ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第五百八十二話「幕間・コズミック・イラ」

――カールスラントはエクソダスで人口が減っていたところに、短期間の内戦で50万を有に超える死者を出す有様となり、国家は実質的に崩壊していた。日本連邦はそんな理由でカールスラントの有していた軍事力の代わりにならざるを得なくなった。1940年代後半はその過程にあったわけである。扶桑の軍隊を縮小させる事を目論んでいた日本の左派は『中国大陸と朝鮮半島の文明が戦国時代で怪異に駆逐され、明治以降は世界に存在が忘れ去られた』歴史に震撼した。(例として、マルセイユやノイマンは中国の孫子の兵法を知らなかったので、とんだ赤っ恥をかいた。特にノイマンは大佐の地位にありながら、孫子の兵法に無知であった事が更迭の理由の一つであった)日本連邦の政治家の意向だけで佐官~将官の首が容易に『飛ぶ』時代を迎えたことが『ノイマンの更迭』で示されると、各国の将校は慌てて、孫子の兵法を勉強するようになったという)中国という国の存在が魔女の世界で再認識されたのは、『ノイマン・ショック』を受けてのことであった――

 

 

 

 

 

――日本連邦は日本連邦で、近代化以降はカールスラントの戦争論一辺倒であった教育を改めるには、長い準備期間を必要としたため、扶桑は黒江を日本に送り込んでいたのである。その成果はM動乱以降に発揮され、ダイ・アナザー・デイでの孤軍奮闘で扶桑の覇権国家への成長は促進された。日本は連邦を樹立した後に扶桑の国力の恩恵を享受する事になり、それまでの扶桑の行為を不問に付す代わりに、扶桑国内に日本企業(扶桑の企業の同位企業が中心だが)の進出を容易にするようにさせた。皮肉な事に、互いの往来が始まった後、日本の市民運動や反戦運動の少なからずは扶桑で同じような事をしようとして、現地に災厄を呼び込み、その結果にだんまりを決め込むなどの醜態を見せ、運動の求心力を自分で捨ててしまう。そのため、扶桑に軍縮を行わせようとする勢力は『兵器の保有数に制限を設けさせる』という政治的な手段を講じていくが、今度はリベリオンとの国家総力戦に突入してしまい、平時の常識が通じなくなってしまう事態に陥った。日本は次元ゲートを通過してくるリベリオン艦隊に有効な迎撃手段が航空攻撃と魚雷攻撃しかなかったが、革新政権時代の内規が足を引っ張り、航空戦力すら満足に活用できずにいた。扶桑艦隊に撃退を依存する有様は海自の士気を低下させていた。戦後型海上兵器は重巡洋艦まではどうにかできても、大戦艦を無力化させる兵器は魚雷以外に有していない。だが、革新政権は損害を懸念し、魚雷攻撃を禁じてしまった。その内規が改訂されずにいたため、海自の自衛艦隊は無用の長物と揶揄され、腐っていた――

 

 

 

 

――実際に、大和型に対抗するために設計されたモンタナ級相手では、海自は魚雷攻撃以外に必殺の手段がなく、しかも、魚雷を五発以上も片舷に命中させないと、傾斜もしないという頑強さは海自を窮させた。弾薬の備蓄量が無いからである。扶桑の大和型や播磨型はそれをアピールするためにも重宝されたが、現代艦艇の被弾への脆弱性が却って際立つ形となったため、海自は艦艇の建造の予算獲得にしばらく苦労したという。モンタナ級の実物は日本も一隻を鹵獲に成功し、米軍に引き渡すのを条件にその調査を行った。史実では完成していない(未成艦)からである。その船体構造は大和に似たものであり、造船関係者は溜飲が下がる思いであった。史実の大和であれば、苦戦は必至の性能バランスを誇っていたため、扶桑に超大和を造艦させる上での大義名分ともなった。実験中のレールガンの装備を具申する声もあったが、既存装備の生産への悪影響が懸念されたため、結局は『扶桑に超大和を造艦させよう』という安全牌が取られたのである。扶桑は日本がそう促すのを待ち構えており、ダイ・アナザー・デイの直前、韓国の利敵行為への懲罰として、戦艦播磨をお披露目し、日本側を驚かせた。同時に、ショッカー残党がナチス海軍の遺産『ヒンデンブルク号』を有する事も通告した。ヒンデンブルク号は全長が有に340mを超える大戦艦であり、53cm砲を備えるという『超戦艦』であり、その初陣で信濃を圧倒した事が通告された。それに対抗するために、扶桑は全長500mの大戦艦『三笠』型を造艦している事を通告。その二番艦『富士』がダイ・アナザー・デイに参加した。更に『我々は海底軍艦の量産を計画している』と事後通告。日本の防衛省は目を回した。海底軍艦の量産だから、当然であった――

