ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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第六百四十四話「1950年代への序章と、ブライアンの因果への抵抗」


――この数週間は鳴りを潜めている『ころばし屋Z』。その警戒網は引かれているが、探知される事はなかった。自衛隊員(Gフォースの所属)が警戒についているが、ここ数週間は傷が癒えるのを待っていると思われた。つかの間の平穏という奴であった。その間に、日本連邦周りの動きも相次いだ。日本側が大戦型重戦車を用途廃止にするため、自身の最新型たる10式の製造ラインを設ける事を扶桑に申し出る一方で、手っ取り早く調達可能なコンカラーやM103重戦車が重宝されるなど、実情を日本側が把握しきれていない様を晒す有様であった。海では、戦後型の初期世代の護衛艦が順当に大戦型駆逐艦や軽巡を駆逐し始める一方、空母運用の見解での齟齬が問題になるなど、海軍関連のゴタゴタは続いている。超甲巡が『巡洋戦艦』に分類し直された影響もあり、艦隊編成の見直しと超甲巡の戦闘力増強などが決議されていた。元々、水雷戦隊旗艦の予定であったので、純粋な打撃艦としての運用はあまり想定していなかった超甲巡だが、結局は41cm砲防御を当初から備える戦艦を作るのと同等の費用が改修にかけられ、21世紀でも使用に耐える『万能性』を得るに至った。その工事の一部は日本が行うことになり、2018年からの数カ年をかけて、既存艦(極初期艦だが)が改修を受けた。上部構造物のレイアウトは完全に大和型以降の戦艦(改修後)と同一に直され、中央部の水偵用スペースが廃され、艦尾にヘリコプター甲板が設けられ、船体が延長された。船体防御も主砲換装に見合うものへ強化されていく。日本は核兵器の開発が表立っては不可能であるのと、潜水艦の保有数を抑える風潮があるため、水上部隊が決戦兵力と見なされていた。故に、戦艦は弾除け兼客寄せパンダと見なされつつ、整備が継続された。M粒子の存在で『有視界戦闘』が当たり前になったからで、イージス艦などの持ち味が多少なりとも削がれた状態の戦場では、戦艦がそれらの盾になる事が重要であったのだ。特に、史実より頑強な戦艦が跳梁跋扈する場では、大和型とその発展型は『守護神』であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――実際に、M動乱とダイ・アナザー・デイでは、大和型よりも格上の敵艦が現れるのもざらであったので、超大和型の整備は危機感を持って行われ、旧式戦艦の保有枠を潰す形となった。純粋な戦艦は隻数の圧縮と引き換えに、兵力の質で大幅な向上を見た。長門以前の旧式が一掃され、艦の自動化が大幅に進んだおかげで乗員数が減らせたからだ。フェイルセーフ、交代勤務のための要員を入れて、1500~2000人前後で落ち着いた。これは扶桑海軍には大幅な財政的な助けとなった。護衛艦艇の近代化の促進が成ったからだ。問題は洋上航空戦力の再建であり、日本側が攻勢を差し止め続けているのは、予想以上に扶桑生え抜きのパイロットの平均飛行時間が無さすぎていた事、ジェット戦闘機への根本的な世代交代の時代が到来し、旧来よりカリキュラムが複雑なものとした事による適応訓練(既存パイロット向け)に手間取っていたことを懸念してのものであり、その時間稼ぎのために、戦艦が酷使されたのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――M動乱で水雷装備の一切が撤去されていた、扶桑の巡洋艦以下の艦艇は水上艦艇が少ない、二次大戦中のドイツ海軍にすら満足に抗し得ない有様であった。怪異への特化改造が仇となった形であった。結局、既存艦は増加させた航続距離と居住空間を犠牲にしてでも、水雷装備の再装備に追われた。度重なる改造で多くの艦の船体がボロボロとなった事が露見する事態ともなった。結果、M動乱とダイ・アナザー・デイで扶桑の在来巡洋艦や駆逐艦は多くが役目を終え、建造が二転三転していた伊吹型重巡やその更に後継型の巡洋艦、あるいは戦後式護衛艦と交代しつつあった。それらの旗艦として整備され始めていた『超甲巡』は『万能打撃艦とする』という方針の下に大改造と設計変更が施され、実質的に巡洋戦艦化した。それらとの住み分けの意図のもと、大和型の系譜は『重戦艦』と位置づけられ、砲力のさらなる増強のため、1950年を目処に、砲弾や炸薬の改良も模索されている。ミサイル兵装には限界がある上、核兵器が禁忌である日本連邦にとって『戦艦への決定打』たりえない。航空機のジェット化で、多数機による襲撃も難しくなった上、水雷戦も革新政権時代の内規で避けられるようになったので、結局は『戦艦には戦艦』という大艦巨砲主義もいいところな選択肢しかなかったのだ――

