ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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オムニバス的な小話です。


第百九十話「それぞれの一コマ」

――地球連邦は結局、何かをやろうとしたら、宇宙人が攻めてくることの連鎖が続いたため、異星人不信に陥りつつあった。ウィンダミアはそんな風潮が生まれた事は知らなかったため、自縄自縛的な状況となっていたわけだ。波動砲艦隊はヴァールシンドロームを受け付けない(完全な免疫がある)人員が多く、それが送り込まれる手筈であったが、先にゲッター艦隊が姿を現すという不運がウィンダミアを襲った。ゲッター艦隊にとっては恫喝の一環であり、小手調べ以外の何物でもなかったが、それでも、ウィンダミア艦隊が反応兵器や次元兵器を含めた、全ての手段を用いても蹂躙されるのみに終わった――

 

 

 

 

 

 

――地球を侵す者、生かすべからず――

 

ゲッター艦隊はウィンダミア艦隊を突進だけで叩き潰していき、星団の無人惑星の一つをゲッタービームで消し飛ばしてみせ、恫喝の声明を発した。

 

――地球との共存を選ぶか否か?――

 

ゲッター艦隊は末端の駆逐艦級でさえ、23世紀当時の最強クラスのゲッターロボである『ゲッターロボアーク』がカス扱いの威力を誇っている。地球とその友好国を守護するが、敵と見なせば、銀河ごと滅ぼす。その選択を迫った。当時のウィンダミア王は穏健派であったため、多少の犠牲はやむなしで撤兵を要請した。これはゲッター艦隊の脅威を知っていた故だが、これが後々、強硬派が(プロトカルチャーの遺産の過信による)強硬な手段に出る理由となってしまい、王がもっとも恐れた存在『ゲッターエンペラー』の顕現を招いてしまう。ゲッターエンペラーの力はまさに神の如きものであり、物理的にワームホールや惑星を握り潰すなどは序の口である。合体するだけで、星系一つが消し飛ぶ衝撃波を発する時点で、抵抗が馬鹿らしくなるくらいの戦力差であった。とはいえ、猶予を与えるくらいには慈悲を得たらしく、配下の艦隊に恫喝行動をやらせ、自身は最後の最後に出張るという弁えを見せているエンペラー。64Fが遠征を行ったタイミングでは、配下のゲッター艦隊が示威と恫喝で、ウィンダミア王国を震え上がらせていたのである。無論、ゲッター艦隊は23世紀の地球連邦の感知するところではないので、彼らも困惑ではあった。結果的に、一つの星間国家が軽く滅亡寸前に追いやられるわけだが、ゲッターエンペラーの仮想敵と思われる存在は『神をも意に介さぬ、強大な敵』だと思われるので、星間国家の抵抗など、子どもの癇癪も同然であった。ゲッター艦隊は時たま、圭子やことはの口を通し、関係者らに意思を伝えることもある。64Fとロンド・ベルはウィンダミア王国の行く末を案じ、介入を協議するが、既にゲッター艦隊による恫喝は済んだ後であった。だが、ウィンダミアでは、穏健派であった王の死去で強硬派が台頭。結果的に、エンペラーは姿を現す事になる――

