ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前半と後半の二パートに分かれます。


第六百十話「扶桑皇国と地球連邦の苦労、アオハル杯第二戦の幕開け」」

――結局、M動乱で史実通りの武装構成に戻されていった扶桑皇国の在来艦艇だが、ソナー手が殆ど育っておらず、潜水艦乗組の者を水上勤務に異動させるか、日本から義勇兵を募るしかない状況になった。扶桑海軍はこの時に日本側に散々に罵られたトラウマから、『武装の全部載せ』の思考に変遷していった。その関係で、在来艦艇では欧州遠征が行い難くなったが、日本側は『元々、日本列島~マリアナ諸島の防衛が想定だから』ということで問題とせず、油槽艦などの帯同で補うこととされた。扶桑はそれを補うため、新式艦艇の導入を進めた。欧州への軍事的プレゼンスの低下を恐れたのである。こうして、日本連邦は加速度的に艦艇の燃費性能を向上させていった。油田の産出量を抑えるためであった。21世紀以降の水準の機械化とライン化がなされた工場が相次いで完成したが、単純作業で食い扶持を得ていた工員達の反発に遭うなど、前途多難であった。それらの解決に時間を要した結果、扶桑は秘密工廠の増強を進めざるを得なかった。また、日本側が旧式化した蒼龍と飛龍を博物館船として購入したいという打診をしてきたことへの代替枠の確保もあり、結局、日本側の『近代化による軍事費の圧縮』の思惑は(初期投資の費用が大きいことから)は却って、導入のための予算を増やす結果に終わった。軍の弾丸の規格を自衛隊の現用品に無理に合わせようとした結果でもあった。また、士官学校の統合、陸空海の専門課程の確立などの課題も山積していたため、結局は従前の体制が(しばらくは)実質的に存続している事になった。――

 

 

 

 

 

――蒼龍と飛龍は『魔女の世界』では(史実の)翔鶴型のサイズで当初から建造されており、翔鶴と瑞鶴は1945年までは『蒼龍型』に分類されていた。だが、日本側の認識との隔たりで『翔鶴型を作ってないのか?』と言われる有様であった。結局、クーデター鎮圧後に正式に『翔鶴型』として独立させ、大鳳をそこに分類するという妥協的な決着を見た。大鳳の量産が頓挫したこともあり、扶桑の空母機動部隊の大型空母は老朽化が始まっていた。その後継ぎが迷走したので、繋ぎに使われたのが『近代化改修済みのエセックス級とミッドウェイ級』であった。政治側は外貨獲得のための売却をするつもりであったが、自前の空母が尽く『旧式のポンコツ』扱いされた用兵側としては、たまったものではなかった。日本式空母は天井が低く、戦後型戦闘機を載せるには、大規模な工事が必要という事はわかっていたため、ミッドウェイとエセックスを近代化改修し、場繋ぎで運用したのである。ミッドウェイはF-4シリーズまでは小改修で対応可能であったので、それをF/A-18シリーズへの対応に強化し、アングルド・デッキ型へ直せば、数十年は使用に耐えられるからだ――

 

 

――クーデターで甚大な損傷を被った蒼龍は(既にジェット機の時代に入りつつあったのもあり)修理の意義を問われ、結局は取り扱いが二転三転。次期空母で置き換える事になるまで、実に三年半近くも放置されたのである。とはいえ、艦容は史実の翔鶴型相当であり、日本側も史実の蒼龍・飛龍としての映画出演は出来ないため、妥協的に翔鶴型航空母艦として出演させたのである。2023年度公開の戦争映画に使われたのが、蒼龍の最後の任務であったという。対照的に、無傷であった飛龍は『山口多聞の座乗艦であった』箔があったことで、近代化改修を経て、現役に留まる事になり、暗黒時代の空母機動部隊の屋台骨を支えたのである。1949年次でも第一線に留まっており、近代化改修でアングルド・デッキ型の船体となった姿からは、かつての勇姿は窺いしれない。艦載機もF-8となっており、少なくとも、あと15年は使われる見込みだという――

