――ダイ・アナザー・デイの戦車戦は(黒江らの活躍で制空権は握っていたが)数的不利を質で覆すしか方策はなかった。対戦車地雷は殆ど形式的にしか生産されておらず、各国で規格統一もされていなかったので、配置は不可能。さらに、日本の横槍で混乱しているうちに、ロマーニャ、ヒスパニアの陸軍が瞬く間に組織的戦闘能力を喪失するという事態が発生。ロマーニャに至っては、空軍も海軍も無力化されてしまう有様。日本政府は連合軍の抗議に右往左往するばかり。業を煮やした彼らはアメリカ合衆国を頼った。アメリカ合衆国はここぞとばかりに介入を承諾。日本政府もこれに追従せざるをえなかった。ヒスパニア、ロマーニャの両国からの賠償請求を恐れたためで、時の総理大臣の決断であった。国民は大規模介入に反対したが、『自分たちのせいで、二カ国が存亡の危機にある』ことは責任を取らざるをえないと腹を括った。それがGフォース結成の裏事情であった。カールスラントがドイツの強引な軍縮の指導でパニックに陥っていたため、ドイツを含めて、『日本に火中の栗を拾わせる』つもりであった国は多かったが、ティターンズの非道ぶりが正式に確認されたため、日米英は結果的に連合軍に与した。カールスラントは結果的に、ダイ・アナザー・デイという千載一遇の兵器生産の好機を奪われ、強引なリストラに遭い、国家自体が暗黒時代に突入してしまう。だが、陸上兵器そのものは活躍したのは事実であった――
――ティーガーは『ティーガーⅠ』がやっと前線に回される状況であったが、ドイツの意向で前線配備分が破棄扱いにされた。日本連邦はその数百~千両単位の車両を引き取り、ダイ・アナザー・デイに直ちに投入した。M4中戦車、四式や五式中戦車は既に性能面の優位がないからで、ブリタニアのセンチュリオンも主砲のターレットリングを予定より大型へ変更せざるをえなかった。カールスラントをリストラされた戦車兵は扶桑軍の戦車師団に拾われ、破棄された機材の再利用名目で、そのまま戦線に加わった。日本はこの期に及んでも、74式戦車の実物の供与を渋った。足回りの摩耗、大戦型の運動戦に不向きなのを理由にしていた。だが、日本も結局、アメリカがM60、イギリスがチーフテンのライセンスを供与することを表明したのに追従する形で供与を決定した。このダイ・アナザー・デイを期に、カールスラントやスオムス優位の軍事バランスは完全に崩れ、日本連邦の一強状態へ移り変わる。スオムスは(熟練者のほとんどが1946年までに『あがり』を迎えるのもあって)軍事力の減退は避けられず、カールスラントも『世代交代期』の訪れで軍事力の減退が急激に起きた。その兼ね合いで、異能者の多い日本連邦が矢面に立たされた。多くの国で魔女頼りの軍隊になっていた故、通常兵器の攻勢に対抗できる軍事力を保っていた列強は扶桑だけであった。それも、日本の扶桑の軍事力解体の試みの挫折を決定づけた。戦艦にしても、モンタナが量産された世界線であるため、当然、扶桑も大和型は多く竣工しているし、その改良型も現れている。日本は(信濃が空母である前提で)大鳳の増産を妨害する形となり、仕方がなく、キティホーク級相当の量産を認めた。この過程で魔女の運用は完全に強襲揚陸艦にシフト。空母は通常の航空機の運用に専念する事になった。ミッドウェイ級やエセックス級の鹵獲が至上指令となったのが『雲龍が量産されているが、紫電改以上の新型艦上機の運用は困難である』という、実にしょうもない理由の判明であったので、扶桑海軍は以後、大型空母の製造に執念を燃やすことになる。また、大西瀧治郎は『戦時のみの使用が前提条件の急造艦を提案していたのに。なぜ十万トン級の少数建造なのだ』と不満を顕にしていたが、彼の不満は無視され、『超大型の少数製造、強襲揚陸艦を五万トン級で量産する』方針は決められる。扶桑在来の魔女閥は大西瀧治郎などが急速に政治的発言力を喪うにしたがって、一気に衰退。Y委員会閥が代わって台頭していく。ダイ・アナザー・デイで旧来の思想に凝り固まった魔女に活躍の場はなく、ゴースト無人戦闘機などに蹂躙され、駆逐されていった。それに対抗できる異能者は貴重であり、当初の分散案が否決される理由の一つとされた。64Fの『復活』は異能者の居場所づくりも真の目的も兼ねているのであった――