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゲッターエンペラーはゲッターロボGが真ゲッターロボと融合した後、数度の進化を重ねて生まれた存在である。圭子の口から、おそらく、ストナーサンシャインとシャインスパークを撃てるだろう(両機の進化した姿であるからだろうか)と語られているが、黒江やのぞみは『そんなの、何を相手に撃つんだよ』と呆れている。エンペラーの出力を以てすれば、指からレーザーを撃つだけで、ゲッター真ドラゴンの最大出力によるゲッタービームを凌駕する(惑星を粉砕できる)からだ。それでいて、流竜馬の意思を宿しており、その意志のもと、地球を滅ぼそうとする者は神であろうが、悪魔だろうが、その力で蹂躙する。圭子はその使者としての顔を持つ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――のび太達は地球連邦に『ゲッターエンペラーが怒る前に、外交で解決できないか?』と質問状を出したが、地球連邦からの回答は至極単純なものであった。『侵略続きで、大衆がナーバスになっている以上、話し合いは困難である』というもの。実際、ウィンダミアは末端の連邦軍の不祥事を理由に、地球連邦を打倒しようとする強硬派が台頭しており、戦争は避けられなかった。だが、それがゲッターエンペラーの逆鱗に触れる行為であり、プロトカルチャーの遺跡を用いても、エンペラーの前では、おもちゃも同然である。それが同王国の悲劇であった。のび太たちの危惧は的中し、地球連邦はこの後も、ボラー連邦、ギィンギル帝国などの侵略宇宙人と対峙せざるをえない流れとなっていく。ウィンダミアは結局、自分達で地球連邦の逆鱗に触れ、王国の衰亡を招くのである。30世紀の記録によれば、『王統の途絶で共和制に移行するが、王党派の反乱で国家中枢が機能不全に陥り、以前の発症者への非人道的な扱いの発覚によるスキャンダルで市民が蜂起、共和制も崩壊。最終的に、地球連邦の自治領に成り下がった』というもので、国家そのものは内乱で解体されたが、ワルキューレのとりなしで自治権の維持は保障されたとのこと。なお、色々な悲劇を呼んだウィンダミア人の短命は、国家の終焉から1000年近い未来である30世紀頃には、(皮肉にも)色々な要因で長命化の進んだ地球人との混血が進展することで解消されたという――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球連邦は軍事国家『イルミダス』との戦争で屈辱に塗れるまで、波動エンジンなどの技術による繁栄を謳歌する。そして、イルミダスの地球人への暴虐が『皇帝』の目覚めを促し、イルミダスはあっさりと皇帝に敗北する。イルミダスは白色彗星帝国と同祖の種族であり、本家大本と言える立場の国であったので、地球連邦は二度も白色彗星帝国とその親戚の種族相手に屈辱を味わい、宇宙戦艦ヤマトなどの努力でそれを免れたことになる。危機を乗り越えた地球連邦は体制を星間国家としての後継政体『太陽系連邦』に再編・移行。その頃には形骸化していた銀河連邦の再興へ乗り出すという――

 

 

 

 

 

――日本連邦はガリアとの戦争が未来にあるであろうことを悟っていた。既に暗号の解読で、ガリアの動きを把握していた。日本連邦との戦力差は既に、日本連邦が屈強な大人、ガリアが貧民の子供という有様に開いていた。魔女の世界での勢力図はカールスラントの衰退、ブリタニアの財政的衰弱などで、日本連邦の一強になっていた。ガリア全体がナポレオン時代の栄光の再来を夢見るようになっており、日本連邦に敵愾心を抱くようになっていく。だが、既に、ガリアの手には、ナポレオン時代の強大な陸軍も、戦前期の『世界第四の海軍』も無い。そんな状態で、太平洋戦争で鍛えに鍛えられた日本連邦軍に闘いを挑むのは無謀としか言いようがない。後年、日本連邦に敗戦した後、ある高官は『ド・ゴールは戦争で、狂気に呑まれやすい日本人に挑むのは無謀というほかないのに……と嘆いていた』と漏らしており、太平洋戦争で鍛えられた日本連邦軍に勝てる道理はなかった。既に、MSやコンバットアーマーすらも運用している軍隊に、20世紀前半レベルで技術が停滞している国の軍隊に負けるなど、ありえないことであった。それはそう遠くない未来のことであった。21世紀フランスの無関心もあり、ガリアはプライドを木っ端微塵に粉砕される。象徴といえる軍艦『リシュリュー』の日本連邦艦隊への無惨な敗北はその証であった――

 

 

 

 

 

 

 

