ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

704 / 787
オムニバス的な話です。


第百九十一話「遠征後の一コマとウマ娘世界の状況」

――シンフォギア世界に転移していた黒江。その際に、現在の容姿になった。本人としてはいささか不本意ではあったが、当時の時点で既に装者たちを寄せ付けぬ戦闘力であった。シンフォギアをそのまま持ち出し、纏っていたわけだが、黒江自身が調査のため、意図先に装者たちと交戦することがあった――

 

 

「!?」

 

ある日、黒江は装者たちと一戦を交えた。『確認のため』であった。立花響の動きを超能力で止めた。

 

「進まない!?なんで!?」

 

腰のスラスターの火が激しくなるが、微塵も進まないことに驚く響。

 

「いいパンチだ。だが、わかりやすいぞ」

 

「ぐ……ぇ……!?」

 

一見して、黒江は何もしていない。それは常人から見れば、である。だが、実際には一撃を見舞っていた。もんどりうって、のたうち回る。

 

「キサ……!?」

 

翼が攻撃しようとするが、刀を指で挟まれただけで動かせないことに気づく。

 

「なっ……!?」

 

「君は剣使いのようだが、俺はまだ調べたいことがあるんでな。すまんが、寝ててもらうぞ」

 

エレクトロファイヤーを放ち、気絶させる。気絶させるだけで、害のない程度の威力だ。

 

「ヤロウ!!」

 

「なんだ。お嬢ちゃんか。俺にそいつ(拳銃)は無意味だと教えただろう」

 

「だと思ってよ、これならどうだ!」

 

「ライフルか、考えたな。だが……」

 

クリスがスナイパーライフルを使い、引き金を引いたその一瞬であった。ライフルから弾丸が放たれるわけだが、黒江はとっさに、それ以上の弾速を持つ『超電磁砲』で迎え撃った。御坂美琴と同じものだ。ライフルの弾は超電磁砲の弾体に砕かれ、超電磁砲のほうはそのまま、一瞬でスナイパーライフルの銃身に入り込み、弾薬を爆発させる。シンフォギアのバリアフィールドのおかげで、クリスに外傷はないが、爆風で吹き飛ばされていく。表情は『信じられない』という類のものだ。

 

「こういう手もあるってヤツだ。のび太やゴルゴも偶に使うというが……超電磁砲の速さでどうにかなったな」

 

「い、今のは……」

 

「超電磁砲。そうだな、SFでレールガンってのあるだろ?あれに近いことをしたんだ」

 

「うぇ!?」

 

「さて、と。少し付き合ってやる」

 

黒江はそう言って、響の攻撃のほどを小手調べしてみた。

 

「なるほど。カンフーに近いが、お嬢ちゃんの我流ってことか」

 

響の動きが『我流』であることをわかった黒江。響が正拳突きをしたところを指一本で止めてみせ、そのまま『褒美』として、ライトニングプラズマを放った。

 

――あの時、目の前が光ったと思ったら、倒れてた――

 

 

と、やられた本人は後に語る。黒江はギアの機能が殆ど発揮されない状態ながら、装者の尽くを無傷で圧倒した。仕方がないが、この当時の時点で既に黄金聖闘士であったため、『感覚』を特に強化するわけでもないシンフォギアの通常形態では、足元にも及ばなかったわけだ。

 

「なるほどな。筋は良いが、読みやすい動きだぞ」

 

「…!?ど、どういうこと?」

 

「いずれ話してやるが、調べることもあるんでね。またな」

 

「ま。まっ……」

 

と、アナザーディメンションで姿を消す。一瞬のことなので、響が声をかけようとしても、姿はもう消えた後であった。

 

 

 

 

 

 

――事件から時が経って――

 

「後で、からくりは教えてもらったけど、入れ替わったのわかんなかった時期、こっちは翻弄されっぱなしだったよ。こっちも、人のこと言えなくなったけど」

 

