ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百五十一話「入れ代わりメイクデビュー2&新たなるゲッター」

――のぞみAは次第に、ナリタブライアンの体が自分の魂と同調してきている事を感じていた。ブライアンは無頼な口調を使っているが、それがごく自然と使える(後に、元の姿に戻っても継続する)ようになっているのだ。(普段の口調では、職業柄、他部隊の兵士に舐められる心配があるため)

 

「やれやれ。歴代の競走馬が転生して、人型の体を得た世界か……」

 

「そうだ。この世界は人口の何割かはウマ娘だ。過去には戦争にも加わっていたようだ。時代を考えれば、当然だろうな」

 

タニノギムレットは、ウマ娘世界での過ごし方をのぞみに教えていった。普段は中二病の彼女も、今回ばかりは大真面目であった。前世で父を同じくしていた者への手向けとも言うべきだろう。ブライアンは生徒会の仕事に無関心であったが、最近は心境の変化で精力的に動いている事も教える。

 

「ギムレット。あなたに未練はないの?」

 

「俺には未練などないさ。それよりも、アンタは『アニキ』の体を最適化するように努めておけ。『娘』もダービーを勝ったしな……」

 

既に現役を退いているらしき様子のタニノギムレット。ちょっと寂しそうですらあるのは、既に現役を退き、前世での娘たるウオッカが日本ダービーを勝利したのを見届けたからだろう。

 

「言葉づかいも意識しておけ。アニキは無頼な感じで話す。素は意外にかわいいが、普段はそのように振る舞っている」

 

「分かった」

 

ギムレットはルームメイトなだけあり、ブライアンが寝ぼけていると、意外にかわいい寝言を(無意識のうちに)言うのを聞いていたらしい。その翌日の生徒会長の執務室。

 

「延期が繰り返されてたアオハル杯の開催が正式に決まったよ。」

 

「日取りは?」

 

「かなり長期に渡ります。通常のレースをしつつ、学内の対抗戦を繰り返す形になりますから。あなた、つまり、ブライアンは既にシニア級なので、通常のレースは少ない部類になります。なので、休息は充分に取れます」

 

「ボクもシニア級だから、そんなに出ないから、同じようなもんさ。クラシック級はあれこれ出る必要があるけど、シニア級になると、出れるの減るからね」

 

「あ、そっか。年齢制限があるんだっけ?」

 

「ええ。我々は基本的に、ジュニア級、クラシック級、シニア級に区分されます。学園の年長組はたいていの場合はシニア級ですが、そこにいかずにドリームトロフィーに行く者もおります。最も、能力が衰えた者のサーカスと揶揄されていましたが。世間的には人気はあるのですが……」

 

テイオー政権になっても、エアグルーヴとブライアンは(ルドルフの要請と、自己意志でで)生徒会に留まっており、新たに補佐役が抜擢されたくらいで、ルドルフ時代から変わらずに執務をこなしている。のぞみは(大人になった後の経験を引き継いでいるとはいえ)戦友の水無月かれんがしていたような事を自分がするとは思わず、苦笑交じりである(のぞみは前世では結局、中・高を通し、生徒会とは無縁の生活であったので)。

 

「のぞみはブライアンに成り代わって走る事になるけど、大丈夫?」

 

「一応、今は職業軍人だから、それなりに鍛えてるからね。大丈夫」

 

「うーん。なんか妙な感じ~!」

 

「確かに……」

 

「まぁ、そこはね?」

 

ブライアン本人より多少なりとも声のトーンが高めな事、演技の必要がない場では普段の口調になるため、エアグルーヴとテイオーは妙な感覚となる。

 

(今頃、平行世界の一つじゃ『大人のあたし』が戦ってるんだよな…。知らされたけど、こっちも妙な感じだなぁ)

 

平行世界の自分を大人と表現するのは、『自分が現在進行形で、10代の若者である』という自覚があるからだろう。一方、大人のぞみも(肉体は適齢期に戻ったが、精神的には加齢している状態である)別の若い自分がいる事を知り、こちらも複雑な心境であったので、お互い様であったが。

 

「で、学園の状況は?」

 

「理事長が海外出張で、協会から代理が来たのですが、これが曲者でして……生徒の自治には口を出さないとは言っているのですが……」

 

「ふむ。」

 

「つまり、ボクたちの誰かどうかが、その代理さんをギャフンと言わせる必要があるって事さ。引退した先輩達にも走ってもらう。つか、シリウスがうるさくてね~」

 

