複数の状況が入りますが、前半はストライクウィッチーズ世界、最後はウマ娘世界の説明になります。
――魔女の世界の『脱魔女』の風潮は皮肉な事に、魔女主体で立てられた当初の計画がサボタージュで頓挫し、通常兵器の根こそぎ動員が必要とされたからで、後の世の魔女らは『あの時に軍の通常の軍略に貢献できるのを見せていれば……』と嘆いたという。実際、第二世代理論の開発と実験の難航を除いても、世間に『戦争ごっこの穀潰し』のイメージを生んだ点で『1945年に15~18歳であった世代』は罪深い。一部のエースの献身より、凡人の所業のほうを世間は覚えているものだ――
――ダイ・アナザー・デイでは、現地で1943年に制式化された『零式艦上戦闘機』は『1940年制式の旧型』として扱われ、その次の世代の戦闘機が急ピッチで配備されてきていたが、零戦も史実の後期~末期型が緊急で開発され、場繋ぎ扱いで投入された。これは現地の零戦が前期型相当でしかなく、F6FやF4U相手では『カトンボ同然』と見なされたことによるもので、宮菱重工業(彼らは既に烈風に取り掛かっていたため)としても不本意な作業であった。彼らとしても、零式五二型は『年老いた駿馬』というべき扱いの代物であったが、短銃身の二〇ミリ砲しかない前期型で次世代機と戦わざるをえないであろう搭乗員のために『使い捨て』と割り切る形で設計し、生まれた。皮肉な事に、一部性能は劣化しても、武器の火力は確かに向上したこと、わずかでも耐久性が増した事で、乱戦での生存率は前期型より遥かに高く、作戦完了時点の残存機は後期型のほうが多かったという。レシプロ機の最後の華となった同戦役であったが、実際にはジェット機も相当数が投入されている。レシプロ機では当然ながら、F-84F等に対抗不能であったからだ。その際に扶桑はジェット機を『特殊機』として発表しようとしたが、日本側が差止めさせ、普通に『新型戦闘機』とした騒動も起こっている。この事への不満も横須賀航空隊の若手の魔女をクーデターへ加担させる動機となった――
――結局、日本の横槍で空母機動部隊の量が壊滅的になったため、零式の基地配備機も根こそぎ動員して載せたのがダイ・アナザー・デイの実情。そのため、雲龍型は同戦役でのみ『空母機動部隊の体を成して』運用された。大鳳も存在自体が宙に浮いてしまう有様。結局、日本が目論んだ『85000トン級の少数配備』程度でどうにかなる時代ではないため、強襲揚陸艦の航空運用が常態化する見込みである。また、烈風や紫電改も早期に一線機の座を降りる見通しであったため、次期空母は最終的に『大量保有など不可能な』85000トン級に拡大。強襲揚陸艦がそれを補うために運用されるという様となっていく。次期空母の竣工も延び延びになり、大鳳以前の空母をだましだまし使うしかないが、雲龍型は紫電改や流星の運用にすら四苦八苦する規模であった。それも、空母機動部隊が『張り子の虎』と化した理由であった――
――ダイ・アナザー・デイの直前は、戦艦部隊でも一悶着があった。戦艦武蔵の艦内から家具が撤去され、兵らが毛布一枚でデッキにごろ寝をし、食事は麻布を敷き、その上に食器を置くという光景が波紋を呼んだのだ。日本側はこれを『兵を人間扱いせず』と報道。大問題となった。連合艦隊も(既に旗艦ではないはずの)武蔵での風景が政治問題化するとは思わず、大パニックに陥った。これは武蔵の第二代艦長であり、1945年時点での二水戦司令であった古村啓蔵の判断であったからである。連合艦隊全体もそうしようかという意見もあったくらいには有効な『不燃対策』であった。結局、責任は古村にそれを決断させた『先任将校』に押し付けられる格好になった。『家具の撤去』を押し進めた責任は古村艦長にも、現任の井口艦長にも責任はなく、全ての責は自分が負う』と遺書を残し、彼は自刃した。日本側はこの顛末を受け、連合艦隊に『自衛隊規格の家具』を提供。連合艦隊は塗料含め、可燃物の多くをダイ・アナザー・デイ直前に『戦後規格の不燃性の素材』へ緊急で切り替えたのである。奇しくも、双方で事件の手打ちがなされた日は、武蔵をも遥かに凌ぐ戦艦である『富士』が竣工した日であった――
