――結局、高雄型の後継は超甲巡ではなく、新型甲巡で賄うことにされた。超甲巡は天城型巡洋戦艦の後継に認定されたからで、同艦型は結局、戦艦に改造されていくことになり、造船官を落胆させた。また、時代は1950年代であるが、他国ではミサイル兵装は研究段階であり、日本連邦のようなVLSなどは夢のまた夢であった事から、日本連邦の圧倒的優位は変わらなかった。とはいえ、戦後日本には戦艦は造れないため、扶桑に丸投げする有様であった。仕方ないが、砲塔、船体の装甲その他の製造ノウハウもとうに失われていた日本に、大和型戦艦の再建造は(レプリカであろうと)不可能であった。造船王国として一時は鳴らした日本には、この事実は屈辱であった――
――とはいえ、扶桑は扶桑で、自身の誇った兵器群の尽くがリベリオンの新兵器の前に時代遅れにされていくという事実に震え上がった。その利害関係の一致もあり、扶桑は巡洋艦以下の艦艇の刷新を急いだ。デモイン級重巡洋艦の量産がなされることに恐れを抱いた両者だが、方針で対立。一世代前の戦艦と同サイズの超甲巡を推す扶桑、コストパフォマンスの観点から、従来の重巡洋艦の性能強化(水偵装備などの代わりにミサイル兵装などを積む)を推す日本。それは扶桑の国力と兵器更新期という幸運から、双方のラインが実現する事になった。これは高雄型に代わる一等巡洋艦の正統な後継がいよいよ必要となった故でもあった。その代償に『軽巡洋艦』というカテゴリが終焉する事になった。水雷戦が活発化した事で、皮肉にも、旧来型の駆逐艦と軽巡の生存性の低さが判明したからだ。とはいえ、1945年時点で艦齢が若い『阿賀野型』と『大淀型』は実験艦として1956年度まで使うという方針であり、ダイ・アナザー・デイ、太平洋戦争の動乱に関わる事は希少であり、(史実と違って)1949年時点でも健在であった――
――長門を日本に売却した扶桑は、その代艦として『播磨』を発表。超大和の時代の幕開けを宣言した。魔女の世界の人々は(戦艦こそが戦争抑止力の時代であるのもあり)この性能に腰を抜かし、追従を試みた。350mを超える大きさはともかく、51cm砲は当時最大級の艦砲。他国は同等の艦砲の有効性と実用性を鑑み(在来技術では砲身命数が実用に耐えなくなる)、採用はしなかった。だが、既に40cm砲搭載艦の性能向上は限界に達していた事から、46cmまでの口径(各国で差がある)で実用化がなされ、建造数は大艦巨砲主義の最盛期に比して減少したが、造船所の雇用問題もあり、造船はされていく。この傾向と、超モンタナの登場を予見していた扶桑は三笠、敷島の両型と播磨型の双方の間をとって『53cm砲』の開発を促進。1949年度の水戸型として実現させる。旧型戦艦が使い物とならなくなったための苦肉の策でもあった。また、水戸型は一斉に訪れた『定期ドック入り』の時期における敵国への抑止力的な意味合いもあり、予定造船数は多めに設定されている。以前のように、艦艇は後生大事に持つものという認識が薄れたためだが、船を悪戯に酷使することは扶桑国民には不評であったという――
――搭乗人員は旧型艦の退役でいくらでもおり、扶桑は自動化で減った必要人員を大いに活用していた。時代的に海軍の在籍人数は数百万を超えていたからだが、空母機動部隊の人員の練度だけはどうにもならないため、置物扱いの日々であった。空母決戦を挑むには、あまりに物量差がありすぎたためで、結局、あと数年間は置物同然の扱いが継続の見込みであった。ミッドウェイどころか、フォレスタルを量産されかねない時勢であったので、日本連邦は対外的には『大艦巨砲主義』を装いつつ、裏で空母機動部隊の近代化を急ぐという方針であった。日本の左翼は空母機動部隊の解体と空中給油機の量産を叫んだが、機体整備や武装の補給、人員の休息などを顧みておらず、素人の空論であった。結局、扶桑の空母はこうした政治情勢もあり、貴重品扱いになり、空軍が宇宙艦隊を(軍事上の理由で)整備せざるを得なくなる。また、地球連邦軍が外征傾向を強めたために、治安維持などには余剰となった『ガルダ級』を引き取るなどして、扶桑空軍は急速に『軍略の要』として成長していくのである――
――圧倒的多数と交戦する必要があったことから、精鋭部隊では、実体弾とパルスレーザーの混載が好まれた。その関係上、コスモタイガーやブラックタイガーの配備も公然と行われていた。日本系国家の軍隊の航空隊は一回の出撃で50機程度しか出撃しないが、敵機はその数倍の数であるのが当たり前であった。ダイ・アナザー・デイ以降、一対多が当たり前であったため、64Fとその支援部隊は練度が突出し ていった。仕方がないが、日本の政治家たちの多くが扶桑本土の部隊を頑なに出征させなかったからで、その部隊の人員から不満が漏れるのも日常茶飯事になっていた。日本の政治家はこの不満に困惑する事になった。
――自分たちと直接関係のない世界の同位国家の軍略にどうして、日本が口出しするのか?――
