ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百五十一話「1950年代への序章 6」

――扶桑皇国はのぞみの一件を外交問題として扱い、扶桑軍による日本占領をちらつかせることで、日本を外交で屈伏させた。国家総力戦を前提に整備されてきた軍隊相手に、戦後の平時の抑止力を主目的にしてきた自衛隊は戦えない。さらに、日本警察は特殊部隊を除けば、軽武装なので、1930年代水準とはいえ、フル装備の軍隊の相手は不可能である。その事が日本が扶桑に全面的に白旗を上げる理由とされた。以後、扶桑の軍事的要求を日本は断ることが困難に陥り、国内世論との妥協点で『Gフォースの規模を拡大していくから……』とお茶を濁した。のぞみは人事的に腫れ物扱いにされたが、プリキュア戦士であることから、広告塔として活用しつつ、64Fでこき使う事が内々に決議されていた。これは日本側がもめ事を倒閣運動に利用される事を恐れたための措置であり、騒動以後、『64Fに手を出すな』が官僚の合言葉となる。クーデターの鎮圧後に人材の流失で航空隊の平均練度が大きく低下したため、義勇兵と64F頼りという状況の固定化に繋がりかねなかったため、日本はやむなく、『残った精鋭はひとまとめで管理する』方針を堅持し、64Fの補助部隊にそれらの人材をまとめていく。教育部門は通常兵器を拡充する一方、生え抜き魔女の育成は大きく縮小された。魔女の軍付属校が相次いで閉鎖されたためで、結局、付属校の生徒を統合士官学校予科で抱えるしか無くなったりしたため、人件費が却って増大。統合士官学校予科は旧・幼年学校と元の陸海軍の少年飛行兵制度で採用されていた若年層の面倒を見る場所になってしまったというわけだ――

 

 

 

 

 

 

――1945年からは航空兵の入隊時の階級は少尉と定められた。これに古株らは反対したが、自衛隊に合わせる形で改定された。それに伴い、(兵科以外の科であろうと)原則的に士官として遇することとされた。これはダイ・アナザー・デイで日本義勇兵(特務士官出身など)と各国の将校とのもめ事が多かったことの教訓であった。また、ミーナが処罰されたのも、この規定に違反したという扱いで報じられたからである。日本義勇兵は旧軍の出身者が多数派であったので、気の荒い者が多かった。そのため、あちらこちらで魔女の士官が(大日本帝国海軍で兵科士官ではなかった者を)不当に扱ったと、軍本部に通報。結局、彼女たちは事後に『規定違反』として、一斉に処罰された。ミーナ一人を人身御供にするわけにもいかなかったからだ。後出しジャンケンだが、日本義勇兵らは下士官や特務士官の出身者が多く、士官学校卒の正規将校に強い反感を持つ者が多いからで、もめ事を回避するための決定であった。軍令承行令も廃止されたので、士官たちは軍律的根拠を失い、自己弁護もままならず、次々と失脚。海軍航空隊はこうして衰退期を迎えていった――

 

 

 

 

 

 

――逆に、陸軍航空隊系の人材は(撃墜王の存在に寛容であった事から)温存され、過半数が空軍の中枢を占めるに至った。その兼ね合いで、天測航法と空母着艦技能訓練が彼女たちにも課されることとなった。黒江たちの代はそれらを習得させられていた世代であったため、残っていた者は空軍の発足後、全員が中佐以上に特進。黒江たちはその頂点に君臨する『中将』とされた。本来であれば、一軍を率いる事が可能な階級だが(転生者であることから)、一部隊の大隊長に職責はとどまっている。軍のトップエースがことごとく転生者であることは『分散配置案』が不採用に終わる理由付けにされた。未来世界でのロンド・ベルの人材配置を参考にしてのものだが、歴史的には逆ということになる。64Fは実質的に『扶桑空軍唯一の攻勢部隊』として扱われ、酷使されていた――

 

 

 

 

 

 

 

