ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

684 / 787
前回の続きです。


第百七十話「次なるステージの序章 3」

――ブライアンは戦車戦の途中で呼び戻され、Zガンダムに乗せられた。のぞみの肉体が感覚を覚えているからこその芸当であった――

 

「なるほどな。武装は親戚のナリタタイセイが作ってたプラモ通りだな」

 

OSのデータにある武装はアニメ通りで、ハイメガランチャーもある。Zのネックは装甲厚が薄い部類に入り、本来は格闘戦向けではない(カミーユやジュドークラスのパイロットは腕でカバーできるが、本来は想定外の運用である)ことである。系列機のZプラスが『チャンバラをできなくない』と言われることでもわかる。アナハイムはそれをガンダリウムの第四世代である『ガンダリウムイプシロン』の開発と採用で解消した。同合金は元々は核パルス推進エンジン用に開発されていたものだが、核パルス推進よりも遥かに強大な推進力を持つ波動エンジンの実用化で核パルス推進の小型化は放棄された。だが、同合金の開発自体は(ガンダリウムγが旧式化してきたせいもある)続き、分子組成などの改良が進んだものが採用された。その強靭性はγの比ではなく、より高級な合金である『ガンダニュウム』に限りなく近い耐弾能力を持つ。つまり、この合金であれば、初代ガンダムの持っていた利点を再現することが可能に戻ったと言える。この合金は最新鋭の精錬設備が必要であったが、最高級マテリアルである『ガンダニュウム』の利点のほとんどを『標準的なガンダリウムの技術で再現できる』という特徴がある。連邦軍は新型の超高級機群に採用した他、現存するガンダムの近代化に使用し、飛躍的な性能向上を果たしている。ジム系の大半には採用されていないが、これはジム系には『そこまでの性能は必要ない』からである。

 

 

「アニメの倍以上の出力か。F91以降の時代の技術で作り直したら、そうなるだろうな」

 

ジェネレーターは一号機の公称出力『2,020kW』の倍以上の数値をマークしていた。核融合炉の小型化がグリプス戦役当時よりも更に進み、イスカンダルの技術で安全性も上がったことで抜本的な出力の改良に成功したのだろう。

 

「しかし……このコックピットは慣れが必要だな」

 

全天周囲モニター・リニアシートには『慣れ』が必要である。これは誰でも同じである。操作感覚は一年戦争~デラーズ紛争時のパネル式コックピットより格段に優れているが、アムロはリック・ディアスに初めて乗った際、『高所恐怖症は乗れんな』と皮肉ったという噂もある。

 

「タイセイの奴につき合って、プラモを作った事があるが、これだけの機体をレバーとペダルだけで動かせるとはな」

 

Zガンダムは元からハイパワー(量産機比)な機体である。グリプス戦役時は『操縦性が最悪』と言われたが、デザリアム戦役後はOSの改良で緩和された。これはグリプス戦役時に主務設計であった人物がジオン系であった故である。ジオン出身の技術者は少なからずが技術本位な設計屋が多いが、この場合もそれであった。OSの技術が進まないと、操縦性が良くならない点に、ジオン系技術者の悪癖が見え隠れする。

 

「スラスター推力と補助のミノフスキーフライトの搭載で、MS形態でも飛行可能か…。まぁ、F91以降の技術で作り直せば、スペックも劇的に変わるか」

 

Zガンダムはこの時期、ミノフスキーフライト(改良型)の小型化の成功で、MS形態でも飛行可能になっている。ウェーブライダー形態は長距離移動用と割り切られ、運用されている。

 

「しかし、Zプラス系の方が結局は量産された世界か」

 

「可変機構の弾力的運用のほうがコストがいいと分かったんですよ。リ・ガズィもカスタムでTMSに回帰しましたし。バルキリーがあるので、そのスピンオフが効いたのも大きいですね」

 