――ガリアとの対立は、扶桑には想定内であった。ガリア革命の負の側面が図らずも明るみに出ると、革命を是として生きていたガリア国民には衝撃であった。特に、元の王族らに対する冷酷非道の仕打ちが改めて示され、更に、王政下で『4代以上続いた大貴族でなければ昇進できない』という規則があった事が意図的にティターンズによって流されたことで、ガリアは徐々に国内のまとまりを失い、日本連邦との戦争は『国民をまとめるための手段』であった。だが、日本連邦が苛烈に戦争を遂行したことで、ガリア軍は組織的戦闘能力を完全に喪失する。後の時代の記録によれば、『辛うじて生き残って復員した歩兵連隊の兵士は、パリを行進する日本連邦の近代機甲部隊の姿に、最初から負け戦であったことを悟り、肩を落とすしかなかった』とある。リベリオンとの長い戦争で、20世紀後半以降の水準に強化された日本連邦の軍隊には、20世紀前半の水準がいいところのガリアなど、敵ではなかったのだ――

 

 

 

 

――後の時代、日本連邦に闘いを挑んだド・ゴール派は対立する者たちの手で失脚。終戦のため、ティターンズの仲介で、核兵器の購入を危惧した日本連邦が先手を打ち、中規模都市のいくつかに秘匿兵器である『反応兵器』を同時に使用。数十万の人命が一瞬で失われたという。ガリアはこの悲報に停戦を打診。日本連邦の即時受諾で、無意味な闘いは終わりを告げる。日本連邦のただ一つの誤算は当のアルジェリアが『独立してもやっていけないから、日本連邦の自治領に!!』と懇願したことで、結局、同地は現地住民の単願で自治領となり、以後は日本連邦の一員になるのである。この戦争にペリーヌ・クロステルマンは病気を理由に参戦せず、ド・ゴールも大義名分が薄っぺらなものだとわかっていたため、『ガリアの生存権の確保』を国民向けの名分に使用したという。ガリアは1945年時点からの復興に疲れきっており、それで国民を再度まとめる手段に戦争を使ったが、近代兵器で身を固めた日本連邦の前に、そんな思惑は通じず、ガリア=カールスラント戦争以来の大敗北を喫する事となる。しかも、都市を文字通りにいくつか滅ぼされた状態で。この敗戦でまとまりを失ったガリア第四共和制は事実上の崩壊を迎え、ド・ゴールが首班に留まったままで第五共和制を樹立する。彼しか首班の務まる者がいなかったからであった。停戦交渉その他は第五共和制の体制下で行われ、ガリアそのものが第五共和制で再度の復興を余儀なくされていく。しかも、反応兵器で数十万人分の労働力を減らされた状態で、ある。反応兵器の力により、ガリア国民は日本連邦に強い恐怖を抱くようになり、以後、他民族へ以前のように居丈高な態度を見せなくなる。また、白兵戦に持ち込まれた場合、ガリア人は扶桑兵の武士時代以来の白兵戦術に圧倒されるのみであった記録が残されたという。その戦争は一言で言えば、白兵戦で世界最強と謳われた日本兵に、近代兵器が伴えばどうなるか。その思考実験がされたようなものであった――

 

 

 

 

 

――魔女の世界の21世紀、日本連邦は世界の覇者として君臨。表向きは引退した、往時の64FメンバーがY委員会で国政を操るようになって、既に数十年もの月日が経った時期。扶桑=ガリア戦争の終戦から何十周年かの慰霊イベントがパリで行われた。大義なき戦争を遂行させた当時の首脳たちへの怨嗟が公の場で延々と話される。その頃には、すっかり『欧州の強国』の評判は失われ、『昔は栄えていた国』として、観光で生計を立てているガリア。軍事力はその後の財政優先傾向で、すっかり衰弱しきっていた。航空産業は史実通りに一定の盛況は維持したが、史実のように、国家が細分化されていないため、史実ほどのシェアはない。総じて、欧州では『落ちぶれた』と評される有様であった。ペリーヌはその頃には、色々な兼ね合いで『加齢していない』ので、普段は『ペリーヌ・クロステルマンの曾孫』という方便で、外を出歩いているという。これは往年と姿が変わらないことに比較的に寛容な日本連邦と文化が違うための方便であり、そう演じたほうが『欧州では都合が良かった』ためだという――