――デルザー軍団との戦闘も終息へ向かい始めていたが、彼等の配下であるナチ残党軍との戦闘は続いていた。航空部隊は『MIG』や『スホーイ』などのロシア系機材も確認されており、反統合同盟との繋がりが示唆された。また、MSはティターンズ、ジオンの混合であった。64Fは(未来世界では)一年戦争直後に建造されたが、その後に失われ、大まかな外装パーツのみが工廠に残されていた『RX-81』をムーバブル・フレームタイプの第二世代MSとして新造し直したものを投入した。配備の方便は『倉庫の肥やしにされていた機体の再利用』だが、実際は新造機である。また、ジオン製の未成兵器にはスーパーロボットが使われた。また、RX-78-7も(フレームに至るまで第二世代MS基準に置き換えた仕様)補充分として回され、一定の戦果を挙げた。黒田が途中で家督相続の手続きのために離脱したので、ブライアンが(キュアドリーム名義で)使用した――

 

 

 

 

 

 

――戦闘も小康状態へ向かったため、現地の復旧作業も急ピッチで行われ、作業用のジム・トレーナーⅡ(古くなったジムⅡを作業用に転用した後の便宜的な名)とガンタンクが資材を運び、ドラえもんが道具で組み立てるという形で、建物を建て直している。オトナ世界と違い、街に古い建物が多く残っているが、これは現地世界の日本軍の記録で『一矢報いた』防空戦の存在が判明しており、日本軍の必死の迎撃で街の壊滅を免れた事が判明している。現地に五式十五cm高射砲が配備されていたり、たまたま、日本軍の中でもっとも良質の機材を持つ部隊が来ていた(機材受領のため)という幸運のためであったという。街の復旧はGフォースの一存で行われており、数日で半分ほどが復旧している。国連の名義で街を封鎖しているが、期日までに事を済ませる必要があるので、Gフォースは攻勢を強めた。だが、ドイツ軍やジオン軍の未成兵器が投入されたため、Gフォースは思わぬ損害を負っていた――

 

 

 

 

 

 

――敵のジオンMSは一年戦争~第二次ネオ・ジオン時代までと、実にバラエティに富んでいた。いずれも多少の近代化をされていたのか、それぞれの公称スペックを上回る能力を叩き出していた。ただし、陸戦である都合上、宇宙ほどの機動性は出せずに終わる機種も多かった。地球連邦軍は陸戦では『核融合炉の誘爆の危険がない』第二世代以前の機体を好んだ。ミドルサイズの機体の配備が進んでいないのもあり、旧世代化して久しいが、スタンダードなジム系モビルスーツである『ジェガン』は未だに、前線で重宝されていた。(小型機は『核融合炉の誘爆の危険が増した』実情が明らかになったのもあり、廃れつつある)とはいえ、導入個体の多くは老朽化しつつあったので、64Fには新造し直したり、近代化改修を施した『過去の試作機』が回されていた。デザリアム戦役で大量に発掘されたためで、せっかくだからと、機動兵器不足を言い訳に、近代化改修、もしくは外見は同じだが、中身が違う機体とする形で新造し直した。地球連邦軍もケチだが、一からの新造では予算を得られない時期である故の策である――

 

 

 

 

 

 

 

――話がこじれた上に、互いの関係がこじれたものは、第三者が何をいっても無駄に終わる。これは複数の事例で証明されている。黒江はブライアンにそれを伝える――

 

「第三者が何を言おうと、無駄になる事はある。如何にオグリがお前の親父に直接言おうと、親父さんは突っぱねるだろうよ。家庭の事情だと言ってな。どんなに目標をはっきり言おうと、親父さんは結論ありきで考えていた以上、相容れるはずはない。第三者が入っても、最悪にこじれた相続問題はいくらでもある。親兄弟だろうが、金目が絡むと『他人』になるのさ。ましてや、お前は医学的に『復活できる』保証はなかった。たぶん、お前がはっきりと目標を言ったとしても、落ち目になったヤツの戯言として切り捨てられるだろうさ」

 

「家の相続が絡むからな。オジキらの入れ知恵もあるんだろうさ。私の『ブランド力』に傷が入る前に……ってな。難儀なもんだ」

 

