ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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アオハル杯編です。


第百七十二話「ルドルフの意外な一面、アオハル杯に向けて」

――シンボリルドルフは生徒会の退任後は卒業を待つだけの身となり、はっきり言って、暇であった。その時間を使い、タマモとオグリがどこまで歴史を変えたのか。それを確認した。オグリの現役期は生徒会長への就任から間もない時期でもあり、現在より遥かに多忙であり、あまり二人の動きを観察できなかったからである――

 

 

――ある日の野比家の一室――

 

「なるほど、史実で負けたレースのいくつかをオグリは覆している。クリーク。君は当時、どう思った?」

 

「あの時は勝ちを確信したレース運びをひっくり返されたので、とても考える余裕はありませんでした。ですが、今なら言えます。オグリちゃんは……ブライアンちゃんの『力』を逆転の切り札に使ったんですね」

 

「そうだ。その時の君には『オグリでない誰かに抜かれた』ような感覚だったというが、それは『現在の』ブライアンの幻影をオグリが『纏っていた』からだろうな。……全盛期の奴の力をオグリが師弟関係故に手に入れていたなら……君らの現役期であれば、文字通りの最速だ。瞬間的には、絶頂期のタマモよりも速いだろう」

 

「あの時…、『黒鹿毛の誰か』に抜かれたと思ったら、オグリちゃんだった時、私は自分の正気を疑いました。今なら、その後姿がブライアンちゃんと分かりますが、あの時は……」

 

「映像でも確認してみたが、ヤツは君が先頭に立ち、自分が遅れる展開を敢えて『再演』した。それで、君が勝ち誇った瞬間、ブライアンから借りた『力』を解放して、君を抜き去った。オグリ本来の走りではない『何物も喰らい尽くすような』もの。あれは……ブライアンの全盛期のそれだ。それに、イナリはよく喰らいつけたものだ」

 

元の世界で配信されている『過去のレース』の映像を改めて再生してみる。史実では、イナリの勝利である『ある年の有馬記念』。オグリは一見して、ペース配分を間違え、失速したかに見える。だが、クリークが勝ち誇った微笑いを浮かべた瞬間、オグリはこういったという。

 

 

『クリーク、君は忘れたようだな?私が怪物と呼ばれている事を…な』

 

オグリかしらぬ強気の、なおかつ挑発的な一言。その一言と共に、オグリは『怪物』として、クリークを一瞬で抜き去った。走法がオグリ本来のものとは異なるものに変貌し、周囲を萎縮させる圧倒的な何かを放ちながら、オグリはスーパークリークを置き去りにしたその一瞬、クリークは『オグリでない誰か』(ナリタブライアン)の姿を見た。幻は一瞬であるので、本来の勝者とそれに次ぐ順位のイナリとクリーク、それと、観客席のルドルフ以外には『見えなかった』。

 

「……あの時の君は絶望感に押しつぶされそうな顔をしていたよ、クリーク」

 

「ええ。勝利を確信した状態から、全てをひっくり返されましたから。それも、今から考えれば、とんでもない手段を使われていたとは……」

 

――弟子からの借り物とはいえ、当代最強を誇っていた『領域』を発動させたオグリが劇的な勝利を収める様子に映像は移る。イナリとの壮絶な叩きあい。ヒートアップする実況、放心状態のクリーク、他を置き去りにし、壮絶に競り合う二人。史実の役の片方が置き換わっただけだが、それでも、歴史に残る競り合いであった。帳尻合わせか、イナリはこの激闘で完全に『当代最強』の一角という評価を得たし、オグリはこの勝利で『怪物は衰え知らずか?』と評されていった。逆に、史実のオグリの順位にクリークは『置かれる』こととなり、心がこの時は折れかけた。その様子が映る――

 

 

「あの時は心がダメになるところでしたよ…。どんなに努力しても……作戦を立てても、バケモノ達に上回われていくんですから」

 

クリークは『今だから言えますが……』と前置きした上で、その時の絶望感を口にした。史実でも負けているが、それはイナリと競り合った末の結果である。だが、オグリの切り札により、より悲惨な結果に変わった。もっとも、帳尻合わせで彼女の現役期間も延びているが。

 

「仕方あるまい。オグリはやり直していた状態なのだ。引退した時の精神力を持つ状態で最盛期の戦いをしていたのだから、バフがかかっていない君では競り合うのは無理だ」

 

