ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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今回は背景の補完になります。


第百八十八話「大人のぞみの構想する二重生活とは?」

――扶桑で同位体が鼻つまみ者にされた者も多かった戦前の指導層。幣原喜重郎もその一人。史実通りに平和論者であったが、自衛隊を持つしかなかった戦後日本に愕然とし、失意の晩年を送る事になるなど、彼らにはショックなことも多かった。また、21世紀の世界が二度の大戦を経ても、欧米の大国の意向で世界が動く事に失望する者も現れた。それが大衆に伝播したことで、自由リベリオンへの差別意識に繋がってしまうなど、完全にシッチャカメッチャカであった。扶桑軍隊は欧州軍隊の相次ぐ全滅と衰退で否応なしに、矢面に立たされたが、日本からは冷遇される日々が続いた。だが、日本も疫病と災害続きで、扶桑軍隊を無碍に扱えなくなった。『現状維持は認めてやるから、質で量を補え!』という方針が政治的理由で定められると、兵器の更新が急速に進んだ。戦艦は近代化改修が高度になされている事が判明した事から、運用継続を日本も容認した。ダイ・アナザー・デイで、アイオワどころか、それより遥かに重装甲のモンタナが量産されていた事が周目に示されたからである。扶桑は元来、大和型を増産する腹づもりはなかったが、モンタナの颯爽たるデビューで世論が沸騰したことに困惑。雲龍型航空母艦では新型艦上機が運用困難だという有様もあって、紀伊型戦艦は戦艦として『時代遅れ』の烙印を押され、大和型を第一線で運用せねばならなかった。その関係で、信濃と甲斐(111号艦)は戦艦のままで完成した。更に、M動乱で大和型をも圧倒するヒンデンブルクが現れたことで、超大和型が必要となり、計画が再開されるという混乱も挟み、扶桑は連合軍で唯一の大規模な戦艦部隊を有する国となっていた――

 

 

 

 

 

――のび太たちがころばし屋との戦闘を覚悟する頃、日本の政界では、プリキュアの実在などにより、扶桑占領論に完全なとどめが刺された。それを意図して、ダイ・アナザー・デイでの壮絶な戦闘が開示されたからである。日本は自衛隊と警察を全て合わせても、せいぜい数十万。扶桑は常備兵力だけで、最盛期の大日本帝国の総兵力以上。しかも、年代の割に、史実より遥かに近代化された兵器を持つ。更に、強大な『能力者』。既に学園都市が解体され、往年のような強力な異能持ちが国内にいなくなっていた日本にとって、リスクが高すぎる(自衛隊の全滅もありえる上、戦艦大和と武蔵による東京への艦砲射撃の危険もある)からである。更に、以前より准戦時状態である故の兵の士気の高さなど、頼みの近代兵器にアドバンテージがあまりないことの判明も、扶桑占領論には大ダメージであった。また、扶桑に華族の解体などの変革を『自分たちはそれで上手くいったんだ』と強要することは、日本で生き残っている、旧華族の面々の反発を食らう。既に往時の地位を失って久しく、身分解体時の家の数十%は既に断絶済みであるとはいえ、元の上級武家や上級の公家は往時ほどでなくとも、それなりの階級に留まっているケースが多い。近衛家なり、前田家なり…。更に、陸自の兵力数では、扶桑の方面軍との一回の会戦で全滅しかねない。日露戦争や二次大戦で嫌と言うほど見せつけられてきた『戦争の原則』である。更に、『超文明』の援助で、艦艇の装甲板はただの鉄ではなく、21世紀初頭の時点では未知の組成の金属(硬化テクタイトも、超合金Zも、21世紀の時点で存在しないので)による多重空間装甲。(21世紀の兵器では)どうあがいても、自衛隊の兵器では、傷すらつけられない。その事実が彼ら占領論者にトドメを刺したのである――

 

 

 

 

 