可変機はたいていの場合は衰退するが、可変戦闘機が普及した世界で造られた場合、そのスピンオフで製造コストが下がり、航空部隊で好まれる。未来世界では、コスモタイガーなどの航空機の製造が軍縮時の工場閉鎖などで間に合わないため、数合わせでTMSが増産されたのが起源となる。結局、再建時には地下・自動化されていったため、人員の雇用確保のため、連邦軍工廠の維持がなしくずし的に決まるなど、グダグダであった。プリベンターとしても『外宇宙から、話が通じない異星人がやってくる』のは予想外だった。結局、国家の安全保障上、外宇宙からの侵略が現実問題化していく時代の到来で、正規軍が存続。彼らは変則的な『諜報部』として生きることとになった。戦争の後に技術が平和的に転用され、発展することも既に当たり前の常識であったので、『完全平和主義は無抵抗主義と同義ではない』という真意を公にしなければ、リリーナ・ピースクラフトの政治生命は絶たれていただろう。異星人の襲来が正規軍の存在意義を認識させるという、平和主義論者に『皮肉極まる』流れは彼らの戦後における衰退を決定づけた。彼女のように、矢面に立つ勇気もない者は自業自得の最期を遂げていった。更に、ズォーダー大帝のような傍若無人の侵略者への対抗手段の保持と災害救助が正規軍の存在意義とされたため、その観点からも存続が望まれた。地球連邦軍はガトランティスとの戦争で、名実ともに存在意義が固まったのである。

 

「軍縮が避けられるようになった後は、通常型が減らされた代わりに、航空機を兼任できるTMSが好まれてるんですよ。そうでなければ、Z系はとうに絶えてます」

 

「予算がかかるだろ?」

 

「海軍に比べれば、宇宙軍はマシですよ。海軍はジオン残党もいなくなった後は『沿岸警備隊』の扱いですからね。宇宙軍は緊急展開の必要もあるんで、可変MSが便利なんですよ」

 

可変機はそういった理由で重宝されていた。リゼルが量産されてきているのは、アンクシャが『ティターンズ残党の暗躍』と『ベガ星連合軍の襲来』で生産数を減らされた兼ね合いである。また、初期生産型のZプラスが老朽化した代替に、リ・ガズィ・カスタムとプルトニウスが量産されている。後者はフィールドジェネレーターの搭載で余計に高価な可変機になってしまったので、リ・ガズィの生産ラインの大半が流用できる前者はウケが良い。

 

「やれやれ。約束事のためとはいえ、Zガンダムの本物で戦ったと言っても、うちの姉貴は信じんだろうな」

 

「あなたのお姉さんは確か……」

 

「ビワハヤヒデ。一時代を築いたよ。生前の馬主やらの都合だよ、姉妹で冠名が違うのは」

 

ビワハヤヒデとナリタブライアンは史実でも兄弟であるが、それぞれの馬主が違うので、冠名は別々になっていた。また、ブライアンの夭折、馬主と生産牧場の経営状況の悪化などもあり、2020年代までには「ビワ」の冠名は消え去っている。「ナリタ」は地方競馬などで細々と生き延びているが、ナリタトップロードを最後に、G1級は出ていない。

 

「敵はマラサイとバーザムか。噂のハイザックはいないようだな?」

 

「あれはグリプス戦役の最後のほうで旧式機になってますから。ティターンズも最後の方は更新を図ってましたし」

 

ハイザックはむしろ、「魔女の世界」に転移した残党らが多く持つ。他の残党はグリプス戦役終結時点の装備がそのままであるので、マラサイがもっとも多い。アナハイム・エレクトロニクス社製の同機が終結時点で主力となっているのは、ティターンズには皮肉であっただろう。

 

「テックスペック上は完成時の百式に近い……か。さて……いっちょいくか」

 

ブライアンは操縦レバーを押し込み、レバー横のボタンを押す。アームレイカー式は一時の流行だけで廃れ、一年戦争以来のスティックタイプに回帰している。そのため、操縦が初めてである彼女でも、直感的に動かせた。ビームサーベルを引き抜き、そのまま斬りかかる。Zのサーベルの出力は改良もあり、マラサイの廉価バージョンのガンダリウムγくらいは容易に斬れる。不用意に立ち止まった機が漫画のごとく『綺麗さっぱり』と斬り捨てられる。元々は『チャンバラは不推奨』なゼータだが、ゼータは熟練者が使うため、むしろ、ドッグファイトを積極的にしているという例になる。マラサイは別の機体が破れかぶれで斬りかかってくるが、ブライアンはとっさにゼータの左足で蹴りを入れ、態勢を崩させる。次いで、サーベルで突きを入れ、そのまま沈黙させる。

 

「お見事」

 

「ふう。うちの親戚のナリタタイセイがこういうのが好きでな」

 