立花響は事件からしばらくして、キュアグレースの前世を思い出した影響で、プリキュア化した。現世での特性がプリキュアの力を変質させたためか、パートナー妖精とヒーリングステッキ無しで、キュアグレースになっている。近年のプリキュアは『短時間に極端にダメージを負うと、変身が解けてしまう』という弱点があるが、能力の変質で解消されている。これは立花響の気質と特性による変質の一つであった。

 

「能力自体の変質は始めてだからねぇ。ドリームや私は特に起きなかったし」

 

「フェリーチェは?」

 

「あれはあれで、説明がね。シンフォギアの力は『法則の違う世界』じゃ、神を滅する力は出せないから、使い分けることだね」

 

「そう言われると、立つ瀬ないなぁ。神様に喧嘩売っちゃったことあってさ……」

 

「ああ、アテナに?」

 

「うん。ガングニールの力なら、キャロルちゃんを助けられたって、食ってかかったんだ。神様相手でも通じるって考えてたし、今更、完全聖遺物なんて……ってさ。でも、実際は」

 

「お呼びでなかったってヤツだね」

 

「光の速さで動かないと、ダメなのはいいよ。だけど、現代技術の延長線で造られたロボットが『その速さで戦える』なんて、あの時は信じられなかった。それに、ノイズも有象無象みたいに片付けられるなんて……」

 

グレートマジンカイザーの戦闘力が異端技術をも超えていたことがショックだったようで、自分たちの存在意義を揺さぶられた気がしたと漏らすキュアグレース(立花響)。

 

「仕方がないって。あれはスーパーロボットの中でも、相当な上積みに入るもの。もっと強いのもいるけど」

 

「上には…ってヤツだね。パイロットが耐えられるの?」

 

「基本的に、Zとグレートの人たちが乗り換えていく前提だからね。性能がどんどんあがるだけさ。ゲッターロボが自己進化と新造で能力が飛躍するのに合わせてるのかも」

 

「その力を、綾香さんと友だちは?」

 

「使えるってわけ。あの人たちはプリキュアより圧倒的に強いからね、はっきり言って」

 

キュアハートはそう断言した。自分達より強いと。

 

「あたしも、これから別の仕事あるんだ。元の世界で高校の部活の面倒見なくきゃならなくてさ……」

 

「つか、世界を行き交ってんの?」

 

「そうなんだ。別個体と記憶と能力は共有されるから、別のあたしに仕事は任せるよ」

 

と、遠征から帰還後は戦車道の大会のため、逸見エリカとして動かなくてはならないため、『オトナプリキュア世界の動乱』は実はオトナプリキュア世界の個体が関わっている。

 

「どういう理屈?」

 

「あたしやドリームは存在のシンギュラリティを超えちゃってるからね。別個体にも、あたし自身の感情や記憶は共有されるんだ。ゲッター線に深く関わったためかも」

 

「なにそれぇ!?」

 

「ゲッター線はより強くあろうとする生命を是とするからね。地球人類はそのお眼鏡に適ったってこと。神に対抗するための手段の一つだってこと。聖衣も、プリキュアもね」

 

 

キュアハートはこれから逸見エリカに戻り、戦車道世界へと行かなければならない。その前に『転生し、力が目覚めたばかりの後輩』を指導する役目を引き受けたわけである。シンフォギア装者としての元の世界での役目が無くなった以上、今後はプリキュア身者としても生きていかなければならないのが、キュアグレースである。

 

「装者としての名誉挽回をしたかったけど、元の世界での役目は無くなったしなぁ」

 

「世界が平和になったんだから、ある意味じゃいいことさ。国連に都合の良い使いっ走りにされたいの?」

 

「確かになぁ」

 

「聖闘士の睨みがあれば、裏世界の連中も好きにはできないから、下手な軍隊よりアテになるさ。神だって倒せるんだし」

 

シンフォギア世界(A)はとりあえずの平和が訪れており、装者たちが力を奮うことはほとんど無くなっていた。

 

「翼ちゃんがお父さんを失わなかったんだし、そこは良かったというべきさ。あの子のお父さんはほとんどの場合、おじいさんに殺されちゃうらしいからね」

 