 

 

 

 

 

――扶桑の次期空母は78000トン超えの巨艦であった。1949年初頭に起工、54年までのどこかの完成の見込みであった。キティホーク級のコピー品だが、通常動力の空母としては同艦が最終形態であったので採用された。甲板の魔術処理は(強襲揚陸艦との分業化で)不要とされ、なされていない。南洋州東部工廠で大っぴらに起工式が行われた。日本を満足させ、敵の目をごまかすための囮。その二つの役目があったからである。その艦載機として発表されたのが、単座型のトムキャットであった。扶桑のパイロット達は戦闘機は単座という認識であった故に開発された型式であった。 扶桑海軍は米型空母のカタパルトの多さに辟易していたが、扶桑の在来空母とは運用思想が異なるのだ。建造に移る段階でタイプシップに変更があり、最終的には『ジョン・F・ケネディ』とされた。傾斜煙突を持つからである。その型式で五隻以上が起工され、それぞれが別々の工廠と造船所で同時に建造中であった。その護衛となる艦艇群も扶桑各地で工事中であり、64F主力の不在を思わせないほど、扶桑軍の工廠は活気に溢れていた。結果的にだが、扶桑海軍の近代化はこの混乱で実質的に達成される事になる。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――空母とその護衛艦隊の編成に熱を上げている日本連邦だが、実働中の戦艦が尽く、ドック入りを強いられる醜態となっていた。これは日本の政治家達が『失っても怖くはない』という認識を持っていた事による酷使の結果であった。水戸型戦艦の工事が早められたのは、この窮地に対応するためであった。一番艦『水戸』は対外的に『連合艦隊期待の最新鋭戦艦であり、大和に代わる連合艦隊旗艦』として公表された。その就役式は(敢えて)派手に行われ、『戦艦大和を超え、後を継ぐ者』という紹介が山本五十六の演説で行われるなどの『仰々しさ』であった。これは山本五十六一流の欺瞞であり、水戸に敵の目を引き付けておき、敵国の空母の造船枠を縮小させるという狙いがあった。回りくどいが、魔女の世界での大和型は『扶桑の誇るヘビーバトルシップ』という認識がされていたので、それを利用した情報操作であった。実際、水戸型は播磨型をも上回る火力を担保しており、全部が嘘ではない。新式の53cm砲は『安定して量産できる艦砲』の最大口径には違いないからだ――

 

 

 

 

――日本側では、扶桑の戦艦建造の系譜の調査が続いていた。大和の立ち位置が史実と異なっていたからである。その姉妹艦の武蔵はどうなったのか?という質問に対し、扶桑側は『乗員が不祥事を起こしたので、験担ぎで実験艦に回した』という回答があった。武蔵は1949年の段階では『播磨型のパーツで船体を320mにまで伸ばし、前部主砲を48cm三連装砲に再換装し、後部を航空艤装とした』姿になっていた。架空戦記では『V字滑走路を持つ』航空戦艦が存在していたが、扶桑の艦政本部が実際に検討したところ、ボツとなった。理由は『空母部と戦艦部分のバランスをどうすんのよ』というもので、結局は地球連邦のアスカ級補給母艦を手本に、水上艦に落とし込んだデザインで落ち着き、武蔵がその実験に供された。その際に、前形態でテストされていた51cm砲は『大和型には過大』の判定で降ろされている。また、航空艤装スペースが拡大されたので、コアブースタータイプの発着も可能となっており、随伴艦である紀伊型『尾張』『駿河』も同様の改修を予定されている――

 

 

 

「扶桑は浪漫があるな。航空戦艦の実験ができるんだから」

 

「それも、大和型を使えるんだから。俺等の過去の日本なら、艦政本部が泡を吹くだろうよ」

 

