ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第六百十一話「アオハル杯・第二戦の顛末」

――ウマ娘はトレーナーがいなければ、往々して、史実と同様の運命を辿る。それはオサイチジョージなどで証明された。のぞみは史実を超えさせるお膳立てをするべく、ナリタブライアンの体で(転生後の身体能力を駆使して)レースを戦っていく事になった――

 

 

 

――のぞみは波紋の修行を事前に終え、なおかつ気を練る特訓もしていた上、小宇宙も扱える。単純な能力値で言うなら、並大抵のウマ娘の比ではないが、レースは(現役時代に帰宅部だった名残りで)ド素人であった。そのため、即席でルドルフ、エアグルーヴらからの手ほどきを受け、どうにか形にしてきた。ブライアンの全盛期の能力の80パーは引き出せているとの評価であった。80パーでも、並大抵のウマ娘では及びもつかないものであり、三冠の前任者達(ピークアウト)でようやく追従可能なものであった。だが、シービーもどこから聞き出したか、波紋の呼吸を会得しており、能力値を全盛期の90パーにまで引き戻していた――

 

 

 

 

――レースは追い込み策を取った二人の三冠ウマ娘が後方に控える。

 

(なーるほど。サクラホクトオーが先を行くって寸法か。史実だと『ダービー馬の兄弟』って鳴り物入りでデビューしたけど、馬場が悪いと走らないってんで、パッとしないレース生活になった…。この世界でも似たようなもんかな)

 

件のサクラホクトオーは史実では、三歳時の全盛期には世代最強という評判すらあった。ウマ娘としては『諸要因で全盛期が短く、悪天候と重馬場にすこぶる弱かった』という評価が定着していたが、秘めたポテンシャルは姉のサクラチヨノオーに比肩するはずであった。それはそのサクラチヨノオーが証言している。

 

(たしか、平成三強の一期下の谷間世代だったな……。89年世代は良い評判は聞かない上、記録もあまり残されてないんだよな。その下に次の時代のスターがいたからだろうけど)

 

後世、平成三強とその二期下のスター達に挟まれた『谷間世代』と言われた者達。平成三強がスター過ぎたり、その下の世代に天才たちがいたことで低評価が定着している。これはマルゼンスキーとその同期にも当てはまる悲劇であった。ウマ娘としても、オグリが有馬記念で劇的な幕引きをした事が後の世代のウマ娘達にとっての『呪い』に近い認識になるなど、三強の残した光は強すぎたのである。

 

(このレース、90年代以前の世代のごちゃ混ぜ状態なんだよね。ミスターシービーなんて、83世代のはず。ナリタブライアンと10年は違うはずだし、他にメジロライアン、メジロドーベル?史実じゃ親子じゃん……。これ、競馬の関係者が狂喜乱舞するだろうな)

 

史実で親子であるはずのメジロの馬が世代の近いウマ娘として存在する事に気づく。メジロ牧場が全盛期を謳歌していた頃の三雄の一頭、その娘。それがライアンとドーベルだ。のぞみは『生前の父親が見たら、感涙ものだ』と感慨に耽りつつも、徐々に速度を上げ、位置取りを調整していく。

 

(なるほど。車やバイクもそうだけど、集団に飲まれると、動きにくいというけど……おっ、位置取り名目のタックルか!だけど、問題はないなっ!)

 

位置取りの名目で、タックルがなされる事は欧米では当たり前であり、日本でも、ジェンティルドンナが苛つきを顕にした時にしかけた(相手がゴルシであったので、逆効果であったが)事で知られる。ブライアンは全盛期の力であれば、仕掛けられたタックルを逆に弾ける。格闘のプロであるのぞみが入れ替わっている状態であれば、尚更だ。

 

(よっと。無理にタックルなんかすると、逆に態勢崩すぞ?分からんもんかね?)

 

追い上げてきたウマ娘の一人がしかけたタックルをものともせず、のぞみは順位を上げていく。

 

(第三コーナー……後は第四コーナーでトップギアに……おっ、来たな……!ミスターシービー!!)

