ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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ウマ娘世界編です。


第百六十話「ウマ娘の実力にある壁。ジェンティルドンナの台頭」

――2024年。ブライアンが競技者としての『復活』『起死回生』を選んだ背景をエアグルーヴは調べていた。エアグルーヴは弟子兼妹分のドゥラメンテの大成を見届けてから引退するつもりであったが、ブライアンの『家を飛び出してまで、尚も現役にこだわる』のを訝った。そこで、ゴルシに問い合わせたのだが――

 

 

 

「ヤツが現役にこだわる理由?それはいくつかある。一つは別世界の記憶が宿った事、一個下の妹の残酷な未来を知っちまった事だ。ほれ、新入生に『ビワタケヒデ』というのがいたろ?ブライアンのすぐ下の妹だ」

 

「なんだと!?」

 

「そいつは大成できん。すぐに脚部不安が生ずる運命だからな。それを思い出したことも、ブライアンが仇討ちに燃える理由だ。トレーナーのいない場合、あたしらは何をどうしても、史実と同じ道になる。それに抗える力を得たのなら…ということだ。もっとも、あいつと入れ替わったのは、ヤツも心に傷を負ってるからだが」

 

「女史はなんのために協力を?」

 

「あ、エアグルーヴ。『女史』というのは昨今、差別用語になってるぞ」

 

「なにィ!?」

 

「まぁ、歴史的に考えれば、雅称なんだが。ルドルフも使ってるが、気をつけろと言っとく。昨今はコンプライアンスにうるさいからよ。話を戻すが、ブライアンが懇願したんだ。あたしらは協会のお触れに触れることは不味くなっただろ?それで、あいつは入れ替わりを思いついた。心だけを入れ替える道具をドラえもんは持ってるから、それを使った。だが、一つ問題がある。あたしらの要求に普通の肉体じゃ応えられねぇだろ?」

 

「そもそもの必要な食事量も違うからな」

 

「そうだ。だから、あいつ、プリキュアに変身した状態で過ごしてるんだよ。まぁ、あいつは三冠の経験者だからな。要求が高いんだよ」

 

「いいのか?」

 

「そうでないと、あいつの要求に肉体が応えられねぇのも事実だからな。背格好も同じくらいだったのは幸運だな」

 

『オトナ~』世界でわかるが、のぞみは成人時には、170cm近い長身へと成長している。高校までに成長したと思われるが、14歳当時に158cm前後であったのを考えると、目覚ましい成長である。その事から、高3で160cmほどのブライアンは(21世紀の基準では)けして長身ではないのがわかる。

 

「今回のことはヤツにいい刺激になっただろう。これで『戻っても』問題はない。が、勘当が相当に堪えてるから、今しばらくはレースから離れさせたほうがいいだろう」

 

「ヤツはそこまでナーバスに?」

 

「ああ。口とは裏腹に、意外にナイーブな内面がある。本人は否定してるが、うわ言でな、けっこう子供っぽい泣き言を漏らしてるんだよ。サムソンビッグにでも聞いてみろ。ヤツが渾名呼びを許してる唯一のウマ娘だから」

 

ブライアンは幼少期に『ブーちゃん』という渾名で呼ばれていた。そのあだ名呼びを許しているあたり、サムソンビッグと親友と言える間柄である事が窺える。

 

「おそらく、下の姉妹の手前、甘えようとする自分を抑えてたんだろう。だが、勘当でおいそれと会えなくなった。最も、親父さんも後悔し始めたようだが」

 

「何故だ」

 

「おそらく、奥さんや、ヤツの下の姉妹たちから鬼の首を取ったように責められたんだろう。だが、職人は昔気質だからな」

 

ブライアンらの父は酒造りの職人であるので、一度でも言った事を覆せるような性分ではないだろうと、ゴルシは推測する。それは一つの悲劇である。

 

「ハヤヒデが継がせられるだろうから、それまで、あいつの家にそれとなく、援助でもしてやれ。世の中不景気だからな。あたしも賞金からしてるが」

 

「…考えておこう」

 

「頼む」

 

