ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

699 / 787
話が進展します。


第百八十六話「ころばし屋Zの暗躍」

――ころばし屋の捜索は長期化していたが、ドラえもんが『雇った』ころばし屋軍団(量産品)が発見し、戦闘に突入したと連絡があり、シンボリルドルフは遠征から帰還し、休暇に入った相田マナ(キュアハート)と入れ替わり、キュアハートとして討伐に向かった。

 

「エアグルーヴが見たら、心配しますよ」

 

「確かにな。入れ替わるにも、肉体と魂の相性もあるそうだから、相田氏は元の運動神経もいいから、この状態であれば、私の要求に応えられる」

 

「協会の通達を掻い潜るにも、他に方法があるんじゃ?」

 

「今はインターネットとSNSの時代だ。故郷世界との交流がある以上、顔出しでは動けんよ。プリキュアの諸氏に無理を言って、頼み込んだ以上、私が率先垂範をしてみせねばならん」

 

ルドルフは属性が近いキュアハートと入れ替わる。立場上、自警団との約束を破るわけにはいかない。だが、協会が前政権下で発した通達は据え置かれているので、このようなことを推進しているのだ。なお、入れ替わるプリキュアは魂と体の相性で、ある程度決まる事があり、ルドルフは属性の近いキュアハートが、ナリタタイシンはキュアフェリーチェが入れ替わりの際の相手である。

 

「では、行ってくる」

 

ルドルフはこうして、ころばし屋の討伐へ向かった。意外と得物はガチの代物で、超合金ニューZ製の日本刀を帯刀し、日本が扶桑陸軍に使わせる気でサンプルを回し、のび太が仲介して、扶桑陸軍に納入する手筈の『20式5.56mm小銃』の1丁を予備マガジン込みで携行している。ころばし屋DXの破壞が未来デパートより要望されていた都合である。

 

 

 

 

 

 

 

――のび太らの住んでいるススキヶ原は(自治組織の消滅で)荒廃している学園都市の近隣に位置するため、2020年代半ばの時点では治安がかなり悪化している。2010年代前半~半ばの時期に学園都市で『何か』が起き、事が収まった後は統制が失われ、わずかな時間で荒廃。この時期には全盛期が嘘のように、スラム化していた。自治権を盾に、非人道的研究を組織的にしていた事が世間に露見したのは、2017年の年頭だという。未来世界では、頻発する戦乱と自然災害で、学園都市在りし日の面影は消えているとのことで、おそらくは統合戦争か、一年戦争の戦禍と、それに付随して起こった地殻変動が学園都市の面影を消したのだと思われる。また、2010年代終わりから、カールスラント軍を追われ、野盗化した失業軍人らが襲撃してくることが常態となり、自衛隊は国内法規の都合で、対応が後手後手になる有様であった。警察の力では、いくら、第二次世界大戦レベルの旧式装備とはいえ、正規軍であった者らが相手では無力であり、自警団が結成された。法的にはグレーそのものだが、学園都市のすべての自治組織の消滅と、行政府の解体によるスラム化で、一挙になだれ込んでくる『能力者崩れ』への自己防衛という大義名分が自警団を根付かせた。日本政府もススキヶ原の立地と、能力者への警察の無力を鑑み、『現地の治安維持をプリキュアと自警団、ヒーローユニオンに担わせる』ことにする有様であった。そのため、プリキュアたちが変身した姿で出歩いても、法的になんら問題はなく、『公務』扱いとなる。これは一応、プリキュアの多くは日本連邦評議会直属である『Gフォース』の隊員となっている故である。のぞみが変身を維持して過ごしているのも、騒動で『現役時代の事が全世界に知れ渡ったから』という事が絡んでいる。良くも悪くも、プリキュアの存在が『アニメ』として世に知れ渡っている世界では、実際の変身者は『何かしらの形で力を行使する』事が望まれる。ことはは20年あまりの生活でそれを実感してきた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ルドルフはそれを直接的に知ることになった。いくら、キュアハートが古い世代(第二世代であり、2013年頃のプリキュアであるので、2025年からは12年前ほどのプリキュアとなる)のプリキュアと言っても、現役時代には『第二世代最強』と謳われ、番組終了後の人気も高いため、ドリームほどではないが、子どもに声をかけられることも多い。子どもの親には『Gフォースの任務です』と言って説明し、ころばし屋へ注意喚起をする。老人などがころんだら、寝たきりになってしまう危険があるからだ――

