ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘世界編です。


第六百十三話「ウマ娘世界に広まる、波紋法」

――プリキュア間のパワーバランスは変化し続けていたが、キュアハートが素の能力値ではトップ、キュアドリームが現時点の総合戦闘能力でトップなのは不変であった。これは代を追うごとに、戦闘に不向きなプリキュアも増えてきた事との兼ね合いであった。(メタ的な側面で言えば、プリキュアは美少女戦士セーラームーンのアンチテーゼ的な存在として生まれたはずだが、代を追うごとに、逆に近づくという皮肉が生まれた背景もある)デザリアム戦役後に存在が判明した波紋法で生命エネルギーを活性化(肉体の潜在生命力を引き出す効果がある)させ、肉体的な意味でのポテンシャルを引き上げる修行がなされ、それがウマ娘たちに伝わったのである。波紋法は生命エネルギーを大きく引き出すため、ウマ娘の『ピークアウト』現象を否定するに値するだけの能力向上が起きる(スタミナがものすごく上がるなどの効果がある)。そのメリットを重視したゴルシの提言で、学園の有力ウマ娘らのトレーニングに取り入れられた結果、引退組が絶頂期のパフォーマンスを取り戻す事例が続出するのであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――精神的な意味合いでも『ピークアウトによるパフォーマンスの低下』は起きる。これは魂が史実の運命を体験し終える事を感知することも起こる。ゴルシとブライアンはそれに抗う決意をし、波紋法をいち早く修行したわけである。結果、ゴルシは未然にパフォーマンス低下を避け、ブライアンは『取り戻した』のである。次いで、引退組がそれに励んだ結果が『チームブリュンヒルト』の圧倒的強さであった。ウマ娘は『馬が人型の体と知能を得た』ような存在であったので、アスリートとしての寿命は人間よりも圧倒的に短い。それを問題視する声も強かったので、波紋法でピークアウトを避ける、あるいは帳消しにできることは『競技生活をあくまで続けたいであろうウマ娘』には福音であった。ブライアンは競技生活に人生の全てを捧げるつもりであったので、波紋法に起死回生を賭けたのである。それは大成功といっていいだろう――

 

 

 

 

――ウマ娘世界の日本――

 

「引退組、突如として絶頂期のパフォーマンスを取り戻し、若手を蹂躙。……お前ら、波紋法をレースに使ったのかよ」

 

「いーだろ、トレーナー。今度の理事長代理のチームに勝つための秘策なんだし」

 

「まぁ、テイオーが怪我しなくなるのはいいことだが、世代交代を考えてんのか?」

 

「トゥインクルシリーズからの引退時期は個人で決められるから、然るべき時で引退はするさ。ドリームシリーズの体面をきちんとするためでもあるからな」

 

スピカのトレーナーはゴルシに一応は釘を刺すが、概ねは行動を容認した。トレーナー間でも、ドリームシリーズの存在意義に疑問符がついていたからだろう。スピカのウマ娘たちにも、複数が遠からぬうちに移籍するか、既に移籍済みの者がいるからだ。

 

 

 

「確かにな。元々、昔にあった『悲劇』を繰り返させないために考えられた面があるのも事実だ。だが、世間はサーカス同然に見ている。表向きの言い訳はともかくも、だ。それを変えるには、引退組が絶頂期のパフォーマンスを見せつける必要がある。それも、昔の勝負服で、だ」

 

彼もドリームシリーズにある揶揄を払拭するには、引退した者達が往時のパフォーマンスを出し、現役組に引けを取らぬパフォーマンスを見せる事が必要であると考えていたようだ。

 

「だから、シンザンの御大と取引したんだよ、あたしは。御大と利害が一致したからな」

 

「最強が最強のままでいるのは辛いことだぞ、ゴルシ」

 

「構わねぇよ。それくらいは運命を超えるためなら、屁でもねぇさ」

 

ゴルシはアオハル杯第二戦の直前、普段属している『スピカ』のトレーナーに『運命を超える』事を明言していた。最強は最強のままで去る。史実ではアーモンドアイが、キタサンブラックがなし得たことである。

 

「会長は現役に未練はなくとも、走り続けたいって気持ちが残っていた。だから、ドリームシリーズに本格参戦した。多分、ドリームシリーズのレベルは上がるよ、凄くな」

 

 

ルドルフのドリームシリーズへの本格参戦は『絶頂期のパフォーマンス』で以て華麗になされ、現役当時より蹂躙の様相が強くなったとされる。慣例破りであったが、ルドルフの現役当時のスター性で許容された。

