――カールスラント空軍の形骸化に伴い、連合空軍の主力とならざるを得なくなった扶桑空軍。結局、元の陸海の航空隊の要員に統一した再教育を施す必要があった他、遥かに高速のジェット機が主力化するためのパイロット装備の近代化も必須となった。64Fはその再教育の必要がない事から、重宝された。G耐性の必要度がレシプロ機とジェットでは桁違いである故で、また、扶桑の製造した個体は史実より機体強度が高くされている。これは扶桑のパイロットは『格闘戦の鬼』である故に、旋回戦の繰り返しで『機体構造の疲労が大きくなる』事を懸念したのと、ジェット機はレシプロ機と違い、おいそれと新造できるわけではないからである。1949年時点では、既にF-4EJ改の量産が軌道に乗り、次期戦闘機である『F-14』、『F-15』も生産開始間近であった。これは扶桑軍の財政が(国家総力戦を前提に予算編成されていたので)自衛隊より遥かに豊富であること、扶桑軍が種類を絞ることのデメリットを嫌った事による。また、自由リベリオン軍は日本連邦軍から独立した指揮系統を持つことが検討され、米国も推していたが、扶桑国民がそれを否決し、日本連邦の一部隊として、公的には存在することとされた。これは扶桑の国民性によるもので、反乱を恐れたためであった――
――史実の意趣返しではなく、扶桑国民が天皇への反乱を恐れたからという点に、扶桑国民の自由リベリオンへの信用度の低さが表れており、扶桑への忠誠を示すため、自由リベリオンは精強であるしかなかった。それも一つの悲劇である。また、開発した軍用機のライセンスはもれなく、日本連邦に発行することとされるなど、匿われの身である故の肩身の狭さもあった。とはいえ、それはまだいい方である。時空管理局は地球連邦軍の軍事力無しに、現状を維持する事すらできなくなっていたし、オーブ首長国連邦も『貧弱な宇宙艦隊では、今後に起こり得る動乱へ対処できない』現状から、地球連邦軍に地球圏全体の治安回復を委託する有様であった。つまり、地球連邦軍は多正面作戦を強いられているわけだ。とはいえ、コズミック・イラ世界は『楽な仕事』ではあった。『初歩的な核融合炉の小型化に手間取っている』くらいの平均技術(部分的には優れている点もあるが)であったからだ。既に旧型のジェガンにすら、凄まじいキルレシオを記録されるとのことで、これは管制OSの性能差、地球連邦軍の中でも比較的に精強な部隊が派遣されているのが大きいらしい――
――コズミック・イラ世界は大人のぞみの次の任地でもある。それ故、シンやルナマリア(ジャンヌ)から、状況の説明を受けていた。コズミック・イラ世界は地球連邦軍の介入が二度ほど行われた結果、プラント(ザフト)は『外征能力自体は残ったが、人的被害が大きく、それどころではなくなった』、地球連合は魔女狩りに等しいロゴス狩りの影響で経済がガタガタ。軍事力もブルーコスモス派の造反で見る影もなく、烏合の衆化。やがては地球連邦に恭順すると見られているという――
「ファウンデーション王国、そんなきな臭い国?」
「ええ。国自体はキプチャク・ハン国……つまり、かつてのモンゴル帝国から分かれた国の一つの後裔を称しているそうですが、定かではないとの事です。技術力自体はオーブやプラントより進んでいるはずだと。まぁ、地球連邦に比べれば『世代遅れ』でしょう」
「こっちは核融合炉を超える動力に手を付けてるからなぁ。装甲技術は?」
「通常の装甲はPS装甲やその派生技術の実用化後は停滞してますからね。ネモやジャベリン用の廉価版のガンダリウム合金で十分な耐弾性能がビームにも得られるくらいですよ」
「あのグレードで?遅れてんなー…」
「まぁ、こっちは火力が装甲に勝る状況が続いてましたからね。旧式の実体弾の機体なら、ジャベリンを使うまでもないという話です」
「んじゃ、ジム・キャノンⅡでいいくらい?」
「ジンやシグーの世代相手なら。ゲイツ以降だと、ビームがありますから、あのくらいの装甲だと不安が」
「まぁ、チョバム・アーマー風の通常装甲だしな、あれ。で、連中の情報は?」
「詳細は不明ですが、コズミック・イラ世界での最新技術『フェムテク装甲』を持っているとの事ですが、ジャパニウム系の素材を知る我々から見れば『見劣りする』かと」