 

 

 

 

 

 

 

――この大艦巨砲主義的な施策は、水雷戦に傾倒し、汎用性がない駆逐艦で対空戦を戦わざるを得なかった史実の戦訓を重視した結果であったが、現場の士気を却って下げる有様であった。理由付けであった自衛隊内の内規は2023年の秋に『やむなき事情』を理由に実質的に廃され、水雷戦を遂行する大義名分を得た。これは遠距離から追尾魚雷を撃ち込める事が官僚に周知されたおかげだが、戦艦相手では、複数発を片舷に当てなければ『ダメージにならない』事をオーバーに捉えた者たちが革新政権を利用して生んだものなので、実際は深刻に考えるべきものではなかったのだ。ともあれ、扶桑もこれで水雷戦に障害が無くなり、水雷フェチぶりがぶり返すこととなった――

 

 

 

 

 

 

――史実の逆張りも無理があると判明した後、日本連邦は戦略爆撃に傾倒した。文明の利器とされた『弾道ミサイル』はM粒子で確実性がない上、非人道的との批判が大きいので、軍事的妥協として、富嶽の系譜による直接攻撃が取られた。扶桑では『魔女の輸送手段』と『怪異への大量爆撃』を大義名分に整備されていたが、前者の軍事的意義が薄れたため、全面的に戦略爆撃運用がなされた。魔女たちの思うような戦争は既に過去のものとなり、銃後も巻き込む総力戦となっていたのである。皮肉にも、他世界が介入することで、一つの世界の秩序が様変わりし、その世界特有の異能の立場が悪化するというのは、ある意味、時空管理局がしてきたことの負の側面の表れであるので、時空管理局がそれまで感じたことのない罪悪感を強く感じることとなったが、ある意味では、現地の状況を一握りの超人の異能頼りの状況から『進歩させる』ことでもあった――

 

 

 

――日本連邦、とりわけ日本は扶桑向けの軍需物資の製造に四苦八苦していた。需要があまりに多すぎたのである。前線には九九式短小銃以前の旧式兵器が残置していた。扶桑は弾丸の消費量の極度の増加を恐れ、歩兵銃の自動小銃化に消極的であったが、結局は歩兵火力の増強を大義名分に緊急で執り行うこととなった。自衛隊の余剰品の供与などで第一陣を済ませるとなっていたが、扶桑の兵力が(国家総力戦と遠征前提の軍隊であったので)自衛隊の数倍以上であったことで予定が狂ったのである。この問題も、扶桑の戦争の長期化の原因であった。前線で重宝されたのが『M1カービン』であった。無論、鹵獲品の再利用であったが、九九式以前の旧式小銃では打ち負ける局面が多かった陸軍の歩兵部隊に好評であった。自衛隊式の小銃は百戦錬磨の精鋭に優先配備とされた。自衛隊式の小銃は口径が縮小(NATO規格の口径の縮小による)しているため、扶桑の部隊に不評であったのも、要因であった。M1ガーランドのコピーたる『五式自動小銃』が闇に葬られる代わりに、その遺児と言える64式小銃とその後継者達が有坂銃の血統を継ぐボルトアクション式小銃を檜舞台から退場させ、扶桑陸軍の近代化のアイコンとされていく。歴史的には正しいわけだが、開発者達は『日本製のライセンシーに甘んじるのか』と大いに落胆したという。しかしながら、日本の近代銃器は基本的に欧米製に比して及ばない点が多かったのも事実であり、旧軍式の古い自動拳銃を駆逐する狙いがあった一面はあるが、扶桑の軍需産業に自衛隊の採用している銃器の供給のバックアップ的役目を担わせたいという政治的思惑が主な理由であった。また、日本側は『古株の魔女を中心に、作動が確実である欧米製の銃器を自主購入する風潮がある』事に目を回す羽目になるなど、将校文化も日本連邦化で『規格統一』を大義名分に鳴りを潜める事になるが、黒江達は『特権』により、自主購入の武器をそのまま使用し続けた。評議会の直属であるのと、使用しているものが『現用品であった』ためであった――