 

 

 

 

 

 

――その時代におけるペリーヌ・クロステルマンの正真正銘の子孫である『孫娘』は祖母が『若齢期』に苦労を重ねたことから、そのことを許しているとのことである。一族断絶の危機を乗り越え、家を一代で再興させた立役者(その時代のクロステルマン家はペリーヌとその子供たちが立て直している)なのだがら、当然であった――

 

 

 

 

――式典では、ペリーヌ・クロステルマンの名代(実際は本人だが)ということで、式典のスピーチの場に登壇。『加齢による病で、曾祖母は公の場に出れないための代理だ』と前置きし、無意味な戦争による戦死者の霊を慰めるスピーチを述べた。その頃には、戸籍上でペリーヌは90代を迎えており、普通に『生きているだけでも儲けもの』な年頃であることから、なんら不自然ではない。色々と寛容である日本連邦への羨ましさを孫娘に漏らしつつ、ペリーヌ・クロステルマンの姿で、久々に公の場に姿を見せたのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――話は変わって、オトナプリキュア世界。大人のぞみは別世界の自分の代役を引き受ける形で、地球連邦軍人として従軍した。ヘアスタイルを素で(肉体の若返りによって)学生時代に近いスタイルへ戻している他、基礎体力自体は(プロの軍人である)のぞみAにまったく及ばないので、業務中は変身した姿を通している――

 

 

――宇宙戦艦ヤマトの艦内――

 

「基礎体力が違うからって、変身しっぱなしってどうよ?」

 

「仕方がないじゃん、私自身は普通の教師なんだよ。向こうはガチの職業軍人で、私の数倍の基礎体力だよ?」

 

 

のぞみAは素体がプロの軍人であるので、実は体力自体はバケモノ級にある。当然ながら、大人のぞみは元々、加齢と運動不足で、基礎体力が現役時の八割以下に下がっていたので、激務である軍人としての仕事には耐えられない。戦闘面では共有の関係上、遜色はないが、普段の体力的意味ではダメダメである。それも、変身しっぱなしである理由なのだ。

 

「あんた、大学からこっち、運動不足だったわね……。」

 

「参ったよ。それに遅まきながら気づいたから、変身しっぱなしで過ごしてるんだ」

 

大人の精神状態でプリキュアになってるため、外見上は14歳当時と同じだが、行動は大人のそれである。住んでいたマンションと家財道具一式が焼き払われたのもあり、艦の士官用居住室で過ごしている。変身していれば、体力の消耗は少ないのもあり、キュアドリームの状態で過ごしている。26歳時は『お肌の曲がり角』に達したのを気にしていたので、10代当時の姿に戻ったのを楽しんでいる。

 

「あんた、どっかの学校に再就職したら、どうすんのよ」

 

「証明写真はその時に撮り直すよ。以前の姿よりグンと若々しいから、スーツ着てても、大学生くらいに見られそうくらいだし」

 

「あたしも転職しようかしら。行き詰まってたし、今の仕事」

 

「大学んときの同期に女子サッカー選手してるのがいるから、クラブを紹介しよっか?」

 

「今更、プロの選手やれるかなぁ…」

 

「大丈夫だって。この不景気、ジュエリーデザイナーで食っていく自信ないならさ、サッカーで食っていったら?盛り上がってるしさ、昨今」

 

