ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回の続きです。


第百六十九話「次なるステージの序章 2」

――烈風と紫電改の量産すら、魔女の反対論が強かった(通常兵器の更新に反対した)が、史実の空襲の惨状が突きつけられ、強い精神的ショックを受け、その場で引き下がった。同機種の緊急配備に反対した海軍技官はその場でひどくボコボコにされ、未だに病院から出てこれない有様であった。そのことが原因で扶桑軍の航空関係部署は仕事を放棄してしまい、完全な機能不全に陥った。この混乱も黒江達の意向がそのまま採用されていく理由となった。日本側に航空行政を委託する選択もあったが、日本は空母機動部隊の運用ノウハウを失って久しかったので、日本側が辞退し、没になった。次善の策で黒江たちの意向をそのまま採用する事にした。その結果、F-20などが『エース専用機』として少数生産される事になった。魔女たちは(史実の空襲の惨状が堪えたらしく)以後、通常兵器の開発に口を挟むことは無くなったが、陸海軍の技官らは集団リンチを恐れ、仕事をまったくしなくなった。これに窮した扶桑軍は、第三者である自衛隊の技術系の幹部自衛官の派遣を要請。日本はこれを了承。以後、日本の自衛官が扶桑の兵器開発を第三者として裁定する慣習が生まれていくのである――

 

 

 

 

 

――問題は航空機の生産機数減少での国家総力戦での物量不足であった。日本は『兵器の質で物量を補える』という考えだったが、史実の太平洋戦争がそうだったように、多勢に無勢であった。結局、日本も(扶桑の搭乗員の練度の予想外の低さと、カールスラントの形骸化から)1000機単位の量産を容認。ブリタニアがダイ・アナザー・デイで大規模派兵をしなかったことから、結局は扶桑がほぼ単独で支える羽目となった。また、旧来の野戦飛行場が(ジェット機の登場で)用をなさなくなってしまったことで、耐熱アスファルト塗装の飛行場が必要となったなどの理由で、扶桑が削減しようとしていた『2000km級の航続距離』が必要になってしまうという問題が表面化。問題は武装強化などの処理である。結局、これは妥協的に『25ミリ機銃』(30ミリ機銃の搭載に横須賀航空隊が猛反対したが、B-29超重爆とF6F、P-47の登場で白旗を上げた)の搭載で当座の解決が図られた。だが、すぐにジェット機の時代に移ったため、同機銃の搭載は陣風のみとなった。だが、一定の威力アップは好評であったため、余剰の弾薬が改造されたリボルバーカノンの弾薬に転用されたという――

 

 

 

 

――扶桑の空港は飛行艇用が多かった。怪異対策で『不時着水』ができるからである。結局、怪異の脅威度減少、二式大艇ほどの航続性能がなくても、空中給油が可能となった事、旧式の九七式飛行艇が破棄(二式とその次の世代への統一を図った)され、飛行艇の頭数が減った事で飛行艇の時代は終わりを告げ、通常飛行機が旅客機となる時代が本格化する。同時に、航路の安全のため、防空網の整備が求められた。戦争中である都合上、交戦国とも協定が結ばれた(ティターンズも、こういうところは律儀である)。陸戦は戦車が加速度的に大型化していくため、元の騎兵科からは不評であった。だが、敵が超濃密な弾幕を張るリベリオン(米国相当)なため、元の騎兵科の者達も流石に『重装甲』をある程度は容認していった。(日本軍と違い)兵たちは死にたくないからである。その関係で『機械化歩兵』や防弾チョッキ、暗視装置等が急速に(21世紀の現用品)普及していった。軍馬が今後、儀仗目的以外には使われなくなるため、解体予定の騎兵師団だが、最後の華とばかりに、適齢期の軍馬を有する師団が騎兵突撃を敢行。見事に成功を収めるという珍事が発生している。これは『魔女の世界』では、対人戦争がナポレオン3世の時代が終わって以降は全くなかったためで、扶桑はこのように、M動乱で近代戦のノウハウを得たために、数が拮抗する戦であれば、必ず勝てるようになった――