――大和型はM動乱を期に、近代化改修が進められた。だが、21世紀基準のシステムでは、M粒子下では意味がないため、それ以降に再構築された宇宙艦艇用のものが流用された。主砲、電子装備、対空装備その他もヤマト以降の宇宙艦艇の備品に換装され、砲弾もヤマト型のものが提供された。その事により、攻防力は史実の数十倍となったが、ヒンデンブルク相手では心もとないとされ、超大和型が開発された。こちらに流用された部品はアンドロメダ級やそれ以降の戦艦のものである。この質の強化により、他国の既存戦艦は『時代遅れ』となった。また、他国の艦艇にミサイル兵装への対処能力がないことから、連合海軍の有名無実化が進んでしまうという弊害も生じた。仕方がないが、魔女の世界では、史実でとうに実用化されていたはずの近接信管でさえも、構想段階に留まっていたのだから、日本の懸念は杞憂であったが、日本が押し通した結果、他国が兵力融通を控えるという本末転倒の有様となった。他国が史実の45年レベルに到達するのは先のこととされた中、史実の兵器発達速度を前提に、軍備を更新する日本連邦は異常であった。魔女への迫害すら表面化した時代、日本連邦は義務として、魔女を養わなくてはならなくなった。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その関係上、魔女の部隊の編成は外国出身義勇兵らの受け皿に流用された。生え抜きの新規入隊の落ち込みもあり、多くは外国出身者の受け皿に使われた。これは新規入隊の数が大きく減った上、信仰の減衰により、魔女の質が(全盛期より)見る影もないほど低下したための措置で、この状況が緩和に向かうのは、1960年代であろうと見積もられており、魔女の間の対立は結局、そこから進化した『異能者』たちと、その他の魔女らの精神的分断を招いたと、後世の人々に断罪されることになる。魔女から進化した存在ということは、運が良ければ、自分もその恩恵に預かれるということを意味する。だが、多くの魔女は自分らの既得権益を侵されることを恐れ、迫害した。ミーナの行為はそれを助長したとして、断罪された。バルクホルンらは最後の友情として、名誉回復に長い時間をかけることとなり、擁護するための材料を数十年間に渡って、あれこれとかき集める事になった――

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイの終了直後――

 

「バルクホルン、どうするつもりだ?マスコミに派手にしょっぴかれた以上、ヤツのミーナとしての活動は数十年は無理になると思うが」

 

「数十年ほど待てばいいのなら、楽なものです。今や、私達に『時間』はいくらでもある。数十年程度は瞬きのような時間でありましょう?」

 

「それはそうだが、気の長い話だなぁ」

 

「その間に、擁護するための材料を集めておきます。グンドュラがどうせ、祭り上げられるでしょうから、ヤツの権力でどうにかします」

 

「まぁ、ヤツの残っている『悪事』を表沙汰にしないことをエサにしとけ。連合軍の物資をかなり横領して、部隊を回していた事が完全にバレれば、(いくら戦時でも)軍法会議で処刑もんだ」

 

「わかっています」

 

御坂美琴としての人格の覚醒後はやらなくなったが、グンドュラ・ラルとして、部隊運営のために、表沙汰にできない悪事を働いていたのは事実であるので、この頃から、バルクホルンとエーリカはその尻拭いをしていた。後に、軍隊自体の統治が有耶無耶になったおかげで、多くは自然と闇に葬られる。だが、物資横領自体は罪であるので、その証拠隠滅を手伝う代わりに、自分達に権力を付与するための権威づけをさせたわけだ。黒江の口添えもあり、グンドュラ・ラルはバルクホルンとエーリカの出した交換条件を承諾。ミーナの数十年がかりの名誉回復計画に加担した。太平洋戦争の最中もライクワークとして続けられており、まほの発見した『手記』はその第一歩であった。また、ミーナと比較的に親しかった軍医からの聞き取りで、黒江らの経歴を(三将軍の怒鳴り込みがあった日に)遅まきながら調べ始め、『魔女の社会的立場の確立に一役買った英雄』であるとわかり、青い顔になっていたという証言が得られた。扶桑に非があるのは、『当時の戦果を未確認とした』ことで、当時は『若手が天狗にならないための慣習』であったことなどから、当事者のうち、現役に復帰していた江藤が代表的に『天皇による口頭注意処分』を受けることで幕引きが図られた。これには魔女出身の参謀や侍從の反対(当時は合法であったため)があったが、昭和天皇の強い意向で押し通された。これが中堅世代(1945年当時)のクーデターを招くきっかけとなった。侍從武官制度の解体などで、中堅世代は軍に居場所を無くしていったが、戦争の勃発で、消耗品扱いで投入される事になる――

 

 

 

 

 

 

――こうした背景をミーナ個人の無知と組み合わせることで、擁護の背景を醸成するつもりであった。実際問題、ミーナは本来、かのバッハの係累(子孫)であり、音楽の道へ進むつもりであったので、事変当時はまだ子供。軍事のことなど興味もなかった。それはバルクホルンとエーリカが以前に聞いていたことだ――

 

 

