ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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説明回です。


第百九十五話「数人の状況」

――ミーナの名誉回復はダイ・アナザー・デイの直後から試みが始まっていた。とはいえ、外交問題化し、扶桑人の反カールスラント感情が暴発寸前に陥ったことから、その責任を取らされ、表向きは『ショックによる療養での人事異動』と発表されている――

 

 

 

 

 

――ミーナの錯乱の直後――

 

「まったく、本当に無知だったのなら、隠蔽工作なんて」

 

「おそらく、綾香たちがお上のお気に入りで、なおかつ、美緒が新兵だった時に既に士官、それでいて、ガチで事変の英雄だったのが事実だったことに怯えたんだろうね。あなたたちの界隈、数年ごとに世代が完全に入れ替わるニャ?」

 

「そりゃそうだが……普通、事変のことは知ってるぜ?あたしは田舎の出だが、オヤジたちが話題にしてたことあったし」

 

「ところが、そうでもないぞ、シャーリー」

 

「どういうことだ?」

 

「ミーナは元々、音楽家……バッハを知ってるだろ?その末裔でな。軍に入るつもりはなかった。だが、覚醒したのと、カールスラントが堕ちるかの瀬戸際の時期だったので、軍に志願した。あいにく、そういう時期だったんで、ヤツは座学を受けていない」

 

「座学をやってねぇだと?……マジかよ」

 

「当時はよくあることでな。ミーナは戦況が落ち着いたら退役するつもりだったのか、座学を受け直さなかった。何度か忠告したんだがなぁ……」

 

バルクホルンにより、カールスラント本土陥落の直前に志願した上、元が由緒ある音楽家家系であったのが最悪の形で作用した事が明言される。

 

「で、どうします、大尉(当時)」

 

「うむ……お前らがプリキュアである事を大々的に公表せねばなるまい。それで扶桑の大衆の目を逸らす。既に暴発寸前になっているのを、特高に摘発させたら、今度は日本の左派が扶桑で革命を煽りかねんからな。名前を公安に変えるそうだぞ」

 

「公安は公安で、ヘマやるんですけどね」

 

扶桑の世論の急展開も、連合軍の組織がかりでの隠蔽工作に繋がった。カールスラントがドイツの介入で既に混乱していたため、王侯貴族が史実より多いのを、血で血を洗う混乱に陥れるわけにはいかなかったのだ。

 

「既に、当事者をブリタニアの諜報部が消しにかかっているそうだ。仕方がないが、下手に共和制にして、ガリア革命のように『血で血を洗う』混乱を招くわけにもいかんよ」

 

魔女の世界では、皮肉にも、ガリア共和国の緒戦での右往左往が民主共和制の負の側面を表面化させてしまったといっていい状況で、扶桑のような立憲君主制が脚光を浴びた。君主制が史実より多く存続した世界線である故だった。結局、このダイ・アナザー・デイ前後、21世紀人の煽った、各地の民主共和制化運動はカールスラントでの失敗などにより、急速に勢いを無くす。また、イタリア半島をヴェネツィア主導で統一させようとする動きも、ダイ・アナザー・デイで同国が無惨に敗退した事で潰える。

 

「史実のロシア革命のこともある。下手に体制を変えても、その後に独裁が生まれる危険も大きい。君主制が生きているなら、王を儀礼用の存在にして、実務を議会が行うのが一番ベターな変革だ。日本はそれで安定を見た」

 

アメリカは旧枢軸国の統治での成功経験を引きずっていたために、21世紀以降に国勢が次第に弱まっていった。日本は高度に文明化された国であったので、たまたまうまくいったにすぎない。地球連邦の時代に伝わる教訓である。

 

「アフガン、イラクのこともある。下手にボロボロにしてみろ、誰も手がつけられなくなる可能性がある。カールスラントは下手すれば、80年代、いや、99年になっても、立ち直れんだろう。だからこそ、有料な人材を抱え込ませる準備のため、閣下は退役なされたのだろう」

 

それは『G機関』のことだ。正式な発足はカールスラントの混乱が最高潮に達する、この時期。ダイ・アナザー・デイ後は軍政下での『カールスラントで唯一、統制が残された集団』として重宝され、長い時間をかけての国家再建を行うことになる。

