ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

687 / 788
前回と異なり、オトナプリキュア世界編の補完になります。


第百七十四話「行間 大人のぞみのトラウマと自らの選びし道」

――扶桑陸軍は暁部隊が管轄から離れさせられたりした結果、機甲戦力の充実に予算を費やすしか方策がなく、ダイ・アナザー・デイ直前には、旧式兵器の処分命令のダメージが残る状態であった。高級将校への粛清人事の影響もあり、極限した一部の有能な将兵に手柄が集中する状況が生まれた。カールスラントの新鋭戦車の調査で『戦車に求められる性能水準』の飛躍もあり、扶桑陸軍は大パニックであった。外国産新鋭戦車の導入は95式軽戦車の淘汰と最前線の車両の格差があまりに大きすぎたことでの要望であった。ロマーニャとヒスパニア陸軍の組織的戦闘能力の喪失により、国産新鋭戦車の生産を待てる状態では無くなったため、ブリタニアが生産したセンチュリオン戦車の1945年七~八月の生産分の全ては(欧州そのものの危機であるので)扶桑陸軍へ供与された。同戦車はダイ・アナザー・デイの危機を救った形になると同時に、扶桑軍を二度目のカルチャーショックに陥れた。それらを運ぶ戦車輸送艦をすべて刷新する必要に迫られた上、海軍独自の用語の多くが駆逐される流れとなり、海軍の風土を否定する流れを不満に思った海軍の青年将校たちがクーデター事件を起こすも、連合軍に恥を晒すだけの結果に終わる。その混乱が収まらず、魔女覚醒の休眠期にも突入した時期に、太平洋戦争は開始されてしまったのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――M動乱からの衝撃の連続は、扶桑軍が大正期までの名残りを完全に捨て、文字通りの近代的な軍隊に脱皮する機会であったと同時に、集団主義的な風潮の実質的な終焉の訪れを告げる鐘でもあった。ミーナの起こした不祥事は扶桑にとっては『沈黙は金なり』の否定にちょうどいい機会であり、カールスラントへの復讐の機会でもあった。結果、軍事国家としての自らを否定されたカールスラントは内戦に突入。民族存亡の危機へ陥る。その代わりを求められた都合、扶桑は超大国になるしか道が無くなったのである。ダイ・アナザー・デイは大戦前期レベルの戦闘機の『最初で最後の華』とも言えたが、日本側の指示で、零戦と隼なども(終了後に退役させるのを前提に)水エタノール噴射装置の搭載改修をされ、実質的には末期型に移行した。軍の航空技官たちは(ジェット機への移行期が見えていたことで)意図的に間引きが行われた他、週休二日制への完全移行、徒弟制度の文字通りの淘汰などが矢継ぎ早に行われた。その結果、社会そのものに混乱が大きく生じた。また、軍人の社会的地位を下げたら、今度は軍の人的な新陳代謝が停滞状態に陥るなど、予期せぬ悪循環となるケースも続出した。農村部の衰退もこの時期に起こり、機械化の進展、旧来的な地主と小作人の関係が法令改正などであっさりと崩壊した事による混乱もあり、扶桑の社会全体が予期せぬ大混乱に陥った。史実戦前戦後の移行期相当の混乱がいっぺんに起こったようなものだと、Y委員会は評した。華族もこの混乱を乗り切るため、軍人かつ魔女であった者を次期当主に添えるケースが(黒田家に倣い)続出していく。この大混乱の責任を取るため、日本は『華族の身分廃止は強制していないし、我々は軍人を過度に持ち上げる社会の風潮を否定したかっただけ』と公的に表明。これで身分廃止の心配は無くなったが、法的特権は縮小へ向かうために『軍人当主』が(家の存続と社会的地位の保全のために)奨励され、史実で継承できたであろう『学者肌の嫡男』が続々と廃嫡される事例が相次ぎ、『華族の地位だけは保障してやったはずだ』と、日本を却って困惑させたのである――

 

 

 

 

 

 