「考えが大正以前みたいに古臭い、化石みたいな人だよね、翼さんのおじいさん」

 

「その人。綾香さんが日本軍人で良かったって思うべきだね。その人、終戦時でせいぜい、少尉か中尉くらいだと思うけど、綾香さんは転移した時点で大佐だったから、睨みが効いたんだし。日本の軍隊は、実務経験年数も物を言うからさ」

 

風鳴訃堂はA世界では、旧軍の軍歴持ちの最後の生き残りのような人間であった。息子の弦十郎曰く、『1945年に少尉か、中尉くらいの階級だったと聞いています』とのことで、1943年位に家督を相続し、軍に入隊したとの記録が残されていた。1940年時点で既に前線でバリバリ戦っていた黒江からすれば、『ケツの青い若造』であった。

 

「命令を素直に聞いたって、翼さんが言ってたけど、どういうこと?」

 

「簡単さ。おそらく大学を出て、家督相続の都合で入隊して、まともな戦闘の経験のない世代の人間が、1940年の時点でエースパイロットとして鳴らした俊英の将校相手にさ、エライ口叩けると思う?いくら名門の出だとしても、さ」

 

「あれ、そんくらいに大学出だってことは……」

 

「若く見積もっても、大正の十二年生まれ。つまり、平成の終わりには、百歳近いことになる。だけど、大戦の時点じゃ、青二才さ」

 

さすがの風鳴訃堂も大戦中は若者であったため、自分より目上の世代には意外と従順に振る舞うようだった。無論、裏での目論見は叩き潰した上で、乙女座のシャカが廃人にし、程なくして拘束され、直ちに極刑が下されたという。

 

「詳しいことは聞いてないけど、切歌ちゃんがどうして、別の世界で暮らすことに?」

 

「いくら神経衰弱でやったこととはいえ、魂ごとやっちった人数が多すぎたわけ。表向きは極刑にしないと、遺族が納得しないよ。摂理を乱したも同然だから、表沙汰にはできない。だから、極刑が下されたことにして、沙織さんが引き取ったわけ。調ちゃんにしても、キャラが違いすぎて、色々と問題だった」

 

「それで、それぞれ別の世界で?」

 

「そういうことになるね。平行世界のあなた達が確認されたのも驚きだけどね」

 

「世界の違いで、体質とか気質は違うの?」

 

「その世界による。あたしらにしても、先祖の構成が違ったりするし、辿る人生も違うわけだから」

 

プリキュア達は14、5歳当時までは固定されているが、その後は違うと、キュアハートは言う。のぞみがそのいい例であり、プリキュアの力も加齢で失われる場合もある。だが、それはメリーバッドエンドに近い世界線であるとのこと。大人のぞみのように、青春時代の大半を空虚感に囚われたままで過ごした結果、それを若返った肉体で取り戻そうとしている例もある。

 

「大人になるってのは、色々と面倒を抱えることでもあるからね。高齢になる親の面倒もあるし、家の相続とか…。金の問題で兄弟や親類と疎遠になることも起こり得る。あたしらが大人になる頃は幅が広いからね、世代によって」

 

プリキュアは第一世代(1990年からの10年に生まれた世代)、第二世代(2000~4年生まれの世代)、第三世代(2005年以降)に大別できる。プリキュアの姿でいうのも変な話だが、のぞみはメリーバッドエンドな世界線が明確になったことで、『戦っていたほうが精神的には幸せ』だと悟り、戦いつづける選択をした。世界線別に形は違えど。

 

「ある世界線のココはショックを受けてるそうで、連絡が来たよ。自分が危機に対応する力をプリキュアから奪ったんじゃないか?って罪悪感で、精神がズタボロになったらしくてね。人間態で引き取って、療養させることになったよ。あまりにかわいそうだったんでね……」

 

「どうするの?」

 

「変身してるだけで、実際は妖精だから、地球より医療が進んでる星の友好国の医療施設に入れるそうな」

 

