取る』形で転生したため、他人の体を使うことには抵抗はない。必要だったので、演技力もそこそこ高くなっている。
「女史、トレーニングは如何なされます?」
「参加しないと不味いっしょ。たしか、あなたもスピカに?」
「ええ。リギルが解体されましたので」
「なんか陣容がすごくない?」
「オグリ先輩の古巣ですが、彼女の引退後はゴルシとマックイーンしかいない有様になりまして。そこから立て直したのです」
「ふむ……」
チーム・スピカは史実との分岐点が『過去にオグリが属していたのか』という点であった。属していた場合はオグリの同期らが同時に去ったため、世代交代で入部していたゴルシ、マックイーンの二名しか在籍していない時期がおり、そこからメンバーを引っ張りこんできたという。この時点では、さらなる新世代のキタサンブラック、デアリングタクトも入部済みであったのに、リギルの現役継続中のメンバーが加わったため、実質的に最高級の実力者が揃っていた。
「これがチームメンバーのリストです、女史」
「なんか……1990年代からの30年間のトップエリート級が揃ってない?」
「私もいますから、事実上はそうなります」
「えーと、現役のメンバーがトウカイテイオー、ゴールドシップ、ウオッカ、ダイワスカーレット、ナリタブライアン、エアグルーヴ、デビュー前がキタサンブラックとデアリングタクト……競馬通が聞いたら、目回すよ?そういえば、ヒシアマさんとかは?」
「彼女は事務手続きが遅れてまして。他のチームにディープインパクトとオルフェーヴル、ナカヤマフェスタが入りましたから……」
「おおう……時代のエース級だぁ。強敵だなぁ…」
「引退組は98年のクラシック組だ。奴らは引退が早かったからな。ん?スズカはどうした」
「奴はまだ現役で走りたいみたいだが……怪我が周囲から心配されてな。保留中だ。それと、ナリタタイシンとナリタトップロードも入部届を出してきている」
「ハハハ、ナリタ系の大物はこれで揃うということか」
ギムレットは大笑する。
「ん?世代がバラバラじゃない?」
「この世界では、多くの名馬が同時代にいますからね。本来の世代の情報は当てになりませんよ。私とドゥラメンテが同時代に生きる事自体、本来はありえない事ですから」
と、野比家と関係したウマ娘達とその一族のウマ娘達が図らずしも集結しつつあるため、スピカが加速度的に強力なチームになってきていた。しかも、史実で名を馳せた者達が選抜されているという有様。引退後に、後輩のコーチをしているのが、オグリやタマモの時点で、史実の競馬ファンであれば、あまりの凄さに心臓が止まりかねない。この後の練習風景はどうかというと。
「こりゃすごい……」
風紀は自由であるが、走り込みをしているメンバーだけでも、目を回すような面々だ。ドラえもん世界の競馬関係者がみたら、その場で失神するのは間違い無しの陣容だ。
(前世での親父なら、感激するだろうな。ここ40年の間に名を馳せた強豪が揃ってる……)
「あ、エアグルーヴにブライアン。来たんだ」
「テイオー、今はお前が会長なんだ。若い者にバシッと見せんと、後輩はついてこんぞ?」
「わかってるって。今はボクが生徒会長だからね。バシッと勝ってみせるよ~!あ、のぞみ。本当に来たんだ。大丈夫?」
「なに、ブライアンちゃんのためにも、この体を仕上げておかないといけないからね。さて、ひとっ走りするか」
「直にスカーレットとウオッカが終わるから、その後ね。ボクと走ってみない?」
「面白いことを…」
「ぼくたちのホームグラウンドなら、条件は互角だもんね~!パワーはそっちが上だけど、フットワークはボクが上だよ」
テイオーは全盛期の能力を取り戻したためか、フットワーク(コース運び)に自信があるようだ。
「いつぞやの春の天皇賞でスタミナ切れ起こしてたじゃん?」
「あれはマックイーンがバケモノなんだって~!スピード自体は勝ってたんだから~!」
と、テイオーが膨れていると。
「テイオー、彼女が本当に参られましたの?」
「あ、噂をすれば」
「うん。ブライアンちゃんと入れ代わりでね。マックイーンちゃんのことを聞いてたところだよ」
「私は元々、メジロの英才教育で『ステイヤーとしての能力』を伸ばしてきました。ですので、天皇賞で負けるわけには参りませんわ。あなたが借りているその体は万能型の能力持ち。私は中長距離向きですから」