「初期の超合金Zでも、大抵のMSよりも数段頑強に作れるからなぁ。ニューZを破損させるのに、キュベレイやクイン・マンサとか、ワンオフの高性能MSの最大火力を不意打ちで当てるしかないのを考えると、向こうが見たら、泡吹くよ。スーパー系で比較的に柔い、合成鋼Gでも、普通にガンダリウムの最新型より強いし。まぁ、普通に行けば、こっちが不利になる事はないな」
「問題は連中の練度ですよ。ジオンみたいなイカれた練度じゃないと思いますけど」
「ニュータイプやそれに類する能力持ちの場合の対策は?」
「思考と逆のことをできるようにするとか?トチローさんに聞いたら」
「アバウトすぎっしょ…。とはいえ、オーブにも対策は考えさせてんでしょ?」
「ええ。先方は一両日中に提示するとの事です」
「果たして、連中がどの程度か。ジオン残党でいうと、中くらいかな?」
「どうでしょうね。コズミック・イラはエースパイロット同士でなきゃ、つば競り合いに類するようなことは起きませんからね、めったに」
デザリアム戦役後の時期になると、旧型機で新鋭機と戦えるような練度を保つジオン残党はグンと減少したが、連邦軍より平均練度は依然として高いため、意外に白兵戦の機会は多い。だが、コズミック・イラでは、エースパイロットと一般パイロットには『管制OSを含めての埋められない差』がある(特に地球連合系に顕著である)ため、エースパイロット同士以外で『白兵戦』が起きる事は稀であった。
「俺なんて、たいていはサーベルや対艦刀でバッサリでしたから、未来世界に来てからは『斬られ役』に近い有様でしたよ。連邦の人たち、一般パイロットに至るまでがつば競り合いしてくるし、殴る蹴る……」
「まぁ、未来世界はOSの規格が勢力で統一されてるから、ハードウェアの性能だけで強さは決まらないからね。じゃないと、『ジオンのMSがガンダムを倒す』なんて芸当をやれるはずはないし。民間の研究所が軍の兵器よりグンと強いロボを造れるはずはないよ」
「あいつら、元は民間の出なんすか!?」
「あれ、知らなかったの、シン。マジンガーもゲッターも、コンバトラーVも、ボルテスVも、元々は民間の研究所が造ったものだよ。軍の発注物と違って、採算度外視で研究成果を盛り込めるから、一機で軍団相手に戦える性能を与えられる。本格戦闘用に作られていない初代のゲッターでも、MSの一個師団より強いよ」
「うへぇ……アニメみたいな話だなぁ。未だに信じられませんよ」
「初代ガンダム以来のガンダムが強いものが多いのも、採算度外視で造ってたからだし、そういうものさ。例外はマークⅡくらいか」
ガンダムマークⅡは量産前提で予算が抑えられた影響もあり、性能的に秀でた点が(当時としても)あまりなかったことは、デザリアム戦役の後は『子供でも知っている』。技術的には偉大であるが、戦闘用MSとしての戦果は(グリプス戦役末期には既に)パイロットの腕に依存していた事から、『技術的な意味では偉大』と注釈をつけるべき機体とされている。それでも、インパルスガンダム(接収した当初)くらいであれば充分に優勢に戦える。これはインパルスガンダムはバッテリー駆動であり、マークⅡは核融合炉駆動。それにより、パワートルク等に覆せない差があるからだ。
「それでも、インパルスよりパワーがありますよ?」
「そりゃ、核融合炉搭載だし。バッテリーで一年戦争の機体よりパワーを出すなんて、こっちのほうが聞きたいくらいだ」
その言葉から、少なくとも、コズミック・イラの第二次大戦のワンオフモデルのバッテリーは一年戦争中の機種以上の出力は担保している事がわかる。明確に劣るのは行動可能時間だろう。
「ハイパーデュートリオンエンジンも理論上の数値と実測値に乖離があるって、トチローさんが言ってるよ。たぶん、使用素材が耐えられる限界を無視した、理論上の数値が申告されてたんじゃないかって。古い理論の核分裂の炉心じゃ、出力に限界があるから」
「原子炉が旧型か……プラントの技術者が聞いたら、泡吹きますよ」
「こっちは核融合炉心の限界に行き着いて、それを越えようとしてるところだもの。それに、ワンオフモデルには、ミノフスキー・ドライブが積まれる時代に入りつつある」