「あの子、どうやって、あたしがキュアドリームって事を?」

 

「それがさ。クリスエスを問い詰めたら……」

 

「問い詰めたら?」

 

「どうも、自分でこっそり調べ回ってたらしいんだ。カイチョーが、この間のドリームトロフィーでぶっちぎったから」

 

「そういえば、言ってたっけ……」

 

シリウスはそのレースで『領域』に到達したものの、全盛期の力を取り戻したルドルフには敗れ去っている。その直後に調べ始めたらしい。

 

「ブライアン、いるかい?」

 

「ヒシアマゾン?ブライアンならいるけど?」

 

「寮に、SF漫画の戦艦のプラモが届いてるって、フジ(フジキセキ)から伝言だよ。アンタ、何買ったんだい?」

 

「ああ、向こうの世界で世話になった家の坊主に、と思ってな。手慰みに作ろうと…」

 

「アンタがプラモを?どういう風の吹き回しだい?」

 

「いいだろ、私とて、プラモと無縁じゃないぞ」

 

と、適当に話をでっち上げるのぞみ。転生で身につけた『嘘も方便』という奴だ。購入したのは、ウマ娘世界でも存在した『宇宙戦艦ヤマト』のアンドロメダのプラモだ。のぞみAはその生き残った同型艦を見ているので、作りやすいとたかをくくったのである。(デザリアム戦役で、その准同型艦であるガイアに乗艦していたこともあるので)

 

「だいたいわかったよ。アンタの器用さじゃ、数週間はかかるね。いざとなったら、ヒシアマ姐さんに頼みな」

 

「アンタ、作れるのか?」

 

「アメリカにいた頃は、兄弟姉妹に作ってやったもんだよ」

 

と、面倒見がいいところを見せるヒシアマゾン。女傑の異名を誇ったが、意外に子煩悩らしい。

 

「ほんじゃ、お昼に食堂で待ってるよ」

 

と、ヒシアマゾンは執務室を出ていく。彼女が去った後、エアグルーヴは。

 

「夢原女史。今の話は」

 

「半分くらいは口から出任せ。本当はあたし自身の訓練代わりに買ったんだ。あたし、同型艦に乗った事あるからさ」

 

「アンドロメダだっけ?実際のところはどうなのさ?アニメだと、二通りあるけど」

 

テイオーは意外な事に、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を見たことがあるらしい。

 

「実際だと、2のほうが正史だったよ。同型艦も結構残ってたよ。アニメみたいに、全滅ってわけじゃなかったみたい」

 

「女史、それはどうやって?」

 

「持ち込んでた給金から払ったよ。使えなくて、結構溜まってたから、ドラえもんに換金してもらった。ブライアンちゃんの個人口座には手はつけられないしさ」

 

「ふーん。のぞみ、実際のアンドロメダの写真、持ってんの?」

 

「准同型艦のものなら。オリジナルは一年未満で戦没したから、かなり議会が問題視したみたいで、殆ど公に出てないんだ」

 

「土星での戦いで?」

 

「うん。壮烈な最期だったみたい」

 

のぞみのいう通り、アンドロメダ級一番艦のアンドロメダは就役から一年未満で宇宙に散ってしまった。連邦議会はこの顛末をかなり問題視し、世間にはカシオペアを『修理中のアンドロメダである』と誤魔化した時期さえある。とはいえ、優秀な戦闘能力自体は証明されており、それが戦後に同型艦が使われた理由である。相手が悪すぎたのであって、戦艦としては順当に『ヤマトより強大』だったのだ。

 

「デザイン自体は、うちのパパが子供の頃に惚れてたみたいでさ。実家にプラモが飾られてたの見たよ」

 

「職場の先輩曰く、アンドロメダはグッドデザイン賞とったらしいんだ。その時代の船のデザインのさ」

 

「私も、実家の父が何か飾っていた覚えがあります。デザインは美しいですが、実際のところはどうなのです?」

 

「着水機能はあるけど、安定性はヤマトより悪いね。波動砲の発射口やら、先端の突起物とかでバランス悪くて」

 

「へー、あの形であるの?」

 

「元々は宇宙でしか使わない構想だったのが、軍令部の要望で手直ししたから、着水機能が申し訳程度についたそうな。地球の勢力圏の惑星には海があるからね」

 

