――日本で評価が悪い元の幕臣も、魔女の世界では名君であった例もあり、日本側を困惑させた。その流れで軍人らの名誉回復もある程度は認められたが、東條、大西らなどのようなケースは認められず、東條に至っては『天皇の信頼を利用して、独裁者のように振る舞った』という悪評から、国外追放の憂き目にあった。その流れへの反発がクーデターを呼んだが、すぐに鎮圧され、却って嵐のような粛清を招き、黒江たちとその関係者ら以外の高級士官の魔女の多くが失脚。軍の魔女組織はこの時を以て『実質的に』解体された。魔女候補生の特別扱いも中止され、軍の付属校も閉鎖に追い込まれた。だが、程なくして(掌返しから保護する意図で)高等工科学校とその予科が代替として開校。元の候補生らはそこで抱え込む事になった。これは魔女の保護政策へ舵が取られたからで、農村部の所業を近代国家として罰し、『魔女の公的な特権を法的に否定しただけで、後は今までと変わりない』事を認知させるためであった。結局、社会的混乱が完全に収まる間もなく、大戦争に突入。近代工業・近代教育化の嵐に農村部は対応できず、多くが廃村となる。扶桑は食料自給率の低下を危惧し、軍工廠での食料品生産を戦時を理由に開始。時が経つにつれ、農村部の衰退が顕著となるため、この部門は後の時代でも廃されず、21世紀にも存続している事が確認されている――
――日本人や未来人による集団リンチの影響は扶桑の国家機能を半身不随に陥らせるのに充分であった。扶桑では史実と違う道を歩んだ者も多いのに、『どうせ同じことを考えるから』という理由で、強引に排除したからである。未来人(一応、日本連邦としての連続性はある)は物的に償えるが、日本は(政治的制約から)それは極めて困難であった。それにより、日本は(大衆や官僚が)やらかしたことをなにかかしらの形で償わなければならず、自業自得だが、扶桑へ強く出る機会を失っていった。扶桑はそれを確認すると、軍備の独自性を保つべく(当座の対策の意味もある)、未来世界から軍備を大量に導入。南洋戦線に即座に投入。戦線の火消しに用いた。その一つがジェガンであり、コンバットアーマーであった。未来世界に送り込んでいた者は扶桑には多くいたので、その人員を帰国させ、教官や戦闘要員に充てたのである。64Fは最高位の特権を与えられているのと、実質的にロンド・ベルの分署でもある都合上、他の部隊では許可されていない『ガンダムタイプ』や『ダグラムタイプ』の使用を許されている。そのため、格納庫の情報秘匿は厳重であったが、軍事機密という事柄に無頓着なルッキーニBが騒動を起こしてしまい、なしくずし的に情報開示がなされた。極端に発達した科学であれば、(単体では発達の袋小路に入っていた)魔法を上回る事に、年少組は不満であったが、年長組は『科学が発達しなければ、魔導理論も発展しない』事を理解しており、逆にすんなりと受け入れた。B世界では、A世界のような異能は存在しないため、自分たちの力に限度がある事を受け入れたくないというのは、坂本よりも芳佳のほうが強い感情を抱いた。だが、互いの力の差は感情で埋められるものではない。芳佳Bは模擬戦の敗北で挫折感を強く味わい、その気持ちを(自分の失態で宛てがわれた)仕事で発散させるなど、ワーカーホリックを却ってこじらせてしまった。それ見かねたのぞみは、坂本Bに申し出、芳佳Bの再教育を始めた。1947年前後のことだった――
