ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は状況説明とアオハル杯の裏側のエピソードを兼ねます。


第六百二十七話「行間・状況説明。そして、フジキセキとグラスワンダー」」

――日本はもろ他の都合で、扶桑の軍備のコントロールを断念した。怪異とM粒子の存在が原因である。第5世代戦闘機の乱戦での実効性の低さが示されてしまった結果、F-35の調達数が議論されるようになるなどの悪影響も生じた。結局、ダイ・アナザー・デイの第二次世界大戦型レシプロ機との乱戦で、第五世代戦闘機は『継戦能力が低い』という問題が発覚。更に、M粒子の存在で、第五世代戦闘機の基礎理論自体が成立しない事による乱戦に巻き込まれ、ひどい損傷をする機体が増大。F-35とF-22は(誤認防止という名目で)早々に前線から下げられた。魔女たちが怪異と間違える事例も多かったためでもあった。魔女たちは『あんな、怪異かわかりにくいのを使わないでくれ』とぼやいた。その兼ね合いで、第四世代戦闘機(初期のものは1970年代の設計)が多用された。数が確保しやすかった故であったが、第二次世界大戦型の戦場では、第四世代(現行より型落ちとされる)以前の設計思想のほうが適合していたのである。特にレシプロ機が数百単位で乱れ飛ぶ時勢では、『大規模空戦を想定していない戦後型戦闘機』はあまり長く戦えない(武装が尽きる)のは大問題であった。そのため、対多数戦を想定済みの未来戦闘機は重宝された――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ中――

 

「コア・イージも倉庫から引っ張り出してきたんすか?」

 

「コスモタイガーは艦隊と要地防空が優先だからな。こいつの機関を現行のものに変えて、扶桑にラインを提供する事になるそうだ」

 

「空軍がよく認めましたね?」

 

「コスモファルコンの早期配備を条件に、供出させたそうだ」

 

コアイージは戦後に『より性能の良い機体が登場した』事もあり、フライマンタの後継ぎになり損ねた。多くは軍縮の時期に廃棄されたが、一部はガトランティス戦役の教訓で保管されていた。その残存機が扶桑に提供された(コスモタイガーの配備進展に伴い、余剰となったので)のだ。

 

「乱戦を元から想定されている分、装弾数も多い。扶桑には充分だろう」

 

アムロに質問する黒江。この頃から外見は調のものにしていた。以後は(自分がGフォースの長になったため)それに加え、いくつかの姿を使い分けるのが定着する。ちゃんとシンフォギアも着用しているが、瞳の色は変えている。大人切歌も苦笑交じりだが、了承済みである。

 

「君も面白い真似をするな?」

 

「Gフォースの長になっちまったんで、欺瞞のためですよ。どうせ式典の時しか、元の姿は使わないし」

 

「君は当面は減俸処分になるが、いいね?」

 

「自分のミスでもあるんで、構いません。この戦が終わったら、のび太んちに居候しますよ」

 

「君の部下の子がプリキュアに覚醒したそうだが、どうするんだ?」

 

「うちの国での立場がありますからね。対策はこれから考えます」

 

と、この頃は公的に『夢原のぞみ』として活動させる予定はなかった事がわかる。だが、日本の不手際で、完全に『夢原のぞみ』として生きさせたほうが良いという事になるのだ。根っからの軍人一家というものが周囲から疎まれる時代を迎えるからである。日本が反戦思考を『考えなしに』持ち込んだからで、魔女たちは以後、こうした社会通念の変化にも苦しむ事になる。のぞみも中島家の人間たちから疎まれる事は自覚しており、自主的に野比家に居候することを選ぶ。(初対面時に多少なりとも、のび太(青年期)にときめいてしまったのは、久方ぶりに『自分の琴線に触れるタイプ』の男性に出会ったからだと釈明している)こうした『魔女と軍人の扱いの変化』は扶桑皇国の動乱の火種となる他、『軍人街』という社会問題を引き起こす事となる。

 

 

「問題は日本のせいで、これからが大変ですよ、太平洋戦争は確実なのに、魔女の派閥抗争がこれが終われば、すぐに表面化する。そうすれば、日本は2.26の連中と同じように見なすでしょうから……」

 

「そうすれば、社会的に君等(魔女)は疎まれる。君等はパイロット技能もあるから良いが、他の連中は『飛んで、撃つ』ことしかできないからな…。いくらなんでも、簡略化しすぎだと思うがな」