調査担当の自衛官らは口々に、航空戦艦を浪漫と語り合う。また、扶桑提供の写真からは、航空艤装は意外に複雑な構造で、戦闘機発艦に必要な分が張り出している一方で、それに挟まれた中央スペースはヘリコプターの発着用のものであるのがわかる。技術の発達でなし得た『航空戦艦の一つの形』であった。

 

「この武蔵と紀伊(八八)型の二隻で航空戦隊か……俺等の高祖父達が聞いたら、腰抜かすな」

 

「水上機ではなく、通常の飛行機を運用しているからな。扶桑がかの文明の技術を借りて設計したんだそうな」

 

「元の武蔵より大きく拡大してるからな。戦艦の重装甲を維持しての航空艤装の装備、か。器用貧乏の感もあるな」

 

「艦載機はコアブースターだそうだ」

 

「本当か?」

 

「うむ。ブースター部をコスモタイガー以降の技術で再設計した新型らしい。見かけは一年戦争とそんなに変わらんが、信じられん短距離で発着艦ができるらしい」

 

「コスモタイガーの軸流エンジンを積んだのか?」

 

「元々は普通の熱核融合マルチエンジンだからな。新型にする時に軸流エンジンに耐えられる構造にしたんだろう」

 

「コア・ファイター部は流用か」

 

「元々がルナチタニウムで、下手な21世紀の飛行機より、よほど頑丈だからな。より世代の進んだルナチタニウム系に変えて新造されたそうな。贅沢品だよ」

 

「旧式のメガ粒子砲は?」

 

「新式の陽電子機関砲に換装だ。下手なメガ粒子がおもちゃ扱いの威力だそうな」

 

コアブースター改型は扶桑の要望での生産であったが、VF-4やVF-11などの旧世代VFよりも、純粋な戦闘機としての性能が良かったため、コスモパルサー計画の遅延を『埋める』局地戦と即席の艦上戦闘爆撃機として増産が決まるのである。扶桑海軍はこれで空母機動部隊の再編の時間を稼ぐのである。

 

「しかし、現実に航空戦艦が使われるとはなぁ」

 

「政治家は軍人のおもちゃとせせら笑ったが、意外に使えるものだな」

 

「アメリカのような空母機動部隊の保有は夢物語だ。だからこその産物なのにな」

 

こうして、武蔵は航空戦艦としての方が艦歴が長くなることになるが、公的には『実験戦艦』と称されるままであった。どうして、公式に航空戦艦を名乗らないのか?それは後世、扶桑の軍事評論家の間でも議論が盛んな分野となるのだ…。

 

 

 

――戦艦長門は現役続行案もあったが、既に1945年で艦齢が20年を超えていた事、既に攻防性能が陳腐化していた事から、新型艦との置き換えが決まった。日本へ売却され、博物館船となるのである。長門は扶桑にとっても誇りであったため、記念艦として引き取りたい自治体は多かったが、日扶友好のシンボルとしての役目を期待されたのである。また、海軍の象徴としての役目は大和が引き継ぐ形となり、日本連邦の力の象徴となった。大和型が近代化でSFチックな外観となったため、『昔ながらの』外観を持つ長門は人気があった。引退後は航行可能な記念艦として係留され、史実ではありえない『余生』を送る事になった。八八艦隊型ではもっとも幸福な結末であった。紀伊は『超大和型の呼び水』として利用され、陸奥は(縁起の悪さで)標的艦となり、加賀と土佐が戦艦としての出陣がなかったのに比べれば、充分に幸せであった。加賀と土佐は(土佐の機関不調で)空母改装が何度も取り沙汰されたが、外国への放出を恐れた用兵側によって取り置かれていた。結局、その間に戦艦/空母の双方で陳腐化する形になり、火力を持った上陸支援艦に転籍した。その事から、長門は戦艦のままで現役を終えられた近代戦艦の初の例となった――

 

 

 

 

 

 

 