 

「やぁ。ルドルフと君の会話は聞かせてもらってたよ。なかなかおもしろい事を」

 

「それで?」

 

「君とブライアンが交わした約束だけど、それに協力するよ。その代わりと言ってはなんだけど、今はあたしにつき合ってくれる?」

 

「この体に馴染みきるためには、血が滾る戦いが必要だからね。いいよ、つき合ってあげる」

 

「ブライアン本人がしなさそうな顔してるよ?」

 

「あの子は獰猛なケモノだからね」

 

 

シービーに指摘され、自身が肉体の滾りに高揚を感じ、自然に微笑んでいる事に気づくのぞみ。ブライアン本人は全盛期~低迷期を通し、『ケモノのように獰猛な印象』を周囲に与えていたので、それと異なる『高揚』の表れ方に、シービーは全てを悟ったようである。

 

――第四コーナーを回る!あ、ミスターシービーが……い、いや、ナリタブライアンも同時に仕掛けました!!ものすごいスピードです!!二人の絶頂期のように……!!――

 

シービーとブライアン(のぞみ)は第四コーナー途中でバ群を一気に抜け出し、サクラホクトオーに迫る。ホクトオーはかつてのジュニア級王者の意地で踏ん張るが、絶頂期の速度をほぼ取り戻していた二人の『輝き』に飲み込まれかける。

 

 

「あ、ああ……!!ホクトオー……」

 

観客席で、最愛の妹の走りを見守っていたサクラチヨノオーが絶望の表情になっていた。サクラホクトオーは(ブランクが大きい事もあり)既にいっぱいいっぱいの有様であったが、シービーとブライアンは余裕たっぷりであるからだ。その近くの席では。

 

 

「流石だ、シービー。たった数日で波紋を会得してみせるとはな」

 

「全盛期の9割位に戻ってるわね。ホクトオーちゃんには悪いけれど……このレースの主役は……」

 

「……そうだな、あの二人だ」

 

ルドルフ、マルゼン、オグリの三人がレースを観戦していた。レースの大勢は既に決まったも同然と言わんばかりの口ぶりだ。そして。

 

「あ、あれは!!」

 

サクラチヨノオーが驚きの声を上げる。ブライアンとシービーが『領域』と呼ばれる力を発揮し始めた(絶頂期の状態に立ち戻った)からだ。公には『時代を担うウマ娘が至る、当人も知らない潜在能力』とされ、他のウマ娘たちを萎縮させる効果を伴う。たとえ、G1級のウマ娘であろうと。しかも、互いに『時代を支配した事がある』ほどのウマ娘達が発動させれば、その力は凄まじい。メジロライアンやメジロドーベルほどのウマ娘が抜かれる瞬間に放心状態に陥るほどに。

 

「ライアンとドーベルには気の毒だが……このレースはあの子らの出る幕ではない」

 

「確かにな」

 

ルドルフとオグリがそう断言するほど、二人はその力を奮う。シービーは史実での父『トウショウボーイ』の渾名であった『天馬』のように、大地が弾む。ブライアンは『全てをねじ伏せる炎』を周囲に幻視させながら。その力に抗うホクトオーであったが、ついに二人に抜かれる。糸が切れた人形のように失速していき、バ群に飲み込まれていく。彼女のポテンシャルを超越するウマ娘が相手では、むしろ持ったほうであった。

 

――これは大接戦!!大接戦!!二代の三冠ウマ娘のどちらが……!――

 

相手がブライアン(直近の三冠ウマ娘)である以上、シービーも普段の余裕ぶった態度をかなぐり捨てた『本気』であった。表情もルドルフ、マルゼンの二人すら記憶にないほどに鬼気迫るものであった。

 

 

「シービーちゃんが本気になるなんて…!」

 

「仮にも、相手は直近の三冠ウマ娘だ。手を抜けるはずはない。ましてや、シービーはパワー型のウマ娘ではないんだ。対して、ブライアンはその力で相手をねじ伏せてきた。スピードは互角だ……こうなると……」

 

「どちらが勝ってもおかしくはないな……」

 