マラサイは電子系の取り回しの問題か、サーベルの突きを特定の箇所にされると、電子回路が破壊され、全機能を停止するという重大な問題が隠れていた。これを純ジオンの技術で解決した、事実上の後継機種がギラ・ドーガである。

 

「意外にあっけないな?」

 

「マラサイはリック・ディアスの基礎設計を使って設計されたって話ですが、当時の設計主務がパクったとも言われてますから。眉唾ものですがね」

 

アナハイム・エレクトロニクス社は内部でも、このようなことは起きていた。サナリィの台頭後に顕になったが、アナハイム・エレクトロニクス社の内部の派閥抗争のせいか、優れた設計はすぐに真似されると語る、護衛の機体のパイロット。

 

「しばらくはこの生活を続ける事になるからな。ある程度は知識を持っとらんと怪しまれる。それは向こうも同じだが」

 

「あなたの世界はどうなっているので?」

 

「ディープとオルフェがほぼ同時代にいる…。そういえばわかるか?ごちゃごちゃだよ。世間は私を『落ち目になったから、とっとっと引退しろ』とかほざいてたよ。だが、今は真逆のことを言っとるだろうよ」

 

ブライアンはそう言って、自身の復調が『起こった』ウマ娘世界を揶揄する。掌返しを腹に据えかねていたらしい。

 

「アナハイム・エレクトロニクスの方式が普及したのは幸いだな。子供でも動かせるんじゃないか?」

 

「ジュニアモビルスーツというホビーの大会があるんですが、それで使われるのは、あそこのユニバーサル規格のOSですからね。慣れれば、ジュニアハイくらいの子供でも簡単ですよ。それで、魔女の世界はパニックになったそうですよ」

 

「なぜだ?」

 

「統括官が言ってたんですが、どうやら、欧州戦線が激しくなった時期、海軍機と陸軍機で操縦を統一する事になったんですが、それで海軍が文句を言いまくったそうなんですが、太平洋戦争を生き残った、日本の義勇兵たちに陸海の技官がボコボコに殴られて、殆どが病院行きにされた事件が起こったんです。これに困った上層部は統括官の言う事をそのまま採用したんですが、後味悪いことにもなったそうで」

 

それはダイ・アナザー・デイの直前、黒江がシンフォギア世界から戻って間もない時期に起こった騒動のうちの一つであった。この騒動は横空のクーデター加担の遠因であり、結果的には『扶桑機の操縦系統の統一の契機』ではあったが、航空大国としての自信も木っ端微塵に吹き飛んだ扶桑。ダイ・アナザー・デイで扶桑生え抜きのパイロットが教官級のトップ級以外は動員されなかったことも、現場のコンプレックスとなった。

 

「話は聞いたが、日本軍はどこでも『出る杭は打たれる』そうだな?」

 

「ええ。その時は日本側は決まって、史実の『戦後の荒廃した街』の写真を見せるそうです。扶桑の軍人は職分を問わず、あれで顔色を失うそうで。特に、航空関係の者は『自分達が完膚なきまでに負けた』結果を見せつけられる事になるので、その憤慨が統括官らへの敵意になった例もあるそうです」

 

扶桑軍は日本側に『敗戦後の荒廃』を見せつけられたことで、武闘派の将校らが根こそぎ失脚していった。また、扶桑の(武士時代の風潮が強く残る)風土的に、後方業務を軽視する傾向が強く出てしまい、後方部署が担っていた業務の多くが前線部隊の兼任にされた。これには批判もあったが、日本に『陸軍航空審査部や横須賀航空隊に熟練者を集めて、遊ばせていた』という意見があり、熟練者の温存を失策と断ずる意見が強かったため、政治的妥協で要員の前線投入をせざるを得なくなった。64Fはこうして、『行き場を失った』元のテスト部隊の人員の受け入れ場としても機能している。日本では、映画やアニメの影響で『テストパイロット=実戦経験のない成績優秀なヒヨッコ』のイメージが強く、それに基づいた批判も多かった。だが、実際には『実績のあるパイロットの第二の業務』であったので、一種の悪循環が生まれてしまった。64Fはそれを断つために活用された。これは時空管理局の魔導師でも同様であり、なのはが不祥事を引き起こした事を大義名分に、教導隊そのものの縮小改編、現場への投入の常態化が起こったのである。

