ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘世界編です。


第六百二十話「天皇賞・春と、のぞみの託された使命」

――ウマ娘は往々にして、因果に縛られる。ルドルフやブライアンクラスの大物ウマ娘であっても、である。ブライアンは低迷してしまった時期、『前世の自分が持っていた負の感情』がフィードバックされてしまったため、半ば自暴自棄に陥っており、それが父親との確執の始まりであった――

 

 

――おい!!私を……置いていかないでくれ……!!なんで、そんな表情なんだ……待って、待ってよぉっ!!――

 

これがトレーナーが去った際のブライアンの取り乱しようであった。最後のほうは態度を取り繕えなくなり、幼少期のような幼い口調になっていた。その事から、普段の無頼のような口調は『意識して演じていた』ことがわかる。以後、ブライアンは自暴自棄になり、不振を極めたのである。このように、ブライアンが自暴自棄になった理由の一つに、元々の担当トレーナーが協会の意向で『契約解除』に追いやられ、彼女のもとを去ってしまった事が挙げられる。この出来事がブライアンの心に大きな傷を穿ち、心の何処かで『恐れ』を抱くようになった。それが不振の理由であった。だが、その傷はスピカへの移籍、野比家や未来世界の面々との交流で癒え始め、復調の兆しが表れた。だが、年齢的にブライアンはとっくに『全盛期を過ぎて』おり、何もしなければ『惨めな選手生活の晩年を送る』のは既定路線であった。それ故に、医学的な処置と波紋法の力に起死回生を賭けたのである。その証明がされる舞台が『天皇賞・春』なのは、何かの因果だろうか?

 

(なるほど。3200mか。人間の陸上でも、長めの距離になるんだよな)

 

ブライアンに代わり、その体を使い、約束を果たそうとするのぞみA。スタミナ温存のため、追い込み戦法に開眼し、この天皇賞・春でもそれを使う手筈であった。

 

(なるほど。史実だと、もう引退してるはずの面子がかなり残ってる。まぁ、この世界だと、ドリームトロフィーが裏で『興行』って揶揄されてるのは知ってるみたいだな)

 

天皇賞・春はブライアン本人の記憶では『不調であった時期に無理を押して出走したが、敗北した』ということであったが、ゴルシにまつわる『不思議なできごと』のせいか、『なかったことになっている』。つまり、ゴルシの起こした奇跡のおかげか、ブライアンも『やり直しの機会を得た』と言える。

 

(なるほど。世代はバラバラだな。テイオーちゃんの世代から、ブライアンちゃんの一期下まで。ごちゃまぜだな)

 

史実でいう『テイオー世代』から、ブライアンの一期下までのウマ娘達がしのぎを削る場となった天皇賞・春。クラシックがディープインパクトらの活躍に湧く時代、それ以前の世代のウマ娘たちは少しづつ『引導を渡されている』。だが、それにあくまで抗う選択をした者も多い。スペシャルウィークが早いうちに『ドリームトロフィー』に出走したのは、自分たち世代から『早期引退者』が続出した一方、ブライアンが『世代交代の波に抗う』選択を取ったことで『引け目』を感じたからとも噂される。実際、欧州最強と謳われた『モンジュー』をも打ち破ったという実績を手にし、『やり尽くした』と感じたから、早期に引退したのだが、彼女より前の世代であるブライアンが未だ現役であった事から、本人も引け目を感じていたのは事実だ。

 

 

――観客席――

 

「あんたはスペ?見にきたの?」

 

「ええ、タイシン先輩。ブライアンさんはチームメイトですし」

 

「スペ、悩んでいるようだが…?」

 

スペシャルウィークが観客席に現れたが、その表情は憂いを含んでいた。オグリの問いかけにうなづく。

 

「はい。私……やりつくしたと思ったから、ドリームトロフィーに移籍したんです。だけど……」

 

「自分より上の世代がたんまり残っとるのに、自分が実績を武器に、実戦から離れたことに負い目を感じた。そうやろ?」

 