「その点が欠点かな。ヤマト型が複数あるから、そっちのほうが使い勝手いいみたい」

 

「え、あんなのがいっぱい?」

 

「同じ戦艦大和の同型艦を改造した、ハンドメイドに近いものが大半だから、便宜的にヤマト型になってるだけで、艦容は違うよ。波動砲がなくて、ドリル持ってるのもあるから」

 

「え?戦艦大和にドリル??」

 

「うん。旧日本海軍はそれで戦局を変えるつもりだったみたい。その頃からの発想みたい」

 

「日本は……発想が奇抜ですな……」

 

「アメリカみたいに、戦艦を五隻作りながら、空母を二十隻も作れるお国柄じゃなかったからね。そうでなきゃ、潜水艦に飛行機なんて乗せないよ」

 

「えーと、伊400潜だっけ?」

 

「うん。あれ、私の故郷の世界にもあるから。アレなら完成品の模型持ってる。造船会社のお偉方がうちの伯父貴だから」

 

「あなたの実家の?」

 

「今は帰りづらいから、盆に帰るくらいしかしてないけどね。同型艦の建造を委託された企業に伯父貴がいるんだ」

 

中島錦として、になるが、伯父の一人に造船会社の重役がおり、海軍とも一定程度は繋がりがあるという。これは長島飛行機の創始者『長島知久平』が中島家の前当主である父親と海軍機関学校の同期だったからだが、父親が異端であり、中島家はその大半が陸軍の関係者である。

 

「伯父貴、ここ最近は発注が多くて、てんてこまいだっていうんだよね。駆逐艦が大量にボカチンして、海防艦やフリゲート艦の大量発注があったっていうから」

 

「向こうにいた時のニュースで見たよ。大変だねぇ」

 

「昔ながらの駆逐艦じゃなくて、戦後型の護衛艦やフリゲート艦をいきなり作れと言われても、設備を変えないことにはね」

 

「設備ぃ?」

 

「うん。戦後型の軍艦になると、重量物をクレーンで運んだりするのが多くなるし、コンピュータの配線もしなけりゃいけないしさ。1940年代の人間たちにいきなり、それをさせるのは酷さ」

 

戦後型の艦艇はブロック工法の普及も必須なので、その製造ノウハウを一般に波及させ、造船可能な造船所を増やす必要があった。幸い、扶桑は既にブロック工法の端緒についていたため、日本の予想より簡単にブロック工法は普及していった。海防艦の建造と大和型の建造で、ある程度のノウハウがあったからだ。

 

「あ、海防艦作ってるから、比較的に覚えは早いか?」

 

「?」

 

「ブロックごとに作る工法、うちの国はもうやってんだ。海防艦で」

 

「??」

 

「ほら、おもちゃとかであるじゃん?一部組み立ての半完成品。それを実際の船でするってこと」

 

「的を射てますよ、女史」

 

「ありがとう。うちの先輩は結構うるさくてね、自分の専門外の事の知識も持っとけって人なんだ」

 

「あの方は確かに、多方面の知識がおありのようでしたな」

 

「おかげで、飛行機や車の整備要領を覚えちゃったくらいさ。先輩、装備のテスト部隊にいた事あるから、自分の機体の不具合を整備班に伝えられるくらいになれって講義するんだよね。あたしも必死に覚えたさ。レシプロ戦闘機のピストンエンジンの仕組みから、ジェットエンジンの構造まで……」

 

元々、黒江達は陸軍航空隊の出身であり、パイロット/魔女が一種の特権階級であった海軍航空隊と異なり、陸軍の航空兵は伝統的に、乗機の整備を手伝う風習があった。それが64Fの装備稼働率の高さの秘訣であった。坂本もその風習の利点は知っており、ハルトマンやシャーリーに『若い連中の機材チェックをしておけ』と教育し、二人はそれを統合後も守っている。

 

「んじゃ、専門書とか読んだわけ?」

 

「あたしの本来いる世界の日本には、馬鹿でもわかるように要約された本はないからね。整備兵の機嫌取ったりして…。もう大変さ。日本軍の整備兵、職人気質が多いからさ」

 

と、錦であった時代から継続している『整備要領や機体構造の把握の苦労』の一端を話すのぞみ。まだ、未来世界の超兵器のほうが覚えるのが楽だとぼやく。未来世界の兵器はMSなら、ムーバブル・フレーム構造が当たり前、VFも基本構造はVF-1から変わっていない。

