ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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幕間です。


第百八十五話「幕間 平行世界のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの現況」

――地球連邦軍は軍縮時代を経た後は新式MSを一括購入できる予算はなかったので、ガンダムタイプの活用が(今更だが)進められた。また、新式VFは希少資源が必須なため、結局、限界性能が高いVF-19が再生産される見込みとなり、限界性能の低いVF-171はおはらい箱となった。また、移民船団や民間軍事会社からかなりの腕っこきが本国かつ、軍に戻されたため、民間軍事会社から軍に転じた(戻された)者も多く生じた。これは政府が民間軍事会社の規制に動いたためで、複合企業体の軍事事業を規制するためである。この施策のため、民間軍事会社は(政府のお得意先である)大手以外は倒産か廃業に追い込まれていく。これは政府のハト派が民間軍事会社の産業としての肥大化を恐れ、規制を叫んだ故である。この施策に伴う措置として、軍への復帰の場合は配属先を『外郭独立部隊』とする配慮がなされた。この関係で、行方不明中の早乙女アルトなどは軍籍を与えられている。オズマ・リーも形式的に軍へ復帰している。これは政府のハト派の規制運動が現実の動きとなり、傭兵にマイナスイメージを持つ世間の迫害がランカへ及ぶのを防ぐためで、オズマ本人はかなり複雑であった。(元からミュージシャンであり、功績もあるFireBomberは例外と見なされているが、その他はほとんど『ミンメイアタック要員』に近いと思われている。これはシェリルとランカも例外ではない。仕方がないが、白色彗星帝国以来、異星人の尽くが文化的営みが地球人レベルに達していない『戦闘を営みとする者』たちである故である)――

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍は敵対者を狩り尽くす方針へと転じつつあった。これはガミラス帝国や白色彗星帝国との戦争以来の傾向であった。これに恐れを抱くのが、ウィンダミア王国の穏健派であった。彼らは『世継ぎもいないうちに、異星人を尽く殲滅した地球に宣戦布告する』ことの危険性を認識していた。だが、若い層はほとんど主戦派であり、それがもとでウィンダミアは史実と逆に地獄絵図となってしまう。宇宙戦艦ヤマトなどの飛来を恐れるあまりに蜂起を予定より早める。だが……それは悪手になるのである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦軍の名機『ジェガン』。魔女の世界へ実質的に払い下げとなった数は後期生産型の半数近く。これは後継機種である『ジェイブス』とジェガンの改装である『フリーダム』の定数を確保するためのものであった。ティターンズ残党がネオ・ジオン残党などと組み、ギラ・ドーガなどを手に入れたことへの対処である。魔女の世界では、ティターンズ残党はMSを火消し役として使っており、北方戦線などで有利な戦局にしている。魔女の権威が凋落する要因の一つは『北方戦線での劣勢』であった。エディタ・ノイマンが起こしてしまった騒動は魔女への21世紀世界の視線を冷却・白眼化させる原因の一つであった。彼女自身は左遷と罵倒で鬱病となり、軍を辞めていったが、以降の『魔女の軍人』の発言権を大きく低下させる原因の一つとなった。ミーナが(隠蔽工作で)病気療養による交代ということにされたのは、原因に(1940年代ではタブーである)同性愛も絡む故で、エディタの更迭とガランドの退役で生じた混乱を助長したくなかったからである。1940年代は(後世の予想以上に)同性愛を異常と考える風潮が強い。ミーナほどの立場の者が同性愛で暴走してしまったとなると、世間的に色々とまずくなる時代だからである――

 

 

 

 

 

 

 

 