それはバード星のことだ。オトナ世界のココは精神がかなり破綻を来たしてしまったことから、医療施設に入れるため、宇宙刑事ギャバンがバード星に送り届けた事が語られる。

 

「その世界線ののぞみちゃんは、先祖に長命の宇宙人がいたらしくてね、その先祖が担うはずだった役目を引き継ぐことを決めたよ」

 

「え、どういう役目」

 

「地球の真の統治者『1000年女王』。それに即位することになる。元々、地球は別の星の植民地だったみたいで、クレオパトラや卑弥呼はその星が送り込んだ人間だった。その流れは少なくとも、1999年までは続いてたみたいだから、その後継になる。その世界線は宇宙人との戦争に巻き込まれて、各国が手前勝手に動き出したから、世界全体の統治者が必要にされたんだ」

 

オトナ世界特有の事情だが、基本的に、地球はラーメタル星の王家の次世代が統治を学ぶための場として使われていた節があり、その実証がクレオパトラなり、卑弥呼であるという。

 

「強引に一つにしないと、地球自体が滅ぶ情勢だから、そういう存在が必要にされてる。核兵器が線香花火扱いの宇宙人だからね。だから、その宇宙人とまともに戦える世界線の軍隊が戦争を代行してる」

 

「いいの?」

 

「宇宙戦艦には宇宙戦艦しかないからね、はっきり言って。あたしらも、ガンダムとか乗って戦うしね」

 

「えぇ~~!?」

 

「そりゃ、宇宙戦艦や宇宙戦闘機相手に、生身はきついからね。宇宙戦闘機は普通、マッハ15とかそれ以上の速度で飛ぶし」

 

 

人型兵器を用いる国は、特に文明が発達した国である場合が多い。宇宙戦艦が強力な国は空母を侮る傾向があるが、地球連邦は人型兵器は数が揃えられないため、コスモタイガーやVFを量産し、戦闘艦艇には波動砲などが標準装備とされた。スーパーロボットは基本的に、民間の研究所がひょんなことから生み出した『ものすごいもの』である場合が大半である。

 

「だから、それ以上のわけわからない技術で造られたスーパーロボットが光速を叩き出せても、不思議でないわけだよ」

 

「それで、あんなのが……」

 

「あれはマジンガーZを祖にする系統だよ。その派生の一つにすぎない」

 

 

とはいえ、グレートカイザーも因果律兵器を誇るZEROに及ばないだけで、それ以外の相手には有効であったため、64Fに貸与される形で現役に復帰している。もっとも、ZEROが実体を放棄した今となっては、最強の機体の一つだが。

 

「そうそう。一つ言っとくことがある。うちらとつるんでる世界線ののぞみちゃん、今はある世界でアスリートの代行してるよ」

 

「ふぇ?あの子が?なんかの冗談っしょ?」

 

「ところがね、色々とややこしいんだよ」

 

のぞみが運動音痴なのは、どの世界線でも揺るぎないようであった。だが、A世界では転生後であること、入れ替わった肉体が高スペック(下手すると、以前の変身した状態を上回る)である幸運もあり、肉体に慣れるにつれ、ブライアンの能力を扱えるようになり、定時連絡によれば、全盛期の9割方の実力を引き出せるようになっているという。元々、ブライアンの全盛期の実力は『同世代で世界最強とされるウマ娘のラムタラに対抗しえる』ほどの高水準であったため、若干のハンデが生じようとも、大抵のウマ娘は撫で斬りできる水準を保っている。のぞみAは軍人生活で鍛えられた肉体を得ていたことなどの理由で、ブライアンの肉体と高い親和性を発揮し、ブライアンに今一度の栄光をもたらした。オグリが後進に与えたかった『希望』はそれ(希望)を司るプリキュアであるのぞみの手で叶ったと言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――二人が話している頃、ウマ娘世界では――

 