 

 

 

 

 

――海底軍艦の存在は与太話扱いであったが、影山コンツェルンが2000年代頃に『ラ號の設計図の現存』を公表。これに伴い、轟天計画の実在が確定した。影山コンツェルンは扶桑への設計図の提供を公表し、物議を醸した。いくら大昔の決戦兵器とはいえ、日本の切り札になりえる兵器の設計図を提供していいのか?と。とはいえ、自衛隊も実は影山コンツェルンに『轟天号』なる兵器を二代に渡って建造を依頼しており、2006年頃に二代目轟天号が就役済みであった。だが、それは海底軍艦の中でも駆逐艦クラスの小型のものであり、本命は『大和型戦艦ベースの空中戦艦』という代物であった。その設計図が現存していたということは、扶桑は重力炉(戦時中に日本軍は試作段階に到達していた)技術を持ったのかと、防衛省の技官は問いただしたという。だが、返ってきた答えは驚愕であった――

 

「あなた方は重力炉を完成させたのか?」

 

「重力炉など、ただの補助機関ですよ」

 

「!?」

 

「主機は波動エンジンですよ、タキオン波動エンジン」

 

その返答に、日本は顔面蒼白に陥った。波動エンジンは宇宙戦艦ヤマトのエンジンだからだ。

 

「その証拠をみせましょう。件の超文明から提供された艦艇です」

 

「あ、アンドロメダ!?」

 

技官が見せられた艦艇はアンドロメダ級戦略指揮戦艦の一隻であった。拡散波動砲を持つ『ポスト・ヤマト』世代の宇宙戦艦。その力は言わずもがな。技官は扶桑が『超文明』との密接な繋がりを持つ事を察し、その場でへたり込んだという。更に、その技官は扶桑の東京上空を『ヤマトの僚艦』が飛翔する姿も目撃した。

 

「超時空戦艦まほろば……実在していたというのか……」

 

「我々に協力してくれる宇宙戦艦ですよ」

 

「元は我が先祖達が作った軍艦なのですがね……」

 

――ヤマトは国のまほろば――

 

それは景行天皇が詠んだと言われる詞の一節だが、轟天計画で建造されていた『日本最後の戦艦』に与えられた名にして、宇宙戦艦ヤマトの影である彼らを表す言葉であった。まほろばは扶桑に何度か寄港しており、別の任地へ向かうところが目撃されたのだ。扶桑に波動エンジンを与えた人物『羽黒妖』はラーメタル人説が濃厚である人物であり、かのプロメシュームの後継者説も取り沙汰される大物である。ただし、プロメシュームは世界線によっては、ラーメタルと地球を守るため、接近してきた暗黒彗星を道連れに壮烈な最期

を遂げていたので、どの世界線のラーメタルから送り込まれていたかは釈然としない。プロメシューム自身、世界線によって、容姿に差異があり、機械帝国を築かない場合は丸い目をしており、メーテルとはあまり似ていない。機械帝国に至る世界線では、後のメーテルと瓜二つである。(未来世界の雪野弥生はメーテルと瓜二つという情報があるので、ラーメタルに戻った世界線であるのが確定している)

 

 

「1000年女王は関係しておられるのですか?」

 

「ええ。あなたは?」

 

「1999年の戦いで起った自衛隊員の一人です。その時に彼女を見たことがあります」

 

彼は1999年の20代後半当時、ラーメタルと戦った経験を持っており、その際に雪野弥生の姿を見たという。まさか、その彼女が後に地球に仇なす冷酷な独裁者となり、彼女が愛した少年『雨森始』の末裔である『星野鉄郎』に引導を渡されるとは思うまい。クイーン・エメラルダスも彼女の子であり、本来は第一子でありながら、彼女に反旗を翻し、叔母であった『セレン』の跡継ぎになったという事実も知ることはないだろう。だが、プロメシュームの人間であった頃の意思は二人の娘がちゃんと継承しているのである。(奇しくも、プロメシュームは若かりし頃の自身、妹のセレン、自身の腹心であった夜森の意思も裏切ったことになる)