 

「機械はある程度発達すると、あるモノに習った構造になると?」

 

「工業生産物の宿命だって、知り合いの技術者は言ってる。宇宙戦艦も、ヤマト以降は舟形が多くなっていったから」

 

「逆に、そうでないのは?」

 

「ヤマト以前の時期に造られたりした宇宙戦艦に多いって。ヤマトが出る前に造られた、ヱルトリウムっていう移動要塞みたいな船があるけど、アレは飛行機に近いから…」

 

そのヱルトリウムは長らく、人類史上最大の宇宙戦艦の地位を保った。対宇宙怪獣用に特化した『70㎞』もの巨体はそれ以外の相手に対しては使いづらかったため、二番艦『アレクシオン』はほとんど要人輸送のためにあるようなもの、三番艦は建造が中断状態だ。また、操艦に訓練された能力者やイルカを必要にする構造も運用コストの増加を招いた。だが、砲艦外交にはヤマトと並んで、最高の効果を出すフネではあった。

 

「動かすのに、イルカやエスパーがいるから、さすがの連邦軍も三番目は諦めて、通常型の機関に変えて、サイズを普通に直した船を試作中だとか?70㎞だよ?」

 

「な、な、な、70㎞!?」

 

テイオーとエアグルーヴはその大きさに度肝を抜かれる。

 

「そんなおっきいのを二隻も!?」

 

「うん。一隻は遠征から帰って来て、もう一隻は本国艦隊に配備されたけど、宇宙ステーション扱いらしいよ」

 

ヱルトリウムはその希少性もさる事ながら、単艦戦闘能力でヤマトやアンドロメダも圧倒している。だが、その巨体がネックになっているため、その船体構造とその強大な戦闘能力をスピンオフした通常型機関搭載艦『ブリュンヒルト』が試作、処女航海に出ていき、その同型艦『シグルド』も完成に近づいていたのが、遠征直前の状況であった。ブリュンヒルト級は『動く統合参謀本部』と宣伝されているが、『外装式の武装宇宙船が主流の時代に内装式を作る』事の是非が問われている故のプロパガンダであった。とはいえ、流麗な艦影を持っており、日本よりも欧米での評価が高く、ブリュンヒルトは白亜の塗装であったため、『銀河を統べる誰かが乗ってそう』と用兵側にも意外に好評だった。また、サイズもバトル級空母とほぼ同程度と、扱いやすさと生存性を両立させていたこともあり、次期戦闘空母が完成するまでは『地球連邦宇宙軍・太陽系連合艦隊の総旗艦』の座にあるだろうと予測されている。

 

「デカすぎで使いづらいの、当然だよ~……」

 

「そういう事。プラモだって、スケールをそこそこにしておかないと、置き場所に困るからね。完成したら、ノビスケ君にあげるのは本当だしさ」

 

「我々も何か手伝えることがあれば」

 

「ありがとう。あ、話題を戻すけど、先輩が遠征終わったら、ここに潜り込むって言ってたよ」

 

「なぁ!?あーやが!?うっそぉ!?ここのトレーナー試験、T大の入試よりむずいよぉ!?」

 

「大丈夫だって。先輩は陸士の50期の上位だったし、防衛大学校に普通に入れる頭だから」

 

「陸軍士官学校と防衛大学校……あの方は頭脳明晰なようですね……」

 

「智子先輩は少女飛行兵の出だから、任せるって。あ、ケイ先輩もイケると思う」

 

「え、あの兵隊やくざぁ!?」

 

「だって、あの人、あのなりで士官学校を上の成績で出てるし、トップエースの一人で、副業がジャーナリスト」

 

「何の冗談でしょうか、女史?」

 

「先輩が聞いたら、脅されるよ?」

 

圭子は粗野な口調、そのなりもあり、ウマ娘たちにも『兵隊やくざ』と認識されていたが、本人はエリートで通る経歴を誇っている。江藤も『お前のようなやくざ者がなぜ、士官学校を出れた??』と不思議がっているが、本人がそうなりだしたタイミングは『事変の直前の時期』であったりする。

 

「あの先輩は猫を被れんの。あたしもマスコミ対応の時の態度を見た事あるけど、嘘みたいにさ……」

 

圭子の利点はそこにある。時と場合に応じ、口調と態度を変えられるのが得意であり、声色も別人かと思うように、変化が大きい。その変わり身の術は、のぞみも見習いたいくらいの清々しさすら持つ。