――地球連邦の混乱は歴史上の流れでは『それに次ぐ』社会的混乱であった。平和主義が(侵略者の相次ぐ襲来で)退潮し、『生きるために戦う』ことが奨励されるようになった風潮が是とされた結果、民間軍事会社が最盛期を迎え、飽和状態にあった。人々は民間軍事会社の法的規制を強く望んだので、その兼ね合いで軍部の復興が進められた(政府が民間軍事会社頼りになる風潮を懸念したのもあり)。民間軍事会社はエース部隊を軍に供出することで政府と司法取引を交わしていった。民間軍事会社の飽和化によるモラル低下も問題になっていたからだ。この混乱で放置された元の軍管理下の艦艇ドックはハーロック家の手に渡り、後にアルカディア号を生み出す土台となる。既に恒星間国家になり始めていた地球連邦にとって『安全保障』は重大事と化し、波動砲搭載艦の量産が進められた他、マクロス級の世代交代も進められた。同時に、ティターンズやザンスカール帝国、コスモ・バビロニアなどの残党がジオン残党に吸収されていき、反連邦組織として合併しつつある事は『完全平和主義』の招いた結果だと批判されている。地球人類のみしか宇宙にいないのならいいが、実際は星間文明レベルの異星人はもれなく『帝国主義』真っ只中。更には宇宙怪獣。それらから生き延びるための武力保有は仕方がないことなのだという論調が地球連邦の大勢を占めた。立て続けに宇宙から侵略者が来た上、コロニー落としの負の影響による地殻変動による大災害。それらからの守護は必要不可欠であった。結局、プリベンターの組織規模ではそれらは賄いきれないとされ、実務上の都合で軍部の存続が決まり、民間軍事会社の政治的都合による統廃合と人員供出も相次いだ。結果、ロンド・ベルの規模拡大による『有事即応』と『アースフリート』の指揮系統を『大統領直属』化することでの『良識的な人員の確保』が急務とされた。日本も戦後に自衛隊を持ったように、有事対応の枠組みは必要なのだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

――23世紀、在りし日の自衛隊の残した資料から、戦後間もなくの頃、ゴジラ(正確にはその前身とされる恐竜)の親戚だろうと思われる生物が襲来し、米軍がてんてこ舞いした出来事が明らかとなり、自衛隊はそんな事態の再来への危惧を大義名分に、吉田茂が設立させた組織であったことが判明。メカゴジラとMOGERAはその事態の再来を恐れた歴代政権の極秘指示で開発されていたのだ。だが、それらは統合戦争で失われ、拡散した技術が宇宙服の思想と合体し、モビルスーツに繋がったという。つまり、地球は『何が起こるか』わからないのだ。故に、人々は幾多のスーパーロボットを造ってきたという。また、ガミラス帝国との戦争の教訓で『実体弾』の存在がクローズアップされたため、レーザーライフルが実体弾を駆逐するには至らなかったなど、ローテクと思われたものが役に立つケースも頻発した。また、キュアフルーレなどの『異能で造られた武器』よりも『日本刀』などの普通の刃物が役に立ったケースもあるように、異能も万能ではない――

 

 

 

 

 

――また、力を一度でも持った者には、大いなる責任が生ずる。それは仮面ライダー、とりわけ一号ライダーが悩んでいたことでもある。彼は最終的に『人々が望むのなら』と、改造人間・仮面ライダーとして生き続けることを選んだ。大人のぞみも世界全体のために、(ラーメタル人としての資質の覚醒で)1000年女王になることを選んだ。大人りんたちは『それに付き合うために』かつて手放した異能を取り戻すことを望み、それを成し得た。そのうち、大人かれんは勤務先の病院が蘇生体による爆弾攻撃で一時閉鎖を余儀なくされた上、その場に居合わせ、同僚や先輩らが無惨に吹き飛ぶ様を目の当たりにしたことへの怒りが『戦いへ戻る』原動力であった。普段は立場相応に落ち着いているが、感情が高ぶると、若き日の烈情が戻る。それはのぞみ以上であった。

 

 

 

 

――オトナ世界――」

 

「まさか、軍医になるなんて、思ってもなかったわ」

 

「プリキュアの姿で白衣を羽織るの、なんだか変な感じですよ」

 

「こうでもないと、体力持たないのよ。本当は三十路が間近だったから」

 

 