 

 

 

 

 

 

 

――核兵器への忌避感がある日本は(核兵器に予算を使われるなら……という妥協である)妥協的に戦艦の更新を容認。ちょうど、呉の壊滅で旧型戦艦の多くを喪失していた扶桑は『数的拮抗』を維持するため、大和型を五番艦まで建造しつつ、以後は超大和へ計画を切り替えた。その三世代目が水戸型である。呉の工廠機能は実質的に放棄されたが、住人への配慮で『軍港』としての機能復旧は行われている。また、航空機の機銃発射機構は(搭乗員が片腕を失った場合でも、戦力にするため)操縦桿につく方式に再統一された。これは史実の劣勢期、スロットルレバー式の問題が露見した上、レシプロ機の時代が終わり、(スロットルレスポンスがレシプロ機より落ちる)ジェット機に世代交代することを見越した施策であり、横須賀航空隊などの部署の反対を無視して行われた。ジェット機はスロットル操作をレシプロ機より繊細に行う必要があるからである。この事実にショックを受けた海軍技官の多くが辞表を提出する事態に陥った。横須賀航空隊の解体はダイ・アナザー・デイへ悪影響を及ぼしたり、保有機材の焼却への懲罰であり、魔女たちへの見せしめである。以後、海軍航空の技術者よりも、陸軍航空の技術者たちが開発の主導権を握るが、かの菊原静男技師が早期に『戦後型飛行艇』の知見を得たことで、日本に来日。US-2の後継機種の開発に参加するなど、思わぬ効果も出た。――

 

 

 

 

 

――『戦前』の航空技術者が日本連邦全体での航空開発に参加する事での効果は大きく、F-3などの開発促進に寄与した。これは絶え間なく軍用機を開発していた扶桑と、自主開発が殆どできない日本の差であった。かたや、民間航空機すら満足に開発できない日本、軍用機を絶え間なく造ってきた扶桑。この差は日本の扶桑へのコンプレックスであった。ちょうど民間開発の小型機が頓挫し、自信を失っていた日本は扶桑の残存する航空技術者の待遇を良くし、自分達に寄与するように仕向けた。戦後の軍縮を見込んでの事であったが、歴史的には、これが地球連邦時代の航空産業の隆盛への栄えある第一歩になるのである。彼らが日本に伝えた知見はその後、地球連邦軍の復興期、ブラックタイガーやコスモタイガーなどの『名機』を開発する上の土台となり、可変戦闘機の二大メーカーのうち、新星インダストリー社の礎ともなったという――

 

 

 

 

 

――エディタ・ノイマンの突然の失脚は世界遺産を『怪異討伐のためには、犠牲もやむなし』という提案をしたことで、激昂した日本の外務官僚(学生時代にボクシングでいいところまでいった)に全身を殴打され、全治五ヶ月以上の重傷を負った上、その場でドイツの外務官僚に参謀の役職を更迭されたという経緯である。デロス島の怪異は圭子がストナーサンシャインで始末したが、ドイツはこの事件でカールスラントのコンドル軍団出身者の名誉剥奪、役職からの更迭を一気に敢行。彼女も降格され、僻地送りとなり、鬱病に罹患。最終的に軍を去った。この一連の失脚劇でカールスラントの軍事的発言力はほぼ無くなり、実務能力も喪失した。扶桑がその代わりに連合軍の実務を担う羽目となったことは、扶桑陸軍機甲部隊の大規模・近代化を促し、空軍の設立が後押しされた。同時に、カールスラント軍に代わり、技術面では自由リベリオンが、実務では扶桑が主導権を握った。だが、扶桑は自主開発能力の多くがクーデター事件で減衰。結果的に『ライセンス生産品』が1950年以後の扶桑の兵器開発の主流を占めていく。扶桑の魔女たちはその時になり、一部中堅の事変世代への反発が扶桑の兵器開発能力に暗い影を落とした事に(遅まきながら)気づき、以後は七勇士に主を鞍替えする派閥も続出した。この現金さに、黒江たちは呆れ果てたという――