 

 

 

 

 

 

 

――実際、64Fが常設編成化された直後、日本側が装備の確認を名目に、査察を入れた事があるが、自衛隊よりも進んだ装備がズラリと武器庫に揃っている様に圧倒され、担当者はショックで寝込んだという。拳銃一つとっても『現用品』が並んでいたからである。結局、財務省は(自分達が矢面に立つことを示唆され、青ざめたため)扶桑の在来装備を『数合わせ』の名目で持つことを容認しつつ、近代化を推進させた。その結果、1940年代の水準を超越する科学で構成された武器や後世に普及するはずの医学がなだれ込むこととなり、パラダイムシフトが起こった。人々の思想も大きく変化してしまい、扶桑で軍人が(無条件)で名士扱いされることは(よほどの功績がなければ)ほぼなくなった。その一方で、戦争中であるが故に、人手がいるという矛盾が扶桑を苦悶させた。それが一騎当千の猛者を求める風潮を加速させてしまうという悪循環となった。同時に、軍人の思想面の統制を強固にした結果、横の繋がりが希薄になってしまうという問題が起こった。日本型組織の悪弊を第三者として見てしまった彼らは為す術無く、結局、黒江たちと親交のあった者たちを地域防衛の重要ポジションに昇進させ、64Fの担当地域の防衛を補助させるしか対応法がなかった。場当たり的であったが、横のつながりが重視されてきた時代の組織を『自分たちはそれで負けた』という理屈でいじくり回したツケであった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、西洋の合理性は日本系民族には必ずしも適応しないわけである。特に魔女たちには。彼女たちはダイ・アナザー・デイ以降は肩身の狭い思いをしており、クーデター以降はますます追い込まれていた。太平洋戦争を名誉回復の最後の機会と考えていた『年長の魔女達』は前線で名誉の戦死を遂げることで国家への禊をすると公言しており、その犠牲で魔女への視線は良化していったのである。とはいえ、組織としては『教官をするべき世代の古参が死んでしまうと、今後に差し支える』のも事実である。だが、扶桑の社会は『前線勤務以外は冷や飯食い』扱いの風潮があり、扶桑の後方任務環境は(国情に見合わぬほど)悪かった。坂本は(前世の教訓もあって)この改善に心血を注いだ。1949年次では、輜重科軽視は(史実の敗戦のメタ情報により)改善され始めており、輜重という言葉も使われなくなった。自動車化の急激な進展(機械化)により、必要人員の教育の手間がかかるようになったのと、余剰の軍馬の再利用法に難儀する姿が見られるようになった。適齢期の軍馬は何百万単位でおり、各地の牧場の採算にも関わる問題であったからだ。結局、軍馬を完全に一線での任務から退けさせるには、しばしの時間を要したという。坂本はこの問題にも取り組んでおり、軍馬種の保護(日本では、1950年代までに『需要の消滅』で日本軍が使役していた軍馬は完全に姿を消している)も熱心であった――

 

 

 

 

 

