ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は行間になります。


第百七十七話「行間 魔女の世界の状況と野比家のある日」

――扶桑陸軍はまるゆなどの三式潜航輸送艇などが強引に廃棄され、暁部隊自体が管理下を離れてしまった事から、外征軍として機能不全であった。陸軍そのものが『空軍のおまけ』扱いされる事に危惧を覚えた陸軍の良識派はコンバットアーマーなどの独自調達を開始。軽戦車のカテゴリを廃した。日本側はこれに驚愕した。人型兵器は日本には存在しない上、扱いが曖昧になってしまうからだが、戦車がどんどん大型・重装甲・重火力化してしまうことに元の騎兵科の将兵は落胆していたので、コンバットアーマーの導入はそれへの抵抗であった。とはいえ、扶桑陸軍も大艦巨砲主義の産物である『ラーテ』の購入契約を交わしていたため、火力がほしいのは本音であった――

 

 

 

 

――ラーテは『どうやって運ぶんだよ、バカ!!』とドイツ軍に公然と罵られた大きさの戦車であった。艦砲としては旧式化しているシャルンホルスト級戦艦の砲塔を巨大な車体に載せるというコンセプトであった。魔女の世界では、1943年時点で『既存戦車では突破できない怪異の包囲網を突破するため』という必要理由があり、関係者の超人的努力で完成に至った。扶桑陸軍を始めとした数ヶ国が『今後の反攻作戦のため』と購入契約を交わしていたが、『想定した戦場で、この怪物をまともに運用できるのか?』という政治側の懸念、使用資材で『より世代の新しい戦車を大量に作ったほうがコストパフォマンスに優れる』という財政上の理由で計画は破棄されたが、各国は莫大な違約金を請求。だが、カールスラントには支払う力はなかった。それが同国の実質的な崩壊の理由であった。扶桑陸軍はこの代替として、超弩級ホバークラフトである『ビックトレー』と『ヘビーフォーク』の余剰個体を地球連邦陸軍より購入。目的を果たした。同時に、扶桑空軍は単騎城塞攻略用MS『ジークフリート』(ZZを基本ベースにした大型重MS。『曰く付き』のサイコガンダムの代わりに開発されたもの。ZZの設計を35m~40m級に大型化した)を供与され、旧式化した戦略爆撃機『富嶽』に代わる重要戦力とした。予算規模の圧縮を脅し手に使われだした軍は質を追求するしか手がないからで、戦略爆撃機の枠の数割は同機の調達に割り振られ、その重火力でリベリオン軍の地下要塞や鹵獲したブンカー(潜水艦用掩体壕)、ダムの破壊に期待がかかった。地球連邦軍はデモンストレーションの意図も兼ね、自分達で投入し、南洋本島でのリベリオン軍を蹂躙した――

 

 

 

 

 

――64F主力の不在を狙い、攻勢に出たリベリオン軍は不運にも、それに遭遇した。扶桑軍の要請を受けた地球連邦軍が投入したそれは、仮想敵にサイコガンダムやビグザム系列の機体を想定して開発された代物。それに近代化改修を施して、全性能がアップしている。装甲もガンダリウムイプシロンに換装されており、リベリオン陸軍のあらゆる火砲を受け付けなかった。

 

 

「バケモノだーーー!!」

 

リベリオン陸軍の砲兵らは恐れをなして、公然と敵前逃亡を行う。なにせ、大口径高射砲の水平発射さえも受け付けないのだから。

 

「これでは虐殺に近いが、まぁ、仕方あるまい。ティターンズの走狗になってることに気づかぬ阿呆共への慈悲だ」

 

 

その巨人は頭部のバルカン砲を放ち、戦闘車両を一掃する。サイズが拡大したため、相応にバルカンの口径も拡大されている上に四門であるので、第二次世界大戦型の戦闘車両では(天蓋への攻撃であるのもあって)まったく防ぎようがない。M4、M26、M36などの車両がそれだけで爆発・四散していく。

 

「対歩兵用Sマイン、発射」

 