――魔女たちはダイ・アナザー・デイで第五世代ジェット戦闘機(ステルス機)を怪異と間違える失態を幾度も犯した。怪異だと思ったら、友軍の戦闘機であったという凡ミスを連発。第五世代機の低視認性が仇となった形であった。それより前の第四世代機を送ったら、(純粋な飛行性能は第四世代が到達点であるのもあって)そのほうが重宝される事態に陥った。結果的に第五世代戦闘機の価値が(パッシブステルス傾向の機体形状を理由に)下落してしまい、第四世代で完成された形状にアクティブステルスを付与する研究の道が拓かれる。これは21世紀の後半に『アクティブステルスの実用化』と『ドローン兵器』の規制で軌道に載る。それがVFとコスモタイガーへ至る道となる。魔女の世界でも、ストライカーへの敵味方識別装置の搭載の普及、M粒子散布下前提での通信システムの構築などが進んだが、肝心の魔女の社会的地位の低下が急激に起こったため、扶桑で魔女の活用の研究が継続される一方で、他国では切り捨てが始まった。多くの魔女が日本連邦に与していくのは、『現在の暮らしと、自分と家族の社会的地位が保証される』からである。日本連邦は『異能への寛容性』を武器に、魔女らを集積し、能力の体系化を国家事業として推進。また、黒江たち『転生者』を軍事的権限を内閣へ譲渡した扶桑皇室に代わる『軍の最高権威』とすることも、この時期の長老(鈴木貫太郎や岡田啓介)らの生存中に極秘裏に決められていく。議会制民主主義を完全に根付かせるための改革は当初、米内光政が検討し、彼の死後に長老らが引き継ぎ、山本五十六、小沢治三郎、井上成美、山口多聞の四人へ近い内に継承される見通しであった。彼ら『戦前の指導層なりの『国民への贖罪』であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――吉田茂や小泉純也はその実行役であり、Y委員会の意向で動く『象徴』であった。Y委員会の決める政策は表向き、彼らの意向とされた。国防施策はY委員会が決めている。軍事を日陰と考える思想は戦後の日本特有のものであるので、武人が表舞台で輝いてきた扶桑との衝突が絶えず、日本が主導した軍縮施策のほとんどは裏目に出ていた。特に魔女関連では顕著であり、1945年以前に働いていた者達が未だに現役を張らなくてはならなかった。これは日本側が魔女は(大抵の場合)10代から20代前半までの儚い奇跡で成り立つ存在であり、全員が戦闘向けの資質ではないと知ったのが、扶桑での1947年度のこと。その時には『更正法』が成立してしまった上、志願可能年齢の下限が大きく引き上げられたため、農村部に志願が敬遠された。玉音放送で増えたものの、質は見る影もなかった。それもあり、魔女の人的新陳代謝はすっかり停滞。更に従来の魔導理論に基づくストライカーの強化が頭打ちになったところに、飛躍的に強力化した敵兵器群。求められるのが『飛べて、銃を撃てるだけ』の者ではなくなってしまったため、『軍の予備知識ゼロでスカウトされた』のは、芳佳が正真正銘の最後となった。芳佳はプリキュアの転生者でもあったが、ここ最近は子育て中であるので、戦闘は先輩であるのぞみに任せ、自身は実家で育児休暇であった。階級は医務少佐。空軍移籍後は兵科の差別がなくなった(芳佳の移籍のショックも、軍令承行令の正式な廃止の理由である)こともあり、飛ぶ時の扱いも少佐である。これは『ダイ・アナザー・デイで日本義勇兵が居丈高に振る舞った連合軍正規将校をリンチし、病院送りにしてしまうことが頻発した』が、理由の一つに『特務士官を下士官と扱った』というものがあり、士官学校未卒でも『士官待遇になる制度』があったことが知られていなかったからでもあった。連合軍内で交流が恐れられる事態(日本軍出身者は荒くれ者が多いので)に至ったところで、ミーナの不祥事が起こったので、その事例を大義名分に、扶桑海軍に制度を廃止させた。だが、正式な廃止はクーデターの混乱が収まった後。その間に、芳佳は空軍に移籍していたというオチがついた。そのため、プリキュアたちも意外に(時期によって)全員が常に出動可能な状況にはなかったのだ――

 

 

 

 

 

 

――そのトラブル等を差し引いても、ダイ・アナザー・デイの時点で、飛行時間が800時間超えの航空兵は扶桑軍にはいなかった。日本側は『飛行時間が5~600時間程度では、空母戦は不可能』と罵ったが、自由リベリオンの航空兵はもっと少ない時間で配属されていた。だが、彼らにとっては重大である。マリアナ沖海戦の敗北の理由に『航空戦力の格差』があり、その一因に練度不足があることは子供でも、資料を調べればわかる。それを大義名分として振りかざしたが、扶桑軍の前線の航空兵の練度は日本の想定以上の低さであった。M動乱を生き抜いた者を優先的に教官に回したためであった。扶桑は百も承知であり、その頃から義勇兵を各地で募っていた。その対象が旧日本軍の出身者に広がったのである。後々に禍根となったのは、扶桑生え抜きの将兵の空母戦からの締め出しであったのだ。更に、日本側のもう一つの想定外は『信濃が空母として生まれていない』ことであった。扶桑は元来、手頃なサイズの雲龍を量産することで量を確保しようとしていたが、新型艦上機が想定以上に大型化したため、雲龍型の手に余ると判断したはいいが、信濃が空母ではないことが日本側を困らせた。だが、大鳳の増産は既にストップさせた後であった。扶桑は空母戦に結論を出せない日本に業を煮やし、地球連邦軍へ正式な参戦を要請。エイパー・シナプスはそれを了承。ダイ・アナザー・デイの空母戦は地球連邦軍の援助で乗り切る流れが確定したわけである。この事は扶桑海軍最大のトラウマとなり、後々の太平洋戦線での現存艦隊主義に走る原因になった――