 

「現場を知らないという批判に耐えかねた連中がクーデターを起こし、それを鎮圧した後に航空部隊の士官級が左遷か最前線送りにしたら、今度は業務自体が回らなくなったそうで」

 

「だから、あいつらに『おんぶにだっこ』してるわけか」

 

「選良と言われていた連中が反乱を起こせば、政治家連中はビビります。我々もティターンズで経験がありますし」

 

エゥーゴではなく、ティターンズのほうが正規軍であったことは(自己保身を図った連邦軍の保守派の手で)ほぼ隠蔽され、戦後は『地球至上主義に染まった私設軍隊の残党』という扱いである。とはいえ、ティターンズ出身者の全員が悪ではないため、ティターンズを脱走してエゥーゴに入り、その後にロンド・ベルに属した者もいるにはいる。とはいえ、一時とはいえ、ティターンズの専横を許したことは黒歴史なため、ティターンズ出身者の多くは軍にいられなくなり、民間軍事会社の傭兵に転じている。

 

「まぁ、実情は真逆なのですが、それは公の場ではタブーなので……」

 

「ティターンズと言えば、まぁ…な」

 

「ご存知で?」

 

「親類にアニメ好きのヤツがいて、な」

 

ブライアンもアニメ好きの親類につき合って、『Zガンダム』の視聴経験があるらしく、ティターンズの悪名は知っているらしい。

 

 

「もっとも、その残党の掃討に参加するとは思わんだが」

 

と、取引を交わしたことで、自分が(他人の体を借りて)Zガンダムで掃討に参加するという流転ぶりに苦笑するブライアン。無論、自分がいたという記録は残らないが、レースのカンの取り戻しに寄与するのは間違いないだろう。また、射撃技能は天性の才能か、転生後ののぞみを有に上回っていた。(これはのぞみの転生で素体となった、中島錦が実戦経験が飛行時間の割に少なかった部類であるためである)

 

「上手いですな」

 

「ガキの頃、祭りの射的でおもちゃを稼いでたからな。ああいうテキヤのは当たらないようにしているが、ウマ娘がきたら、やってるあんちゃん共は諦める」

 

ブライアンは火器管制装置の補助は『あって、ないようなもの』と言われる『MSの射撃』をうまくこなす。話しながらも『見越し射撃』をこともなげにこなす。流鏑馬(ウマ娘世界では、ウマ娘が自分で走る)の経験があるためで、そこは転生後に初めて射撃に縁を持ったのぞみより有利であった。

 

「ん?ジム改だと?ティターンズにしては旧型を出してきたぞ」

 

「ありゃ?あんな骨董品……鹵獲できます?」

 

「バルカンで沈黙させるか?ゼータのバルカン砲なら、ジム改くらいは余裕で装甲を撃ち抜けるだろう」

 

ゼータやニューなどの超高性能機が闊歩する戦場では、いくらティターンズのパイロットが動かそうと、一年戦争の遺物であるジム改(量産は一年戦争中)は単なる『模擬標的』も同然である。既に小型量産機が旧型になりつつある時代であるので、無改修のジム改は『模擬標的』以下の存在であった。

 

「バルカンは装弾数がないからな。節約せんと」

 

MSのバルカン砲は基本的に、20世紀半ばの頃の戦闘機程度の装弾数だ。これは複雑な機器を積む頭部に積むため、弾数を多く入れられないためで、ゼータでは700発前後。けして多い弾数ではない。とはいえ、量産機より質の良い弾頭を用いているので、旧型の量産機程度は余裕で正面装甲を撃ち抜く。ジム改程度であれば、数秒間の発射で事足りた。

 

「いけっ!」

 

数秒ほど発射する。使用弾数は30発ほど。発射速度は抑えたが、それでも30発は使う。ジム改は(戦時量産であるので、意外に装甲板の質が悪い)それだけで正面装甲を抜かれ、倒れ伏す。

 

「ふむ……脆いな」

 

「戦時量産ですし、残党のはろくに手入れされてませんからね。おそらくは経年劣化もあるんでしょう。もっとも、ザク・マシンガンくらいでも致命傷になりますがね。中のパイロットは死んだかな?おい、誰か確認しろ」

 

「私がしましょう」

 

デザリアム戦役後の時勢では、MS越しでも、撃破した機体のコックピットハッチの開放が可能になっている。これはM粒子の影響を受けにくい遠隔通信技術が開発されたためである。