大人かれんも肉体的には若返らせられているが、体力は(医師としての多忙で)低下気味であったので、最盛期の状態かつ、疲労軽減果の高いプリキュアの姿で『しゅんらん』や『宇宙戦艦ヤマト』の軍医として勤務していた。医療技術が飛躍した世界の艦とはいえ、基本的な医療は21世紀からの顕著な変化はない。戦禍に巻き込まれた地域の医療に佐渡酒造の助手として参加していた。

 

「医療知識はさほど変化してなくて助かったわ」

 

「宇宙時代特有の疫病が増えたくらいですね。宇宙時代のがんって言われてる『宇宙放射線病』とか。これは白色彗星帝国の医療技術でやっと根治ができるように」

 

医療技術も統合戦争で一度、21世紀前半レベルに退化し、そこから立て直しがなされたため、地球連邦では『技術封印』はタブー視されている。ミネバがサイコフレームの封印を断念させられたのは、彼女が残党にとって『神輿』に過ぎないことがムーンクライシス事件で判明したことで、地球連邦が交渉を押し返す大義名分を得たからである(グランジオングとネオジオングにサイコフレームが搭載されていたため)。また、統合戦争でひみつ道具の技術が失われた原因を作った者の一人がザビ家の先祖にあたる人物であったことの判明で、ミネバはサイコフレームの封印をゴリ押しできなくなったのである。

 

「統合戦争前の時代の超技術の多くはロストテクノロジー化したんですが、ドラえもんくん曰く、最盛期には白色彗星帝国をも超えていたそうです」

 

ドラえもんの時代の技術はある意味、白色彗星帝国をも超えていたが、統合戦争の混乱で失われている。その教訓で『技術の封印や規制』が半ばタブーになっている。ミネバはそれを知らないはずはないが、『危険だから』という理由で封印する事を提案したのは悪手であり、残党軍がサイコフレームてんこ盛りのマシーンを二機以上も用意していたことの判明は彼女の君主としての存在意義を却って揺るがす事態となった。

 

「それがどうして?」

 

「ロシアや中国が『技術的特異点』を大義名分に日本連邦に戦いを挑むんですよ。核や電子パルス兵器、化学兵器も躊躇なく投入されたそうです。その最中、ドラえもんくんとその仲間たちは組織と死闘を繰り広げ、相打ちに近い形で野望を止めたそうです」

 

「……!それじゃ、あなたが話していた彼は……」

 

「『それ以前の時間軸のドラえもんくん』ってことです。その戦いの遠因となったのが、ジオンのザビ家の先祖だと言われてます。おそらくはデキン・ザビの祖父、あるいはその父親だと言われています。先祖にはロシア系がいるという噂でしたが……」

 

彼女がいうそれは別個体の持つ記憶が頼りだが、ザビ家は一年戦争前の段階で、既に人類への罪を犯していたことが判明した。ミネバも知らない事であったが、先祖の一人がドラえもんの消息不明に『悪玉』側で絡んでいたのは、彼女の不幸であった。無論、彼女には罪はないが、一族郎党の犯した罪があまりに大きすぎた。近世までのアジア文明圏なら『九族皆殺し』が適応されていても不思議ではない。統合戦争は長期に及んだ都合、『はっきりしない』出来事のほうが多い。ドラえもんの行方不明も、目撃者が殆どおらず、当事者であったドラえもんズの全員が消えてしまった事、今後の時代、人類の希望になる『仮面ライダーたちの眠りを守るため』に戦ったという、ドラミの証言がその戦いの存在を23世紀へ伝えたのだ。

 

「ドラミちゃんは23世紀まで生き続けてるそうです。内部の機械をタイムふろしきで定期的に新品の状態に戻すって荒業で生きながらえてるそうです。統合戦争の後は新規の部品での修理ができなくなったそうで……。それと、野比家の分家の一つが全滅させられてもいるので、反ジオンになったそうです」

 

ドラミがそのような方法でしか『生き長らえる』方法がなくなった事、デザリアム戦役後にようやく部品の再製造に『目処がたった』段階であることから、ジオンの勝ち目(セワシの次子の一家を全滅させなければ)は野比家を敵に回した時点で潰えたというのが、連邦内での論評である。

 

「彼らが犯した罪は大きすぎます。50億くらいをぶち殺して(しかも、その過半数は『同胞』である)、いくつもの世界遺産を塵に還した。戦後にレプリカを立てたところで、人々に許されると思います?」