至極当然の指摘だが、彼らは『お前ら軍人は武人気取りで、シビリアンコントロールのしの文字も知らぬ愚か者だ!』と喚き散らし、その高慢さを扶桑人に呆れられるという事は実のところ、ザラにあった。では、それがなぜ、表沙汰にならないのか?日本側に弱みがあるからである。のぞみの一件もそうだが、2010年代以降に『団塊の世代』とその後の数世代が老年期を迎え、在来の社会保障制度の(近いうちの)破綻が素人目にも明らかであった事、バブル経済の破綻以来、長きにわたる停滞を扶桑の活力あふれる『若い国民』の流入で打ち破れるという『一縷の望み』が差し込めていたからである。日本はこのチャンスを是非がでもモノにしたかった。故に、自分たちの醜聞を扶桑に晒すのは覚悟していた。弱腰外交と言われようと、経済復興を果たすには、もはやこの手段しか方法がなかったのだから。つまり、日本の一部政治家は2000年代始めの時点で『日本の国家運営の行き詰まり』を予見していたのだ。
――2011年頃――
日本連邦の樹立に懐疑的な革新政権が政権を握っていたこの時代、日本連邦の樹立の話し合いは停滞していたが、実務組織間の連携と連絡はすでに始まっており、この年の3月に起こった大災害にすぐさま対応ができたのが、扶桑と日本の連絡調整室という組織であった。黒江がその次の年あたりに着任する部署の前身にあたる。当時はブルーインパルスからの離任が近かった黒江だが、その連絡調整組織は東京に置かれていた事が幸いし、万全を期せる状況にあった。黒江は扶桑軍人としての階級(ダイ・アナザー・デイの直前の時期であったので、大佐であった)とコネをフル活用。扶桑の連合艦隊(ダイ・アナザー・デイに備えての演習中であった)を動かし、第一航空艦隊(当時の旗艦は瑞鶴)と第一艦隊(当時の旗艦は戦艦信濃)が災害救助に派遣された。空母三隻(翔鶴型航空母艦と大鳳)、大和型戦艦三隻が東北の救援活動に駆けつけたのである。日本の一般人はこの災害で『近代化改修された大和型戦艦の雄姿』を目の当たりにしたのである。
――この時に扶桑軍に救助された避難民などは『海上自衛隊の船よりも巨大で、見るからに強そうな』大和型戦艦の艦容に安堵し、近代化改修された事が素人目にもわかる『近代的な食堂で出される絶品料理』で『生を実感した』者は多い。空母に乗船した者も『零戦や艦爆ら』の姿はなく、『戦後のアメリカ製』としか思えないほどの近代的なジェット艦上機が甲板に引きめいている事に驚愕する者が多かった。新戦力の練習航海を兼ねていた故であるが、ダイ・アナザー・デイ当時には着任間もなかった連合艦隊司令長官『小沢治三郎』と幕僚らが被災者を見舞ったりするなど、できるかぎりの誠意ある対応を行った。この災害に際し、人命救助に尽力したのがキュアフェリーチェであった。折しも、当時は『プリキュアオールスターズ』の概念が世間に認知されてきていた頃であったため、当時は大学に通っていたが、知らせを受け、公の場ににプリキュアとして姿を現した。これが公に記録された『プリキュアの活動』の最初の事例であった――
――それから時は経って――
「へぇ……。『謎のプリキュア戦士、震災の人命救助に尽力。ススキヶ原で表彰を受ける』……。いーな。あたしなんて、この世界で認知されたの、騒動がもとなのに。せめて、ダイ・アナザー・デイの戦功で知られたかったよ」
「仕方がない。戦後の日本は軍人の戦功なんてのは報じないから」
のぞみが『魔女の世界に転生していたプリキュア戦士である』事が認知されたのは、件の騒動によるものである。ダイ・アナザー・デイでの戦功は皮肉な事に、騒動で知れ渡ったのである。それと対照的に、魔法を使っての人命救助で一躍、謎のプリキュア戦士として存在を認知されたのが、花海ことはであった。2011年時点では、大学に入りたての頃であった。元の『花海ことは』の姿では『10代半ばの少女』にしか見えない事は本人も中高を経たので気にしており、逆説的なのび太の思いつきで『プリキュアの姿で大学に行く』ことになったわけだ。もう一つの理由としては『ことはの姿では、喋り方が外見に追いついていないから』という切実なものによる。如何に有名人になったとしても、『プリキュアとしての慣習を色々破っている』事は(アニメと違って)気にされないだろうという推論からの判断であった。
「はーちゃん、プリキュアの姿で大学に?」
「喋り方が大学生らしくないって、親父とお袋が言ってきてね。それで、ぼくが考えついたってわけ。アニメと違って、あの子の元いた世界はZEROの手で滅び去っている。それで、元の世界の掟に縛られる事はないだろうと。あの子は元が神の後継のような存在で、本当は歳を取らないし、プリキュアにならない限り、精神年齢の成長もあまり起きないからね。フェリーチェもハラハラしてたけど、キャンパスライフを人並みに楽しんでたよ」
「いーな~…」
「君も戦争が終わったら、日本連邦大学へ行けるよ。戦中に行ったら、一部の連中が『不謹慎極まりない』とか言うからね」
「日本系国家の悪いとこなんだよな、それ」