――軍馬の需要の減少に伴い、軍の牧場は大半が数年の間に民間へ売り払われ、馬の育成は農耕馬なり、レース用サラブレッド種の育成に切り替えられた。とはいえ、『適齢期』にあった育成済みの個体は領収され、1950年代までは軍役にある見込みであった。仕方がないが、年代的に正規の運転免許証を持つ人間は少数派であり、兵士には『自動車すらも、軍で初めて見る』という者もいた時代であったからだ。陸軍部隊の機械化も装備への要求仕様などが戦後の水準と化したこともあり、予定より大きく遅延。コンバットアーマーが戦闘ヘリの代わりに配備される事もザラであった。コンバットアーマーは概ね、21世紀級の技術であれば、動力部などの整備も容易であったので、政治的にはMS(核融合炉)より好まれた。その内、ラウンドフェイサーは早期に練習機に回され、第一線にはより高性能なヘイスティなどが回されるようになっていった。MSより簡易な構造かつ、短期間での量産が容易であった事が理由であった。MSを中戦車、あるいは重戦車と見なした場合、コンバットアーマーは戦闘ヘリ(の手足が生えたようなもの)にあたるからだ。怪異への攻撃を回避でき、通常兵器より遥かに有効な攻撃が可能とあれば、陸軍が軽戦車を捨てるに値したのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、日本の過去(大日本帝国)と異なる面が多いのに、陸海軍の有力将校や官僚、政治家の多くを『戦後の理屈で罷免し、公然とリンチ、政治的懲罰での蟄居、あるいは国外追放した』結果、扶桑国家は機能不全寸前の有様と成り果てていた。昭和天皇も(異世界での自分への)批判の嵐に嫌気が差し、退位を口にしだす有様であった。日本はこれに『史実で戦後に国家を主導した人間らを指導的立場に就かせる』という妥協で合意し、吉田茂や池田勇人などの『史実戦後の指導者』達が1946年以降の扶桑国家の舵取りを行っていった。ただし、軍事的には、史実の黎明期の自衛隊で指導層であった世代の『佐官級の将校ら』は年齢的にまだ若いために、引き続き、戦前からの将軍と提督が指導層であり続けた。黒江たちが(戸籍上の)年齢に見合わぬ高階級であるのが指導層に容認されているのは、この人材の空洞化による『現場の統率力に優れ、なおかつ、軍の広報活動を容認する度量のある者』がほとんどいなかった(扶桑軍の将校は武人気取りが多かった事が理由)事が数年のうちにことごとく、国家にマイナスに作用した教訓によるものだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――黒江たちのようなお気楽な勤務態度が是とされたのは、『戦前の軍人』の雰囲気を日本人が蛇蝎のごとく嫌った事によるものであった。転生で現代人そのものの気質を持つ黒江たちは日本連邦の誕生で『異端』から『超エリート』に立場を逆転させた。また、国家権力に属しつつも、反骨精神を持つ事が日本側に高く評価されたのである。転生者故の苦悩はあれど、それを表に出さずに国家に献身する。それを山本五十六や吉田茂は絶賛し、後援者となった。後に、プリキュアのリーダー戦士であった経歴を持つのぞみが『素体の肉体をも変化させて転生した』後には、転職の仲介を行っていた。日本の官僚の暴走でそれがご破算になると、戦争を言葉でちらつかせ、日本に国家賠償を請求した。日本は『大和型による東京の壊滅』を恐れ、この請求を二つ返事で呑んだ。自分たちに非がある上、プリキュア経験者の夢を潰したというセンセーション全開な話題を大衆に提供してしまったことで、政権が転覆することを政府と与党が恐れた事、扶桑の国家総力戦前提の巨万の兵力を撃退できる力は三自衛隊にはないし、内戦と判断した在日米軍は(米国に都合の良い政府が作られるのを期待して)静観するという予測があったからである。実際、自衛隊の装備は近代化を施された戦艦の重装甲には通用しないという試験結果も出ていたので、それを重く見たのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――自衛隊も内部では、扶桑が別世界(実際は(自分たち日本の未来だが)の技術で改修した大和型や、その技術で新造した後続艦たちは『ほとんど、宇宙戦艦ヤマトじゃん』と評判であった。列車砲の直撃すら耐える耐久性は史実のどの戦艦の比ではないからで、航空機も『メタ情報で戦後第四世代機を用意できるのに、妙にマニアックな機種がエース用にされている』ので、空自の隊員たちで噂されていたが、実際は黒江や、64Fのスポンサーののび太達が往年の名作『エリア88』の大ファンであったためであった。その縁か、64Fが戦間期に参加した飛行祭で『漫画に登場したのとほぼ同様の塗装とマーキングを施した機体』を展示したところ、大好評。その飛行祭以後は公式にコラボし、扶桑軍はけっこう儲けたという。その稼ぎは戦争中の機種更新の一助となったのは言うまでもない。自衛隊は『欧州機も局地戦闘機として採用する』財力のある扶桑空軍を羨まんだという。実際、紫電改や月光などを代替する局地戦闘機の地位は1949年当時には、ドラケンや震電改一がその座にあったが、日本財務省は『欧州機は航続距離が短いから』と言うことで米軍機への交代を打診したが、ドラケンは(設計年度からすれば)オーパーツ気味の飛行性能であり、(1940年代の情勢として)最高性能に等しい。機体自体の航続距離は局地戦闘機には重要事ではない(扶桑は空中給油機を余剰の富嶽の転用で多数を持つ)のと、ドラケンの整備タイムはジェット戦闘機史上屈指の短さで知られており、国家総力戦を現在進行系で遂行中の扶桑には願ったり適ったりであったので、F-15とF-14の配備促進で妥協された。海上兵力の(ミサイルの必中性が担保しきれない場であるので)ミサイル装備の補充問題は弾薬製造工場を艦内に持つ超大型補給艦を建造することで折り合いがつけられた。本来、弾薬補給は港に寄港して行うか、後方で補給艦から行うが、扶桑は(怪異との戦闘で)即応弾薬を使い果たす場合を想定していた。その兼ね合いで、補給艦を艦隊に帯同させる事が多かったからであった――