 

「あれほどのウマ娘が絶頂期の能力に戻りゃ、他のピークアウトしたウマ娘たちじゃ、どうあがいても『太刀打ち』できるわけがないからな。結果的にだが、馴れ合いはなくなっていくと思うぜ」

 

「マスコミに叩かれるだろうからな、あまりの体たらくだと」

 

ルドルフやタマモが絶頂期の能力で以て、ドリームシリーズを蹂躙していることは既に周知の事実。その有様につつかれる形の他の引退組もトレーニングを行ってはいるが、既にピークアウトを経た者も多いので、効果は低かった。唯一、絶頂期のうちに引退しているスペシャルウィークが太刀打ちできる状態であったからだ。

 

 

「波紋法は広めんのか?」

 

「あたしたちは門戸を開いてるぜ。だが、個人の素質の問題があるから、万人にできるものでもない。あたしらはたまたま、できる要素が多かっただけだ。」

 

「波紋には、向き不向きがあるはずだからな。他の手段は医学的な手段か?」

 

「人間のアスリートと違って、長期的に全盛期のパフォーマンスは維持できないののが、生物学上の謎だったからな。波紋に不向きなら、科学的手段からの治療がいいだろう」

 

ゴルシは波紋法を治療法として広める意向であるが、世代間のバランスなどの都合もあり、安易に広げるわけにもいかない。史実での屈腱炎などの治療が当代最強を誇った馬に優先的に施されているのと同じ理屈だ。

 

「波紋は科学的に説明が不可能に近い民間療法に近い代物だからな。当面は『請われたら、存在を教える』ってスタンスで行く。データ重視のインテリ連中はどうだろう?」

 

「知りたがるだろ?不治の病を生命力の活性化で乗り越えられるのなら。問題は循環器系の強さだぞ、ゴルシ」

 

「地球連邦の息がかかってる、例の病院の連中に今後の検査を依頼してあるから、循環器系が強ければいけると思う」

 

テイエムオペラオーやオグリキャップなどの循環器系が強いウマ娘では、波紋法の効果は絶大であった。落ち目であったテイエムオペラオーは、レースからの引退を囁かれている状態から、一気に全盛期のパフォーマンスに立ち戻った。

 

「朝のトレーニングって形で、こっそり全体練習に取り入れたらどうだ?今のままだと、『ズルして無敵モード』同然だぞ」

 

「生徒会の権限でそうさせる。今のあたしは書記だからな」

 

「明日は雨が降るな」

 

「ひでぇ」

 

と、しょげるゴルシ。とはいえ、その翌日から、朝の全体体操に取り入れた『新しい健康法』という形で、初歩的な波紋法の修行メニューを取り入れさせた。長期的な計画の第一歩であった。現時点の現役の有力ウマ娘や引退済みのエース級は新学期の健康診断を大義名分に、循環器系の調査が行われた。そのデータをもとに、波紋法向きと医学的な治療とに分けられた。例として、テイエムオペラオーは前者になり、グラスワンダーは後者寄りであった。グラスワンダーは史実通りに、怪我を何回かしたことで、肉体の『損傷』もかなり蓄積しており、医学的な治療を併用しなければ、全盛期には戻せないとの診断が下ったからであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――更に数週間後。グラスワンダーはゴルシの紹介で治療を始めていた。全盛期のパフォーマンスを取り戻せるという一縷の希望を示され、藁にも縋る思いで、ゴルシに頭を下げた(史実では、ゴルシが頭を垂れる側であったが)。既に、グラスワンダーは『マルゼンスキーの後継者』と言われた走りが『出来なくなっていた』からである――

 

 

「ゴルシ先輩(意外にも、史実と違い、学園へやってきたのはゴルシより後であった)……」

 

「気分はどうだ?」

 

病院のベットで寝かされていたグラスワンダーを見舞うゴルシ。

 

「体の損傷を治すために、私を入院させたのですか?」

 

「健康診断で、お前の足に疲労骨折と筋肉痛が見つかったからな。アタシが手を回した。悪いが、タキオン特製の眠り薬を投与させてもらったぞ」

 

 

ウマ娘は薬剤への耐性が人間より高いため、薬剤を使う場合はウマ娘用の処方が必要になる。その兼ね合いで、アグネスタキオンに眠り薬を作らせ、それをグラスワンダーへ投与したのである。

 

「私はどのくらい?」

 

「健康診断の日からは数週間は寝てたぞ。医学的な治療に必要だったからだけど。今朝の診断で医学的には治癒していたから、これからリハビリに入る。ライスと一緒になるぞ」

 