「そうなんです。私たちの世代はシニア級のレースに参加しないで、ドリームトロフィーに行った子が多い。だけど……」

 

「ドリームトロフィーの実情を考えれば、批判が大きいのは事実だ。君が参戦すれば、盛りをとうに過ぎたウマ娘達など、簡単にぶち抜ける。現役時代の能力値が保たれた君と、盛りを過ぎたウマ娘らとでは、勝負にもならん」

 

オグリ、タマモ、タイシンの三者を前に、スペシャルウィークは本音を漏らす。オグリの一言はドリームトロフィーの実情そのもの。現役時の能力が保たれている『黄金世代』が他のウマ娘らをねじ伏せるという光景が出現するのは確実であった。特に、エルコンドルパサーは海外遠征から帰国後に燃え尽きてしまい、凱旋門の後は国内レースに出走せずに引退したため、国内での批判が大きく、本人もそれを気に病んでいる。そのため、スペシャルウィークはなおさら、彼女の分もドリームトロフィーで活躍し、そこでの最強を手にしなくては、沽券に関わる立場になってしまったと言える。だが、そうは問屋が卸さない。オグリ、タマモ、ルドルフが現役最盛期の強さでドリームトロフィーを蹂躙しているので、スペシャルウィークといえど、そこに割って入れるほどの立場ではない。

 

「はい……」

 

「かといって、如何に君と言えど、絶頂期の力が戻った私、タマ、ルドルフといきなり戦って、勝てる自信はあるまい?」

 

「そうなんです。私は今がピークなので、その内に引退したんですけど……」

 

「世の中甘くないってことや。あとで、ルドルフに会ぃな。グラスとライスの入院先を教えてくれるで」

 

オグリとタマモはうまい具合に、スペシャルウィークを誘導する。彼女も直に、ウマ娘としてのピークアウトを迎えるからだろう。

 

「ブライアンさんは勝てると思いますか?」

 

「ブライアンが領域をまだ使えれば、充分に勝機はあるで。古馬戦線はテクニックの熟成されとる連中の集まりや。あとは地力の差や」

 

「会長さんは来てないんですか?」

 

「元・会長さんに呼ばれて、今は理事の勉強や。あいつも直に、大学部へ進学やからな」

 

トレセン学園はかつては高等部までしか設けられていなかったが、マルゼンスキー世代の悲劇が協会への批判を生んだことの流れで、マルゼンスキーの引退後に大学部が設立された。だが、実際に大挙して入学するのは、マルゼンスキー当人以外には、その後輩のミスターシービーの世代になる見込みであった。マルゼンスキー世代の大半は既に、大半が学園をひっそりと去っていたからだ。オグリキャップの後輩世代にも、脱落者が生まれていたので、大学部の生徒は複数の世代で充足される(高校卒業の資格を得られるまで、中央トレセン学園に在籍できるのは幸運である)見込みであった。

 

「地力ですか」

 

「そうや。見てみぃ」

 

レースは長丁場であるので、最後尾まで間延びした展開であった。ブライアンは(差しから追い込みに戦法を変えたためか)比較的に後方に控えている。実力派が揃っているが、ウマ娘によっては、既にピークアウトを迎えている。ブライアンは精神力が落ちたことで、それが起こったが、処置と波紋法がそれを覆した。のぞみも既に波紋を練れるため、ブライアンが絶頂期に持っていたスタミナを最低限の消費で用いる事が可能であった。

 

「あれ、ブライアンさんの呼吸法、前と違う?」

 

「訓練したんや。ある人の協力で得られた、新しい呼吸法を」

 

スペシャルウィークはブライアンの呼吸の仕方の変化に気づいた。息遣いが前と決定的に違うことに。

 

「新しい…?」

 

波紋法は幅広い応用法があるが、ウマ娘達はスタミナ強化と自己治癒、肉体的全盛期の維持(内面の老化の抑制)に用いた。怪我から復帰した後、古馬戦線に参加したブライアンには特に大きな恩恵をもたらすのである。