――武蔵の第三改装と同じ頃、魔女は空戦と陸戦の立場が逆転した状況となっていた。空戦魔女は訓練の簡略化のしすぎと敵航空兵器への火力不足が顕著に生じたのだ。陸戦魔女が一転して花形となり、空戦魔女がそれから滑り落ちる結果となった。これは陸戦魔女は戦術次第で戦後世代MBTにも対応できたが、空戦魔女は主敵の変化に対応できなかったからであった。また、技能工や技術者の召集が一律で免除されるようになったことに強く反発した農村部の地主の猛抗議、暴走した住民らによるリンチで、魔導理論と技術の発達が阻害されたのもあり、空戦魔女は技術の停滞で軍事的価値を大きく減じた。第二世代理論が完全にモノとなるのは、運用データが出揃い、魔導触媒の高出力型に耐えられる魔導ジェットエンジンの安定した量産が叶う、1950年代の半ばを待たねばならなかった。その間に、通常兵器が加速度的に発達した事になる。この状況の緩和のため、空戦魔女に接近戦用武器の携帯が義務づけられた。とはいえ、既に芳佳やリーネのような気質の魔女が多くなってきていた事もあり、空戦魔女はしばらくの間、冬の時代を過ごすこととなった――

 

 

 

 

――プリキュア達があまりに万能すぎたことも、空戦魔女の僻みを生んだが、いくら彼女らでも、『自前の翼』での空戦機動そのものは経験不足であった。黒江達はのび太からのメタ情報で、それを知っていた。太平洋戦争はちょうどいい『経験を積む期間』とも見なされ、バルクホルンや黒江が日々の訓練を課していた――

 

 

 

 

 

 

――オトナプリキュアの世界へ転移し、続々と到着する地球連邦軍の主力艦隊。多数の無人艦も含まれており、それらは壁代わりに運用される見込みであった。無人艦と無人機を壁代わりにしなければ、とても戦えないからである。この差を単騎で覆したいという思いがゲッターエンペラーの誕生の一因であった。機動兵器のパイロット不足はどうにもできないからだ。有人兵器に拘っていたプリベンターの幹部層も白色彗星帝国のあまりの物量に妥協せざるを得なかった。パイロットの全員に一騎当千を求めるのは、あまりに酷であるからである。連邦の量産機は基本的に『平均的な能力を備えているが、尖ったところがない』からである。和解の余地もない戦闘的な種族相手の戦闘では、連邦のジム系は単騎あたりの戦闘力が低すぎるのである。その改善のために、量産型νガンダムなどの高級量産機が緊急で生産されたわけである。サイコフレームの使用も認められた(白色彗星帝国相手に、人同士の戦争の論理は通用しないため)。そのため、地球連邦軍は波動砲のみならず、反応弾や光子魚雷も億単位で投入する事になった――

 

 

――遠征中――

 

 

「ああ、シンか。私だ」

 

「あれ、バルクホルン少佐じゃないですか。どうしたんすか」

 

「そちらの夢原に、私が送ったカリキュラムは渡したな?」

 

「ええ。さすがですね。プリキュア達が自前の翼で飛ぶ事があるのをカリキュラムに起こすなんて」

 

「せっかくの飛行能力だ。使わんともったいなかろう?」

 

プリキュア達は基本的に、高位の形態でなければ、『飛行能力は解禁されない』。その上、プリキュア達は普段が陸戦なので、空戦に不慣れな者が多い。元が魔女であった者も、ユニットで飛ぶ場合と、自前の翼では勝手が違う。のぞみはダイ・アナザー・デイで覚醒してからは、自前の翼で飛ぶことも多くなったが、百戦錬磨であるバルクホルンからは『動きに無駄が多いぞ』と指摘されている。無論、それはシンも、だが。

 

「あ、のぞみさんが来たんで、代わります」

 

「頼む。……私だ」

 

「少佐でしたか、お久しぶりです」

 