――コズミック・イラ世界で、史実ほどファウンデーション王国の存在がセンセーショナルを起こさなかった。既に地球連邦軍がその武力で地球連合を制圧し始め、オーブが規模に比して強大な軍事力を得たことが原因であった。地球連邦軍は恒星間航行を可能としており、コズミック・イラ世界の技術レベルとは、艦艇分野で10000年分以上ともされる差がある。核融合炉の限界に行き着き、超エネルギーたるタキオン粒子の機関が実用段階に到達し、その次世代と目される『モノポールエネルギー機関』の研究すら始めている。当然、金属もコズミック・イラ歴世界の理論では不可能な強靭性を備えたものが現れており、コスモナイトと硬化テクタイトの合金は『陽電子砲』に普通に耐えるばかりか、昔の砲弾のそれのように『跳ね返せる』。コスモナイトは土星の衛星『タイタン』などに大量に貯蔵されているため、理論上はコズミック・イラ世界でも造れる。だが、コズミック・イラ世界はPS装甲やラミネート装甲、フェムテク装甲と言った『特殊装甲』に傾倒した体系になっており、硬化テクタイト板の実用化さえ『机上の空論』扱いが現状であった――
――これはMSの主要動力源が超電導バッテリー(通常のバッテリーより大容量かつ大出力。その出力短期時間であるが、一年戦争時のザクⅡに近いという)であった都合も大きく、核融合炉にしても、第一世代のレーザー核融合炉の小型化に目処が立った段階であったので、通常装甲の強度などに気を配る必要がなかった(宇宙戦闘機サイズのエンジン出力での超電磁砲に、ジンやストライクダガーの時点で耐えられる)のである。そこに未来世界の動力技術や装甲技術が雪崩込んだため、オーブ首長国連邦では『パラダイムシフト』が発生し、量産機の装甲も『発泡金属』からチタン系の『ガンダリウム』に革新。フレームも『ムーバブル・フレームへ代わり、ストライクフリーダムやデスティニーから順に改修(デスティニーやインパルスは戦後、厄介払いでオーブに譲渡された)されていった。また、PS装甲依存を低減するため、フレームや外装の一部をガンダリウムで構成された部材(当然、地球連邦軍のコネクタ規格に変更済み)に交換。ジェネレーターもM/Y式核融合炉に変更されている。これにより、ストライクフリーダムなどは出力に余裕が生じた。コズミック・イラからは『レアメタルによる刀剣鋳造技術』などが未来世界に行き、斬艦刀の改良などに供されている。同時に、未来世界の武装理論がコズミック・イラ世界にも伝わったことで、ビームサーベルのつば競り合いが可能になった。――
――未来世界はコズミック・イラ世界と違い、『母艦の搭載力を圧迫する』ということで、ストライカーパックやシルエットシステムに相当するものは流行らず、代わりに武装バリエーションを豊富にすることが当たり前である。量産機の性能アップも『換装』ではなく、必要な任務に調整された派生モデルで賄われている。スタークジェガンがそれである。ビーム兵器の弾速も(コズミック・イラ歴世界のそれより)高いため、パイロットの反応速度も、コズミック・イラでは、トップエース級でしか不可能な水準を一般兵が普通に備える他、彼らの常識では『機械の動作速度が追いつかない』反応をするのが、未来世界のトップエース級である。マグネットコーティングやバイオセンサー、サイコフレームはそれらに対応するための技術である。マグネットコーティングは未来世界では普遍化済みの技術であるので、コズミック・イラへ輸出され、オーブに譲渡されたガンダムタイプ(ザフト系)の反応速度の向上に繋がっている(この際に、機体搭載のOSもアナハイム・エレクトロニクス社のものに変更されている)。マグネットコーティングは大規模整備の度に、可動部に施し直す必要があるが、その手間を補って余りある効果がある。ストライカーユニットやISの場合でも、操縦への反応速度を高める効果があることも確認されている(関節部や可動部の強度を上げなくてはならないが)。それらの技術はコズミック・イラ世界の技術を向上させ、コズミック・イラの一部技術は未来世界に新境地を拓かせたわけだ――