――この事件で当事者となった『戦艦武蔵』は縁起の悪さを理由に、以後は連合艦隊旗艦の座に返り咲くことはなかった。だが、後輩らのために、各種艤装の実験艦としての艦生を辿っていく姿は扶桑の大衆の心を掴み、1950年代には、その生き様が児童向けの絵本となったのである――
――結論でいえば、ダイ・アナザーデイ作戦の直前期の扶桑海軍、その中でも艦政本部は『M動乱のカルチャーショック』、日本が持ち込んだ『モンタナ級戦艦とデモイン級重巡洋艦の性能概略図』の凄まじさに、その自信を喪失していた。『従来の設計では、もはや敵国の新鋭艦へ太刀打ちできぬ』と絶望の淵にあった。それに救いの手を差し伸べたのが、個人単位では、地球連邦軍の誇る二大頭脳である『真田志郎』と『大山敏郎』(23世紀における『トチロー』。30世紀のトチローの遠い先祖)であり、ドラえもんズ達であり、青年のび太。組織としては、海自とその支援企業であった。扶桑は黒江達が個人的に得ていた『それらとのパイプ』をフル活用し、ダイ・アナザー・デイ中にかけ、ごく短期間で新鋭艦を完成させる事に成功し、多数を投入した。また、のび太はその時期に月読調(実質的な義妹)に海底軍艦ラ號の21世紀時点での所在を確認させ、関係者に許可をとって、23世紀で改装済みである同艦の参戦に繋げた。その時に、調は旧日本海軍の轟天振武隊が戦中に本土の某所に築いていた基地の跡を捜索。そこで、ラ號は『次期主力戦艦の雛形』(予定)であったことを突き止めたのである。そこから発掘した『二番艦の基礎設計と武装の概略図』が扶桑に渡り、真田志郎とトチローの両名がそれを『地球連邦軍の規格に沿う、宇宙戦艦』(要するに、ヤマト型)に手直しし、扶桑に譲渡した自動工場で彼らの指揮の元、大戦艦として建造されたのが、64Fが得た個体の海底軍艦である。ラ級二番艦ともいうべき設計の原案は『射角の死角を無くした上で、主砲を今度こそ『51cm砲』に換装し、『フリードリヒ・デア・グローセに負けないようにする』執念が滲み出るもので、『海底軍艦で戦局が万一にも逆転しえたら、ドイツは裏切ってくるに違いない』と想定したものだった。この事項の発覚も、カールスラントの信用の没落の一因であった。扶桑の大衆には知られなかったが、軍事関係者には『史実の親独派』を白い目で見る者が続出したという――
――カールスラント軍全体が太平洋戦線で『人材派遣センター』と揶揄される有様になり果てる原因には、ダイ・アナザー・デイから続いた不祥事の連続、カールスラント人そのものの国際的信用度の低下が大きい。事を起こした当事者に限って、中佐以上の階級にあった軍人であった上、当人の処罰だけでは収まらなくなる国際問題に発展したからで、見せしめとして、ミーナ、ノイマン、ゴルプの三名は意図的に、処罰が公にされた。最も既に、ゴルプは軍を離脱済みであるので、書類上での処罰かつ、最も重い(勲章の一切の褫奪、軍籍抹消。生存不明であるが、バダンとの内通が確認された故である)が。ノイマンは謹慎の意図が込められていたが、それまでにエリートコース一直線の彼女にはショックでしかなく、日本の官僚に罵られながら(ボクシングの要領で)酷く殴打されたことでのメンタル面の傷も原因となり、1947年に軍を退役。自身で立ち上げた機械工学系の企業を率い、第二の人生を生きる事になる。ミーナはノイマンのこの『電撃的な退役』もあり、(敢えて)人事的な処分が時間の経過で解かれていき、人格の変化を理由に、1950年には中佐へ階級を差し戻す案まで出ているくらい、カールスラント空軍の飛行隊長級の魔女の(書類上含め)在籍数は目に見えて減少し、数の減少が切迫するくらいのものだと、本気で叫ばれていたのだ。あの自由奔放なマルセイユを将官にするという意見まであるのだから――