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘達が存在を確認された時点では、扶桑海軍の空母増産計画がようやく承認され、鹵獲したミッドウェイ級とエセックス級の編入も済みつつあった。扶桑の空母機動部隊は(大鳳の量産頓挫と信濃の『不在』で)形骸化しつつあったので、この時期が『扶桑純正の空母の終焉』と言えた。艦上戦闘機も『F-8』に切り替えが完了しつつあり、再建に目処が立ちつつあった。既に更に次の世代もテスト中であった日本連邦だが、肝心要の空母の世代交代が済んでいないので、F-8が主力であった。これは二次大戦型を改装して載せられる中で、同機種が最高であるからである。とはいえ、リベリオン以外の空母保有国はそれにも遥かに劣る性能のものを載せるのにも四苦八苦しているので、F-8は(扶桑のパイロットが格闘戦重視な傾向なので、特に好まれている)扶桑の空母機動部隊の屋台骨と言えた。ある意味、かつてのチャンス・ヴォート社の慧眼が異世界で評価されたと言える事柄であった。これは日本側が(規格統一を目論んだ)推薦したF-4系列機の機体はミッドウェイ級(改装済みの上で)以上の空母でなければ、余裕を持って運用できないこと、次の世代のF-14やF/A-18系はそれ以上の空母が必要になるからだ。その兼ね合いで、空母の発達が必要になったのだ――

 

 

 

 

 

 

――それまでの繋ぎ扱いだが、戦艦は軍事的抑止力として機能した。M粒子で弾道ミサイルに軍事的意義が無く、近代的ミサイル兵器に必中が期待できず、航空兵器の高額・少数化の状況では、戦艦が復権を果たすことになった。時代がジェット機に移り、高性能と引き換えに、自動車感覚での量産はもはや不可能となった中で、皮肉なことに、重武装・ミサイル兵器頼りではない武装構成が評価されたのである。戦艦を部隊単位で持てる国は列強に限られ、なおかつ強力な艦砲の製造ノウハウがある国は更に限られた。そのため、日本連邦は(自らにかかる軍事的負担を減らすため)46cm砲の製造ノウハウを比較的に友好的な国へ提供。クイーンエリザベスⅡ級戦艦が46cm砲を搭載できたのは、そういうことである。また、戦術主体が攻撃から防御に切り替えられ、人員削減の影響で、旧大陸領の放棄は実質的に決まっている。これは領土の現状維持が決まった関係である。戦勝の暁には、ハワイ諸島(1940年に地殻変動で大陸から分離)の権利を太平洋共和国から引き継ぎ、旧大陸領の住民をそこに移すという話し合いが終わっている。自由リベリオンは当面は南洋新島群を事実上の領土とすることも承認済みである。その自由リベリオンは日本の左派に毛嫌いされ、一時は艦艇に軟禁状態であったが、アメリカ合衆国の圧力で南洋新島を『租借』できた。期限は定められておらず、『再統一の時に返還する』という文面があるのみだ。これは南洋新島を彼らの手で開発させたい日本側の思惑があったのだが、ドラえもんが南洋新島群に都市をおっ立ててしまったので、その思惑は外れることになった。ただし、軍事的貢献は扶桑の領内で暮らすための条件であったので、呑まざるを得なかった。ただし、アメリカ合衆国の厚意で、相当に豊かな暮らしはできたため、その対価であった。それがF-86の試作機の無償提供である。連合空軍の標準戦闘機とされ、各国へ支給が始まった。扶桑も数合わせ目的で、ダイ・アナザー・デイ後も多くを第一線で使用している。操縦感覚がレシプロ機と大差なかったためで、そこがMe262を市場から駆逐した理由である。かくして、ブリタニアと扶桑の量産品の武器のレベルは朝鮮戦争レベルに飛躍していった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――扶桑は戦間期の国家的イベントで国土の近代化を押し進めた。関東大震災が起こっていないため、町並みが時代に見合わないレベルであった東京も、太平洋戦争で一気に、戦後日本同様の方向性へ向かい始めた。この頃に建設が進んでいるのが新幹線であり、高速道路網であり、東京のオフィスビル街であった。戦時で予算が多いのを理由に、押し通したわけである。また、兵器の生産現場の近代化で余った『単純労働しかできない者たち』の当面の受け皿としても用いられている。同時に、農村部の衰退に伴う自給率の低下を補うため、ドラえもんの力を借りる形で、食料品プラントが各都市の地下に設けられた。農村部の衰退はそれほどに急激であり、地主の解体、農村部の若者にも『一定以上の学問』が求められる時代の到来が同時に起こった故の流れであった――