――史実と異なる特性に至ったプリキュアは意外に多い。のぞみは言うまでもないが、本来は『愛』のプリキュアであった『キュアハート/相田マナ』もそうであった。転生の素体が『逸見エリカ』であったためもあるが、それ以前の遥かな前世がなんと、中国は三国時代の武将『関羽雲長』であった。それは未来世界でジオン残党から接収された『マ・クベのコレクション』の中に『青龍偃月刀』があり、それの銘が『冷艶鋸』であったことで、なしくずし的に判明した。生前は温厚な性格であった相田マナだが、激しい性格の逸見エリカが素体であったり、関羽雲長であった頃の記憶の覚醒が原因か、現役時代と異なって『激しさ』を持つようになり、声色も普段の高めのボイスと別に、逸見エリカのそれに近いが、より低音でドスの効いた声に切り替えられるようになっていった。それで、駄々をこねるのぞみBを怯えさせたこともある。その時のセリフはこちら。
「……いい加減にしろ。こちらは緊急事態だと言っているだろう?ガキの癇癪に、いつまでもつきあってはおれん……怪我したくなければ……!!」
別人のようにドスが効いた低音ボイス、手に持つのが『冷艶鋸』(青龍偃月刀)であるので、のぞみBは後で『プリキュアだという誇りを持ってなきゃ、その場で漏らしてたよぉ……』と述べ、本気で怯えたと話している。その際に、プリキュアのそれとは明らかに異質のオーラ(要は『気』である)を発していたのもあり、回りの者たち(りんBやうららB、小々田コージなど)は割って入る事すら不可能であった。このような激しさは、関羽雲長が持っていたであろう『武将としての猛々しさの発露』であり、三国時代随一の武人であった彼の要素が加わったことを示す最初の機会であった。彼女自身も『関羽雲長の持ってた激しさが無ければ、自分はヌーベルエゥーゴとは戦えなかった』と、戦役の後日に述懐している。それ以外は普段通りだが、激しさを特に必要とする局面で表に出す。素体の逸見エリカが激しい性格であった故か、生前より感情を表に出す事が多くなっていたのも事実である。その一方で(関羽雲長の冷静さがプラスされたせいか)戦闘では実質的に、のぞみに次ぐリーダー格として扱われている(生前にピンクプリキュアで唯一、生徒会長の経験者であったのもある)。彼女は変身で容姿が(原型がないほど)激しく変わる一人であったので、最近は(相田マナとしての)普段の容姿を見せる機会は減っていた。
――そのことはさらなる後輩ら、果ては自身の平行同位体に知らされた(ドキドキは現役引退後も変身能力を持つ)。オトナ世界の同位体は別世界の自分がどうなったのかを知らされ、腰を抜かす事態になったという。実際、64Fにいる彼女自身は複数の人物の要素が統合された人格を持つようになり、『戦車戦に造詣があり、生身の戦闘でも一騎当千』という特徴を得ている。元から基礎スペックが高めであった故、現役時代のままでも高い戦闘能力を持っている。オトナ世界の個体も(世界の危機に伴い)戦士に戻り、戦闘に従事することとなった。ただし、これは『極めて幸運な』ケースである。小々田コージ(オトナ世界)は自身の選択が結果として、『地球の危機に対応する力を歴代のプリキュア資格者から奪った』ことへの罪悪感に押しつぶされ、鬱状態に陥った。宇宙刑事ギャバン曰く、『とても、彼女に会わせられる状態ではない』とのこと。また、白色彗星帝国残党は有に万単位の戦闘艦、それ以上の数の艦載機を持つことも判明。地球連邦軍は総力戦を決意し、切り札の一つである、ヱルトリウム級二番艦『アレクシオン』の投入を決定。地球連邦軍の本気は『ヱルトリウム級の投入』で図られるようになっており、銀河中心殴り込み艦隊の完全帰還がまだである地球連邦軍の持つ軍艦では最大最強を誇っている。なお、このダウンサイジング版が『ブリュンヒルト級』である――