それは腕に内蔵された機雷の一種だが、ドイツ軍が大昔に使用していた地雷に肖り、そう呼ばれている。対人戦術が洗練されていない『魔女の世界』ではある意味、怪異のビーム以上の脅威となった。

 

 

「フン。携帯式の対戦車火器もないくせに、見上げた度胸だが……。ガンダリウムにそんな攻撃が通用するものか。健気な……」

 

リベリオン本国軍の歩兵装備は良くて、1943年相当のものである。史実では、1942年には既に実用段階に達した『バズーカ砲』はまだ出回っていないという有様であったため、最新型のガンダリウム合金に傷をつけられる兵器を彼らは持ち合わせていない。ドム系のジャイアント・バズ(360ミリ弾)を弾くために装甲が厚くされた機体を原型にしている都合もあり、リベリオン陸軍のいかなる兵器も蟷螂の斧も同然であった。

 

「薙ぎ払ってくれようぞ」

 

ジークフリートの腕のダブルビームライフルが火を吹く。サイズ拡大に伴い、出力も原型機の数倍以上。サイコガンダムのIフィールドを貫通可能なパワーを持つ。そんなビームが浴びせられたため、リベリオン軍は文字通りに薙ぎ払われる。まさに圧倒といえる戦いであった。日本が求めた光景ではあるが、ある意味では虐殺であった。とはいえ、ペリリュー、硫黄島、サイパン、レイテ、沖縄で地獄絵図であった経験を持つ日本にしてみれば、これでも相当に手心を加えているといえる。同時に、連合軍構成国への示威でもある。日本連邦を敵に回せば、軍事的にどうなるか。未来世界由来の巨大人型兵器はある意味、その暗示に使用されていると言えた。当時、高練度の魔女が既に払底し、いたとしても、とても前線に送れないリベリオン軍はこのような恐怖を味わう羽目に度々陥っていたのである。

 

 

 

 

――スーパーロボットは高コストであるのも、このようなモビルアーマーじみた巨体のMSが生み出される理由であった。コズミック・イラ世界と違い、ムーバブル・フレームとフィールドモーターで充分な駆動スピードが確保済みである上、マグネットコーティングやバイオセンサーなどでニュータイプにも対応可能であるというのも大きかった。サイコガンダムは設計年度の古さで鈍重さがあったが、ジークフリートは近代化改修の際に、クィン・マンサなどの解析で得られた技術やスーパーロボットからのスピンオフが行われ、クィン・マンサも真っ青な機動力を得たので、リベリオン軍は三重苦のような状況で損害を重ねていた。扶桑軍はこれら超兵器で通常型の新型兵器の配備の時間稼ぎをしていたわけだ。本来は旧式兵器を潰すことで時間稼ぎをするはずであったので、こちらも予定外であった。また、参謀本部の幕僚が粛清人事で致命的に不足したため、義勇兵にその代行をさせるなど、幕僚の軽視も問題となった。スーパーロボットなどへの依存は大問題であったが、1940年代は大正期の兵器の更新期にあたったため、要求仕様の万能化による船の大型化、M動乱以後の既存艦の改修で工廠の能力が飽和してしまったこと、補助艦艇の増強、浮きドックの整備(戦後型は大戦型の工作艦では電子装備などの修理が困難である)のほうに予算が割かれたためであった。その一方で、主力艦の定期整備が(酷使で)早まるという失態を犯すなど、日本連邦は(政治のシビリアンコントロールを盾にされての)戦略ミスが多かった。それを現場の超人的努力で補うという『綱渡り』であった。その点で、戦艦は(主に抑止力として)整備が続けられた。とはいえ、他国が戦艦の維持を諦めていく時代の到来により、日本連邦は(外交的理由もあって)戦艦を多数維持する羽目となった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――巡洋艦も結局、超甲巡が(サイズの問題で)巡洋戦艦扱いに変更されたため、乙巡(軽巡洋艦)の廃止と甲巡の建造再開がなしくずし的に決議された。1949年、グダグダの末に巡洋艦のままで完成した『伊吹型』が戦列に加わったが、設計年度の古さから、色々と悪評がつきまとっていた。デモインに比して、あまりに非力であるとされたからで、結局は高雄型重巡洋艦を基本に、対デモイン仕様に強化した艦型が設計される事になった。これは鈴谷型が『元が二等巡洋艦だから』という政治的理由であり、それには艦政本部も大いに不満であった。だが、新たに量産されたデモイン級はもはや、ド級時代の戦艦並の威容を誇っており、扶桑の在来の中型艦艇では太刀打ちできない性能となっていたためであった。対抗馬と目された超甲巡も『戦艦に準ずる取り回し』が望ましいとされたため、デモインと同等の在来型巡洋艦の保有は必要となった。その兼ね合いで、超甲巡は完全な『戦艦化』の改修(装甲と機関の強化、武装の近代化、水上機運用設備のヘリコプター設備への換装と上部構造物のデザインを近代化改修後の大和型と統一)がされ、元の建造目的からすれば『一から、戦艦を造ればよくね?』と言われるほど改造されていった。既存のものの改造といえば、財務から予算が取れやすいのも、改修の理由であった――