 

 

 

 

 

 

――代理戦争の場となった『魔女の世界』は帝政カールスラントの実質的な無力化で、連合軍の兵力が大きく減退。それに次ぐ兵力を保有していた日本連邦が矢面に立たされることとなったことで、必然的に通常兵器の進化が求められた。ダイ・アナザー・デイ開始時には『九六式艦戦』が多数残っていたが、それから四年と少し後の太平洋戦線では、史実の朝鮮戦争レベルの飛行機が飛び交うように変わっていた。教育制度の変革で、一〇代前半での志願が禁止され、志願年齢の下限が15歳と決められた。これは現場の魔女の多くから反対が多かったが、ジュネーヴ条約との兼ね合い、兵器の高度化に伴う『必要知識の高度化』などを理由に、改編された。第一世代の宮藤理論式の強化が頭打ちとなり、第二世代式への移行が図られているが、それまでより消費量自体は減るが、高純度の魔導触媒が必要になったなどの理由で生産配備は上手くいっていない。それが魔女の軍事的意義の低下に繋がってしまったわけである。資源である魔導触媒の温存の観点から、旧式ユニットをリサイクルするのが望ましいとされたが、使い込まれたものは当然、資源の再利用が難しい。その現状の改善は技術の進歩を待つしかない(時空管理局の技術供与で、数年後に『少数の触媒で従来の数倍の出力と魔女への負担が低減された新世代の触媒が開発される)とされた。その間に、怪異の出現件数の減少で、軍事的意義が低下していったのだ――

 

 

 

 

――日本の左派が無理に扶桑の軍縮を(近代化を名目に)進め、リストラも行ってきた影響は太平洋戦線での若手~中堅の将校の不足として表れた。扶桑軍はそれを義勇兵と超兵器で補うしかなかった。特に、日本の中高年層による扶桑軍人への理不尽な暴力は評議会で特に問題視された。特に、陸軍幼年学校卒の者を侮蔑的に見る者は多く、『無学の戦バカ』と公然と罵られた。実際は同時代のエリートの集まりであるが、『世間知らずの阿呆ども』とレッテルを張られた。これはのぞみの問題の外交問題化の一因であった。これにより、幼年学校は工科学校へ改編される事になったが、一桁~10代前半の年齢の幼年学校生徒の処遇で議論が起こった。日本側は普通校へ入れ直すことを押し通そうとしたが、将来的な雇用を前提として入学させた親たちへの配慮と、農村部出身者への救済措置の観点から、工科学校に予科を設立し、そこで抱え込むという『妥協』が取られた。また、高額な学費の徴収は『まだ、そういう時代ではない』と扶桑が巻き返したことで見送られた。元々、幼年学校は功ある軍人の子息(戦死者含む)や国家に功ある文官の子は幼年学校の月謝を免除、あるいは半額になる仕組みであり、そこから無償で、陸軍士官学校に進めることが売りであったが、日本はそれを一律で廃し、学費を徴収しようとしたので、反発を受けたのだ。結局、軍学校の学費は(扶桑は『一億総中流』とは言えない時代で、都市部と農村部に明確な貧富の差があることから)10年(後に七年に短縮)の勤務義務を課すことで徴収の代替にする事で落ち着いた(史実と違い、女子の高等教育に軍隊が用いられている情勢であったことも大きい)。かくして、この混乱で、『1945年当時に勤務していた魔女たち』は身分の貴賤を問わず、軍の定年まで勤務する事になり、1950年代からの扶桑社会で強い力を持つ事になる――