「ライスさんと?」

 

「ああ。この病院でリハビリ中だ」

 

この時期になると、ライスシャワーは怪我の治癒自体は終わっていたが、リハビリのために入院生活が続いている。生徒会の意向で、ライスシャワーと親しい者、あるいは彼女の家族にのみ詳細を知らされている。いくら未来技術で一命は取り留めても、元のように脚を戻せるかは、まだ未知の領域であった。そのため、退院の目処が完全に立つまでは、継続的な診察と観察処置が必要であった。グラスワンダーはこの日より、ライスシャワーと共に、復帰のためのリハビリに励むこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――徐々にウマ娘のレース界隈の中心世代が(史実の2001年以降の世代に)入れ替わりつつあったわけだが、自らの意思で次世代のウマ娘と戦う者も多かった。ナイスネイチャやトウカイテイオー、ナリタタイシンなどがそれであった。彼女らには(年度が変わったためか)ドリームトロフィーシリーズへの誘いが来ていたが、それを断り、現役を続ける事を選んだ。それに追従するウマ娘が生じ始めたのである。黄金世代(スペシャルウィークらの世代)からも引退者が出ている時期にあっては、彼女らは世間的に『老兵』扱いであったが、そのポテンシャルに衰えはなく、尚も現役を通せる水準のパフォーマンスを発揮していた――

 

 

 

――生徒会室――

 

「ボクたちをロートル扱いはやめてほしいなぁ。肉体的には若いんだしさー……」

 

「仕方あるまい。世間的に、四年以上走ったウマ娘は私のおばあさま(スピードシンボリ)などがいたが、少数派だからな」

 

ルドルフは引退後も生徒会長の椅子に座り、テイオーは前と変わらず、ソファでくつろいでいた。これを指して、『院政を敷いている』というのは的を射た表現である。

 

「カイチョーはなんで、元の立ち位置を続けてんのさ」

 

「私の政治力がまだ必要とされているからだよ。それに、テイオーでは、お偉方に舐められるからね」

 

「む~!!ボクだって、G1を四勝してるってのにぃ~」

 

「前任が私でなければ良かったんだが、あいにく、私が前任ではな」

 

「ぐぬぬ~……」

 

膨れるテイオー。とはいえ、G1を四勝している時点で『超一流』と言われてもいいはずだが、史実での次世代の競走馬達からは五勝以上がチラホラ生まれている(アーモンドアイに至っては、九勝を誇っている)事を知った事から、(ルドルフの正統後継者として)さらなる勝ち星を望んでいるようである。また、ピークアウトを波紋法で乗り越えたからか、あと数年はトゥインクルシリーズに籍を置く事を決めているようだ。

 

「ブライアンと前に考えたけどさ、あと数年は居残るよ。いいじゃない、老兵って言われようが、ボロボロになるまで走り続けるって。前世じゃ、あと一年は続けたかったし……」

 

「茨の道だぞ、テイオー?」

 

「いいさ。カイチョーの後を継ぐには、せめてあと一、二回はG1の勝ち星を増やさないとね」

 

テイオーは前世の記憶を得たためか、前世での未練を晴らしたいという理由もあって、現役継続を選んだようだった。

 

「カイチョーの『子としてできる』最後の親孝行さ」

 

「私としては、もう充分にしてくれているよ、お前は」

 

ルドルフも珍しく、テイオーを『お前」と呼んだ。これはお互いに『前世で実の親子であった』ためである。

 

「『アイルトン』や『ミスター』の分も、カイチョーの跡取りになってみせるよ、ボクは。ツルちゃんもそう思ってると思うよ」

 

「テイオー……お前……」

 

テイオーは前世でのルドルフの産駒達の名を出し、彼らの分も『立派な跡取りになる』決意を述べる。テイオー自身も史実では(テイオーの種牡馬時代には、サンデーサイレンス旋風が吹き荒れていた)自身の立派な跡取りと言える産駒を輩出出来なかったので、その事の自戒も含んでいるのだろう。テイオーは微笑うが、どこか哀しげでもあったのは、ルドルフに対する自分のような『衆目の納得するような跡取り』を儲けることが叶わなかったためだろう。仕方がないが、サンデーサイレンス、彼と同世代のライバルらが如何に、それ以前の日本に存在した在来血統を駆逐してしまったか。それがよくわかる。また、ルドルフの子供達はテイオーとツルマルツヨシ以外の殆どが『鳴かず飛ばず』に終わった。それは事実である。彼らの無念を晴らす。それも、テイオーとツヨシがウマ娘になった理由だろう。