――未来デパートや22世紀デパートなどがどうなったのか?統合戦争の戦乱で事業停止に追い込まれ、最終的にはアナハイム・エレクトロニクスに吸収合併されたという。とはいえ、債務整理のための吸収というほうが正しいともされ、慈善事業に近いと、その当時のアナハイム・エレクトロニクスの会長の手記が発見されている。その調査をしていたのび太(青年)は64F宛に、『未来デパートの遺産の回収作業を進めさせる』と打電させた。野比財団の担当部署によれば、統合戦争まで使われていた工場施設がなぜか、23世紀のオーストラリアに出現していると報告がされ、中には無傷の状態のひみつ道具が大量に発見されたとのことだ。施設は直ちに地球連邦軍の管理下に置かれる事になったとも。ジオン残党などに破壞されぬように、ロンド・ベルに次いで強力な部隊が置かれたという。これは統合戦争前の技術はジオン公国に目の敵にされていた記録によるものであるという――
――ルドルフの帰還後――
「ご苦労だったね」
「野比氏……」
「今日は『表の仕事』から帰ってきたところでね。子孫からの報告もきている。彼によれば、未来デパートと22世紀デパートは統合戦争で事業停止に追い込まれ、その後、統合戦争が終わる時期に、アナハイム・エレクトロニクスに吸収合併されていたようだ」
「と、いうと」
「統合戦争で文明が半ば崩壊した後、法人格の整理を当時に台頭してきていたアナハイム・エレクトロニクスがやらされたようだ。経営陣も戦乱で死亡済みだったようで、債務整理をしようにも、経営陣が根こそぎ、戦乱で死んでいたのでは、政府の指示が必要だったようだ。ジオンが技術遺産を意図的に闇に葬っていたという目撃情報もある。それで、彼らは敗戦後に針の筵になったんだ」
ジオンは軍事に使えそうなもの以外の未来デパートなどの技術情報を意図的に闇に葬った疑惑がある。戦後の共和国政府は『ザビ家のせいです』としらばっくれている。とはいえ、マ・クベは技術保護をさせていたという話もあるが、ギレン派は相反する動きをしていたので、真意は不明だと、クワトロ・バジーナも述べていた。
「ころばし屋の改造型は統合戦争の前、スネ夫の四代後の子孫の一人が作っていたものと、正式に確認できた。私の子孫のノビタダが、その代のスネ夫の子孫に問い合わせてくれた」
のび太はプリキュア5の世界の争乱が落ち着いた後はころばし屋騒動の解決に動いており、子孫らを動かし、事の発端を調べていたのである。
「今日から、表向きの仕事は休暇を取って、君たちといっしょに解決するつもりだ。せがれの代の不満が発端のようでね……」
「ノビスケ君の?」
「ああ。あいつは私と違い、妻の気性が受け継がれていて、ガキ大将気質なんだが……スネ夫の子供のスネ太郎、スネ樹の兄弟は子分扱いだ。それへの不満をノートに書いていたらしい。それをその孫の一人が発見した…。どちらかの子孫かはまだわからない」
と、まだ不明なことも多いと前置きするのび太。なんとも因果だが、当人に不満を言えないあたり、スネ夫の家系の気弱さと面従腹背ぶりはいつの時代も同じだということだろう。
「せがれの不始末だから、当人にやらせたいが、本人はまだ子供だ。もう少し、分別のつく年齢になったら、本人に知らせる。ガキ大将が許される時代でもなくなってきてるのも事実だからね」
のび太は『今回の事はノビスケに詳細を知らせるのは『もう少し大きくなってから』と述べる。実際、21世紀の時勢では『ガキ大将』属性は『昭和の遺物』扱いだが、老年層からは『社会での生き方を学ぶにあたって、必要である』という意見が大勢を占める。ススキヶ原はそういう空気が色濃く残る地なので、古くからの住民は『子どものわんぱくさ』に寛容だが、新しい住民からは問題児扱いされている。それも時代の変化なのだ。