 

「許されないわね…」

 

大人のぞみは(教師としての視線から)世界遺産や旧国家群の営みを否定しようとしたジオン公国の戦争犯罪は許せないようである。ジオン公国は『旧国家群の遺産を否定はしていない!!』と言い訳がましい声明を発表しているが、実際には、戦中のザビ派はシドニー・オペラハウスやエッフェル塔の再建に反対していた。共和国は自主的に再建資金の一部を負担したが、それでデラーズ・フリートが蜂起を起こし、ますます針の筵となった。ジオン共和国を残しておく事が非と判断されたのは、ちょうどその時期だとされる。スペースノイドにも明確に『エレズム』や『ジオニズム』へ(開拓時代の幕開けで)嫌悪感を持つ層が増加してきたのに危機感を持ったのが、ラプラス戦役とムーンクライシス事件の起こった理由という。

 

「スペースノイドにもいるんですよ。昔の遺産は人類共通の遺産だって考えるの。戦時中はほとんど黙殺されていたようですがね」

 

大人のぞみが反感を抱くのも無理はないが、ジオンの首脳陣(ザビ家)は旧国家群の遺産を選別して消し去るつもりであった。例として、コロニー落としが起こした地殻変動でウルル(エアーズロック)は真っ二つになり、マウント・オーガスタスは多数の岩山に割れてしまった。ラサにあったポタラ宮の歴史的遺跡群も、ドラえもんがいなければ、永久に歴史から消え去っていた。(デザリアム戦役の際、シャアは『旧時代の遺産に気を配ってては、私の大望は……』と漏らした事が災いし、事後処理の済んだ後、甲児、竜馬、鉄也、忍ら『腕っぷしに自信のあるスーパーロボット乗り』に思いっきり殴られ、数ヶ月以上の入院生活を送る羽目になったという)

 

「向こうの私は慈悲深いですよ、人同士の戦争の原因になった連中を殴んなかったんですから。この私だったら、再起不能になるまで殴ってる確信あります」

 

「同じ人物でも、考えには個体差があるというけれど、当たってたわね」

 

大人のぞみは一度、大人になり、数年の社会生活を送った。それ故、(ある意味で)学生時代より烈しい一面が生まれていた。のぞみAは転生で精神状態が(現役時代の)10代のそれに戻ったために、現役時代の思考に戻っているところも多い。対して、大人のぞみは26歳の成人女性。教諭として培った精神性により、『何かを守るためには激しさも必要である』という思考となっている。加えて、教諭生活では『学生時代の理想と食い違う現実』に苦しんでいたことから、立場上、『許せない事』に抗えない自分に自己嫌悪を抱いていた。その心理の反映により、のぞみAよりも烈しさが表に出やすくなっている。

 

「教師生活は辛かったんですよ。昔のココのような事は今のご時世、絶対に許されない。実習生時代から、それでよく、指導教諭や校長に怒られてて。生徒受けは良かったんですが、児童の親と同僚には疎まれまして…。それで悩んでたんですよ、実は……」

 

「あなた……」

 

大人のぞみは自嘲混じりに、教諭生活を振り返る。なれた喜びよりも、熱心さが仇になり、職場で浮いた存在になっていたことのショックが大きくなったらしく、身の振り方を悩んでいたと告白する。

 

「いずれ教職には戻りますけど、前の職場は無くなったんで、どこかで中学校か高校の教員免許を取るつもりです。小学校よりは親も口出ししないし」

 

大人のぞみは私立の小学校教諭であったが、熱心さが仇になり、職場で浮いた存在であった。そのことへの鬱憤が軍人生活への抵抗感の無さに繋がったのも事実である。本来、この世界線では『一時の奇跡』で一時的にしかプリキュアへ戻れないはずであったので、ある意味、この動乱は大人のぞみの精神バランスを安定させたと言える。

 

 

「とはいえ、今は失職した身ですので、当分は軍人生活です。家が消し飛びましたから……」

 

大人のぞみはこの時、住んでいたマンションを焼け出され、文字通りに財産と住む家を失っていた。実家も被害を受けていたらしく、両親は遠くに住む親類の家に避難したという。