 

 

 

 

 

 

 

――太平洋戦争の長期化は日本に責任があるといっても、過言ではなかった。扶桑は元々、未来兵器の力で『1~2年で和平に持っていく』プランで準備していたが、日本はそれを一蹴。

 

 

――アメリカ合衆国相当の国家相手に正規戦は不可能だから、根気よく、ゲリラ戦をし続けるのが最善である!!――

 

……と押し通した。これは『攻勢』を日本の大衆が忌避していること、史実の日本軍の失敗と、ベトナムの成功を鑑みての決定であったが、大陸領の怪異からの奪還を夢見ていた扶桑国民の反発を招いた。日本は扶桑の旧大陸領に価値を見出していなかったが、怪異に追い出されたことへの怨嗟が元の住民に残っていた事から、ハワイ諸島を代替の土地にすること、ティターンズの傀儡政権を倒す事自体は(リベリオンの広さから)不可能と判定。最終目標は『軍事力を壊滅に持っていく』ことにした。リベリオンの本土の居住人数は1940年時点では、せいぜい一億数千万。21世紀の日本と大差はない。違うのは、兵器の生産量と豊富な資源である。扶桑と日本は『海軍を無力化しつつ、西海岸を『解放する』ことを第一目的とし、そこを和平交渉のタイミングと見ている。元々、別世界の住人であるティターンズは、この戦争を『自分達が満足して死んでいくための舞台装置』としか見ておらず、原住民の生死などは、ほとんど気に留めていない(有名俳優やスポーツ選手以外)と思われる。ティターンズの元々の主張である『地球至上主義』を考えれば、痛烈な皮肉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ミーナBは滞在中、『別の自分が失脚した理由』を聞き取り調査していた。手慰みの暇つぶしと、元の世界に戻った後に振る舞いを気をつけるための勉強を兼ねていた。そのうちに、自分が『事変に無知だったのと、なまじっか『当代屈指のエースパイロット』であったので、『事変の英雄』の三人を下に見ていたところがあったと気づいた。だが、(『この世界』では)三人は自分とは比較にもならぬ強大な異能を備えており、上手く活用していれば、自分と部隊の地位は安泰であるはずであった。だが、坂本を『盗られる』との危惧が、そういう立ち回りをする思考を吹き飛ばしてしまい、外交問題を招いた責任を取らされた。それをきっかけに、国そのものも衰亡の道を歩んだ。調べていて、青くなる顛末である。(時代が変わった後に『扶桑に非がある』と、後世で判定されたことに『異能者のことを迫害同然に隠した』事があるが、事変当時に佐官以上であった者たちは『まさか、特別な異能を持っているなんて、想像つくか!?』とぶっちゃけている。しかしながら、最終的にその軍令を発したのは、東條英機その人なので、彼はどのような世界でも『何かしらの形で失脚し、自らの行いを、未来永劫に渡って否定される』星の下に生まれる運命だと言える)結局、防衛を理由に、統合戦闘航空団のメンバーは次々と隊から異動させられたり、戦傷で後送。その窮地を救ったのが、プリキュア変身者であった。統合戦闘航空団としての体裁は、ダイ・アナザー・デイの進展でかなぐり捨てられていく。それと比例するかのような凄惨な戦闘。そして、魔女であれば、普通は耐えられない敵味方問わずの航空機による『体当たり攻撃』……――

 

 

 

 

――1949年 晩夏――

 

南洋では関係ないが、本土では晩夏になる頃。ミーナBは手慰みに『流しの歌手』を演じつつ、このA世界に生きていた。別世界の存在であるので、肉体の時間的意味での加齢は起きていない。芳佳Bが問題を起こしたことから、B世界の魔女らは肩身の狭い思いをする羽目になっていたが、芳佳の生真面目さが裏目に出た結果なので、誰も責めることはなかった。とはいえ、怪異と戦うことが狩猟行為と見なされるようになりつつある風潮に反発する若手の魔女たちを宥めているミーナBら。A世界はティターンズ残党軍の漂着以降、すっかり変わってしまったのだから、仕方がないのだ。むしろ、黒江たちは魔女の社会的立場をむしろ守っている。彼女らの異能は魔法を起点に発達したものを基礎としているからだ。みらいやリコの魔法も魔女の社会的地位の保全に一役買っている。彼女たちの魔法は似て非なるものではあるが、魔力自体は変わりない。とはいえ、魔女の世界の魔法が有限の力から進化するには、長い時間がかかると思われる。ゲッターエネルギーが満ちて、進化が促されたといっても、すぐには結果は出ないのだ。