「大変ですね」
「君たちも大人になれば、そのうちわかるよ、誰かを育てる苦労はね。私も、親父やおふくろの気持ちがやっと分かるようになってきたところさ」
のび太は共働きが当たり前の時代に『親』になったため、街の新住人の増加による流れの変化で『ガキ大将』が過去の遺物になりつつある空気を感じている。街の『ガキ大将』はおそらく、ノビスケが最後になるだろうと考えている(だが、実際にノビスケがもう少し大きくなる時代、街が『昭和ノスタルジー』を売りにするようになり、結局はガキ大将は容認されていくのである)。
「ころばし屋Zの掃討にエコーズも動員される事になる。連中はハト派に疎んじられているから、仕事さえ与えれば、黙々とこなしてくれる」
「例の特殊部隊ですか?」
「ああ。転ばすだけとはいえ、この街に古くからいる者はともかく、新しい住民、あとは近ごろの子供には危険だ。近ごろは公園の遊具も減っただろ?ジャングルジムから落っこちただけで骨折なんて話もザラだ。私の時代は、そんなのはしょっちゅうだったんだがね」
のび太が子供であった1990年代の頃は公園の遊具から転がり落ちるなどは日常茶飯事であり、ジャングルジムから落っこちることも『普通のこと』であった。そのため、親も気にしなかった。だが、2020年代にもなると、昭和末期に子供であったか、校内暴力の時代に中高生くらいの年代であった者が親になっていたり、老年層が高度経済成長期の頃に若者であった世代へ移り変わっているためか、子供の遊びや声に不寛容になり、『公園でゲームをしている』こともザラになっている。そのため、ちょっとしたことで骨折してしまうことが増えている。
「近ごろは公園でゲームもザラなことですからね。私たちの頃はまだ」
「近ごろの老年層は高度経済成長期に好き勝手してきた世代が主流だからねぇ。あの世代は他人を蹴落とすことをずっとしてきたからか、クレーマーも多くてね……戦争の生き残り世代は我慢強かったんだが」
のび太は表の仕事でのクレーム処理にうんざりしているようであった。仕方がないが、高度経済成長期に若かった世代は戦中派世代のように我慢を覚えていない者も多く、ふっかけてくるクレームも理不尽であったりする。のび太は客商売ではないが、それでもうんざりさせられるくらいに、クレームが舞い込んできているようである。このクレーム体質は23世紀の極端なハト派に間接的に引き継がれてしまい、地球連邦軍も手を焼いているのである(それがハト派の信頼低下の要因である)。
「エコーズには、Gフォースに偽装してもらって、作戦が決まり次第、奴が潜伏している地区の封鎖と、足止めを担当してもらう。組織的繋がりがないわけでもないからね」
エコーズの源流の一つは自衛隊にあるとされているという。とはいえ、汚れ仕事を專門にしてきた都合、あまり出自は公にされていないが、Gフォースの対人部署が源流の一つであるとのこと。最近は政治的にティターンズとのグリプス戦役時の繋がりが疑われ、苦境に追い込まれていたとのことなので、こうした『野比財団の私兵』じみた事に協力してくれるという。
「あの、そのレポートは?」
「ああ、のぞみちゃんに頼まれていた、君たち(ウマ娘)についての調査の報告だよ。君たちには残酷だが、前世が名有りの競走馬の場合、魂に刻まれた『歴史的役目』が果たされた瞬間、肉体的ピークが終わってしまう。生物学の学問を超えた領域で起こる故、個人ではどうにもならない。ブライアンちゃんはそれを知ったから、ゲッター線の力を欲したのさ。もし、あのままであれば、あの子は悲劇的な道を辿って、若死にする可能性も大きかった」
「……!」
さしものルドルフも、その事実に愕然としてしまう。もし、何も手を加えない道を辿っていけば、ブライアンは選手生命を何かしらの形で理不尽に断たれ、そのショックで大病となり、最後には若死にしてしまう可能性が極めて大きかった。そのことが正式に肯定されてしまったのだから。