 

 

「第三コーナーを曲がり終えるよ!」

 

「お!!」

 

タイシンの一声で、一同はレースの模様を再確認する。第三コーナーを曲がり終え、第四コーナーに入る。すると。

 

 

――んじゃ……この場にいる全員に悪いけど……勝たせてもらうよ!!――

 

ブライアン(のぞみA)がトップギアに入り、名だたるウマ娘たちをごぼう抜きに入った。そのキレは(やり方は異なるが)今が全盛期のウマ娘としか思えないもの。ブライアンは前世での死の間際にターフへの強い未練があり、今生でも、レースでの勝利を何よりも望んだ。その思いを叶えるため、のぞみは(プリキュアの責務として)駆けた。

 

 

――ここでブライアン、トップギアに入ったぁーーー!瞬く間にごぼう抜きし、先頭集団に食い込んだ!!――

 

観客達はどよめく。ブライアンにはピークアウトがまことしやかに囁かれており、協会も『晩節を汚さない内に……』と、引退を薦めたという噂さえ流れていたのだ。それがどうだ。全てにおいて、全盛期と遜色のない走りではないか。

 

「嘘、今の私はトップギアのはず……ブライアンちゃんがいくら全盛期の走りを取り戻したとて……!」

 

「そういう見積もりは甘いぞ、ローレル。お前には悪いが、今年は諦めてもらうぞ!」

 

「なっ、何を……!!」

 

天皇賞はルドルフの三期ほど上の世代から『勝ち抜け制』(天皇賞は古においては、勝ち抜けルールがあったが、ルドルフの三期ほど上の世代以降は廃された)が無くなり、連続出走も可能になった。ブライアン(のぞみA)はそれに触れた。

 

「マヤノ、ローレル、マーベラス。見せてやろう。これが今の私の『本気』だ!!」

 

「!?」

 

ブライアンの体から紫色のオーラがほとばしる。それに更に炎が迸る。のぞみAが草薙流古武術の継承者であった故に重なったビジョンを三人は目の当たりにし、そのショックで判断が一瞬遅れる。三人が気がついた時には、ブライアンは既に最大加速に入っていた。

 

「し、しまっ……!!」

 

ローレルが気がついた時には、有に四馬身もの差がついていた。

 

「な……ん…?!」

 

「嘘!?」

 

「え!?」

 

三人は驚愕しつつ、懸命に追いすがるが、遅れを挽回するのはもはや、完全に不可能であった。

 

「ブライアンちぁぁゃ……ッ!!」

 

ローレルは絞り出すように叫ぶが、声を出し切れていない。一馬身差まで肉薄するも……。

 

「私の……勝ちだ!!」

 

「あぁ…!!あと……なの……届か……!!」

 

ローレルの絞り出すような悲鳴が聞こえる。ゴールする一瞬、約束を果たし、思わず笑みが溢れるのぞみ。全盛期に入ったにも関わらず、病み上がりのブライアンにも及ばない事を示され、歯噛みするローレル。史実でなし得る事がなかった『ブライアンの三冠ウマ娘としての復活』が成った瞬間であった。ゴールした後、拳を観客席へ突き上げるのぞみ。それに拍手を送るオグリ、タマモ、タイシン。そして。

 

「ん、スペシャルウィーク?来ていたのか」

 

「はい。ブライアンさんの復活、見させてもらいました。今度は私がドリームトロフィーでけっぱります!!」

 

「そうか。そういえば、お前は実家が北海道だったな?」

 

「はい。北海道の肉を送ってもらいましょうか?」

 

「頼む。サムソンビッグの奴に頼んでたんだが、このご時世だろ?」

 

「わかりました!」

 

「スペ、ついでにあたしにアイス、頼めない?」

 

「うちは北海道土産や」

 

「私はじゃがいもを…」

 