 

「あなた達はどうなされるのです」

 

「国家再建に長い時間を費やす事になりそうだ。往時と同じようにはいかなくなるだろうが、西ドイツに近い状態には戻したい」

 

 

バルクホルンらはこの後、G機関の幹部を兼任する形になり、カールスラントの再建に心血を注ぐことになる。ダイ・アナザー・デイが始まって間もないこの時期、連合軍はカールスラントの有名無実化に伴う戦力減が深刻な問題となっており、日本連邦に戦力供給を強く求めていた。だが、これも(日本側の事情で)燃料と資金援助に留まり、大ピンチであった。

 

「地球連邦の協力を取りつけるとかで、今、地球連邦のお偉方に直電をあーやがしてる」

 

「ち、直電だぁ!?あの人、どんなコネあるんだよ!?」

 

「ロンド・ベルに籍置いてるからね、あーや。たぶん、ジョン・バウアー議員あたりにでも電話してるかも」

 

ジョン・バウアー。地球連邦政府の重鎮の一人であり、アムロ、ブライトらと旧知の仲の将官経験者である。一年戦争でレビル派であったようで、退役までに昇進しなかったらしいが、兵站部の長のような立場にある。黒江はロンド・ベルに籍を作ってもらった都合上、面識があり、バウアー自体が人望のある軍人であったため、軍を動かせやすいとのこと。

 

「終わったとこだ。バウアーのおっちゃんに頼んで、元のエゥーゴとカラバの部隊を中心に、送り込んでもらう事になる。自衛隊の戦力もあれこれして出させる」

 

黒江がやってくる。この頃には既に容姿は調とほぼ同一になっている。瞳の色のみが違う状態で、ギアも使っている。この時期には、装者たちの参戦の可否がわからなかったのもある。

 

「あっちこっちに電話しまくってるが、うまくいくかはわからん。だが、カールスラントが混乱して、ロマーニャとヒスパニアが無惨な有様になった以上、日本に償いをさせるしかない。向こうのわがままで、連中は米軍の膨大な物量に潰されたんだからな」

 

ヒスパニアも、ロマーニャも、わずか数回の会戦で陸軍の主力を文字通りに全滅させられている。ロマーニャは空軍が健在だが、ヒスパニアは文字通りに戦力が全滅に近く、ティターンズもウォーミングアップ程度の相手としか思っていない。

 

「今回勝って、なんとか数年の時間を稼ぐ。それで、太平洋戦争に備えるのが上の方針だが……日本は色々やるだろうな」

 

結局、太平洋戦争までに、扶桑は軍需の需要を満たせぬままに終わる。日本は連合国の猛抗議に屈し、Gフォースという形で戦力を提供せざるをえなくなるわけである。黒江はこの後、松代大本営跡に秘匿されていた超兵器群を発掘。Gフォースに組み入れ、直ちに使用。ダイ・アナザー・デイの勝利の一因となる。人相手にメーサー殺獣光線車を使うなどのオーバーキル感はあったが、ともかくも、質で量を超えるには必要であった。

 

「ミーナのことだが、ロンメルたちに動いてもらって、書類と写真をでっち上げる。後は当事者を消す。乱暴だが、整備員に不満が溜まっていた以上、これ以上の不祥事になれば、全ての功績を葬らければいけなくなる。それは皇帝も望んでないそうだ」

 

「陛下のご意向とあれば、我々の行動に大義名分が?」

 

「俺達も、昭和帝の内諾は出たからな」

 

ある意味、国家元首間の密約がミーナの名誉が地に落ちるのを阻止したわけだ。これは在扶カールスラント人の保護のためでもあった。それまでの功績は抜群であったので、一回の大失敗で闇に葬るのは惜しいということだろうが、国際問題を引き起こしたので、銃殺刑もありえた。それを回避したのは、二カ国の国家元首が不幸な衝突を望んでいないからであった。ミーナの先祖がバッハという幸運も作用した。人種差別主義者のレッテルが貼られなかっただけマシである。そうなれば、二度と公職にはつけなくなるし、精神病院から出せなくされる。