 

 

(しかし、12年前のプリキュアであるにも関わらず、子供に喜ばれるとはな。これも彼女たちの力か…)

 

と、独白しつつ、知らされた『世界線独自のパワーアップ』を頭の中で復習するルドルフ。

 

(黒江氏によれば、聖闘士の技を使えるようになっているという。私達が『領域』を使う要領で気を研ぎ澄ませば……)

 

と、キュアハートが小宇宙を覚醒させている事に触れるルドルフ。ウマ娘の『領域』は前世が歴史に名を刻むレベルの競走馬であり、なおかつ、その更にトップクラス……『一時代を築いた者』に許された『部分的な』第七感の発現。聖闘士のセブンセンシズと同質かつ、魂の欲望をキーに『肉体の全盛期』でしか奮えないもの。故に、ピークアウトの速度が人間より遥かに早いウマ娘には、『一時の奇跡』としか感じられない。これが地球連邦の医療技術と生化学で以て導き出した仮説である。

 

(『仮説』はある意味、私達が『競走馬が心残りを晴らす願いを叶えるために生まれた』存在である証明かもしれん。オグリはそれを悟った故に、歴史を多少なりとも変えた…。なら、私は私なりのやり方で、未来を切り開こう。前世のロールプレイではない…な)

 

ルドルフはウマ娘という存在の根幹に気がつき、それを踏まえ、今後は競走馬としての前世に縛られぬ道を征くことをこの時に決意したのである。

 

(ブライアンの前途に待ち受けるのが『輝かしい未来』ではなく、『悲劇』で終わり、最悪の場合、若いうちに、失意のうちに亡くなってしまう事に、オグリは気づいたんだろう。それで、自分がブライアンの『師』になることで、ブライアンに絡みつく『因果』を断ち切らんとした……それにひきかえ……)

 

歴史を変えるのを承知の上で、オグリはブライアンを悲劇から救おうとした。それに比べ、ルドルフはテイオーに(結果的に)前世のロールプレイをさせただけだった。その負い目への『償い』がテイオーを生徒会長の後継ぎに添えること。それだけでは、『親としての』責任は果たしていない。ウマ娘としては他人だが、前世では自分の『後継ぎ』だった。『親であった』者として、何ができるか。それを模索している最中である。

 

(……それで、モヤモヤする気持ちを紛らわすために、この世界にいるのかもしれんな……)

 

なんだかんだで、ルドルフはテイオーが可愛いのだ。それ故に、自己の努力を超える『運命的なレベル』で決定づけられていた『テイオーの歩む道』に気づいてしまい、オグリの時代から抱え込んでいた罪悪感と無力感が爆発しかけていたのである。皮肉な事に、それが相田マナの体が予想以上に、ルドルフの魂に馴染む原動力となっていたのだ。

 

「武器は一応、持って来ているが、もっと穏やかなもので済ませたかったな」

 

と、若干の不満を口にする。と、そこで。

 

「!」

 

空気の僅かな『乱れ』を感知し、ルドルフはとっさに飛び退く。すると。

 

「お出ましのようだな……ころばし屋!」

 

ルドルフを狙った張本人。それは『この世界線』では『スネ夫の子孫の一人がノビスケの代の頃の立場に不満を抱き、未来デパートのコンペを大義名分に作った』復讐用の道具。通常のころばし屋と違い、思考コンピュータも通常の個体より残虐非道である。この個体はころばし屋Zの姉妹個体であるようで、色がやたらとデラックスである。

 

「骨川氏の子孫はいくつ、厄介なものを作っていたんだ!?」

 

そのころばし屋はなんと、図体の小ささからは想像もつかないほどの強力な衝撃波をピストルから乱射。ギャグ補正の強いススキヶ原でなければ、本気で死者が出ていそうなパワーだった。