 

「実家も半壊らしくて、両親から、おじの家に身を寄せると連絡がありました。なので、当分は軍人生活で金を稼がないとならなくなったんですよ。おふくろ、美容室を経営してたけど、今回のことでやめようかって言ってるようだし……」

 

この世界はもはや、平和な時代が終わりを告げ、動乱の時代に入りつつある。大人のぞみはそれを終わらせるための決意を固めていた。ラーメタルの遺伝子を継ぐ自分が1000年女王の座を継ぐということを。

 

「あなたは何をする気なの?」

 

「いずれ、彼女たちの後を継ぐつもりです。もう……みんなと同じ時間は生きられませんから」

 

遠い先祖であった、ラーメタル人から受け継がれた資質の覚醒と『同位体との存在の同一化』で自らが『家族と同じ時間を生きられなくなった』(新規の老化現象が無くなったため)ため、いずれは『夢原のぞみ』としては姿を消すつもりである事を話す。

 

「先祖のやり残したことを?」

 

「たぶん、どこかの代の女王の関係者で、継承権を持たない姉妹か何かが先祖でしょう。その先祖の資質が目覚めたのなら、普通に生きてても、有に数万年以上は生きるでしょう。

 

「す、数万年……」

 

「ラーメタル人にとって、1000年は一日に近い時間感覚だそうですから…」

 

ラーメタル人は最大で数百万もの寿命を誇る。プロメシュームはそれを以てしても『ダークイーン』には対抗できないと判断し、自身を機械化。以後は破滅の道を辿る。それを知った大人のぞみは彼女が人間であった頃の願いを自身がプリキュアとは別の異能を得たことで、自分が果たそうと考え、のぞみAとも異なる道筋……『1000年女王』を継ぐ道へ足を踏み入れていく。(ラーメタルそのものが1999年の接近の後、内戦で事実上の崩壊を迎え、プロメシュームは機械化帝国に体制を移行させたため、1000年女王という称号自体は有名無実化していたが、古代からの地球の真の統治者としての権威は生きている)ラーメタルとの関係は切れた(大人のぞみは遠い祖先にラーメタル人がいた程度)が、1000年女王の称号と力は(正統な後継ぎであったメーテル、はたまたクイーン・エメラルダスも継がなかったため)大人のぞみが自らの意思で継承していく。ある意味では、オトナ世界の地球が(環境破壊で)破滅に向かうのを阻止するためであり、その傾向が顕著になり、ヒーリングアニマルが人を滅ぼそうとした場合、その彼らを返り討ちにするため。

 

「1000年女王になった後は、いずれ家族と別れることになります。年食わないことが知られたら、普通の暮らしは送れませんからね。それと、『古代文明の時代』から、宇宙人の管理下で文明を発達させてきた…なんて、証拠でもない限りは信じませんから、当分は普通に暮らせるでしょうけど」

 

とはいうものの、この世界での1000年女王の継承に必要なものは関東平野の地下部に眠っている。それは地球連邦軍が確認しており、プロメシュームが自分に何かがあった時のために遺したものだろうとのこと。また、もう一つのトンデモの置き土産があった。

 

「連邦軍がこの世界の地下を調べたら、それに必要なものが出てきまして。たぶん。先代(プロメシューム)がいざという時のために遺していたんでしょう。それと、作りかけのアルカディア号が眠っていました」

 

「あ、あれが!?」

 

「ハーロックさんに聞いたら、どこかの次元から、なんかの拍子で流れ着いたんだろうと。欠けてる部品は取り寄せてもらったんで、今、残りを造ってるところです」

 

それは未来世界でいう『骸骨艦首型のアルカディア号』であり、ハーロックがよく使う個体の試作品であった。無論、トチローの意思が宿る前の時間軸の個体であるが、ハーロックの協力でネットワークに繋ぐことが決まっている。

 

「それでいずれ?」

 

「ええ。いずれ旅立つつもりです。普通の暮らしはあと数十年しかできませんから」

 