 

 

 

 

――キュアフェリーチェもマジンガーZEROの超常的な力の前に『神としての力』を完全に喪失。救出された後、ゲッター線の力でそれに近い力は取り戻したが、あくまで戦闘特化であるので、以前ほどの万能性はない。一度、みらいとリコを奪われた事によるトラウマも作用し、敵に情け容赦しないようになった他、ゲッターサイトやトマホークを得物とするようになり、戦法が流竜馬に似た傾向となった。自身の大切なものが傷つけられた場合の反応も流竜馬のような激しいものに変化。現役時代と同じなのは『普段と変身時の見かけ』のみとなっている。その一方で、以前の名残りか、超然とした物言いは維持しているが、口調が荒くなる事もある。また、物言いは落ち着いているが、言い方はキレているという高等テクニックを披露する機会もあった。また、体をナリタタイシンに貸してみたり…と、意外と今の生活を楽しんでいる節がある。彼女が野比家に連れてこられた時期は2000年代前期。のび太が少年の頃であった。みらいとリコを奪われたショックで当初は塞ぎ込んでいたが、野比家で生活するうちに、以前の天真爛漫さを取り戻していった。2003年前後に野比家の養子になり、のび太が通う中学に正式に入学したのは2004年の頃。2010年代始めの『大震災』の頃には、大学進学を控えている身であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その頃は概念としての『プリキュアオールスターズ』が根付き始めていた時期であるため、ことはは自分が『まだ見ぬプリキュアチームの一人』であると、公的にカミングアウト。大いに反響を呼んだ。元が神の後継者であるため、外見上の加齢はない。更に普段の姿では『口調が外見より幼い』。これにことはは悩んだ。結果、開き直って、プリキュアの姿で通学してみるという選択を取った。これは大人びた声色と口調を使える姿が『キュアフェリーチェの姿』しかないからで、本人も羞恥心などの兼ね合いで悩んだが、結局はそれしかなかった。とはいえ、ドラえもんやヒーローが普通にいる世界であった幸運により、普通に大学生活をエンジョイできた。とはいえ、流石に飛行能力を使って通学するわけにはいかないので、普通に電車通学であった。専攻は二年生からだが、『史学科』であった。2014年に卒業した後は、その数年後に発足した日本連邦軍に入隊した扱いである。フェリーチェでいる時間のほうが長くなった影響か、普段の姿でも、精神年齢に成長が見られるようになったため、感情が昂ぶると、口調が荒くなる事が増えた。奇しくも、それは『レースになると、普段と違って、闘志を表に出す』ことで名を馳せたウマ娘『スーパークリーク』に似た振る舞いであった――

 

 

 

 

 

 

――オグリは細かな点で歴史改変を試みた。大きなところでは、三強の他の二人の『ピークアウトからの引退』を自分と同時期にまで引き伸ばした。無論、タマモの引退も、である。オグリはタマモの引退は『記憶がぶっ飛ぶ』ほどのショックであり、それを事後に知ったタマモ自身も、心の奥底で罪悪感をずっと抱いていた。その償いの機会を得た以上は『共犯関係』になる。それがタマモなりの『オグリへの罪滅ぼし』であった。また、改変前は険悪であった『オグリの年の離れた妹』(オグリローマン)との関係の改善にも費やした。そして、偶然からの新たな関係も生まれた。オグリの現役当時は小さい子供であった『ナリタブライアン』との師弟関係である。当時のブライアンは、オグリの知る『一匹狼の無頼漢』ではなく、『自分の影に怯える』怖がりの子供。オグリは(妹への態度の反省を活かし)『優しいお姉さん』として接した。オグリ自身も(若干)背伸びした振る舞いであった(ルドルフを意識したとか)が、図らずも、ブライアンの尊敬を勝ち得てしまい、彼女の入学後は『弟子』として鍛えた(オグリが『奇跡を見せた』ウマ娘であった事が理由で、ブライアンは父親との関係が悪化してしまうが、それは別の話)。オグリのふとした『忠告』を全盛時のブライアンは聞き流してしまうが、それ自体が『歴史上の帳尻合わせ』であった。ブライアンはそのカラクリを聞かされた後に、前世の記憶が覚醒。それからは『前世の悔いを晴らし、王座に返り咲く。それがローレルを救う手立てだ』と述べ、間接的にサクラローレルの未来を変えるつもりであった――