と、ゴルシはブライアンの実家に仲間内で援助をするように誘導する。ハヤヒデは本来、(長子であるが)実家を継ぐ立場でなかったので、引退後のレース関連の職業が嘱望されていた。だが、お家騒動で家の跡取りになってしまったため、そういった職業とは縁遠い生活になってしまうのは否めない。父親は『次子には才能はないだろう』とたかを括っていたのだろうが、実際は姉以上のものを備えていた。それが不幸の始まりとも言える。

 

「ああ、シリウスのヤツに自家用機を買っといたから、野比さんちの地下に置いてあると言っといてくれ」

 

「セスナでも買ったのか?」

 

「うんにゃ、未来世界でレプリカのホビーで売られてる『AV-8B ハリアーⅡ』だ。未来世界だと、クラシックな軍用機のレプリカで飛ぶのが流行ってるんだと。自衛用に武装も再現されてるが、機能にロックかければ、21世紀の当局の審査に通るってよ。ジェット機は飛行免許、どうなんだろうな」

 

「自家用機免許で行けるはずだぞ。とはいえ、ハリアーだと?着陸は難しそうだが」

 

「垂直着陸を使わきゃ、普通の着陸でいいから、いけんじゃね?未来世界じゃ、ジェットでないと、移動にも苦労する移民星があるけど、昔の軍用機を模したデザインのレプリカを飛ばすのが趣味ってのも多いんだと」

 

未来世界では、一年戦争以来の動乱で鉄道や道路などのインフラが大打撃を被ったため、比較的にジオンなどがインフラを破壊せずに残した航空機関連産業が浮上。日本などの例外を除き、自家用機時代が真の意味で到来していた。その過程で、20世紀以前の『地域国家時代の軍用機』へのノスタルジーが湧き上がり、デザリアム戦役の後にブームが沸き起こった。20世紀の軍用機程度の性能のものは23世紀では『大人のホビー』として、大学生がバイトで買える程度になっている。航空機の普及度と個人使用率が比較にならないほど上がり、安全性もそれ相応になっているからである。

 

「つまり、個人のホビーか?」

 

「あんだろ?個人がキットを組み立てて、昔の軍用機を模した外見に仕立てて、レースで使うっての。未来世界は移動手段と兼用で、そういう遊びが人気なんだと」

 

「地域国家時代が終わった故か?」

 

「宇宙開拓時代だぞ、向こう。地球より大きい惑星の探査もあるから、航空機技術が発達したんだと。シリウスも度肝抜かされるだろうよ」

 

「楽しんでないか、貴様」

 

「こういう時じゃねぇと、あいつをギャフンと言わせられないしな。と、いうわけで、伝言頼むぞ。こっちは残敵掃討でしばらくは連絡取れないからよ」

 

「わかった。…私が先輩を苦手にしているのは知ってるだろう?」

 

「あたしとナカヤマの名前を使え。そうすれば、ヤツもそれ以上は言わねぇよ」

 

意外なことだが、ゴルシは年齢不詳気味であるが、一応は17歳以上であり、シリウスシンボリと対等に話せる立場であるらしい。また、史実通りに、ジェンティルドンナと同期、オルフェーヴルは(デビューは)一期上であるなど、共通点も多い。エアグルーヴはシリウスには舐められているが、それはエアグルーヴがシリウスより(メイクデビューが)遥かに後の世代になり、学業面でも後輩である故の年功序列によるもの。だが、シリウスは海外遠征の実績はあれど、日本では、日本ダービーの後は勝利できず(現役生活の晩年期はオグリとタマモの絶頂期にかち合った)に終わった。その事が隠れコンプレックスなのか、オグリに強く出れなかったり、ゴルシにタメ口を許すなど、悪ぶっていても、本来の人の良さが見え隠れしている。

 

「あいつは一目おいた奴には鷹揚なんだがな。お前はルドルフの腰巾着に見られてるからなぁ」

 

「訂正しろ、私は懐刀だ!」

 

「わかっちゃいるが、あいつはそう見てんだよ」

 

ゴルシは前世を考えれば、相当に不思議な立ち位置にいる。旧・生徒会の面々と対等の口が聞ける、メジロ家の中枢とも(マックイーンも知らぬところで)繋がりを持つ。また、普段はおちゃらけ&楽天家な口ぶりだが、深窓の令嬢っぽい清楚なキャラを臆面もなく演じられるなど、謎も多い。容姿も『ウルトラ美人』(黙っていれば)である。また、エアグルーヴもゴルシの(本気を出せば)G1級の中でもトップ級の実力は認めている。故に、テイオーの補佐を依頼したのである。こうして、ゴルシは『キュアビート』の体を借り、バダン相手にひと暴れするのである。

