――太平洋戦線においては、欧州型の『飛行場を建てまくる』戦術は使えず、航続距離の長い航空機が必要とされた。それは航空機を欧州向けに再設計していた扶桑の軍需産業に打撃となり、紫電改の正規航続距離である『1950㎞』でさえも『短い』と扱われる有様であった。結局、空中給油が可能な世代のジェット機でレシプロ機を淘汰する流れとなったが、再武装はどうするのかという議論が起こってしまい、妥協的に地球連邦軍のガルダ級を空中拠点として運用するに至った。また、史実で起こった『脱出した搭乗員を現地住民が撲殺してしまう』悲劇を避けるため、日の丸のマークをパイロットスーツの何処かに入れることになった。これは史実で実際に頻発した悲劇である。戦中の憲兵や戦後の米軍の裁きを異常に恐れた地域住民の手で闇に葬られた『知られざる』悲劇は多いと思われ、扶桑もその発生を恐れた。特に魔女がそうなれば、街で集団自殺が起きかねないからであった――
――扶桑の国民も下手なことをしたら、未来永劫の犯罪人の烙印を押されると恐れていたので、日本の懸念した悲劇はさほど起きなかった。むしろ、高射砲の誤射による撃墜事故が相次ぎ、高射砲部隊の肩身が狭くなる事態となった。この関係で、敵味方識別装置が急速に普及した他、防空ミサイルの普及と旧来の野戦高射砲の淘汰が進んだ。お互いに『戦後の裁き』を恐れた点で、官民は思惑の一致を見たのである。また、軍事という事柄が日陰の扱いになりつつある事に耐えられなくなる将兵も多くなっていた事から、各基地周辺の軍人街の形成を認めざるを得なくなった。軍人の来訪で経営を成り立たせていた食堂、料亭などへの配慮も必要であったためだ。また、調布飛行場の閉鎖の検討(厚木に機能を統合させる)は戦後に民間航路に転用することを理由に中止され、軍飛行場としての機能は厚木や百里に統合する(調布地域の開発を理由に)事に切り替えられるなど、シッチャカメッチャカであった。扶桑では各地に以前の時代の怪異の封印がないかの確認もせねばならなかったので、各地の開発速度はなかなか上がらなかった。怪異が復活したら、改めて討伐せねばならないからだ。故に、南洋のほうが伝統的に近代都市化されていたが、日本の強い意向で各地を均一に都市化する事になり、怪異の文献調査や再討伐などが超長期的な計画で実行された。また、扶桑で現存していた旧諸侯の居城は国宝指定で保護することとし、軍部に土地を売った伊達宗家を侯爵から伯爵に降格させるなどの見せしめも行われた。史実と異なり、20世紀まで保存されていた安土城も国宝指定で保護され、修復を受ける事になった。これは近世の明暦の大火で江戸城に代わり、安土城が行政府として機能した他、当時に現れた怪異の討伐の拠点であったことの記念モニュメント代わりにされていた関係であった。江戸城は結局、史実通りの経緯で再建されなかったらしいが、安土は田舎であったので、名古屋城が臨時行政府の機能を担わされたという。江戸城再建はその後に何度も俎上に載せられかけたが、幕藩体制の終焉で終了した。だが、魔女の世界では『怪異からの避難場所』としての需要が残っていた事から、近代国家体制の安定を見た昭和期に再建計画が復活し、凍結扱いだという。江戸城もその観点から復活が協議されては、老中などの反対で潰えたという。だが、近代へ移行した後に観光の目玉として、皇室の了承のもとに再建が内定していた。だが、1936年頃の事変勃発で軍部が反対した事で立ち消えになった。クーデター軍の鎮圧後、『当時に反対した高官や佐官』が槍玉に挙げられ、日本はそれを理由に、多数の将校を公職追放に処した。人材不足はその精神的ショックによる農村部からの志願減少も大きいのだ。玉砕した部隊の再建もままならない有様かつ、64Fにおんぶにだっこなのは、戦間期の愚策が主な理由なのだ――