――なお、ルナマリア=ジャンヌから、オーブ首長国連邦には『アルカディア号』と『クイーン・エメラルダス号』の情報も伝えられており、遥かな未来からやってくる『宇宙海賊戦艦』という体裁であった。その時間軸で最強の戦艦とされるため、当然ながら、コズミック・イラでは机上の空論であった『ワープ航法』と『恒星間航行能力』を持つ。連絡方法は過去生が英霊であったルナマリア(ジャンヌ・ダルク)が把握しており、いざという時は呼び寄せる事を表明している。核ミサイルが『線香花火』感覚でしかなく、恒星間航行艦であるので、完璧なガンマ線等の放射線の遮断を実現し、ジェネシスを撃たれようが、びくともしないという能力はカガリ・ユラ・アスハをして『恒星間航行能力を持つということは、ここまでの能力が必要なのか?』と唸るほどである。
――ある日のオーブ首長国連邦 行政府――
「ルナマリア、この海賊たちは我々の味方……そう判断していいな?」
「ええ。彼らは連邦から海賊行為を容認されている『私掠船』のような存在です。その時間軸の宇宙で五本の指に入る戦力を誇ります」
アルカディア号は(両方の型式においても)イルミダスやマゾーンに対して優勢に戦える戦力を誇っており、地球連邦正規軍の『ドレッドノート級』(代を重ねた後継型)の十倍とも言われる単艦戦闘力がある。亡きトチロー(30世紀)の渾身の作であるため、装甲・機動力・火力共に当代最強。初代宇宙戦艦ヤマト(23世紀のヤマト)比で20倍であるという。これは1000年近い技術の差によるモノだが、逆に言えば、それくらいで済む分、ヤマトが(竣工当時からは)超高性能であった証である。
「宇宙戦艦ヤマトで確立されたフォーマットを発展させていった末の究極形の一つです。時期によって、二つの形状がありますが、これは設計時期の違いによるものです」
「まるで、大艦巨砲主義時代の戦艦とガレオン船を合わせたような姿だな。しかも、これ見よがしにドクロの旗を掲げる…。分かりやすすぎて、ジュニアスクールの子供でも海賊とわかるぞ?」
「それが彼らの狙いなのですよ、代表」
ハーロックは海賊だが、元々は地球連邦軍の大佐まで登りつめた俊英である。彼には古代守(古代進の実兄)の系統の血が流れているともされ、どこかでハーロック家は古代家と交わった事、ハーロックの家系にはイスカンダル人の血も交わっている事もわかっている。そのため、ハーロック家そのものは近代ドイツの名家であるが、そこから時を経るにつれ、日本人やイスカンダル人の血が混ざり、一種の混血になった。歴代の『ハーロック』の容姿が古代進らに似ているのは、ある時期までは『他人の空似』であるが、少なくとも、23世紀からの700年間で『子孫であるから』という理由へ変遷するのだ。
「この艦は恒星間航行が既に普遍化した時代に造られたものです。おそらくはこの世界のあらゆる大量破壊兵器はアルカディア号に無力でしょう。星間国家を向こうに回しての立ち回りを日常にする以上、惑星間航行さえままならないこの世界の兵器は『おもちゃ』扱いでしょう。ジェネシスなどの大量破壊兵器であっても」
「それほどだというのか?」
「かの世界の更に未来で生まれる戦艦ですよ?そのくらいの防御力は得ます。しかも、エンジンも核エンジンなどというものとは比較にならない超エネルギーを動力とし、装甲も当代最高クラス。火力は言うまでもありませんが、ザフト最大のゴンドワナ級の装甲を紙切れのように破壊できる。そうお考えください」
「惑星破壊級の兵器はあるのか?」
「一説には『モノポール波動砲』を持つとも言われています。宇宙戦艦ヤマトのそれの数十倍の破壊力なので、一発で『一つの恒星系』を消し去れると……」
「……こちらの世界での大量破壊兵器がおもちゃに思えてくるよ」
カガリはコズミック・イラで机上の理論でしかないものが実現し、惑星どころか恒星系を滅ぼす超兵器が開発される。それでも、地球は『バケモノのように進化したゲッターロボ』を必要とする事態が未来世界を襲い、ハーロックはその方向性を是正したいがために、過去へ介入を開始したという。