 

「たぶん、あの二人なら、あれこれ工作して入ってくるさ。それができる人たちだからね。あたしが陸士に入った頃は戦争になるか否かの時期だったけど、あの人達は『戦前に全部の教育を終えてる世代』だから、下手な現代のT大生がかわいいくらいの頭してるし」

 

とはいえ、のぞみも前世では関東圏の教員採用試験を無事に通過しての私立の中学教師であり、現世では陸士卒の士官なので、充分にエリートで通用する経歴であるし、それに見合う頭脳を持った。現役時代はのび太の少年期と大差ない劣等生だったのを考えると、思春期に血のにじむような努力をしてきたのも同じだろう。

 

「それまでに、あたしはこの体を上手く使えるようにならないと……ウマ娘って、とんでもない重機のタイヤを引きずれるパワーなんでしょ?」

 

「はい。貴方方の想像より遥かに大きいものです。ブライアンの肉体であれば、超大型のダンプカーやショベルカーのタイヤも苦ではありません」

 

のぞみは望むところと言った表情であった。自分で望んだ事である以上は『ウマ娘として生活してみる』のである。

 

「ライスやタイシン、ウララは三人で側溝に落ちた10トントラックを持ち上げたから、ブライアンなら、一人で行けるんじゃ?」

 

「かもしれん。元々、ブライアンはそのパワー故に恐れられてたからな」

 

「本当?」

 

「ええ。ローレルはその暴力的ですらある走りに惚れたのだと、私は見ています」

 

ブライアンの全盛期のパワーはそれほどのものであった。だが、それを軽くねじ伏せた一文字號は『人外』ということになる。

 

「しかし、あの男(一文字號)はそれをもねじ伏せた…。あの男は人間ですか?」

 

「種族は人間だけど、ぶっ飛んでるからな、あいつ。あの『真ゲッターロボ』をフルパワーで乗りこなせるしさ」

 

真ゲッターロボの全力に耐え、しかもその進化形態を呼び覚ますほどの適性を持つなど、ゲッターに選ばれた故の超人ぶりを見せる一文字號。種として人間を超えるはずのウマ娘をも超える身体能力を誇るなど、エアグルーヴをして『イカれている』と言わしめる存在だ。だが、一文字號も流竜馬とその子『拓馬』には及ばない。流親子は『ゲッターの申し子』なのだ。

 

「でも、あいつでも、竜馬さんに比べたら、まだまだだと思うよ?あの人、元が普通の学生だったのが詐欺だと思っちゃうくらいだし……素であたしらを昏倒させられるんだよ?」

 

のぞみは変身した状態で『ゲッターGの事故』の際、去ろうとする竜馬に食い下がった事があるが、竜馬に腹パン(手加減済み)一発で昏倒させられた。プリキュアになっていたのに、だ。倒れる寸前、竜馬に疑問をぶつけたところ、竜馬は『お前らを裏切るわけじゃねぇさ……』と哀しげな声で返し、その時の哀しげな声と表情が忘れられない。故に、のぞみは竜馬の動向を追い続けていたという。

 

「竜馬さんには恩もあるんだけど、仕事でぶつかっちゃった事があってね。それで、ゲッターに乗ろうって思ったこともある。ダイ・アナザー・デイの前期の休暇の事だったかな……」

 

『ゲッターGの事故』は魔女の世界でのダイ・アナザー・デイの極初期ごろに起こり、未来世界ではそれから日々が経っていた。ダイ・アナザー・デイの中期に入る頃にブラックゲッターを持ってきたが、実際は意外と時間が経過していたのだ。(パーツ状態のブラックゲッターが組み立てと試験を終えるくらいには時間が経過している)つまり、のぞみはことはと共に、ダイ・アナザー・デイの戦局が小康状態にある時間を利用し、未来世界の新早乙女研究所の警護に当たっていた時期があり、その時に流竜馬らと親しくなっていたのである。その時に『狂気を帯びる前の』早乙女博士の勧めで、オリジナルのゲッタードラゴンをシミュレーター上であるが、動かした経験もあるとも。

 

「シミュレーター訓練もゲッターGくらいまではその時期に終えてたし、あたしと後輩の子なら、二人乗りでもパワーを出せるしさ……」

 