――扶桑の農村部は機械化と学識の普遍化による大量生産時代の到来による一定の学識の必要性増加へまったく対応できず、急速に衰退を始めた。昭和20年の大凶作も打撃となり、その四年後には廃村が相次ぎ、都市部地下の食料品プラントの規模が拡大された。史実より数十年早い訪れであった。また、女子教育の増加と長期化で晩婚化が始まり、軍人は平均で23~28歳。結婚後も女性が職場で働く様になるため、日本が数十年で体験した変化がいっぺんに起こったことになる。また、旧諸侯や公家の多くが世相の変化と法的特権の縮小で衰退期を迎え始めたのもあり、勲功華族の割合が増加。華族社会は変質を始めていくのである。これが扶桑の変化であるが、『旧諸侯の名残りが色濃い』カールスラントは国家自体が風前の灯になってしまい、軍の誇りも、かつての騎士としての名誉も霧散する有様であった。ドイツ連邦が意図的に『戦中の高官、コンドル軍団の構成員、旧貴族や皇族の出身者、武装親衛隊に属した者』をリストラしたことで起こった混乱であった。そのため、マルセイユやハルトマンなどの実績はあれど、経験不足の『若手』を佐官以上にせねばならなくなる事情が生まれてしまった。ガランドはその前に退役し、ミッドチルダへ移住していたことで『中将としての高い恩給を確保し、名士としての社会的地位も守れた』希少なケースとなった。他は佐官であろうと、一気に地位も給金も失い、困窮に陥った挙句に『組織入り』する者も多く生じ、ドイツの失態ぶりがNATOで大問題になるに至る。彼らはNATOに稚拙な言い訳をしまくり、大顰蹙を買うこととなり、カールスラントへの植民地的野心を捨てざるを得なくなった。それを思えば、政治的干渉を抑える良心を持つ日本が同位国で扶桑皇国は幸運であったと言えよう――
――何から何までドイツ頼りではいけないという日米英の方針から、連合軍には1950年代後半以降相当の兵器が一気に流通した。その関係上、旧来型の弾薬の処分に困る事になった。戦後のNATO規格は連合国の従来型弾薬とは異なる規格であったからだ。日本連邦はダイ・アナザー・デイの教訓により、撤退の際にありったけの不要な弾薬を爆破し、地形を変えてでも、敵に大損害を与える方法を取るようになり、その情け容赦ないやり方は連合国の味方も引くほどであったが、史実のドイツ軍のブービートラップよりは慈悲深いと言える。また、日本連邦しか『リベリオン軍と正面切って戦える戦力がない』というのは問題であったが、1940年代後半は各国の魔女が世代交代期に突入していた上、兵器の技術革新による調達費高騰で『中小国が先進国並の軍備を持つ』ことが不可能に近くなった時代。陸軍が全滅してしまったヒスパニアとロマーニャはもはや宛にできない。残る大国のブリタニアも往年の海軍力は期待できない。その兼ね合いで、日本連邦は強大な軍隊の維持を義務付けられてしまったのだ。日本もこの有様に目を回す事になったが、魔女の世界における時代を考えれば、当然と言えよう。二カ国の軍隊の組織的戦闘能力をゼロにしてしまった失態で睨まれてもいるが、日本連邦の強大な軍事力が牙を抜けば、中小国はあっという間に滅ぼされてしまうので、表立ってはいえないのだ。フランコ将軍があっという間に失脚に追い込まれたからだ――