大人りんは会社が閉鎖された報を聞いたのもあり、後に(若返った肉体を活かして)大人のぞみの仲介で、女子サッカーの選手へ転職。そちらでは成功を収めていく。前職はデザイナーであったが、学生時代から通して、フットサルは続けていたのと、プリキュアに戻れたおかげで、現役時代のピリピリした感覚が戻ったのもあり、そちらで大成していくのである。

 

「考えてみるわ。かれんさんは嬉しがってたわよ、若返ったの」

 

「そりゃ、医大出て、研修終えるのが27、一人前に認められるのは30代終わり、そこから60、70まで働いたとして……定年の頃には、めっきり年老いてるってことになるからねぇ。若けりゃ、オペのはしごも理論的には可能になるし…。どっかの世界には、出る漫画を間違ってるだろっていいたいくらいのムキムキマッチョな男がT大の医学部の首席だったりするそうだし……体力勝負なとこもあるそうだよ、あの界隈」

 

水無月かれんは特に『若返り』を嬉しがっているようである。医師の界隈は『若き天才』は認められず、40後半~50後半くらいの年齢で『俊英』と言われるというので、年齢の若返りは不利なように思えるが、オペは体力勝負なところがあるので、そこを特に嬉しがっている。

 

「あんた、職場で疎んじられてたって?」

 

「ココにしてもらったことを、子どもたちにしてあげようと思っても、このご時世じゃん?心療内科に行こうかと思ったけど……若い頃に大口叩いてた手前……ね」

 

大人のぞみは職場の環境でシニカルになった一面を見せる。黒江に言われたからか、再会したての頃より、本音をこぼすようになった。変身した姿でいうのもあり、どこか哀愁が漂っている。

 

「ドリーム?私だけど」

 

「エトワール?入っていいよ」

 

「入るよ」

 

キュアエトワールが入ってきた。仕事を伝えるためだ。

 

「仕事が入ったよ。サンフランシスコの人命救助だって。敵の不発弾が地中で爆発したせいで、地殻変動を促したらしいんだ」

 

「地震が起こった?」

 

「うん。震度6強くらいが観測されたってんだから、本来は街を消し飛ばす目的で投下されたのが不発になって、地中で何かに当たって、爆発したんじゃないかって」

 

「そんな、人工的に地震を起こすなんて」

 

「相手は惑星を軽く壊せる異星人だよ?そんなの、朝飯前さ。艦隊決戦の準備が整うには、まだちょっと時間がかかる上、米が弱まったせいで、世界の秩序が崩壊しかけてると来てる。中露が変な気を起こさないのを祈るしかないな」

 

「オトナ」世界は混沌に向かっている。宇宙からはガトランティス残党が太陽系へ向かい、地球上では、米がガトランティスの攻撃で弱まったのをいいことに、中露の両国が野心を顕にしている。それに対し、西側の主要国は無力である。地球連邦軍はとりあえず、中露を遠回しに監視しつつ、日本に連絡拠点を置き、北米の救援を行っている。表向きは日本の要請で結成された『国連軍』という偽装工作を行った上で。

 

「んじゃ、行ってくるよ」

 

「あたしはまだ訓練途上だし、エトワール。ドリームの面倒を頼むわ」

 

「ええ、わかってます。この世界の私のことは?」

 

「顔出し避けたら?あなた自身が見たら、泡吹くわよ?変身したあなた自身が自分と別にいるのをみたら……」

 

「はなとも相談してます。でも……たぶん、連絡取ろうとしてるでしょうね」

 

この世界の輝木ほまれは17~8歳前後。スケート選手に復帰し、フィギュアスケート界を背負って立つとまで言われるほどに成長している。つまりはトップアスリートだ。エトワール自身の予測通り、自分(キュアエトワール)が敵と戦う姿が撮られた動画に腰を抜かし、連絡を取ろうとしていた。この混乱で、それはできていないようである。はなは『どう説明したものか』と悩んでいる。

 

「それと、私、出身世界で現役真っ只中の時間軸から呼ばれてきたんで、色々と問題抱えてるんですよ」

 