――結局、ウィッチ・クーデター事件で扶桑の魔女組織の基盤はガタガタとなり、魔女の軍事的意義もダイ・アナザー・デイで低下した事から、魔女は戦間期の間、存在を持て余された。そんな中でも、防衛の要と見なされていた64Fには良質の人材が結集されていた。これは各戦線に分散配置されていたエースが使い潰されるのを懸念した日本側の都合が作用しており、太平洋方面以外は『いざというときは捨てる』という割り切りで人員の増強がなされていた。この優遇を快く思わない参謀級の軍人たちが策謀を巡らせた時期もあるが、Y委員会が扶桑の全権を実質的に支配するようになると、途端に手を引いている。1948年頃に天皇が公的に『彼女らは国家防衛の要である』と発言したことで『聖域』として扱われるようになったからだ。近衛師団は縮小改編され、テスト部隊が懲罰的に解体された後では、同部隊が『撃墜数の多い腕っこきを受け入れる唯一の受け皿』であったからである――
――64Fは幹部層を前身時代を含む『生え抜き』と過去の統合戦闘航空団の出身者が殆どを占める。主に活動しているのは、この層である。他は留守部隊とされ、魔女の世界での各任務に従事している。これは留守部隊と幹部層には『単純に埋められぬ経験差』が横たわっていた事、上層部が幹部層以外の隊員の『反乱を恐れた』事により、使い倒して退役させる方針であったからである。とはいえ、日本連邦評議会は空戦魔女の運用に苦慮した。単純な空中給油では行動時間の延伸は不可能であるので、途中で休息の拠点が必要となる。爆撃機のパラサイト運用はミサイル兵器の登場で時代遅れとなる。更に、伊号400潜からの運用も、64Fの幹部層でなければ『戦術的な効果』も見込めなくなったため、取りやめが内定している。64Fに宇宙艦艇が持たせられた理由は、それらを代替する軍事的手段の取得にあった――
――プリキュア達は複数の世界で活躍し、その勇名を轟かせていたわけだが、扶桑皇国にとっては複数の意味での救世主であった。一つは『日本という国の存在に照らし合わせた場合、『史実で軍隊が解体されていた時期になれば、魔女そのものが生まれる可能性が大きく低下する』という可能性が現実となり、既存の人材に去られるわけにはいかなくなったことによる世代間闘争の勃発。新陳代謝の停滞を危惧する『1945年に働き盛りの層を占めていた世代』の事変世代への敵視が肥大化して始まったそれは、扶桑国家の戦争遂行に影を落としている。兵員教育を(エレクトロニクスの導入で)高度化しなくてはならぬ時代が早期に訪れてしまった故の弊害であった。曲がりなりにも、プリキュア達は(現役時代の容姿だが)実際は転生者、ないしは転移者であり、(少なくとも)21世紀基準の中等教育をほぼ受け終えているので、扶桑の下手な魔女より『基礎的な知識』で優位に立っている(例として、坂本は小学校を繰り上げ卒業であったので、そのコンプレックスからか、変に武人ぶるところがあった)のだ。時代は『農村部の無学な子女が花嫁修業代わりに入る』という『戦時中の扶桑でありがちなパターンの入隊』を過去のものとしたが、1940年代の扶桑は(都市部はともかくも)末端の農村にいるような子女が高等教育を普通に受けられる環境などなかった。母親らが夫らに『花嫁修業』を名目に軍に入れさせる事が戦時下における魔女の真の入隊理由であった。それを日本が(知らずに)潰した格好であるため、農村部から猛烈なバッシングを食らっていたのである。日本側はこの農村部の反発に悩み、農業大学を創設したり、師範学校在籍者に救済措置を講じたりしたが、農村部の老人たちは『労働力を奪うな』『おなごに過剰な学はいらん』と喚き散らすのみであった。