スポーツ新聞の一面は『奇跡的に王座への返り咲きを果たした』ナリタブライアンの記事一色であった。一時はピークアウトによる衰えと怪我の後遺症のダブルパンチが囁かれ、早期引退を誰もが予感した。だが、ある時を境に、全盛期にほぼ近いポテンシャルを取り戻し、古バ戦線を荒らし回っている。世間は掌返しで『師弟揃っての有馬記念での復活勝利なるか?』を期待していた

 

 

――生徒会室――

 

「現金なもんだ」

 

「仕方がないですよ。ブライアン先輩は落ち目と見られてましたから」

 

「落ち目となった者は世間からの見放しも早かったというが、オグリちゃんの例もあるんだ。それに、年代がもっと進んだら、7歳や8歳でG1レースを勝ったヤツも出てきてるっていうから、要は時代の進歩さ。君の事例は手の施しようもなかったが……」

 

「……」

 

サイレンススズカはルドルフの特命で、のぞみの補佐を命じられていた。エアグルーヴが療養にあった故であった。サイレンススズカは史実にもある『悲劇』により、競走馬としては直接の子孫を成すことは叶わなかった。そのこともあり、ルドルフはIFの象徴ということで、彼女を(ドラえもん世界向けの)広告塔兼のぞみの補佐役に添えたわけだ。実際に、サイレンススズカはスペシャルウィークらの祈りと声で史実を超え、現役を続けていた。彼女は史実超えを果たしたためか、ピークアウトが起こっておらず、全盛期の速力を未だ維持している。それは史実で『その前に亡くなった』故の神の詫び代わりだろうか。

 

「君の存在自体がIFのようなものだ。あの大ケヤキを超えた先の姿なのだからな」

 

のぞみAは職業柄、ある程度は口調を変えられる。軍人であるので、ある程度はドスの効いた声が必要な場面はあるのだ。

 

「そう言われると、変な感覚なんです」

 

「ブライアンちゃんも同じだと思うよ。高松宮記念が史実でのラストラン。しかも、負けるからね。それを超えた。その状態なら、ラムタラに挑める。もっとも、ヤツは日本で大成しない運命だけど」

 

「どういうことです?」

 

「先輩から聞いたけど、理由として、そもそも、ラムタラが日本で飽和状態にあったノーザンダンサー系だったことだ。マルゼンの存在で、日本で流行ってたそうな。サンデーサイレンス系が流行る以前の王者といった感じで。ニジンスキーの子でもあった。それと、当馬の種牡馬としての資質だとも。ブライアンちゃんは種牡馬としての素質は分かる前に亡くなってるけど、残した産駒は『走んなかった』らしい。それと似たような感じかも」

 

つまり、本人がすごくとも、子供達は資質を受け継いでいない。名馬の子が親に匹敵する名馬に成長するかといえば、そうではないことのほうが多い。他のスポーツで言えば、歴史に残る野球選手、あるいはサッカー選手の子が親のようになれる可能性のようなものだ。一代の努力でのし上がった場合も、似たような場合になる。

 

「この世界だと、どういう感じに?」

 

「指導者に向いてないって感じかもね。トニービンが引退後に指導者になって、日本に移住してるみたいに」

 

「一旦は戻ってきたけど、私はレースの予定がなくて、困ってるんです。脚質的に出れるエースも限られてるし…」

 

「そうか、マイルから中距離特化に近いから、天皇賞・春は出れないし、大阪杯は終わって、安田記念と宝塚記念は今年は連チャンだしねぇ」

 

「そうなんですよ」

 

 

スズカはマイル~中距離に特化した脚質に近いので、天皇賞・春はお呼びでない。かと言って、この年はレース日程に変更があり、宝塚記念と安田記念が連チャンなのだ。さすがのスズカも連チャンは不可能だ。(正確には一週ごとだが)

 

「引退すると、走る機会が減っちゃうんで、籍置いたままにしてあるんですよ」

 

「今までのドリームトロフィーの日程じゃねぇ」

 