「お前の戦闘データは見させてもらったが、せっかくの自前の翼なのだ。もっと急制動を入れ込め。ユニットより自由が効くのだから……」

 

「つい、ユニットの感覚で制動しちゃうんですよね」

 

「もっと鋭角的に動け」

 

「真ゲッターみたいに、ですか?」

 

「あれのようにやれとは言わんが、動きにフェイントを入れろ。それと落下の勢いで打撃の威力を上げろ。私を見ろ」

 

「少佐、整備班から文句来てますよ」

 

「曲がらんようにしているんだがな」

 

バルクホルンは銃を鈍器代わりに使うことが多い。魔女の世界では『転生者』なので、普通に20歳超えでも現役を張っている。

 

「シャーリーを見ろ。奴は鋭角的な機動が出来ているぞ」」

 

「あれはナイトメアフレームで慣れてるからですよ」

 

「ケイさんからトマホーク借りたらどうです?」

 

「それは考えている。お前はまず、Go&stopで制動距離と加速感を身体に染み着けさせろ」

 

「わかりました」

 

「シンの機体のマニューバーも参考にしておけ。斬艦刀は振り下ろすだけが能でも無かろう」

 

「ええ」

 

「それと、歴代ライダーのライダーキックまでのプロセスの動画を送っておいた。それも参考にしておけ。今後の役に立つだろう」

 

歴代の仮面ライダーの必殺技までのプロセスも一種の勉強である。空中での動き、敵に最大打撃を与えられるポイントの見極めの勉強であった。

 

「それと、相手と殴り合う時はフットワークもだが、体全体の力の入れ方も工夫しろ。ボクシングのチャンプの動画も見ておけ」

 

バルクホルンは意外なことだが、ボクシングの類にも詳しいようであった。自身がよく格闘で暴漢を鎮圧している故でもあった。プリキュアは基本的に、顔などは殴られないが、合気道の心得も必要である。

 

「あ、ハルトマンが合気道も覚えとけと」

 

「わかりました。合気道って……大先輩が出来たけど、荒っぽいんだよなぁ」

 

「他にできる知り合いがいるか?」

 

「ちょっと、知り合いを片っ端からあたってみます」

 

と、バルクホルンからの通信を終える。その流れで、ゴルシに相談してみたところ……

 

「なにィ、合気道?うーん。心当たりがある。ちょっと待ってろ」

 

――その流れで、ゴルシはカレンチャンを紹介した。カレンチャンはエイシンフラッシュ、アパパネの同期であり、『カワイイ』キャラで売り出し中のウマ娘であった。だが、恐ろしい事に、単なるぶりっ子キャラではなく、現時点での短距離の王者として君臨している実力者でもある。ウマ娘としては、ゴルシの後輩だが、レースでのデビューはカレンチャンが二期ほど上であった。

 

「ゴルシさんからの紹介で通信講座をやる事になった、カレンチャンで~す。こう見えても、スプリンターズSと高松宮記念を勝ってまーす」

 

「大物じゃん!!短距離界の!!」

 

カレンチャンはG1勝利数は少ないが、短距離の(現時点での)王者である。ゴルシの人脈は短距離界にも及んでいたのだ。意外な事に、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの姉妹はカレンチャンに頭が上がらないという。カレンチャンはその見かけと振る舞いから、過激なファンに襲われる事があるらしく、護身術として、合気道を修めていた。大人のぞみはこうして、武道を次第に修めていくのである。

 

 

 

――こちらはナリタブライアンと入れ替わっているのぞみA。既に主だったウマ娘に『入れ替わり』は周知されていた――

 

 

「ふーん。ブライアンがアンタに入れ替えを?どういう風の吹き回しなんだい?」

 

「サクラローレルちゃんの運命も救いたいからって言ってたよ」

 

「ローレルに?どういうことだい?」

 

「実は――」

 

ヒシアマゾンはナリタブライアン、サクラローレルの双方と親しい仲である都合上、タネ明かしがなされた。そこでサクラローレルに待ち受ける悲運を知らされた。

 