大人のぞみはラーメタル人としての資質が目覚めた事により、肉体的にも地球人からかけ離れてしまったので、いずれはアルカディア号で宇宙に旅立つつもりだと明言した。プロメシュームがメーテルとエメラルダスの母であり、彼女が若かりし頃に地球にいたことは既に知っている。その時期の彼女の願いと立場を継承し、地球を統治する。そして、いずれはアルカディア号で地球を去るつもりだと述べる。

 

「ココと結婚したいと思ってたこともあるけど、ココは私が戦いに戻るのは望んでいないし、私にとってはこの姿は青春そのもの。この時点で、お互いに気まずい状況にあるって言えますよ、かれんさん」

 

のぞみAは相思相愛であり続けているが、このオトナ世界では『のぞみ達を(戦いから)」解放したい』と考えたことから『ボタンのかけ違い』が起こってしまった。小々田コージはこの世界の状況の悪化、歴代のプリキュアから力を奪うことになった自らの決断への罪悪感に押しつぶされ、とても会える状態にはない。ドラえもん世界に転生した個体が順風満帆な夫婦生活を送っているのと対称的な有様だ。

 

「だから、会わないの?」

 

「この戦争が終わった後に顔合わせをするつもりです。下手すれば、それが今生の別れになるでしょうね……」

 

大人のぞみは腹を決めていた。それ故に、かつて愛した者への想いに決着をつけてから、1000年女王へ即位するつもりである。まさか、ココも、恋人兼教え子が『地球の真なる統治者』の資格を得て、しかるべき時に即位するつもりなど、想像だにしないだろう。また、口ぶりを察するに、事実上は袂を分かつつもりらしい。

 

「本来、1000年女王は専用の座乗艦が与えられるんですけど、私はイレギュラーだから、アルカディア号をそれにします。トチローさんの見分だと、『三号艦の試作品』だそうです。つまり、本来はテストベッドとして建造されていたものだろうという事です。それを完成させます」

 

「どうやって?この世界には宇宙戦艦を建造できる設備は……」

 

「関東平野の地下を使います。この世界の関東平野には秘密があったんです」

 

「秘密?」

 

「歴代の女王たちが関東平野そのものを改造していたんです。有事に地球から脱出するための方舟として。その地下部に宇宙戦艦を造れる設備があるんです。地球連邦軍が今、必要な機械を地球連邦の規格品に取っ替えてる最中です」

 

ラーメタルのメカニズムは思いも寄らないローテクに脆いという弱点がある。それを知る地球連邦軍は設備を一部、地球の規格品に取っ替え、地球連邦軍の規格に則ったメカを建造可能なように改造している。必要な資源さえあれば、自動で建造が可能である工場は宇宙時代には当たり前である。ジオンはスペースコロニーという立地の都合、連邦ほどの大規模生産は困難である。故に、いくつかの月面都市を抑え、宇宙要塞をこさえたが、それでも連邦の生産力には及ばなかった。その連邦も宇宙の大国に比して、あまりにささやかな部類であった。故に、波動砲やマクロスキャノンなどの『最終兵器』に傾倒しているのである。無人兵器が廃されなかったのは『技術の維持』と『有事の時の捨て駒』という二つのやむない理由による。軍の人的資源が払底しかけている状態では、民間軍事会社を政治的に押さえつけ、軍の一部として扱わざるを得ない。これは民衆受けがよくなく、民間軍事会社の『軍人であった者』は有事に復帰させる法案が提案されている(提案者が民間軍事会社嫌いであったためもある)。地球連邦政府も『一部の精鋭に負担がのしかかり、全体的に見れば、軍の規律は弛緩している』状況を(有事続きで)流石に自覚し、元の太陽系直掩艦隊であった『アースフリート』に近縁の任務を持つ衛星軌道艦隊を編入し、装備を刷新(恒星間航行艦に切り替え)するなどの対策を推進中であった。この時点で、地球連邦の仮想敵はジオンから『未知の侵略国家群』に切り替わりつつあったことがわかる。

 

「たぶん、宇宙から侵略者が(地球の文明レベルの未熟なうちに)攻めて来た場合、都市や地方単位で退避するために、各大陸に仕組んでいたんでしょう。でも、それを知る由もない地球人があれこれしまくったせいで、機能が生きてる状態だったのは、日本の関東平野のみ。多分、開発が割に新しかったのが幸いしたんでしょうね」

 