 

「あいつは先祖がバッハってのもあって、銃殺刑を免れた。ありふれた血筋であったのなら、軍法会議で即日執行もありえた。そこも運の良いヤツだ。かの偉大なバッハの末裔が軍人なのは、ドイツも驚いていたな」

 

「どういうことです?」

 

「ヤツの同位体と思われる、ドイツのエースパイロットはいたんだが、終戦まで生き残れなかったとある。撃墜された時、機体が木っ端微塵に吹き飛んで、骨も残らなかったらしい。だから、ある意味では幸運ではある。それに、同位体はバッハと何の関係もないらしいからな」

 

「いいんですか?」

 

「それも政治だろう。ましてや、ミーナの血筋はあいつしか跡継ぎがいないようだからな」

 

「魔女はこれからはバンバン処刑されるだろう。反乱防止のためだろうが、大衆は萎縮する。俺達は退役まで一線に留まるだろうな」

 

「後が育たなくなるんじゃね」

 

史実との差異は黒江にもあるので、そこも、黒江が(カミングアウト後も)自衛隊から追い出されなかった理由の一つである。とはいえ、共通項も多い。

 

「俺等は『元ネタ』がいるのもあって、日本で暮らすには、一工夫いる。もっとも、それはお前のほうが大変になるぞ、のぞみ」

 

「この戦いが終わったら、予備役になりたいんですけど」

 

「手は打ってみるが、日本の妨害は覚悟しとけ。軍人上がりは、日本じゃバカにされる対象だから」

 

――その通り、のぞみはダイ・アナザー・デイの後、侮辱された挙句の果てに、プリキュアとしての誇りも踏みじられる事態に陥ってしまう。この事件が日本の『扶桑植民地化』の目論見を完全に叩き潰すことになるが、のぞみは転職を潰される形となり、扶桑軍隊に骨を埋めることになる。また、彼女の登場により、扶桑軍人を下手な扱いにできない事が認知されたが、ミーナの不祥事で『10代のうちに佐官以上になれる』ことはなくなっていくので、のぞみは事実上最後の『佐官の道を10代で約束された』魔女であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ダイ・アナザー・デイ以降、黒江が月読調とほぼ瓜二つの容姿になっている事は、公の場では『プライベートの時間を確保するための特殊メイク』で通している。実際はキューティーハニーと同じ原理での変身であるが、ややこしいために、そうしている。この後に加勢した装者たちも『変な感じだ』と述べているが、その世界では、本人のほうが『いた時間』が短いので、なんともいえないとのこと。(更に言えば、シンフォギアが後期に搭載されたギミックは、A世界ではイグナイトの後のものは『後でまとめて搭載された』)。調本人も自分自身の別個体に文句を言われたが、『変わってしまったのはしょうがない』のである。また、ギアが仕事着代わりなのは個体特有の『体質の変化と環境によるもの』であるので、そうなったとしか言いようがない――

 

 

 

――黒江たちが遠征に出ていた頃――

 

「あなたはそれが仕事着代わりなの?」

 

「纏うまでに、数秒のタイムラグがあるし、そこを突かれることもあるから。今となっちゃ、ギミック使わなくても、昔より戦闘力は上だよ」

 

別個体はSONGの制服姿だが、Aはギア姿である。互いの環境の違いによる差だ。

 

「仕事中はトイレ以外は展開してる。ハードな仕事も多くてね」

 

Aは裏方仕事も多く、怪異の討伐なども仕事なので、展開していたほうが楽だとも言う。聖衣はめったに使うことはないので、だいたいはギアの使用で事足りるとも。

 

「今はこことも別の世界に住んでる。もう20年近い。体質が人外になったようなものだから、外見的には変わんないけど」

 

「に、20年!?」

 

「仕方ないって。別世界に飛ばされた時に、色々な摂理を超えちゃったからさ。公には、自衛隊員で通してる」

 

黒江たちは21世紀で活動するときは自衛隊員の身分を用いる。調もGフォースの隊員である都合上、自衛隊に籍が作られている。これは2000年代の頃、黒江たちが扶桑の軍服でうろついてたら、トラブルに巻き込まれた事例を鑑みての対策であった。