オグリは史実より(ちょっとだけ)良好な戦績を残し、ターフを去った。強さ自体はブライアン以降の時代においては『上の下』と評されるが、人気度はあのハイセイコー(現役時代)に匹敵した。引退直前の時期のグッズの売れ行きは極めて絶好調であり、現在のテイオー、ブライアン、マックイーンの三人を合わせても及ばないとされる。その点では、ルドルフを遥かに超えている(現役時代のルドルフは『ヒール』じみた扱いであり、大衆人気は意外となかった)。

 

「君は私の現役時代と立場が似ていたからな。あの時は憔悴ぶりに気を揉んだが……」

 

「ありがとうございます。まさか……オグリちゃんとタマちゃんが…」

 

「このことは部外秘だ、クリーク。いらんパニックを招くからな」

 

「でも、そうなると、改変前の記憶が残っているのは?」

 

「ある意味では謎だ。だが、オグリの望む結果にはなったのは事実だ。それで生まれた関係もある」

 

歴史改変がごく個人的な範囲であることや、それで良化したもののほうが多いため、ルドルフは容認するようだ。特に、ブライアンの周囲へのあたりが良くなったのは、ルドルフとしても『良い変化』であるからだ。

 

「問題はこれからだ。テイオーがこの先は私の後継者になる。それにあたっての障害は排除しなくてはならん。テイオーも、実家はそれなりの資産家だ。故に、それなりの誹謗中傷は生ずる。テイオーは今しばらく、現役を続けるのがいいだろう」

 

ドリームトロフィーは『単なる引退ウマ娘の福利厚生費の確保のための興行』という批判が強いため、シンザンはその改革に乗り出している。ルドルフも現役時代の強さを未だに求められるので、色々と批判があるのは承知している。故に、波紋法などで体を『全盛期の状態』に戻す措置を講じている。もちろん、テイオーも史実通りの勝数での引退は望んでいない。

 

「常に全盛期の輝きを求められるのも厄介なものだ。私や君らは『一時代を作った』ウマ娘だ。故に、衰えは見せられん。それも困ったものだよ」

 

ルドルフは年齢的に『レースから真に離れ、シンボリ家を継承すべき立場』なのだが、世間がそれを絶対に許さないため、結局、シンボリ家は後々にシンボリクリスエスを当主に添える。これはシンボリ家の正統な次世代にシリウスやルドルフ、クリスエスに比肩しうる才を持つウマ娘がいないためである。メジロ家も史実通りに『メジロベイリー』を最後に、才のあるウマ娘が生まれなくなる。従って、メジロ家が名実ともに(生え抜きの力で)栄華を誇ったのは、この時代が最後になる。

 

 

「本来は私は家を継がなくてはならん。だが、世間はそれを許さんだろう。タイシンは『完全に引退する時』を気にしていたが、一時代を築いたレベルでは、完全な引退は許されん。何かしらの形で走り続ける事になるだろう」

 

ルドルフはテイオーとツヨシ以外にめぼしい子供を儲けられなかった(正確には、ヤマトダマシイという有望な産駒がいたが、事故で夭折した)前世がトラウマらしく、今後もレースをする側であり続けることを示唆する。ルドルフ自身、天賦の才に恵まれすぎたがため、指導者には全く向いていない。これは種牡馬としては(テイオーとツヨシを儲けた以外は)精彩を欠いたことの反映であろう。実際、他のスポーツでも『名選手=名監督ではない』という図式は常識である。これはおそらく、自分の才能と身体ポテンシャルで成り上がったタイプのウマ娘(ミホノブルボンも該当する)に共通する弱点だろう。

 

「私はトレーナーや解説には向いていないからな。それもあって、『完全に一線を退く』ことはできん。つぶしが効かん身も辛いものだ」

 

ウマ娘は完全引退後に家業を継ぐケースもあるが、性分が家業に向かないことも多い。ルドルフは事業家などの才はあるが、世間はそんな姿を見たくはないだろう。その兼ね合いで、ルドルフは家をクリスエスにいずれは任せ、自身は(前世の記憶の覚醒で『選手としての血』が騒いだのもあり)走り続けることを決めている。『皇帝』の異名を持つのも辛いのだ。

 

「事業家にならないので?」

 

「世間はそれよりも、私が後進の指標になるのを望んでいるだろう。とはいえ、理事職も柄ではないが、家の立場上、引き受けなくてはならんのがな」

 