 

「フォワ賞で、ローレルが競技者としての致命傷を!?」

 

「声が大きいって」

 

「ご、ごめんよ」

 

「そういう事。それを変えるためには、ブライアンちゃんが王座に返り咲く事が必要なんだ。一年ずらせば、重馬場にはならないから」

 

ローレルの悲願を叶えるには、重馬場である史実の致命傷の原因である『フォワ賞』に行かせないことしか方法がない。国内で最強になったことで渡仏するのだから、それを一年はずらせばいいのだ。

 

「ブライアンちゃんは目的を達した場合、その年の有馬で引退するつもりだって」

 

「オグリさんの再来を狙ってるってわけかい」

 

「史実を変えるのなら、ドラマティックに引退したいそうな?」

 

「下の妹にいいとこみせたいんだね、あの子は……」

 

「少なくとも、三人いるっていうからねぇ」

 

ブライアンがそれを達成するには、下の世代の有力株を含めたライバルを根こそぎ『ぶちぬいていく』必要がある。ひいては、ディープインパクト、オルフェーヴル、ジェンティルドンナと対決せねばならないだろう。それはけして楽ではない。ブライアンの全盛期の能力を以てしても、だ。その三人は史実でその世代の最強を誇った逸材であるからだ。

 

「アンタも大変だよ、これから。下の世代に追われるから」

 

「しかも、本来は会うことがないはずの世代と戦うからね…。ディープインパクトとも、本当は10年ほど離れてるはずだから」

 

「詳しいね」

 

「うちの親父、絵本作家だったんだけど、競馬を見るのが好きでね」

 

ディープインパクトとオルフェーヴルが目下、最大の難敵であると認識しているのぞみ。まずはマーベラスサンデーやマヤノトップガンなど、ブライアンの一期下の世代に打ち勝つ必要がある。

 

「ブライアンの全盛期の力に対抗できるってのかい、ディープインパクトとオルフェーヴルは」

 

「その代の三冠を取れる実力と、そういう運命を持つからね」

 

その二人がブライアンの引退へのロードマップ最大の難敵である。路線の違うジェンティルドンナとは、戦う機会はそれほどないだろう。のぞみAはブライアンに扮する任務が長期に渡る事を覚悟するのであった。

 

「アパパネは引退したから、問題はジェンティルドンナだな、ティアラ(牝馬に相当)路線の連中は」

 

「アパパネの引退を知ってるのかい」

 

「まぁね。ジェンティルドンナの後継ぎがヤバいんだよなぁ」

 

「もっと下にいるってのかい。逸材が」

 

「アーモンドアイ。G1を9回も勝った、日本競馬史上最強の女傑さ」

 

「き、九回!?」

 

アーモンドアイは距離適正がマイル~中距離であったが、当代最強を誇り、自分の後に三冠を得た二頭を打ち倒して引退していったほどの逸材。ウマ娘になっていれば、その才能に対抗可能なウマ娘は数える程度だろう。

 

「ルドルフちゃんの全盛期より強いよ、適正距離じゃ。アーモンドアイの下の三冠馬が足をダメにしてさえ、追いつけなかったからね」

 

「そんな化け物が……ジェンティルドンナの後継ぎだってのかい……」

 

「うん。ウマ娘になってれば、遠からず現れる。多分、テイオーちゃんが卒業した後は…彼女が生徒会を仕切るかもしれない」

 

アーモンドアイも、マイル戦で敗北した事があるが、適正距離であれば、彼女に抗えるウマ娘は同世代に存在するか怪しい。そのアーモンドアイの下には『イクイノックス』と『コントレイル』、『デアリングタクト』が控えているので、トリプルティアラは出る時は出るのである。また、コントレイルは素質の高さでクラシック三冠を達成するものの、晩年期は奮わない戦績であった。それはデアリングタクトも同じだ。

 

 