後日、スペシャルウィークの義母(生母はスペシャルウィークを生んだのと引き換えに没し、その親友であった義母に引き取られたとのこと)から、一同に大量のそれらが送られたため、学園全体でそれらを処理することになったという。この日のウイニングライブはテイエムオペラオー世代が歌った事のあった『Glorious Moment!』となり、マヤノとローレルにも一応の見せ場はあったのである。

 

 

 

――ブライアンが往時とまったく同じ強さで、当代の強豪ウマ娘を蹴散らした。彼女は三冠ウマ娘の肩書きの沽券に関わるような、無惨な敗北が続いていたため、この勝利は完全な復活を世に示す格好であった。協会の幹部らもこの結果に掌返しで褒め称えたが、ブライアン本人は冷ややかな反応であったと、後日に報じられた。ブライアンが不振期にあった頃、世間に掌返しをされた事は知られていたため、協会はこの事実に悩むことになった。シンザンは前会長が在任していた時期の失策を会議で指摘し、ブライアンの不信は当然だと、前会長在任中に専横していた役員を糾弾したという。だれもが『引退』を既定路線と見ていたウマ娘が起死回生を果たした事は協会にとっても、完全に予想外の出来事であった。シンザンやルドルフのように、国内で最強のままで引退した事はあっても、落ち目になった後、全盛期の輝きを今一度、完全に取り戻したことは信じられない出来事。ディープインパクトを次代の英雄と祀り上げようとしていた最中であったので、協会はシンザン主導で『二代の三冠対決』として仕立て上げる方向で方針転換するのだった――

 

 

 

 

 

――天皇賞・春の翌日 トレセン学園のトレーニングコース――

 

「ほいっ。F-2のプラモ」

 

「わ~。すっご~い!」

 

「同僚に、高校でプラモ部にいた子がいてさ。その子に聞いて、組み立てたよ」

 

「どこが16と違うの~?」

 

「素人にはわかんないよ。パッと見はほとんど同じだし」

 

「ブライアンの体を借りてるアンタ、一応は本職なんだろ?乗ったことないのかい?」

 

「本当は旧軍の将校だもの。先輩に聞いたほうが早いよ。自衛隊に20年は在職してるし」

 

のぞみAは持ち前の気さくさもあり、事情を知る者とは、すぐに打ち解けていた。のぞみは自衛隊員としては『Gフォースの幹部』とされているが、自衛官としての勤務実績はさほどではない。地球連邦のほうが勤務実績の多い状態なのは、デザリアム戦役のおかげだ。

 

「イーグルなら、仕事の関係で動かした事あるんだけどね、数えるくらいさ。それよりもFの機体のほうが馴染みあるんだよな」

 

のぞみは21世紀での現用機はさほど乗った経験がない。23世紀までのあらかたの機体を乗りこなしたと豪語する黒江の部下かしらぬ発言であるが、途中加入であった故の仕方がないところだ。

 

「え~!?」

 

「トムキャットなら、Gフォースの基地祭で動かした事あるけど、元の開発国じゃ退役してるじゃん?」

 

「確かに」

 

のぞみは最前線でブイブイ言わせてきたので、意外に21世紀の現用機は乗る機会がなく、のび太らの趣味でレストアされたそれ以前の機体か、未来世界の超兵器のほうが馴染み深い。仕事の都合上、戦中~23世紀までの全ての機体に乗った黒江とは、置かれた状況が違うのだ。

 

「コスモタイガーやコアブースター、可変戦闘機はお手のものなんだけどね。現用機は先輩と違って、乗ることがそんなになくてさ」

 

現用機の資格はシミュレーターで取らされた事は示唆するものの、実機にはほとんど触れた事がないらしい。普段はコアブースターやコスモタイガーなどに乗っている事も。

 

「へ~妙な話だねぇ」

 

ヒシアマゾンはこの感想だ。

 

「同じ職場で働くようになったの、割に最近なんだ。だけど、居心地いいよ。教師時代は地獄だったからね」

 