「そのハーロックと友人関係にあるという、この人物。野比のび太と言ったな?20世紀末から21世紀までの人物のようだが?」
「ハーロックの時代には、恒星間航行用のエンジンに時空跳躍能力がある事が確かめられています。それに、彼の末裔がハーロックの軍人時代の同期なのです」
のび太の末裔の一人がハーロックの軍時代の同期であり、イルミダスとの戦争の戦禍に倒れた(壮烈な戦死である)事はこの時期、既にのび太自身にも伝わっている。ハーロックの当時の座乗艦(艦名はデスシャドウ号)を庇い、乗艦諸共に壮烈な戦死を遂げたという。その同期の死に様を伝えるのが、ハーロックがのび太に会った当初の目的であったという。
「その先祖に挨拶を交わし、子孫の一人の死に様を伝えるのが目的だったそうなのですが、いつしか協力関係になったそうです」
「それで。我々に?」
「ええ。この世界は、かの世界から比較的に近い次元座標にある事はわかっています。かの世界には帝国主義的な星間国家が雨後の筍のように存在します。そのうちの一つに見つかれば、間違いなく手出ししてきます。地球連邦軍はその防止のためにも、この世界を庇護下に置いているのです。恒星間航行可能な艦艇が当たり前な国家相手では、この世界の既存軍備では『万に一つの勝ち目』もないかと」
未来世界の宇宙には数多の星間国家がある。地球はその中で新興扱いだが、実は銀河連邦の父祖の地という歴史がある。それをウィンダミアは『知ってしまった』故に、無謀な蜂起に至るのである。コズミック・イラ世界は『誰かが導かなければ、すぐに絶滅戦争をしだす』。これはかつての既存宗教が『宇宙クジラの化石』のインパクトで権威と信仰を失い、第二次大戦の後の時代には、『健在であった時期に根付いた風習が惰性的に続いている』のみという『宗教面での抑えが失われた世界』であるからで、実質的に『既存宗教のほぼ全てが滅んだため、精神的な意味の歯止めが消えた』のと同じ。
「……既存宗教が実質的に滅んでしまって、もう随分だ。民間レベルでは生きているが、西暦以前の繁栄からは程遠い。精神的な抑えが失われたことで、ブルーコスモスが生まれ、ロゴスへの魔女狩り……悪い言い方だが、歯止めをかけるものが消えている。シンも戦死扱いであった時期に、クライン派が隠蔽工作をしなければ、今頃は戦犯扱いで処刑されていてもおかしくはない事をしていたからな。デュランダル議長が報告を握り潰したそうだが、彼が死ねば、後任の手で粗探しされても不思議ではない。だから、コンパスに厄介払いしたんだろう。彼のお気に入りだったのだから」
シンは栄転と思っていたが、実際は自分共々に厄介払いした。それをルナマリアは見抜いている。そうでなければ、フラッグシップ機であったはずのデスティニーやインパルスを戦後すぐに(書類上で)譲渡しないはずである。カガリはそれに触れる。
「シンは栄転だと思ってますが、実際は厄介払い。私もですが。…代表、例の残骸の調査は?」
「地球連邦軍に依頼し、船体と機体を回収して、調査してもらっているが……やはり、君らの転移で生まれた『穴埋め』の存在の線が濃厚だ。君やシンの『遺体』もコックピットから回収されたそうだ。なので、戦死したという情報は間違いではない」
「その事は?」
「地球連邦軍が伏せている。現に生きている人間の『クローン』でない死体など、普通にありえん。次元理論が西暦末期から進んでいない、この世界では『平行世界』など、小説や映画の中の話でしかなかったからな」
ルナマリアは未来世界への転移時に『ジャンヌ・ダルクの現界の依代となっているため、実質的に英霊の扱いである。その関係上、一国の国家元首であるカガリとサシで面会が可能となっている。また、ジャンヌもコズミック・イラ世界では、ルナマリアとして活動しているのである。
「遺伝子配列も一致しているという事は、どこかの時空の情報をコピーし、世界が生み出した代替。そう考えるべきでしょうね。妹には、向こうの世界との折衝をやらせていますが、直に戻ります」