――とはいえ、扶桑は旧諸侯や公家の権威の衰退と、新興の資産家への侮蔑意識から、有力軍人が名士扱いされる傾向が続いた。森蘭丸以来の魔女の国家への献身は覆しようのない事実(森蘭丸の血を継ぐ家系が存続している)であるからだが、三英傑の家系のうち、徳川家は史実の鎖国政策で人気が落ち、豊臣家は(既に嫡流は絶えている)は史実での秀吉の晩年期の愚行が原因で顰蹙を買い、織田家は革新性と保守性の入り混じった実情で失望されるなど、散々であった。黒田家など、お家騒動で華族身分廃止の引き金になりかねないと非難を浴び、本来の本家筋が力を無くし、分家筋と本流が入れ替わる事態に陥っている。その混乱を収めるために、有力軍人の華族化は必要であったのだ。身分こそ無くならなくとも、権威はダイ・アナザー・デイからの流れでガタガタ。法的特権も否定の方向に向かっている以上、新陳代謝は必要なのだということだった――
――旧来の富裕層の解体は『戦後化』の一環であったが、存在の否定ではないという言い訳は、日本政府の常套句であった。単に扶桑の富裕層から巻き上げた資金で自分達の福祉費用を捻出したかったのである。欧州の旧来の価値観(王侯貴族)が一定程度は生きている以上、身分による権威の保証は必要だった。カールスラント国家がほぼ解体されても、裏でカチコチの貴族社会が維持されていたガリアや、制度が生きているブリタニアが依然として『列強』の座にあったからだ。その原因と見なされたカールスラント軍人らは『私たちは実力を試すために、わざと煽っただけだ』といいわけしたが、有力な軍人があっさりと失脚、あるいは降格させられる様に恐怖のどん底に陥り、1949年度には精神的に萎縮する者が多かった。仕方ないが、21世紀では、そのような言動は許されないからである。そんな有り様をフーベルタ・フォン・ボニンは愚痴っている――
――『私達は戦場で生きてきたんだ。無能な指揮官のもとで戦いたくないだけなんだ……。贅沢なのはわかってるよ!――』
その彼女はティターンズの捕虜生活を送り、途中で救助されたが、若き日の言動とコンドル軍団の経歴が原因で『人種差別主義者』のレッテルを貼られそうになり、元の部下たちが必死に擁護した結果、降格を免れた。とはいえ、一連の訴追で自分を擁護しなかった祖国に愛想が尽きてしまい、日本連邦に移住している。コンドル軍団は史実と真逆の理由で派遣され、戦ったのに、理不尽に悪逆の扱いを受けたからだ。カールスラント軍人はこのような理不尽な訴追で軍事裁判沙汰になることが常態化していたため、日本連邦への脱出が流行る素地は充分にあった。日本連邦も生え抜きの中堅将校の不足に悩んでいたので、大歓迎であった。世界的に軍人のリストラが流行っていたので、日本連邦はそれらの人員で中堅将校や熟練の下士官の不足分を賄った。高い給金と年金の確約で釣ったわけだ。そのおかげもあり、各国から集った義勇兵らは予想以上の活躍を見せている。扶桑生え抜きの将校らから『自分らは天皇を奉じている』という国粋主義思想が抜けるには、上の世代の軍人がいなくなる数十年後を待つ必要があるので、義勇兵で士官や下士官の熟練層を埋め合わせるのは、(政治側には)都合が良かったのである――
――かくして、人員不足を一騎当千の強者と義勇兵と未来兵器の三本柱で乗り切ろうとする扶桑の軍隊。政治的枷が嵌められ、核兵器すら使用が取り沙汰される時勢では、その報復をも考慮に入れておく必要がある。核兵器の枠組みに当てはまらない『反応兵器』で報復する事は決まっている。五大湖の工業地帯、あるいは東海岸の都市のどこかがターゲットである。既にリトルボーイとファットマンは(極秘裏に)完成していると推測され、南洋のどこかに落とすのは目に見えていた。投下されれば、確実に10万から30万の人命は失われる。原始的とされても、史実で日本の二大都市を壊滅せしめる威力を持つのだから。あるいは史実通りに本土に落とすのか。扶桑の防空部隊が急速に近代化されているのは、原爆投下の阻止のためであった。その過程で、高高度性能に劣る旧型レシプロ機は淘汰されてきている。