のぞみAは前世の教師時代を『トラウマ』、『地獄』だと表現しており、相当に辛い時期であった事を仄めかしている。

 

「教師だった、あんたが言う事かい?」

 

「やってみると、わかるよ。同期は鬱って、尽くが辞めていったからね」

 

のぞみAはそれもあって、教師だった前世を振り返る時には自虐的であった。多忙さが原因で、子育てにも失敗したからだろう。そのため、軍人をしているほうが『気楽』に仕事ができるとも。

 

「日本の教師は『割に合わない仕事』だって聞いてはいるけどねぇ。この学園はまだいいけど」

 

「この学校じゃ、レースはちゃんと専門家が見てるしね」

 

部活の顧問は雑務扱いに等しいので、『教師が2020年代以降に人気がなくなる』理由の一つであった。若い者に自動的に運動部を押し付けたり、何かあったら、全責任を押し付けられる上、社会に断罪される危険すらある。如何にのぞみといえど、その実態を知ってしまうと、『21世紀では教師はしたくない』と考えるのは当然であった。そのため、扶桑で予備役になり、扶桑でなろうとしたのだが、日本が扶桑の学制を変える過程で、初等・中等教育の現場から『軍関係者の排除』を進めた関係で、完全に頓挫した。文科省の現場の認識ではあったが、扶桑に強制することではなかった。結局、のぞみの一件は扶桑の予備士官らを大量に路頭に迷わせる不祥事となったので、日本側も『軍が彼らを再雇用する代わりに、再雇用の際に全員の階級を引き上げる』という通告を受け入れた。元々、扶桑では軍事教練が教育に組み込まれていたが、日本側が有無を言わさずに廃し、軍人を一斉に教育現場から追放したため、大量の将校が路頭に迷ったのだ。結局、予備士官の多くは日本の意向で、『口封じ』と言わんばかりの配置がされ、1949年までに数十%が戦死の憂き目に遭っている。魔女の発掘と技能教練の問題が発覚したのも、日本側が魔女という人種の取り扱いに難儀する理由であった。

 

「あたしなんて、転職したいっていったのに、予備役になってるってだけで、文科省に話を潰されたからね。なら、軍に残るほうがマシだよ」

 

のぞみが『プリキュア戦士』である事がわかった後、職業選択の自由云々にまで話がこじれたため、日本は扶桑側に『軍に残ってくれたほうが穏便に処理できるから…』と通達。既に官庁をまたぐスキャンダルになっていたので、文科省を悪者に仕立て上げる事で、扶桑に手打ちを懇願したという国家間の事情があった。以後ののぞみが『パイロット』の職責を考えれば、多分に過大な権限を与えられたのは、あまりに『有力な将校の中にプリキュア戦士がいたから』であったり、戦後の日本人は扶桑憲兵の解体を図ったが、軍警察は普通に必要な仕事であるので、完全に『警務隊』に改組させるまでの場繋ぎで『軍規の引き締めを担え』という政治の都合を押し付けられた事でもある。

 

 

「おまけに、プリキュアの後輩たちに、近衛連隊から出向要請が来ちゃってさ」

 

「なんでだい?」

 

「ほら、ここ最近、どこの世界でも、皇宮警察が不祥事やらかしたじゃん?それで、うちの国の国民が日本の皇宮警察を叩き出してね。警察の連中は近衛への対抗心まるだしだけど、近衛のほうが仕事熱心じゃん?普通」

 

(ドラえもん世界の)警察は近衛部隊を完全に無くし、皇宮警察の扶桑駐在部署を作ることで、皇室の護衛体制の統一をしたかったようだが、内政干渉になる上、扶桑の近衛は本来、有事に国家元首(天皇)の一存で動かせる即応部隊の側面があったため、『突発的な事態への対処』が存続の理由であった。また、日本の皇宮警察は(元より)戦闘が想定されていない組織であったので、扶桑からの指摘に、何ら反論できなかった。ただし、史実の宮城事件の記憶から、師団の規模を維持することが、日本の政治家たちに危険視されたため、連隊規模に縮小する事で折り合いが取られたという。そのことから、有事の起こった『扶桑の宮城』(要は皇居)は警備に必要な人数の定数に足りなくなり、それを人員の質で補わないとならない。日本の軍隊にありがちな展開であった。