ルドルフは大学卒業後は理事職が既定路線かのように扱われているが、本人は走り続ける事を既に決めている。

 

「伊達メガネも大学入学後はやめようかと思っている。大学に入れば入ったで、選手としての実績も一定程度は必要だからな」

 

ルドルフは伊達メガネをしていたが、大学入学後は止めるつもりである事、大学在学中にも、アスリートとしての実績は一定程度が必要であることを語る。彼女自身がドリームトロフィーを蹂躙したことで、それ自体の体制が大きく変わろうとしているが、全員が(ヒトで言う)大学生の頃まで、ピーク時の能力を保っているわけではない。例えば、サクラチヨノオーは衰えが顕著であったため、既にアスリートの一線から遠ざかっている。史実で早期に引退した者に見られるケースだ。史実ではナリタタイシンも(競走能力を失うレベルの)怪我で引退を余儀なくされているように。

 

「こちら側で悲劇的結末を迎えた者は我々の世界でも似たような結末を迎える。トレーナーの介入がない限りは。それは極秘事項だ。ライスやブルボンなど、その因果に従えば、怪我をすれば、もう復帰はできんことになるからな。タイシンもそうなる未来があり得る」

 

「そんな……!」

 

「だからこそ、今後は多少なりとも、史実に抗う道を選ぶ選択肢が必要になる。アスリートとして、不完全燃焼で引退せざるを得なくなるケースへの救済として」

 

誰しも、ルドルフのような円満な『終わり』を迎えられる訳では無い。どのスポーツでも同じだ。だが、個人単位で満足のいく終わりを迎えられるのなら?その『もしも』を叶えられる手段があるのなら?

 

「こちら側で実在した競走馬の転生が七割ともいう統計が出た以上、『もしも』が成立していいはずだ。そうでなければ、ドゥラメンテなど、引退して数年で何かかしらの重大な何かが起き得ることになってしまう。エアグルーヴが聞けば、卒倒間違いなしだ」

 

ルドルフは自分なりに、『一族に引かれたレールから踏み出す』つもりのようだ。

 

「オグリにも話してある。問題はラモーヌだ。史実では繁殖相手だが……どう切り出すべきか…」

 

ラモーヌ相手には怖気づくあたり、ルドルフは恐妻家の素質があるようだ。

 

「ラモーヌちゃんには、シービーちゃんが話すようです。あの子なら上手くできると思います」

 

「た、助かった……」

 

本音がポロっと出る。さすがのルドルフも、史実の繁殖相手であるメジロラモーヌ相手では逆に圧され気味で、強く出られないようだ。そこは史実に近い要素と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘世界。アオハル杯が第三戦を迎えようとする頃には、ディープインパクトとハーツクライがシニア級に進級し、オルフェーヴルがクラシック級に進んでいた。オルフェーヴルは『次期三冠は間違いなし』というほどの輝きを早くも見せつけ、ウインバリアシオンがそれを阻止しようとしている。だが、彼女にはそれは叶わない。ゴルシ、ドンナ、ジャス、ナカジマはウインバリアシオンの精神バランスの悪化を懸念し、ブライアンの姿で過ごしているのぞみに相談を持ちかけた――

 

「ウインバリアシオンか……。オルフェーヴルの影に隠れるの、どうあがいても絶望レベルで決まっとるからなぁ」

 

「それは御本人は信じようとしないでしょうし、私たちが言ったところで、他人の言う事など……と梨の礫でしょうね」

 

「お前ら、よってかかって、当代最強の一角だもんな。それも因果率の領域で」

 

のぞみAのいう通り、この場のウマ娘たちは因果律の領域で栄光が約束された者。GⅠを最低でも一勝する。ナカヤマフェスタは凱旋門で二位を取れることが決まっている。

 

「私はGⅠを一勝こっきり。子供も走んねぇことが分かってるから、選手を続けていくしかねぇか」

 

ナカヤマフェスタはシニカルに笑う。種牡馬としての成績は梨の礫であったことの記憶が宿ったため、ウマ娘としても『トレーナー業と無縁である』事を悟ったらしい。

 

「私は家を継ぐでしょうが、レースは個人的に続けていきますわ。いずれ、出会うでしょうし。あの子と」

 

それは史実で娘である『ジェラルディーナ』のことだが、彼女は母親より気性が荒かったため、エリザベス女王杯が唯一の勝ちとなっている。ウマ娘として身内になるとは限らないが、前世で『腹を痛めて産んだ』子供なのには変わりない。会うことを楽しみにしている様子を見せた。