 

 

 

 

 

――地球連邦軍は扶桑に旧式・余剰の軍備を放出することで、新式装備の調達費を確保していった。それらは軍縮期に放ったらかしにされたが、世の中の大転換で軍が存続した関係で、再整備が必要になったが、既に地上軍の必要性は(ジオン残党の自然消滅、主戦場の宇宙への移行などで)薄れており、地上軍の余剰装備は扶桑へ積極的に供与された。扶桑は日本の左派勢力などの妨害で、装備刷新に四苦八苦していたので、地球連邦軍の申し出を大歓迎であり、主に陸軍と空間騎兵隊用装備を多めに注文していた。今後の作戦に必要であるからである。当時、海軍陸戦隊を独立させ、完全な海兵隊化させる動きが進んでいたが、海軍陸戦隊は元々、臨時で結成されていたために、兵器を揃えても、兵員の練度が低いという難点があった。そのため、地球連邦軍の空間騎兵を手本に再編することになり、当座の対策に『その空間騎兵が任務を代行する』ことが採択された。空間騎兵は基本的に、惑星の制圧などにしか用がない部署であるので、訓練代わりに『魔女の世界』へ三個師団が派遣された。空間騎兵はこの時期、白色彗星帝国との戦争の実績により、各所へ火消し要員として派遣され、消耗している。補充された要員の育成代わりに『魔女の世界』の戦争が使われたわけだ。このような貢献もあり、扶桑はどうにか工期を大急ぎで早め、水戸型二番艦を竣工させた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――定期ドック入りした主力艦は保有数の七割を超えており、艦政本部をして『ここまで酷使されるとは…』と言わしめるほどであった。艦艇の世代交代期にあったとはいえ、致命的になりかねないほどのドック入りの数は問題となった。軍港の肥やしにされていた旧式艦と余剰艦はこの局面で『デコイ』として使われ、各地では、建造中の新鋭艦の最終艤装が急がれた。水上戦闘艦、とりわけ中小艦艇の陳腐化が問題であった扶桑は自動工場も駆使し、それらを急ぎ更新し、慣熟訓練を急いでいた。また、ミサイルの補充のため、艦隊に補給艦を常に帯同させるようにするなど、『艦隊戦が行われている』状況に適応するように努力がなされた。21世紀と違い、大規模艦隊戦が『生きている』状況な上、中小型艦の単独行動が忌避される状況では、『鋼鉄の城塞』である戦艦の心理的効果は大きかったのである。特に、大和型の系譜は『大型ミサイルに普通に耐えられる』という点が連合軍の希望となった。フリッツX(魔女の世界では、試作段階で開発中止が命令された『対艦誘導爆弾』)などに耐えられないために、実用艦艇としての価値が暴落した『リットリオ級』などを無理くり使うよりも、大和型戦艦の一族のどれかどうかを動員すればいい。それも連合軍の戦艦の減少の原因であった。だが、政治的意味合いでの戦艦の保有はやむを得ないところが本音であり、連合軍全体の戦艦保有数は最盛期の六割未満に落ち込んだ。しかも、アイオワとモンタナの量産で、欧州戦艦の過半数は『戦力外通告』の有様。更に、高精度の誘導弾や誘導魚雷の登場は、扶桑とブリタニア以外の連合国の構成国の海軍力を『時代遅れ』に変えてしまった衝撃の冷めやまぬ1940年代の末頃は『日本連邦がブリタニアに代わり、世界の主導国家へ変貌する』。その黎明期が幕を開けた時期であった――