 

「まぁ、あんたのいる時代は武士の頃の名残りがあるからねぇ」

 

「ゴジラに似た怪異があるけど、生物的じゃないから、星の免疫反応説が出てる世界さ。だから、21世紀には宇宙に出てるかもね」

 

魔女の世界は鉱物資源の枯渇が議論されたため、宇宙への生活圏移行を本気で検討し始めており、23世紀の世界の過去よりも早いペースで宇宙進出へと、ひた走ることになる。自警団を規制してしまうと、軍隊の強化は必然なので、日本連邦は扶桑の領内に限り、『有事における自警団の結成』を認めるしかなくなった。警察の武力では怪異には対抗不能だからだ。

 

「そうなのかい?」

 

「学者連中はそう言ってる。だから、部内じゃ、『けしからん』って声が挙がってね。スーパーロボットを自力で建造できる時代でもなきゃ、笑いものにできない存在だからね」

 

怪異(ネウロイ)は星の免疫反応という学説は1945年以降に注目されている。現場の魔女からは顰蹙を買っている。しかし、怪異内部でも勢力争いがあるらしき動きもあったので、怪異内部で『人類殲滅派』が勝利したのだろうと言われてもいる。そのため、魔女の世界の人類は早期に、地球から宇宙に生活圏を移行すると推測される。太平洋戦争はその主導権を争う場でもあった。

 

「あんた、その気になれば?」

 

「ゲッターやマジンガーなら、余ってる機体に乗れるよ。まぁ、当分先だね」

 

「そういえば、宇宙戦闘機がなんで、トムキャット似になってるの~?」

 

「変形の兼ね合いだよ。トムキャットに似たのは偶然だってさ。基本フォーマットはそこから変わってないよ」

 

VFシリーズの話題に移る。

 

「アニメとして、あるやつが実在する世界になっても、普通にアニメは生まれてるってのも、奇妙だねぇ」

 

「うん~」

 

「戦艦大和も、宇宙戦艦ヤマトに生まれ変わるしなぁ」

 

「不気味なくらいだねぇ。宇宙戦艦ヤマトなんて」

 

「あれ、この世界にもあった?」

 

「うん。マヤのパパが子供の頃、再放送を見てたって言ってたよ~!」

 

「あたしはじいさまが若い頃、日本旅行で見たって」

 

「あれ、ヒシアマちゃん、アメリカ?」

 

「あたしはヒシ一族の傍流なんだ。一族の嫡流はマルゼンの時代に絶えちまったって聞いてる」

 

ヒシアマゾンはシンボリクリスエスが養子であるように、ヒシ一族の嫡流ではない。嫡流の嫡子であるはずのヒシスピードの消息は不明であるという。マルゼンがいたために、その光に飲み込まれたのが、ヒシ一族の嫡流であるのだろう。

 

「なるほど……」

 

「しかし、アンタの使命はまだ終わってないんだろう?」

 

「うん。フロックって言われないように、勝利数を増やして、若い世代の壁になる事。ブライアンちゃんの願いは同世代のローレルちゃんの運命をも変える事だしね」

 

「長丁場だね」

 

「うん。当分はここにいる事になるよ。凱旋門賞に挑戦するまで」

 

 

のぞみはブライアンが凱旋門賞に挑戦する事により、間接的にサクラローレルの運命も良化すると語った。つまり、ブライアンは『ローレルは(このままいくと)、どうあがいても、近い内に競走者ではいられなくなる』ことを感じ取っていたことになる。

 

「それがブライアンの?」

 

「そう。ローレルちゃんの代わりに、凱旋門賞にいく。史実を考えれば、ローレルちゃんには、残酷な未来があるからね」

 