「アスリートとしての復活を選んだ時点で、お前が実家を追い出されるのは決まってたかもしれん」

 

「……かもな」

 

ブライアンは想定内であるとはいえ、父親との断絶は避けられなかったことは堪えているようだ。ブライアンはあくまで、『アスリートとしての再起を望み、父親は家を継がせるのを優先した。そのことが親子関係の破綻を招いたのは事実だ。ブライアンは勘当の後に実家にあった私物を長妹の『ビワタケヒデ』に野比家のあるマンションに送らせるなど、この時点では、実家の敷居をまたげない身の上であった。

 

「オグリに親父さんの説得を頼んだか?」

 

「彼女に同席してもらったが、親父は聞き入れなかった。それどころか、親父は『君とて、最後のジャパンカップの時は落ち目だっただろうに』と失礼なことを言いやがってな。それで殴っちまった」

 

「親父さんは家のことに他人が立ち入ることを嫌ったんだろうが、21世紀の人間にしては昔気質だな。そういう類は俺の時代だけだと思ったが……」

 

「小金を持ってる家には、こういう揉め事は普通だそうだ。それで、おふくろと親父は大喧嘩。妹達の泣き声でハッとなったが、妹たちがいなけりゃ、どうなってたか」

 

「……テンプレなお家騒動だな」

 

「で、結局、私が現役を続けることを言ったら、親父は『家を継げ!もう諦めろ!!お前はもう終わりなんだ!!』と……。それで……」

 

「出てけと言われて、出ていったと」

 

「ああ…。親父が生きてる内は敷居をまたげない身の上になった。家の私物はタケヒデに送らせるから、のび太さんのマンションの部屋に置かせてもらう」

 

ブライアンの父は娘が再起を夢見ていることを『未練がましい』と切り捨てたが、それが親子関係の断絶を最終的に招いてしまった。結局、娘の意向を聞く前に『結論ありきで決めてしまっていた』事が悲劇を招いたと言ってよく、娘が再起を遂げていく事に後悔を滲ませながら、酒に逃げるようになった。だが、それが大病を招いたのである。

 

「俺も前に失敗したことがあるが、互いに噛み合わん状況で話し合っても、空振りに終わるのが関の山だった。ふとしたきっかけで、話が上手く進むこともあるが、一方が感情的になってる状況では、いくら理屈をこねて説明しても無駄になる。お前も親や親戚同士の喧嘩で見たことあるだろう?」

 

「ああ…。ちょっと違うが、ガキの頃、小学校で。計算機の答えと自分で出した暗算が違うことを教師に責められた事がある。結果は計算機が狂ってたんだが、教師は自分の非を認めなかった。理不尽な事の意味をその時に学んだんだが……親父も?」

 

「人間、結論ありきで、ものをいう奴はいるからな。お前がピークアウトを受け入れて、さっさと引退届を出してくれると思い込んでたんだろうな。で、オグリの言葉も『他人の戯言』としか考えなかった。万一の再起が成った実例が目の前にいたってのにな」

 

 

父親は口に出した後で後悔したような表情をしていたと、ビワタケヒデ。オグリは奇跡を起こした。そのことを思い出したからだ。オグリは引退時に『勝った』。それも、周囲から見放された状況で。それを見ていたはずなのに、と。

 

「大和民族には、本音と建前って文化がある。お前の親父さんは『上は大学に行かせるが、次女には家を継いでもらいたい』って考えていた。だが、姉妹揃って、人一倍の才能があった上、お前はレースにのめり込んでいた。そこが最大の誤算だ。それで、お前のピークアウトを『家を継がせる好機』だと認識した。だが、お前は再起を夢見ていた。その時点で、互いに相容れるはずがなかった。……一時代を築いたレベルのアスリートの家庭でありがちな流れだよ」

 

 

「親父があそこまで意固地とはな……。なぜだ?」

 