ミノフスキー・ドライブは改良が進めば、従来の核融合炉を置き換えると目されるほどのものだ。試作段階のものでさえ、従来の核融合炉を三基積むZZを上回る出力をたたき出せる。その改良型が(ハーロックらの提供した超技術で)作り出され、搭載され始めた。従来の核融合炉の規格で製造されているため、レトロフィットも可能であった。とはいえ、通常の核融合炉より調整が難しい側面もあり、現状はワンオフモデルのみの特権だ。
「でも、あなたの今の姿は先方に?」
「伝えました。腰を抜かされましたが。ユーラシア連邦には極秘にしろとも釘を刺されました。仏の英雄の転生先がコーディネイターなんて、ブルーコスモスの発狂案件ですからね。無論、公言するつもりはありませんが」
ルナマリア・ホークはジャンヌ・ダルクの転生の素体になった都合上、ルナマリア・ホーク本来の容姿のほか、ジャンヌ・ダルクの生前の容姿を取れる。無論、生前の宝具も使える状態である。
「宝具は?」
「使えますよ。その気になれば、コズミック・イラのすべての大量破壊兵器を弾けるかと。一個、現状不明なものがありますが、今の私には、さして脅威ではありません。ただ、使うときは正体を晒すも同然なので……」
「それ、コズミック・イラの大量破壊兵器の技術陣が聞いたら泣くなぁ。最も、騎士王のアヴァロンのほうが防御力は良いそうだね?」
「あれのほうが格上の宝具ですから。最も、マジンガーやゲッターの前では怪しいと仰っていましたが」
「逆に言うと、英雄の奇跡を機械技術が超えてるってことですよね、のぞみさん」
「そういうことだね。極限まで発達した科学は魔法と変わらないという諺も残ってるっていうし。波動砲も無敵ではないし、矛盾の語源もそうだ。そういう関係なんだ。あの空間兵器『ドグラ』でさえ、空間支配能力の前では無力だというからね。あたしらが目指すのは『その領域』だ。幸い、あたしらには『いくらでも』時間はある。親や親戚には言えないけどね、この世界じゃ、婚期を心配されてんだ」
「今どき?」
「親父が意外に古風なんだよ」
大人のぞみは婚期を父親に心配されているとぼやき、それに内心でうんざりしていることを覗かせた。その点、のぞみAは気楽であるが、大人のぞみは26歳という実年齢から、昔の基準では『行き遅れ』になっていることを実父に言われ、うんざりしているようだ。
「そっちのあたしは気楽でいいよ。こっちはおふくろと親父に『結婚しましたー!』って事後報告で済ませたいんだよ。あと四年で三十路なんだしぃ……干渉はごめんなんだよな」
なんだかんだで、オトナ世界でも、ココのことは『恋人』と認識しているようである。また、年齢的に結婚にまで、親の干渉を受けたくないという反発心があるようだった。親にとっては子供は『いつまでも子供』だが、大人のぞみは戦前期なら『親になっていても不思議でない』くらいの年頃に達している。年齢故の反発もあるが、これから地球の統治という重責を担う予定なのだから、今しばらくは一人の『娘』でいたいようだった。
「それに、親父たちとは、それが今生の別れになるかもしんないからね…」
それは自身の存在の変質で『両親や親類と同じ時間は過ごせなくなった』故の哀愁でもあった。彼女自身、この動乱の後は『1000年女王の後継者』として『この世界からは行方を晦ます』予定であり、のぞみAの代行としての活動を主体にする予定でもある。それを隠した上で、『夫の仕事の都合で海外を飛び回る』事にして、帰省を含めての定期的な連絡は取るが、基本的には『この世界の日本には戻らない』。表向きは『夫の仕事の都合もあって、教職を退職。国連の関連機関に転職した』としたいようだが、ある意味で既に叶っていると言える。既に彼女自身、この世界の世間に『教職から自衛官に転じた経歴の持ち主』と報じられているからである。
「でも、顔出しちゃってるし、自衛官で通したらどうです?この動乱でそういう人、本当に増えてますし」
「そうするかなぁ。自衛隊の正規の教育は受けてないけどね、本当は」