 

 

 

 

 

 

――軍事的主導権を握っていたカールスラントの急速な衰退は『目標を大国に奪われた中小国家』のテンプレートそのままであり、ドイツ自身も予想外の結果だった。ゲルマン民族の存亡云々にまで内戦が拡大。それが制圧された後のノイエ・カールスラントはまさに無惨な焼け野原。日本連邦の法外な賠償請求もその原因の一つだが、主だった理由は『戦前の支配層を解体してやる』と目論んだ『ドイツ連邦共和国の傲慢』にあった。NATOでもその高慢ぶりが槍玉に上がり、ドイツ連邦共和国は窮地に陥った。結局、この失敗劇でカールスラントは二流国家に落ちぶれていき、軍事的主導権を二度と握れない立場へ堕ちていく。自慢の科学を完全に時代遅れにされたからで、アメリカによる救済措置がなければ、完全にカールスラント人は根無し草の民族になっていただろう。結局、カールスラントは本土奪還を日本連邦に委託せざるを得なくなった衝撃で内戦に突入し、内戦を鎮圧された後には、アフリカの民族紛争さながらの有様に落ち果てていた。統一前の諸侯の権威も消え失せ、残されたのは、戦前が嘘のように野蛮化した人々。NATOはそれに近代国家の秩序を取り戻させるため、やむなく帝室の帰還と実権を伴わない上で、往時の地位への復帰を容認。以後、カールスラントは完全な立憲君主制かつ、軍部の権限縮小がなされた上での再建が進められる。皮肉にも、戦後日本がその再建のモデルとされた――

 

 

 

 

 

 

 

――対照的に、連合国内のパワーバランスの崩れにより、空前絶後の繁栄を手にした日本連邦は軍部の増長を抑えるためとした策の尽くが裏目に出、深刻な人材不足となった。また、(日本が軍事施策を放棄していた戦後の反映か)新規に次世代の強力な魔女が出る見込みがほぼ無いと判定された事から、皇室の声明により、退役者を含めての軍役経験のある魔女の現役復帰が進められた。扶桑では元来、下士官のままで軍役を終える者も多かったが、時代の流れで、士官に昇進させてから復帰させる方法が取られた。この措置以降は名実ともに兵科将校の他兵科への優越意識が否定される事になった(日本連邦の一連の改革に伴い、連合国内でも、それまでの兵科間の優越の慣習が完全に否定されたため、現場が却って機能不全に陥った)。この改革でバツの悪い思いを抱いたカールスラントの義勇兵らは口を揃え、『そっちの軍規に則った措置だったのに、人種差別云々と罵られては、将兵の士気がどん底になる』とボヤいたという。この事に最初に触れたのは、エルヴィン・ロンメル元帥。彼はドイツから『兵站に無知だから』という理由で現職からの解任と元帥位の剥奪がされそうになったが、NATOがそれを阻止することで、職に留まった。彼がいなくなっては、現場の将兵が反乱する可能性が大きかったからで、結局、彼の他は少数の(史実で実績のある)将帥のみが現職に留まったが、グデーリアンのように、(在職のままで)日本連邦へ移住してしまうケースも相次いだ。日本連邦は(大規模な外征軍を統率できるだけの人材の不足から)それら義勇兵に『汚れ仕事』をさせていた。仕方ないが、生え抜きの自衛隊員は旧軍相当の軍隊の将兵への指揮に及び腰であるので、義勇兵にやらせるのは理に適うものであった――