「まずいですって、少佐。それ」

 

「ウム……。今後、数十年くらいはミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとしては、表を出歩けんだろう。夢原、なにかいい方策はないか?」

 

「そう言われましても…」

 

と、ダイ・アナザー・デイ終了直後のある日。バルクホルンはのぞみと話していた。ダイ・アナザー・デイ終了時、のぞみは予備役編入願いを出していた。それからしばらくした時に騒動が起きるのである。

 

「私も受理されるとは限らないけど、予備役編入願いは出してますから」

 

「このご時世でか?扶桑は認めても、日本が認めるとは限らんぞ?」

 

「一応、皇室に勅を出してもらえるように、先輩たちにお願いしています。いくらなんでも、皇室の勅を無下にはできないでしょう?」

 

「だと、いいがな」

 

その予測は大きく外れ、扶桑と日本の外交問題に発展してしまい、この時の目論見は見事に大外れになってしまう事になった。結局、日本側は戦争を避けるため、のぞみを兵役に留める代わりに、戦功を考慮し、早期に大佐まで出世させること、多額の損害補償金を支払うことで、扶桑と妥協する。根本の原因は官庁の明らかなミスであったので、厚生労働省、文部科学省は特に責任を強く追求された。防衛省はその尻拭いをやらされるのである。結局、厚労省、文科省はトップ3までが連座的に責任を取らされる事になり、外務大臣は(戦争を避けるため)昭和天皇の前で土下座することになった。日本はこれで扶桑に対し、自発的に主導権を発揮する機会を完全に失い、以後は扶桑が連邦間の国防政策等を主導し、日本が経済を担当するように変わっていく。それと付随し、四式戦闘機の『悲劇』が語り継がれる。主力エンジンの切り替えには対応できたが、使用目的にB-29迎撃が加わってしまったことでの火力増強と、操縦性の改良にはそのままでは対応できず、再設計が必要となった。特に、操縦桿を軽くしたほうが古参に受けるという史実は、開発元の長島飛行機を落胆させたという。また、史実では64Fの加藤中佐の死後、後任たちが機種転換を拒んだという事実があるため、武子たちはそれで日本側に睨まれてしまい、新機種を短いスパンで投入しなくてはならなくなっていた。武子の入院時の代理の内、日本側にも通告があったセラと宮部大佐は、そのことを理由に、代理業務を嫌がったとの記録が残された。

 

 

 

――宮部大佐は代理義務の遂行中、日本側にこう説明している――

 

「自分は単なる書類の判子押しで、実際の権限は黒江閣下らにあります」

 

と。実際、二人の代理の戦死後、64F義務に深く立ち入る=以後の転属なしと守秘義務が課せられるという噂も立っており、セラを最後に、代理が送り込まれる事は無くなり、武子の復帰後は宮部大佐、セラの両名は小隊長扱いで隊に留まる事になった。機種転換の決定は黒江と圭子の権限であり、赤松はその査定役である。智子はこうした事に疎かったので、裏方の経験もある両名と赤松の合議で決まる。隊長はその追認役でしかないのだ。黒江らはダイ・アナザー・デイ中、ストライカーユニットを数回はマイナーチェンジを含めて更新。その他の兵器も、最低一回はその時々の最新ロットに更新している。これは敵の新機種が数日ごとに投入される状況であった事に由来する。そのスピードはダイ・アナザー・デイ後は落ち着いている。新兵器の拙速な投入が現場に批判された関係である。とはいえ、リベリオンの兵器更新速度は(23世紀基準でも)異常に早かったため、既存兵器のマイナーチェンジでは対応できなかったのも事実であった。城塞攻略用のMSが動員されたのも、その対応の一環であった。日本の一部関係者に通告された書類には『ジークフリート』の勇姿が写っており、アニメと多少異なる開発史があることは容易に想像できた。また、サイコフレームの規制が(有事を理由に)緩く設定されたこともあり、νガンダム系の開発は続き、無事に量産されていることも、その書類に記されていた――

 

 

 

 

 

 

――地球連邦も、ジェガン系の更新は予算の都合で遅れに遅れているが、量産型νガンダムの生産が予定通りに進み、上位機種として配備され始めた。その一方で、アムロの後方への配置転換を想定し、サイコミュシステムをアムロ以外の者でも使えるようにしたハイνガンダムの追加製造が承認された。ユニコーンガンダムの封印を想定してのものであったが、それが有事で有耶無耶にされた結果、新たにサイコミュシステムに適合を見せていたのぞみに回されることになった。これはアムロがMS教導も仕事となってしまい、最前線にいられる時間が減ったため、重要戦力であるνガンダム系を使える人材を確保するための措置であった。また、操縦性はZガンダムよりは素直であることも、選定の理由であった――