「デアリングタクトとコントレイルは……上にアーモンドアイがいた事が不幸さ。それで評価が落ちてるからね。アーモンドアイに戦いを挑んで……あえなく討ち死にの結果だもの」

 

「会長が出てきて、評価が下がったシービーのようなものかい?」

 

「そういう事」

 

「妙な感じだねぇ。まだいない子らの話なんて」

 

「メタ情報前提だから、ウマ娘としてそうなるとはかぎんないけど、そういう星の下に生まれてきてるってことさ。三冠を取る連中は」

 

 

 

この時期に、のぞみは(やむなき事情で)二人が活動していたが、大人の個体が軍人としての業務を代行し、少女の個体がウマ娘『ナリタブライアン』の願いを叶えるために、一肌脱いだのである。少女の個体は(転生者であるので)実質的に高校生活をやり直すようなものであった。協力者はいるだけいいので、ヒシアマゾンを引き込む事にしたのだ。

 

「それに、高校生活には悔いがあってね。他人の立場を借りてる形だけど、やり直すってのは悪くない」

 

「あんた、本当は何歳…いや、本来の身体で、っていうべきかい?」

 

「えっと、普段いる時代の戸籍年齢は21歳前後。この時代まで生きてれば、90代のバー様になる計算。一度死んで生き返ると、一定の年齢で止まる事があるんだよね」

 

「いろんな面でぶっ飛んでるねぇ」

 

「ゴルシも言ってたけど、それを知ったから、史実のロールプレイのようなことになるのは御免被るって」

 

「あいつらしいねぇ……」

 

「だから、ブライアンちゃんも自分の運命を知っちゃった故に、抗いたくなった。だけど、どうすればいいのかわからない。それに手を貸したのさ」

 

「あの子の運命は?」

 

「引退後に内蔵破裂起こして、早世。それが前世でのブライアンちゃんの顛末。三冠の名誉回復も、自分の血を繋げることも叶わないまま…。そんなの知っちゃったら、抗うしかないでしょう?」

 

「……内蔵破裂…?そんな……」

 

ヒシアマゾンもこれには放心状態となる。ヒシアマゾン自身は天寿を全うしているので、ブライアンの悲運ぶりが際立っている。ブライアン本人もこの事で取り乱した。だが、ウマ娘としてなら…と、幼少期に見た『オグリキャップの有終の美』に希望を見出している。ウマ娘としては、実質的に師弟(オグリとタマモとゴルシの歴史改変の結果だが)関係にあったからだ。

 

「だが、ブライアンはそれに抗おうとしているんだ、ヒシアマゾン」

 

「オグリさん……!」

 

「ルドルフはしなかったが、ブライアンは『競技者として再起した上で』去る未来を選んだ。間接的にだが、サクラローレルをも救う道になりえる」

 

珍しく、食堂でシリアスに決めるオグリキャップ。引退後は食堂の主化しており、往時の怪物ぶりを知らない者も多くなっているからか、珍しい光景だ。また、前・生徒会長であるルドルフを名前で呼べる間柄であり、この時代では重鎮ポジだ。

 

「あんたが食堂でシリアスに決めるなんて、珍しいねぇ」

 

「偶にはいいだろう。こう見えても、君が学園に入る前、現役の頃は怪物と呼ばれていたんだぞ?」

 

ヒシアマゾンにそう断言されるくらいに、食堂の主扱いのオグリ。

 

「姉さん、現役の頃から何年だと思ってるのよ」

 

「ローマンか。茶化すな」

 

オグリキャップには妹が一人いる。ヒシアマゾンやブライアンと同世代で、その代の桜花賞を制した『オグリローマン』である。近頃は姉に似てきたと評判で、怪我で引退した後は姉と同じ髪色に変化していたのもあり、外見の差異が減っている。オグリの忘れ物を取っていった妹。それが存在意義であったが、姉との関係は良好である。

 