 

 

 

 

 

 

 

――太平洋戦争も三年近くが経過していたが、日本連邦は足並みが揃わずにいた。攻勢にアレルギーがある日本と、短期決戦を目論んでいた扶桑とは、そこが相容れない点であった。ただし、内陸に引きこもっての持久・ゲリラ戦は双方で合意されており、ゲリラ戦で撹乱させる戦法で消耗させるという方法は好まれた。米国系の国家は正規戦に強くとも、ゲリラ戦では意外に脆い。史実のベトナム戦争での『敗因』でもある。プリキュアたちにゲリラ戦をさせ、拠点の破壊工作をさせていたのも、その一環であった。世界最高峰の戦艦部隊を誇る扶桑だが、陸上では物量不足と政治的理由故に、超人たちの活躍に依存する有様であった。本土の部隊の出征に日本の政治家が拒否反応を示したのである。これに扶桑は困った。結果、人員と装備ををちびちびと外地に送り込むしかなく、攻勢どころではなくなったのである。日本の政治家は外地部隊での敵軍の包囲殲滅を考えており、本土部隊の外征までは考えてなかったのである。とはいえ、外地部隊は人員・装備ともに消耗が激しく、補充なしに戦線の維持は不可能であった。このジレンマに、日本は64Fの拡充を認めた。その流れで正式に『グレートマジンカイザー』の配備が通知されたのである。同時に、日本側から『マジンガーZの近代化』が提案された。既に『魔神皇帝の時代』であったので、初期型と言えるZのさらなる近代化は設計年度による機体内部容積の限度もあり、地球固有の技術では限界に達していた。そこで、デューク・フリードから『フリード星の技術で改造する』提案がなされたと通達があった。(Zと言っても、実は二号機であったが)日本向けのプロパガンダも必要であったので、その提案は即決で決まった。既にゴッドスクランダーがZやカイザー、ゴッド用に新造済みであったが、既存のジェットパイルダーがホバーパイルダーの再建でのパーツ取りで使用可能な状態ではなかったのを理由に、パイルダーも(カイザーパイルダーのライン流用で)新造される見込みであった。ロケットパンチも(アトミックパンチのライン流用で)改良されることも決まり、扶桑はこれを『マジンガー改造計画』と称し、日本向けに大々的に報じてみせた――

 

 

 

 

 

 

 

――Y委員会の会合――

 

「マジンガー改造計画、か。既に魔神皇帝があるのに、わざわざ旧型を改修する意義はあるのか?」

 

「日本から強力な援助を引き出すための道具には使えるだろう?それに、下手なMSよりは強い事には変わりはない」

 