 

 

 

 

――オトナプリキュア世界――

 

 

「と、いうわけだ。教導の連中に乞われてしまって、しばらくは月に出向せざるを得なくなってね」

 

「連中も教官不足で?」

 

「そうだ。俺みたいに、戦時の英雄は軍でおまんま食っていくしかないが、そこそこの連中はほとんどが十年の勤務義務を終えたら、民間軍事企業に転職するのがトレンドでね。法的規制が入るほど流行っている。給金がいいからな、最も、死んだら、表向きは事故死という扱いになるから、そこが問題視されているんだ」

 

アムロから連絡が直接入るくらいに、のぞみはロンド・ベルでも栄達していた。これはデザリアム戦役の功績かつ、ガンダム乗りで珍しい『正規の訓練を受けた』パイロットという身分だからである。

 

「それで、上はニューを私に?」

 

「本来は俺が加わるべきなんだろうが、連邦も民間軍事企業から戻した人材の再教育があるし、ジオンの残党狩りが無くなったわけでもない。ニューの無印は俺が乗るのが前提で造られていたから、ハイを君用に調整して、送りたいそうだ。俺のと別に製造している個体らしい」

 

「いいんですか、少佐」

 

「何、俺一人だけで、あれを使うのに、ケチという声が上から出ていたんでな。量産型の武装強化のテストを名目で、君に充てがわれる事になった。X系はサテライトキャノンをおいそれと使えんからな」

 

X系は総合能力こそ高いが、サテライトキャノンの使用に制約が多い。そのことも、ハイニューの配備が決められた背景にある。

 

「オーブへの示威、入ってません?」

 

「シンたちを通して、彼の国に報告がいくだろうから、おそらくはな。あの国のある世界では、地球連邦が現地勢力を制圧して、オーブを大国に仕上げていることが気に入らない連中は山のようにいる。特に、プラントの強硬派は息を潜めただけで、まだ大勢いるはずだ。ラクス嬢の取り巻き(クライン派)はあまり気にしていないようだが、あの世界は俺達の世界の百倍、戦争への倫理が明後日の方向にぶっ飛んでいるからな。抗いようのない力を示した上で、ラクス嬢とアスハ代表に世界を回してもらうのが、あの世界で当面はベターな統治方法かもしれん」

 

シンも、ルナマリアも、地球連邦の介入で散々に地獄を見たはずのプラントに、まだ旧ザラ派の信奉者が残っているのに呆れていたと、アムロは言う。オーブが強国化することで、都合が悪くなる者は結構多く残っていること、オーブが旧日本国の間接的後衛にあたる(元々は元のミクロネシア連邦に源流を持つ国家だが、それが再構築戦争で滅んだ後、戦乱を生き延びた日系人達の集積地となり、残された基盤を再利用して近代化された経緯から、日本国の間接的な後継国家と見なされているという)事から、20世紀からしばらく、日本国の上位者のように振る舞っていたアメリカ合衆国の発展した大西洋連邦にしてみれば、おもしろくないわけだ。最も、反コーディネイター感情の暴走で痛い目を見てきたため、一次大戦当時ほどの悪感情は消えているというが。

 

「大西洋連邦を屈服させたいと?」

 

「オーブ軍の一部から、そういう声が出ているそうだ。だが、それをしたところで、徒労に終わるほうが可能性が高いだろう。その国は過激派が簡単に政権を取れるくらいに、暴走しやすい。俺達(地球連邦)が本土に攻め入れば、『ベルカ式国防術』のような真似をされかねん。一次大戦ですでに実績があるというからな」

 

アムロの口にしたベルカ式国防術とは、ミッドチルダと古代ベルカが戦争をしていた時代、聖王亡き後の古代ベルカがトチ狂って、自国領で大量破壊兵器をドカバカ自爆させ、ミッドチルダ軍の多くを葬ったものの、古代ベルカの滅亡の引き金を引いてしまった故事を揶揄する言葉として語り継がれている。(調はその前にいなくなったので、その時期の事は帰還後に知った)ミッドチルダが戦後、魔法に異様なほどに傾倒してしまった要因の一つだと囁かれている。地球連合は最初の大戦で似た行為を働き、それが原因で、一次大戦が凄惨な殲滅戦争に向かってしまったという。