スズカは(前世の夭折が原因らしく)走ること以外に執着がまるでなく、走る機会が減るという理由で、現役に留まったままだ。シンザンはスズカの特異的な気質に頭を悩ませており、ドリームトロフィーの日程の増加(現役時と同じ日程にする)を協議にかけている。スズカのように、前世由来でピークアウトが存在しない(ライスシャワー、スズカがそれにあたる)者もいるし、ピークアウト後の衰えが目も当てられないほどに顕著な体質のウマ娘もいる。おそらくはサトノダイヤモンドがそれになる。

 

「だけど、ピークアウトの度合いが強い子もいるからね。史実を考えると、サトノダイヤモンドちゃんがそれになる」

 

「と、いうと」

 

「あの子がこの場にいなくて幸いだよ。あの子には酷だが、凱旋門賞に行った後に衰えが出始める。で、最後の年にアーモンドアイに引導を渡される。同期のシュヴァルグランのほうが一年長く走ってたそうだ」

 

「アーモンドアイ……今度入学してきた子ですね」

 

「そうだ。あの子はマイル~中距離向けで、真っ向から勝てるのは、グランアレグリアくらいなもんで、特に府中じゃ敵はいない。テイオーちゃんの後継ぎになり得る。次の代の生徒会長にね」

 

レース成績は間違いなく、アーモンドアイは歴代のトリプルティアラ経験者で最強を誇る。アーモンドアイは安田記念と有馬記念のみは鬼門に近いはずなので、そこはジェンティルドンナのほうが勝っている。瞬発力はアーモンドアイだが、持久力はジェンティルドンナである。レース成績を考えれば、テイオーの次の代の生徒会長にふさわしい。(この日、ドラえもん世界で、アーモンドアイの二代後の三冠牝馬であったリバティアイランドが夭折してしまったという悲報が届き、メジロラモーヌ、スティルインラブ、ジェンティルドンナ(ウマ娘世界の当代まで)の三人が連名で哀悼の意を表明する。後日、メジロラモーヌが代表で献花に訪れ、話題になるのである)

 

「気が早いですよ」

 

「そうなんだがね」

 

トレセン学園の生徒会長は人望と成績の双方が高水準である事が慣習で求められる。なので、テイオーは先代の指名とはいえ、成績面で理事会から不満があるという。その点、アーモンドアイならば、完全無欠に近い。

 

「テイオーちゃんもルドルフの指名でなったけど、理事会の連中は成績面で不満を漏らしてる。だから、もうしばらくは現役でいろとアドバイスしたよ。いくらなんでも、G1を五勝以上すれば、文句はなくなる」

 

「ハードル上がってますね」

 

「仕方がない。近年は平均で四~六勝くらいはするようになってきたからね、G1を」

 

ブライアン(のぞみA)が持つ本は『最新・競走馬図鑑』なるもので、歴代の競走馬のG1(旧八大競走含む)の勝利数が書かれている。ゴルシが送ってきたのだ。

 

「近年はサンデー、カメハメハ、クロフネ、トニービンの系統の寡占状態だ。ブライアンズタイム系は衰退してる」

 

「つまり、2010年代の後半には、そのどれかの系統が?」

 

「一流と呼ばれてる連中の血統表見りゃ、どこかに名がある状態だ。そんな時代にオグリちゃんの血が辛うじて保たれてるのは、関係者の努力だよ」

 

オグリの血は当人の往時の走りに魅せられた人々の努力で、どうにか保たれている。

 

「だから、オグリちゃんに、ファンサービスを今後に依頼するつもりだって、向こうの競馬協会」

 

「私に声かかるかしら……」

 

「秋の天皇賞か、毎日王冠の時だと思うな。オグリちゃんは間違いなく、有馬だろうし」

 

「ルドルフ前会長は声かかったらしいですけど、上手くできたんでしょうか」

 

「大丈夫だったみたい。古い時代の馬だってのは、本人も気にしてたけど、あの子は日本の歴代でも最強クラスだったから」

 