「だが、あの子は前世の記憶で、それに抗う道を選び、私たちにすがってきた。のぞみちゃんもそれを鑑みて、あの子の願いを聞き入れた。多少の打算があったが」
「打算?」
「あの子は前世で、学生生活の後半を心から楽しめなかったという後悔を持っていた。対外的に、君らは中高生の扱いだろう?それだよ。まぁ、そこはお愛嬌だと思ってほしいとのことだ」
「なるほど」
「報告を受けたが、楽しんでいるようだしね」
のぞみは運動音痴として生きてきた時間が長いので、『偶には、素で運動神経抜群って言われてみたい』とぼやいていた。それがブライアンと入れ替わったことで叶うことになったわけである。なんともささやかすぎるが、プリキュアとして、百戦錬磨のエース格で鳴らしている分、普段が運動音痴であったことを気にしていたわけだ。のび太が手に持っているレポートはその調査報告を兼ねた、のぞみの定期連絡でもあった。
「夢原氏の状況はどうなっているのですか?」
「順調だそうだ。二年目の大阪杯までに、女神像の摩訶不思議現象で、ナリタタイシンちゃんの能力も受け継いだようで、それで連覇を達成したそうだ。スズカちゃんが来る少し前の出来事だったようで、彼女から、映像の提供を受けたよ」
のび太がタブレットを取り出し、ルドルフにその映像を見せる。映像はとある年の大阪杯。その頃には『マヤノトップガン』、『マーベラスサンデー』もシニア級になっており、史実であれば、サクラローレルが落ち目のブライアンを蹴落とす形で王者となる時代であった。
「ん、野比氏。サクラローレルの表情……」
「報告だと、『ブライアンに人間味が出てきた』事にかなり複雑な思いを持つようでね。……こじらせてしまったようだ。…災難というべきかな?」
大阪杯のレースに臨むサクラローレルだが、ブライアンの『変貌』に不満タラタラな心情が表に出てしまっており、一見すると、気合十分なのだが、その視線はブライアン(のぞみ)に向いている。普段は人のいい性格だが、ブライアンが絡むと、どこかぶっ飛んでいるところが表面化してしまう。
「ですね…。ローレルは全盛期のブライアンの一匹狼ぶりに脳を焼かれていたと、マヤノから聞いていましたが……いざ、映像で実際に見てみると……」
――レース自体は、後方で控えていたブライアンが第四コーナーを終えた段階で皐月賞でのナリタタイシンと同様の『鬼脚』を見せ、ライスシャワーのような『鬼火』を目に宿らせつつ、瞬く間にマーベラスサンデー、マヤノトップガンを含めた大半のウマ娘を抜き去り、やや先行していたサクラローレルと競り合いになっている。走り方の細かな違い(のぞみはオグリにレクチャーを受けたので、全盛期のそれと走り方に差異がある)はあれど、全盛期に遜色ない走りを見せるブライアンがサクラローレルにグングン迫る。目に宿る『鬼火』への恐怖か、サクラローレルの表情が一瞬固まる。その一瞬が『命とり』であった――
「これは……オグリとタイシンの二人から?」
「ああ。そうらしい。それで、この年の大阪杯は大勝利。ブライアンちゃんの名声はほぼ回復した。ろうそくの燃え尽きる前の輝きという声も消え失せたそうだ。G1級のレースを連覇したからね。観客席のオグリちゃんを見てみてくれ」
「うん?そうか、ヤツもそういうポジションになってるものな……」
ブライアンの「師匠」であるため、観客席からサムズアップをしてみせるオグリ。ルドルフと違い、全面的に『良き先輩』・『師匠』であるため、ルドルフより師匠としての評判は遥かに上である。ルドルフは立場の都合で、全面的に一人のウマ娘に肩入れはできなかった。それ故にテイオーを追い詰めてしまった。その負い目が、テイオーを生徒会長の後釜に添える原動力であった。また、前世の記憶の蘇りで、テイオーに前世のロールプレイをさせていただけだと気づき、この頃になると、償いのために、テイオーをいずれ、自分の養子に迎えることを考えていた。これは史実でテイオーが種牡馬になった時期はサンデーサイレンス系が最盛期を迎えるのと重なり、種牡馬生活はパッとせずに終わったことを『思い出した』故の償いであり、『景気の悪化と、物価高騰』で資金繰りが急激に悪化しだしたテイオーの実家を援助するのとバーターの条件というのが表向きの理由だ。