「そういえば、ブライアンちゃんの史実での最後は高松宮記念だっけ?」
「ええ」
「あなたの仲間の皆さま方には本当に感謝していますわ。もし、あの時……」
「あの二人もそれを聞けば、喜ぶよ」
と、会話をしていると、ウオッカとスカーレットが史実の天皇賞・秋のように、ほぼ同時にゴールを通り過ぎる。トレーナーと引退組の年長組が話している。人間の目では『ほとんど同時』過ぎて、判別がつかないらしい。
「お~い。今の判定にしばらくかかりそうだから、お前ら、走り込みしていいぞ~」
「分かった~」
テイオー達はこうして、走り込みを始める。一同の想定距離は2400mほど。ジャパンカップなどの規定距離で、けして長いわけではないが、短くもない。実戦形式での走り込みと言えた。
(2400か。人間でも走れる距離だけど、スピードが桁違い。車やオートバイで普段走るくらいの速さだ。現役時代の感覚だったら、間違いなく、ついてこれなかったな)
始まると、一同はスタミナを温存するため、巡航速度と言うべき速さで抑えているが、人間の世界最速のアスリートの全速を有に超える。
(タイシンちゃんが言ってた。レースの勝負は『最後のカーブを曲がり切った時点』だって。今はペースを乱されないように……)
と、プリキュア戦士かつ、軍人として培った戦術眼で、三人を分析してみる。中距離であれば、全員の平常ポテンシャルはほぼ同レベル。スタミナや瞬発力などの違いはあれど、殆ど影響はない。
(さて、どう動く?)
しばらく様子見の一同だが。第四コーナーを曲がる途中の時点でテイオーが動く。
(ここだぁ!!)
テイオーはパワーはないが、全盛期の能力であれば『テイオーステップ』と恐れられた瞬発力を誇る。その復活の狼煙を上げる。
(そうはさせん!!)
エアグルーヴも猛然と加速する。そして。
「マックイーン!!この距離なら、ボクの勝ちだもんね~!」
猛追するテイオー。
「甘いですわ!!メジロの名は伊達ではありませんわ!」
と、一同の先頭を走るマックイーンも最大加速を行う。だが。
『!!』
「さて……この体の本気を……見せてあげる!!」
のぞみが最後に動いた。ブライアンの体はその要求に良く答え、凄まじいパワーと加速を見せる。ブライアンの全盛期における渾名はなんであるか。
「そうか。忘れてた……ボクが全盛期の能力に戻ってるのなら、ブライアンも!!……だとしたら……完全に覚醒めたんだった……!!シャドーロールの怪物が!!」
紫色のオーラが体を包み込み、最大速度に達していく。ブライアンの全盛期の力は当代で最強。そのため、最後尾からの追い込みでの加速でありながら、エアグルーヴを一瞬で追い抜く。
「……!!」
エアグルーヴの表情が固まるのが一瞬見えた。そして、テイオーとマックイーンも背後からの凄まじい闘気の気配に、思わず振り返ってしまう。
「なっ!?……しかし、直線の半分は過ぎている。今から加速しても…!!」
「うん!いくらブライアンの全盛期の力でも、ここからじゃ……!!」
と、マックイーンとテイオーは自身の残されたスタミナを信じ、再加速をかける。だが、のぞみはここで切り札を使った。会得した小宇宙を応用し、加速力を引き上げたのだ。
「悪いね……切り札を使わせてもらう!」
紫色色のオーラに黄金色のオーラが更に上乗せされ、更に加速される。その速度は押して知るべしだろう。
「サジタリアスの一矢ってヤツさ!」
テイオーとマックイーンはその瞬間、ブライアンの背中に羽が生えたような幻覚を目の当たりにし、我が目を疑う。そして、二人は最大速度に達していたはずが、一瞬で抜かれる。その瞬間、二人の目は点になっていた。
「え……?」
テイオーとマックイーンが我が目を疑う一瞬で、のぞみはゴールした。あまりの速さにより、判定機は反応していない。
「嘘やろ、判定機が反応してないで!?」
コーチ役のタマモクロスはその光景が信じがたいようだ。
「今の速さ……見えたか、タマ……」
「いや、見えへん……白い稲妻と呼ばれたウチの動体視力で捉えられへんやと……!?んなアホな……」
と、かつては当代最速級であった、この二人を以てしても、視認すら叶わない速さ。そして、ジェット機のような空気を斬り裂くような音が後から響く。