「えーーーーー!?」

 

「元の世界がどこにあるかはわかんないし、無一文で放り出されちゃったんで、地球連邦で働いていた『別ののぞみさん』達に拾われて、トントン拍子に就職しちゃったんです」

 

「いいの、それ……」

 

「時間の流れは世界ごとに違うと言いますから、向こうの世界じゃ、ほんの一瞬しか経ってないかもしれませんし。気にしててもしょうがないんで、そのまま就職することに」

 

「あんたも苦労してるのね」

 

「そういうプリキュア、多いんですって。それじゃ、りんさん、のぞみさんを預かります」

 

「あたしが訓練終えれば、面倒見るけど、今はね。頼んだわ」

 

こうして、オトナ世界ののぞみは自身が(心の奥底で)望んでいたことを叶えつつ、世界を守るための仕事に邁進していく。エトワールはまだ言っていないが、のぞみAはというと、ウマ娘世界で、アスリート生活を(ナリタブライアンに成り代わって)満喫していたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウマ娘世界で、ナリタブライアンとしてのアスリート生活を満喫するのぞみA。周りが(ルドルフやゴルシの指示で)協力してくれるのもあり、奇跡的に正体が露見せずに過ごしていた。とはいえ、一匹狼で通ってたブライアンが(不振期が長く)悩んでいたとはいえ、周囲との会話を楽しむ様を不審に思う者もそれなりにいる。とはいえ、不振を奇跡的に乗り越え、総合的に『ピーク時以上の加速力を得た』姿は『師であるオグリに通ずる』。雑誌記者にはそう評されている。『トップスピード自体は若干の低下が起きているが、加速力はピーク時を上回る』との評価が雑誌記者になされている。これはブライアン固有の『領域』が史実の低迷の原因である大怪我で失われた後、タイシンとライスシャワーから『領域』の能力を受け継いだためでもあり、トップスピード自体は全盛期より低下したが、その時期以上の末脚を発揮できるようにはなった――

 

 

――ウマ娘世界――

 

「夢原氏、妹の様子は?」

 

「一仕事終えたとこ。この生活、もう少し続きそうだ」

 

「ご苦労さまです」

 

「あなたの正式な引退は?」

 

「今の怪我が完治して、今一度、あの子と走った後に表明するつもりです。私は家業を継がなければなりませんから…」

 

ビワハヤヒデは怪我の完治を待ち、ブライアンとの最後のレースをした後に正式な引退表明をするつもりであった。ドリームトロフィーへ行くことは考えているが、それは家業を継いで、一息ついた時(実際は大学在学中はレース参戦を許可されるが)だと考えている。

 

「ブライアンちゃんに継がせるつもりだったんでしょ、お父さんは?」

 

「父は長子である私に好きにさせ、次子のあの子に家業を継がせる気だったようですが、家の方の経営状況は芳しくなく…。それで」

 

「ネームバリューを使おうとした、か」

 

「おそらくは。それに、私にはブライアン以外にも、三人ほど妹がいるので」

 

「史実を考えると、そうだろうね」

 

ブライアンとハヤヒデは寮生活である都合上、実家にいる、あと数人の『下の妹たち』にはあまり触れていない。三番目にあたるタケヒデが入学してきたが、史実を考えると、偉大なる姉たちに到底及ばない成績しか残さぬうちに、脚部不安で早々に引退せざるをえないはずだ。それを覆すには、相当の意志力が必要である。平成三強のように、引退後にその力で、全盛期と同等の能力を(医療的措置もあって)取り戻すケースもある。

 

「あなたのおかげで、妹は『悲劇』を避けられた。お礼を申し上げます」

 

「あと一つ。ローレルちゃんの運命を変える仕事が待ってる。天皇賞・春に勝たなきゃならないからね」

 