「農村部の連中はそういうのを特権階級だと僻むからね。特に、1940年代以前は」
「田舎暮らしだと、中学も行けないからねぇ」
「武士の時代の名残りだと思うけどねぇ、そういうの。単純労働で生活費稼げる時代は直に終わっちゃうし、田舎暮らしは生きにくくなるよ。農作業も機械化が進むし」
のび太のいう通り、扶桑で続く戦争は農村部の衰退を引き起こし始めている。また、学歴社会化が本格化すると、小卒が当たり前である農村部の者は碌な職にありつけなくなる。その社会問題がこれから扶桑社会にふりかかるのだ。
「そういえばさ、タイムパトロールって、どうなったの?」
「統合戦争で実質的に活動停止。以前のような活動の再開が認められたのが、メカトピア戦の後。タイムマシン技術を守ることだけが仕事になってた時期が長いんだ。代々の長が日本人だったりのも、非アジア系の人々の反感を買ってたらしくてね。セワシが後世に残してくれていた記録によると、過去の人間にタイムトラベルの秘密を知られてしまった場合、さらに過去に行って、その人物の出生の契機を妨害し、存在そのものをなかったことにしてしまっていたことが欧州の人々に糾弾されて、当時の組織の幹部層は皆、凄惨な最期を遂げたという。ぼくたちの事例は特殊なケースだし、ドラえもんが組織の功労者だから、タイムパトロールも黙認してたらしい。で、時空警察的な活動が国連で禁じられると、技術保持のための活動しか認められず、組織の形骸化が当たり前になった。セワシの孫の代になって、次元世界を行き交うために、タイムマシン技術の研究がまた脚光を浴びたって感じ。以前のような活動も解禁された。だけど、一般人の時間旅行が廃れて、久しいからね」
タイムパトロールの統合戦争を経ての顛末が簡潔に語られた。統合戦争で時間旅行そのものが廃れた後は時空警察としての活動もされなくなり、タイムマシンの存在も、タイムパトロールという部署の存在も、半ば世間から忘却されていたという。とはいえ、裏で技術の維持は続けられていた事、時空間の研究が当時より進んだおかげで、歴史は一つではなく、その場の歴史を変えても『世界線が増えるだけ』という事実が判明する幸運で、タイムパトロールの活動再開が成った事、しかしながら、統合戦争で個人の時間旅行が廃れてしまったため、活動規模は全盛期の比ではないほど縮小しているという。
「法律で禁止されてはいないけど、そういう風潮になっちゃったんだね?」
「時空間研究が当時より進んだのは、統合戦争も末期の頃だからさ。その間に、時間旅行は一般人の間で廃れた。世界線の分岐説が受け入れられたから、正式に解禁されたけど、長すぎたのさ。ご法度の時間が」
「だから、タイムマシンの販売が業務用だけになってたんだね」
「市場規模の縮小で、維持費その他が個人の手に負えなくなってたからね。これからは戻っていくと思うよ」
のび太がのぞみに告げた事から、デザリアム戦役直後の段階の地球は『タイムマシン技術の復興期』を迎えたことがわかる。野比家のセワシからの何代かの当主達が時空間研究を自費で進めさせた結果、タイムマシン技術の再活性化と技術体系の復興に成功したという。技術復興後のタイムマシンは個人での使用者は(統合戦争前に購入していた機材を隠し持っていた……など)限られ、業務用が主となった事も語られる。野比家は統合戦争後、戦乱で失われた暮らしの復興に尽力してきたのだ。
「戦乱で医療技術と食料品生産技術は進んだけど、コスモリバースがなきゃ、地球で農産物を作るのは諦められていたかもね。コロニー落としのせいで、気候がめちゃくちゃにされたから。で、コスモリバースとドラえもんによる再テラフォーミング、食料品プラントの地下化で、21世紀と遜色ない生産量が確保できたって感じだしね」
「地下化したのは、コロニー落としから?」
「そう。超合金とかで何重に防御した上で。昔のように、えっちらおっちら作業してたら、ジオニストのテロリズムに遭うからね。とはいえ、最近はジオンより、反統合同盟のほうが息を吹き返してきたけど」
その事から、過激派のジオン残党のテロの目標は地球の穀倉地帯の全滅である事、第二次ネオ・ジオン戦争の終結後はジオン残党そのものの数的減少が以前より顕著になり、むしろ、連邦の解体と東西冷戦以前の体制の復興を願う反統合同盟の残党のほうが多くなるという逆転現象が生じている。ジオンは余りに『内輪揉め』(派閥抗争)をしすぎたのだ。
「23世紀になっても、新聞かぁ」
「インターネット関連技術がいったん死んでたからね。復興したのは、グリプス戦役の後」
23世紀(デザリアム戦役後)の社会は21世紀時点ほどの生活のデジタル化は(過度の便利さを嫌うスペースノイドの圧力もあり)あまり復興しておらず、2010年時点と大差ない状態で据え置かれているという。インターネット技術を意図的に絶ったことで、ザビ家の専横を招いた事をサイド3の技術者らは悔やんでおり、結局は『2010年くらいの状態にしておくことが社会的に望ましい』と判断。タキオン通信網の実用化でインターネット文化を復興させた。グリプス戦役の後のことだ。23世紀に『新聞』というメディアが生き長らえているのは、そういう理由による。