「嘘やろ、音が……後からしたで……!?」
「今の一瞬で……音速に達したというのか!?」」
「切り札を切らせてもらいましたよ、おふた方」
「これが噂の……!凄まじいものだな……」
「それがアンタの隠し玉っつーわけかい?」
「ええ。まぁ」
「あーーーーも~!!悔し~~!!ずるいよーーー!」
「あの加速はなんなんですの!?最大速度の私達を一瞬で追い越すなんて……」
と、遅れてゴールした二人が詰め寄ってくる。
「切り札と言ったろ?」
周囲の目があるため、ここはブライアンのキャラを演じるのぞみ。
「今のはすごすぎて、写真判定機が作動してない、いや、反応すらしなかった。こりゃ、瞬間的には音速に達してたのは間違いないな。ウチの判定機は古いが、G1級のウマ娘の計測にも使われてる高級品だ。学園始まって以来の新記録かもしれない……」
「……そうか。そんなに速かったのか」
「間違いなく、な」
スピカのトレーナーは『すごすぎて、現実味を却って感じられない』と言わんばかりの表情と声色だ。いつの間にか集まってきていたギャラリーも。
『マーーーベラス!!流石だよッ!!』
「これだよ、これがブライアンちゃんの……」
「ブーちゃ~ん!!」
「うん、サムソンか?お前……見に来ていたのか」
「マーベラスちゃんが連れてきてくれたんだ~」
「そ、そうか……」
ギャラリーには、ブライアンの同期のサクラローレル、サムソンビッグ(史実では、ブライアンの時代における、ハルウララのような存在。ウマ娘世界では、ブライアンの意外な親友であった)、後輩のマーベラスサンデーの姿があった。なお、マヤノトップガンはススキヶ原にいるので、この場にはいない。
「ずっと信じてたんだ。ブーちゃんは必ず復活するって」
「……そうか。心配をかけたな、サムソン」
ブライアンが入学当初から心を開く、数少ないウマ娘がサムソンビッグであった。成績は正反対であったが、奇妙にウマがあったというべきか。サムソンビッグにだけは屈託なく笑える事から、ブライアンとしても何かがあるのは確実である。
「む~~!!」
「……サムソンとの関係は知ってるだろ、ローレル。拗ねるな」
「だって~!!」
サクラローレルのこじらせぶりは、第三者であるのぞみも引くレベルのようだ。
「ローレル。若い者も見ているんだ。ブライアンと戯れるのは後にしてくれ」
「わかりました……」
「ローレルさんは最近、なんかすっごくマーベラスだねぇ……」
「マーベラス、なんとかできんのか」
「後輩だし、強く出れないよ~」
と、さすがのマーベラスサンデーも困るほどものこじらせ具合らしい。エアグルーヴはため息だ。
「やれやれ。サムソン、ローレルの事は任せたぞ」
「うん、分かった~」
入学年度はエアグルーヴよりも、サムソンビッグが早いため、サムソンビッグは副会長のエアグルーヴにタメ口を聞ける身(先輩)である。ローレルの『ブライアンへの思いのこじらせ』に手を焼いているのは、複数人なのがわかる。
「ローレルめ。チヨノオーとバクシンが引退したとはいえ……」
「もしかして、サクラスターオーちゃんの事を……」
「知っているのですか、女史」
「うん。親父から聞いた事があって…」
ローレルはトレセン学園に入る前、先輩のサクラチヨノオー、サクラバクシンオーと同じ育成クラブ『ヴィクトリー倶楽部』に通っており、その二人と切磋琢磨してきた。だが、サクラチヨノオーが悲願の達成後の悲運でターフを早期に去り、サクラバクシンオーも、この頃には既に、トゥインクルシリーから引退してしまっており、ローレルがまともに走れる様になる頃には、二人はターフを先に去っていた事になる。また、その二人の更に先輩かつ、ローレル自身の従姉『サクラスターオー』が悲劇のヒロインというべき引退劇で知られている(二冠ウマ娘にまでなった実力者であった)ためか、思い込んだら一直線というのか、従姉の分も走りたいという気持ちを強く持っていた。その思いが同期の最強格のナリタブライアンと出会うことで、ブライアンへの強い愛情に転じた。ブライアン本人は鬱陶しく思っている面もあれば、自分を気にかけてくれているのは嬉しいのか、邪険に扱っていても、心の底からは嫌ってはいないという心情である。