 

「この街に、ギャグ補正がかかっているのが救いだな……!」

 

ルドルフは衝撃波を避けると、試しに20式小銃を撃ってみるが、サイズ相応に身軽であるころばし屋は見事に避ける。

 

「想定内だ!ならば……!」

 

プリキュアの技は浄化に重きが置かれているので、純粋な破壊力はむしろ低い部類である。破壊力で格段に優れるのは……。

 

『アトミックサンダーボルト!!』

 

聖闘士の闘技である。相田マナはこの時期までに身につけている。方向性は違えど、元々、身体と精神を鍛え上げていたルドルフは問題なく放つことができた。比較的に敷居が低い『アトミックサンダーボルト』なのは、ルドルフ自身がオーソドックスな走りで王道を極めた身故であろう。

 

ころばし屋もこれにはたまらずに回避に専念するが、光速の攻撃を全て避けられはせず、数発が当たり、態勢を崩す。普通の鉄を粉々にするアトミックサンダーボルトで、体の表面に若干の傷が入る程度なのは、未来デパートの持つ金属精錬技術の高さを窺わせる。

 

「黄金聖闘士の技に耐えるだと?硬化テクタイト板でも使っているのか!?」

 

23世紀の時代、宇宙戦艦ヤマトなどのバイタルパートの装甲材に使われているもの。その技術自体は統合戦争前に完成していたと聞いているので、ドラえもんの時代に使われていても、なんら不思議ではない。

 

「チィ、厄介なものを!」

 

スネ夫の子孫が無駄に豪華な技術で、ころばし屋を改造していた事に悪態をつきつつ、ルドルフ(体はキュアハート)は次なる攻撃に入る。

 

「スターダストレボリューション!!」

 

凝縮した小宇宙を無数の光弾として放つ牡羊座の技である。効果範囲を絞れるのもあり、黒江達も多用している闘技である。プリキュアたちも『シュプリーム』への敗北の記憶が宿ってからは、『神に抗うための闘技』であるそれらの会得に血道を上げるようになっている。

 

(皮肉なものだ。戦うことで、現役時代の鋭い感覚が戻ってくるなど……。彼女も考えていたという案の承認の連絡次第だが……)

 

実際に、ルドルフは次第に戻ってきている『現役時代のピリピリした感覚』を活かすには、アオハル杯に続くイベントレースを構想していた。偶然にも、雑誌記者の乙名史悦子という人物が似たような思いを抱いていた事から、ルドルフはシンボリ家の力でそれを実現しようとし、その彼女を自身の祖母であり、現当主である『スピードシンボリ』に引き合わせてもいた。ルドルフはアオハル杯の最中も、次期当主になるための帝王学の履修などをしている。シリウスは分家筋であるので、比較的に気楽な立場である(それがルドルフへの屈折した感情に繋がっているのだが)。

 

(それは後で考える。今は……)

 

小さな巨人。そう考えるにふさわしい『ころばし屋』。地球連邦軍も怪我人を続出させながら、数体の破壞に成功したとのことだが、動員されたのは、かつて『エコーズ』と呼ばれ、汚れ仕事専門とされた特殊部隊の後身で、23世紀では、ここ最近に功績を挙げている空間騎兵に押され、以前よりも日陰者の扱いに甘んじている部署であるという。

 

「な……周囲の被害も意に介さぬつもりか!?」

 

ころばし屋が両腕に双連砲身のガトリング砲を持ち、それを撃ってきた。まるで、未来世界でプリベンターが運用していると聞く『ガンダムヘビーアームズ改』だ。ガトリング砲はサイズに反比例しての高威力であり、射線上にあった『コンクリートブロック』が穴凹だらけにされ、そこから貫通した衝撃波がかまいたちのように空気を切り裂く。

 

「……!」

 

流石にこれは対応しきれず、かまいたち現象で頬の皮を切られるルドルフ(キュアハート)。プリキュアは並大抵の攻撃では外見上、傷を負わない。だが、あまりに高エネルギーであったり、あまりに強い衝撃波による切り傷までは防ぎようがない。キュアハートは実際に『変身した状態で負傷した』経験のあるプリキュアであるが、ある意味で『プリキュアの基礎防御スペックの限界』を示す好例である。