更に『農家の次男や三男坊の高等官になれる機会を奪うな』とも喚いていた。これは時代的に仕方がないが、昭和の極初期までの日本の農村で『大学まで行ける』のは地主の子弟、それも長子のみで、財産を継げない次男以下は軍隊に入れさせられるのが普通であった。同時に、軍隊は『その層への教育の救済措置』の側面を持っていたのだ。日本は扶桑の農村の老人らのこの声に頭を抱える事となり、未だに完全な解決には至っていない。これは魔女であっても、似たようなもの。その兼ね合いで、日本側としても『既に中等教育までは済ませている』プリキュア達は今後の扶桑軍の風土の近代化に欠かせぬ人材だったのだ――
――のぞみが(表面的に)中島家との関係を絶っているのは、親子三代に渡る『長島飛行脚製品のテストの担当』を『癒着』では?と問題視されたからである。魔女界隈では、親が若かりし頃にしていた業務をその子が引き継ぐ、あるいは姉の仕事を妹が継ぐことは当たり前な事であった。『魔女の直系尊属であれば、前任者よりも強力な魔力、あるいは固有魔法を持つ』可能性も高くなる。故に、魔女の界隈では『縁故採用』も罷り通っている。ガリアの英雄であるペリーヌにしても、その祖母にあたる『ペネロープ』(開戦時に一族郎党共々に死去)が青年期以前に強力な魔女であり、その資質を隔世遺伝で受け継いだのである。結局、日本は現地の魔女の雇用枠をグチャグチャにした責任を取らされる事になり、現地の教育体制を刷新することで生ずる『ふるい落とし』で負け組になる農村出身者への救済措置は日本側の財政負担とされた。その対象人数は膨大であったため、日本側では『犯人探し』が始まる有様であった。そもそも、師範学校は『学費無料と雇用前提の入学が売り』であったので、そこを廃してしまえば、強い反発が生まれるのは当然のことであった。日本は『制度を廃するだけで、現在に師範学校に在籍する生徒は新制教育大学にそのまま在籍する権利を持たすし、経過措置として、雇用の優先権があるから……』と説明したが、師範学校の生徒集めの前提を覆されたも同然なので、反発は収まらなかった。ここに至り、日本は『旧制度が上手く機能していたところに、戦後の新制度に無理にすげ替えるとどうなるか』を思い知る事になり、1945年時点の師範学校や士官学校在籍者への財政負担を軽減、あるいは免除する救済措置を講じなくてはならず、それも『魔女の雇用の任期制』制度の完全消滅と就労時間の長期化を引き起こした。扶桑の農村部は『教育の近代化』に対応できなかったことで衰退し始めたのである――
――軍も求めるべき人材の変容により、教育機関で抱え込む人数が肥大化。日本が押し通した方針で『10代前半の魔女の雇用』が不可能となったため、魔女の平均年齢が激しく高齢化。また、世代間闘争の弊害で中間世代がおらず、極少数の古参が大多数の新人を支えるという構図が常態化した。古参は小学校すら繰り上げ卒業した者も相当数であったため、その再教育にも労力を要する有様であった。21世紀の高等学校卒程度の知識もない者も大多数。それらの人員に限って、優秀な魔女であったりと、魔女育成の根幹は既に崩れていた。故に、21世紀基準での大卒相当の知識のあるプリキュア達が『理想像』とされたのである。近代化された重工業や電子産業の隆盛で農村部の『中学校もろくに行けてない者』(1940年代以前の日本では、中等教育を受けられる時点で、学歴的に勝ち組であった)はこれから爪弾きになっていくわけで、その救済措置は長らく続いていく。後年に『夜間学級の全盛期』と称されるような時代であったのだ。軍隊の高等教育を初等教育も済んでいないものに施すことが問題化した時代、夜間学級は魔女達への学歴の救済措置として活用された。そんな時代背景故、日本は教育の刷新に関しては『失敗』と言わざるを得ず、夜間学級の拡大を追認するのだった――