「それもあるのかもね」
「スターオーの事は残念やった。だけど、なんで、ローレルがブライアンに夢中になってるのか、スターオーの同期のうちにも分からへんのや」
「タマモ先輩」
「アンタ。瞬間的に小宇宙を燃やしとったやろ」
「わかりました?」
「ウチとオグリは、向こうでだいたいの話は聞いとるからな。けったいなことやりおってからに……」
「タマモさんは関西の出ですか?」
「そうや。いつか、アンタに本物のたこ焼きを食わしてやるで~」
と、タマは関西出身故に、粉物にうるさい様子を見せた。同時に、小宇宙の事に気付いたようだ。
「しかしだ。君の現役時代の事は聞いていたが……よく走れたな」
「転生した後に鍛えましたから、オグリさん」
「二人共、私のやってる小宇宙トレーニング、してみます?」
「そうだな。ドリームトロフィー(ドリームシリーズ)も近いことだし、今回も表彰台を私達で占めたいからな…。なぁ、タマ?」
「いちいちウチに聞くなや。イナリのヤツも巻き込んでおくで。後でぶーたれられても困るし……」
「やれやれ。先輩方、チートもほどほどにしておいてください」
と、エアグルーヴが二人をたしなめていると。
「なるほど。そういうカラクリだったか」
「ゲッ!!シリウス!!聞いとったんかいワレ!?」
「前のドリームトロフィー……ルドルフやお前らがどう見ても、全盛期に戻ってるとしか思えねぇかったから、クリスエスに調べさせたんだよ。なるほど。異世界のすげえ異能を使ってやがったのか。……ブライアンと入れ替わってる……確か……夢原のぞみとか言ったな?」
「なに?シリウスシンボリちゃん」
「単刀直入だ。私にそのコツを教えろ!!秘密は墓まで持っていってやる。その代わりだ。ルドルフやオグリ達が全盛期の力を戻せたカラクリ、そして、アンタが使うその力の事。洗いざらい教えてもらう」
「シリウス。お前……要は『私も混ぜろ』って言いたいとちゃうんか」
「うるせぇ!!」
と、そこで顔から湯気が出る勢いで赤面するシリウスシンボリ。
「シリウス先輩……」
「く、クソっ!だまってろ、エアグルーヴ!!……悪い話じゃねぇはずだ。どうだ、キュアドリームさんよぉ……」
「分かった。秘密は墓まで持っていってくれるね?」
「ああ。私もシンボリ家のウマ娘だ。嘘は言わねぇさ」
「それと。私がキュアドリームって、なんで知ってんの?」
「そういえば、ルドルフが言ってたような……」
「黙ってろ、オグリ!」
「完全にガキ大将ムーブやで、シリウスぅ~?」
と、言葉はスカしているが、完全にガキ大将ムーブのシリウス。それを察したのか、完全に煽りに入るタマ。続きを思い出しかけるオグリ。シリウスとしては、外戚(養子)のクリスエスを使ってまで調べさせたので、かなり裏では必死になっていたのだろう。
「カワカミはいませんよね、先輩方……」
「エアグルーヴ……神経過敏になってないか?」
「ヤツのことを考えれば……そうもなります……。オグリ先輩」
ギャラリーにカワカミプリンセスがいないか、不安げにキョロキョロと辺りを見回すエアグルーヴ。のぞみがプリキュアである事をカワカミプリンセス(ウマ娘世界でのプリキュア相当の番組の愛好者)に聞かれたくないらしく、相当に神経過敏であった。天然なオグリが本気で気遣うレベルらしい。
「ヤツはしょっちゅうどこかを破壊するから……!?」
シリウスがそう言いかけた瞬間、あるクラスが体育の授業を受けている体育館の壁が盛大に破壊され、辺りに瓦礫が飛び散り、土煙がど派手に舞う。
「あーーーーー!!やっちまいましたわーーーー!!」
と、カワカミの悲鳴が響くのだが。
「カーーーワーーカーーーーミーーーー!!」
エアグルーヴが悲鳴を聞いた途端にスイッチが入り、体育館に向かっていく。呆気にとられる一同。
「まるで、昔にあった看護師のドラマみたいだな……」
『うん』
シリウスもそう呟くしかなく、一同もこれにハモって頷く。皆が頭に閑古鳥が鳴く勢いであった。場の空気を一変させたカワカミプリンセスの圧倒的パワー、スイッチが入って、怒髪天を衝く勢いで駆けていくエアグルーヴ。1990年代にあった、看護師のドラマシリーズを思わせるドタバタぶりに、一同は完全に空気が一変したことを悟り、頭に閑古鳥が鳴く感覚を覚えるのだった。