――かくして、プリキュア5の世界の争乱は終わりを告げた。些か、いいところのなかった仮面ライダー達もいるが、彼らの存在はB世界ののぞみたちに『世界は常に誰かに狙われている』事を再認識させた。B世界のプリキュア5は現役期間中であるので、当然、学校に通っている。その復旧工事中の学生らの慰問は必要であった。また、戦いを始めた表向きの理由に説得力を持たせるための一芝居も打たれ、ひとまず事は収まった――
「でも、信じられないわよ。いくら、うちのドリームとは似て非なる存在とはいえ、私よりパワーがあるなんて」
「私に言われても困るぞ。曲がりにも、軍隊式の戦闘訓練を受けてる身だし、異能がたんまり発見されて、その訓練を受けているそうだぞ?」
「それをなんで、あなたが普通に使いこなせんのよ」
「さっき言っただろう?一時代を築いたと。二本足になっても、それは同じだ。これでも、トップアスリートだからな。それに、立場上、護身術もある程度は必要なんでな」
ウマ娘は身体能力を(ピークアウト後であろうが)普通の人間の数倍以上を保つが、護身術は必要であった。例として、カレンチャンは護身術として、合気道を習っているし、ヤエノムテキは引退後、武術の師範になった。ミルキィローズを普通にパワーで圧倒できるのが、のぞみAの訓練の成果であった。また、借りている人物も、トップアスリートかつ、歴代の三冠でもパワー型で鳴らした、ブライアンであったことも大きい。
「あんたらは経験則でどうにかしてるようだが、対人戦だと、動きを読まれたら終わるぞ?」
「うっ!痛いところを……」
「こっちは一応、武道の経験者でもあるんでな。他人の体を借りているが、お前らくらいなら、ひねられるぞ?」
「試してみる?」
「ちょ、ローズ」
「構わんよ」
と、ルージュがローズを諌めるが、ブライアンは『構わない』とうなづく。自分も若手時代はこういう事をしてきたからだ。試しに、ローズがストレートを打ってみるが、ブライアンは瞬時に(僅かな動きで)避けてみせた。
「ふむ。筋は悪くないが、読みやすい。」
「なっ……」
「私は車と同等以上の速さで競う世界に身を置いてきてるし、動体視力も普通の人間の比じゃない。それが更に強化された状態だ。反社の連中が使うような、ロシアか、中国から流れたチャチな拳銃の弾なら、普通に避けられると思う。それより早いと思うが、避けられないほどでもないし、あんたの動きは見え見えだったよ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
「仕方ないって。こっちは全員がケンカもろくにしたことがなかったのを、プリキュアになったことで、どうにか覚えてきたんだし。正式に武術を習って来たり、戦いで生計立ててる人たちとは、差がついて当たり前だって」
「そうですよ。私なんて、女優したくて、芸能界に入ったんですから」
「そうか、キュアレモネード…だったな?女優になるには修行だ。そのためには、やりたくない仕事もやらなくてはならん事もあるぞ」
「今いる事務所、今はアイドルとして売り出してるんです。私はお母さんが舞台女優で……」
「ヤツから聞いたよ。おふくろさんの背中を追うのもいいが、一度立ち止まってみろ。私もそれで、どん詰まりになった事がある」
「どういう事ですか?」
「私事になるが、私には姉がいてな……」
キュアレモネード(春日野うらら)にブライアンは身の上話も入ったアドバイスを始める。本来、たいていが(現役時に)中学生ほどであるプリキュアたちよりは年上(高校生相当)であるからで、加えて、ウマ娘のレース人生は普通の学生らより、かなり濃密な体験である。ましてや、ブライアンは絶頂からどん底への転落を味わった経験持ちである。故に、下積み生活に抵抗がなくなっており、俳優(女優志望)ながら、年齢(2008年当時に13歳)故に、アイドルのような売り方をされる生活に不満を持つキュアレモネードを諌めた。これは大人のぞみとある日にやりとりを交わし、それで大人うららの辿った道を聞く機会があったからであった。
――日本が扶桑をコントロールしようとしたのは、正式には2015年前後から、疫病の流行直前までの2019年までの数年であり、自由リベリオン兵への理不尽な暴力行為もこの時期に集中した。自由リベリオンがアメリカ合衆国の政治的庇護を受けるようになると、それはなくなったが、その間に日本(扶桑人)への恐怖心が根付いてしまう始末であった。自由リベリオンが事実上、扶桑の駒となったのも、この時に史実アメリカの業と罪を責め立てられたこともあり、自由リベリオンは独自外交を控え、扶桑に追従する事を選んだ。これは軍事的に後ろ盾が必要であったからで、自分らが史実の戦後の日本に近い立場であることを、アイゼンハワーがよく認識していたからだ。史実を裏返したような様相になった彼らは(結果的に)日本連邦の尖兵となっていく。それでしか、信用を得る手段がなかったからで、ある意味、アメリカ合衆国の業と罪が平行世界の合衆国を苦しめる原因になったのである――