「一年戦争で電子決済とかも絶えたから、社会的混乱も大きかったって。博物館送りにしてた機械で昔のお札を剃ったり……」
一年戦争後、電子決済は(スペースノイドの意向もあり)以前のように使われる事は無くなったらしく、存在を知らない者も多いとの事。
「M粒子は暮らしを逆行させたわけだね」
「デザリアム戦役の後は人々の生活水準を2010年位の水準にしておくことで、スペースノイドの了解を得たって。連中もザビ家の専横を招いた責任があるから」
結局、ジオンは地球の文明に歪みをもたらす事になり、ザビ家の専横を(インターネット技術の断絶で)防げなかったというトラウマを残すことになり、その社会的責任を、サイド3の技術者らは旧来の光通信技術の代替である『タキオン通信の実用化』で果たしたのである。
「向こうの世界も大変だなぁ」
「仕方ないさ。内輪揉めが続けられていたところに、異星人との戦争の連続さ。連邦が星間国家に成長する過程の試練にしては、出来過ぎだけどね」
2010年位末頃の野比家での一コマであった。のぞみはキュアドリームの状態で軽い食事をしており、この日は防衛省に顔出しがあるようであった。のび太は『調査』で午後からは関西方面へ出張するらしく、ビシッとしたスーツ姿であった。
「三日くらい、関西方面で仕事してくる。表のね」
「いってらっしゃ~い。あたしは防衛省に顔出しして、あれこれの手続き。警察庁のお偉方がまだ懐疑的なんだって。で、デモンストレーションする必要があるとか。機動隊の強面のおじさん連中をのしてくるよ」
「それがいい。強化フォームじゃなくて、ノーマルでしな。それでも、警視庁の普通の機動隊にはお釣りが来るよ」
「ジュラルミンの盾は壊していい?」
「君たちのキック力なら、普通に砕けると思うよ。まぁ、それはやめてさしあげな。財務省が泡吹くから」
「戦後は財務がうるさいんだなぁ」
「ダイ・アナザー・デイで零戦の生産中止を喚いたのも、連中だってさ。もっとも、雲龍型で新型機の運用が難しいってわかると、当時の海軍省を責め立てたってさ」
「満足に零戦も普及してなかったのに、あの時」
「仕方ないから、六四型(史実の最終型)や五二型(史実の最多生産型)相当に改造したり、新造させたり……。海軍航空本部じゃ、胃を痛める連中が続出だったそうな。おまけに、紫電改が艦戦に転用されたろ?生産元の山西も大パニックだったって」
「だろうなぁ。あれ、艦戦に使えるように設計はされていなかったはずだしね」
「だから、航続距離が…といっても、局地戦闘機の転用なんだから、贅沢はいえないよ。それでも、F6Fと同程度の航続距離あるんだし」
財務省のケチぶりに話が進む。ダイ・アナザー・デイ当時、扶桑海軍の次期艦戦は烈風の一本槍のつもりであったが、ストライカーユニットに合わせる(当時まで)必要があった事、烈風に『ロール速度の遅さ』が指摘されてしまった事による改良の手間などがあり、ダイ・アナザー・デイでは局地戦闘機としての整備が始まっていた紫電改の転用による増産に呑まれてしまう有様となったこと、生産ラインがすでに稼働状態にあった事による『コンコルド錯誤』で烈風の命脈が繋がったことが触れられた。また、紫電改は日本人から『航続距離が短い』となじられたが、実際は『F6Fと同等以上に航続距離がある』ので、リベリオン人から『ゼータクだ』とボヤかれていたりする。更に、坂本は『紫電改は艦戦じゃなかったし、元々は陸上の航空戦に供するための機体なのだ。1700km以上も航続距離があるのがオカシイ』と述べており、空中給油の概念がない時代の『欧州の航空戦』を念頭に置いていた事を擁護している。
「改良して、燃費が良くなっても、扶桑の搭乗員は飛行時間よりも機銃の装弾数の増加を望んだそうだしね。それで陣風は『頭がオカシイ』って言われるくらいに機銃を積んだんだよね」
「30ミリにする事も考えたらしいけど、装弾数が低下するから、間を取っての25ミリにしたそうな。。それも六門だ。史実の雷電の最終型より火力あるよ」
「ダイ・アナザー・デイで、なんか強かったよね?」
「そりゃ、初期型の時点で、3000馬力のバケモノ積んでるんだよ?おまけに、21世紀以降の技術で強化された徹甲弾とか積んでるんだし。紫電改の後継ぎとしちゃ、上出来だったよ」
陣風は中止された『十七試陸上戦闘機』の予定名と資産こそ引き継いだが、実質は別の戦闘機である。和製『P-47』と揶揄されるような巨体(史実のキ87のようなポジション)を持ったが、武装構成は引き継いでいる。後期型ではターボプロップエンジン化され、日本系プロペラ機として最強の攻防力と持て囃されている。ダイ・アナザー・デイが長期に渡り、既成機の陳腐化が危惧された故に投入が叶ったとされる。その開発競争は魔女らの予想を超えていた。
「思えば、あの開発競争で、魔女の冷遇が始まったような」