 

「ふむ…。打ちどころが悪かったようで、死んでますね」

 

「やれやれ。旧型機をシートべルトもしないで使うからだ」

 

ノーマルスーツはしていたようだが、一年戦争時のパネル式コックピットは狙撃用スコープ機器などが設置されており、実のところは『快適性は戦車よりはマシ』程度。どうもメットも被らないで動かしたのか、スコープに頭を打ち付け、中で気を失っていた。

 

「回収班に生死は確かめさせます。我々は高高度にいる『キングオブドラゴン級』を撃沈しに行きます」

 

「なんだ、それは」

 

「ジオンがグワジンに代わる旗艦級として建造していた大型の戦艦です。大きさだけなら、ジオンの戦闘艦では最大級です」

 

ジオン残党は戦時中の未成兵器を戦後に完成させる事が多い。その事から、ジム系MSの需要は特務部隊では大きく低下している。Z系が増産されたのは、『ジムより遥かに強力である』というのも理由に入る。皮肉な事に、ガンダリウムγのさらなる改良型『ガンダリウムイプシロン』の実用化で、ジオンが追いついたはずの『MS用装甲技術』でまた差がついてしまうという結果となった。また、艦艇技術では『波動エンジン』により、小手先の努力では埋められない差が生している。一年戦争後、ジオン残党はモビルアーマーをより強化した『モビルシップ』の研究もしていたが、資源量と技術力の問題で頓挫している。連邦は宇宙戦艦ヤマトやマクロスの登場後は恒星間宇宙船の配備を押し進め、この時点では『土星決戦』当時に近い頭数に戻している。

 

「MSは対艦戦もこなすのか?」

 

「一時は戦闘機の代替でもありましたから。可変機はそれに近づけた形態を持たせられたんです。コスモタイガーのおかげで、分業に戻りましたが、基本的に数が足りませんからな」

 

連邦軍であっても、艦載機の数は銀河の超大国群に比べれば『ささやか』な数であるため、必然的に万能機が造られる。一芸特化のコスモ・ゼロの大規模量産がされなかった理由でもある。

 

「ジオンとティターンズは元来、思想的に相いれんはずだろ?なぜ共闘する?」

 

「それがですね。今となっては『反体制』という旗印でまとまりつつありまして。一人でも多く殺すためのテロリズムのための名分に過ぎませんよ、元の所属組織の理念など」

 

「それをナチ残党にまんまと利用されたわけか…。歴史の皮肉だな」

 

「ええ。連中が一纏まりで行動しているのに対し、ジオンとティターンズは残党の間のネットワークも統制もない。皮肉ですよ。ナチに利用されているとも知らずに、こうして、別の世界に騒乱をもたらす」

 

「私達はそれを収めなくてはならん…か。話し合いなど通じんからな。連中は『負ける直前の旧日本軍』並に凝り固まっとるようだし」

 

「連中には失うものなどないですからな。宇宙戦艦から艦砲射撃を撃ち込みかねませんので、撃沈する必要があります」

 

「やれやれ。全機、ハイメガランチャー、もしくはスマートガンは持っているな?機体の再補給と休憩が済みしだい、正式に撃沈に打って出るぞ」

 

ブライアンは契約はきちんと履行する。のぞみの『空軍少佐』としての立場をフル活用し、MS一個中隊を率いてみせる。元々、ルドルフはテイオーが若いこともあり、自身の三冠としての後継となっていたブライアンに白羽の矢を立てようとしていた。だが、ブライアンは固辞した(その時期にブライアンの『衰え』が顕著に現れてしまったのも)。その頃には、全盛期が終わってしまったという事実に荒れてしまっていたからだ。結局、ブライアンは生徒会長になることはなく、テイオーが抜擢されたわけだが、トレセン学園の慣習に則り、『最強、もしくは時代を担うくらいの強さでなくては、学園の海千山千のウマ娘は束ねられない』という事項に見合うウマ娘とならなければならないため、現役をしばらく続けなくてはならない。それもテイオーが背負わされた『伝統』であった。ブライアンは『ガキに重荷を背負わせちまった』と、ゴルシに漏らした。ルドルフも『テイオー贔屓で選んだわけではない』と述べている(とはいえ、史実の血縁関係で選んだのは否めない)。