 

「プリキュアは普通に一騎当千の異能だから、問題無しだけど、一般の連中がなぁ。まだ、陸戦のほうが応用効きますって」

 

「空戦はISのような飛行型パワードスーツにもならない限りは『戦闘ヘリ』と大差ないからな。しかも、火力はユニットの性能と個人技能に依存する。利点を難点が相殺してしまっている。怪異も確実に進化してきた以上……」

 

「第二世代理論は急がせますが、少なくとも、実用試験にこぎつけるまでに五年は……」

 

「それもだが、魔導触媒の消費量増大は政治屋には好かれんだろう。資源消費を抑えないことには……」

 

第二世代理論の難点は『魔導触媒の消費量が前世代の倍である』ところであった。だが、進化した怪異や第二世代以降のジェット戦闘機に並び立つために必要な進化であった。魔導触媒の問題は時空管理局の技術協力により解決されていくが、それはここより四年後以降の事だ。

 

「ええ……ハチロクでそれまでは凌がせます。そこは史実通りですが」

 

「あとは君等の働きだな…。俺達も常に君等に力を貸せるわけではないからね。ギアナの連中には、ブライトが話を通したから、今後は君等の判断で機材を都合できるようになった。だが、アナハイムやサナリィの要望は聞いてやれ。恩を売っとけば、後々に役立つ」

 

「わかりました」

 

この後、野比一族が未来世界でアナハイム・エレクトロニクス社を実質的に支配下に置いた事により、64Fはそのバックアップを受けられる事になり、兵站事情に解決を見る。ダイ・アナザー・デイ当時は幹部層の奔走で、必死に物資をかき集めていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

――時間軸は多少移って――

 

「お前、プリキュアに戻ったのはいいとして、どうすんだ?」

 

「予備役になって、扶桑で教師でもやりたいけれど……どうだろうね。日本の横槍が入るって言われてるし」

 

「とりあえずはやってみるってか?」

 

「そういう事。扶桑なら、日本みたいにブラックな職場環境じゃないし」

 

「お上の勅でももらうさ。日本も無碍にはしないはずだよ」

 

のぞみAはダイ・アナザー・デイ当時、戦友のシャーリーに『教師志望である』旨を打ち明けていた。予備役になるのは、有事に戦う気があるからであるが、日本の官僚の傲慢で、一方的に転職を潰されてしまう。結果、日本政府の要請もあり、職業軍人のままでいつづける事になる。日本は官僚の犯した失態により、扶桑に強く出る術をほぼ失う事になる。よりによって、権威が法的に保証されている状態の天皇の勅を破るという不敬罪間違いなしかつ、反逆罪スレスレの行為を働いたためである。勅が真筆であった事の判明は『21世紀の日本』の内閣を顔面蒼白に陥らせるのは言うまでもない。

 

 

――21世紀の日本の騒動での混乱は甚だしく、総理大臣が閣議で怒鳴りっぱなしという日があったほどだった。文部科学相と厚生労働大臣は言い訳に終始。総務大臣も内政干渉を咎められ、防衛大臣だけが涼しい顔をする有様であった。また、国会も荒れに荒れたものの、扶桑の重臣達の演説で落ち着きを取り戻した。のぞみのプリキュアとしてのネームバリュー力も功を奏し、損害補償は比較的に厚くなされた。だが、扶桑の予備士官制度そのものを揺るがせてしまったため、日本は予備士官の取り扱いに難儀する事となっていく。更に、予備役軍人の転職に制限をかけるかの問題も浮上してしまい、やむなく、軍人の『副業』を認めざるを得なくなる。日本も社会不安がクーデターに発展するのは望んでいなかったからだ。また、64Fの特権を憲章に明記し、統合参謀本部の指揮下ではないことを明確にした。また、ヒーローユニオンの存在の法的位置づけも明記されるなど、扶桑がダイ・アナザー・デイ後に直面するであろう社会的混乱が想定された。その効果はクーデターで実際に発揮され、日本連邦は1948年を以て、組織としての実態を伴うのであった――

 

 

 

 

 

 