 

「えー~シリアスしてるところに申し訳ないんけど……」

 

「も~!今の聞いてたの、のぞみ?」

 

「うん。処理してほしいっていう書類が回ってきたから」

 

「すみません、女史」

 

「いいさ。久しぶりの『親子水入らず』だもんね」

 

ブライアン(のぞみ)が(いつの間にか)やってきていた。のぞみが入れ替わっている都合上、ブライアン本人が放置しがちな事務作業もこなしているのがわかる。

 

「前世的には合っていますが、誤解を招くので……」

 

「わかってるって」

 

書類を受け取りつつ、釘を刺すルドルフ。

 

「若い子達からの模擬レースの依頼?」

 

「うん。オルフェーヴル、ジェンティルドンナ、ジャングルポケットの連名で」

 

「ポッケかぁ。この間のアオハル杯、結局、ジャングルポケットが出る前に勝敗決まったからねぇ」

 

「イナリとクリークが本気で走ったからな。加減をしておけと言ったのですが」

 

「まぁ、そこはね」

 

平成三強が絶頂期の能力を出せた場合、現在のウマ娘では太刀打ちが至難の業である。そのため、ジャングルポケットはアオハル杯の出走の機会を逃したのである。

 

「その埋め合わせも兼ねての提案でしょう。いかがなされますか」

 

「受けるしかなさそうだ。日付の調整は任せるよ」

 

「わかりました」

 

のぞみはブライアンの願いを叶えるという大義名分があるとはいえ、二度目の高校生活を満喫しているようであった。士官学校を出ている状態で高校生に戻ったのと同義であるので、成績はブライアン本人より向上している(前世で国語教師であったのもあるが)。ブライアンを慕う、その同期のサムソンビッグが(障害競走への転向を考えていたらしく)転向の相談をするのに乗ってやったりと、元のブライアンより人当たりがいい(本人は無愛想であった故に、理解者が少ない)様子を見せている。

 

「新入生のドゥラメンテからも要請が来ました、会長」

 

エアグルーヴが入ってくる。

 

「エアグルーヴか。君の妹弟子だったね」

 

「あの子は史実での私の孫なので、顔合わせる時は妙な感覚に襲われましたよ…」

 

「本当は会うはずのない子だからね。でも、悪い気はしないっしょ?」

 

「ええ…。ただ、三冠は取れないという運命というのは……」

 

「同期にキタサンブラックがいる以上、それは仕方がないさ。史実でのドゥラメンテの子供たちがティアラ路線の王者になるから、その分は埋め合わせされてるさ」

 

ドゥラメンテは新入生の中では将来をもっとも嘱望されているが、(史実を鑑みると)残酷な未来が待ち受けている事になる(史実では、競走馬としては再起不能になる大怪我をしてしまうばかりか、早世してしまう)。子供たちが2010年代後期以降に名を馳せているが、ドゥラメンテ当人は不運な馬生であったのには変わりはない。

 

「未来技術と波紋法で、怪我が完治する可能性に賭けたら?そうすれば、シニア級の王者にはなれるだろうし」

 

「それであの子が満足するでしょうか」

 

「三冠は運命力で『取れない』以上、シニア級でキタサンブラックと切磋琢磨するほうに割り切らせるしかないよ。史実じゃ、急性大腸炎で亡くなってるんだし」

 

「……」

 

エアグルーヴは史実での子と孫が早世する運命にあった事実に打ちのめされたようである。だが、ルドルフ、テイオーのサイアーラインと違い、彼女の血統は繁栄を謳歌している。それが救いだろう。

 

「『この世界に生きるウマ娘の未来はまだ、誰にもわからない』って言うけどさ、実際には史実の運命の強制力が働いてる。それを知りゃ、抗いたくもなるよ」

 

「確かにね。だから、ボクは現役を続ける。エアグルーヴもでしょう?」

 

「ああ…。運命の強制力を超えるのが、今の私たちのすべきことだからな。引退する時は改めて、考える事にする」

 

引退する時は自分で決めたい。それが名を成したウマ娘達の願いであった。周囲の意見やや自分の体の変化で決まるものではない。心に燃え上がるものがあれば、意外になんとかなる(オグリがそうであったように)のだ。

 

「だいぶ昔の漫画で、巨人の星ってあったけど、あれだって、主人公は再起不能から復活できたからね」

 

「50年近く前の漫画じゃんー!まぁ、再起したけどさ」

 