サクラローレルは凱旋門賞に挑戦する夢を持っている。だが、史実では馬場などの違いが災いし、フォワ賞の段階で脚に致命傷を負い、競走生命を断たれてしまう。それを阻止するには、ブライアンに敗れることで、その年の凱旋門賞への挑戦を諦めるように仕向けるしか方法はない。その都合上、どうしても、天皇賞・春には勝たなくてはならない。

 

「本当は運動音痴のあたしが一流のアスリートを装う。最初は戸惑ったけど、今は悪くないと思ってる。一人の女の子の不幸を救う。ある意味、現役時代にしてたことをもう一度できる。歳を食うと、それが嬉しく思ってくるんだよね」

 

ブライアンは歴代の三冠経験者で有数に不幸な道筋を辿る。それを救う。のぞみAはこの依頼を通し、現役時代の心境を急速に取り戻していったわけだ。

 

「一度、自分の思い通りにならなかった生き様だったからね。公にできる異能じゃなかったし、職場もブラック過ぎた職場だった。軍隊のほうがマシだってのも皮肉なもんだ」

 

のぞみAは前世での職場が相当にブラックだったらしく、軍隊のほうが遥かにマシと自嘲した。転職もしなかった前世の自分を恥じているようでもあった。その反動もあり、現在は軍務に邁進しているのだろうと、ハヤヒデは悟った。

 

「自衛隊にいるようなものと考えれば、よろしいですか?」

 

「日本軍よりだいぶ自由な空気だから、実戦がある自衛隊みたいなものだろうね。他の部隊は旧軍そのままの雰囲気と空気を残してるけど、直に無くなると思う」

 

64Fは元の501よりも更に自由な空気を持つ。それは幹部たちが21世紀以降の自由な空気の時代を過ごした経験を持つからで、他の部隊より遥かに現在ナイズされている。上層部が書類仕事の殆どを免除していることもあり、すぐに戦闘態勢に入れる。また、旧軍的な風潮の多くを日本が駆逐していっている(軍紀を無視しまくる芳佳が『撃墜王』になった影響もある)ので、そう遠くないうちに、どの部隊もハンバーガーとホットドッグを食べ始めるだろうとは、圭子の談。

 

「あたしらがバーガー食ってるのが宣伝されてるから、若い連中が食べ始めてるしね。昔は、飛んでる途中でおにぎり食ってたらしいが、プロペラの時代が終わったしね」

 

プロペラ機の時代、飛行中におにぎりを食べていた扶桑軍だが、プロペラからジェットに変わり、空戦中にかかる加速度が比較にならないほど強大になると、それどころではなくなり、飛行前に食事を食べておくようになった。また、空軍が生まれ、スクランブル出動が多くなると、悠長に食事を取れることも減ったので、ハンバーガーが好まれるようになった。これは地球連邦軍や自衛隊の文化を黒江たちが持ち込む形で扶桑に伝わったのだが、飛行機がジェット化する時期を迎えるにつれ、次第に従来の飛行食が食べられなくなる(高高度かつ、高G下の空戦が当たり前となり、戦闘機は酸素マスクと与圧服装備が当たり前となり、飛行中に食事するどころではなくなった)ため、手っ取り早く食べられるハンバーガーが歓迎されるに至った。これも時代だ。

 

「昔気質の連中は西洋かぶれとかいうがね、常にジェットコースターに乗せられてるようなもんなのに、おにぎりが食えるか?オグリさんやスペちゃんでも無理だと思う」

 

「いや、あの二人ならやりかねませんよ」

 

「現代の戦闘機の後部座席でご飯食べたら、それこそ『万国びっくりショー』もんだよ?」

 

その二人の食欲は引退後も現役時と変わっていないため、それすらやりかねないと、ビワハヤヒデはいう。のぞみも『あの二人なら……』と、ウマ娘きっての食欲魔人(それでいて、レースで歴史に残る偉業を成し遂げていた)である二人の様子を想像し、やりかねないと考えるのだった。

 

 

 

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