早乙女博士がなぜ、のぞみとことはをゲッターに乗せようと思ったかは不明になっていたが、当時、弟子の橘博士が『女性用の戦闘ゲッター』の構想を練り、早乙女に素案を見せていて、彼もその構想に賛同していたからでは?と、神隼人は推測している。実際に、それからほどなくして、『ゲッターロボ斬』として具現化している。その事から、早乙女はゲッター軍団の構想を練っていたのでは?と隼人に推測されている。

 

「そういえば、隼人さんに『戸隠流忍術』を覚えにいけと言われてるんだけど、ゲッターと関係あるのかなぁ…?」

 

「さー?」

 

と、テイオーに言われるが、実際は大アリであった。橘博士と神隼人は『ゲッターロボ斬』を完成させたが、その専任チームは未だ訓練途上であり、竜馬と弁慶が要求する『戦闘中の超高速合体』など到底こなせない。一文字號たちが如何に逸材であったか。隼人は今更、思い知った。だが、ゲッター斬は真ゲッターロボと同系統のパーツで建造されたため、橘博士の処女作のゲッターにしては強力で、ゲッターGをあらゆる面で上回る。それを遊ばせられないという切実な台所事情から、適性がゲッター軍団の一般隊員よりもグンと高いのぞみとことはは、ゲッター斬を早期に戦力化させるための鍵と見なされたのである。

 

(もしかしたら、隼人さん。大人のあたしを乗せようとするかも…。向こうの大人りんちゃんたちが知ったら、なんて言うかな……隼人さんは『残酷な人』だからな)

 

一緒に働いた経験からか、躊躇なく冷酷な判断を下せる神隼人を『残酷』だと思う反面、ゲッターの意志に生かせられる姿に同情するなど、複雑な心情を彼へ抱いているのがわかる独白であった。彼の同位体の配下であった拓馬からも『司令は残酷な人だけど、情がないわけじゃない』と擁護されており、のぞみは隼人の哀しい一面を次第に知りつつあった。どこの世界でも『観測者』としての役目を背負わされ、生き残る運命にある。ゲッターのパイロット生命を失わない場合でも。そんな哀しい(本人が死にたがるのもある)宿命にあることを知ったことも、自分の境遇を幸せと再認識するきっかけであったのぞみ。当初は持っていた隼人への反発も薄れてきているものの、のぞみからすれば『怖い人』であるのだろう。隼人は故に『嫌われ役』なのだ。竜馬や弁慶が意外に好かれるのは、普段から好漢であるからでもあるが、隼人は『鋭利な冷たさ』を感じさせる人柄であった事から、実は友人が少ない部類である。最も、隼人は家族運の無さが大きい人物であるが、これは竜馬たちもあまり知らないことだ。そして、のぞみAの予測通り、オトナプリキュアの世界に向かう輸送船団の重要物資として、『烈火号』、『紫電号』、『金剛号』。その三機のゲットマシンが積み込まれようとしていた。神隼人がそれらの梱包を指揮していた。それを『神隼人からの贈り物』として。

 

――ネイサー基地――

 

 

「お前さんも酔狂なことをしおるのぉ、隼人」

 

「ですが、これが一番の贈り物ですよ、敷島博士。この神隼人にできる、夢原のぞみへの、ね」

 

「お前さん、あの子の何が気に入った?」

 

「言ったでしょう、俺はボインちゃんが好きだと」

 

と、下手な言い口ではぐらかす隼人。

 

「あの子はボインではなかろうに?」

 

と、すぐに疑問に思う敷島博士だが、早乙女博士しか知らない事項として、隼人は意外にも、母性に弱い側面がある。生い立ちが重工系企業の御曹司でありつつも、親に放任され、姉が親代わりであったこと、従兄弟にコンプレックス丸出しに接せられるわ、身内関連での運が酷薄な彼が求めたのは『包容力』であった。早乙女博士がまだ存命であったなら、ことはやのぞみを警備と称して、研究所で働らせていた本当の理由に気づいただろう。

 

「フフ、ミチルさんの退院の日取りは?」

 

「元気君共々、あと二月だそうじゃ……お前さん」

 

「なんとでも言ってください」

 

ゲットマシンの梱包作業を指揮しつつも、早乙女ミチルと元気の姉弟が事故から生還した事に一瞬、頬を緩ませるのを見た敷島博士。神隼人が求めるものが何であるか。敷島博士は年の功でそれを察し、冷酷とさえ言われた男の本当の姿の一端を見た思いであった。

 

 

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