 

 

 

 

 

 

 

――魔女の世界の『四年』は本来、魔女の世代交代を伴うもの。だが、世は魔女を排除しようとする方向に動いた。魔女は生き残りを賭け、超技術による能力の延命を推進せざるを得なかった。人同士の戦争では、最短で数年しか軍務につけない上、徒弟制の色濃い育成方法が当たり前である魔女は『費用の無駄使い』と見なされたのだ。しかも、魔力量が千差万別な上、あまりに魔力が強力だと、今度はユニットが追いつけない問題が起こる。故に、黒江たちは魔女の限界を悟り、それ以外の技能も持ち、『つぶしが効く』方向に向かうことで『生き残る』ことを選んだのである――

 

 

 

 

 

 

――魔女の魔法には、個人個人の才能の差がどうしても出てくる。(時限付きである故に)魔導師よりも画一化しにくい事もネックとなり、ダイ・アナザー・デイでの政治的失態はほぼ致命的となった。怪異の脅威度が相対的に低下してきた時代に入ると、政治側は今度は平均的な技量の魔女の淘汰を目論んだ。財政負担の軽減のためというお題目で。魔導師や能力者という『軍事的に影響を及ぼせる』異能があるのに、何故、不安定で、なおかつ、地域の信仰が揺らげば、その顕現率も下がり、地域の迷信に迫害されやすいものに頼るのか?それが軍事学や現地情勢に無知な日本の左派の言い分であった。それは現地の信仰を馬鹿にするも同然のものであるので、日本の総理大臣はその発言をした政治家に激昂し、現地の信仰を守ろうとしたが、持病の悪化と敵が多かったのが命とりとなり、日本で久々に暗殺された総理大臣の汚名をひっかぶってしまう。その盟友であった次代の総理大臣も似た事件に巻き込まれるも、辛くも難を逃れた。その日に『扶桑の信仰に口出しをする権利は我々にはない』と答弁し、間接的に魔女たちが公的機関でで働く権利を守った。それが彼なりの詫びであった。だが、官僚から疎んじられることには代わりはなく、『魔女のクーデター』は中央からの魔女の排除の大義名分にされた。黒江たちは『源田実空軍大将の直属である』故に、その粛清人事を免れ、良識的かつ有能な魔女の保護に動けたのである――

 

 

 

 

 

 

 

――日本の官僚の手が及ぶ前に、64Fに転属させることで保護した『有能な魔女』の人数は統合戦闘航空団配属レベルを中心に20数名ほど。これは近しい任地の護衛部隊と人員を分け合った結果である。保護した人数自体は三桁。教育部隊の者、現在は参謀である出身者を入れれば、数百人。無論、1946年時点の勤務人数を考えれば、せいぜい三割弱。熟練者を狙われた結果、機能不全に陥った飛行隊と装甲化歩兵部隊が続出。それを引き起こした官僚らは直ちに罷免となったわけだが、『穴を埋めるためにも、歴代のプリキュアの雇用は是非がでも行え!!』という指令。それはドワイト・アイゼンハワー大将兼大統領の至上命令でもあった――

 

 

 

 

――シャーリーは本来、北条響としての記憶とプリキュア化能力の覚醒で『扶桑人』としての戸籍が作成される手筈であったが、フランチェスカ・ルッキーニが駄々を込めたため、妥協的に『別名義』ということで落ち着いた。ルッキーニは自分のわがままで、シャーリーを振り回したことへの罪悪感と責任感が年を追うごとに強くなり、ダイ・アナザー・デイ中に覚醒した『前世の記憶』にすべてを委ねることにし、1947年からは『クロエ・フォン・アインツベルン』として生きている。それが彼女なりの償いであった。のぞみよりマシなのは『本来の姿を捨てたわけではない』という点で、時たま戻れる分、のぞみより生きやすい環境にあった。のぞみは『夢原のぞみとして転生した』代償に、転生した先での名と姿を(やむなく)事実上は捨てざるを得なかったのだから。そのため、ダイ・アナザー・デイ後は野比家に下宿することになり、戦間期は任地と野比家を行き交う日々であった。その時期に、青年のび太は妻(青年しずか)と幼き日の息子(ノビスケ)、老境に入った両親ら、調、ことはと共に一枚の記念写真を撮影している。のぞみが加わった記念で、ことはとのぞみは(仕事の帰りであったのもあり)プリキュア姿であった。その写真はことはの思い出アルバムの中に入っており、復活間もない頃の朝比奈みらいがそれを見つけ――