 

「あなたはどうしてるの、普段」

 

「基本的に、裏方かな。師匠が容姿を使ってることもあって。背丈も伸びてるし」

 

元来、調は(幼少期に訓練をさせられていた影響もあり)152cmほどの小柄な体格であったが、Aは(黒江との同調もあって)160cm前後に成長している(これは14歳当時ののぞみと同等)。

 

「いいの?」

 

「そんなの些細なことだよ。世の中、似た人は何人かいるっていうし」

 

「なんか、変な感じデスぅ……」

 

「しかたがないって、切ちゃん。私は『別の道を辿った個体』なんだから」

 

「そっちのアタシが迷惑かけたみたいで……なんか気まずくて……」

 

「まぁ、色々な偶然が重なった結果だから、気にしないで。今はお互いにケリをつけてるから。それに、切ちゃん、表に出れない身の上なんだ。こっちだと」

 

切歌はA世界では、フロンティア事変での暴走で大量殺人(魂ごと)をしてしまったことから、公には死刑に処されたことになっている。実際には、黒江の計らいで聖闘士世界に送られ、城戸沙織(アテナ)の世話役兼子山羊座の聖闘士になっている。これは本来、アテナの世話役兼護衛の聖闘乙女という存在が担っていたが、サガの悪人格の命を受けた『蟹座のデスマスク』によって殲滅されたため、通常の聖闘士がその役目も担うことになったからだという。

 

「うーん……。色々な誤解があったとはいえ……死人ってことになってるなんて」

 

「私なんて、月読神社の宮司さんの孫娘だってわかったけど、今更だから、お互いに別々に生きることになったんだから、それも気まずいよ」

 

「確かに……」

 

「それに、本当の名前もわかったけど、今更名乗る気もしないから、記録の上だけのものだよ」

 

調は血縁者の存在もわかったが、今更感があるので、結局は本名を闇に葬ることにし、今の名を通すことを決めた。

 

「いいのデスか?」

 

「お互いのためだよ。今更、身内になれってのもね。無論、付き合いは続けてるけど」

 

「もしかして、それも?」

 

「いや、響さんと揉めたのは、私が元鞘に収まれなくなったってわかってて、元鞘に収まれって言われたからだよ。それで、未来さんの手引きで、別の世界に行ったんだ」

 

響とのわだかまりが解消されるのは、調には時間が必要であった。お互いに違う環境に身を置けば、心の整理がつく。そう考えた彼女は未来の手引きでドラえもん世界に行き、そこで20年近くを過ごした。和解できたのは、ダイ・アナザー・デイでのことだ。

 

「切ちゃんは途中でわかってたけど、おかしくなったフリをしてたみたい。私がいなくなるのが怖かったみたい。その事を響さんが知ったのは、私が出奔した後。それからしばらくした後に、二人と和解できた。時間を置かないと、落ち着いて話もできないって奴だね」

 

「なんだか気まずいデス」

 

「響さんに悪いことになったからねぇ。私の世界じゃ、装者として活躍できたとは言いがたいし」

 

調Aの故郷では、立花響は魔法少女事変の最終決戦に絡むことができなかった。あまりに実力差がありすぎたのもそうだが、シンフォギア世界の摂理の通用しない存在が真の敵であった故に、頼みのガングニールが通用しなかった。それなのに、グレートマジンカイザーは普通に異端技術すら蹂躙してみせた。そのことで『居場所を奪われるのでは』という恐怖を抱いたことで、決戦後に当たり散らす醜態も晒してしまうなど、哀れな有様を晒した。父親がその頃に『完全に姿を消してしまう』という不幸も重なったとはいえ、ヒステリックに喚き散らしてしまうなど、らしくないことの連続であった。

 

「こっちでのことだけど、響さんのお父さんが失踪したんだ。神隠しに遭ったとしか思えないくらいに……。それもあって、情緒不安定気味に陥った時期あるんだ。それと、魔法少女事変の最終決戦が重なったらしくて」

 

「らしいって?」

 