 

 

 

 

 

――ウマ娘世界のターフの時代は史実でいう『黄金世代』の席巻した時期が終わり、テイエムオペラオーが衰える時期に入り始めた。オペラオー自身はその事に気づき、その急激さに悩んでいたが、チームブリュンヒルト入りを起死回生の機会とし、波紋法の会得に血道を上げた他、ガタが来始めた体の治療も兼ね、ドラえもん世界での療養に入った。こうした、ウマ娘の世代交代の早さは協会でも問題視されていたため、テイオーとブライアンの世代は『なるべく、あと数年は現役を続けてほしい』と通達が来ていた。とはいえ、通常、ウマ娘のピークは短い。長くても一年半~二年。これは有力な競走馬の活躍期間にほぼ相当する。これは真田志郎の考察だが、『元の競走馬としての魂を有した場合、その歴史的役目を終えた瞬間、元の馬の魂の加護が失われるのではないか?』というもの。実際、身体的に全盛期の年齢で、アスリートとしての能力が衰え始めるのは(生物学として)ありえないからだ。ゲッターエネルギーや波紋は実質的にその枷を外す役目を果たした。つまり『辞め時を自己意思で決められる』事になる。ブライアンはそれを考慮したロードマップを作成しており、『凱旋門を数度走ったら、その年の有馬で第一線を退く』つもりであった。引退すれば、元の個人トレーナーを探し出し、すぐに籍を入れるつもりである。テイオーは(現役時代のルドルフと違い、選手生命をその場で終わらせるほどの怪我は追っていない)生徒会長としての箔付けが必要な事から、しばらくは現役を続ける意向である。また、ウマ娘は比較的に外見の若々しさを保てる種族であったのだが、波紋法で『ピーク時の姿を長く保てる』ようになったり、能力値を戻せるようになった事から、引退時期を自分で選ぶ権利を得ようと動き出した。これまでは『ピークアウトor大怪我=引退』の図式だったからだ――

 

 

 

 

 

――『プリキュア5の世界の動乱』はバダン本隊は撤退したが、殿を仰せつかったティターンズ残党やジオン残党は残置しており、ヤークトティーガーなどは彼らが操っていた。ティターンズ系MSはマラサイやバーザム、ジオン系はザクⅢやズサであり、意外に質が良かった。ジムⅢやジェガンでは、ネオ・ジオンの高性能MSの相手はきついため、ガンダムタイプが迎撃に使用された――

 

「今度はゼータか。あんたらもレアなもんを」

 

『俺らはロンド・ベル本隊のMS預かり場でもあるからな。予備機代わりのZを調達しといたんだ。リ・ガズィを増やすより、本物を調達したほうが効率がいい』

 

黒江が管制代わりに、基地からZガンダムのコックピットに座るキュアドリーム(中身はウマ娘・ナリタブライアン)に通信をかける。ゼータは(連邦軍で)エース級専用機の扱いだが、ロンド・ベルは(エース級が集う事と、軍縮時代の直後の政府への批判を受けて)ガンダムタイプの運用が全面的に許可されたが、保有数の多さは他部隊の嫉妬を買っていた。それを回避するため、64Fに保有機を分散させる対策が取られた。また、黒江らはロンド・ベルに籍を持つ都合上、正規ルートで機材調達を可能としている。Zガンダムは(エゥーゴが政権を握った後は)地球連邦軍の象徴とされており、展示飛行や追加の試験の名目での増産が許可されやすい特徴がある。それを利用したのである。

 