報復手段はM粒子散布下では21世紀型弾道ミサイルは精密誘導が不可能な事から、バルキリーからの反応兵器の発射か、GP02Aによるアトミックバズーカか。後者は既にティターンズが使った手である。ティターンズは純粋水爆(地球連邦の正規軍からすれば旧型の核兵器だが)で都市を薙ぎ払うことで、リベリオンの国民を屈服させている。弾道ミサイルの戦略的意義が薄れた時代、核兵器の発射手段は変遷していったが、核兵器自体が軍事的意義を喪失し、次世代の反応兵器と次元兵器に取って代わられている時代を迎えている――
――Y委員会の最高幹部らの会合にて――
「反応兵器のストックは?」
「東海岸を消し飛ばすには充分に溜まりました。対欧州用に一部を回しますか?」
「ド・ゴールが裏で姑息な手を使っておるからな。今後、ガリアが植民地に執着するなら、見せしめで一発は田舎町に使い、交渉のテーブルにつかせるしかあるまい。ヤツは国粋主義の最たる例だからな」
「やれやれ。あの国に国粋主義を遂行できる余裕は残されてはおらぬというのに。80年代までに月面基地を造りたいが……」
「その頃まで我々は生きてはおらんだろうが、次の世代がやってくれるだろう。スペースコロニーの建造や資源衛星の輸送……。21世紀中には、火星のテラフォーミングに着手できれば上出来か」
彼らは超長期スケジュールのもと、世代交代をも前提にしての宇宙開発計画を議論しつつ、原爆が使われた場合の報復を話し合っていた。時代的に、扶桑国民は激昂性を持つため、核兵器が使用されれば、それ以上の手段での報復を叫ぶからで、それは日本も政治干渉できない事柄だ。
「既に、天文学者に資源衛星の選定を行わせているところだ。この大戦が終わったら、国民のエネルギーを国土の再開発と宇宙開発に向けるのが一番だろう」
「軍事的覇権はこれで決まるが、経済・文化はまだ未熟だ。戦後の平和で育てるしかあるまい。核兵器は日本が心情的に潰すだろうが、他国は邁進するだろう」
「そのための敷島か」
「そうだ。あれをもう一隻ほど浮かべれば、他国は核兵器よりも戦艦に金を使う。ジェット空母は中小国には過ぎたものだが、戦艦なら、予算のハードルは低い」
「他国をごまかすために、来年度でもう二隻要求しとくか?」
「大和と武蔵の代替という名目でな。大和は1941年の完成で、船体の疲労が溜まってきている。戦時で酷使したことだし、代艦の予算は通るだろう」
と、実に政治的な理由だが、大和と武蔵の代替となる大戦艦の予算請求はこうして決められた。軍事的には『他国への欺瞞と示威』、政治的には『造船所に戦後も仕事を与えるため』。大和と武蔵はこうして、『後継ぎ』の誕生が約束された。水戸型戦艦の増産も検討されたが、最終的には敷島型戦艦(二代)の増産で決議された。戦後の軍縮を考慮に入れての選定である。Y委員会は実質的に国防省では表沙汰にできない議論の場としても機能しており、軍備整備の最終的な決定権を持っている。
「戦後になれば、今の規模の軍隊は不要だが、ある程度の人員を抱える必要はある。64Fの人員は戦後は好きなところを回させるか?」
「それがいい。日本は戦時の英雄を戦後は不要と考えるだろうが、突発的な有事……災害などに使える。彼女らには自由勤務権を与えてある。戦後の平和な時期は自由にさせておくのがいいだろう。それが我々にできる償いだ」
彼らは戦後の時代のことにも気を配り、事柄を内々に決めておく。だが、彼らにも予想できぬ事態により、太平洋戦線は続いていくことになる。日本が反転攻勢を忌避していた(専守防衛を押し付けようとしたり、戦争という理由で外地を放棄させようとする勢力の存在で)からである。日本は同位国が覇権国になる事は望んでいなかったが、アメリカ相当の国が事実上の分裂を起こし、イギリス相当の国に超大国を続けられる体力は残っていない以上、比較的に国力の余裕の残る扶桑が超大国にならざるを得ないのは、子供でもわかる事だ。