――軍隊を必死に日陰の存在にしようとした日本側の施策は成功と失敗が入り交じるものとなった。金鵄勲章は(外国の従軍系の勲章とのカウンターパートが一応は必要な事から)、存続。防衛記念章などを嘲笑されたことをいちいち外交問題としていては、クレーマー扱いされるのも大きい。扶桑側の慣習であった『将官が戦死した場合は一階級昇進』は二階級特進に統一された。これは電子化されていく人事処理上の都合もあるが、日本側への配慮もあった。扶桑が戦時下であり、なおかつ天皇大権が一定程度は残った世界であり、天皇の意向で『戦功が大きい者は最大で四階級以上特進する』事が度々あった事から、これを軍記に明記した形になる。公務員制度自体が戦後式に刷新された事による混乱も大きかったため、扶桑は国家規模の混乱を抱えながら、戦争を遂行していることになる。日本側がここまで頑なに制度の刷新を迫ったのは『軍部を野放しにしていれば、国を滅ぼす』という実体験からの使命感であったが、扶桑にはありがた迷惑であった。外地の完全な放棄も『魔女の世界』では『中華文明圏の国家が既に滅んで久しい』都合上、現実的ではない上、自分達が経済的に斜陽であったのに、扶桑には高度経済成長の余地がある。そのことへの嫉妬もあった――
――結局、扶桑が完全な意味での議会制・立憲君主制になるには、国民の世代交代が起こる(戦前派・戦中派が少数派になる)1990年代以降を待たねばならぬとされた事から、華族制度の骨抜き化を狙ったが、現地はアメリカが世界を席巻する前の状態であった事から、貴族制に一定の存在意義があった。ノーブルウィッチーズが『なかった事』にされた理由は『市民政治を興した者が旧体制の権威に縋る』点を本末転倒と指摘されたからであるが、その他の理由として、『統合戦闘航空団自体が軍事強国の国威発揚に使われている』という指摘があったからである。とはいえ、魔女の世界では『魔女を輩出できる国が列強諸国しかない』という点があったのも事実。結局、編成は凍結扱いで固まり、書類上では存続扱いであった。再結成の理由は薄れたが、試みとしては、称賛されるべきものであったことによる『温情』であった。また、軍用機が急速にリベリオンの採用機へ刷新されていったのも、1946年からの数年である。日本側が世代の差による優位を長く維持したいとの意向を強く示した事により、『戦後第二~三世代までの早期実用化による空戦での優位』を推進した日本側の策もあり、1940年代のうちに最終型のF-4EJ改が量産され、F-15すら試験段階という凄まじいインフレが起こった。魔女達は第2世代理論の実用化で追従できると踏んでいたが、第二世代理論は実用的意味では1949年度には未成熟なもので、事故率も高く、精鋭が(事故を考慮した上で)好事家的に使う程度である。これは彼女らが『今の新人にこれは無理だ』と一般レベルの魔女への配備よりも『精鋭が使って、理論を成熟させていくほうが安全である』と判断し、上層部へ具申したためである。この方針はしばらく維持される。第二世代理論を上手く形にできるほどの魔導技術の発展が(素材技術が理論に追いついていないのも大きかった)思うように進ます、史実の戦車/戦闘機の発達速度が今度はストライカーへ反映されていく事になる。魔導出力に耐えられる伝導管などの開発が追いついていかなかったのである――