 

 

 

「あの方たちの異能は異端過ぎた。だから、当時の上層部は隠蔽を図った。だけど、後で不利益を被ったから、やけくそで開示した…。だけど、それで今度は世代間闘争の様相を呈した…。さもしい話ね」

 

結局、世代間闘争は異能に寛容であった事変世代が完全に勝利を収め、摂理を超えることが正式に魔女全体の方針となった。中堅世代は多くが軍を去り、猟師やMATの職員になったが、戦争中に辞める=逃げ出したというレッテルを貼られるため、戦争中は退役を隠し通すケースが多かった。その影響で人手不足が顕著となった軍部は、義勇兵と異能者を主力にすることで急場をしのぐことにした。ミーナBが見ているのは、ダイ・アナザー・デイ中の新聞記事であり、その記事で取り上げられているのが、当時に注目の的であったキュアドリーム、キュアメロディ、キュアピーチの三羽烏である。ピーチは初の『転生に伴う次元転移で現れた』プリキュアであった。前世で芸能関係の仕事をしていた関係で、広報業務に明るく、最近は広報も兼務している。この世界のシャーリーもプリキュア経験者であり、記憶と能力を取り戻した後は扶桑人名を名乗る予定であったが、ルッキーニが泣いて駄々をこねたため、扶桑系のリベリオン人という妥協がなされたという。ルッキーニは記事の中で『シャーリーはシャーリーだもん!』とコメントしている。大人の事情を理解できない子供そのものだ。それで懲罰的に本国に送還されたのだろう。

 

「美緒、ルッキーニさんはどうなったの?」

 

「本国に送還されて、今は実家近くの飛行隊にいるそうだ。やらかしたから、遠まわしに監視されとるそうだが」

 

 

それは表向きのことだが、駄々をこねたのは事実である。シャーリーもそれで困っていた。

 

「サーニャさんは?」

 

「両親が北海道にいることがわかったから、軍を辞めて、ピアニストに転職してな、今は扶桑の各地で巡業中だ。エイラは相当に引き止めたがな。エイラはそれで一線を退いて、駐在武官に転じた。我々がプリキュアに入隊を懇願したのは、そういう事情もあったからだ」

 

実際には、サーニャはオラーシャ軍は辞めたが、扶桑軍で『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』として過ごしている。サーニャと違い、明朗快活に振る舞っているので、元の儚げな雰囲気とは一致しない。それがカモフラージュになっている。もっとも、サーニャの面倒を見るべく、『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』としての生活を送るマルセイユは、慕っていた上官が軍を去るしかなくなったショックを紛らわす意味もあるのか、かなり高飛車なキャラ造形で通しているが(偶然にも、それははやての『前世』における記憶と一致したという)。

 

「1949年。本来なら、私達はとうに一線を去り、宮藤さんとリーネさんも19歳か、20歳を迎える頃……。摂理が覆った世界はある意味で、すごく残酷ね」

 

「しかし、怪異と馴れ合いをしているとさえ一部で揶揄されていたのだから、ある意味では、世界の真実に近いのだ。世界は残酷だからな…」

 

「あなた、お子さんは?」

 

「今日は旦那が非番でな。ヤツに任せてある」

 

この世界線では、引退後に土方と結婚し、すぐに子を儲けている。その関係で、現役時代と比較して落ち着いた言動になっている。服装は21世紀にいても不自然ではない、ラフなものだ。

 

「いいの?」

 

「良妻賢母は昔の話だ。今は都会に限るが、共働きも増えてるぞ」

 

扶桑は日本よりジェンダー関連の状況がかなり進んでいる。軍隊に女性の将校が多数いるばかりか、明治期の時点で、若くして大佐以上の階級になった例がある。農村部は都会より思想面でかなり遅れている(史実と大差なし)が、これは畑仕事の人手の確保という問題があるからだが、史実の大日本帝国より女子教育の機会に恵まれている点は異なる。

 

「20前半で子持ちになったが、ばあさまからは遅めだと言われてな。まぁ、ばあさまの時代は16、7で子供を生むことも多かったからな。あと数十年もすれば、生涯を未婚で生きる者も増えていくだろうさ」

 

「時代の変化なのね、それが」

 