 

(雪野弥生は後年……機械帝国を興し、一人の若者に引導を渡される。皮肉なものだ。引導を渡すのが、自分がかつて愛した少年の末裔など……)

 

扶桑の技術士官はそう独白した。雨森始がDr.バン(メーテルの実父)かどうかは定かではない。わかるのは、星野鉄郎が雨森始の末裔に当たる存在だと言うことだけ。彼女の往時の姿は当事者だけが知るものとなった。まさか、彼女が先祖の想い人であったとは、鉄郎も思うまい。当事者以外で、真実を知るであろう者は羽黒妖だけだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

――コズミック・イラの世界は地球連邦軍がその武力を背景に世界を統べた都合上、不満が蓄積しており、テロが頻発した。だが、地球連邦軍のMSの高性能(誰が乗っても、性能を存分に引き出せるOSの力)もあって、ブルーコスモス、プラント強硬派のいずれも、あえなく鎮圧されることが続いた。未来世界のMSのビームはコズミック・イラのビームとは原理が根本で異なるため、たとえ、アカツキの『ヤタノカガミ』であろうと、完全な防御は不可能という点が認識され、そのバージョンアップにオーブ首長国連邦は血道を挙げていた。ヘリウム3をエネルギー源とする核融合炉の叩き出す出力の余裕はハイパーデュートリオンエンジンをも超えるもの(スペック上の出力の数値はコズミック・イラの原子炉より小さいが、核融合炉である都合上、余剰出力が原子炉と桁違いである)であるが、レーザー核融合炉よりも世代の進んだ技術であるミノフスキー式核融合炉はコズミック・イラ歴の世界での製造は難しく、少なくとも『ルナチタニウム合金』(ガンダリウム合金)の実用化をしなければ、目処も立たない代物である。また、未来世界のビーム想定のビームコーティングはコズミック・イラ歴のビームコーティングよりPS装甲と相性がいいのも判明した他、PS装甲も万能ではない事がわかったため、ガンダリウムの製造技術で強度を引き上げた『チタン合金セラミック複合材』がこの時代以降のコズミック・イラ型MSに採用され始める。PS装甲はコストの割に、以前ほどの優位性が見込めなくなったため、ムーバブルフレーム構造の導入が始まると同時に、装甲材としては衰退を始め、ヴァイタルパートへ導入される装甲として生き延びるものの、全身に使われるような素材ではなくなる。アストレイやムラサメに使われていた『発泡金属』はこの革新で使われなくなり、チタン合金セラミック複合材に取って代わられることとなった――

 

 

 

 

 

 

 

――地球連合は介入による政変で『世界的な安全保障組織』の地位を喪失。地球連邦に挑んだが、軍事力の差は如何ともし難く、黒色艦隊が倒された後には、宇宙艦隊は機能不全。地上戦力も最盛期の三割にまで低下していた。ブルーコスモス(そのバックであるロゴス)に上層部を支配されていたため、地球連邦に駆逐対象と見做され、地球連邦の旧式機『ジムⅢ』にすら、八対一のキルレートを記録される醜態であった(装甲や武装、OSの性能差による)。――

 

 

 

 

 

――地球連邦製OSにも当然だが、『プログラム上のバグ』はあるため、オーブ首長国連邦や『ターミナル』のエンジニア達はアナハイム・エレクトロニクスの技師に協力し、そのバグ取りを行っていた。全体的な完成度はコズミック・イラのそれより遥かに高いが、想定外のバグもあったためだ。コズミック・イラに派遣されたエンジニアの一人に、ニナ・パープルトンがいた。デラーズ紛争後に冷遇された時期もあるが、エゥーゴの勝利後に復権。20代終盤にさしかかる年齢になっていた。(コウ・ウラキとは完全な意味での復縁には成功しなかったが、同棲する程度には関係が回復したという)コズミック・イラ世界から提供された初代フリーダムの設計から、実機が(技術実証も兼ねて)再建造された。ただし、外見はほぼ同じだが、遥かに軽量化が果たされた恩恵で機動力が格段に向上している他、武装は未来世界での理論に基づくものに変えられた箇所がある。また、後継機種のストライクフリーダムガンダムも、未来世界におけるνガンダムからのスピンオフでサイコミュが導入され、ドラグーンシステムや本体の操作難度が低下している――

 

 

 

 

 