――同時に、自由リベリオンの国家承認についても揉めたが、米国の圧力で認めた日本。二次大戦時の有力軍人の大半を抱えていたからであるが、ティターンズの実態がアニメよりも差別的(実態は白人至上主義)であった事の判明も一因であった。自由リベリオンの人員は港に停泊した軍艦に軟禁同然の扱いであったが、米国の圧力で『南洋新島を仮住まいとして提供する』事になった。士気がだだ下がりであったからだ。そのため、南洋新島群はその大半が自由リベリオンの施政地域とされ、疎開してきたリベリオン系住民と軍人らの仮住まいとして整備され、以後の時代には自由リベリオンの実質の国土とされる。実質的に日本連邦の尖兵として矢面に立たされていくが、元々、戦いに躊躇しない性質の彼らはすぐにその立場を受け入れていく。以後、敵味方で同じ兵器が使われる状況が出現していくため、敵味方識別装置が普及していく。また、陸戦兵器も塗装などで工夫がこなされていくので、M粒子と魔女の存在は兵器の塗装の発達を別方向に向かわせた事になる。また、魔女等に第五世代戦闘機の形状などもレクチャーされるが、怪異と誤認すると不評であった。一般の魔女たちの知識では、第五世代戦闘機の形状は怪異に見えるからであった。結局、第五世代機は大戦型の乱戦では、継戦能力の低さ(携行弾薬の少なさ)が仇となり、アクティブステルスを持つ未来戦闘機、あるいは第四世代以前の機体の改修型に需要で勝てず、頼みの電子戦能力もM粒子の散布下では大きく減衰してしまう事から、戦場の主役たりえなかった。特に、ダイ・アナザー・デイ最序盤での同士討ちの頻発が致命的であった。その一方、64Fの隊員が好事家のごとく、時たま使用した『ドラケン』や『タイガーシャーク』といった旧式戦闘機ベースの改修機のほうが活躍したという状況は軍事評論家を大いに困惑させた。特に本来は『北方の国が開発した戦闘機を欧州の南で使う』という状況自体が提示されたからだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――コズミック・イラ世界は地球連邦軍の介入後、地球連邦軍の力で世界統一へ向かっていった。ファウンデーション王国の存在を察知していたため、同王国をいずれ制圧することを想定していた。同王国も地球連邦軍の超兵器群になす術がないことを実感していた。『ジークフリート』の存在はその証明であった。ガンダリウムε合金の多重空間装甲はコズミック・イラの如何なMS用武装を寄せ付けず、戦艦の硬化テクタイト板に至っては『陽電子砲』を軽く弾き返す。技術力の違いをまざまざと見せつけられたわけである。更に、コズミック・イラの如何な戦略兵器をも超える兵器『波動砲』。その力を以てして、地球連合を屈服させ、プラントに交渉の場につかせた。ファウンデーション王国はコズミック・イラ歴世界の技術の粋を集めていたが、彼らのいかなる技術も、戦乱続きで長足の進歩を遂げた未来世界の足元にも及ばない。オーブを介して、地球連邦軍は少しづつ、コズミック・イラ世界を統一していく。その技術を以てしても、コーディネイターの存在に関わることは改善できない。既に遺伝子情報が第二世代の時点でいじられ過ぎていたからだ。(逆説的に、彼らの種としての寿命は『75年時点で、そこから(持って)数十年である』事の証明であった――

 

 

 

 

 

 

――オーブ首長国連邦は実質的に地球連邦の出先機関となり、地球連合の再構築にかかっていた。大西洋連邦は既に衰退し、東アジア共和国、ユーラシア連邦は国勢が傾いた。国力が温存されていたオーブは、地球連邦軍の力を使い、原状回復を推進しつつある。オーブは今後の世界の地位を確立するためもあり、地球連邦軍の力を使う。地球連邦軍はコズミック・イラの世界の現況から、『圧倒する力での統一』以外に平和をもたらす手がないと判断。(コズミック・イラは既存宗教が衰退した世界であるので、宗教的歯止めが殆どかからない)ブルーコスモスやザフト脱走兵の掃討を遂行。コズミック・イラ世界が自力で平和維持組織を造るまでは、地球連邦軍が地球連合軍(ブルーコスモス派)やザフト脱走兵などの武装組織を掃討していたのである。――

 

 

 

 

 

 

 

 