と、細かいところを気にするが、大まかにはそうする事にしたようだ。とはいえ、事後承諾とはいえ、三佐の階級を20代そこそこの若者に付与している事は後日、防衛省でかなり荒れたという。とはいえ、プリキュア資格者、それもチームリーダーという箔は現地の防衛省を安堵させ、後日に(自衛隊の組織再建のために)宣伝に利用されることとなった。こうして、オトナ世界では、プリキュア資格者による戦闘は『事後承諾』で法的に正式に容認されることになる。そこはドラえもん世界のグダグダよりはマシと言えよう。ドラえもん世界での政治抗争は世代間闘争も内包していたからである。
――その通り、ドラえもん世界の日本はことはがプリキュア戦士という事が、2011年に判明していたのにも関わらず、彼女よりも知名度は上で『番組の顔』も勤めていたはずののぞみのことで外交問題に至ってしまった。この問題は日本が扶桑に『軍事のことで強く出られなくなる』原因となったわけである。彼女の転職を官僚の勝手な思い込みと、前時代的な『旧軍人への侮蔑意識』で潰したと報じられ、世論は瞬く間に過熱の様相を呈した。騒動の渦中にあった官庁の事務次官らは部下を怒鳴り、その彼らはもっと下を怒鳴る……という『負のスパイラル』であった。結局、騒動は総理大臣と渦中の官庁の担当大臣が扶桑の皇室と重臣らに直接の謝罪をし、のぞみの転職願いは『出さなかった』事にして、『問題は起きていない』扱いにすることで幕引きが図られたが、予備士官らの反乱が恐れられ、彼らを『口封じ』代わりに、前線に送る事が日本側の主導で行われた。これは日本の失態を国民に触れ回られるのを恐れた官房長官の主導した事であった。この騒動で予備役制度がガタガタになった扶桑軍は以後、副業を認める形で、定年後の生計を立てる計画を立てられることにし、高額の恩給を保障せざるを得なくなる。また、教育機関から実質的に追放された将校らへ次の業務を用意せざるを得なくなったのも、人心的な痛手であった。結局、自衛隊も損害補償を高レベルで行わなくてはならないため、ドラえもん世界での自衛隊そのものは財政難が続くのであった――
――実際、色々と政治的な制約が加えられたため、扶桑皇国軍は総動員体制すら構築できず、あらかじめ配置していた外地部隊だけで防衛を行っていた。その消耗度は許容量を超えており、結局、日本側の願いとは裏腹に、本土の部隊を増援に割かねばならぬ事態となった。ここに至り、日本の政治家も(流石に防衛責任者に自刃されては、自分達の方針の不手際が扶桑人に追求されるため)扶桑軍の戦時体制への移行を容認。とはいえ、無闇なナショナリズムの高揚は禁止された都合上、防衛戦争という事を強調しての報道がなされた。人員不足は士官層に集中していたため、幹部自衛官を送り込んで補充する方法も用いられた。とはいえ、扶桑は20代の佐官が普通にいたため、前線勤務に耐えうる若手が意識的に送り込まれた。これは普通に『戦功があれば、階級の特進がある』時代を考慮してのことで、黒江たちが勲功華族であり、軍階級が将官になっていることも大きかった。機甲部隊の構成は本土が(インフラの都合で)軽装備、南洋に重装備を集中するという構成が1960年代まで続く。また、日本の癖というべき『低燃費』は兵器分野で顕著になり、ダイ・アナザー・デイ当時に『1950キロを飛べる紫電改が航続時間の不足を理由に、性能の改良を指令された』のは、魔女の世界の諸外国を驚愕させたのは記憶に新しい。扶桑は『欧州でそこまでの航続距離は…』とボヤいたが、日本側は『太平洋戦線は絶対に起きるから、それに過不足なく使うためだ』と押し通した。結果、太平洋戦線で既存の航空兵器を使用できたのは、航続距離を維持したためであった――
――必然的に燃費の良いエンジンの開発と燃料の精製技術の改良が行われた結果、1940年代には『ありえない』ほどの低燃費のジェットエンジンが生まれ、カールスラント式のジェットエンジンを瞬く間に市場から駆逐。自由リベリオンは一挙に航空先進国に躍進。扶桑はその恩恵もあり、短期間で『ジェット機を多数運用できる』航空強国に脱皮した。とはいえ、旧来機もまだまだ現役が多く、そこは史実での『朝鮮戦争』と重なる側面である。また、必然的にリベリオン製兵器を主体に規格が再統一されていった結果、カールスラント製兵器は『使い捨て』という形で、各地で消耗していった。そうでないのは海軍艦艇だが、大型水上艦艇は『ショールーム』と揶揄され、修理が後回しにされており、カールスラント海軍の数十年越しの夢は水泡に帰したも同然となっている。その間に、扶桑海軍は着々とミサイル装備艦を増備していき、旧来型の少なからずを置き換えていた。また、潜水艦も戦後基準の静粛性に改造されていったため、現状で『扶桑に質で勝てる軍隊はいない』という事となった。外地部隊の生き残りは再編され、練度の高い要員で固められるため、量の少なささえ補えば、世界最高と言えた――