「今までの魔導理論が頭打ちになってきてたところに、別世界の有限でない魔力持ちがきた上、時空管理局との対比で体系が経験則でしかできてないのが露見した。それに、魔力量自体は君も、綾香さんも、なのはちゃんの半分もいかない程度。はーちゃんなんて、元が上だから、魔力量は無限に近いしね。理論上はなのはちゃんの以上のディバインバスターを撃てる」
「やったことないんだ」
「あれをデバイスなしでやれるかは時空管理局も微妙な顔でね。負担がかかるってヤツ。もっとも、あの子なら、気にしないで良さそうだけど」
「うーん。チートだなぁ」
「君だって、今なら、映画のラスボスを単騎で倒せるくらいのパワーアップしてるから、別の君に言わせりゃ、充分にチートだって」
「確かに……聖闘士の技も使えるし、マジンガーとゲッターの力も。昔はバカの一つ覚えってヤツだったから、贅沢かもね。シャインスパークなんて、シューティングスターの上位互換だし」
「その分、君の並行同位体に嫉妬されるの請け合いだよ」
「まぁ…ねぇ。シャインスパークはシューティングスターの比じゃない威力だし、ストナーサンシャインも行ける。つか、使った」
「それで、スーパー1に?」
「しこたま絞られたよ。月が消し飛びかねない威力で撃ったから」
「みらいちゃんは?」
「さすがに青ざめてた。いやぁ、ブチギレてたしさ……。たぶん、あと数秒でもエネルギーを上げてたら、金魔法のフルパワーを突破したと思う」
「ゲッターエネルギーは出力の上限がないからね。やりすぎだって」
のぞみは完全にキレた場合、前後の見境がほとんど無くなるため、ストナーサンシャインを『月が吹き飛びかねない』威力で放った事がある。みらいとの喧嘩でのことで、みらいも流石に顔面蒼白に陥っていた。なにせ、アレキサンドライトスタイルのフルパワーでやっと防げるくらいの攻撃を余裕でかまされたのだから。
「いやぁ、昔からさ、頭に血が上ると、前後の見境が……現役ん時も一回あって……」
「りんちゃんとかれんちゃんが言ってたよ、それ」
「ああ、やっぱりぃ」
「君、完全に切れると、理性が薄れるタイプだねぇ。普段が強いだけに」
「うぅ。未来世界でのことだから、バレなくて良かったぁ」
「とはいえ、君とはーちゃんがキレると怖いってのはもう知られてるよ」
「えーーーーー!」
「はーちゃんなんて、笑顔でドス黒オーラ出すから、竜馬さんたちがどういう教育したのかって」
「あ、やっぱ話題になるよねぇ」
――2010年代末期のある年の出かけ際の会話であった。ことはが本来より5年以上早く、プリキュアの活動を始めていた事もあり、プリキュアたちは『自分達がアニメとして放映されている世界』で市民権を得ることに成功した。ドラえもんの世界は未来世界と地続きであるが、途中で統合戦争での文明の後退と次元融合によるパニックが挟まるため、まるで別世界のような印象を与える。ドラえもんがススキヶ原にもたらした適応力は回り回って、地球連邦政府の有事における柔軟性となり、次元世界への進出の助けとなったのである。その一端が『プリキュア達が変身後の姿で練り歩いていても、町の人々が普通に応対する』というもの。この後、のぞみはキュアドリームの状態でススキヶ原発の電車に乗って、市ヶ谷台へ行くのだが、駅前のコンビニで栄養ドリンクとおにぎりを購入していくので、店員に『プリキュアでも、栄養ドリンク飲むんですね』と言われ、『仕事が多いもんで~。公務員は大変ですよ』と返した。プリキュアたちは意外と市ヶ谷台の防衛省に呼び出される。警察庁幹部の代替わりなどのたびに、その力のデモンストレーションをする必要がある。特に、戦闘向きのプリキュアであった者は。のぞみはその最たる例であり、筆頭格の中でも『戦闘向き』である世代である故、この日は警察の機動隊でも特に精強と慣らす部隊相手にデモンストレーションを行う事になった。プリキュアたちは格闘技能はごく一部を除き『素人』である事は知られており、機動隊の精鋭たちは『侮っていた』。これをぶっ飛ばす事をのぞみは自衛隊に求められていた。この奇異な現象は戦後の日本警察にありがちな『警察こそが実戦部隊、自衛隊は戦争ごっこの商売』という認識が原因であったが、この世界においても健在であった。だが、Gフォース所属者は圧倒的多数の敵と戦い、生き抜いてきたばかりである。しかも、のぞみは現在進行形で戦争の最前線の勤務にある士官である。それを『プリキュア』を視察する警察庁の幹部は知らなかったのである。このお粗末さも、非軍事関係者の認識の甘さを象徴していた。のび太はこの日もそうだが、2010年代末頃には表の仕事も昇進し、一転して多忙の身となってしまい、家を開ける日が多くなる。プリキュアたちも太平洋戦線の開戦で野比家に常にいられるとは限らなくなった。そこにやってきたのが、ウマ娘たちであった――