 

「じゃ、切るぞー」

 

と、定時連絡が終わる。エアグルーヴがため息をついている横で、チームブリュンヒルトに正式に加入したジェンティルドンナが『事のあらまし』を説明され、タネがわかった彼女は『そんな面白いことをゴルシさんが?』と微笑んでいる。

 

「貴方とブライアンさんが…。そのような事が……私もゴルシさんのお誘いに乗りますわ」

 

「いいの、ジェンティル」

 

「このまま成長していけば、私は当代のティアラ路線で最強は確定致します。ですが、私にも『前世』がある事がわかった以上、単純にそれを受け入れるだけでは、気がすまなくなりましたわ。それに、私の更に後の代に前会長(ここではルドルフを指す)をも超える勝利数を誇る逸材が現れる…。単純に『数年を現役で走って、円満に引退する』のはつまらないのですわ、夢原さん……で、よろしいかしら?」

 

「うん。あたし、実年齢はトレーナー側でいいからね?」

 

「わかっていますわ。学生を一度し終えた人間のような挙動をしてましたもの」

 

「え、わかった?」

 

「ええ。なんとなくですが」

 

のぞみAも1949年時点では(扶桑での戸籍上は)21歳ほど。普通に大人だ。ジェンティルドンナは(実は)ブライアンとクラスメイトであったので、日々の挙動から、なんとなく察していたようだ。

 

「その前に、今はアオハル杯の第三戦を勝たねばなりませんわよ?」

 

「チームファーストのお手並み拝見…という感じですよ、のぞみさん」

 

「現役時代は運動オンチだったから、それと真逆の『一流のアスリート』の立場を演じるってのは……違った世界を見るようだよ」

 

「あら、戦士としては第一級の貴方が?」

 

「戦いは経験の蓄積でどうにかなるもんだけど、スポーツはねぇ」

 

と、本来は少年期のび太と同列なほどの『運動オンチ』であったが、転生の恩恵でスポーツ万能になれた事は本気で嬉しいのぞみA。前世で『スポーツはダメダメなまま』であったのもあるのか、余計に『違う世界を見るよう』なのだろう。

 

「チームファーストは平均値は高いですが、個人個人の『尖った点』はありません。樫本トレーナーが『能力を高い水準で均一にする』ように指導しているようです」

 

「どんぐりの背比べみたいな話だな。が、過去、現在、未来も含めて、G1ウマ娘のトップ級の中のさらに上積みが揃うあたしらに勝とうなんざ、100年早いね」

 

「あら、我々にどこまで食らいついてみせるか、見ものですわよ、皆様方」

 

チームファーストと対戦する頃には、歴代の最強格が名を連ねることとなったチームブリュンヒルト。その快進撃は凡百のチームでは、まともに相手できぬものであった。ブライアンの『秘密』を守るためという目的もあるにしろ、ルドルフの人望が健在である証明であった。往年の名手ばかりでなく、新世代のホープも在籍しているため、まさに『最強』に近いと話題であった。チームファーストは『資質はG1級だが、実績はまだない』若いウマ娘らで固められた陣容。一方のチームブリュンヒルトは『歴代の最強、あるいはトップ3級の実力派が集まった』陣容。学園内の(裏)トトカルチョがトトカルチョにならないほどの期待度であった。

 

 

 

「てやんでぇ。平成三強が未だ健在ってとこを見せるいい機会って事じゃねェか。どこの馬の骨とも知らねぇ青二才どもに、このイナリ様は負けねぇ!」

 

「伊達に三強と呼ばれたわけではない。それを見せてやろう」

 

「あらあらあら~。私も久しぶりにひと暴れしましょうか」

 

平成三強の三人は自分たちがメインを張るレースは(現役引退からは)久しぶりである事から、勝利する気満々であった。ただし、彼女らの現役時代と違い、周りのレベルが大きく向上しているのも事実ではある。

 

「油断は禁物だぞ、三人とも。彼ら(チームファースト)の様子を見てみようか」

 

「会長さん、例の青だぬき……じゃなかった、ネコ野郎から?」

 