 

「こちらの防御を超えるかまいたちを起こすとは……味な真似をしてくれる」

 

「ならば!!」

 

『咆極煉皇!!』

 

これは鳳翼天翔の光速バージョンであり、炎属性を強化し、攻撃の速度を光速レベルに強化したもの。紅蓮の炎がころばし屋を包み込む。だが。外皮を脱皮することで、無傷のボディを現す。ますます以て、どういう機能だとツッコミたくなる。

 

「なにぃ!?未来デパートはどういう技術を持っておったんだ!?」

 

と、さしものルドルフも驚愕する。焼かれる一瞬で外皮を脱皮で捨てたのだろうが、統合戦争後は残っていない技術であろう(未来デパートの技術管理部門の本部がドラえもんズとバダンの闘いで失われたためだろう)。

 

「ここが治安の悪化で無人になった地区で幸いしたな……スズカ、~~地区跡に一般人を近づけさせないよう、町内会に連絡を入れろ。それと、地球連邦軍にエコーズの出動を要請しておくように。足止めをしておく」

 

「わかりました」

 

インカムで指示を飛ばし、ころばし屋と対峙するルドルフ。キュアハートの肉体を借りているため、公には彼女の功績になる。自治会(町内会)はこの事は承知済みであり、後日、ルドルフの個人口座に礼金が振り込まれる事になっている。これは当初は顔出しで討伐に加わるつもりであったが、協会が不祥事の防止やコンプライアンス強化のための通達を出したことで、方針をどうしても変えなくてはならなくなった事に困ったウマ娘らに、のび太が提案したウルトラCで、入れ替わりロープを使って、手空きのプリキュアと意識を入れ替えるというもの。魂と肉体の相性が良いか?などの『ポテンシャルを活かす』ための条件があるので、ある程度は属性の近めの者が選ばれるとのこと。ルドルフは属性が近く、歴代でも身体能力が高めのキュアハートと相性が良かったため、彼女と入れ替わる機会が多いのである。

 

「昔は汚れ仕事専門と揶揄されていたというが……宇宙戦争の時代には、マン・ハンティングなどという世迷い言をやってられなくなり、多くが路頭に迷いかけたというな。結局、プリベンターの突出を嫌った保守派が存続させたが、近年は空間騎兵に押されてるという……考えようによっては、哀れな連中だ」

 

 

ECOAS。地球連邦軍の特殊部隊であったが、マン・ハンティングなどに用いられていた過去から、軍縮時代には批判に晒されたが、白色彗星帝国戦役の風雲急が告げられたことで解体を免れたという経緯を持つ。プリベンターに司法警察権などが移行させられた後は『空間騎兵』に統合が検討されるなど、ティターンズ時代の負の遺産と見なされている。また、ハト派からは捨て駒扱いされてはいるが、練度は確かである関係で、プリベンターの過度な有人兵器至上主義を人的資源の温存の観点で嫌う保守派によって、部隊が維持されているとのこと。

 

「ライトニングファング!!」

 

ルドルフは事前に聖闘士の情報を閲覧していた関係で、自身の領域に近い属性を持つ『獅子座』と『射手座』の闘技を主に用いる。相手が『ひみつ道具』というのも妙な話だが、その技に耐える耐久力がある時点で『何かオカシイ』と言わざるをえない。地球連邦軍もエコーズを動員してやっと破壊しているあたり、一般部隊の手には負えなかったのだろう。

 

「これで生きてるだと……。未来デパートを怒鳴り散らしたい気分だ……」

 

普段は超然たる態度のルドルフだが、さすがにころばし屋のタフネスぶりにうんざりしたのか、思わず愚痴る。そして、ころばし屋はキュアハート(ルドルフ)の足元を最大出力で狙う。とっさに反応した彼女は跳躍で逃れる。ドキドキプリキュアは元々、パワーアップモードとして、エンジェルモードを持つが、それでは能力的に中途半端なので、パルテノンモードへと瞬時に変身する。ルドルフが入れ替わっている時には、ルドルフの持っている『攻撃性』が表層に表れるためか、勝負服である『ロード・オブ・エンペラー』を纏っていた時のように、緑色の雷が散る。