「我々はいずれ世を去るが、彼女らはそれを許されん立場になってしまった。自由勤務権は我々なりの彼女らへの償いだ。これはお上の大権が生きてるうちに決められたもので、総理大臣を含む全ての国家権力は手を出せん。皇太子殿下が数十年後に即位したとしても、殿下は陛下の意向で軍事教育を受けていないから、無理だ。大元帥の称号は形式的なものになるし、皇室軍人もやがて、全員がいなくなるだろう」
それは皇室が軍事に関わり合いを持たなくなる時代があと数十年で到来する事から、皇室に代わる、軍を押さえつける権威として、Gウィッチ(黒江たち)を充てることは既に内定していた。それは将来の国家元首である皇太子が軍事教育を受けていなかったためで、昭和天皇は『軍事に関わり合いたくない』という本心を隠さなくなったが、重臣たちの手前、大元帥として振る舞うことに疲れていた。子ども達の何人かは軍人になっていたので、軍部を統制する道具にされていた。故に、彼は自分の死後は黒江たちを軍内の最高権威とすることで、皇室軍人に代えることにしていた。その意向はこの時代から反映され、64F幹部らは軍内の最高権威として祭り上げられる事になっていく……。また、いくつかの航空機の試作機の復元が成ったという報も伝えられ、外貨獲得のために、日本に売却される見通しである。また、旧型になりつつある富嶽の余剰機は日本に売却されることとなっている。奇跡的に完成し、一時は連合軍最高の戦略爆撃機であったが、ジェット機の前には抗えず、後継機と交代して戦略爆撃任務を解かれつつある。これはあまりに大型機であるので、民間に転用するにも、運用費が手に余ると判断されたからで、日本もどこに収蔵すべきか悩むほどの大きさの同機種は戦場でしか生きていけなかったことの証明であった。飛天と浅間(ジェット戦略爆撃機とターボプロップ戦略爆撃機)のハイローミックスでの更新の見込みだが、日本の一部左派が戦略爆撃機の保有に反対しており、配備が遅延。そのため、扶桑空軍は緊急で『SSMS-010ZZ』(ジークフリート。元はジオン残党側が畏怖を込めて呼称したものだが、愛称として定着した)の供与を受け、それで戦略爆撃機を代替していた。単騎城塞攻略用可変MSという触れ込みは伊達ではなく、不用意な攻勢を行ったリベリオン陸軍を(蜘蛛の子を散らすように)蹂躙し、ある種の抑止力となっている。サイコガンダムのように『乗員を使い捨てる必要がなく、安全に運用できる』という利点から、スーパーロボットを使うまでもない場合などでの切り札となっていた。日本はこれに腰を抜かし、メカゴジラの供与を本気で検討しだすのだった。
――技術の革新は海軍航空技術廠(空技廠)の立場をも悪化させた。銀河と彗星の一件で評判がガタ落ちになったからで、橘花の一件がトドメとなり、実用品の設計からは手を引かされる事になった他、源田実も同位体の発言の二転三転ぶりが槍玉に挙げられる事になり、『有力な若手が慕ってるから、今の立場になれた』との陰口を叩かれる事になった。また、戦闘機無用論のうち、大型機論などは完膚無きまでに否定されたことで提唱者の責任問題とされ、退役を迫られた将校も多く生じた。この問題は『戦闘機無用論が大戦後期のパイロット不足に繋がった』という史実の認識によるもの。ダイ・アナザー・デイ後は魔女の『一人で戦闘機一個中隊の働きになる』という評価が覆った後、航空関係の将校は苦しい立場に追い込まれていったわけだが、それは魔女の擁護をしていた者ほど顕著になった。