「私はその場にはいなかったから。おまけに、師匠が送った救援信号をキャッチしたのが新科学要塞研究所だった関係で、マジンガーが来てくれたんだけど、あれって、普通の科学技術の延長線上にあるでしょ?それが異端技術をこともなげに、蹂躙してみせたもんだからさ……」

 

「わかったデス……」

 

切歌Dはそこで合点がいった。響は(過去に受けたいじめでのトラウマで)自分の居場所を奪われることに過敏なほど恐怖心を抱いているという話は聞いたことがあったからだ。つまり、シンフォギアなどの異端技術を『極限まで発達した現代科学が逆に蹂躙してみせた』ことで、トラウマが刺激されたのだと。

 

「おまけに、師匠たちは神と戦い、時には討伐も行う裏稼業をしてた。つまり、神の軍団の一員。それがわかった時のヒステリーは酷かったみたい。まぁ、本物の神様のご臨場だったから、気持ちはわからないでもないけど、あの人、突っ走っちゃうとこあるでしょ?」

 

「確かに」

 

 

 

本物の神(アテナ)の降臨。神も役割分担がなされているので、全知全能ではない。しかしながら、装者らの少なからずは理不尽な目に遭ってきたため、その登場に反発したが、結局は恥を晒すだけであった。響は(父親の行方不明で)鬱憤とした気持ちを抱えていたこともあり、半ば癇癪を起こしたも同然の振る舞いをしてしまい、それで周囲と気まずくなるなど、不運続きであった。転機を迎えるには、ダイ・アナザー・デイを待たねばならなかった。

 

「あの人が救われるのは、それからずいぶん後のことだけど、これもややこしい話。後で時間できたら、話すよ」

 

調Aは業務の合間にホテルに寄った。ホテルの庭のバルコニーで会話をしていたわけだ。切歌Dにしてみれば、信じられない光景であった。シンフォギアを普段から纏っていても、何の負担もかからない。薬品(RINKER)の効力を無くすためのクリーニングも必要ないことでもある。

 

「なんで、アタシ達は呼ばれたんでしょうかね」

 

「多分、そっちが移動に使った聖遺物が私のギアの波動をキャッチしたんだろうね。こっちの戦に巻き込むことになっちゃったけど」

 

「これから、どこへ?」

 

「敵の裏をかいて、撹乱しろって命令でね。人相手だけど、情け容赦はいらないから、ひと暴れしてくるよ」

 

ギア姿にも、世界別の違いがある。調Aのそれは大まかには、(正史における)魔法少女事変当時とさほど差異はないが、マフラーを巻いていること、脚部を任意で通常の形状に変形させられるなどのギミックの差異がある。本人がスペックに頼らない戦法に切り替えたため、戦闘関連の基本スペック自体は以前と変わらない。違うのは、シンフォギアとは関係がない武器(古代ベルカ滞在時に使っていたデバイス)を主に使うところだ。

 

「アニメで、私の闘い方はまるっと割れてるから、別の方法を使わないとならなくてさ。そこは面倒だったよ。そろそろ仕事だから、行ってくるよ。今日は軍用列車で、北北西部に行かないとならなくて」

 

「飛行機で行かないのデスか?」

 

「制空権争いしてるとこに輸送機飛ばしたら、餌食にされるのが関の山だからね。列車のほうが対処しようがあるそうだよ」

 

史実の日本軍がそうであったように、制空権を得ていない場に輸送機で行くのは、自殺行為である。その兼ね合いもあり、陸路で行くほうが確実だからと、扶桑のある将校が言っていた。なんともさもしいが、ミーナの一件以降、航空整備員への目も厳しくなったため、現場が萎縮している都合上、鉄道を使うのが司令部に好まれているという。(ティターンズも(一応)、真面目に戦争指導はしている側面もあり、制空権獲得のため、リベリオン本国から膨大な機材を空輸していた。それを正面から捌ける力は扶桑の南洋方面軍の防空軍にはないため、陸路での移動(64Fの援護下で)が好まれている。南洋島が広大な面積を持つ故であった。日本連邦評議会は本土の機材更新を優先しているので、南洋方面軍は更新がおざなりにされており、外地を二の次とする方針は批判を浴びている。日本も『外地を放棄できない』魔女の世界特有の事情に悩んでおり、内部意見の統一にも四苦八苦する有様であったので、南洋への兵器供給に無関心に等しかった。それも、太平洋戦争の長期化の要因であった。(日本の左派勢力は外国の支援を普通にアテにしていたとのことだが、立地の都合で、ブリタニアの支援もアテにできない)結局、南洋への兵器供給の問題は日本の牛歩を見かねた地球連邦の介入で、あっさり解決を見るわけだが、地球連邦がMSや宇宙戦闘機を提供しなければ、お互いの戦力比から、まともに戦えもしない現実には変わりはない。元々、平時の備蓄しかなかったのを、無理に戦時に切り替えたための無理が生じたのだ。