三人がそう評するほど、二人の三冠ウマ娘のポテンシャルは互角であった。最終直線の伸びも互角。二人は疾風どころか、稲妻になる勢いでゴールに突っ込んでいく。そして……。

 

 

――二人が必死の形相でゴールしたのは、その数秒後であった。人間の目では優劣の差はわからず、写真判定に委ねられた。その結果は……――

 

――同着!!同着です!!写真判定を以てしても、全くの同着だそうです!!大会の趣旨としては不味いので、ただいま、協議中とのことです――

 

実況でそう告げられる。前代未聞の事態だが、時代を動かせるレベルの実力者同士だと、意外と接戦になる場合が多い。ましてや、お互いに絶頂期の状態でぶつかれば?タマモクロスとオグリキャップの最後の対決以来の状況は『同着』という形で幕切れとなった。この後のアオハル杯の残りのレースはイナリワン、スーパークリークの両名が『蹂躙』する形で勝利を飾り、往年の実力が復活した事を衆目に示したわけだが。

 

 

 

 

 

――その翌日の新聞は『二大三冠ウマ娘の対決』に紙面が割かれていた。シービーが突如として、絶頂期を彷彿とさせる『シービー戦法』を成功させ、直近の三冠ウマ娘であるブライアンと渡り合ったことへの謎も紙面で謎として報じられていた。既に引退して久しい(ルドルフの一期上。同期はカツラギエース)のにも関わず、絶頂期を彷彿とさせる走りが出来たのか?その謎を探ろうと、紙面はそう〆られていた――

 

「シービー。女史の事はくれぐれも部外秘だ。ややこしい事になるのは間違いないからな」

 

「うん。それはわかってるさ。こう見えても、子供の頃は変身ヒロインに憧れてたんだし」

 

「女史の話を聞くと、若い世代に注目株が多いようだ。ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィプロス、サトノダイヤモンド、キタサンブラック……」

 

「へぇ。向こうの世界じゃ、その子達、それぞれ違う時代を走ってんだ」

 

「そうらしい。世界が違うと、我々はお互いに会うこともない場合が多いそうだ」

 

実際には、シービーは83年世代。ルドルフが台頭してきた頃には全盛期を過ぎていた。名前を出された者達は2000年代後期以降に名を馳せる世代。ルドルフやシービーの遥か後の時代の競走馬たちになる。また、2000年代後期にもなると、サンデーサイレンスの血統がエリート扱いされて久しいので、その時代の有力馬の大半は彼の血を何処かで継いだ存在であった。

 

「ふっ、そいつ等は俺の孫達だ。2000年代になると、俺達の血統が日本を支配しているも同然だからな」

 

「サンデー。カフェに体を返したらどうだ?」

 

「悪いが、まだその気にはなれんよ。孫やひ孫の活躍が見たいしな」

 

サンデーサイレンスはある意味、孫のゴルシよりも傍若無人な振る舞いであった。ルドルフにも強気に出れるのは、20世紀末以降は彼の血を持つ馬が『エリート』と見なされる故の自信であった。カフェの意識は逆に普段のサンデーと同じ状態であり……。

 

「カフェ、君も災難だな……」

 

――え、会長。私が見えるんですか!?――

 

「向こうの世界で特訓したら、普通に見えるし、触れられるようになってね…」

 

――会長、『父』に早く元に……――

 

「サンデーの性格的に、それは無理だ。マックイーンと遊びたがっているしな……」

 

――な、なんでですか!?――

 

「ふん。俺とマックちゃんはだな……」

 

と、サンデーサイレンスはマックイーンと親密な関係にある事を事あるごとにアピールする。マックイーンからは邪険に扱われているが、史実で共通の子孫がいるほどの関係であり、互いの晩年期には恋人同士とも言われたほどに親しい関係であった。

 

「君に特訓をさせる手もあるが、主導権がサンデーの手にある内は迂闊に使えん。ここはしばらく我慢してくれんか」

 

――そ……そんなぁ~!!自販機のコーヒーをかっこまれて、私はすこぶる……――

 

「カフェ。君の気持ちはわかるが、一般人にコーヒーの味の良し悪しは分からんよ」

 

 

――うわぁ~~!!――

 