「今回の『事が終わった』ら、学園全体の修学旅行を大アンドロメダ駅にでもする?未来の銀河鉄道会社にツテがあるから」

 

「え、のぞみ、ツテあんの?」

 

「私の養父の一族が会社の創設と復興に関わった関係で、株式持ってんだ」

 

「ネジにされそうじゃーん!」

 

「大丈夫、それをさせてた元凶のプロメシュームは滅ぼされてるから、星野鉄郎に」

 

ハーロックとエメラルダスのいる時間軸では、既に機械化帝国は滅んでいる事、復興した『太陽系連邦』は『ネオガミラス』(ガルマン・ガミラスが二度目の首都星変更後に国号を変更した国家。デスラーは未だ健在らしい)と同盟を結んでいる事が伝えられる。

 

「30世紀までに、地球連邦はどうなるの?」

 

「25世紀にセイレーン連邦がワルキューレの炎と18代ヤマトの尽力で滅んだ後に第二の揺籃期を迎えて、太陽系連邦に発達するらしいんだ」

 

「太陽系という事は、地球は主要星ではあるが、首都では?」

 

「経済の中心が月に移るからね。フォン・ブラウン市がその時代まで首都になるようだよ。その頃には、月も満杯になるらしいけど」

 

 

「それで、どこでもドアって、どうなったのさ?」

 

「銀河100年戦争が起こった23世紀の終わりに復活するんだけど、ひみつ道具時代と違って、使用に規制がかかったらしいんだ。戦乱の世だから。それで、銀河鉄道が発達していくんだって。ドラえもん君の時代の時点で、銀河系内にある程度は出来てたらしいけど」

 

「銀河鉄道……ですか。宮沢賢治氏の小説みたいですね?」

 

「どうも、その彼が乗ったらしい噂があるんだって」

 

「!?」

 

エアグルーヴは驚く。タイムパラドックスもいいところだからだ。

 

「銀河鉄道の株式会社の最古に近いデータバンクにあった記録だと、偶然、彼が生きてた時代にタイムトラベルした未来人の落とした切符を彼が拾ったらしいんだ。それで、半信半疑で…っていう話。眉唾ものだけど」

 

「そうだとしたら、彼からすれば、夢のように見えたでしょうね」

 

「だと思う。タイムパラドックスを承知で考えるなら、説明できる点もあるから、一種の都市伝説だって」

 

「30世紀になっても、都市伝説はあるんだね」

 

「いつの世も噂話はあるからね。もし、そうだとしたら、ロマンな話だよ。記憶は操作されるけど、強く印象に残ったってことだから」

 

「その時代の列車は宇宙船なのですか?」

 

「昔の列車を模した宇宙の公共交通機関だよ。銀河鉄道999は、その中でも最高級に近いグレードの特急だよ」

 

「宇宙時代に特急かぁ。鈍行もあるの?」

 

「恒星間航行する列車だから、鈍行ったって、一つの星系の主要惑星の一つ一つに停まる扱いのものだよ」

 

999が宇宙一有名であるが、それ以外にも列車は存在する。20世紀後半期の基準がそのままの表記で30世紀の宇宙列車にも使用されているが、準急や快速はない。殆どは流線型の流麗な高速鉄道を模したデザインを持っているが、999は外見は旧式機関車ながら、中身は最高級の代物である。

 

「高速鉄道を模したものが多いけど、999とかのノスタルジック特急は昔の蒸気機関車風の外観なんだってさ。確か、999は外観が昔のC62をモデルにしたって……」

 

「日本の蒸気機関車をなぜ?」

 

「蒸気機関車の手に入る現物を参考したんじゃない?統合戦争で北米の技術遺産、かなり失われてるから。前に、クイーン・エメラルダスが株主総会の資料を見せてくれたけど、マラード号を模した外見の奴がどこかで走ってるらしいよ」

 

日英は統合戦争でも比較的に国土が無事であり、地下都市も大規模であったので、23世紀、24~25世紀の戦乱も潜り抜けた遺産が多かった。その中に、英国が誇った高速機関車『マラード号』が含まれていたのだろう。

 

「新幹線以来の高速鉄道のノウハウをそのままとはいかないのですね?」

 

「宇宙を走るから、外見は大正のチンチン電車でもいいらしいけど、情緒の問題もあるんだって」

 

「それにしても、宇宙の列車かぁ。前に、うちのパパが仕事でアメリカ行った時に、アメリカの残ってる機関車を見たって自慢してきたけど、アメリカのは残ってないの?」

 

「元のアメリカの車両の外観を持つのは、業務用に回されたらしいよ。首脳部に日本人が多い関係で」

 