Y委員会の委員(軍部の高官や重臣ら)はかつての元老の代替的な地位を得ていた。間接民主制の悪弊がガリアの醜態で明らかとなったことから、重臣会議と枢密院の解体後、Y委員会がその代替の機関として昇格。実質的に元帥府、枢密院、重臣会議(最後の元老であった西園寺公望の死後に構築された会議システム)の代替の(皇室向けの)設問機関となり、扶桑の舵取りを行っていた。内閣総理大臣は時代的にまだ『Y委員会の決定を民主主義の決定だと演出するための道具』であったということだろう。

 

「兜氏は動いてくれるのか?」

 

「黒江くんが裁可を彼自身に求めてくれていた。Zの改良自体は魔神皇帝の予備機の確保がしたい彼の思惑にも沿うものだ。既に宇宙科学研究所と科学要塞研究所で作業が進展中とのことだ」

 

「これから1950年代を迎えるが、戦争は終わりそうにないな」

 

「本土侵攻は西海岸までと決めているというのにな。日本は過去のトラウマに囚われ過ぎだ」

 

「別世界の我々のミスリードの結果だ。それについて、我々が言う資格はないよ。問題は戦争の終着点を彼等(日本)に理解させなくてはならんことだ」

 

「東まで行けるだけの国力は我々にはない。日本は玉砕を求めるからな、前線に。住民を逃がした上で。やれやれ。兵たちの士気は下がってるぞ」

 

「銃後の視線が厳しいご時世な上、住民を逃がすための盾になって死ねと暗喩されればな。別世界の陸軍のせいだな、まったく」

 

「東條は罪深いことをしたものだ。別世界の我々にすら迷惑をかけるのだから。国外追放を日本が強く求めたはずだ」

 

「子息や令嬢にまで罪を背負わせようとしたのは正気を疑ったがね」

 

「本人の罪は本人が背負えばいい話だからな。一族全体にレッテルを貼るなど、正気の沙汰とは思えん」

 

日本の世論の『史実のA級戦犯連中は一族郎党を路頭に迷わせて、血を絶やせばいい』的な論調に呆れる扶桑の重臣ら。とはいえ、その血筋と言っても、子孫は普通の暮らしをしているのも事実だ。日本は太平洋戦争期の指導層に神経過敏な人間が多すぎるのだと嘆息の彼等。その一方で『戦中の戦死で英雄視されている』山本五十六や山口多聞などの例がある。日本も『戦犯の同位体は中央に置かないでくれ』と要望する一方、山口多聞を連合艦隊司令長官にするように圧力をかけたので、扶桑の人間らからは不興を買っていたりする。日本が目の敵にしていた東條英機にしても、事変での失態で、(扶桑では)早期に総理大臣を辞していたからだ。また、扶桑では早期に電探の開発と整備はなされていたのにも関わらず、日本が戦後型に刷新させたのには反感も強かった。海軍軍令部の参謀たちを公然と集団リンチする風潮も容認されており、それもあって、扶桑軍の軍紀は乱れに乱れた状態であった。憲兵隊の『行政警察権の剥奪と組織縮小』に伴う混乱もあり、64Fの幹部らに彼等の任務を代行させる権限が与えられるなど、大混乱。結局、戦略的にアテになる部隊が限られた数になっていたのもあり、装備の刷新が優先された。それは陸軍の全軍の帳簿に至るまでとされたため、攻勢が全面的に可能となるのは『1953~4年だろう』と見積もられていた。しかもそれは最良の場合。

 

「やれわれ。タイムふろしきで15歳ほど若返らなければ、この戦争の行く末は見れんとこだったぞ」

 

「長老たちはいいが、我々には使命があるからな。やむを得んよ。本来、我々の戦争は1945年に終わるはずだったのだから」

 

Y委員会の委員は長老格以外は戦争の長期化が必至の情勢により、一定の若返りを余儀なくされた事が明確に語られる。黒江たちは肉体のあれこれから『開放』されているのでいいが、高官や高給官僚はそうでないのだ。

 

 

「海軍の魔女には困ったものだよ、井上くん」

 