 

「あそこの世界は一次大戦の指導者たちがイカレポンチ過ぎて……」

 

「アスラン君はかわいそうだよ。父上が個人の怨恨だけで、世界を道連れにしようとした。おかげで、彼はオーブに亡命せざるを得なくなったそうだからな」

 

「その割に、二次大戦で一時的に復隊してませんでした?」

 

「あの国は人手不足だ。たとえ、戦犯の身内でも、親の罪を子にまで背負わせる道理はない。少なくとも、近代国家ではな。それで、復隊できたんだろうな、彼」

 

とはいえ、アスラン・ザラはシャア・アズナブルに立ち位置などは似ていると、アムロは評する。ただし、行動は似つつも、シャアと違い、友人らと決別せず、あくまで、自身の正義を貫いているところが(結果的に、ネオ・ジオン将兵をだまくらかして)個人の感情を晒し、スペースノイド全体を裏切る形になったシャアと決定的に異なる。

 

「彼はシャアの合わせ鏡のような存在なのだろうな。立ち位置を考えると」

 

「それじゃ、シンは」

 

「カミーユだろうな。それも、周りのフォローがなかった場合の」

 

大人のぞみはシンの過去の言動や行動を聞き、かつてのカミーユ・ビダンとの共通点に気づいたらしかった。ただし、シンはカミーユのように、精神的成長をする機会に恵まれなかったことから、世界線によっては、キラ・ヤマトか、アスラン・ザラのいずれかに敗れ、非業の最期を遂げる場合がある。(ただし、最後の力でコックピットを貫き、相打ちに持っていく場合も多いという)

 

「だから、シンもカミーユの事を意識している節がある。カミーユはグリプス戦役で精神をやられて、病院で過ごすしかなかった期間もあるが、俺より遥かに強い才能を持っていた。シャアの責任は重大だよ。しかし、それでも、シンよりマシな部類だというのはな……。俺も言葉を失ったよ」

 

カミーユの療養生活について、多分にシャアを責め立てたことかあるので、新参の部下であるのぞみにさえ、シャアのグリプス戦役での非を愚痴るアムロ。シンはカミーユよりも、最終的に悲惨なこと(戦死する)に陥る世界線が多く存在するらしく、絶句してしまったとも述べる。これはフェイトの調査でも、裏付けられているという。

 

「あの子、どうなるんです」

 

「キラ・ヤマト、もしくはアスラン・ザラに敗れるか、相打ちになる世界線も多く存在するとのことだ。それがコズミック・イラ世界が崩壊する原因になるとも。あの子の存在自体が歴史を動かすキーだ。それも、俺達以上の揺れ幅でね」

 

シンがその両名と相打ちになる世界線では、オーブがプラントの大量破壊兵器で全滅し、プラントのクライン派も内通者として葬られ、歯止めを失い、地球圏そのものが程なくして滅んでしまうという。そのため、和解したばかりか、想い人も、妹のように思っていた者も(全てが元通りではないが)無事で、地球連邦でそれなりの暮らしを謳歌する『彼』は最高ランク級の幸福を手にしているといえる。

 

「俺よりすごいよ、あの子は。影響的意味で。俺など、ジオンが一年戦争で勝つか、連邦が勝つかくらいの影響しかないからな」

 

「充分すごいですって…」

 

ガンダム乗りは陣営に勝利をもたらすことを祈願される存在。その文化をコズミック・イラに伝えた張本人である地球連邦。その影響はコズミック・イラでガンダムタイプの外観が流行るきっかけとなった。そして、アムロの介入により、プラントが今後、外征不可能と言われるほどに叩きのめされたが、それでも、旧ザラ派の生き残りはパトリック・ザラが大義名分に掲げたものを信じきっている。本人も『妻の死の復讐の方便に使っていた』という認識であったが、後に引けなくなっていたにすぎないものなのに、だ。シンは内憂外患に等しくなったプラントに嫌気が差し、本来は戻る気はなかったが、人手不足が顕著になった故に、無理矢理呼び戻されたのである。さらに言えば、地球連邦との技術力の差が明らかになったので、人的な質で対抗しようとしているのが丸わかりであったので、流石に『ニュータイプに勝てるわきゃないのに』とぼやいている。

 

「だが、あの子は見どころがある。俺はもう20の終わりにさしかかるが、あの子はまだ、ハイスクールの年齢だろう?俺はハイスクールにも、大学にも行かずに軍に残ったからなぁ」