――とはいえ、少数で多数を倒すには、普通のものでは弾薬が追いつかない現状に業を煮やした者たちは公然と未来兵器を導入していった。64Fなどの司令部直属以外の部隊はこうした手法で未来装備を保有した。コスモタイガーやコスモ・ゼロは地球連邦軍の現役機であるので、メーカーに発注すれば、数日以内に現物が届くため、機材補充の遅さに業を煮やした者が積極的に発注。気がつけば、南洋航空軍の少なからずはコスモタイガーとコスモ・ゼロが普通に稼働する様相になっていた。操作性も『21世紀型戦闘機より簡単』であったからだ。喜ばれたのは(世代が遥かに新しいからだが)スロットルのレスポンスがレシプロ機並に良くなっていること、燃費が気にならないからで、これらはジェットの性急な導入に反対論があった理由であったので、その両機種は歓迎された。この両機種はマルチロール機としても優秀であったため、レシプロ戦闘機を爆装させるより遥かに効率がいい(特に日本系レシプロ戦闘機は空戦特化の設計であったので)のも、ウケが良い理由であった――
――これら高性能ジェット機はリベリオン艦隊には重大な脅威であった。巡洋艦以下の艦艇であれば、一撃で轟沈もありえたし、地上部隊も『下手な四発重爆よりも濃密で高精度の爆撃がされる』と恐れた。1940年代の防空兵器では、コスモタイガーなどを撃墜するのは極めて困難であり、ボフォース40mm機関砲で傷一つつかない(宇宙時代の戦闘機なので、当然だが)ため、リベリオン兵はその存在に怯えた。更に、ミサイル一発で並のコンクリート造の地下要塞を吹き飛ばせるので、コスモタイガーとコスモ・ゼロは現地の抑止力としても機能した。とはいえ、未来世界のパイロットと違い、扶桑のパイロットは戦闘爆撃任務を元々は軽視していたため、上手く活用しているとは言えない状況ではあった。だが、レシプロ機より数段上の効果があるため、軍事的意義は大きかった。一発で『巡洋艦を消し飛ばす』ミサイルを撃てるのだから。これが物量に対抗するための最終手段であった。ウルスラ・ハルトマンは技術者として、チート行為に猛反対していたため、この報に顔を曇らせたが、軍事的に日本連邦が負けるわけにはいかないことはわかるので、複雑であったという(ウルスラがなかなか出世できない理由は『柔軟性の欠如』が理由であった)。ウルスラは1945年次の頃に関わっていた多くの開発プロジェクトが(ドイツの横槍で)中止に追い込まれた事を根に持っており、それが彼女の行動に影を落としていた。中でも『He162』には入れ込んでいたため、採用の中止に激昂したと伝わる。同機はノイエ・カールスラントで相当数が生産済みであったが、部隊配備は潰され、大半が処分された。これは既に世代がより新しい『F-86』の生産が決められていた事、『ナチ政権下で採用されていたから』という戦後ドイツのイデオロギーによるものであった。とはいえ、150機ほどは(既存機の老朽化を理由に)難を逃れ、繋ぎとしての実戦配備につけており、実際の出動はほとんどなかったものの、単発ジェットの可能性は示したが、ウルスラとしては『高コストのMe262より安価なのに』と不満タラタラであった。仕方ないが、実際の同機は(状況が違うのに、史実通りに設計したことが『手抜き』と批判された)練習機として使うにも、安定性や信頼性があまりに低かった。ウルスラは改良で『どうにもなる』と述べたが、史実を見る限りはそうではない。一時は決戦兵器と目されていたが、F-86があまりに優れていた故に『欠陥品』とのレッテルを貼られ、武装の優位(史実の計画通りに30ミリ砲を積んでいた)を帳消しにしてしまう操縦性の悪さ(ウルスラは『ベテランの搭乗を前提にしているから問題なし』としたが…)もネックとなり、結局は一時の使用の後は博物館行きであった。それを駆逐したのが、リベリオンの『F-86』なのは歴史の皮肉だろうか――