1000年女王の遺した方舟は日本の関東平野のみが生きていたと、大人のぞみは語る。未来世界でも『生きていた』ほうが少なかったので、当然と言えば、当然であった。そのため、関東平野に各地から焼け出された者たちを受け入れ、白色彗星帝国残党の攻撃から一時的に退避させる段取りとなった。つまり、彼女らは『関東平野に都市が築かれる』ことを予期していた』ことになる。

 

「どうせ、連中は艦砲射撃で地表を焼き払うつもりでしょうから、日本人は関東平野に収容できるだけの人たちと政府機能を移転させる段取りになりました。今、機能が復活しそうなニューヨークとパリ、ロンドンの方舟の機能を修復中です」

 

「どうやって、政府と交渉を?」

 

「国会に乗り込んで、艦隊司令部が事情を説明したんです。私とラブちゃん、マナちゃんが同席して。プリキュアとしては名が通ってますからね、私とラブちゃん、マナちゃんは」

 

相田マナはこの世界の個体だが、別個体のパワーアップの反映で『のぞみと同じ状態』になっている。また、数少ない『明確に変身能力が維持されていた』プリキュアであり、四葉財閥のコネクションが使える。それを活用したらしい。

 

「できるだけ、土星で片付けたいんですが、敵は地球をワープで襲って来てるんで、避難の必要が出てきてるんです」

 

「そういうことね。それと、この世界のはーちゃんが来たって連絡を受けたけど」

 

「ギャバンさんに頼んで、預かってもらいました。リコちゃんが来ないことには、みらいちゃんは変身できないし、未来世界のはーちゃんを呼んじゃったんで。図らずもダブルブッキングに」

 

「タイミングが被ったと言おうか、ここのあの子が危機を察して、地球に戻ったら、あなたが呼び寄せた『平行世界のあの子自身』が戦っていたってことね」

 

「ええ。純粋に戦力として見るなら、未来世界のはーちゃんのほうが圧倒的に強いですし、精神的に耐性もある。ここのはーちゃん自身には、私が謝っておきます」

 

ことはもまさか、平行世界の自分自身が既に戦っていたなど、予想外であっただろう。厳密に言うと、未来世界のキュアフェリーチェは『外見に変化はないが、ゲッター線と光子力の使徒になっている』ため、言動に荒々しさが出るようになっている他、真ゲッタートマホークを得物として使う。これは現役時代の『フラワーエコーワンド』が(大地母神属性の喪失で)時間経過により失われたためで、能力的にはまったくの別物になっている。

 

「現役時代の力が一部失われた状態になったのを、ゲッター線と光子力の力で補ったと聞いたけれど……みらいが聞いたら、泡吹くわよ?」

 

「みらいちゃん、腰抜かしますって。やることは180°違うし。技もフラワーエコーワンドを使って起こすものじゃ無くなったし」

 

「資料映像は見たわ。ああも変わるものなの?」

 

「置かれた環境の差……そうとしか」

 

未来世界のことはは、現役時代とほぼ別物に近い能力を得た代わりに、大地母神の属性を失っている。神ではなくなったが、その縁で『神の戦士』と評される立場となった。オリンポス十二神に逆に仕える身の上になったわけである。

 

「それに、向こうの私とはーちゃん、ガチでオリンポス十二神に仕えてる身ですから、この戦いへの参加は彼らの意向でもあります。もちろん、彼らも一枚岩じゃありませんがね」

 

「私たちはアテナの指示で動く。そう聞いたわ。オリンポス十二神の中では善神だけど、いいの?」

 

「私も、はーちゃんも忠誠を誓っていますし、人類に不寛容な神なら、逆に滅ぼせばいいんですよ。北欧神話のように」

 

「……恐ろしいこというわね」

 

「ゲッターエンペラーの誕生も、彼らの意向ですから。あれが対抗すべき敵を思えば、並の神の一柱や二柱が滅んだところで」

 

「たとえば、ヒーリングアニマルが敵に回ったら?」

 

「立ちふさがるのなら、倒すのみですよ。北欧神話にラグナロクというのがあるように」

 