――そのウマ娘たちも種族の宿命である『ピークアウト』が『自身の魂の因果に縛られた結果』であることに怒り、それを覆す事を選んだ者も出始めている。全盛期に果たせなかったことを果たすために、ターフへ戻る者も生じた。シンボリルドルフがそれで、それを自覚した事、生徒会を退き、『個人のために生きれる』ようになった事、波紋法による生命力の活性化で、気力が全盛期に戻っている事(波紋法は生命力を活性化させる効果がある。ピークアウトしたウマ娘が会得した場合、全盛期の気力を瞬時に取り戻す)、治癒による医学的な肉体の回復(ルドルフの引退要因はピークアウトによる脚部不安と繋靭帯炎の発症である)により、アオハル杯を事実上の復帰レースとし、並み居る後輩らを蹴散らしていた――
――2020年代のウマ娘世界――
トレセン学園では、アオハル杯がチームブリュンヒルトの一人勝ち状態なのを危惧する声があったが、G1級ウマ娘の中でも最高位級(歴史に名を刻むレベル)の者が徒党を組んだため、凡百のウマ娘では相手もできない有様であった。三冠経験者を複数要している上、平成三強、BNWのN、新世代のポープ『ジェンティルドンナ』などが一同に会する陣容はまさに無敵といえる状態にあった。
「チームブリュンヒルトの力はまさに無敵だ…もう手がつけられん」
「ルドルフ、ブライアン、シービーの三人が徒党を組んだ上、オグリ、タマモもいるんだぞ。どう戦えと?」
「おまけに、全員がラップタイムを全盛期の頃の水準に戻してきている。世代交代が嘘のようだ……」
「この間の調整戦は不幸だったな、G1級がいないチームは公開処刑も同然に薙ぎ払われていった」
「あれじゃ戦意喪失だよ、往年の勝負服+『領域』の発動状態だぞ。G1級すら戦意喪失してしまうような空気が支配していた」
アオハル杯を戦うチームトレーナー達は、ブリュンヒルトの面々の進撃をまったく止められない有様に諦めムードであった。無論、G1級のウマ娘は他にもいるのだが、歴代最強クラスの猛者たちに徒党を組まれたため、ささやかな抵抗に留まっていた。しかも、全盛期以上に研ぎ澄まされた能力を発揮しだした者もいるので、太刀打ちできる者はごく少数であった。その彼女らに対抗しえるのは、アオハル杯では、バラバラに配置されている『黄金世代』とその一期下の上澄みたちだと目されていた。
――そんなトレセン学園の食堂――
「女史、次回は件のチームと手合わせになるとのことです」
「あの代理さんの秘蔵っ子共の集まりか。お手並み拝見だな」
食堂に集まるブリュンヒルトのウマ娘たち。歴代の世代筆頭格が雁首揃えているのは、凄まじい構図だ。
「あんたもおもしれぇことしてるな?ゴルシを電話で問い詰めたが」
「したんだ」
「今度は私にもやらせろ」
「いいけど?」
「物わかりのいい」
と、何気にはっちゃけたい願望があるシリウスシンボリ。育ちがいい(ウマ娘界有数の名家の出)一方で、ルドルフへの反発でアウトロー気質に育ったからか、口調は荒い。
「後輩たちには話してある。都合がつく子達に連絡を取って、話し合いな。つか、あなた、波紋法よりスタンド使いそうな声だよ」
「メタい事いうんじゃねぇよ……」
と、シリウスは呆れるが、その自覚はあるようだ。
「ゴルシさんから聞きましたが、私の力をご所望だとか?」
「一応、あなたに合いそうな子はリストアップしてある。ゴルシから話を聞いて、よく考えな」
「わかりましたわ」
「ノリいいね」
「この界隈では、ノリが良くなくては、ライブなどはこなせませんもの」
ジェンティルドンナは比較的に新鋭の資産家の令嬢である。一代で財を成した父の子(実は姉にウマ娘・ドナウブルーがいるが、こちらは大成せずに引退済み)として、次期当主を継承する有力候補(姉も弟も資産運用で名を成しているが、世間に知られているのは、彼女のみ)である。
「次回は理事長代理の秘蔵っ子らとの一戦だが……我々が揉むに足る相手か見ものだな」
「三冠経験者が三人いる上、マイル以上の距離の覇者がゴロゴロおるんやで?普通はトンズラこくで~」
「唯一、隙があるのがスプリントくらいだが、マルゼンがいるのだ。太刀打ちできるのは少ないだろう」
と、ルドルフたちにしては楽観的だが、短距離でも歴代屈指の能力を誇ったマルゼンがいるので、さほど気にしていないようである。
「でもさ、学内の風紀維持とかはテイオーじゃ難しいよ?」
「そこはバンブーやバクシンがどうにかするだろう。ブライアンとエアグルーヴは留任させたからな」
「あなた達、何歳なの?」
「あたしたちは普通とはカリキュラムが違うし、そこはまぁ…。それに、レースで強かった分、実は授業出てないんだよね」
「シービー……」
若干呆れ顔のルドルフ。シービーは単位が思いっきりやばいらしく、留年も現実味を帯びているらしい。自由奔放なのはいいが、ルドルフの現役時代から、単位に無頓着であるのが災いし、未だに半分以上が残っているらしい。三冠経験者であるので、お目溢しされているらしいが、年齢は18歳を超えているのは確実だろう。
「仕方ないっしょ?現役時代は君に負け通しだったんだし、ルドルフ」
「それはわかるがな」
シービーはピークアウトがルドルフの台頭とぶつかった悲劇により、ルドルフの前に一敗地に塗れたまま、ターフを去るしかなかった。その事の未練により、学業にも身が入らなかった。それを晴らせるのなら…ということだろう。