「君は良き「姉」ではあったが、「師」としては失格だったから…かな?その表情」
「……かもしれません」
ルドルフはこの後、テイオーをシンボリ家の養子に迎えることを(テイオーの実家を援助するために)推進しだすことになる。テイオーの実家(旧華族の末裔らしい)は旧家だが、けして財政的余裕は大きくない。それが物価高騰などでなくなりつつあった中、ルドルフは財政援助の条件として、テイオーの養子縁組を打ち出すつもりであった。テイオーの父母も、裕福な暮らしに慣れているテイオーに、そうではない暮らしをさせるのは酷と考えており、愛娘をどこかへ養子縁組させることを検討していた。つまり、思惑が偶然にも、一致したのである。テイオーにこれが知らされたのは、家の財政悪化とセットであり、親子関係自体が切れるわけではなく、テイオーに貧しい生活はさせられない故の選択であると。ウマ娘は引退後も裕福な暮らしができるとは限らない。それはマルゼンスキー世代のG1ウマ娘たちが証明してしまっているため、テイオーの両親は愛娘を養子に出すことを決断していた。相手がシンボリ家なら、申し分ない相手である(当時、メジロ家は黄金期のウマ娘らが徐々に引退していき、確実に斜陽期に入りつつあったが、シンボリ家はまだまだという空気であった)。
「メジロ家も今後は斜陽の時代に入っていく。それはマックイーンちゃんもわかっているはずだ。故に、現役をしばらく続けるしかなくなったらしい」
「報告は受けています。今後はどうなるのでしょうか」
「史実を考えれば、メジロの時代が終わりに向かっているのは事実だろうね。史実では、血筋は残っているが、メジロの名は消えたからな。君たちの世界では、メジロ以外のウマ娘も育てるトレーニングジムの運営で食っていくしかないな」
のび太は父ののび助が競馬中継などを見ていた都合で、メジロマックイーンたちのことを競走馬としてだが、知っていた。その孫がオルフェーヴルであり、ゴールドシップであることも。マックイーンは治療の過程で、そのことを知り、前世の記憶が覚醒。メジロ家の衰退が近いうちに起こることを悟ってしまったのである。のび太はその事に極秘裏に着手するように告げ、マックイーンも当主の継承の暁には、事業転換という形を取ると述べたという。
「G1を連覇したことで、ブライアンちゃんの名誉回復は道半ばといったところだ。本来、ブライアンちゃんの落ち目はその下の世代の台頭と同時期だからね。のぞみちゃんもしばらくはそちらで生活するのが続くから、平行世界の別個体に仕事を代行してもらう事になる」
「いいんですか?」
「あの子はZEROとの融合で、人と神域のシンギュラリティポイントを超えている。平行世界の別個体であろうと、記憶と能力は共有されるわけだ。その関係で、同意は得られたよ。本来はありえないがね。その気になれば、ゲッターロボにも乗れるが、あれは同等の資質の者が三人必要だから、諦めているらしいがね」
「いいんですか?」
「プロフェッサーランドウとの戦闘が起きてる時間軸だから、多少は容認されると思うがね。ステルバーを量産するよりは。ステルボンバーのほうが量産されたし」
地球連邦軍の北米管区は独自にスーパーロボットを作ったが、どうにもしまらないと、のび太はいう。結局、戦局に適合して量産されたのが、本来は少数生産想定の『ステルボンバー』という爆撃機タイプからの可変スーパーロボットだという。
「テキサスマックはワンオフだから、他の計画でスーパーロボットを作っていたそうだが、リアルロボット寄りの特性らしくて、採用は不調でね。それでやっと採用されたのが、ステルボンバーらしい」