宮藤芳佳などの特定の魔女しか『戦局に寄与していない』ことが日本から伝わったことも、彼らを苦しい立場に追い込んだ。この流れで、凡百の魔女達は形式的な扱いに甘んずる事になった。ダイ・アナザー・デイで戦局に寄与しなかったのが、政治的立場にトドメを刺したのだ。それと同期するように、カールスラントに芽生え始めていたミサイル万能論も『出る前に否定される』ことになり、開発は放棄された。その資産は日本連邦に買い叩かれ、魔導誘導弾として完成に至る。リベリオンがカールスラントと別の方向で試作品を完成させており、それをベースに開発し直したのだ――
――元来、魔導誘導弾は『ドッグファイトが怪我で不可能になったか、技量不足の魔女でも、均一した戦果を出せる』ために開発されていた。だが、エースパイロットの少なからずが『怠惰を生み出す』として反対論を展開し、開発が遅延。これは重量物の携行で機動力に支障を来すことへの懸念であったが、馬力が急速に向上したこと、戦闘爆撃と対地掃射の需要増加、ロケット弾の重量は爆弾よりは軽量であったことで開発速度が倍になり、1943年には試作品が出来上がっていた。それがカールスラントの亡命科学者と未来技術による誘導機能付与でミサイル化された。ダイ・アナザー・デイで試作品が投入され、良好な戦果を記録。ジェット化で必須の装備と見なされるようになり、扶桑が製造を代行する形で出回った。旧型のレシプロストライカーには向かないが、ジェットストライカーであれば、機動力の低下はさほど起きず、むしろ空戦能力向上に繋がる事から、1949年度には一定の普及を見た。特に近接格闘戦の技能が廃れてしまい、自衛の術を持たない世代の若手に視界外戦闘能力を持たせる手段として用いられ、格闘戦は古参に任せるとされた。仕方がないが、当時の若手や中堅は戦時促成の人員で、戦役中のみの戦力となるように、訓練が簡略化されていたためで、そこにレシプロの終焉とジェットへの移行が起こったので、余計に技量が低下していたのだ。故に、空も陸も征服できるプリキュアたちが要と扱われ、丁重な待遇となっていたのである――
――転生が確認されたプリキュア達は一見して現役時代の姿だが、これは『なった時の年齢の肉体が容姿の基本ベースになる』故で、大人のぞみが高校生相当の肉体年齢に戻ろうと、変身後は14歳当時の容姿が基本ベースのキュアドリームになるのは、アカシックレコードの関係であろう。プリキュアの力は不変ではなく、『必要ではなくなれば消える』奇跡。それに幻滅したのぞみC。だが、オトナ世界が異端であり、通常は『プリキュアがあるかぎり、悪も不滅である』。それはプリキュアオールスターズが『どこかの世界で組織を相打ち同然に撃退した』話で証明されている。のぞみCはそれを聞かされ、複雑な心境であった。ココCも別の自分の願いが結果的に『有事に対応する力を奪った』事に憔悴してしまう事になった。だが、のぞみCは事故からの療養で、とても戦える状態にないため、それまではプリンセスプリンセスが協力することとなった。彼女らから、存在がヒトではなくなった『A』と『1000年女王になる資格を持った大人の自分』の存在を聞かされ、真っ当な人生を送れそうなのが(今のところ)『B』のみであることに驚愕する事になった。Aは望んでそうなり、実質的にキュアフェリーチェの代わりになった(実質的に神格となった)のも驚きであった。
―「第三の夢原のぞみがいる世界」――
「そのわたし……神様になっちゃったわけぇ!?」
「うん。マジンガーZの変じた機械神と融合しちゃったんで、事実上は神様になってる。その関係で、はーちゃんの代わりになったような感じ。とはいえ、属性は全然違うけどね。はーちゃんは大地母神だったけど、マジンガーZは戦神であり、破壞神だしさ。肉体自体は持ったままだけど、現世で行動するための器って感じ」