 

 

 

「ぬ……ぬわぉぉあ~~!?のぞみちゃん、何してんの~~!?」

 

と、あまりの衝撃に、素っ頓狂な声を上げてしまったという。その日の事。

 

 

――扶桑がまだ、開戦に至っていない、日本時間の2020年頃――

 

「のび太さん、ずるいですよぉ~!!あたしははーちゃんと卒業したくても、できなかったんですよ~!」

 

「おわぁ!み、みらいちゃん、落ち着いて……」

 

ムスッとふくれた顔のみらい。事情は知っているが、それでも(自分のいた世界では)一人ぼっちで中学校の卒業を迎えた。つまり、ことはの高・大の学生姿は見れなかったことになる。

 

「わたしだって、はーちゃんの高大の学生姿、見たかったのにぃ……」

 

「あたしだって、違う人に生まれ変わってたのに、昔の姿に戻って、世界を救えってことになっちゃったんだから、はーちゃんと似たようなもんさ。しかも、はーちゃんは今や『マザーラパパの後継』じゃ無くなってる、一介のプリキュアだよ」

 

そう説明される横でバツの悪い顔のフェリーチェ。マジンガーZEROの超常的な力で、『神』から引きずり落とされてしまったばかりか、存在自体を改変され、『マザーラパパと縁のないプリキュア』にされてしまったのだ。姿が同じだけで、能力は今や別物だ。

 

「あたしも転生先からすりゃ、似たようなもんだろうな。立場を乗っ取ったようなものだもん」

 

「だから、軍人を続けてるの?」

 

「時代背景もあるけど、前の騒動で転職を諦めざるを得なくなったってのも大きいよ。まぁ、償いもあるんだけど。先のダイ・アナザー・デイじゃ、南斗鳳凰拳にメタメタにされるわ、拷問されるわ……えらい目にあったよ」

 

「実在してたの、あれ……南斗聖拳」

 

「先輩がいなけりゃ、事後に病院送りは確実だったね。転生のおかげで、キュアフルーレは自分で呼べたけど、連中にポキポキ折られちゃうから、スーパー戦隊の皆さんから剣を借りる羽目になってさ……。」

 

「のぞみちゃん、剣はド素人っしょ?かれんさんならわかるんだけども」

 

「一応、現役時代に『ムシバーン』とチャンバラした経験はあるよ?誰も信じてくれなかったけど。今は素体の子の技能引き継いだから、普通にいい線行ってると思うんだ」

 

「ふーん……」

 

「ま、そう拗ねない。コンビニで『剥いてある』冷凍みかん買ってきたけど、食う?」

 

「え、ち、ちょっと待って。剥いてあるって、そんな殺生なぁ~……自信あったのにぃ…」

 

「マイナーなものだから、めったに見ないけど、発明はされてる。時代的に、列車の中で食う人も減ってきてるからね」

 

「ん、その姿で買い物したの…?」

 

「現役時代の事がアニメで知られちゃってる世界だし、今更隠すこともないと思ってさ」

 

「それってありなのぉ~~!?わたしはリコとモフルンがいないと、プリキュアになれないのにぃ。こういうのは、システムの違いかなぁ……って!!違う!!正体、ガチでバラしていいの!?」

 

「うん。この世界じゃね」

 