――日本での騒動とデザリアム戦役を経た後、のぞみAは自身が『戦いの宿命から逃れられない』ことを悟り、『世界のために、プリキュアとして戦い続ける事が自分の最大の欲望だった』と思い至った。この心理状態は大人のぞみにも影響を及ぼしたわけだ。更に、既に夢原のぞみとして面が割れている事から、キュアドリームの状態でいたほうがプライベートを気楽に過ごせると判断。休暇でも、ドリームの姿でいるほうが多くなった。これは訓練の一環でもあったが、『面倒ごとを避けられるから』でもあった。それは他のプリキュアにも波及していった(ヒロインの体裁は守るが)――

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ中、のぞみは前世での業から、今さら『世界を守るヒロイン』の立場には戻れないという、暗い心境であったが、業を抱えつつも、『人類のために』存在しつづける昭和ライダーたちと知り合ったことで、前世での業を受け止めた上で『転生先でプリキュアをしていく』事に精神面での踏ん切りをつけたと言える。また、扶桑の法的には成人同様の扱いであったので、運転免許は日本連邦体制への移行後に『国際免許証』として正式に取得。その際には、黒江の指示で『戦車も合法的に動かせるようにしとけ』ということで、必要な免許を取得。なお、元々、目が良かった錦が素体であった都合、視力は21世紀示準では『極めて良好』である2.5に素でなっている。プリキュア状態では更に高い。それらの免許取得の手続きと合宿、更には南洋への赴任もあり、コージとの入籍が戦争中にずれ込んだのである。かくして、魔女の世界は次第に日本連邦一強のもとでの統一へ向かう。だが、アジア主体の秩序構築を認めない勢力はガリアやオラーシャの右派を中心に糾合していく。これがティターンズの命脈を永らえさせた原因であった。日本連邦はその抵抗は想定済みであり、独力での宇宙開発を一定のところまで進める計画であった。また、連合軍の中から離反する国が生ずる事も想定しており、扶桑とガリアの関係は悪化しつつあった。怪異がいなくなったら、世界は大戦を始める。その芽を摘み、人類存続のためにも、大宇宙を目指す扶桑。欧州中心の秩序を守ろうとし、選民思想に走っていくガリアなどの諸国。欧州の視点からすれば、カールスラントが『技術供与の手数料を将官の裁量で高く取っただけで、国家自体が再起不能寸前に追い込まれた』という事実は恐怖そのもの。日本連邦と対峙し、既存秩序の維持を図っていく。この反動的流れはある意味、歴史の帳尻合わせであった――

 

 

 

 

――ウマ娘世界――

 

 

「……って事があってさ」

 

「な~るほど。君等も大変だねぇ」

 

「あれ、ルドルフちゃんは?」

 

「ルドルフは近頃流行ってる、例の新型ウイルスにやられて、39度の高熱で唸ってるわ。あの子の部屋は私とエアグルーヴちゃんの指示で封鎖させたわ」

 

「あ、この世界でも流行ってるんだ、あれ」

 

「うん。それであたしがテイオーのできない仕事を引き受けてるわけ。協会の連中との折衝はそれなりに貫禄がないと」

 

「む~~!!それってさ、ボクがおこちゃまって事~!?」

 

「仕方がないよ。折衝は腹の探りあいだもの。あたしは従姉さんを見てきたし」

 

「こいつもまだ青二才だがな」

 

「先輩、協会は?」

 

「例のウイルスにルドルフが罹患したことで、濃厚接触者をリストアップしろと言ってきている。ルドルフは多忙で体力を落としていたのが仇になった。お前らの喧嘩結果は陰性だが、ここ数週間は気をつけておけ」

 

「わかりました」

 

ウマ娘は疫病に滅多にかからないが、かかる時はかかるので、ルドルフは寝込む羽目となったらしい。ルドルフが病気であるので、有力なウマ娘(生徒会の現任・前任者など)の合議制で学園の自治を行っている。お目付け役に、協会からは、トウショウボーイ(学園OG。ルドルフの前任の生徒会長)が派遣されている。従って、この時点では『テイオーの院政を二人の前任者がしている』という事になる。

 

「しかし、お前と同じ空気を、学園でまた吸う事になるとはな、マルゼン」

 

「はい…。まさか、またご一緒になるなんて。ところで先輩、現役時代の制服、引っ張り出してきたんですね」

 

「スーツ姿は慣れなくてな。それに、学園に当面はいる事になったからというのもある」

 

「従姉さん、それって、シンザン会長の?」

 

「うむ。彼女の特命だ。四~五代の三冠ウマ娘が同じ時代に会する事になりそうだからとのことだ」

 