 

「だから、私たちみたいな『力のある人』が重宝されるわけ。それじゃ」

 

「こっちの調に、よろしく伝えておくデス」

 

「頼むよ」

 

こうして、調Aは裏方の仕事を遂行していく。古代ベルカ以来の手慣れた職責である。切歌Dは平行世界の自分が調の変化に複雑な気持ちを抱く理由を悟りつつも、こちらは達観した表情であった。『RINKER』がなければ、装者として戦えない身の上であるのをわかっているからで、A世界での切歌と異なる道を辿ったことの良い例であった。ただし、自分との関係が変わっている(史実のような、百合に近い関係では無くなって久しい)事は複雑である。また、響の不用意な発言が出奔の一因である事を理解したのか、響の悪癖はどの世界でも存在することにため息であった。

 

(響さん。そっちで、別世界から帰ってきたばかりの時の調に何言ったのデス…?想像はできるけど…。あの人、悪気なく、人の地雷踏み抜くから……)

 

別個体の切歌にまで、A世界で二人が揉めた理由が丸わかりなほど、響の悪癖は知られているのがわかる。A世界では黒江の大暴れもあり、俗に言う主人公補正を発揮しきれずに終わっており、副次的に調の立ち位置も変化が激しい。事態を複雑化させたのが、他人がその役回りを充てがわれたと言っていい『入れ変わり』。ほとんど事故のようなものとはいえ、調の人物像への認識は(本人の性格と)全く異なってしまい、記録の上での立ち位置も(日本政府の思惑で)最初から二課に属する人物として扱われている。別の自分が混乱してしまい、『罪を犯してしまった』のも、なんとなく窺える。

 

(話してて、なんとなく、違いがわかる。こっちの調より、なんとなく落ち着いてるんデス。年齢のこともあるだろうけど)

 

 

実年齢は30代(異世界での時間を加算した場合)後半に達することもあり、調Aは外見よりも落ち着いている。置かれた環境の差も大きいだろうが、別の自分が狂気に走ったのを聞き、距離を置いたであろうことも察したため、心中は複雑な切歌Dなのであった。

 

 

 

 

 

 

――異能者に頼り切りの扶桑の国防施策を日本は咎めたくとも、自身が過去に学園都市で異能の研究を数十年単位でしていたために、黙るしかなかった。日本は21世紀までに根付いた『平時の思考回路』であったので、魔女の世界の国々の戦時の思考回路が理解できなかったのだ。経済的に締め付けたら、軍隊が国家基盤であったカールスラントは崩壊寸前に陥り、連合軍自体も空中分解の一歩手前までいくという事態に陥ったため、言い訳を重ねるしかなかった。とはいえ、連合軍内の人種差別の風潮が完全に死んだのも事実。カールスラント軍人らは『人種差別主義者のレッテル貼りはやめてくれ!煽らないと、そいつの本気が見れないだろ!』と喚き散らしたが、日本連邦は情け容赦なく裁き、たちが悪いと判断されれば、旧特高まがいの拷問(再起不能になった者も続出するが)すらも加えた。その結果、連合軍の欧州諸国の軍人らは日本連邦の内に秘める苛烈さを恐れるようになっていた――

 

 

 

 

 

 

 