「なんで?」

 

「ガタイがいいかららしいよ?旅客用とかは日本や英国式の外観と図体のほうが小回りがきくらしいのよ」

 

「小回りがきく?列車に小回りなんて、関係あんの?」

 

「軌道を出ることも多いからじゃない?戦闘列車もあるくらいだし。ブラックホール砲積んでるんだって。999も戦闘車あるくらいだし」

 

実際には、宇宙の列車が主流になった30世紀でも、取り回しの都合で、20世紀以来の基本を守る必要があるからである。また、通常の軌道を走る事も多いためもある。

 

「それと、20世紀以来の鉄道インフラをそのまま使えるから…じゃない?」

 

「意外にケチだねぇ」

 

「経済的っていいな。会社には会社の都合があるんだし」

 

と、ちょっと幻滅気味のテイオーを諌めるのぞみ。

 

「なーんかがっかりだよ。昔のSFじゃ、チューブの中を走る列車とかがさ~」

 

「ドラえもんがいた時代に試しにやってみたら、事故が多かったのと、チューブの維持に金がかかりすぎたんだそうな。それですぐに廃れたらしいんだ」

 

「維持費ですか」

 

「事故が多いと、便利に見えるものでも廃れるからね。スペースシャトルとか」

 

「なるほど」

 

「それに、宇宙列車の時代が来たことで、チューブにこだわる意義が消えたらしいよ。昔のインフラを流用できる設計だからさ」

 

エアグルーヴもそこは不思議そうであった。実際に、20世紀の終わりにテストされ、それからしばらく経った後にどういうわけか、『再チャレンジ』がなされ、実際に運行に至ったらしいが、すぐに廃止に至っている。

 

「20世紀に実験段階になり、22世紀のある時に実用試験段階に到達したが、以前からの難点は変わらなかったことや事故が起こったことで廃止されたようだよ、のぞみ君」

 

「タキオンちゃん、戻ってたんだ」

 

「ゴルシくんに呼ばれてね。それで、ドラえもん君の時代に実用段階になっていたが、当時は運用費が高く、それでどこでもドアに太刀打ち出来なかったそうだが、どこでもドアのロストテクノロジー化で再注目された。23世紀には恒星間航行機関が安価になったからね」

 

銀河鉄道はドラえもんの生きる時期には一度、どこでもドアに押され、開発が下火になっていた。その後の文明体系の大変革で復活し、重要な交通機関になっている。恒星間航行機関がコスモナイト鉱山の確保で安価になったからだ。

 

「恒星間航行、か。わずか数百年でそんな話になる世界とは……」

 

「軍事的な発展ばかりがクローズアップされるけど、民需もちゃんと発展してるってことだよ。恒星間航行も、その頃には『遠い国に行く』感覚でするようだから」

 

「アンドロメダ銀河はその頃には?」

 

「30世紀には地球人の生存圏だけど、古くは白色彗星帝国の領地だったから、23世紀の頃は入植どころじゃないんだって」

 

「アンドロメダ銀河に進出したのは?」

 

「えーと、銀河100年戦争が完全に終わった『西暦2520年』より後だって聞いたよ。そこに第二首都星があるんだって、地球連邦の」

 

「第二首都星?」

 

「うん。29世紀くらいに地球より年齢が若くて、それでいて、地球と瓜二つの大陸分布を持つ『スーパーアース』級の惑星が発見されたんだって。アンドロメダ銀河で」

 

それが地球連邦のアンドロメダ銀河方面における首都星であり、最初に入植したのが佐渡一族の人間であったためか、『大地球』(ビックアース)と名付けられた星である。地球連邦の30世紀時点の第二首都星であり、第三首都星のエデンなどと共に、太陽系連邦を構成する。20世紀時点の地球に瓜二つの外観と重力などを有する一方で、大きさはその倍という不思議な星である。

 

「なにそれ」

 

「一種のイフみたいな星なんだって。それをいいことに、連邦の首都星の一つに成り上がったそうな」

 

とはいえ、地理的に遠すぎた事もあり、首都機能のバックアップ以上にはなれないともされる。地球と完全に環境の同じ星は意外にないものである。そのため、地理的にも近く、自転速度も同じである惑星エデンは『楽園』として、地球の経済圏で重要な地位に上り詰めるのである。

 

「今度、クイーン・エメラルダスに頼んで、路線図をもらってくるよ。それと、銀河鉄道警備局にも話を通しておくから、安全だよ。その時代には、ボラー連邦も解体されて、共和制になったから」