「ローマン、久しぶりだねぇ。近頃は顔出してなかったから……」

 

「引退した時の怪我の治療でね」

 

「あんた。芦毛に?」

 

「引退した後で、姉さんに似てきたのよ」

 

ローマンは現役当時は黒毛寄りの風貌であったが、引退後に姉と同じ芦毛に変わったという。桜花賞が最初で最後の中央での見せ場であったが、オグリのなし得なかった事をなしえただけでも、殊勲を挙げたといえる。早期に引退はしたが、姉妹でG1勝利をなし得たのだから。

 

「ブライアン、あなた。姉さんと親しいようね?」

 

「やめないか。同期に…。無礼だぞ」

 

「構いませんよ。ソイツと同期なのは事実ですから」

 

オグリローマンは自分の姉を慕うブライアンに何かと突っかかる。齢が離れていた故に、姉の現役時代の勇姿を見られなかったからであろう。

 

「ブライアン、あなた。今度のアオハル杯は第何レースに?」

 

「そんな事、掲示板に書いてあるだろう。お前も走るのなら、一向に構わんが……」

 

「見定めてあげるわ。あなたが姉さんの見込んだウマ娘か」

 

「三冠を取ったのでは不満か?……お前がどう思うが、私は構わんがな」

 

ローマンはオグリと歳が離れていた。おまけに、姉を怪物たらしめたほどの闘争心を持っていなかった。それがコンプレックスであった。本質は臆病であるが、オグリの血統が為せる業か、桜花賞を勝った。ローマンはもし、姉と似た気質を持てていれば、姉の正統な跡取りにもなれただろうが、『姉の忘れ物を取りに来た』ということが存在意義の全てであり、姉の忘れ物を『一族として取りに来た』という目的が果たされたと同時に、彼女のキャリアは実質的に終わりを告げた。それが彼女の直面した『残酷な事実』であった。

 

 

「お前が果たせなかった事は、私がお前の姉さんの弟子として叶えてやる。大恩あるオグリさんへの恩返しになるからな」

 

それは、のぞみがブライアンの代わりに口に出した『ブライアンの本心』であった。

 

「なら、今度のアオハル杯でシービー先輩に勝ってみせなさいよ」

 

「無論だ。シービーは相手にとって不足はない」

 

「やれやれ、うまくいったな、ヒシアマ?」

 

「ああ…。一件落着、だね」

 

胸を撫で下ろす、オグリとヒシアマの二人であった。

 

 

 

 

――後日――

 

「久しぶりだな、アンタの勝負服姿は」

 

「そうだね…。現役時代の勝負服はいつ以来だろうね」

 

「フッ。私は現役だが、アンタはどうかな?」

 

「私だって、『天馬』と謳われた従姉さんの跡取りなんだよ?見てる前で、恥ずかしい走りは出来ないさ」

 

ブライアン(のぞみA)とシービーは『事前に示しあった』内容の会話を交わすことで、周囲に二世代の三冠ウマ娘の対決を印象付ける。そんな『三冠ウマ娘の対決』という光に飲み込まれる形となったものの、往年のウマ娘育成クラブの名門『ヴィクトリー倶楽部』の出身であった『サクラホクトオー』の姿もあった。既に引退して久しかったが、昔年の栄光よもう一度の心境なのか、名を連ねていた。悲運のウマ娘『オサイチジョージ』の同期であり、その仇討ちを託されたのだろうか。それは定かではない。『平成三強の直後世代の最強になり得た』とされたものの、悲運に泣いた彼女は同期に代わり、姉のサクラチヨノオーに代わり、自身の昔年の栄光を取り戻すため。二人の三冠ウマ娘に密かに挑む。ブライアンも、シービーも完全にノーマークの『往年のジュニア級王者』、サクラの名を持つウマ娘達の意地。その二つの意地が二人の三冠ウマ娘に挑む。

 

 

――かくして、そのレースは幕を開ける……―

 

 

 

 

 

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