ブライアンはそれが史実への反逆になると、のぞみに伝えている。ローレルの悲劇を起こさせないために、彼女の海外遠征を一、二年先延ばしさせるのだと。桜花のように儚き輝きを選ぶであろう、同期の夢を最良の形で叶えさせ、花道を迎えさせたい。それが自分に代わり、世代最強の座を得ながらも、一瞬の栄光で終わってしまった彼女への手向けだと。

 

「前世の記憶、か…。それで…」

 

「うん。それはトップシークレットだからね」

 

とはいえ、ゴルシらが既に仲間内で語り合うようになっていたので、主にサクラバクシンオーなどへの注意喚起と箝口令であった(うっかり言いふらしそうなためか)。

 

「前世の記憶持ちは何人いるんだろう?」

 

「うちらに関わった子たちは、ほぼ全員だよ。別世界に行った事がトリガーになったみたいだ。ゴルシちゃんは現役をやり直しになったから、今度は引っかき回すとか」

 

「それもおかしな話だねぇ…」

 

「うん。まぁ、今回はライバルがいるから、面白くなるって言ってたよ」

 

ゴルシの遭遇した出来事も議論の対象であったが、のぞみの任務に直接的な影響は少ない。オルフェーヴルとの対決がどこかであるだろうという程度だ。

 

「オルフェーヴルと戦うことはあるかもな」

 

「あの暴君と?」

 

「どこかの英雄王っぽいキャラだよなぁ、あの青二才」

 

「まぁ、確かに、まだそういう年齢だと思うけどね」

 

苦笑するマヤノトップガン。オルフェーヴルのキャラにのぞみが既視感を感じていたのに同意しているようだ。

 

「あの英雄王みたいな性格なら、負かしても立ち上がってくるだろうから、一回はのしてやるつもりさ。レースでね」

 

オルフェーヴルは史実の戦績を見ると、ブライアンの後継ぎに近いという。ブライアンは彼女を『小僧』、『青二才』と言及しており、かつての自分を見るようである故か、鼻っ柱を一回はへし折るつもりであった事が伝えられる。

 

「学園で会ったら?」

 

「向こうから挑発してきたら、相応に対応するさ。ブライアンちゃんもそう言ってたしね。調教は必要さ。ある程度のはね。ゴルシちゃんが言付けされてきた事だよ」

 

史実では『歴代でもっともムラがある三冠』であったので、ゴルシから『オジキ(ディープインパクト)が調教してくれってよ』との言付けがあった。史実では、オルフェーヴルはゴルシの腹違いの兄と言える間柄だったからだろう。

 

「誰からだい?」

 

「ディープインパクトらしいよ」

 

この時期、三冠確実とされるホープであったディープインパクト。史実の記憶持ちなので、オルフェーヴルの史実のレースの仕方に思うところがあったとの事で、ゴルシに言付けを頼んだらしい。

 

「曰く、あの小僧は礼節を知らんってさ」

 

「あれ、キャラ付けだと思うけどねぇ」

 

「そう?」

 

「オルフェーヴルが入学したての頃、カレンとジョーダンにペコペコしてたの、見たことあるよ」

 

ヒシアマゾン曰く、オルフェーヴルも新入生であった頃は『カレンチャンやトーセンジョーダンの舎弟も同然であった』という。元から破天荒なゴルシと違い、その二人の舎弟から成長したと言うべきだろうが、どう教育したのだろう。

 

「カレンはともかく、ジョーダンはあまり、上下関係を意識しないからねぇ」

 

「ギャルってるしねぇ。史実だと、ポッケちゃんの子なんだけどね、あの子」

 

「えーーーーー!?」

 

「なんだってぇ!?」

 

トーセンジョーダンはジャングルポケットの子であった。ウマ娘としては、同時代の他人だが、前世では血の繋がる親子なのだ。ある意味で重大な事実に、マヤノトップガンとヒシアマゾンは絶句するのだった。

 

 

 

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