人類種の守護のためには、神々にラグナロク(北欧神話での終末)を起こすのも辞さないと、大人のぞみはいう。もし、ヒーリングアニマルが人類を危険視すれば、直ちに討ち滅ぼすと。もはや、動物の中には『人類による調律で秩序が保たれている』種のほうが多く、既に人類種そのものが自然のシステムに組み込まれていると言っていい。

 

「普通に生きてても、癌細胞が出てくる事があるように、ある程度の勝手は仕方ないところがあるんです。だけど、管理システムの意に沿わない動きをしたら……?そんなこと言ったら、未来世界の地球は内外の原因でズタボロと回復を繰り返してることになるし、どある惑星の生み出した、巨大なコンピュータシステムが、創造主の統制を離れた後、宇宙の巨悪になった例もあるそうですから、ヒーリングアニマルは惑星の意思の代弁でしょうが、オリンポス十二神にとって、一つの星の意思などは石ころのようなものです。もし、キュアアースが敵になるのなら、『最高の剣』で『おもてなし』するつもりです。アテナの名のもとに。聖域の『彼ら』が動けば、ヒーリングアニマルは確実に滅びます。ですが、私とはーちゃんも、彼らもそれは望んでいません。ヒトに牙を抜けばどうなるか。それをみせる必要があるんですよ。断固たる意思として」

 

 

キュアアースは地球の精霊が人間の姿を取ったような存在であり、ある意味で、人類種の守護自体に思い入れはない。もし、彼女が粛清を選べば、人類が生み出した最高の『神剣』で斬り捨てると明確にする。ある意味、地球という星の意思の代弁者でもある彼女には『人類の敵に回る可能性がありえなくはない』ことになる。もし、彼女がヒーリングアニマルの意向に従うのであれば、自分達のみならず、聖闘士の討伐対象になりえる事を。これは神々にとっての最大の敵が『時天空』という、太古から神々を悩ます『無限』の強大無比な存在であり、はたまた『ラグース』という存在であるからで、ヒーリングアニマルの考えなどは眼中にない。最も、キュアアース自体は精神面に脆さが明確にあり、自らの力が及ばないことを突きつけられると、途端に戦意を喪失する。大人のぞみはそうすることで『捕縛』をするのが『もしも』の場合の狙いである。ただし、聖闘士の討伐対象になれば、彼らは神を討伐するための存在であるので、キュアアースやヒーリングアニマルは容赦なく倒されるのが関の山。そうならないよう、自分らがヒーリングアニマルの『抑止力』になる行動を見せなくてはならない。それが大人のぞみの『1000年女王としての最初の仕事』と言える。

 

「地球の意思すらも、多次元宇宙を統治する神々の考えの前では、一惑星の矮小なエゴにすぎない……。スケールが大きすぎるわよ。若い頃……最後のほうの時に戦ったシュプリームにしたって、強いことは強かったけど……完全生物のようなものだったと考えれば……。あなたは奴のことも?」

 

「あいつの別次元個体が現れる可能性もなくはないですから。『あの時』、私たちは早くに一蹴されて、無様を晒した。今度、別個体が来たら、草薙の炎で焼き払ってやりますよ」

 

のぞみは『リベンジマッチ』の機会があれば、今度は情け容赦なく倒したい敵がシュプリームのようであった。和解を選ぶであろう後輩たちの手前、公言はしないが、少なくとも『草薙流古武術』で地獄の苦しみを与えたいのは事実である。大人のぞみは少女であった頃、目の前でキュアルージュ(夏木りん)をシュプリームに倒され、そのショックで半狂乱に陥ってしまったことで「5」メンバーの全員「敗死」を招いてしまった。その苦い記憶が明確にあるためと、年月による立場の変化によって『情け容赦がなくなった』と言える。

 

「あなた……もしかして」

 

「ええ。あの時……」

 

大人かれんは大人のぞみがここまで躊躇なく『力』を求める理由が『少女時代の最後の大敵』にある事に気がついた。その時の『信じられない光景』が成人後もトラウマとなっている事は想像に難くない。大人のぞみは当該戦役で『似た出来事を前世で経験したのぞみAよりも残酷かつ凄惨な状況に追い込まれた』。それが彼女の口で肯定されていく。その残酷さを語る時の語り口と雰囲気はアナライザーが『医務室に入ろうとするのを躊躇うほど』の暗さであったという。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。