「スパイ衛星を借りてある。このアオハル杯の間持てばいい『使い捨て』のものだが……使ってみよう。タキオンは今いないから、私がするしかあるまい。エアグルーヴ、窓を開けてくれ。」

 

「は、はい」

 

「火種を用意して……と」

 

「あらあら。ずいぶんとかわいらしいロケットですのね」

 

「件の世界の『ある時代』特有のものだとのことだ。その時代では、使い捨てで個人用の人工衛星があったんだそうな」

 

ドラえもんの『自家用人工衛星』である。模型サイズのロケット発射台が置かれ、開け放たれた窓へ向けて、人工衛星を乗せたミニロケットが打ち上げられる。

 

「いくぞ。発射!!」

 

ミニサイズだが、前時代のアポロ計画を思わせる迫力でロケット打ち上げがなされる。ドラえもん世界の『ひみつ道具時代』には、このようなものが個人のホビーとして流通していたのである。この時に用いられたのは、ドラえもんも滅多に買わない『高級版』で、廉価版では分けられている機能が統合されているものだ。廉価版と違い、寿命も値段相応に長いという。サイズに比して強力な推進力を持っているのか、瞬く間に静止軌道に到達し、衛星が軌道に乗る。

 

 

「作動したな。チームファーストの様子を確認しよう」

 

ルドルフは操作機器で衛星の機能をオンにし、チームファーストの様子を確認する。ちょうどブリーフィングをしていたようだ。音声機能を入れると、樫本理子(チームファーストのトレーナーにして、理事長代理)がメンバーに対策を話しているところであった。

 

「ハン、このガキどもが私らの相手だぁ?青ちょろいガキ共じゃねぇか」

 

「言ってやるな、シリウス」

 

「へいへい」

 

とはいえ、彼女らも高校生相当の年齢層なので、それはそれでどうかと思われるが、ウマ娘は通常の人間より『(外見的に)10代相当の時間が長い』ので、そこはさほど気にされないのだろう。

 

「あら。オグリさんはシリウス先輩に強く出れますの?」

 

「昔の事だ。現役時代にちょっとな」

 

「……チッ」

 

シリウスは現役時代の晩期にオグリ・タマモの両名の絶頂期にかち合ったため、両名に負け越していた。特にオグリには明確に敗北したので、それにむかっ腹が立ったので、オグリの現役時代を(途中からは観客として)見届けている。ナカヤマフェスタ(後輩兼ルームメイト、バクチ仲間)曰く、『オグリに脳を焼かれたのさ』との事。また、オグリの引退直前に『史実にはない』イベントがあったらしく、お互いの関係は『悪くない』部類になっているとのこと。また、本来はオグリがシリウスの後輩だが、オグリが現役時代にシリウスを明確に負かしている事もあるが(オグリが敬語をあまり使わないのもあり)、タメ口を聞いている。その事から、シンボリ家のウマ娘は(実力を認めたウマ娘に限るが)年功序列を気にしない鷹揚さを持つのがわかる。

 

「君らのデータは数多残されている。対策は立てられて当然だろう」

 

「それを真正面からぶち破るのも、また一興よぉ」

 

現役時代より経験そのものは増しているし、現役時代と違い、『領域』の制御も自家薬籠中のものとしているせいか、イナリは強気であった(彼女は現役時代、『領域』の自己意思での制御には至っていない)。チームファーストは相応の対策は練ってくるだろうが、場数の違いだけはどうにもならない。これはオグリの引退レース、ルドルフの祖母『スピードシンボリ』の現役時代で証明されている。

 

「場数の差は素質だけでは埋められん。私がそうだったからな…。逆に言えば、素質が突出してれば、多少の差はどうとでもなる。だが、この子らはそれがない。良くも悪くも『どんぐりの背比べだ。つけいる隙は充分にある。なに、ブランク明けのいいハンデだよ」

 

オグリも引退後はそれなりの語彙は身につけたようで、現役時代よりウイットに富んだ物言いをした。また、実質的な現役復帰の狼煙にはちょうどいいハンデと考えているらしい。ブライアンの師としての成長が垣間見える。

 

「お前さんにしては、ウイットに富んでるねぇ」

 

「あれから時間が経ったんだぞ、イナリ」

 

と、年齢的に多少は成長したと、イナリにボヤくのだった。

 