 

アムロは士官学校を未卒であるので、従来の規則では現役時は大尉止まり、定年退官時に名誉昇進で少佐になるのが限度であった。それに加え、ガミラス戦役を生き残った正規将校の大半がガトランティス戦役で戦死しなければ、アムロは少佐になる事はなかったであろうと言われている。

 

「気にしてたんですね」

 

「シャアのようなエリートではないからな、俺は。ミドルスクールもろくに行ってなかったからな。おふくろは親父に黙って、不貞を働くわ、息子をぞんざいに扱ったくせに、母親面するような人だったが、親父は外出が多かったが、俺をちゃんと息子と扱ってくれた。シャアよりはマシだったかもな、そこだけは」

 

シャアは颯爽とした外見やふるまいとは裏腹に、子供じみた一面が残り、アムロは子供時代とあまり変わらないところもありが、全体的に大人になったと言える内面になっている。まさに好対照。それは、二人が非実在の存在である世界に生きていた、のぞみも知っている。そして、テム・レイ(アムロの実父)がファーストガンダムの設計主務であることも。

 

「少佐のお父さんはたしか…」

 

「ファーストの設計主務だよ。その因果で、俺もその後継機の設計に関わったがね」

 

ファーストガンダムは後年に造られたレプリカがジムⅡ(新造機)をベースにする形で存在したり、准同型のG3ガンダムは現存する。一年戦争展で展示される事があるともいい、有事の連続で、連邦もガンダムの意義を再確認したのである。

 

「君が教師に戻ったらら、君の母校の学園祭に、G3あたりを展示に貸し出してもいいと、将軍からことづけがある」

 

「ありがとうございます。先のことになりそうですが」

 

「何、君にとって、時間などはいくらでもあるだろうから、焦る必要はないさ」

 

「確かに」

 

そこは苦笑交じりだが、本来、26歳であった大人のぞみには、最盛期の体に戻り、自分が求めていた変身能力が恒常的に戻っただけで大万歳である。また、1000年女王になるにしろ、表向きの職業は必要なので、教師に復職はするつもりであるのも事実であった。

 

「私は代役ですからね。本来はプリキュアになれなくなっていたはずですし。それが、別個体がヒトを超えたせいで、偉いことになっただけの。まぁ、肝臓がやられかけていたんで、今回の事は素直に嬉しかったですよ?」

 

「教師は精神をすり減らす仕事だというが、飲み過ぎだぞ?」

 

「今後は控えますよ。肝硬変で早死する可能性もあったって、佐渡先生に言われまして。それに、後輩からも怒られてますから」

 

大人のぞみはこの後、本当に酒を付き合い以外に飲まなくなっていく。肝硬変になりかねない数値が出ていたと言われれば、そうもなる。また、容姿が現役時代より多少成長した17歳前後に戻ったので、プライベートでの服装はその時代のものに戻している他、偽装で高校生っぽい服装を命じられることもある。26歳時の外見より明らかに若々しくなっているからだ。また、10代の疲労回復力は20代後半よりも高いため、そこは素直に嬉しいポイントだ。

 

「同位体の不死身ぶりが反映されても、病気には普通になるから、そのほうがいいだろう。さて、仕事のほうだが、シンの面倒を頼むと、いつき君(明堂院いつき。キュアサンシャイン)から連絡があった。前世の縁らしいね?」

 

「ややこしいんですよ、そのあたり。あたしもなかなかですけど」

 

「それと、コズミック・イラ歴への派遣だが、引き受ける方向でいいね?」

 

「お願いします。あ、今回の給金はいつ?」

 

「そちらでの一両日中には振り込まれるとのことだ。前金が欲しいのか?」

 

「ええ。若返ったんで、スーツとか新調しないと。教師に戻るにしても、下準備が必要なんで…。提督に伝えてくれますか?」

 

「わかった。食費がタダなのは、うちの部隊の特権だ。存分に使え」

 

「わかってます。ソフトドリンクの品揃えはどうなんです?ヤマトとしゅんらん」

 

「あの二隻は最高だ。遠征艦隊の旗艦をやれるくらいの格だからな。森大尉にでも尋ねてみたらいい」

 

「わかりました」

 

 

こうして、大人のぞみは新たな生活、さらに、情勢が落ち着いた後のための準備を始める。のぞみAの代役ということを自覚している故だが、彼女もなんだかんだで、戦士であった性分は抑えきれなかったらしく、軍人生活に意外なほど馴染むのだった。

 

 

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