「でもさ、君、防犯名目ですごいの隠してない?」
「ガンダムの武器のダウンサイジングの試作品さ。クリスエスあたりに精度の確認させるけど、あの子、銃扱った事あるの?」
「アメリカの分家に問い合わせましたが、アメリカにいた頃、シューティングレンジに通っていたようです。とはいえ、すごいですな…」
「まぁ、念の為だから、使わないの祈るよ。こんなところに入る盗人いるの?」
「いるんだよ、度胸試しの命知らずがな」
「まぁ、麻酔弾入りのライフルはあるようだね?普通に」
「ゴルシやアグネスタキオンが騒動を起こした時用です。とはいえ、オグリには特別製でなければ効きませんが」
「あなた達の免疫はどうなってるの?」
「私達はヒトより免疫系が強いのですよ、夢原女史。とはいえ、耐性が高いだけで、普通に病気に罹患しますわ」
「だろうね」
ウマ娘は免疫系がヒトより強いが、病気に罹患しないわけではない。また、のぞみAはトレセン学園で騒動が起こった場合の暴徒鎮圧用の火器を持ち込み、それをシンボリクリスエスにテストさせているらしい。
「暴徒鎮圧用というのは、どのような?」
「別の世界で異星人とのハーフや異星人が騒動を起こした時に使われる、暴徒鎮圧弾だよ。基本的には、この時代のライオット弾と同じゴム弾だったり、特殊な麻酔弾さ。違うのは、技術の差で、弾丸のサイズが遥かに小型化されたり、改良されて、ショットガンでなくても使えるようにされてること」
「23世紀の割に、文明が進んでませんか?」
「件の世界は異星人のプレゼントをものにしたのさ。波動エンジンやマクロスを」
なお、波動エンジンはタキオン粒子を基礎とする理論で構成されるモノであり、ガイア(反地球)での『次元波動エンジン』とは別物である。波動砲も原理は『タキオン粒子砲』というべきものであるが、強力なものは銀河を容易に吹き飛ばせる。しかし、大国が惑星破壊プロトンミサイルを大量に保有しているのを考えると、波動砲はかわいいものである。地球連邦はガルマン・ガミラス陣営であると、ボラー連邦に認識されており、地球本土での決戦もあり得ると危惧されている。
「ただ、それに比例して、ボラー連邦とかもいるからなー…。遠くない未来、あたしはそれとの戦争に駆り出される」
「大変ですわね」
「それが仕事だしね。しゃーないさ。元の世界でも太平洋戦争してる身だ。そのほうがまだ気が楽さ。同じ種族だし」
「そういう問題ですの?」
「異星人相手だと、絶滅戦争になりがちでね。ガミラスしかり、白色彗星帝国しかり……信じらんないけど、連中、戦争を奴隷を得る手段だと思っとるみたいなんだよね、やんなっちまうよ、蛮族と文明人の特徴を併せ持つってのは」
「話し合いは?」
「通用しなかったそうな。白色彗星帝国は論外だし、ガミラスも『奴隷か死を』だったそうでね。それ以降は相手の母星の殲滅も辞さないのが宇宙戦争の戦法になっちまった。だから、波動砲が駆逐艦にまで普及するんだ。遊星爆弾で地球をボコされたお返しには、ちょうどいいってね」
未来世界の地球は宇宙戦争で『目には目を』の精神が根付いてしまっている。地球人、とりわけ日本人の持つ破壊兵器への高尚な精神はガミラスや白色彗星帝国には何も意味はなかった。その挫折と報復心が波動砲のフリゲート艦に至るまでの装備に結びついたのだ。
「おまけに、億で聞かない位いる『宇宙怪獣』が銀河の中心に潜んでたりすることもあるから、木星型惑星をブラックホール爆弾にしたり……。未来世界は混沌さ。そんな世界にいると、この世界みたいな平和が身に沁みるんだよ、職業軍人だと、なおさら」
「この世界への滞在は長くなりそうだな、アンタ」
「ブライアンちゃんの願いを叶えてあげないとならないからね。長丁場は覚悟してる。こっちの世界の医療技術と波紋法の対価は果たしてもらいたいって、連邦のお偉方は」
「わかっています。元はこちらが持ちかけたことですから。治療のおかげで、今一度、夢を追えるようになった者は多い。そちらも要請に応えられる態勢を」
「わかってる。幹部達への定時連絡で言っとくよ。次回の定期便で『行きたい子』のリストアップは頼む」
のぞみの言から、ウマ娘世界とドラえもん世界との間の次元ゲートの設営は完了済みであり、『治療を望むか、休養を取りたいウマ娘』達が時たま定期便で往復している事が明確に示された。騒動を起こさないため、ゲートは海中型で、移動も波動エンジンに換装された『M型潜水母艦』(本来はロックウッド級という名を持っていた潜水艦。ジオンで運用されたマッドアングラー級の元となった。連邦が奪還後に連邦仕様に差し戻されたが、母艦機能は維持された。その際に艦級名も改められた)が使用されている。23世紀現在の技術で改修されたため、21世紀の探知網では感知できない(水中用のアクティブステルス機能が加えられたため)。地球連邦海軍の誇る潜水艦だが、ジオン残党の減少や海軍の存在意義の希薄化で『暇を囲っていた』ため、トレセン学園との連絡便に転用されていた。なんとも物寂しいが、宇宙軍に海軍本来の役目を奪われた後の時代の海軍などは『沿岸警備隊扱いなら、まだ幸せ』な方である。