 

 

 

 

 

――その頃、トレセン学園の保有する港に『海底軍艦・ラ號』が物資搬入の護衛で潜水艦用進入口から入港してきていた。理事長代理には知らされていない事項であった。ラ號は地球連邦軍が『轟天振武隊』隊員の子孫らから回収した後に『准ヤマト型宇宙戦艦』として更に改造した代物である。元々が海底軍艦として造られていたので、タキオン波動エンジンへの主機換装、主砲などのショックカノン砲塔への換装などが主眼の改造であり、波動砲は積んでいない。だが、それ以外は他のヤマト型にも劣らない。極秘に海底を潜行し、トレセン学園に大規模な物資の定期便をもたらす『それ』の暗号名は『東京急行』。ルドルフが(オグリ以外にも大食いウマ娘が複数現れた情勢を鑑みて)食料品搬入を依頼。地球連邦軍は軍縮時代に各地の食料品プラントで造られたが、軍の解体の予定で民間への放出が内定されていたが、結局、軍の存続が決まった事、その間にコスモリバースシステムで一定の環境回復がなされた事による需要の消滅で倉庫に大量に死蔵されていた食料品をトレセン学園へ提供することとした。ひみつ道具時代の名残りで、鮮度その他は気にする必要のないものであったのも決め手であった。これは連邦がデラーズ紛争の教訓で、公に食料品プラントを整備すると、周辺地域がジオン残党のテロの標的になる事を恐れた事、コスモリバースで20世紀半ばほどの環境へ自然が回復した事による自然栽培製品の需要と供給の回復によるものであった。そこの点からも、生粋のジオン系スペースノイドは嫌われ者である。一年戦争、デラーズ紛争、ネオ・ジオン戦争で穀倉地帯を痛めつけた道義的責任と罪悪感からか、ジオン系科学者はその後、人工食料品の開発やクローン技術の発達(正確には復興か)に尽力。トレセン学園に搬入されるものはガトランティス戦役後、連邦に下った一派が改良し、味を整えたものであった――

 

 

「ん、すまんな。スマホの通知だ。搬入の通達か」

 

「地球連邦軍から食料品を買ったそうだが、どこで費用を捻出したんだ、ルドルフ」

 

「いや、彼らが政治情勢の変化で持て余した余剰の軍用の食料をタダでくれたんだ。今のレトルト食品の延長線上のものだから、我々の調理器具で充分に調理できるとのことだ」

 

「タダぁ?」

 

「おちつけ、タマ」

 

怪訝そうなタマモクロス。コテコテの関西人+実家が貧乏であった故、タダという単語に弱いらしい。地球連邦軍としても、需要の消滅で持て余していたが、技術そのものは22世紀終盤時点で極限まで達したレトルト食品技術で構成されており、元から味は保障されている。

 

「海底軍艦が既に入港したそうだ。……驚いたな」

 

「ウチのオトンが子供の頃にリバイバルで見た映画のあれか?」

 

「立ち位置はそれなんだが、連邦軍曰く、大和型をベースにしたものらしいぞ」

 

「戦艦大和の姉妹艦をドリル戦艦に改造したんかいな?」

 

「おそらくは。戦後にいったん組み上げたものを数百年後に波動エンジンで再改造したものらしい」

 

「よく、大戦艦をパーツ単位で秘匿できたものですわね」

 

「戦後まで生き残った所管部隊の技術将校が造船業で成功して、その一族のコンツェルンが何代にもわたって秘匿していたんだそうな。ドラえもん氏曰く、この時代に存在が政府にバレたが、1947年、法的に大日本帝国が解体された日までに軍へ納入がされていない以上、企業の所有物だと言うこととなったんだそうな。野党は国連へ供出せよとか、解体すべきとか喚き散らしたそうだが、空中戦艦というのが分かったんで、匙を投げたんだそうな。21世紀の常識では、空中戦艦などは手に余るからな。結局、そこから、地球連邦が宇宙軍を持つ時代まで忘れ去られたんだそうでな」

 

ラ號は1970年代に一度だけ、当時品の状態で出撃した事が口伝で伝わる。ラ號は宇宙戦艦ヤマトの生まれる時代に准同型艦に再改造され、地球連邦軍の『一等戦闘艦』(戦艦の等級)として登録され、現在(デザリアム戦役後)に至るという波乱万丈の艦歴である。