 

「さて……皇帝と呼ばれた私を無礼るなよ!!」

 

オグリの引退後、オグリを呼び寄せておいて、オグリに『中央を無礼るなよ』と言った事が外部に漏れ、激昂した姉のスイートファルコンにしこたま殴られ、血反吐を吐いて、のたうち回る醜態をさらした事件が起こったことがある(ルドルフの姉妹は史実通りに気性がすこぶる荒いために起こった事件)。その八つ当たりを止めたのが、祖母のスピードシンボリであった。それ以来、ルドルフは祖母に頭が上がらないという。その事件以降、そういうのは避けていたため、久方ぶりに口にした事になる。

 

「ここで破壞してくれる!」

 

ルドルフはそう言って、ある技の態勢に入る。それは……。

 

『無限破砕(インフィニティ・ブレイク)!!』

 

射手座の黄金聖闘士の継承技の一つ『無限破砕』。アイオロスの先代か先々代あたりで途絶えた(継承者がその代の聖戦で戦死し、後代に引き継がれなかったと思われる)とされていたが、冥界に出入りできる黒江が聞き取りで再現・復活させ、マナに覚えさせた闘技。ルドルフはそれを放ったのである。無数の光の矢が螺旋状に放たれ、ころばし屋を貫く。アイオロスは『アトミックサンダーボルト』などが技であったようなので、この技を覚えるにしても、死後であろうと、元の教皇であった『シオン』の談。さすがのころばし屋もこれまでは防げず……。

 

「やった……!」

 

と、安堵の表情になるが……。

 

 

残骸がどこかからの衝撃波で破壞され、ルドルフの前に姿を現す。それこそ……

 

『フン……、ころばし屋の面汚しめが…』

 

と、音声機能を持つ個体が現れる。機械的なものだが、それが却って冷たい何かを感じさせる。姿を見せたもう一体こそ……。

 

「よくやった……そう褒めておこうか、キュアハート。いや、シンボリルドルフ」

 

「貴様、なぜそれを!」

 

「この俺は他のころばし屋とはデキが違うのでな。フハハ……」

 

と、妙に人間臭い会話をこなす、その個体。

 

「安心しろ、それは漏らさん。俺は楽しみたいだけよ。」

 

と、大物だか、小物だかわからないが、ともかくもラスボス臭プンプンのその個体。

 

「せっかく造られた以上はな」

 

自我があることを匂わせつつ、そのころばし屋はルドルフらが追う個体であることを誇示する。

 

「フフフ。今日のところは宣戦布告だよ、ルドルフ君。かつて、競走馬として無敵を誇り、かのシンザンの血統を時代遅れにした実力のほど、万全の状態で見せてもたいたいのでね……」

 

「待て、キサマの名は……」

 

「Z。ころばし屋Z……いずれ、また相見える日を楽しみにしているよ」

 

律儀にZの文字をピストルの連射で彫り、自身の存在を誇示するころばし屋Z。ころばし屋のプロとは言い難いが、怪傑ゾロでも気取っているらしき口ぶりであった。ルドルフの戦績を知っており、ミホシンザンを叩きのめし、シンザンの血統を完全に過去の遺物に変えた事を口にし、ルドルフを挑発してみせるなど、人間臭さを見せつけた。

 

「……スズカ、今の会話はモニターしていたか?」

 

「ええ。会長……『彼』はなぜ、ミホシンザンさんの事を」

 

「私たちの前世は子どもでも容易に調べられるものだからな……クソッ、シンザン会長に申し訳ないと、今でも思っとるというのに」

 

シンザンの後継者で、シリウスの同期であったミホシンザン。シンザンの跡継ぎとして、二冠を達成した俊英であったが、ルドルフとは明確に実力差があった。故に、早々に現役を退き、シンザンの跡継ぎとして、理事になっているという。引導を渡してしまった自分が脚部不安で現役を(ミホシンザンへの勝利から、さほど時の経たないうちに)退くしかなくなったことは、シンザン一族への負い目である。そう、サイレンススズカへ語る。