――ブリタニア連邦は弾道ミサイルの登場で、本土を脅かされる事が確実になったこと、リベリオンの大西洋艦隊が強大な陣容になりつつあるのに、栄光のブリタニア海軍は財政状態の悪化で衰退しつつある。更に、空母はほとんどが輸送艦の状態。結局、扶桑軍は地球連邦以外に友軍の助けをほとんど得られない上、クーデターの後の粛清人事で、前線指揮の可能な立場の将校と熟練の下士官が陸海軍でほぼ払底。黒江たちにおんぶにだっこの有様であった。空軍が海兵隊まがいの業務をしているのは、最も人材を温存されていた関係であった――

 

 

 

 

 

 

 

――調が裏方で撹乱任務に邁進し、64F主力も『プリキュア5の世界』からの撤収を始めた頃、扶桑軍は旧来からの軍閥の衰退で『横のつながり』が希薄になったせいで、部隊間連携に却って支障をきたすことを露呈。日本はこの有様に目を覆った。以後の扶桑軍は有事対応できる部隊と、そうでない部隊との間に『壁』が生まれてしまうことになり、奇しくも、地球連邦軍の有様を予言するかのような有様へ変容しつつあった。これは日本側が大規模徴兵を禁止したためで、国家総力戦を前にして、人材不足に起因する行動力のなさを晒していた。それを隠蔽するためにも、異能者は重宝されていた――

 

 

 

 

 

 

――ティアナ・ランスターも、魔導師の技能は維持しているが、空戦能力を得たことが『時空管理局のメンツに関わる』という要請から、前世由来の異能と容姿で過ごすことになり、公には、地球(日本)人『鴇羽舞衣』として過ごすことになった。ティアナ・ランスターとして、空士試験に落第した過去がある事が(空戦可能なように、扶桑で訓練されたこともあって)時空管理局のメンツを潰してしまうと判断されたのだ。彼女の異能は高次物質化能力。通常の打撃では傷を負わないものを具象化して召喚したり、強化スーツを纏う。これはのび太曰く、『彼女が転生した時に、起源が同じ二つの能力を神々が統合させたんだろう』とのこと。彼女の前世がどの世界であったのか、のび太には察しがついているようであった。彼女は能力の覚醒の申告後、ティアナ・ランスターとしての容姿をしばし封印する流れとなったわけだが、元々が銃使いであった都合上、徒手空拳での戦闘は鍛えるしか方法がなく、やはり、遠征終了後は流竜馬のところに送られる手筈であった。流竜馬は元々、空手道場の跡継ぎであったが、家族と言えるのは、平行世界からやってきた、実子の拓馬のみ(本人としては複雑らしいが)。デザリアム戦役後はお互いにゲッターチームの一員である都合もあり、互いを受け入れているとのこと。竜馬もなんだかんだで、拓馬のいた世界の自分自身より多少なりとも家庭的らしく、別世界の息子の世話を焼いているとのこと――

 

 

「竜馬さん、なのはさんは?」

 

「フェイトの提言で、子ども時代に戻した。とは言っても、15歳前後にな。本当に子どもだと、俺のなりじゃ、誘拐だと言われちまうんだよ。それで、10歳から、中学生相当に戻したよ」

 

「大変ですね」

 

「酒は断たせた。佐渡先生にも相談して、心療内科にも行かせてる。あいつだが、そもそもが、幼少期の頃の父親が重傷を負った事故かなにかが原因らしくてな。あいつが『いい子』を演じてた理由の一つだとよ」

 

「それで……」

 

「史実からの変化があったから、高校までは進学して、お前のことも事前に教えてたが、まさか、相手が変わっても、似たようなことやらかすなんてな。まいったぜ」

 

「どうします?」

 

「はやてに問い合わせたが、身柄はうち(ロンド・ベル)で預かってくれって。厄介払いだな。教導向けじゃねぇのに、エースってだけで、教導隊にスカウトした管理局の失態だ」

 

表向きは出向だが、実際には厄介払いだと、竜馬はなのはの異動を説明する。エースは必ずしも、教導向けではない。その事は古今東西の軍隊で証明されている。

 

「仕方がねぇ。うちで前線要員やらせるのが一番だな。それに、才能の有無で教え子への態度を変えるって欠点が露呈したのも、厄介払いの理由だ。あのままいても、佐官止まりだろうから、こっちで手柄を立てさせたいんだろう」