「頼むから、ポルターガイスト現象起こさんでくれ。エアグルーヴが卒倒するではないか」

 

――す、すみません…――

 

あまりのショックでポルターガイスト現象を起こすほど暴れるマンハッタンカフェ。無類のコーヒー好き(名は体を表すといったところか)であり、自分で豆にこだわって挽く事も多いことから、サンデーサイレンスに『自販機のコーヒー』をかっこまれる現状に不満たらたらであった。とはいえ、自販機でコーヒーが飲めるのは『日本の発明』であり、喫茶店に行くほどの興味のない者にはそれで充分に美味しいのだ。

 

「カフェなぁ。豆から挽くなんて、普通は手間がかかるから、一般人は機械でパックかなんかを挽くもんだぞ。それと、缶コーヒーを馬鹿にすんな」

 

――ゴールドシップさん、私が見えるんですか!?――

 

「ああ。普通に見えるぞ」

 

――えーーーーー!?――

 

「ふっ、さすがは俺の孫だ」

 

生徒会室に入ってきたゴルシ。普通にマンハッタンカフェ(霊体)を視認でき、会話もこなせるという技能を披露している。

 

「今しがた、ヴィルシーナとジェンティルドンナの喧嘩を止めてきたとこなんだよ、じっちゃん」

 

「やれやれ、孫娘達は血の気の多い…」

 

「誰に似たんだ、誰に」

 

と、ゴルシはジェンティルドンナをも止められるパワーを備えている事が示される。鉄球を物理的にチョコボールサイズに圧縮できるジェンティルドンナだが、史実でそうであったように、ジェンティルドンナを更に超える力を持つ(対戦成績も互角)ようだ。

 

「会長、ジェンティルドンナがまーた圧縮しちまったぞ。鋼鉄じゃ用をなさねぇ」

 

「……どういうからくりだ??」

 

ルドルフも『鋼鉄製の砲丸投げ用の砲丸がチョコボールサイズに圧縮されている』光景には目を疑う。

 

「今度から、超合金Zと硬化テクタイト板製のに取っ替えんぞ。鋼鉄の数千倍の硬度だ。これなら、ジェンティルの奴でも壊せねぇはずだ」

 

ゴルシは学園のトレーニング用の鉄球をカワカミプリンセス、スマートファルコン、ジェンティルドンナなどのパワー自慢のウマ娘でも壊せない『超硬合金製のもの』に取り替えることを告げる。なお、この日、その事を知らぬヴィルシーナがトレーニング室の真新しい鉄球(超合金Z製)を力一杯に握った結果、(超合金Z製なため)手を痛めてしまう珍事が早くも発生したのである。

 

 

 

 

――その日の夕方 医務室――

 

「ゴールドシップ?あの鉄球はなんなの?私が力いっぱい握っても、ヒビも入らないなんて……」

 

「あれは鉄球だけど、別の合金で出来てんだよ。それも宇宙で有数にかてぇものだ。対ジェンティルドンナ用の新兵器だったんだよ」

 

「ゴルシさん。姉さんが手を痛めちゃったじゃないですか!」

 

「すまねぇな、シュヴァルグラン。あたしの責任だから、面倒見てやるって」

 

「で、どういう合金なのよ、ゴールドシップ」

 

「説明がしずれぇんだ。この世界に存在してない鉱石を精錬してできる超合金だから。ジェンティルでも、ああいう真似はできないと思うぜ」

 

ゴルシもそう断言する、超合金Zの堅牢性だが、単純な硬度では『鋼鉄の1000倍』であるという。21世紀では通常、そんな金属など存在しない。ルナチタニウムでも、そこまでの強度はないのだ。

 

「この世界にない?」

 

「ああ。富士山零で発見されたレアメタルを精錬してできるんだけど、そんな鉱脈、この世界にはねぇからな。単純な硬度はカーボンナノチューブの更に100倍だそうだ」

 

「何よそれ!?」

 

「発見された時代が今からはずいぶん後の頃なんだと。そんな頃なら、精錬できる技術くらいあんだろ?」

 

「SFじゃあるまいし」

 