 

ボラー連邦はその頃には解体され、首都星を中心にした主要星系が『ボラー共和国』となったと明言された。旧ソ連と同じ道を辿ったらしい。おそらくは銀河100年戦争で国力が大幅に衰えたのだろう。

 

「なんだか、ロシアみたいだねぇ」

 

「宇宙時代のロシアだもの、ボラー連邦は」

 

「歴史は繰り返すと言いますが、不気味なくらいですね」

 

「地球連邦みたいに、緩い国家連合になれなかったみたいなんだよ、ボラー連邦」

 

地球連邦は太陽系連邦に改組される直前には、地球国家とその植民惑星の緩い国家連合になっており、太陽系連邦で23世紀当時の地球連邦寄りの政体に回帰したらしい。中央の統治が緩くなりすぎた故の弛緩が問題になったのだろうか。

 

「地球も色々あって、完全に恒星間国家になるまでには長い時間がかかったんだっていうけど、通信と交通インフラは大事って奴だなぁ」

 

 

「民間の自家用宇宙船はあるの?」

 

「ジオン残党がいる内は、軌道エレベーターも作れないからなぁ。一年戦争がなきゃ、オーストラリア沿岸に一号を作る計画があったんだそうな?」

 

「軌道エレベーターはSFで目にしますが、波動エンジンがあるのなら、メリットがないような?」

 

「いや、波動エンジンがあっても、あったに越したことはないよ。民間の往来や資源運搬に使えるし」

 

エアグルーヴも不思議なようである。波動エンジンを持つほどの技術なら、軌道エレベーターがあってもいいはずだと。

 

 

「計画はもう進んでる。残党の掃討が終わったアフリカ、南米、太平洋に作る手筈で。23世紀の時点ではそんな感じか」

 

軌道エレベーターにまで話が膨らんでくると、壮大なスケールになった感覚がある一同。数本が25世紀に追加されたとのことなので、軌道エレベーターの建造は大事業なのがわかる。ジオン残党は軌道エレベーターの建設にすら反対するため、デザリアム戦役の後には存在自体が『アナクロニズム』と揶揄されるようになっている。

 

「SFみたいなのが本当に造れるようになっても、すぐに造れるわけじゃないんだね、のぞみ」

 

「軌道エレベーターができると、前からのマスドライバーとかは?って問題があるからさ。ジオン残党はマスドライバーの利権で、資金得てたみたいだし」

 

軌道エレベーターの完成後、連邦軍はエコーズを警備部隊の母体とする手筈としていた。また、太平洋地域のタワーは日本連邦の管理、南米はアメリカ合衆国などの連合体(地球連邦内の国家という形で存続している)、アフリカはキングス・ユニオン中心のEUが管轄とする手筈であった。旧時代の国家の名が登場することをジオン残党はせせら笑うが、形式上、地球連邦は旧国家群の連合体であるので、彼らが失笑を買うだけであった。また、旧国家が法的にはまだ存続している事がわかる事例でもあった。

 

「ジオン残党は厄介な環境保全論に凝り固まってるから、21世紀の人間に嫌われるんだよなぁ」

 

エレズムの傲慢を嫌悪する、過去の人間は多い。しずかがその最たる例だ。のぞみはしずかほど露骨ではないが、ジオン残党の世界遺産への無頓着ぶりには憤っている一人ではある。ジオンがなぜ負けたのか、ティターンズなる集団を産み出す上での大義名分にされたのか。のぞみは、自分の義母にあたるしずかの露骨なまでの嫌悪ぶりに引いていたりする。

 

「エレズムという奴ですか」

 

「義母がねぇ、環境保護活動に若い頃から熱を上げてたから。いうことがちょっとね……」

 

「だいぶ危ないと思うよ、のぞみ君」

 

のぞみはここで、結婚後は義母になるしずかの言動に引いている事を告白する。アグネスタキオンが『危ない』というあたり、一線を超えるギリギリのところだというのがわかる。

 

「公安の人間だから、言うことが危ないんだよな。兵隊を拷問しそうでさ」

 

「若い頃から環境保護に熱心なら、彼らの行った事は許せないはずです。彼女のご主人は?」

 

「四苦八苦だよ。かかあ天下だし。子供生んだ後だから、これでマシになったっていうんだから…」

 

「自制心を刺激させないと」

 

「そうなんだけど、意外に頑固一徹でさ…」

 

しずかの言動は子を成した後でも、若い頃から変わらぬ、良くいえば『頑固一徹』な面がある。それにのび太も、のぞみも、ほどほど手を焼いているのだ。

 