 

「八神部隊長も、けっこう怖い判断しますね」

 

「まだ情があるほうだと思うぜ?先方からの抗議如何によっちゃ、降格と教導からの除名処分もあり得たそうだ。表向きは出向だし、給料も保障されるんだぜ」

 

「やれやれ……」

 

なのはは政治向けの資質はないので、組織では『あまり出世しない』タイプである。はやてはそれをわかっていたので、政治に巧みでなければ、今後の時空管理局では生きていけないことから、友人としての情で、ロンド・ベルに『復帰』させたのだろう。実際、時空管理局はM動乱で威信がガタガタになっており、現時点では政治能力がなければ、組織を支えられないからだ。

 

「そうそう。のび太が言ってたが、はやての奴、子供の頃、どうやって一人暮らしできたんだ?」

 

「おそらく、元の提督が認識阻害魔法を使ってたんでしょう。いくら、両親の遺産が莫大であろうと、親類がたかるのは目に見えてますからね。普通なら、児童養護施設行きのはずだから。推測ですけど」

 

はやての幼少期についても、謎が多い。はやては既に実の両親は亡く、遺産は莫大であったようだが、幼少の身である以上、普通は法的に相続の手続きも取れないはずだからだ。

 

「だろうな。その元提督が『親父の友人』を騙って、偽善をしたんじゃねぇの?」

 

「その裏は取れてます。それで間違いないでしょう。途中で情を持ったとも」

 

「やれやれだ。皮肉なもんだぜ」

 

はやてが提督を進路に志望したのは、恩人と慕う、時空管理局の提督であった人物がいたからだが、その彼は、はやてごと封印する気であったが、(情を持ったらしく)莫大な生活費を与えたりした。青年期に時空管理局のエースで鳴らしていた上、元々は地球人で、英国のさる貴族の出であったのもあり、公な処分は下されず、自主退職という形で責任を取り、はやての資金源となっている(その事から、イギリスでかなり由緒正しく、かなり裕福な貴族であったことがわかる)。

 

「八神部隊長も何考えてるんですかね?」

 

「少なくとも、自分が現役のうちは組織を持たせるためだろう。管理局は求心力を失った以上、長くは持たん。だが、秩序の崩壊は誰も望んじゃいねぇ。地球連邦が数十年後までには新しい組織を立ち上げるだろうが、それまで持たせたいんだろうさ」

 

 

 

はやても、時空管理局の『余命』を悟り、自分が現役のうちは……という気持ちで職務をしている事を竜馬が代弁する。実際、魔力至上主義が薄れたせいで、かなりの離反が起こった結果、ハラオウン派の私兵に近い様相を呈しており、組織としての余命は(持って)あと数十年だろうと見積もられている。それまでに、魔力至上主義を一掃したいのが、はやての狙いだろう。その地ならしのため、マジンカイザーと真ゲッターロボの存在をリークしたのだろうと続ける。

 

「いいんですか?」

 

「俺達のマシーンの存在で、向こうの世界の抑止力になるんなら、結構なことだ。はやての最大魔法を無傷で耐える機械兵器なんて、向こうにしてみれば、バケモノ以外の何物でもないだろうが……」

 

「確かに……」

 

ティアナも、二機のスーパーロボットの強大さは知っている。それでいて、自己進化を続ける上、真ゲッターロボには、さらなる上位機種が存在する。皮肉なことに、かつて、時空管理局の強硬派(M動乱で離反)は地球の『制圧』を叫んだが、真ゲッターロボの『ストナーサンシャイン』とマジンカイザーの『カイザーノヴァ』の圧倒的破壊力に絶句。更に、M動乱で時空管理局の巡航艦艇が『事もあろうに』ナチ残党軍の『プリンツ・オイゲン』の艦砲射撃で容易く撃沈されるという醜態も晒している。M動乱は『不満分子の炙り出し』の効果もあったが、組織の命運そのものも変えてしまったのだ。電話口で、二人が話す内容は意外と真面目なもので、竜馬も(元々、体育会系にしては)意外とインテリなのがわかる内容だった。

 

 

 

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