「他の世界に近づいただけさ。もっとも、原子力を爆弾に応用し、街一個を軽く消し飛ばし、環境を汚染する危険の大きい代物が抑止力の要になるのが他の世界での流れだから、ここはだいぶ、平和な世界さ」

 

坂本Aは核抑止力などを知っているので、戦艦が抑止力としてあり続けている現状を『平和な証』と例える。(なお、ティターンズの使用したものは純粋水爆であるので、放射線などは殆ど生じない)

 

「ここの黒江達は別の世界で『魔女の限界』に気づき、それを超える道を選んだ。あいつらはその関係で、三回ほど人生をやり直し、その影響で『死ねなくなった』という副作用はあったが、三回目でやっと上手くいった。私がそのからくりに気付いたのは、前世での晩年でな…。それで、死ぬ時に『神』に頼み込んだ。償う機会を与えてくれと。その結果が今の私だ」

 

「それじゃ、あなたも……」

 

「今はな。もっとも、現役復帰はせんがね。人材育成が今の生きがいさ」

 

坂本Aは前世の今際の際の『契約』で転生しているらしく、この時点では(史実の現役晩年期と違い)憑き物が落ちたように、穏やかな性格になっていた。本人曰く、『現役時代は強くあろうとしてたんだ』とのこと。

 

「あいつらの現状はお上(天皇)を含む、一部のお偉方しか知らん。裏方も必要だから、私は裏方に回る事にした。戦士としての名声は充分に手に入れたからな。そちらの私には『惰弱』と言われそうだが、若気の至りだと思っとるよ、自分で」

 

同じ人物でも、生きた道の違いで、はっきりと違いは生まれる。それがわからなかったのが芳佳だ。芳佳は大抵の場合、思い込みも激しく、頑固であるので、それが裏目に出ている。また、坂本の言う『魔女に不可能はない』を信じてしまっていた故に、A世界で超人でも、B世界では『かろうじて魔力を残すだけ』の黒江と智子を責め、騒動を起こしてしまっている。

 

 

「そちらの宮藤の起こしたことだが、相当に心をズタボロにしてしまっているから、このままでは帰せん。そちらの私の不徳の致すところだ。最近はようやくわかったようだが、あいつの青臭さが完全に裏目に出たと言える」

 

そこでため息をつく坂本。芳佳Bの起こした事件はB世界の黒江と智子を追い詰め、鬱病に追い込んでしまった。そうなると、謝って済む状況ではない。この世界の二人が異常なのであって、別世界線の二人はそうではない。その事を教えられ、罪悪感に駆られた芳佳Bは自分を顧みず、仕事に邁進してしまった。行動や思考が凝り固まりがちなのも、芳佳の本来の姿だ。

 

「当分は、この世界で治療を受けさせるしかない。このままでは、元の世界に帰しても、まともに仕事もできんだろうしな…。そちらの私の教育不足を詫びたよ」

 

「ごめんなさい……」

 

「お前が謝ることはないさ。宮藤も少しは学んだだろうさ、力を失いつつある者の虚しさを」

 

「この世界の宮藤さんは?」

 

「医官として出世したよ。今は私と同様に産休だ。こちらでは、前世の記憶の覚醒で、キャラがだいぶ変わってるし、プリキュアの変身者でもある。あと、こちらでは震電は使えなかったのは言ったと思うが、許可が出たんで、詳細を教えよう。そちらの宮藤が聞きたがってるようだからな」

 

「わかったわ、ありがとう。どういう流れだったの?」

 

「1944年の途中までは同じようなものだが、宮藤博士が欧州にいた頃に送った理論の図面が割に早く発見されてな。ダイ・アナザー・デイの直前には、数種の試作機が完成していた」

 

坂本はこの『A世界』(魔女の世界)での震電の顛末を教える。ダイ・アナザー・デイの始まった頃には、『雷電』(ストライカー)の後継候補の有力馬とみなされ、量産用の試作が進められていた。当然、坂本は(前世の記憶で)そのポテンシャルを知っており、運用テスト名目での芳佳への配備を強く推した。ところが、震電は『テスト未了』の状況であり、開発に深く関わっていた『鶴野大尉』がその状況での配備に猛反対し、震電は死蔵されてしまった(大尉は震電のクーデターでの焼失で、その選択を後悔することとなった)。その代替に、宮菱重工業が零式の正統な後継機種として開発しつつも、開発の遅れと紫電系の主力化で存在が宙に浮いていた『烈風』をフルチューンした『烈風改』が回されたが、当の芳佳がプリキュア化したこともあり、使う機会があまりなく、たったの数年で震電をジェット化したユニットが後を継いだと告げる。