「了解した。ところで、君らは向こうで地球連邦軍に加わっていたそうだな」
「手に職が必要でした。文無しで転移しましたからね。私はアナハイム・エレクトロニクス社でテストパイロットをしばらく。戦時でしたので、数ヶ月ほどでスカウトが来まして。それで、英霊の転生であることも申告しましたので、ロンド・ベル隊に配属されました。ガンダムマークⅢやゼッツーとかを乗り継いできまして……」
シンと違い、ルナマリアは未来世界の正規の転職ルートで連邦軍に入った。その関係上、この会談で着ている服も地球連邦宇宙軍(ロンド・ベル)の女性仕様の軍服である。
「噂の最強部隊か。かの世界においての英雄であり、ガンダムを複数有する精鋭……。キラやアスランが同じところで一緒に戦うのと同列に扱っていい……か」
「代表はMSパイロットの経験がお有りなので?」
「一次大戦の頃にな。思えば、あの頃は気が楽だったよ。今は民のことを常に考えなくてはならん。跡継ぎを期待している子はまだ幼い……。私自身が若輩者だから、あと10年はやらされそうだ。まぁ、いざという時は戦うが、 エリカ・シモンズは向こうのOSの精度の高さに感服していたよ」
「あの世界のMSの管制OSは一年戦争からの膨大な戦争で得られた知見の結晶でもありますから。フリーダムの負担低減はマグネットコーティングの導入、各部の動力モーターをフィールドモーターへ変えれば、フレームをフェイズシフトにしなくとも、キラさんの操縦に耐えられるでしょう」
コズミック・イラ歴のMSはあくまで旧来理論でのモーターを駆動に用いていた。そこで、未来世界の理論に基づく改良を施せば、キラ・ヤマトの荒い操縦にも追従できる。彼以上の反応速度のニュータイプたちを満足させる追従性を与えれば、ファウンデーション王国の新鋭機も怖くはないはずだ。
「キラは機体を荒く使うからなぁ。関節部が限界ギリギリまで摩耗していた……なんて、報告を受けた事がある。それに耐えられる反応速度を与えられるのか?」
「サイコミュの導入も考えるべきでしょうね。ドラグーンシステムをファンネル相当に改良するなら」
ルナマリアは未来世界で得た知見を述べる。未来世界の技術を模倣することで『急激な発達』を遂げた経緯を考えると、それ自体を導入する事は魅力的である。だが、政治的判断となると、色々な制約も生まれる。その取り捨て選択は本人とエンジニアに任せるべきだろう。
「キラはリ・ガズィ・カスタムに興味を示していた。あれは量産機だそうだな?」
「ええ。エース用の高級機ですが。元々はアムロ・レイ氏用の機体でしたが、彼は新型ガンダムを選んだので、高級量産型として日の目を見たのです。あれを次期フリーダムの設計の参考に?」
「エンジニア連中はウェーブライダーに興味を持つようでな」
簡易可変機構は『小規模の治安維持組織』に都合が良かったのか、RGZ系(リ・ガズィとリゼル)の設計思想はコズミック・イラに輸入され、それは後に『ライジングフリーダムガンダム』の誕生に関わる事となる。カガリの向かっている机には、コンパスに配属された『ザフトきっての俊英・鬼才』と言われる若い技術将校の提案書が置いてある。その提案書にある『書き殴り』には、未来世界のZ系可変機のバリエーションに興奮したらしき痕跡があった。
「この提案書にある書き殴り、君は読めるか?」
「技術屋のなぐり書きは本人以外はわからない場合が多いですよ?……ただ、やたらと『ゼータ』と読める走り書きが見えますね……?」
首を傾げる二人だが、判別可能なのが『ZE-TA』という文字だけ。少なくとも、Zガンダムの何かに興奮したのだろうということしかわからない。提案書自体は『プロの仕事』だが、時たま見え隠れする『メカの虫』っぽさがあるのもあり、二人は解読に苦労したのだった。