「情けない話ですが、七勇士が引退した後に集団戦闘を前提に教育させたのが裏目に出てしまいまして。まさか、彼女らが色々なしがらみから解き放たれし存在になっていようとは」

 

井上成美大将は長老格の岡田啓介(元総理・海軍大将)に指摘され、正直に読み違いを認める。

 

「確かに、集団戦の教えは大事だ。だが、戦時には英雄が必要なのだよ。昔の武将の武勇伝のような、な。その点は陸軍のほうが分かっていると言わざるをえん。黒江くんらのほうが生え抜きの海軍士官よりも海軍に詳しいのは、海軍士官の沽券に関わるよ」

 

「申し訳ありません」

 

「事変以来、航空分野で陸軍優位の時代が続いている。だからこそ、七勇士の年少組の成長した『リバウ三羽烏』には期待していたのだがね……」

 

「私の不徳の致すところであります…」

 

井上成美の航空隊整備の施策の弊害が海軍航空の衰勢を招いたのは事実であることから、彼は岡田に反論できなかった。すっかり世間には忘れられているが、黒江ら『七勇士の過半数』は陸軍航空隊の出身なのだ。それに、海軍の関係者の多くはコンプレックスを抱えていたのである。

 

 

 

 

――扶桑は鎌倉の『紅城トワ(キュアスカーレット)の邸宅』で行われた、Y委員会の会合はその日の夜深くまで行われた。会合で取り決められた『1950年代に向けて』との国家運営方針は後日の日本連邦評議会で詰められ、採択される。日本出身者に強力な魔力の素養を持つ者が多く確認されたことに伴い、扶桑は日本出身者を次第に積極的に採用し始め、就労環境の整備に力を入れることになる。同時に旧式の暗号作成機や解読機などの使用が大きく縮小され、21世紀以降のコンピュータ技術が取って代わっていった。また、隊の事務処理などにもコンピュータが使用されるようになった。64Fではダイ・アナザー・デイの当時から使用されているが、他の部隊で使用されるようになったのは、この頃からであった。64Fのみは(幹部層のほぼ全員が転生者であったので)21世紀日本で普及済みのコンピュータをデスクトップ、ラップトップ共に使用しており、南洋の本拠地はコンピュータの使用を前提に建設された。同時に軍全体のネットワークの整備もなされた。M粒子散布下でも使用可能な世代のものであり、この点で既にティターンズ以外のすべての軍隊に優越する状態であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――マジンガーZは既存技術での限度まで改装を重ねた状態の二号機が存在しており、それにフリード星の技術を組み合わせ、性能を更に嵩上げする案が採用され、実行に移されたのは、遠征軍の帰還の目処が扶桑で立った日であった。それはグレートマジンガーにも適応される見込みであった。また、同時に重要事項とされたことに、ゲッター線や光子力と縁の深い生活を一度でも送った者は『肉体的衰えが強く抑制され、外見と実年齢が一致しなくなる』ということの科学的実証が兜甲児や流竜馬らの実例でなされたという報告がなされた。そういうことならば、ウマ娘たちも体質が変化し始めるのでは?とされ、アグネスタキオンがその調査に協力していた。――

 

 

 

 

――アグネスタキオンの調査によれば、『生物学的な意味合いでの全盛期は人間より長いが、魂に刻まれた因果と、当人に課せられし歴史的役目を果たした瞬間、アスリートとしてのピークアウトが訪れる事が判明していた。皮肉なことに、ブライアンのピークアウトのタイミングは複数の世界での記録を突き合わせてみると、『前世で股間接炎を患ったタイミング』と一致しており、タキオンも因果律の存在を確信せずにはいられなかった。それを超えるには、強固な意志力とゲッター線が引き出す闘争心。その2つが必須と結論づけられた。ブライアンは前世の悲しい記憶を得たが故に、前世の自分に縛られぬ道を歩みたいと強く願った。夢原のぞみはその思いを汲み、ウマ娘世界で『ナリタブライアン』として過ごし、ブライアンはその対価として、のぞみの『キュアドリームとしての役目』を代行している。ブライアンは(幼少期は意外と普通の少女だったためか)現役期ののぞみより戦闘狂っぽさは見せるものの、概ね『のぞみがプリキュアであり続けたままで高校生以上になったら?』という仮定の範疇に収まる振る舞いをこなし、ゴルシに関心されていた――