 

「つまり、地球連邦の時代に本懐を遂げたと?」

 

「そういうことになる。軍艦は戦うために生まれるものだからな」

 

本来は大日本帝国海軍最後の忘れ形見であったラ號の波乱万丈ぶりは23世紀で本になったとも伝えるルドルフ。戦後は忌み子同然となりつつも、最後は長姉『大和』の生まれ変わりである宇宙戦艦ヤマトの影となり、地球防衛に貢献している。そんな艦を輸送任務に動員できる程度には、地球連邦軍も余裕を取り戻した事がわかる。連邦の主力となる旗艦級はアンドロメダ級であり、ヤマト型は(その気になれば大艦隊の指揮も可能だが)基本的に単艦運用、もしくは小艦隊の旗艦という扱いで落ち着いている。

 

「そのような艦を輸送に?」

 

「遊ばせておくと、銃後がうるさいんだと思われる。特に、地球連邦軍は全軍での行動が取れないと揶揄されているというからね」

 

 

ルドルフも第三者として同情する、スペースノイドの連邦軍への蔑視を公然とする風潮はジオンの事を覚えているスペースノイドの全員が世を去るまでなんだかんだで継続。連邦軍は旧式化した初期型のペガサス級強襲揚陸艦やマゼラン級戦艦をも予備役で少数を維持する事が続く。それが無くなり、予備役艦隊に至るまで『直近の戦争での新世代艦で統一できる』には長い時間を要することになる。ジオン残党自体は自然消滅へ向かうが、ジオン寄りの思想の持ち主は多い。だが、次第にスペースコロニーは『恒久的に維持できる住まいではなく、攻撃にも弱い』事が判明。移民星、あるいは移民船団化のほうが『割に合う』という事実が後のギィンギル帝国の非道で証明されてしまい、恒久的なスペースコロニー国家は『一時の夢』として、宇宙開拓時代の進展で急激に消えていく(最も、ギィンギルが非道過ぎたのだが)ことになるのだ。

 

 

「先方に私たちも無理を言っているのも事実だ。できることは協力していくつもりだ」

 

「なかなかの無茶をしているようですが?」

 

「それはブライアンの個人的事情もあるのでな。我々は魂の因果に自覚なしに縛られる。私の七冠であっても…だ。なら、それを超えたいという気持ちを持っても罪にはならん。魂と名、記憶を継いだとしても、私たちは『彼ら』そのものではないのだからな。オグリは既にそれを成し得た」

 

「うむ…。多少の変化で良かったんだがな、私は」

 

オグリはこの時、自分の望んだ形の『現役時代』への改変を済ませた後である。ブライアンとの縁はその過程で生まれたものだ。だが、それを受け入れている。

 

「君はどうする気だ、ルドルフ」

 

「前世の記憶が宿った今、単純に協会の常任理事に収まり、シンボリ家をおばあさまから継ぐという人生で終わるわけにもいかなくなった。これからは多少なりとも、自分という『個』の想いに従って生きていくつもりだよ」

 

「テイオーを生徒会長の後継にしたのは、自分の子だった故の可愛さかいな?」

 

「それは否定せんよ。テイオーが自分の『倅であった』なら、親として『してやりたい事』の一つや二つはあるからな。生徒会長の後継だが、ブライアンを考えていた時期もあるが、ブライアンはああいう性格だろ、タマモ」

 

「あ~……なるほど」

 

「トレセン学園の生徒会長は『その時代に最強のウマ娘』が代々継ぐしきたりがあった。とはいえ、群雄割拠の時代、私や君等の時代のような『突出した個』は生じにくくなっているだろう?だから、後継候補は早くに絞っていた」

 

ブライアンはその性格もそうだが、もう一つ。低迷期のほうが全盛期より長いことがイメージ面でネックであった。故に、奇跡の復活の印象が低迷期の印象を既に上書きしているテイオーのほうが望ましかったという理事会の『イメージ戦略での都合』と偶然に利害が一致し、ルドルフはそれを大義名分にして、テイオーを後継ぎに仕立てたのである。

 

「ブライアンの全盛期が今しばらく続いていれば?」

 

「彼女を推しただろう。テイオーは幼さがあったからな……」

 