「既に何回か、自力でテロリスト退治しちゃってるから、あんまりキツイこと言えんのよって、って旦那に言わせるくらいだから、今さらかもねぇ…。言動を慎ませた方が良いのかねぇ。自己絶対主義に見えてるだろうし」

 

「辛辣な言葉を浴びせたところで、殺し合いになる事はままあることですからね。マスコミに知れたら、スキャンダルになりますよ」

 

「好ましからざる人物なのだから、社会的に抹殺せんとするのは当然だってのは、昔の共産圏の理屈だっての、パパラッチの連中はわかんないからねぇ」

 

のぞみはのび太と違い、しずかへ荒療治も考えているらしいが、しずかは警察官である。それも、国家秩序の維持が仕事である公安の人間である故の思考もある。そういう教育を受けたからだ。

 

「連邦は言論の自由を認めてるから、義母が過激な発言を言う権利はあるけれど、公言させるべきではなかったかもな……」

 

「だが、スペースノイドはアースノイドの生きる権利を保障する事を言わない。決まり文句は粛清、粛清……。これだ。スペースノイドだけが人類としての権利を持つと思ってるのかねぇ?」

 

アグネスタキオンは問題の根幹に触れた。

 

「もしかして…」

 

「それかもしれないよ、君の義母さまが反発する理由は」

 

ジオンが負けてきた最大の理由の一つが『アースノイドに故郷で生きる権利を保障してこず、旧時代の遺産をむしろ壊してきた』ことなのは、ウマ娘たちから見ても、明らかであった。

 

「純粋なスペースノイドの大統領が連邦に出ない限りは、彼らは湧き続けるだろう。アースノイドの旧時代の遺産は無くして、自然に還すべき。その思想がスペースノイドにあるかぎり、アースノイドとの戦争は未来永劫続くだろうね。宗教戦争も同然さ」

 

サイド3の大衆も全員がエレズムにかぶれておらず、ザビ家も旧世界の残滓の完全消滅は望んでいなかった。シャアが負けた理由はそのタブーを完全に破ったところであろう。

 

「君の義母上がスペースノイド嫌いな理由はおそらくは…。サイド3やスゥイートウォーターの大衆だって、ルーツは地球にあるんだから、旧時代の残滓が消えることまでは望んでなかった。それをわかってたのかねぇ、彼は」

 

――人類は自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して、贖罪しなければならん――

 

「いや……たぶん、エレズムが嫌いだと思うよ」

 

のぞみはシャア・アズナブルが言った言葉から、半信半疑ながらも、しずかの思いに気がついていた、

 

「一種の集団ヒステリーに近かったかもね、ジオン系の住民の連中は。だけど、実際に降りてみたら……で、旧時代の営みの証を保存したいって人達も出てきた。クワトロ大尉は世直しをするっていう大義名分で挙兵しておきながら、結局は個人を優先した。それも義母は反吐が出ると考えたんだろうな。大尉は後で、『遺跡として保存の必要のあるものは限られている。旧主要国の現代的なものを無くさせるつもりであって…』なんて言い訳がましい事かまして、竜馬さんに両腕とあばら骨をへし折られてた」

 

「慈悲深いよ。普通は金的だよ、君」

 

アグネスタキオンもそう断言するが、シャアは土壇場に追い詰められてしまうと、普段が嘘のように口が回らなくなるなどの醜態を見せる。それ故に、シャアを古くから知る戦士達は一様に失望している。

 

「あなたも大変な役目を仰せつかったものですね」

 

「理由はわかりかけてきたけど、長丁場になりそうだ。ああいう人種は辛辣な言葉を浴びせても、逆に言い返せるし…」

 

のぞみは慎重に事を運ぶつもりであった。連邦政府の腐敗、圧政、グローブ事件の隠蔽のような連邦軍の『暗部』を知らないと、残党から罵倒されているといっても、清廉潔白な政府、大組織はいつの時代も存在し得ないことなど、しずかはわかっている。公安警察官というのは、敵に回すと厄介な存在なのだ。

 

「こうなったら、腰を据えてさ、じっくりとかかるべきだね、のぞみ」

 

「私もそう思います、夢原女史」

 

「ありがとう。気が楽になったよ。我が義母ながら、手強いぞこりゃ…。」

 

のぞみはゆっくりと、義母であるしずかと向き合うことにし、腰を据える。義母を手強い相手だと認識した上で、弁舌で戦うというのは、転生後で一番の大仕事かもしれなかった。

 

 

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