 

「なるほどな。あんたも人の子ってヤツか」

 

「ふふっ、記憶が宿れば、必然的に気になるものですわよ」

 

ジェンティルドンナはこの時にはゴルシの要請を承諾しており、プリキュアの誰かとの入れ替わりを予定していた。ジュニア級を終えたら、数ヶ月の空きがあるからで、その期間を利用する(対外的には『ゴルシの誘いで合宿』という方便にするという)。タイムマシンの仕様が前提条件だが。

 

「それはさておき、あんた。ブライアンの頼みを何故、引き受けた?改めて聞いておきたい。アンタにメリットはさほどないはずだ」

 

「後輩にはそう言ったけど、無償の人助けって、今の若い子は嫌がるじゃん?そう言っとかないと、大人ぶれないからね」

 

「方便と本音ってヤツか。大人ぶる事は必要なのか?」

 

「我を張り通すべき時ってのはあるけど、組織じゃ疎んじられる。とんでもない実力をひけらかすと、年寄り連中には疎まれる。組織での処世術ってヤツ。後輩もわかってるさ。世の中、本音と建前ってのがあるってのは」

 

ナカヤマフェスタにそう答え、建前上、本心とは逆の事を言わないとならない時もある。人間の倫理感は世代がずれたら、全く異なる事がある。例えば、バブル景気を若い頃に体験した世代と、それが終わった後に生まれた世代とでは『買い物の仕方』が異なるのは有名だが、戦前世代と戦後世代の倫理観が180°異なることも歴史的事実だ。

 

「いいのか、お仲間相手に、そんな高度な会話しちまって」

 

「その子、元々、フィギュアスケート選手でね。大人の世界を見てきてる。現役ん時のあたしよりよっほど、ね。まぁ、偶には憎まれ役もしてみせなきゃ、軍で大人扱いされないんだよね。先輩みたいにさ」

 

本音と建前。プリキュアには無縁かもしれなかったが、日本系の社会で生きていくには必要なスキルである。のぞみも、ほまれとの会話で『大人としての方便』と『個人としての本音』をそれぞれ別の時に話した事を明言した。

 

「大人、か。ルドルフ会長も昔、オグリ先輩が現役ん時、オグリ先輩に面と向かっては『中央を無礼るなよ』とか威圧したのに、その裏じゃ、協会に頭下げてたって話だしな」

 

ジャスタウェイが口にしたそれは、ルドルフがオグリの現役時代のこと。彼女は裏で尽力したが、協会はオグリの現役中に規則を変えなかった。だが、変えたら変えたで、その制度に値するウマ娘は何世代も現れず、その恩恵に預かった最初のウマ娘である『テイエムオペラオー』はその芝居がかかった物言いが『生意気だ』ということで、大人の反感を呼び、本人はG1を何勝もしているはずが、人気は意外なほど低い。故に、協会は早々にオペラオーに(スターとしては)見切りをつけている。

 

 

「しかし、変えたら変えたで、オペラオーさんはあの物言いが災いしたのと、メイショウドトウさんしか太刀打ちできない事から、人気は意外に無く、協会は今が絶頂である『父上』(ディープインパクトのこと)にスター性を求めている……皮肉ですわね」

 

「ディープは偉大だが、それで後継ぎと目されてた『コントレイル』が重荷を背負う事になるんだから、可哀想と言えば可哀想だぞ「

 

「コントレイルはマイラーが本質なのに、三冠を取ってしまった。それが不幸とも言えますわ。私もジェラルディーナのことで、父上と似たような事を味わせてしまったので、あまり言えない立場ですが……」

 

 

ジェンティルドンナは競走馬としては一流でも、繁殖牝馬としてはいまいちパッとしない史実の反映か、ウマ娘としては『個人では最強でも、後進の育成には不向き』という弱点を持っている。また、ジェンティル自身も『傲慢不遜そうな物言い』から、強さと反比例して、大衆人気はさほどではない。それを実は気にしていたらしい。

 

「あんたも実は気にしてたのか?」

 

「ええ。悪役令嬢キャラで定着しそうなのは、流石にちょっと……」

 

本人自体は品行方正、正統派の令嬢なのだが、髪形などから『悪役令嬢っぽい』と評判のジェンティルドンナ。

 

「こうなれば、もっと実態を見せなければ……」

 