入れ替わりを終えた後、ルドルフは元の姿で競馬協会主催のイベントに呼ばれ、見事に成功させた事が語られる。既にルドルフの現役時代から数十年もの月日が経過していた後の時代でのイベントだが、もろ他の要因で大成功を収めた。ルドルフ当人の凛とした雰囲気や軍服風の勝負服もそうだが、走れば、当代で対抗できたウマ娘はカツラギエースやギャロップダイナのみという実力の証明としてのデモンストレーションの成功。瞬発力で原付バイクなど比較にならぬほどの高さ、トップスピードを維持できる持久力も人間の陸上選手がカスに見える(人間よりはるかに長く、トップスピードで走れる)。また、パワーも軽自動車との綱引きに勝てるレベルである。(現役の最盛期であれば、普通乗用車を片腕で押し返せたとのことで、本人曰く『鈍っている』とのこと)

 

 

「私達はピークが一年半~二年ほどと短いですからね。医者は『ガラスの脚』と言っているそうです」

 

「おそらく、それが人間と同型の骨格と筋肉がフルパワーに耐えられる限界時間なんだろう。オグリちゃんのように、全盛期の力が偶発的に戻り、引退決定後に面目を取り戻した例もあるけど、たいていはね」

 

ウマ娘がフルポテンシャルを支障なく扱える時間はその他にも、前世の『役目』にもよる場合がある。キタサンブラックは史実でピークアウトの前に引退した説もあるので、その辺りは微妙なラインである。テイオーが現役を続けているのは、生徒会長としての箔付けもあるが、『ボクは史実を超えなくちゃならないから』とも述べている。元々は有馬記念の後で一線を退くつもりであったらしいが、『史実』を知ったこと、自分がルドルフの実子であった『過去生』があることなどによる『父への手向け』として(後継の種牡馬として大成できなかったことへの償い)、現役継続を選んだ。マックイーンも『メジロの消滅』という未来を知ってしまった故に、『メジロの事業転換の時間稼ぎ』のため、現役を続けている。史実と違う関係のウマ娘もいる。サトノダイヤモンドとキタサンブラックは実は史実では『数度の対戦経験がある程度』かつ、人間で言う『はとこ』(父親が全兄弟同士)の関係である。

 

「キタちゃんはどうなるんです」

 

「安心しな。あの子は遅咲きで王者になる事が運命づけられている。ただし、それはエアグルーヴちゃんには残酷な未来の証明になる」

 

「まさか」

 

「ああ。あの子がかわいがっている妹分のドゥラメンテがいるだろ。あの子は三冠の器を期待されたが、脚がその前にダメになってしまう。完全にな……。その上、史実通りなら、そう遠くない未来に大病する事が確定済みだ」

 

「そんな……エアグルーヴはそれを?」

 

「まだ知らせてない。強いショックで怪我が悪化してしまう危険があるからな…。それに、サトノダイヤモンドにも、それとなく言ってみたが、あの子は本気にせんかった」

 

サトノダイヤモンドはブライアン(のぞみ)がそれとなく言った『因果律』の話を本気にせず、『最初から決まった運命なんて……ありませんよ』と反論している。若さ故の自信もあるだろうが、自身がサトノ家の看板を背負うホープであるという責任感もあったのだろう。

 

「あの子は背負うものが多い。だが、皮肉かな。あの子は(史実を考えると)G1を二勝するのが精一杯。それが菊花賞と有馬なのはどう……だろうな」

 

歯切れが悪いが、サトノダイヤモンド本人も、おそらくは何かの拍子に『史実を知ってしまう』こと、そうなれば、運命を超えようと躍起になり、選手生命を逆に縮めかねない。

 

「スズカ、ダイヤの先輩のサトノクラウンを呼び出せるか。ルドルフの名も使ってもいい。懸念を伝えたい」

 

「わかりました、すぐに」

 

この後、サトノクラウンは生徒会からの緊急呼集に狼狽(やらかしの心当たりがあったため)。冷や汗タラタラに陥り、真っ青な顔で現れ、二人を逆に困惑させたのだった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。