「リアルでそうなってるんだけど、見ないと納得しないかもな。その世界のことは」

 

とはいえ、暮らしぶり自体は21世紀初頭と同レベルくらいで落ち着いているのも、未来世界だ。ひみつ道具時代の後はスペースノイドに『過度な便利さは人を堕落させる』という風潮が強かったが、結局は『21世紀くらいの暮らしは確保しておきたい』という実生活での都合が優先され、ジオンも『20世紀末の生活レベルなら許容する』ことで統治の寛容性を演出していた。ひみつ道具のテクノロジー復興が許容されるようになったのは、ガミラスの襲来以降に『外宇宙の脅威』がわかった後だ。如何に統合戦争で『軍事優先の発達と復興』がされたかがわかる(流石にインターネットネットワークを理解できないのでは、歴代のジオン系組織も戦争遂行に多大な支障があったのがわかる)。ゴルシは多少困った表情ながらも、軽妙なトークをするのだった。

 

 

 

 

 

 

――ブライアンが柔らかい表情をするようになったことは賛否両論だったが、周囲は『挫折の経験が変えたのだろう』と受け取っていた。シービー共々、三冠ウマ娘の華麗なる復活として報じられ、下の世代との対決が期待された。同時に、シンザンが警察関係者と予てから協議していた『暴漢に襲われた場合の対処法』も正式に学園に通知され、トウカイテイオー新会長の名のもとに、学内に布告された。また、学園と関連施設の警備員の増強もなされた(警備会社にいる、元のG1級ウマ娘が主に雇われた。史実で言う80世代以前のウマ娘であり、学園のOGだ)――

 

「警備会社にいるのは(当然ながら)古い世代のOGだが、まぁ、これで暴漢も手出ししないだろう」

 

「装甲車を持ち出さない限りは無理ですよ、あの布陣は。よく探してきましたね」

 

「シービーとエース(カツラギエース)のツテを使ったよ。元・会長にも探してもらった」

 

ルドルフは退任後も生徒会室に詰める事が多いので、院政を敷いていると揶揄されていた。実際、ルドルフの力は意外に強く、オグリの現役時代には『世論を動かす』きっかけになった(オグリの引退後にクラシック登録制度を変えるなど、結果的に協会の動きが後手後手になったのは否めない。また、テイエムオペラオーの人気が想定外に低いというのもあり、その次の世代のスターを早くも求めるなど、自分勝手な協会の方針への指摘もある)。そのため、現時点での成績がルドルフより劣り、性格も子供っぽいテイオーに不安を覚えた理事会などがルドルフの院政を推進させているのである。

 

 

「しかし、よろしいのですか?」

 

「理事会からの要請だ。断れんよ。理事長代理に例の方針を撤回させるためには、生徒側に『落ち度』があってはまずいのも事実だからね」

 

樫本理子理事長代理は『良かれ』と思って、育成方針の転換を提言したのだが、結果的に、学園のウマ娘の大半を敵に回し、三冠ウマ娘の複数が有力なウマ娘たちをまとめあげる事態となったのにうろたえている事だろう。彼女が育成中であったウマ娘達は高い能力を持つものの、切磋琢磨するという思考に欠けるか、避けている傾向があり、単独での伸びしろには限界がある。そこに勝機を見出した生徒側は裏で『波紋法』の特訓をし、引退組も『全盛期か、それに近い状態』に肉体を差し戻しつつあった。

 

「例の理事長代理ですが、いかがなされます」

 

「表立っては静観しておこう。レースで我々の力を示せばいい話だからだ。彼女も保護者らの手前、自分の方針を強く押し出せはすまい」

 

ルドルフ、エアグルーヴらの属するアオハル杯でのチーム『チームブリュンヒルト』は生徒側のチームで最有力と見做されつつあった。三冠ウマ娘を複数抱えているどころか、各世代のエース級を殆ど独占的に有するからであった。しかも、引退組のほうが多いのにも関わず、その個人単位のラップタイムは彼女らの全盛期の数値に相当する。チームファーストも強いことは強いのだが、団結した彼女らの抱く『炎』に飲み込まれようとしていた。

 

 

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