「お前の時代の日本は不景気な上、災害も多いだろう?それで、家業が孫の代まで続くか不安だった。だから、三冠をとったお前のネームバリューを利用せんとした。だが、お前が現役を続けたら、全盛期の名声に傷をつける公算があった。それで、お前に現役を諦めさせようとした。だが、結果は…」

 

「……そういうことか。他にやりようはあったろうに」

 

「オグリを侮辱する必要はなかった。ましてや、オグリは下馬評を吹き飛ばした張本人だ。それを思い出したんだろうさ。お前の親父さんは表ざたになれば、一瞬で炎上してしまう事をしてしまったんだ。近ごろは言葉のあやで……なんて通用しないからな。どんな有名人でも、半引退に追い込まれるくらいだ」

 

ブライアンらの父親はこの失敗が決定打になる形で精神を病むようになり、更に体調そのものが急速に悪化し、ハヤヒデは引退からの実家の相続が確定路線となってしまう。母親は家のやりくりを押し付けてしまうことの負い目からか、『市民ランナーとして走るのは止めない』と発言するなど、夫との不仲が顕現化していく。

 

「不用意な一言だと思ったが、どうなると思う?」

 

「おふくろは事業拡大は望んでなかったからな。オグリさんの家族に知られたら……って、今頃、親父は青くなってるだろうさ。おふくろとも気まずくなるだろうし。親父が死んだら、親父の実家とのつき合いを止めるだろうさ」

 

と、未来を予測する。実際にオグリを侮辱してしまったことの重大さを実感した彼は『炎上』を恐れるあまりに精神を病んでいく(杞憂であったが)。さらに、妻との不仲が顕現化していくなど、自分の行為が裏目に出ていく。彼の死後、父の縁者は塩が引くようにつき合いを(代替わりを言い訳に)やめていったともいい、以後、ブライアンの実家は母親の望む形で、酒屋を細々と経営していく。『身の丈にあった経営を』。それが母親の考えであった。一方、父親は『ブライアンの得た名誉で家を大きくした上で、孫に家を遺そう』と考えていた。その相違が悲劇を生んだと言える。

 

 

 

 

 

「あんたらは今後、どうなる?」

 

「未来世界でボラー連邦との戦争が控えてるが、その前に、俺の故郷での戦争もしなけりゃならんからな。お前、どうすんだ?」

 

「当分はあんたらに同行する。のぞみからは『当分かかる』って連絡は受けているからな」

 

「わかった。連中を完全に撃退すりゃ、休暇が上から許可される。その時に、のび太んちに実家の私物を送ってもらえ」

 

「わかった。妹に動いてもらう」

 