 

「なんで、変身したままなの~?」

 

「同一人物が二人いちゃ、まずいだろう。お互いの外見に多少の差があると言ってもだな」

 

「それで、鼻に絆創膏を?」

 

「これは、私のガキの頃からのルーティンのようなものでな。気にするな」

 

キュアドリームに扮していても、やはり『鼻にテーピング等をする』のは変わりないブライアン。目つきなども(のぞみ本人より)鋭く、纏う雰囲気も(のぞみ本人とは)まったく異なるものだ。

 

「外見にほとんど差はないのなら、こうする以外にないだろう。本当の体なら、高校生なんだがな」

 

理事長との面会を終えた後、学校の休校が改めて決められたので、のぞみBは家に帰る必要がある。家と言っても、彼女はマンションの高層階に住んでいる。これは成人後に独立しても変わりなかったりする。

 

「あなたはどうするの?」

 

「午後からはあんたらの学校の生徒への詫びということで、ライブをせねばならん。私とゴルシはプロだから、心配はいらんぞ」

 

「うーん。私が後で苦労することになりそうだよぉ……」

 

「その時は手を貸してやる。連絡先はかれんに渡してある」

 

「かれんさんに?」

 

「こうして、知り合ったのも何かの縁だからな」

 

 

ブライアンは体を入れ替えていても、そのライブパフォーマンスは健在であった。そのため、のぞみBは引け目を感じているようであった。これは、のぞみAがブライアンに引けを取らないライブパフォーマンスの訓練を積ませられていた関係で実現したものだ。また、真の姿が高校生であるため、かれんとこまちよりも年上であることから、素では、二人へ年上として接している事がわかる。

 

 

 

 

 

 

――遠征の終わりが見えたこの日に、ブライアンはルドルフにメールで『高校卒業後は野比家に居候しつつ、海外遠征に必要な資金を貯める』と明言。ルドルフは『卒業に必要な単位を夢原女史に取らせる気か?』と苦言を呈したが、ブライアンは心境的に『学業に打ち込めない』ため、学業をのぞみに丸投げしてしまったも同然の有様であった。これにエアグルーヴは怒ったが、ルドルフはブライアンを庇い、『父上からの勘当が堪えているんだろう。幸い、コピーロボットの技術の解析が終わり、それを使用できるようになったそうだから、記憶の共有はできるそうだ』とまとめた。コピーロボットは統合戦争の直前までは『未来デパートで普通に一般人が買える』ものであったが、統合戦争の戦禍でロストテクノロジー化していた。それをメカトピア戦役時にドラえもんが地球連邦に提供し、アナハイム・エレクトロニクス社がそれを解析し、再実用化をしたが、ドラえもんのそれと同じ安全性と性能が担保されるまで、本格使用は控えられていた。この時期には、その段階に達したのである。――

 

「会長、よろしいのですか」

 

「ブライアンの望んだことだ、やらせてやれ。それと、君に言わなくてはならん事がある」

 

「なんです?」

 

「ブライアンは凱旋門を目指していた。サクラローレルの運命を変えるために」

 

「どういうことですか?」

 

「サクラローレルはもし、海外遠征で彼の地に足を踏み入れたのなら、そこで彼女の競技生命は八割以上の確率で終わる。……見給え。この資料を。ブライアンが『行く』前にかき集めていたものだ」

 

「こ、これは……!?」

 

「サクラローレルの別世界での顛末に関するものだ。無論、競走馬としてのだ」

 

エアグルーヴは生徒会室の生徒会長用の机に置かれた資料の内容に絶句する。それはサクラローレルが史実でどのような運命を辿ったか。それを裏付けるものだった。ブライアンが好敵手と認めた相手のたどる運命。ドラえもん世界でかき集めたと思われるそれは、ブライアンが『運命の因果に抵抗を試みる』心境になったのも当然と言わんばかりに悲劇的であった…。

 

 

 

 

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