みらいとリコは現役時代、プリキュアであることは隠してきた。だが、このドラえもん世界では『既に知られている』ので、その必要はない。その事を知らされたみらい。それはまさに驚天動地の知らせであった。

 

「それに、あの騒動でマルっと報じられちゃったしさ。現役時代の事を全部……さ。」

 

「……ご、ゴメン」

 

のぞみはのぞみで、騒動のおかげで、現役時代のすべての行動を詳細に報じられてしまったので、とても恥ずかしいどころではなかった。プライバシーの『プ』の文字さえないとはこういう事だろう。急に遠い目をするのは、そういうことだ。

 

「だから、先輩の案で、いっその事、変身してたほうがプライベートを確保できるっていう逆説的アイデア。効果バツグンだよ。変身してるから、とっさの急病人やけが人にも迅速に対応できるし、救急車より早く運べる」

 

「応急措置できるの」

 

「みゆきちゃん(キュアハッピー)の生まれ変わった先が診療所でさ。そこで初歩的だけど、方法は教わったし、あたしの兵科は万能選手が求められがちでね。軍でレクチャーも受けたよ」

 

この日はデザリアム戦役より前の時期であったが、この時点でのぞみは(現役時代と違い、プリキュアである事を大っぴらにオープンにできる環境なので)プリキュアとして、人命救助をこなしている事を示唆した。

 

「それと、先輩が佐渡先生を紹介してくれたしさ、宇宙戦艦ヤマトの」

 

「あの?」

 

「そう。あの」

 

佐渡酒造の名声は別世界でも轟いているらしく、みらいは驚いた顔をする。

 

「そういうの、かれんさんの領分じゃ?」

 

「来てくれれば任すんだけどねぇ。医者だったし、最終的には」

 

のぞみも、人命救助は水無月かれんの領分である事は分かっているが、この時点(デザリアム戦役の前)では、(多少なりとも)講習などで経験があるプリキュア5の面子は自分のみ。それもあり(初歩的だが)、人命救助をしているのだと。

 

「りんちゃんはああいうのに無縁だったけど、あたしは前世の教師時代に一応、講習受けたことあるんだ。それに、いつの頃だったか、教え子に使った事あるんだ。自動体外式除細動器」

 

のぞみは転生前の体験も活かす形で、プリキュア活動に性を出している。日本では、軍人は冷たい目で見られることも多い職業である。合法的に人殺しができるからだ。だが、その自己完結性のおかげで、災害救助の最大の労働力になれるという利点がある。消防や救急で無理でも、軍隊であれば可能という局面が災害(自然災害など)では当たり前だ。

 

「日本って、地震に火事とかの災害多いじゃん?プリキュアなら、どんな火事でも飛び込めるし、瓦礫も蹴飛ばせる。軍人なんて商売してると、そういう現場に居ても立ってもいられなくなってさ。前世よりそこは気が楽かな?この力を自分の意思で、必要な時に『世のために』奮えるのは、さ」

 

のぞみの本質はそこにある。前世では『災害などで力を振るえない』ことに歯がゆさを感じていたようで、現状の立場と状況を受け入れていた。転職は諦めたが、それなりに『今度こそ』自分の望む道を生きるのだという決意。それが窺えた。

 

「いいなー…。単独で変身できて」

 

「変身途中で、リコちゃんとチューしてるみらいちゃんが言うことでもないと思うよ~?」

 

「え、し、知ってたの…?」

 

「今は…」

 

「フェリーチェ?」

 

「わ、私じゃないですよ!?」

 

それは事実だが、みらいのジト目に大慌てのキュアフェリーチェ。

 

「すまない。僕の妻だよ、原因は」

 

「え、奥さんが?」

 

「妻は子供の頃から、君等(プリキュア)の類のアニメのファンでね」

 

と、のび太が理由の説明に入る。

 

 

――これは扶桑がダイ・アナザー・デイと太平洋戦争の戦間期にあった頃の野比家のとある一日の風景であった。戦間期にプリキュア達がどう過ごし、太平洋戦争を迎えていったのか。その一つの答えであった――

 

 

 

 

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