それはこの年の菊花賞を制すれば、三冠を戴冠するディープインパクト、その次代を期待されるオルフェーヴルのことだ。シンザンは数十年に一回の千載一遇の機会を存分に利用する事にしたのだろう。三冠ウマ娘は通常、10~20年に一人生まれれば良いほうだ。だが、それが5~6年ほどで五人も生まれるというのは、まさに群雄割拠の黄金時代だ。

 

「やれやれ。あたしも、ルドルフも引退済みなんだけどな」

 

「愚痴るな、シービー。新レースが考案中との事だ。引退者であっても、現役の最有力層と戦うことで、往時の実力の証明とするような」

 

「ドリームトロフィーに出るようなウマ娘は現役時代に実績は充分なはずだけど?」

 

「馴れ合いという批判を躱すために、お前たちは往年の実力を見せなくてはならん。特にトップクラスであった者は…な」

 

トウショウボーイは実年齢が既に大学院生を終える年齢でおかしくないほどだ。ウマ娘は外面的な老いは比較的に緩やかであるので、マルゼンスキーが若手であった当時からさほど、外見上は加齢していない。『TTG』の一角であるので、全盛期にマルゼンスキーと戦えていた場合、互いに『ほぼ互角の速力』であっただろうと推測されている。その当時、マルゼンスキーの同期らがマルゼンスキーの圧倒的速力の前に心が折れ、次々と去っていく中、彼女たちは『マルゼンスキーに対抗できる日本純正のウマ娘』(マルゼンスキーは母が外国にいる時に生まれ、まもなく日本に帰国したという『帰国子女』である)とされていた。実際、当時の日本育ちのウマ娘で最強無比を誇っており、マルゼンスキーがその全盛期にあっても、対抗できると下馬評があった。訓練をし、措置を受ければ、彼女もその頃のちからを取り戻せる。かつては『天馬』とさえ謳われ、マルゼンスキー台頭の直前まで『日本最強』と評されていたのだから。

 

「やれやれ。要は今の若い子に年上と、昔のエース格の威厳を示せって事でしょ、姉さん」

 

「そういう事だ。最近の若い者は口の達者な者が多いからな」

 

オルフェーヴルはデビュー間もない身でありながら、どこぞの英雄王を彷彿とさせる『傲慢不遜な振る舞い』をしている。それは上の世代の不興を買っている。ブライアンはまだ、TPOを弁えていたが、オルフェーヴルは他人に殆ど下手に出ない。これでは『引退後の生活が心配になる』という事も、その提案が出された理由だという。

 

「私は現役ですが?」

 

「君は近いうちにまみえるであろう、ディープインパクト、オルフェーヴルとの対決に精力を注ぎ込んでくれたまえ。君は後輩を負かせればいいのだ。特に、あの口の達者な若造は鼻持ちならん」

 

オルフェーヴルはトウショウボーイなどの上の世代を『倒すべき者』としか見なしておらず、『玉座は自分のもの』と公言してくる性格だと説明されるブライアン(のぞみ)。

 

「アオハル杯の途中ですよ、元・会長」

 

「それが終わり次第とのことだが、今は検討の段階にすぎんそうだ」

 

のぞみは知っている。オルフェーヴルは三冠馬であるが、一期下(同時代)の三冠牝馬であるジェンティルドンナにパワー負けを喫した事がある事を。以前にゴルシが『メタ情報』を知っていることを問い詰めた際に知った情報だ。

 

(たしか、オルフェーヴルはキャリアの後半の何処かでジェンティルドンナに負けた事があるって、ゴルシが言ってたな……あ~。ちゃんと聞いとくべきだった)

 

と、内心で後悔するのぞみ。だが、彼女が使うブライアンの体のステータスのバランスは歴代三冠ウマ娘で屈指のパワー型であり、オルフェーヴルを逆に圧す事も不可能ではない。ジェンティルドンナにできた事が、同じ三冠ウマ娘であるブライアンにできない道理はないのだ。史実では騎手の乗り替わりもあり、凱旋門賞を二度とも惜しい展開で終えているオルフェーヴル。自身の不調が原因で、騎手が変わった事があるブライアン。奇しくも、両者は似た競走成績を残している。違うのは、オルフェーヴルは種牡馬として成功し、ブライアンは『種牡馬として、成功する時間を与えられなかった』ところか。

 