 

「こうなった以上は後の祭りだが、震電は採用こそされたが、レシプロストライカーとしての量産は成らなかった。だから、こちらでパーツの用意ができなかったのだ。ジェットに作り変えるしか、道がなくなったし、宮藤もプリキュアになったんで、ユニットを使う機会が減ったからな」

 

「その烈風の写真はある?」

 

「ある。宮藤博士の最後の作品だから、記念に写真を撮っといたんだ」

 

「逆ガル翼?まるで、リベリオンのコルセアじゃない」

 

「あれよりは角度が緩やかだがな」

 

烈風ストライカーはあまり使用されなかったが、戦士としての側面が強まった場合の芳佳の第二の翼としての役目は充分に果たした。元が艦上ストライカーなのと、基礎設計の年度の都合で、速度は紫電系より遅いが、エンジンが当初予定より強力となった影響で、推力重量比は紫電系より良好となり、巴戦では無敵だったと話す。

 

「その時に撮られたニュース映画でも、バッチリと活躍しているぞ。曽根技師も溜飲が下がる思いだったと思うぞ。レシプロの最後の華を飾ったから」

 

「曽根技師?」

 

「宮藤博士の腹心だった設計技師だ。博士の最後の遺産を世に出すことを望んでいてな。これで、思い残すことはないと言っておられてたよ」

 

烈風が結果的に、芳佳のレシプロ時代最後の翼となり、正式に『空の宮本武蔵』の異名を得るのに貢献したのが、A世界であった。魔力量の成長から、許容範囲がより大きい双発の『天雷』にする案もあったとのことだが、天雷は高高度性能の問題が露見し、見送られたとも話す。更に、芳佳の飛び方はドッグファイト主体であったので、単発機がいいと言うことになったのも大きい。

 

「でも、信じられないわ。いくら、異世界の介入があったと言っても、音速の二倍以上の速度の飛行機がこんなに早く……」

 

「必要は発明の母でもあるからな」

 

二人のいる公園の真上を、飛行50戦隊(50F)の保有するF-4EJ改が飛行していく。この時期の扶桑の一般部隊用では、最新最高のものである。既に、より新しい戦闘機もテスト段階にあるが、当時の扶桑で迅速に配備できる一般用戦闘機としては、同機種が最高であった。複座なので、元の艦爆や艦攻、水偵乗りなどに優先的に供給されている。原型のF-4は本来であれば、1950年代後期に現れる機種なので、10年ほど早まっている。扶桑はそれにF-4EJ改相当の改修を最初から施し、急ピッチで生産している。空母のほうが追いつかなくなる事態も生じているので、当面は陸上で使われる見込みだ。

 

「あれは本来、もう10年は後に試作が出来上がるはずのものだ。それを早めた。空戦性能だが、あの図体にしては良好だ」

 

ジェットの進化の早さは凄まじい。Me262からさほど年月の経過のないうちに、『胴体内装式のジェットエンジンを持ち、段違いの機動力を備え、速度もバッチリ、電探も装備済み』のものが大量生産に入っている。ミーナBは『必要に迫られた』とはいえ、自分の世界では『構想か、試案が軍に提出された』にすぎないものがカールスラント以外で実用段階に至ったことを寂しがる表情を見せた。

 

(遠からず、カールスラントは航空機開発の流れから取り残されてしまうのね…。戦争が終われば、新機種を急いで用意する必要はない……。元の世界のウルスラさんが聞いたら、泡吹いて卒倒するでしょうね……)

 

F-4の存在は、リベリオンが今後の航空機開発の総本山となっていく事を明確に示すものである。それは歴史の必然であったが、1940年代に自主開発ができていた国ほど、その反発は大きい。扶桑がそうであったように。メタ情報で『徒花』とされたコメートや秋水などの開発陣が反発したのは当然であった。だが、ジェットエンジンが発達し、エースパイロットに嫌われた元凶である『加速性能』もアフターバーナー(リヒート)の実用化で解決されてしまうと、ロケット機は徒花とされるのは当然であった。いずれも、B世界でのカールスラントでは構想か、試作途中の段階のものだ。ミーナBは自国の航空開発の衰退の未来を悟り、坂本に寂しげな顔をするのだった。

 

 

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