――連邦軍の良識派が事件後すぐに野比家(一年戦争当時に当主であったセワシの孫)当主の命で、事件の被害者名簿を洗わせたところ、『アンジェロ・ザウパー』なる少年が家族と暮らしていたという証拠はなく、厳格な世帯調査で知られたサイド3の戸籍記録にも名がない事が確認され、彼は未来世界には『存在しない』と明らかになった。その一方で、史実でガランシェールの艦長であった『スベロア・ジンネマン』もやはり存在していないのにかかわらず、元の『プルトゥエルブ』が『マリーダ・クルス』の名を与えられているなど、不可解な点も多いと、野比財団は追跡調査を継続している。連邦軍本体がすぐに火消しに奔走するなど、全体的に良識的である世界だが、起こってしまう悲劇はある。だが、存在しないことで『悲劇を免れる』ケースもあるのも事実だ。外宇宙からの侵略者からすれば、スペースコロニーなど『ただの金魚鉢』の感覚でしかなく、障害物としか見なさないことも出てくるのだ――
――その可能性を予期していた野比財団は宇宙戦艦ヤマトの帰還後、続々と就役していった波動エンジン艦艇の余剰品を公式に購入し、宇宙開拓時代に自身の運行する旅客便船として完成させた。デザリアム戦役の直前には、そういう時代を迎えつつあったわけだ。ジオン系国民は『国の存続とコミュニティのまとまりの維持』のために戦争を望んでいたが、結局、ネオ・ジオン派はジオンと連邦の双方を憎んだアナーキストに利用され、自滅してしまった。それが夢原のぞみに地球連邦軍への帰属意識を根付かせることに繋がるなど、ジオンやヌーベル・エゥーゴの地球への敵視が『地球を守った』経験を持つのぞみを再びの戦いに向かわせる理由を作った。基本的に善良で博愛主義ののぞみがはっきりと『殺す』と明言し、実際に実行したのは、ヌーベル・エゥーゴの構成員たちが初めてである。投降は認めるが(りんの記憶喪失の一件で荒れていた時期は)暴行行為を起こすなど、『現役時代の行動指針』からかけ離れた行為も辞さないほどであった。その彼女を正気に戻させたのが『愛』であるように、誰かの愛は何かの『奇跡』の依代となるのである――
――一度終わった運命を『取り戻す』事。それも一種の戦いである。アスリートの世界で既に『終わった者』と見なされ始めていた『ナリタブライアン』は家族との縁が薄れても、自身が持ってしまった『前世の悲運の記憶』が示す『凋落の未来』に抗うため、現役継続を選んだ。それは奇しくも、オグリとタマモが実行した『改変』による副産物でもあった。オグリの見せた奇跡がブライアンの希望であり、父親には『オグリしか成し得ぬ幻想』と思わせた。その差が悲劇を生んだのも事実である。ブライアンは別世界との接触から数週間後に『記憶を得た』状態になり、ゴルシとは完全にメタ情報込みで話す仲になっている。また、その後を追うかのように、ジェンティルドンナも同様の状態に変化。ゴルシの誘いに乗る姿勢を見せていた――
――ある日のウマ娘世界――
「ジェンティル、本当にいいのか?」
「ええ。私も史実通りでいるのは飽き飽きしましたのよ、ゴルシさん?」
「そいつは心強いが、お前の適性に合いそうなタイプのプリキュアとなると、リストアップに時間をくれ。先方に手配を頼む手間もあるしな。親父(ステイゴールドのこと)はなんと?」
「ジャーニーさんがこちらでの動揺を抑え込んでくれるとの事だと」
「ジャーニーが?そうか、オルフェに話したな?」
「ええ。彼女から伝言ですわ。学園の留守は余が守りぬく。故に何の心配もするな、と」
「あの暴れ馬だから、心配なんだって。どこの世界によ、騎手を放り降ろしちゃう三冠馬がいるよ?」
「あら、貴方も前世での宝塚記念のことは言えなくて?」
「うぉぉ……知ってやがったのかよ」
と、完全に競走馬時代のことをネタにして喋る二人。そして、ドリームジャーニーはトレセン学園の『裏の実力者』である事、あのゴルシが声色を変えるくらいの影響力を持つ女傑である事が判明する。そして、ディープインパクトに次ぐ『次代の王』として期待されるのが『オルフェーヴル』である。彼女は史実通りにドリームジャーニーの実の「きょうだい」である。