ブライアンの私物は父親が処分しよう(後に引けなくなったからである)としていたが、母親が蹴り倒して止め、ビワタケヒデが預かっていた。その関係上、即日で野比家に荷物一式が送られることになった。以後、父親は『家を大きくしようとしただけなのに』というのが口癖となっていき、垣間見せた傲慢さが仇となり、家族から疎外されていく。母親はそんな夫を見限り、長子のハヤヒデに家を継がせる準備を始めていく。彼は勘当は『言葉のあやであり、本気ではなかったが、後に引けなくなった』と後日に親類へ漏らしており、彼は折を見て、娘と妻に土下座し、勘当を解くつもりであったと、死後に判明する。後に、ビワタケヒデは『ボタンのかけ違いが招いた悲劇』と回想したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――同じ頃の日本では、扶桑から譲渡された『橘花』と『火龍』のレストア機がマスコミの記事を飾っていた。扶桑陸海軍がそれぞれ計画し、クーデター時に使用されたものの残存機のレストア機である。扶桑軍は接触前、橘花と火龍をそれぞれ『ジェットの雛形』として利用する気であった。だが、橘花の元になった図面が(意図的に)古い版であった事から、カールスラントは訴訟沙汰に追い込まれた。とはいえ、実は外交問題を懸念した技術将校の手で艤装図などは最新版のそれが譲渡されていたり、扶桑海軍も『後退翼にしなかったのは、量産性を重視したのと、設計が完了した後に(後退翼の利点が)判明したから…』と、クーデター時に日本側へ通告している。陸軍の火龍の方が完成度が高いのは、ジェット戦闘機の雛形として完成させる意図が当初からあったからであり、海軍は第二次生産から『後退翼装備と30ミリ四門の戦闘機』に仕立て直すつもりであり、初期型は『対艦攻撃機』として使うつもりであった。だが、結果的に『原型機が時代遅れになると同時に、それらも時代遅れとなり、第一次生産ロットが試験配備された段階で生産が中止された』という経緯を辿り、殆どがクーデター軍に持ち出され、交戦で失われた。だが、一部の者が『反乱軍の汚名を被せられるのは忍びない』と彼等に黙って、生産完了間もない数機を工場に残しており、それが数年後に発見され、レストア後に日本へ譲渡されたのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――それは戦前の航空技術を喪失し、国産小型ジェット旅客機の開発も頓挫した戦後日本にはせめてもの慰めであった。『もし、戦争が違う様相を呈したり、戦局の推移がずっと穏やかであったなら……』との想像が現実になったようなものだからだ。両機は動態保存機扱いで自衛隊の管理下に置かれた。技術的には旧世代も良いところだが、貴重な『国産第一号の ジェット機』であったため、『劣化コピー』と揶揄されつつも、自衛隊の管理下で飛行データの収集と扶桑の在来技術の確認のために使われた。史実のデータより数割は良好な性能(主に燃費やエンジンの寿命など)が確認された他、扶桑海軍の定見の無さがなじられたが、ジェット戦闘機の有効性を扶桑海軍が理解したのは『橘花の第一次生産型の完成後』。実際に『次期生産型は戦闘機として生産する』という通達はあったし、戦闘機型の20機前後がクーデターに使用されている。日本に譲渡されたのは、戦闘機型の研究に使用された個体であるので、武装テストに用いられた痕跡が残されている。F-86の早期出現がなければ、主力戦闘機の一角を担っていた可能性は大きい――

 

 

「こいつをどうするつもりです?」

 

「飛行博物館行きになるまでは、我が隊で性能分析だそうだ。統括官には、そう伝えてくれ」

 

「了解」

 

調は遠征には参加せず、後方撹乱を終えた後は日本で黒江の自衛隊での業務を代行していた。編成上、黒江の第三席の部下であった関係であった。この頃には、立ち位置が史実と違う『シンフォギア装者』という事は知れ渡っていたので、ギア姿で勤務している。

 

「君も大変だな。アニメとは立ち位置が違うというのも」

 

「統括官が私の姿で好き勝手にした影響と、入れ替わりで古代ベルカにいたんで、元鞘に収まれなくなったんですよ。もう慣れました」

 

苦笑しつつも、自衛官に答える。黒江が好き勝手したのと、自身の異世界滞在の結果、元鞘に収まる生活は送れなくなったのは事実だ。

 

「君の相方は勘違いで、元の世界にいられなく?」

 

「私が『乗っ取られた』って早合点した挙句の果てに、イガリマで一般人を殺っちゃったんですよ。あれは霊的な防御手段を持たないかぎりは防げませんからね。愛が重すぎたっていうか…。関係のない一般人を魂までぶった斬るなんてのは……。後で『他人が私と同じ姿になってただけ』って知った切ちゃん……事の重大さのあまりに、自殺をしようとしたんだそうです。当然、弁護のしようがないんで、死刑判決。だけど、希少な適合者でしたから『別世界に移住させる』って裏技で助命されて、今は別の世界で暮らしてます」

 

「それがいいな。処刑したと言わんと、遺族が納得せんし、ギアの登録も処刑を理由に、抹消できる」

 

「ええ。私の故郷の世界は老師・童虎や乙女座のシャカの介入で、裏世界に『アルカ・ノイズ』が出回ることもなかったんで、SONGの存在意義はほぼ無くなったも同然。ですが、紛争鎮圧の道具にされそうなのを危惧した司令の意向で、異世界の調査を名目に、あちらこちらに送られています。そのほうが彼女たちも安心しますから」