(でも、全盛期のブライアンちゃんなら、オルフェーヴルに対抗できる。それに、ゴルシの情報が正しければ、オルフェーヴルは……いや、日本馬そのものが)

 

日本のウマ娘達は凱旋門賞を夢見ているが、近いうちに日本最強となるであろう、ディープインパクト、オルフェーヴルの両名を以てしても、その夢は叶うか不透明。だが、協会の一部はルドルフの祖母『スピードシンボリ』の時代から、その夢を追っている。ルドルフは祖母の功績と足跡を現役のうちに、自力で追いたかったが、それは叶わぬ夢となった。その事はシリウスとの関係を悪化させる原因でもあった。ルドルフがエルコンドルパサーを送り出したのは、祖母の時代からの悲願を託した側面がある。だが、そのエルコンドルパサーはモンジューに敗れ去った。史実を考えれば、その血族、あるいは弟子筋が日本馬の尽くを倒すことになる。だが、そもそも、凱旋門賞に縁が元はない者なら?ブライアンはそうした側面から、一縷の望みを見出したのである。

 

(縁が元々無かったウマ娘なら、万一のキセキを起こせる。ブライアンちゃんはそれで?)

 

のぞみはその事に考え至る。ブライアンが『凱旋門に敗北の因果がない自分なら、凱旋門を勝てるのでは?』と思い至った可能性に。シリウスシンボリ、ナカヤマフェスタ、ゴールドシップ、エルコンドルパサーは史実での順位が決まっているも同然だが、史実ではナリタブライアンは凱旋門どころか、満足に種牡馬としても活動できなかった。そもそも、2020年代には『サンデーサイレンス』と『キングカメハメハ』、『トニービン』の三つの系統が混じり合う時代となっており、ブライアンズタイムの血統は先細りであった。つまり、ブライアンには『凱旋門で負ける運命が存在しない』事になる。

 

 

(トレーナーと別れた、あるいはいなかったネームドウマ娘(史実があるウマ娘)は図らずも、魂の持つ因果に縛られる。タキオンはそれに気づいた。個人の意志力が弱まるせいだと思うって言ってたな。なら、史実で一流と言われつつ、薄幸な後半生だったブライアンちゃんはそれを覆したいって思いが強い。なら……)

 

ブライアンの願いの真の意味に気づいたのぞみ。ブライアンは史実を超えるための意思を強く持っている。そのためには、あらゆる荒行も辞さない。史実の先に行くために)

 

ブライアンは自分の史実を知ると、それを超えるための手段を(形ぶり構わずに)求めた。皮肉な事に、『史実を引退した後で知った』者もおり、ある程度の改変を望む者もいる。オグリとタマモがそれである。ゴルシのように、『やり直し』が運命力で決められた者もいる。フジキセキのように、夢を親しい後輩に託す者もいるが、それは後輩を却って『苦しめる』場合もある。フジキセキが走るのを再開した理由も、その点に遅まきながら気づき、悩んだからである。ブライアンはある意味、自分で自分の望んだ運命を引き寄せることを選んだ事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そのフジキセキはススキヶ原で療養生活に入った。ノビスケが所属しているサッカークラブの試合を見に行ったのだが、その途中の事――

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、すみません。ちょっと立ち眩みが…」

 

道の電柱に倒れ込んだ壮年(50代ほど)の女性を介抱するフジキセキ。現役時代のトレーナーの関係で、多少なりとも医学に通じていた事から、ただの立ち眩みではない事を直感。すぐに近くの病院に連れて行こうとするが……

 

「この辺は道が入り組んでて、救急車は来れない。かといって、近くの病院まで2.2キロあるよ、お嬢ちゃん」

 

「2.2キロですね?なら、問題はないです。私、高校で陸上をしてますから」

 

「大丈夫か?その人、かなり重そうだが…」

 

「いつも、100キロ以上のダンベルで筋トレしてますから、屁でもないですよ」

 

「元気だねぇ、運動部は」

 

共に介抱している、通りがかりの男性にそう言う。嘘はついていない。違うのはダンベルの重さだ。フジキセキは三冠を目されたほどの実力者であったので、3~400kgほどのダンベルを常に持ち上げていた。それでいて、パワー型でないのだから、ウマ娘の筋肉量が『見かけに比例しない』ことがよく分かる。奇しくも、フジキセキはその幻の俊足をこの時に使ったのである。