 

「よろしいのですか、ブライアン嬢」

 

「約束は果たす。体を借りた以上、やってみせなくてはな」

 

ブライアンはのぞみの肉体を借りているが、よりトーンの低い、ドスの効いた声を発している。これはブライアン本人がハスキーボイスであるからである。また、ブライアン本人の資質が反映されている状態であるので、史実ののぞみは『宝の持ち腐れ』状態で持て余していた『絶対音感』を余す所なく活用できる状態であった。あいにく、(数年来の訓練で歌唱力がマシになった)のぞみAはまだ機会に恵まれていないが、それに先駆ける形で、ブライアンはその歌唱力を披露する機会があった。

 

「この間の慰問ライブですが、どうでした?終えた後」

 

「質問責めにあったよ。『こいつ自身』はもちろん、キュアレモネードの春日野うららからもな。こっちは芸能もプロだ。駆け出しの舞台俳優志望などは比較にならん」

 

春日野うららから相当に質問責めに遭ったらしい。母親が高名な舞台女優であり、自身もその後継ぎを目指す彼女(オトナ世界では、成人後、実際に舞台俳優に転じるも、天真爛漫さを売りにできない年齢に到達しつつあることもあり、伸び悩んでいる)にとって、ブライアンの百戦錬磨のライブパフォーマンスは(本業者として)悔しいくらいに実力差を見せつけられた。のぞみBはライブの模様に圧倒され、うららBは茫然自失。仕方がないが、ブライアンはトレセン学園の歴代の生徒会経験者でトップレベルのライブパフォーマンス力を誇っている。数万人の大観衆を前に、歌唱する胆力、鍛えられた歌唱力。『その気になれば、歌手で食っていけるだろう』とは、往時の個人トレーナーの談。それが発揮されたため、当然、慰問ライブは大盛況。楽屋でうららは地団駄を踏んで悔しがる羽目になった。それほどまでにブライアンのパフォーマンスは凄かった。彼女自身はウイニングライブに身を入れてトレーニングした事はほとんどない。全盛期はレース狂と揶揄されたほどであったからだが、元々の素質により、高いクオリティを発揮できた。低迷期を経た後はきちんとダンスや歌唱訓練をやり直したため、下手な『駆け出しの芸能人』よりよほどパフォーマンスのクオリティは高い。中央トレセン学園が伊達や酔狂で『エリートの集まり』とされていない理由である。

 

「対抗心を燃やすのは結構だが、あのガキはまだ青い。精進あるのみだと言ってやった」

 

ブライアンは少なくとも、中高相当の長い期間の訓練と実践の経験を持つが、春日野うららは(2008年時点では)二枚目のシングルをヒットさせたばかりの駆け出しの芸能人。しかも、2008年時点で13歳と若い。色々とまだ、比べるに値しないと言えよう。

 

「しかし、プリキュアの姿でよくやれましたね?」

 

「なーに、メイクデビューの時のライブで、ちょっと恥ずかしい事をせねばならなかった事があってな。それに比べれば、な」

 

苦笑交じりにそう返す。のぞみBも大いに悔しがる羽目になったという、その慰問ライブ。ゴルシが後に話すところによれば、自分の持ち歌『シャドーロールの誓い』、『BLAZE』の他、ナリタタイシンの『感情ノ黎明』、テイエムオペラオーの『Forever gold』を披露し、大いにサンクルミエール学園の生徒や教職員らを沸かしたという。(なお、『Forever gold』についてはオペラオーに事後承諾を取る形になったが、オペラオーもまさか、ブライアンにカバーされるとは思ってもみなかったらしく、『何だってーーーー!?』(オペラオーは大人びた外見で勘違いされるが、実は中等部である)と腰を抜かす羽目になったとのこと。

 

 

――こうして、動乱は佳境を迎えつつある。関係のない異世界にまで騒乱に巻き込んだジオン残党やティターンズ残党には、連邦軍やプリベンターの担当官の厳しい尋問が待ち受けているのは言うまでもない。また、サンクルミエール学園の関係者や、争乱に気づいた治安当局らへの説明文を苦心してこさえている64F幹部らの姿が秘密基地にはあった。その頃、ウマ娘世界では、着々とアオハル杯の第三戦(チームファーストとの手合わせ)が着々と近づきつつあった――

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。