 

「だろうな。君は抜けている扱いか?」

 

「ええ。統括官が正体を明かした後に帰還できた私も、事前に退職願いを出した上で、ギアごと出奔したので。今は真田さんに定期的に整備を」

 

「あの方は先史文明期由来の技術すらも、お手の物なのか」

 

「あの方は『こんなこともあろうかと』ですから」

 

真田志郎の万能性はシンフォギアにも及ぶ。その事に関心させられる自衛隊の技官。調も『こんなこともあろうかと』と表現することで肯定する。

 

「君も難儀だな。表向きは30代という風に通してるんだろう?」

 

「義兄のご両親とは、2000年代初めの時点で会ってますからね。その帳尻合わせですよ。ご両親には、このギアは『身体機能補助用の特殊な実験服』という風に説明してあります。学園都市があったので、それほど不自然に取られなかったのは僥倖でした」

 

調のギアは(黒江が行った先の世界での個体)史実で言う『魔法少女事変』当時のデザインとほぼ同じままだが、首にマフラーが追加されていたり、任意で脚部を通常のブーツにできるという『固有の特徴』を持っている。ギア特有のギミックは移動などで用いるのみである。ギア固有のアームドギアも用いなくなり、古代ベルカ時代にあつらえ、手元に戻ったデバイスや、有り合わせの武器を用いている。

 

「それで通るのか」

 

「ドラえもんがいるおかげだと思います。それと、切ちゃんに反発された原因はもう一つ。武器にノコギリを用いなくなってるとこですかね」

 

「あー。君は史実だと、単騎では戦闘をしなかったというからな」

 

「ええ。逆に、響さん達へのコンプレックスは無くなったんで、私個人としては嬉しかったのも事実です。古代ベルカと聖域で鍛えたんで、帰還した時の最初の手合わせの時は困りましたよ、逆の意味で……」

 

「なるほど」

 

「シュルシャガナもノコギリじゃなくて、本来の『万海灼き祓う暁の水平』のほうに変質しちゃってたんで、それもあって、切ちゃんと気まずくなったんですよ」

 

調の持っていた『シュルシャガナ』は修行を重ねた末に、本来の『万海灼き祓う暁の水平』へ変化(先史文明期の模造品が媒介となり、『本物』に置き換わった)しており、本来の歴史における『肉体を伐り刻む紅き鋸』では無くなっていた。それも切歌との関係が気まずくなった原因であった。さらに、黒江の転移時点での魔力も持ったので、帰還時には『ベルカの騎士』として働いていたため、ファイトスタイルはまったく異なっている。同じなのは『ギアの大まかな姿のみ』(正確には、ギアの配色も『フロンティア事変』当時とは異なっている)。その際の切歌の反発は想像に難くない。

 

「それを明かした時が一番に参りました。そうなっちゃったんだって言ったら、切ちゃんは泣いちゃうし、響さんとはやりあう流れになっちゃうわ……未来さんとマリアの制止も耳に入ってない様子で、仕方なく。その時点で格闘の心得はあったんで、殴り合いしました。」

 

「ああ、君の元・主の後継の子が習ってる格闘技?」

 

「正確には、その原型の一つになった、ベルカ軍の戦闘術です。スバルさんの技に似たのはあったんで、統括官と共有した記憶で叫んじゃいました」

 

「わかるなぁ、それ」

 

調は帰還時に『自分の身に起こった』ことの説明をしたが、全てを以前通りにはできないと言ったことが原因かはわからないが、立花響と戦う羽目になってしまった事を赤裸々に語る。その時に、古代ベルカで習った戦闘術を披露し、格闘技に精通していた立花響と拳を交えることができることを見せた事に触れた。

 

「以前と同じようには『できなくなってる』のを見せるためでしたけど、驚いてましたよ、みんな。統括官じゃない『本人』が接近戦に対応してみせたの。向こうで地球系の武術から派生したと思われるものはいくつもあったんで、その流れで、その時点でも、なんとか動きを見切れました。」

 