「信じられないな。チタン合金を宇宙で造るだけで、重量を低下させて、強度も上がるなんて」

 

「ルナチタニウムは旧来のチタン合金に比べて製造難度が高い代わりに、性能は圧倒的に優れます。初期のモデルでさえ、超硬化加工が施されたスチール合金の五割増しの性能を誇っていました。この機体に使われたのは、第四世代型のルナチタニウムです。フェイズシフトはバイタルパートへの採用に留めました。我々の技術での対ビームコーティングを施してあります」

 

 

再建造されたフリーダムにはガンダリウムが使われており、重量が本来の71.5tから格段に軽量化されている。フェイズシフトはバイタルパートにのみ施され、その箇所には対ビームコーティング(未来世界式)が施されている。関節部はマグネットコーティング済みであるので、運動性も後継機たるストライクフリーダムガンダムに比肩するほどに向上した。

 

「武装の細かい調整が済めば、即座に実戦で使えるように仕上げました。我々の理論に基づくものに変えた箇所もあります。サーベルは鍔競り合いが可能です」

 

「え?鍔競り合いが?」

 

「エネルギー磁場の反発の作用などの副産物ですが」

 

未来世界の規格に合わせられて再建造されたフリーダムのジェネレーター出力の数値は未来世界での高級機と同等である『6000kw』級である。元の『8826kW』よりテック上の数値は低下したが、これは原子炉の総発電量を表す数値とのことで、実際の戦闘出力は向上している。また、小型高性能化の進んだ世代の核融合反応炉となったことで、エンジンの出力の余裕が大きくなり、武装やスラスターに回せる出力が向上しているなどの恩恵が生じている。

 

「機体の照準システムも、M粒子下でも補正が効くものに変えてあります。戦闘力は元々のものより向上していると断言できます。モニターとシートは此方側の規格のものですが」

 

未来世界でテストに使うために、未来世界の規格に変えられた箇所はあれど、基本は変わらない。プラントの技術陣の設計が確かである証である。また、フリーダムの本来の搭乗予定者は不明だが、恐らくはプラントのトップエースの一人『イザーク・ジュール』(設計時のプラント最高評議会ナンバーツーの子息)であっただろうという予測がされている。

 

「そちらが現在使用している『ストライクフリーダムガンダム』も改修の要請が来ています。パイロットのあなたさえ良ければ、即座に作業にかからせますが」

 

「お願いします。ストライクフリーダムでも対抗できない敵が出てくることもありえますから。デスティニーがもし、この世界に残っていたら、どうなっていたか」

 

ニナにキラ・ヤマト(当時、18歳)は頷く。キラ・ヤマトはデスティニーの存在を知らされ、もし、然るべきパイロットが乗っていれば、ストライクフリーダムと互角であっただろうという予測を立てていた。故に、今後に備える目的で改修を承諾したのだった。

 

 

――機体の改修作業はオーブ首長国連邦のモルゲンレーテ社とアナハイム・エレクトロニクスの共同作業である。アナハイム・エレクトロニクスが部品などを供給し、モルゲンレーテが細かい調整を行うのである。キラも未来世界の常識に合わせ、『ガンダム』という名称を使っているのが窺える。彼は元々、工学生であったため、OSのデバック作業に参加している。アナハイム・エレクトロニクスのエンジニアであるニナの目から見ても、彼のプログラミング能力は優れていると断言できるものである。(ただし、半ば趣味の範疇であったためか、細かい面で粗があるとのこと)この世界では(ミネルバ隊が消えたことで)彼に対抗できるパイロットは敵対勢力にはおらず、文字通りに最強の称号を得ている。だが、ニュータイプなどの情報を得た故か、今後を憂いており、乗機の改修を願い出たのであろう(彼自身、『SEED』への覚醒で空間認識能力がニュータイプ級になっていたが)。また、コズミック・イラ歴で一斉の勢力を持つジャンク屋との取引をアナハイム・エレクトロニクスは始めており、得られた技術を斬艦刀の性能向上に活かしている。――

 

 

「あなたの会社はどんなところですか?」

 

「死の商人なんて言われていますが、基本は総合商社です。民需はもちろん、軍需も手がけます。最も、軍需部門は片手間ですが」

 

アナハイム・エレクトロニクスは旧ジオンの軍需産業を吸収して以降に軍需産業で繁栄を謳歌し、一時は地球連邦とジオンの双方のMS関連部品を一手に供給するというほどであった。サナリィの台頭で一時ほどの勢いはないが、それでも地球連邦のMSのシェアで7割弱を保つ。