「やれやれ。学園は何十年かの世代のごちゃ混ぜの割に、レースでの世代は史実通りってのも変な話だぜ。お前だって、ドリームトロフィーの実状は知ってたろ?故に、あたしの話に乗った。そうだろう?」
「ええ。最盛期の先輩方と戦い、その上で改めて、世代最強になるのも悪くはないでしょう?ヴィルシーナさんには悪いけれど……トリプルティアラは確実にもらいますわ」
「いいのか、電話口でそんな大声」
「承知の上ですわ。そのほうが面白いですもの」
「ワルだなぁ、お前も」
トリプルティアラ(史実の牝馬三冠)の称号。ウマ娘界でも、数多の有望なウマ娘達が得られずに終わったものであり、あのメジロ家(ただし、メジロは史実では、天皇賞主義もあり、ラモーヌが最初で最後の牝馬三冠獲得となったが)でも、ラモーヌしかなし得ていないほどの難度である。それを獲得前の時点で『自分のものも同然』に話す。傲慢不遜と取られそうなものだが、ジェンティルドンナやオルフェーヴルはそれが同期の殆どに許されるだけの実力を、既に新人の時点で備えていたからだ。
「あ、それとお前。カワカミにはぜってぇに知られんなよ。あいつが知ったら、学園がぼっ壊れそうだ……」
「大丈夫ですわ。あの方はまだまだ青いもの。ふふふ……競走馬としては、彼女の後輩ですが、ここでは先輩にあたりますもの、私は」
「大怪獣バトルみたいになりそうだなぁ、お前とカワカミのとっくみあい」
と、ジェンティルドンナは電話口から漏れた声で話の流れを聞いたヴィルシーナ(ジェンティルドンナ、ゴルシの同期)が『ぐぬぬ』とでも言いたそうな顔をしているのを楽しんでいるようであった。また、学園有数の暴れん坊の評判のある『カワカミプリンセス』も自身であれば、容易に抑え込めると豪語するなど、ウルトラハイパワーなウマ娘であることを自負している。違うのは、カワカミが幼少期に『プリファイ』というアニメを見て以来、ずっと鍛えてきた結果が現在であるのに対し、ジェンティルドンナは素で現在のパワーであり、その伸び代は未だに未知数である事。超巨大ダンプカーの全力疾走を指一本で制止できるとの噂があるが、本人は『特急列車でも、片腕で止められるでしょう』と豪語する。
「お前、今、何まで止められる?」
「そうね……普通列車までは実家の試験で昨年度に止めましたわ?」
「……は?お前は超人ハルクか??」
「うちの実家は防衛産業、運輸産業にも手を伸ばしておりまして。親戚の叔父の頼みで、そのような実験に付き合ったのですよ」
「お前はあれか?昭和の頃の『ゾウが乗っても壊れない~』的な?」
「叔父らはそういう意図がありありでしょうね。御駄賃はもらえるので、『その場』は口を合わせてあげるのですよ。親戚の全員が我が家と付き合う価値のある方とも限りませんし……」
「お前、存外にビジネスウーマンの才能あんな……」
「あら、入学時の時点で資産運用は始めていますわよ?」
「お前……強かだな……」
「実家の教えですもの。強くあれ。これが家訓でしてよ」
ジェンティルドンナはウマ娘世界では、『一代で名を成した。剛腕の実業家の令嬢』。兄弟姉妹の中で最も才能に溢れ、美貌を誇る。それでいて、自身を悪役に仕立て、見込んだ人物に『高みへ至れ』と促す。ヴィルシーナは(史実でもそうであったように)その資格を備える者であった。
「それに、私は見込んでますのよ?ヴィルシーナさんを。お可愛いもの。オホホ……」
と、挑発とも、親愛ともとれる言葉を口にする。本人が聞いているのを計算した上で。そこも含めて『強か』であったジェンティルドンナであった。
「あ、最後に聞くが、第一、第二候補には事前に通知しておくが、状況的に入れ替わりに応じられないヤツも多い。候補者の写真に丸と二重丸で印をつけといてくれ」
「ええ。本日中に」
と、話すジェンティルドンナのもう片腕には、自身に近い『令嬢』の属性を現役時代に持っていたプリキュア達の顔写真があった。その中には、少なくとも、