 

「病院までのルートは?」

 

「町境に、新しい総合病院があるが、ちょっと入り組んでるよ、ここからの道だと」

 

「ありがとうございます。それじゃ」

 

「ああ。なにかまた機会があれば…速っ!?」

 

フジキセキはその俊足で女性を瞬く間に病院へ送り届ける。2200mなど、彼女にとっては、トレーニング程度のもの。三冠を期待されていたほどの俊足の復活はこの出来事で実感したのである。

 

 

 

 

――フジキセキはサンデーサイレンスの子供の第一世代の代表格である。後世の知名度は低いが、サンデーサイレンス旋風の序章を見せた存在である。本人はそれを聞かされ、なんともいえない思いであった。アオハル杯には参加していないが、入院しているグラスワンダーとライスシャワーも同じことである。ライスシャワーは程度が重かったため、長期の入院になるが、グラスワンダーは全盛期の肉体に医学的に戻す処理と、溜まっていた肉体の疲弊の解消であったので、比較的に短期間で退院の見込みであった。元々、マルゼンスキーに似た出自を持っていたこと、ジュニア期時代にその時期の『最高クラスの実力』であったりする点を指して、マルゼンスキーの再来と謳われていた実力派であった彼女。近年はライバルの相次ぐ引退などで、すっかり往時の輝きを失いつつあった。本人も潮時かと諦めつつあったが、親友かつ同期のスペシャルウィークへの誹謗中傷などが協会にあるのを知り、再起を決意し、退院後にトレーニングに勤しむこととしていた。――

 

「グラスさんは退院したら?」

 

「ええ。しばらくはこの世界で骨休みはしますが、徐々にトレーニングを再開していくつもりです」

 

脚の治療中であるので、車椅子姿のライスシャワーと、五体満足ながら、病院着のグラスワンダー。意外なことに、ライスシャワーのほうが年齢は上である。なお、史実で天皇賞を勝つ運命であるので、ライスシャワーは復帰すれば、天皇賞を勝てることになる。

 

「いいの、後輩が増えてきたけど…」

 

「私達の世代は早期にターフを去っていった。スペちゃんもそうでした。ですが、彼女を侮辱する声が協会にあると聞き、許せない気持ちになると同時に、無様を晒す自分が情けなくなりました…。だから、私はゴルシ先輩の誘いに乗ったのです、ライス先輩」

 

意外にも、グラスワンダーは(史実通りに)ライスシャワーの後輩であり、ライスはグラスに敬意を払われる立場である。史実を考えれば、ライスシャワーはその幼そうな外見と裏腹に、ビワハヤヒデらよりも一期上の世代である。

 

「グラスさんはまだ?」

 

「本当は引退を考えていましたが……スペちゃんのためにも、私は今一度、世代を背負います。オペラオーさんに一矢を報い、世代の最後の輝きを見せる。それが私が最後にすべき事なのでしょうね」

 

静かに闘志を再燃させたグラスワンダー。彼女は退院後、野比家に転がり込みつつ、自身の現役最後の『役目』を自覚し、それを果たすため、全盛期の自分を取り戻す事を目指す。これは史実でいう、キャリアの晩年期に入っていたことを本人が自覚していた故であろう。また、黄金世代とも言われた同世代の生き残りであるという自負と誇りがそうさせるのか、その可憐な容姿と裏腹に、猛々しい本性を隠している。その様はゴルシをして、『武士』と言わしめるほどだ。

 

「ライス先輩、見ててください。私は必ず……全盛期の自分に立ち還ってみせます」

 

グラスはライスにそう言い、食事を平らげる。全盛期はそれほど食べなかったが、ライバルの引退が相次いだ後は精神的な衝撃もあるのか、大食いに転じていた。

 

「あれ、前より食べる量……増えてない?」

 

「恥ずかしながら……」

 

ライスに指摘され、赤面するグラス。この変化も史実の反映によるものだろう。アスリートとしては正しい姿ではある。その量はスペシャルウィークとほぼ同等で、史実で最後にスペシャルウィークと戦ったレースの影響だろうか。その日、ライスと共に記念写真を撮影するのだった。

 

 

 

 

 

――かくして、その数日後、グラスワンダーはライスに挨拶をした上で、病院を退院。街を探索していると、元・チームメイトのフジキセキと再会。そのままついていく形で、野比家に転がりこむ――

 

 

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