 

「片手間、ですか」

 

「我々は本来、電子工業から始まった会社なので」

 

アナハイム・エレクトロニクスは21世紀からの伝統を誇る老舗総合商社だが、実は元々が電子工業関連の企業であり、部門を時代ごとに拡大していった結果、地球連邦の経済の一翼を担うまでに成長したのだ。

 

「うちのキャッチコピーは『スプーンから宇宙戦艦まで』なんですよ」

 

ニナは冗談めかして語る。宇宙戦艦の分野ではMSのようにはいかず、ワンオフモデルで名を挙げつつも、マスプロダクトの製品は造れていないからだろう。(なお、宇宙戦艦は南部大重工業、ヤシマ重工、ヴィックウェリントンなどのライバルがいるので、アナハイム・エレクトロニクスは苦戦している。)

 

「とはいえ、宇宙戦艦はワンオフのものが大半ですが」

 

地球連邦は宇宙戦艦に関しては、有事続きなので、工廠での建造も増やしているので、アナハイム・エレクトロニクスは艦艇分野でのシェア拡大は半ば諦めている。とはいえ、ペガサス級最終型(アルビオンタイプ)の保守整備などを引き受けてはいる。

 

「あなた型が僕たちに提供してくれた、あの戦艦は?」

 

「元々、我が社が地球連邦に売り込むために、自主建造した船の残りです。ペガサス級強襲揚陸艦というタイプの改良タイプです」

 

 

キラ・ヤマトらの母艦であったアークエンジェルがオーブ首長国連邦の意向で第二次改装に入ったため、その間のレンタルとして用意されたのが『ペガサス級最終型』(アルビオンの同型艦)であった。アークエンジェルが偶然、ペガサス級に似ていたために用意されたのである。ペガサス級の最終型だが、いわくつきなため、表立っては使われず、いくつかが保存されており、そのうちの一隻が提供されたのだ。当然だが、性能はアークエンジェルと異なる特性を持つものの、母艦としての機能は上である。

 

「ペガサス級……」

 

「驚きました。世界が違えど、似たものは生まれるといいますが……」

 

ペガサス級に相似したアークエンジェルは『不沈艦』として名を馳せている。だが、将来に渡り使用するには不安が多く、改装が行われる運びとなった。その代艦が似たシルエットのものであるのは、コズミック・イラの関係者を驚かせている。最も、地球連邦は砲撃能力と艦載機運用能力を両立させている『カイラム級』でペガサス級を代替する意向であったので、ペガサス級の増産は取りやめられているが。

 

 

 

「あなた方の戦艦は色々なタイプがあるみたいですけど、高性能になると、大艦巨砲主義に先祖返りを?」

 

「モデルになった艦型が違うんですよ、あれらは。異星人との交戦では、大艦巨砲のほうが都合の良い場面も多いのです」

 

「そういえば」

 

キラは両大戦にて、地球連邦の軍艦を見てきた。MSなどの運用は空母と強襲揚陸艦が中心であり、艦隊戦は前時代的にも思える大艦巨砲主義の設計の戦艦が行なっていたが、地球連合のネルソン級など問題にならない防空能力と砲撃能力を兼ね備えていた。量産型は大型とは言い難いサイズだが、旗艦級は遥かに大型であり、特殊装備(波動砲)を二門以上も備える『立派な』戦艦であったのを覚えている。技術力の違いであろうが、MSの攻撃も避けつけず、逆に艦隊を血祭りに挙げていた。更に言えば、コズミック・イラでは机上の空論扱いのタキオン粒子をエネルギーとする粒子砲を持っており、凄まじい威力を見せている。単なる高級量産品とは言い難い。

 

「プラントの皆様はこちらでいう『ジオン』に似ていますが、どうにも優越意識があるようですね」

 

「コーディネイターは元々、基礎能力が普通より優れているだけの人間ですよ。プラントの過激派はそれを履き違えるし、ナチュラルは能力の違いを妬む……。僕自身、そんな経験があるので……」

 

キラ・ヤマトはかつて、フレイ・アルスターに言われた事、ラウ・ル・クルーゼに告げられた出生の真実に心が傷つけられており、この時期には精神的に疲弊しきっていた。だが、異世界との遭遇で『コーディネイターもナチュラルも関係ない能力(ニュータイプ能力)があり、それがナチュラルとコーディネイターの意識を変えうる光』となる事、自分たちの持つ『SEED』はその覚醒の可能性の一つである事が示されたことで、多少は気が楽になったか、学生時代の頃の状態にメンタルが戻りつつあった。