「えーーーーーーーー!?」
「だから、直接戦闘力は最高って言っていいよ。たぶん、あれならシュプリームにも対抗できる」
「シュプリーム?」
「多分、この世界にもいるかもしれない『究極の生物』だよ。私達はそいつに負ける」
「ええっ!?」
「80人以上でかかっても、手も足も出ない有様でさ……そののぞみちゃんはそいつとまともに戦える力を欲したんだ。ヒトであることを捨ててでも、ね」
のぞみAはプリキュア間の繋がりがそれで一度は絶たれた(記憶が失われた)ことなどが遠因となり、自身の前世を暗転させてしまったことから、シュプリームの別個体がいれば、今度は逆に叩きのめす(記憶を守る)という願望を抱いている。個人的な復讐なので、これまで口にしていないが、その願望自体はZEROとの戦いの際に知れ渡っている。これは『記憶が復元されても、実感がないために、態度によそよそしさが表れ、世代間で内輪揉めを起こしてしまい、それが自身の疲れ果てた挙句の死の遠因となった』という、のぞみの前世での悲劇をZEROがプリキュアたちに見せたからである。
「一度記憶が失われてしまうと、元に戻った後も、失われた時期の態度での気まずさが残るわ。別のあなたはそれに苦しんだ挙句に、戦いで体を壊し、死んでいった。それを知った時、あなた自身が正気を失いかけた理由がわかった。故に、守るために、神になることを選んだ……。それは私たち後輩の罪でもあるわ」
キュアマーメイドはのぞみAがヒトを捨てる事になった真の理由を知った後、その世界の自分達の愚かな態度が、のぞみAに癒えない傷を(無自覚に)負わせていた事の罪悪感に苛まれ、その償いのために『戦い続ける』道を選んだことを伝える。記憶の喪失と復元を経た後によそよそしさを出してしまったことが世代間の対立の引き金となった悲劇。その引き金を引いてしまったのは、自分達『第三世代のプリキュア』なのだと。
「だから、私たちは戦い続けることを選んだのよ。転生で『私たちの力のシステムが変質していた』のも理由なのだけど」
「……何があったの?」
「それは一言じゃ、とても……。だけど、それで、友情とか親愛が脆くて、儚いことを認識せざるを得なくなって、のぞみちゃん自身の人生を狂わしてしまったとしか…」
バツの悪そうなキュアフローラ。のぞみAの前世で『その原因になった内の一人』が自分であったことにショックを受けているからで、その事を知ったのも、転移前の世界に戻らず、共に戦うのを正式に決めた理由だと話す。
「どうして、そんな」
「友達を裏切った責任を取りたい…。そんな感じ。別の個体がしたことでも、『私自身がした』ことには変わりないわけだし、日本が数百年前から悪に狙われていたことがわかれば……ね」
「えらくピンポイントなような……」
「それは本当だよ」
「結城先生、どういうことですか?」
「私も、それに一度は無自覚に加担していたからさ」
診察しに来た結城丈二も続いた。自身の過去はそうであったからだ。
「1973年のことだから、もうずいぶんと前のことになるがね」
「せ、1973年!?45年(2008年からの逆算)も前……。だけど……」
「私は冷凍睡眠をしていたことがあるのでね……。それで若い姿なのだよ」
結城丈二は1950年生まれ。普通に生きていれば、2008年には老境に達する。だが、目の前の彼はどう見ても、20代後半から30代前半にしか見えない若々しい姿である。冗談めかしてはいるが、冷凍睡眠など、2008年の科学では『実用化には程遠いはず』であった。そのからくりと自分の『正体』に言及しだすのであった。