 

「会長……まさか、前世の記憶が戻ったせいで」

 

「色々な感情が湧き出てきているんだ。ウマ娘として、現役から離れて、久しいというのに、だ…。……これは事情を知らぬ者には話せんものだ。たとえ、自分の身内であろうとも……奴め、それを分かっていて、煽りおった……この『皇帝』をだ!……裁きを与えねばならん……!」

 

ルドルフは自身に競走馬時代の記憶だけでなく、最盛期に日本最強であったことの誇りも蘇ったようで、後輩のオルフェーヴルを連想させるような口調になっていた。やはり、王者であった者は少なからず似ているのだろう。

 

「あ、あの、会長?」

 

「らしくないが、そうでも言わんと、虫が収まらんのだ」

 

と、声にドスが効いていた故、スズカを怖がらせたルドルフ。他人の体を借りていても、挑発に乗った時は皇帝と呼ばれた所以を垣間見せるのである。

 

「オルフェーヴルの若造のような真似はしたくないが、久しぶりに昂ってしまった」

 

オルフェーヴルが不遜な口ぶりから、周囲の顰蹙を買っている事が示唆される。特に年上相手でも。だが、アーモンドアイの前では、彼女をしても及ばない(スタミナでは勝るものの、トップスピードは劣る)という。

 

「アーモンドアイが現れたら、あの若造の根性を叩き直してくれるよう、頼むか…。府中の直線は歴代最速級だからな」

 

オルフェーヴルは凱旋門賞で二位に食い込める実力を誇るが、『府中』(東京競馬場)の直線でのタイムはアーモンドアイには劣る事がわかっている。ジェンティルドンナとは互角なので、明確に格上なのが事前にわかっているアーモンドアイの登場を待っているらしい。

 

「会長?」

 

「私、シービー、ブライアンの三人はスピードで及ばんところがあるからな…。それは歴然たる事実だ」

 

本来、世代も路線も全く違うが、アーモンドアイにかなり期待しているらしいルドルフ。オルフェーヴルは先達の三冠ウマ娘へも敬意を払うことをしないため、それにかなり立腹しているらしいが、自身のスピードでは及ばないと考えている(それでも、ルドルフの世代では最速だが…)のがわかる。

 

「本来は自分でやりたいが、ヤツは速度では私より速いからな……」

 

サンデーサイレンス系の速度はそれ以前の馬を凌駕し、それと血の相性の良い者だけが、後世に生き残った。ナリタタイシン、シンボリルドルフなどの血統はサンデーサイレンス系に駆逐され、前者は孫の代で絶え、ルドルフは細々と血統が続いてるにすぎない。どこか悔しそうなのは、自分の子孫がサンデーサイレンス系の隆盛の影で苦難の道を歩んだ事を思い出したからだろう。そのサンデーサイレンス系の申し子であるスズカとしては、なんともいえない(スズカ自身も、前世で非業の最期を遂げているため)。

 

「単純なスピードは私が上だと思いますが、私はあいにく、スタミナがないので」

 

「君は最速と引き換えに、スタミナがないからな」

 

スズカは単純な速度では、ブライアン、テイオー、ルドルフ、シービー。そのいずれも凌駕する。だが、持続時間の短さ(距離適性)の都合で、三冠ウマ娘になるのが確実視されているオルフェーヴルには及ばない。ディープインパクトも速度の高さは『スズカが上だよ』と答えている。

 

「さて、とりあえずは撃退した。街には引き続き、警戒を呼びかけるよう。エコーズは要請を了承したか?」

 

「一両日中に大統領命令が発しられるだろうと、ギアナ高地の参謀本部から返事が」

 

「ご苦労(怪傑ゾロでも気取っているのか?奴め……古典的だが、味な真似を)」

 

 

 

 

 

――こうして、ころばし屋騒動も最終段階を迎えつつあった。ころばし屋Zは自我を持つ。それが正式に確認され、後日、プリキュア・ウマ娘・ススキヶ原自警団・地球連邦軍の四者による作戦会議が開かれることとなる――

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。