『ダブルゼータは申請があまり通らんが、ゼータのほうは派生の多さもあって、簡単に通る。まぁ、初期のZプラスが老朽化してきたってのもあるんだろう』

 

「武器も一通り揃えているようだし、やってみるとする。ところで、向こうはどうなってる?」

 

『例のアオハル杯だが、チームファーストがやる前からブルってるって噂が流れてるそうだ。出走メンバーのメンツが一時代を築いた英雄の勢揃いだからな。平成三強に、歴代最強級の三冠経験者が少なくとも二人。これに挑む勇気があるヤツのほうが珍しいぜ?」

 

「ダートでも、デジタルにイナリさんがいるからな。普通なら、裸足で逃げ出す。互角にやり合うには、ハーツクライ、キングカメハメハ、クロフネ級の連中が少なくとも必要だろうよ」

 

『ダートの絶対王者だったオジュウチョウサンさえいれば、ダートの問題はほぼなくなるんだがね』

 

「あいつがいれば、な」

 

アオハル杯の現状がブライアンに伝えられる。ものすごい豪華メンバーが集結した上、能力値がそれぞれの絶頂期のそれに還っているため、学園のネームド以外のウマ娘(種族には、前世が実在の競走馬ではない者も多い)からは勝負すら諦める者も多くなっている。

 

「ファーストの連中の能力は認めるが、連中はレースの実績がないに等しいからな。百戦錬磨の私達の敵ではない。戦うんなら、ハーツクライやギャロップダイナ、エースさん(カツラギエース)くらいの力を持つ連中を連れてこいというんだ」

 

『そいつらは他のチームのエース級だろ。スプリンターはバクシンと渡り合えるの、マルゼンくらいしかいなくないか?」

 

「ルドルフからはノースフライトに声をかけたいとメールが来た。のび太さんの世界の関係者が聞いたら、狂喜乱舞するだろうよ。少なくとも、マルゼン以降の『一時代を築いた連中』の多くが同じチームにいるんだし」

 

『チームファーストに同情するね。例えるなら、甲子園に初優勝したチームが、メジャーリーグの歴代のトップが徒党を組んだようなドリームチームに挑むようなもんだ』

 

チームファーストの下馬評はこのようなものであった。『甲子園優勝チームがメジャーリーグの歴代のトップの集うドリームチームに挑むようなもの。実際、チームブリュンヒルトの陣容はドラえもん世界の競馬関係者が聞いたら、狂喜乱舞は確実。平成三強、BNWの少なくとも一人、『皇帝』、『シャドーロールの怪物』。天衣無縫の『天馬の後継者』、後の『貴婦人』。それらが一同に会する以上、勝負を放棄しても、敵前逃亡とはならない。その数々のあだ名の意味をよく知る関係者ならば、こういうだろう。

 

――『土俵に上がってきただけでも、見上げたものだ』と――

 

 

「なぶり殺しになりそうだな…。ルドルフのやつが昔の『カン』を戻せば……単なる公開処刑にしかならん連中は多い。ディープにも『(全盛期の自分なら)勝算はある』と豪語しているしな」

 

『カーッ、皇帝サマは言う事が違うな』

 

実際、ルドルフは現役時代に『レースの全てを知り尽くしているプロフェッサーだよ』と、トレーナーの間で囁かれていたほどの勝負師であり、策士であった。今をときめくエースであるディープインパクトへも『勝算ならあるよ』と豪語するのは、速力も(全盛期の能力であれば)互角である上、ディープにはない『老練さ』を持つ故である。

 

「今はオルフェやジェンティルも、ジュニア級のガキに過ぎん。全盛期を迎えれば、史実通りの力を手に入れるはずだ。だが、オルフェはいずれ、凱旋門で二度も敗れるという、屈辱の記憶も宿ってしまうはずだ。プライドが高い青二才のことだ。それは受け入れないだろうよ。そこはまだ、貴婦人のほうが殊勝だな」

 

『ああ、そのジェンティルだが、ゴルシが誘ったそうだぞ』

 