 

 

「この世界は一歩間違えれば、絶滅戦争に繋がる要素が多すぎる。貴方方の力で強引にそれを抑えなければ、いつそれが暴発するか……」

 

「ええ。オーブ首長国連邦軍に我が社のMSを提供する手筈になりました。数ヶ月もすれば、実戦で使えるはずです」

 

オーブ首長国連邦は第二次大戦後、地球連邦との国交を正式に開始し、MSの導入を始めた。自国産のムラサメの能力の陳腐化を懸念したためで、そこで地球連邦が似たMSを製造していた事に着目し、地球連邦では少数生産枠にあった『A/FMSZ-007II ZETA』をムラサメの後継機に選定。機体に自主改良を施した上で生産する手筈となった。後に地球連邦もティターンズ系可変MSの老朽化に伴い、同機を増産する事になる。これはオーブが第一次大戦後、TMSを主力にしていた都合上、今更、通常型には戻せないという都合もあった。地球連邦では、Z系のTMSは『ジム系より高いんだけど!!』という理由で、尽くが少数生産枠で精鋭部隊に回される傾向が強く、VFの技術のスピンオフでコストが下がった後も、議会はTMSを嫌う傾向にあった。だが、オーブは今後の防衛のためにTMSを求めつつも、あまり高級な装備を持たないMSを選んだ。それが『あまりビーム兵器を持たない』A/FMSZ-007IIであった。既に第一陣は評価試験名目で極秘裏に納入済みであった。

 

「連合もプラントも、大戦が連続したおかげで、もう戦争をする余力はないはず。なのに、一部はやろうとしている。何故なんだ……」

 

「軍需産業を悪役に仕立てたところで、既存の秩序を壊すだけで、却って世界は混乱します。おそらく、このコズミック・イラは地球連邦の介入が起きなければ、早かれ遅かれ…」

 

ニナ・パープルトンはコズミック・イラ世界の憎しみの連鎖はもはや破滅的なレベルであり、誰かが強引に抑えなければ、遅かれ早かれ、文明そのものが滅び去るだけであるという推測をキラに話す。キラもその実感があったからか、地球連邦の介入を歓迎していた。実際に第二次大戦は自分らの抑えがなくなった後、ユニウスセブンの落下を口実に起こった。故に、地球連邦の強大な力でブルーコスモス、元・ザラ派関係者を駆逐せねばならない。ひいてはコーディネイターという種には本気で『未来はない』(遺伝子改良の行き過ぎで、第三世代が生まれなくなっている)ことも周知しなければ、遠からず、コーディネイターは『短命な種』として消え去ってしまう。それをラクスの父であったシーゲル・クラインはわかっていた。それがコーディネイターの限界なのだ。パトリック・ザラは妻を失ったために、世界を道づれにしようとしていた。ナチュラルの殲滅はそのための方便であった。子であるアスランはそれを悟っており、父の最後の名誉のためという事で、その事実を闇に葬っている。『パトリック・ザラは冷酷非道の独裁者』であったほうが(残酷だが、アスランにも)都合が良かったのだ。

 

(アスランの父さんは、おばさん(アスランの母)を失ったことで、世界を滅ぼそうとした。ラクスは第一次大戦の後に隠棲を選んだことで……自分の偽物に仕立て上げられた子の死を招き、それを後悔してる。ラクスは……親の勝手な願いや思惑のせいで、人生を好きに生きられなくなったのかもしれないな……)

 

キラはそう独白した。愛するラクスが『父親がプラントの元議長というだけで、周りのシンパらが(傀儡にするために)担ぎ上げ、公の場では『歌姫』の仮面をかぶるのが求められてきた事を『考えようによっては、かわいそうなこと』と考えたためである。その気になれば、一市民に戻れる自分と違い、『プラント最高評議会議長経験者の令嬢』であるラクスは立場相応の振る舞いが求められていく宿命にある。考えようによっては『父親達の業の尻拭いを否応なしに押し付けられた』とも言え、キラは(セシリー・フェアチャイルドに対してのシーブック・アノーがそうであったように)ラクスを慮り、ある選択を選ぶのである。それは……。

 

 

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