「わかりました。しかし、よろしいのですか、貴方の権限とはいえ、海軍の一個潜水艦隊を動かすなど」
「海軍の連中、宇宙大航海時代の到来で暇囲ってるし、一年戦争で全滅に近い損害負ったから、太平洋地域を守る艦隊しか水上艦隊は再建されてない。一時の軍縮で、潜水艦隊もかなり減らされてね。白色彗星帝国の戦争が終わった後は再建に動いてるけど、今さら洋上海軍の再建は…って言われて、潜水艦隊から再建されてるけど、やることがない。だから、こういう雑用を喜んで、やってくれる」
地球連邦海軍の再建はスペースノイド閥の反対で抑えられ、MSも『アクアジム』がいまだ現役という有様である。流石にかわいそうだという同情論が強まったため、細々と研究が続いていた水陸両用機が現用機の『ジェガン』をベースに開発され始めている。連邦軍の水陸両用機の更新は(本土防衛の強化と再建の一環で)再開される見通しである。
「宅配便まがいのことを海軍にやらせるたぁ、あんたのいる宇宙軍ってのは、そんなに偉い部署なのか?」
「緊急展開部隊だからね、ひどい時は宇宙軍のお下がり(ジェムズガン)が地上軍に回されてたそうな」
地球連邦軍はここ最近、宇宙軍を優先するため、地上軍は『二軍』扱いがまかり通る有様であった。そのため、ティターンズの反省もあり、宇宙軍は強大な権限を持つが、地上軍は軍制上の理由で存続する『お飾り』と扱われ、不遇を囲っている。デザリアム戦役でようやく光があたったが、長い道のりだったとは、地上軍の高級将校の談。
「いくらあんたが少佐ったって、海軍の上の階級の連中が動いてくれんのか?」
「連中は普段、係留されてる船の上で釣りしてるからね。いわば、失業対策のためのショールームのお飾り。仕事を与えれば、なんでもしてくれるよ」
それは組織の存在意義の殆どを宇宙軍に奪われた海軍の姿であり、別世界の住民であるシリウスシンボリすらも同情してしまうほどであった。しかし、宅配便や旅客船まがいのこともしていなければ『給料泥棒』と後ろ指をさされる連邦海軍。一年戦争からの戦乱で、民間の旅客船事業者のほとんどが死に体になった故の副業であり、政府もやむなく認めている仕事なのだ。(無論、戦死率が高い宇宙軍を嫌い、地上軍で定年まで遊んで暮らそうという者もいるが)
「やれやれ、この世界の海軍の連中が聞いたら、どんな顔するか」
「いい顔はしないと思うよ。宇宙軍も『空軍』の子供じゃなくて『海軍の後継』みたいな面してるから」
地球連邦軍は国連時代に最大規模の軍隊であった『アメリカ合衆国軍』の血統は編成や兵器面などで継いでいるが、歴史的には『日本連邦軍の後継』と言える側面が多い。それを示すかのように、大日本帝国陸軍の時代のような軍閥が跋扈した時代もある。更に、戦争後の短期間の平和だけで、軍が短期間に腐敗してしまうことも多いなど、良くも悪くも『歴代の日本軍隊の特徴』を変に残している。その一方で、エース部隊が実質的な『紛争唯一の実働部隊となる』傾向もある。
「変にアメリカより、日本の歴代の軍隊に近いんだよ、地球連邦軍。軍閥同士の争いは起こるわ、一旦は不要判定されて、有事に再編成されるとか」
「それで、一部の優秀な連中を数か所に集めて、それで戦わす……。ドイツ軍や日本軍が末期にやった手だな」
「うちはその考えの延長線で生まれた隊なのさ。事実上、ロンド・ベルの分遣隊みたいな扱いでもあるから、先輩達がガンダムタイプを引っ張ってこれるのさ」
「どこまである?」
「興味あるんだ?」
「いいから答えろ」
「失礼だぞ、シリウス。…すみません。従妹は口が悪いもので……」
「元気があってよろしい。学生はこうでないと」
シリウスの不遜さに、ルドルフが咎める。如何に同年代の人物と言えど、のぞみは『客分』かつ『成人』なのだ。シリウスに、のぞみは鷹揚に接する。『久しぶりに』高校生らしい会話が聞けたからだろう。
「あんた、本当は何歳だ?」
「1949年の段階で、戸籍上は20の前半。こう見えても既婚だよ」
「なにィ!?既婚……だとッ!?」
「女史の故郷での時代を考えろ、シリウス」
シリウスの意外にうぶな反応に、クスッと笑うルドルフ。忘れられがちだが、シリウスも大人びた口調と容姿とは裏腹に、まだ高校生なのだ。驚くと同時に、顔を若干、赤らめていることから、自身の個人トレーナー(ウマ娘達は引退・卒業後に、個人トレーナーと結婚する事がままある)とはそこまでいっていない(遠回しに好意は口にしているが)事が丸わかりだった。
「若いっていいねぇ~」
「親戚のおばちゃんみたいな反応ですわね」
「成人済みかつ、家庭持ちだしね、こちとら」
ジェンティルドンナも先輩のうぶな姿を面白おかしく感じたか、口元が緩んでいる。のぞみは家庭持ちの身として、学生のうぶな姿を客観視することで、若き日(前世の)自分の姿を思い返すのだった。