「どういう風の吹き回しだ??」

 

『さーな。ジャスタウェイは残す必要があるから、比較的に暇そうな貴婦人に声をかけたんだろうよ。あいつのダチのナカヤマにも、仲介役をやらせてるそうだ。で、オルフェは姉貴のほうが怖いとかぬかしとるから、貴婦人に白羽の矢を立てたんだろう?」

 

「ああ、ドリジャだろ。あいつは裏番っぽくてな……。並の連中じゃ、まともに話せん。生徒会に引っ張りたかったが……生徒会役員の少なからずから『怖いからやめてくれぇ』との声がなぁ」

 

オルフェーブルの実姉(史実では実兄)のドリームジャーニー。ブライアンは生徒会に引っ張りたかったようだが、反対論が新旧の役員から続出し、断念した事を口にする。

 

「打診はしたのか?」

 

「ああ。入れ替わる前にな。ゴルシからは『お前、正気か!?』と言われたよ」

 

と、ドリームジャーニーは見かけは大人しそうだが、(史実のステイゴールド産駒であるが故に)同じステイゴールド産駒の前世持ちのゴルシすらも本気で恐れる一面を持つ。あのゴルシすら『インテリヤクザ』扱いして、彼女を本気で恐れている(とはいえ、他のウマ娘よりは遥かに気安い関係性を持つ)こともその補強となっている。

 

「ステイさえいれば、ドリジャもおとなしいんだがな…。ステイを親父のサンデーに叱ってもらうか?」

 

『それがいいな』

 

その事から、サンデーサイレンスはマンハッタンカフェに肉体をまだ返しておらず、普通に現世をエンジョイ中である事がわかる。カフェとの親和性が(前世で『瓜二つ』であったことから)特別高く、カフェがその直前に疲労していた事を理由に、意識を眠らせ、自分が肉体を借りている。口調はゴルシの史実の祖父らしく、ゴルシ寄りのものである。一人称は今のところは『俺』。メジロマックイーンに相変わらず惚れているなど、生前に違わぬ豪傑である。自身の子孫の事はだいたい把握しており、子世代の『記憶持ち』であるディープとステイからは『親父』、孫世代のゴルシからは『じっちゃん』と呼ばれている。また、史実の『恋人』であるマックイーンからは『サンデー』と呼ばれているという。サンデーサイレンスは『日本史上最高の種牡馬』であった。彼に対抗するため、ラムタラも種牡馬として導入されたが、彼の血統は日本の競馬に合わず、まったく期待外れの結果に終わっている。それどころか、彼はイギリスへ再売却される有様であった。

 

 

 

「サンデーサイレンス、ヤツと相性の良い血統はもれなく栄えた。だが……私の親父(ブライアンズタイム)の血統はウォッカがG1級の実質的な最後、ラムタラは鳴り物入りで買われたが……可哀想な結果に終わった。それはアンタも知ってるだろう?それを思うと、複雑だよ。だが……ウオッカは私の『姪』だ。そのウオッカの系統が奴の血統であるダイワスカーレットの系統に合流した。これでは、あの二人を無碍に扱うわけにもいかなくなるじゃないか。親戚だぞ、親戚!!」

 

『その自覚あんの、お前だけやんけ』

 

「まぁ、それはそうなんだが…」

 

ウマ娘としては他人だが、競走馬としては遠い親戚になってしまっている(ウオッカの系統がダイワスカーレットの系統と交配した)事を知っているため、ブライアンは二人に色々と複雑な気持ちがあるようだ。

 

「くそ、おいちゃんキャラはシリウスの役だ!私のキャラじゃないぞ~!」

 

このまま再会すれば、自分は『親戚のおじさんムーブをしてしまう』。その自覚があるため、既にテイオーにそのムーブを無自覚に(前世では従兄弟に近い関係だが)しているシリウスシンボリの事が頭に浮かんだらしく、珍しく、ギャグ寄りの発言をするブライアン。彼女にしては、えらくコミカルな姿であった。

 

 

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