「あんた、うっかりで鉄アレイをひん曲げるとか、砲丸投げの砲弾を圧縮するなよ、人前で。じゃないと、ますます世間にブルられるぜ」

 

「然り」

 

「頼むぜ~貴婦人サマ」

 

「うぅ。鉄球が柔いのがいけないんですの………」

 

「ダートの連中でもできない事を平然と言うんじゃないぞ、ジェンティル…」

 

この時点で、ジェンティルドンナのパワーは芝適性のウマ娘では間違いなしの最強クラスである。とはいえ、ゴルシ級の体格など持つ相手には、普通に当たり負けする。ゴルシがすごいのか、ジェンティルの鍛錬不足かはわからない。

 

「で、アオハル杯だけど、あたしらは中長距離で出番がありそうだよな」

 

「マイルはオグリさんの得意な距離だし、ダートはイナリさんがいるだろ?……あれ、長距離はクリークさんがいるだろ?」

 

「クリークは同世代のステイヤーじゃ速いほうだが、相手が『90年代半ば以降の高速馬場に慣れきってる』場合は不安があるって、ルドルフが言ってきた。外国産種牡馬が台頭した後の世代の連中に、クリークがトップスピードで太刀打ちできるか。それが未知数なのは事実だしな」

 

 

アオハル杯第三戦のエントリーはルドルフをして、意外に悩まされるものである。平成三強、とりわけスーパークリークはスタミナ自慢で鳴らしたが、トップスピード自体は同時代で『傑出していたわけではない』。無論、そんじょそこらの凡百のウマ娘よりはまだ速いが、相手が『サンデーサイレンス旋風以降の時代の競走馬の転生』であった場合は未知数としか言えない。例えるとするなら、カウンタックとフェラーリF40で速さ比べをするようなものだ。

 

「ルドルフも頭が痛いところか」

 

「それに、クリークは全盛期に戻った体を慣らす時間があまり確保できないそうな。このご時世だろ?実家の託児所が繁盛してるみたいでさ」

 

「あの方のご実家は託児所でしたわね…。迂闊でしたね…。彼女がご辞退なさった場合は?」

 

「お前に白羽の矢が立つ可能性がある。お前のことはノーマークだろうから、出し抜ける可能性は充分だ」

 

「ジュニア級の辛いところですわ、それは」

 

「とはいえ、そうなれば、来年以降の狼煙にはなると思うぜ?同期で、お前とまともに戦えるのは、あたしとヴィルシーナくらいだろうし」

 

「チームファーストの皆様方に思い知らせる事ができそうですね。目に物見せてあげたいものですわ、あの方々に」

 

と、意気軒昂のジェンティル。ジュニア級は有望株でも、年上から侮られる事がある。だが、それこそが隙である。王者となる未来が約束されている以上、チームファースト、何するものぞという感じである。

 

「あたし(ブライアン)は徹底的にマークされそうだなぁ」

 

「馬群に埋もれさせるか、コーナーの位置取りを失敗させる作戦に出るだろうな。タックルの受け流しはできたっけ、お前」

 

「軍で訓練は受けてる。とはいえ、実戦はあまり。あたし、最近は防御に回る前にケリをつけてるからさー……。悪いけど、精度上げたいから、特訓につき合って」

 

「よし、コースの使用許可はトレーナーに取らせる。適当な奴を併せで走らせるが、スズカは併せ向けじゃないから、呼べねぇ」

 

「ああ、あの子の脚質は『逃げ』だったね。他はサニーブライアンとか?」

 

「セイウンスカイもそうだった気がすんな…。ま、ヤツがいたら、グラスワンダーに頼んで、連行してもらう」

 

と、サイレンススズカはこの時期、作戦は『大逃げ』であり、トレーニング向きの脚質とはいい難いことから、サニーブライアンやセイウンスカイの名が挙がる。そして、外国ウマ娘がジャパンカップに来る時の対策で『タックルへの対処』も課題であることから、一同は共同でトレーニングの準備を始める。その過程で、グラスワンダーにゴルシが頼み込み、セイウンスカイを捕まえてもらうため、彼女が静養明けに伴い、蘇った豪脚を披露。いきなりでわけもわからず、理不尽に鬼のような豪脚のグラスワンダーに追っかけ回されたセイウンスカイの『ふにゃぁああああ~!?』との悲鳴が学園中に木霊したとか。

 

 

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