――そんな様相で、1949年も晩夏を迎えてきているわけであった。常夏の南洋に季節感はない。とはいえ、常に26~32度程度であるので、21世紀日本の夏のような『極端な暑さ』ではなく、湿度も低い。その事から、一見すると、南国のリゾートである。だが、各所で軍の玉砕も起こり始めており、末端地域の数カ所は敵の占領下にあった。扶桑は戦艦部隊のゲリラ攻撃で敵の進出を抑えていたが、その戦艦部隊の主力の尽くが定期ドック入りを迎えてしまうという緊急事態に陥った。そこで取られたのが『新造艦の竣工を急がせる』という手段であった。予てより『長門型~紀伊型戦艦の代替』名目で建造していた『水戸型戦艦』であった。一番艦は竣工して早々に活躍。二番艦以下が最終艤装中の状況であった。改播磨型という名目で予算が成立。将来的に大和型の初期艦を置き換える意図も含んでの計画であった。水戸型は一番艦が現有最強の戦力として君臨。ゲリラ攻撃を行い、敵の補給を断つことで、進撃を間接的に食い止めていた――
――そんな中、水戸はそんなゲリラ戦法を阻止すべく派遣された敵艦隊と対峙しようとしていた――
「敵艦隊、捕捉。距離は60000。戦艦は5、巡洋艦7隻、駆逐艦は30隻。その他のジープ空母が6。戦艦は熱量からすると、モンタナの改良型でしょう」
「ジープ空母(護衛空母)か。空母機動部隊が動けんのを狙ってきおったな。レシプロ戦闘機などは恐れるに足りん。全艦、対艦・対空戦闘を用意!」
「敵はM粒子による妨害に気づいた模様。索敵機を出しています」
「よし、敵の出鼻を挫くぞ。対空ミサイル、敵索敵機へ。その後は全速で突撃するぞ!」
M粒子で航空戦力や視界外戦闘の利点が削がれ、有視界戦闘も当たり前となった魔女の世界。戦艦は突発的な怪異への生存力含めて重宝されるようになっており、大艦巨砲主義が息を吹き返す事態であった。これは怪異の強力化と魔女の海上移動拠点としての生存性も加味してのもので、魔女の運用は縮小しつつも、細々と運用していることの表れで、魔女運用用の油圧カタパルトが撤去されていない戦艦もいた。戦闘距離は敵から20キロ前後。それが1930年以降の連合艦隊の想定決戦距離である。一定の損害は覚悟の上で、稼働中の播磨型と隊列を組んだ水戸が先陣を切る。
「ミサイル、索敵機を撃墜」
「よし、全艦、突撃隊形。全速で突っこめ!」
連合艦隊と敵艦隊は互いに相対する形で接近しつつあった。ミサイルで恐怖を与え、戦艦の突撃で撤退させる。それが連合艦隊のダイ・アナザー・デイ以降の常套手段である。ダイ・アナザー・デイ時ほどは艦の性能差はないと思われるが、火力は依然として優位である。なにせ、リベリオンは合理主義故に、砲身命数の短い46cm以上の口径を採用する事はまずないからだ。採用はなくはないが、リベリオンは根本的な新型よりも既存の設計の拡大を選ぶのが、ノースカロライナ以降の傾向だ。
「敵は何かかしらの対策は立てて来とるだろう。だが、戦艦の砲で高速徹甲弾以上の技術は使えん。重量弾くらいが関の山だ。だが、侮るなよ。全艦、25000で砲撃だ」
「ハッ」
この日に生起した、この海戦は連合艦隊の『超大和型』の第三陣の正式なお披露目であった。大和を更に二回り以上も大きくしたような艦が隊列を組む姿は統合参謀本部の発表で正式に公にされた。扶桑国民は大和よりも遥かに大きい戦艦が連合艦隊の新戦力となった様に歓喜。大和に匹敵しうる戦艦が現れ始め、心配を顕にしていた彼らには朗報である。呉の壊滅以来、連合艦隊を叩いていた者も多かったが、この新鋭艦のお披露目に、言葉を失った。まさに『汚名返上』と言わんばかりの最新鋭艦は長門や陸奥とは比較にならず、大和が子供扱いの威容。呉の襲撃から五年あまり。連合艦隊は息を吹き返したのだ。扶桑国民は歓喜に湧いた。新時代の象徴である『旭日の軍艦旗』が翻るのもアピールポイントであった。日本人にとっては『失われた海軍強国としての姿の再来』、扶桑にとっては新生の証。旭日旗は二つの大和民族にとって、違う意味を示していたわけだ。仮想戦記の世界でしかありえないはずの『超大和型が主力として君臨する連合艦隊』は並行世界である故の奇跡であると同時に、『見果てぬ夢に消えた』筈の新世代の艨艟達の息吹であった。