その時点では、まだ完全には黒江の技能を自家薬籠中のものにしていなかったため、立花響の武術に対応するのは時間を要したらしい。だが、黒江由来の『見切り』はその時点でものにしていたため、彼女の(完全に当てるつもりはなかったという)『拳』を紙一重で躱し、(スバル・ナカジマと高町ヴィヴィオ由来の)『接近戦特化型のディバインバスター』を叩き込んだと語った。さすがの響も強力な砲撃魔法』を接射されれば、吹き飛ばされた後に立ち上がれなくなるダメージとなった。(響の特性は不意打ちなどでは発動されない上、当時の響には魔力は『未知の力であった』)

 

「威力は加減しましたが、六割以上のパワーは出していました。それでも立ち上がろうとするあたり、タフですよ、響さんは」

 

「ディバインバスターを食らって、立とうとするのができる奴がいたとは……」

 

「なのはさんほどの出力じゃないにしろ、驚きましたよ」

 

調はディバインバスターで大ダメージを被りつつも、なんとか立ち上がろうとする立花響の闘志に敬意を抱いたらしい。

 

「驚いてましたよ、彼女、ガングニールの篭手に明確にヒビが入った事に」

 

「あれ(ギア)はヒビが入るものなのか?」

 

「極めて高密度のエネルギーを一点に当てられた時に、命中箇所の装甲部に生じます。アームドギアは明確に破壊されますし、ギアの装甲部の物理的強度とバリアを相手の攻撃力が上回っていれば」

 

強力な攻撃を浴びたショックで、ギアの一部が明確に破損する事は稀に起こる。その時は『装甲にひび割れが生じた』程度であったが、最も強度の高い部位である『腕部の装甲』に生じたため、響は驚愕していたという。むしろ『たいていの魔導師が立ち上がれなくなる』砲撃を食らってなお、その程度で済むあたり、ギアの耐久性の高さと、立花響の特性が垣間見える。

 

「それでも、動けなくなるくらいのダメージにはなってたみたいで、その場で片腕を抑えてましたが」

 

「いくら、出力がオリジナルより低いとはいえ……驚いたな」

 

「もし、反撃しようとしたら、素手で牙突をするつもりでしたけど、冷や汗もんですよ」

 

話は続く。ありのままを話したのだが、そういう流れになってしまったのは不本意であった事(自分にも非はあるが)を話す。

 

「自分の未熟さを思い知りました。だけど、何がきっかけで話の流れがガラッと変わるか……」

 

「ふとしたことがきっかけで、場の空気が変わってしまうのは、よくあることだ。時に不可抗力でそうなることもある。あまり気にしないほうがいい。反省を次に活かせ」

 

調はその出来事に加え、その後に言い合いになってしまったことが出奔のきっかけであった。この時点ではお互いに決着したことだが、調は自戒のために、時たま思い出すことにしているらしい。

 

「しかし……その子がまさか……キュアグレースの転生だったとは……」

 

「本人が一番に困惑してますよ。パートナー無しで変身できるわ、通常フォームなのに、徒手格闘で戦闘できるわ……」

 

「ああ、パートナーフォーム以上でないと、ヒープリは完全な徒手格闘ができないんだったな」

 

「ええ。たぶん、装者としての特性が『ヒーリングっどプリキュア』の力を変質させたかも……?」

 

この時点では、立花響は(花寺のどかとしての記憶が蘇ったこともあり)『ヒーリングっどプリキュアの力を馴染ませる』ため、キュアグレースの姿で特訓中であることが伝えられる。業務上の重要事項だからだ。

 

「それを馴染ませる特訓中ということか」

 

「ええ。本人も片方をひいきにできなくなったのを困ってます」

 

「贅沢な話だ。何がきっかけで?」

 

「ダイ・アナザー・デイでの事ですけど、のぞみさんと会ってるんですよ、覚醒する前に」

 

彼女がキュアグレースになるきっかけに話は及ぶ。のぞみとの出会いがキーになったのでは。調はそう推測しているようであった。

 

 

 

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