ルドルフもブライアンとテイオーの二択で相当に悩んだが、生徒会の代々のしきたり、競走成績、自身の考え、理事会の思惑などを天秤にかけた結果、テイオーに白羽の矢を立てた。ブライアンは成績面は問題はなかったが、最近まで不調であり、そのイメージが世間的に強いのも(正確に言えば)理事会の承認を得られない』(選挙の後に理事会の承認の手続きがあるため)との懸念があったからだろう。だが、実際はブライアンも(ダーティーな事をやれる胆力はあるが)精神年齢自体はテイオーと大差はないのだ。

 

「まぁ、素の精神年齢自体は大差ないで、あの二人。ベクトルが違うだけや」

 

「それは言えてるな」

 

テイオーはルドルフに、ブライアンはハヤヒデやオグリに精神的に依存している面を持つため、タマモは精神年齢自体は『大差ない』と明言する。

 

「今回のアオハル杯で名を轟かせるのは、おそらく君だろうな、ジェンティルドンナ」

 

「ええ。それは承知していますわ、会長。クラシック期を迎えれば、私は否応なしに世間の注目を浴びるという事も」

 

ジェンティルドンナは史実を考えれば、『当代最強のウマ娘』になれる器の持ち主だ。また、ゴルシに続き、競走馬としての記憶を得たらしく、同期のヴィルシーナの挑戦を『待っている』と述べるなど、早くも『トリプルティアラの継承者』である自負を持っている。ウマ娘としては『まだ』であるのだが。

 

「君はトリプルティアラを得る自信が?」

 

「もちろん。我が父たるディープインパクトの娘としての血と魂の因果とは関係無しに、私個人として、その証明をしてみせますわ、会長」

 

「ジェンティル、まさか君も……」

 

「ゴルシさんと縁深い故……でしょうか。気がつけば、こうなっていましたわ」

 

微笑むジェンティルドンナ。ゴルシとの縁が自身に前世の記憶をもたらしたと述べ、ディープインパクトを『父親』と認識している事も明確にした。もっとも、その要素はヴィルシーナにも共通しているが。

 

「その証明をお見せしましょう」

 

「!!」

 

その瞬間、ジェンティルドンナを黄金色のオーラが包み込む。既に『G1級ウマ娘が突き当たる壁を超えている』ためか、青白いスパークを伴っていた。

 

「その力……ジェンティル、お前。どこで……!?」

 

『この世界線』では、ダブルティアラウマ娘であるエアグルーヴも驚愕を顕にするあたり、その境地は現在までメジロラモーヌとスティルインラブしか到達できていなかった事が伺える(正確には、スティルインラブの次代の達成者である『アパパネ』も到達したが、その直後に怪我で引退を余儀なくされたため、世に知られていない)。

 

 

「アパパネ先輩からですわ。彼女も引退する直前には、この境地に達していたようで」

 

「なにィ!?」

 

「私は前世の記憶を得たからには、彼女の無念を晴らすと決めていますの。トリプルティアラを達成し、当代最強になることで、先輩への手向けにすると」

 

この世界線では、スティルインラブの次代のトリプルティアラ達成者であった『アパパネ』は怪我で競走生活に終止符を打った後、療養のために学園から離れた事、ジェンティルドンナから『尊敬される』間柄であったようだ。そのためか、他の世界線より幾分か『人当たりのいい』性格である。アパパネの教育の成果であろう。また、史実でのライバルでもあるゴルシとの仲も悪くない。

 

「そうか、記憶を得た後の君の走る理由は……あの子のためか」

 

「……ええ。実家の父が彼女の出資者であった関係で、以前から――……」

 

意外なつながりだが、ジェンティルドンナはこの時点で、疑いようのない実力者に飛躍していた事(実はのぞみが腕試しした日からはそれほど経っていない。その僅かな間に『覚醒イベント』があったのが窺える)が示される。彼女はこの時点で『トリプルティアラの継承』を確信していたが、その証明とも言える『黄金色のオーラに付随する青白いスパーク』はウマ娘の実力にある『壁を超えた』事を否応なしにエアグルーヴに突きつけ、エアグルーヴはなんとも言えぬ気持ちにさせられるのであった(当代の『女帝』という自負があったからか?)。

 

 

 

 

 

 

 

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