「北米は何を考えてるんです?スーパーロボットなら、日本の独壇場のはず」
「あれだよ、昔は世界一だったっていう自負。人型ロボットの研究は日本の科学者が始めて、それを軍事転用するアイデアを言い出したのも、ジオンの日系科学者だそうだからね。可変戦闘機もアイデア自体は日本人らしいし」
地球連邦軍の北米管区は兵器工廠がある都合、アナハイム・エレクトロニクス、VFの関連企業に頼らない軍事開発の志向があり、ステルバーやステルボンバーなどの機体はその考えで生み出されたものだ。その雛形がテキサスマックであった。のび太のいう『旧合衆国時代のナショナリズム』だけでは情熱は続かないのが実情だ。
「一つの争乱は終わりつつあるけど、別の世界で宇宙戦争が始まるから、連邦もあたふたしてる。それは艦隊の仕事だから、対人想定の部隊とかはお呼びじゃないわけ。それで、暇を囲ってる連中に声をかけれたわけだ」
エコーズは元々が対人任務を想定されていた都合、宇宙戦争にはほぼ不要となる。蘇生体を人間爆弾とするガトランティスなら尚更である。その関係もあると、のび太はいう。とはいえ、並の部隊では足止めもできないだろうと見込まれたことも、彼らの動員が決められた側面もあるが、汚れ仕事屋という立ち位置から、のび太やドラえもんにさえ、相当に軽んじられている事がわかる。
「高い給料もらってるからには、連中もユング大統領や、私の末裔に媚を売っときたいんだろうさ」
この有様である。とはいえ、練度は保証されているために仲介されたのも事実だ。のび太からはこの扱いなあたり、ダーティーな仕事で鳴らしていた故に、ティターンズとの繋がりを疑われてもおかしくはない故の哀れさが漂っている。実際には対立関係にあったのだが。
「どうだい、その体は」
「だいぶ慣れました。まさか、ヤツが聖闘士の技に耐えられる強度を持つとは」
「最初期の硬化テクタイト板を使っているそうだよ。硬化テクタイトは時期にもよるが、当時としては最高位に近いからね。23世紀の世界だと、第三世代型になったばかり。聖闘士の技にも耐えられる強度を、その時点では持つはずだが……」
硬化テクタイトは組成さえ知っていれば、空中元素固定で生成可能である。その物理的強度は超合金Z系にも匹敵しうる。たとえば、ガングニールのギアの籠手が硬化テクタイトとぶつかれば、逆に籠手を破損させるほどのものだ。
「プリキュアの固有技はバケモノの浄化目的が主だから、純然たる戦闘には使えない。聖闘士の技を私が覚えさせたのは、護身のためもあった」
プリキュア達は固有技が通じない敵と常に戦わざるを得なくなったため、まったく他の技を会得せねばならなくなった。無論、素質に個人差があるので、主に戦闘向けのプリキュアがその役目を負っている。キュアハートはその中でも親和性が高い一人であった。
「それを私が『使える』のは?」
「君が皇帝とまで謳われ、ディープインパクト以前の競走馬として、ナリタブライアンと並び評された故に、気力を極限まで研ぎ澄ませられるからだろう」
「……かつて使っていた、『領域』の名残りでしょうね、それは」
ウマ娘は一流の中の一流のみが得られるという境地が存在する。会得者であろうと、ピークアウトすれば手元から失われるため、実在が疑わしいとさえ言われる。だが、奇跡的にその感覚が戻る事があり、オグリは最後の有馬記念でそれを起こし、メジロライアンの猛追を躱した。ブライアンが勝てなくなった理由の一つに『オグリの時代のように、領域会得者が希少ではなくなり、アドバンテージがなくなった状態では、サンデーサイレンス系やブライアンズタイム系、トニービン系などが闊歩する時代を生き残れない』。その残酷な事実に気づいてしまったブライアンは、異世界の超技術にすがったわけだ。ルドルフはこの時、完全にその理由に気づいたわけだ。同時に、現役時代の名残りで、別人の異能を支障なく発動させられる集中力が手元に残っていることに気づき、複雑な心境となるのだった。