――結局、日本の身勝手で数カ国が軍事的に無力化してしまったことから、ブリタニアと扶桑はその穴埋めに追われた。だが、扶桑は太平洋戦線の開戦で、欧州どころではなくなり、北方戦線の放棄が決議されようとしている。これはオラーシャの脱退で陸軍が弱体化したところに、怪異の強力化とティターンズの介入がトドメとなったからで、スーパー戦隊の参戦で、後退の時間かせぎをしている。日本はこれを『シベリア放棄のいい大義になる』と考えたが、住民の感情を逆撫でするのが間違いなしであることから、扶桑の自主判断に任せるという結論を出した。また、扶桑の既存艦艇の能力是正(太平洋戦線向けの改修)改修にも手間取っていたため、欧州はブリタニアが覇権を再度握った。だが、元々、財政的に疲弊していたブリタニア連邦には現状維持が精一杯であった。戦艦も往時の半分以下の七隻の維持が精一杯に陥り、欧州は自力防衛すら覚束ない有様である。仕方がないが、欧州空軍のレベルはいいところ、(史実の)大戦中期(1943年序盤)の水準。ジェット機など、ほとんど影も形もない。リベリオン空軍は本国も、朝鮮戦争以降の水準になりつつあったので、敵ではない状態。この時に、太平洋戦線に注意を払ったか、否か。それが以後の欧州の覇権を左右することになった。ブリタニアは地政学的に、文字通りに命運がかかっていたため、軍隊の一定規模の維持は仕方がない事であり、カールスラントから亡命した科学者を受け入れる事で、技術力の維持が叶うというのは、史実の英国がほとんど成し得なかったことであり、ブリタニアは英国と違い、急速な衰退は避けられたのである――
――扶桑空軍は日本側の思惑では、『日本側が持てない装備を持たせる程度の規模に落ち着かせる』つもりであったが、リベリオンの離反と、カールスラント空軍の衰退に伴い、その代わりにならざるを得なくなったので、日本の背広組の思惑は脆くも崩壊。結局、空母機動部隊の艦載機部隊の仕事も引き受けざるを得なくなった。これは日本側の完全なミスであった。元の艦載機部隊は『自主的に艦載装備を外したら、上に怒鳴られた』などの抗議をしまくり、怒った日本の背広組がトンカチで整備責任者の頭をかち割り、再起不能(下半身不随)にしてしまう事件すら起こった。仕方がないので、元の艦載機部隊は旧任務の継続が命じられたが、色々な分野で混乱を来たした組織は機能不全に陥った。64Fに宇宙艦隊を上層部が持たせたのは、こうした混乱の隠匿のためでもあった。また、整備員らは丁重に扱ってくれる64Fへの転属を希望するのが年を追うごとに増加。これは元々、扶桑は整備員の扱いが悪い部類であったからで、各部隊の幹部級が上層部から叱責をされる事態ともなった。海軍航空隊を前身に持つ部隊ほど、整備の取り扱いが悪い傾向があり、64Fを手本にせよという至上命令が下った。日本義勇兵らとの交流もうまくいっていない一般部隊は、政治と大衆から、理不尽に叩かれる日々に嫌気が差していたが、リベリオン空軍の強大な戦力から生き残るため、前身組織時代のプライドを(やむなく)捨てていく。この意識の変革は『生き残るため』のものであった――
――扶桑の大衆も、日本の手であっさりと地主と小作人の関係が崩壊し、大地主が次々と没落していく様に恐怖。食料自給率は却って低下した。結局、軍は食料品確保のため、工廠の維持と『食料品製造部門』設立を決定した。日本側の思惑と異なり、扶桑の産業は軍部と深く結びついていたための混乱であった。また、扶桑人は余暇を楽しまないと批判を受けたため、土曜も休日にするなどの措置も行われた。農村部はこの国家規模の変革についてこれず、瞬く間に衰退していった。また、華族も学者肌の者が嫌われ、武人気質が好まれるようになったため、旧諸侯系の家柄ほど、学者肌の嫡男が廃嫡されるケースが相次いだ。結局、扶桑は戦国時代から背伸びしていたのが、無理が生じてきた故の混乱であった。逆に、クリエイターを必要とする分野で隆盛が始まり、リベリオンが分裂で文化的勢いを失っていく中、扶桑のサブカルチャーは少しづつ花開いていく。リベリオンから多数のクリエイターが亡命してきた故で、史実より早いペースで、扶桑はサブカルチャー大国へ脱皮を始める(サブカルチャー産業の隆盛が国際的評価に繋がることを理解したのもあり)のだった――
――戦争自体は膠着状態にあった。地球連邦軍が増援を送り込んだこと、自衛隊が秘匿兵器を送り込んだ事が功を奏したのである。扶桑陸軍は旧態依然とした機甲兵力をMSやコンバットアーマーで更新を進めていたが、(自分たちの下請けにしたがった)日本側が差止めを提言した。日本は『自分たちの兵器のライセンス供与を早めるから…』とのことだが、MSの相手はどうするのかということで、結局は『MSとコンバットアーマーは通常兵器の枠を食わない程度に…』と懇願する羽目になり、扶桑の導入計画の阻止は叶わなかった。また、扶桑もその妨害は想定内であり、城塞攻略用の機体である『SSMS-010ZZ』の供与を依頼。地球連邦も承諾した。俗に言うジークフリートのことだ。元々、ダブルゼータは35m級のMSとして計画されており、通常サイズにダウンサイジングしたのが、世に知られる型であるが、サイコガンダムなどへの対策として、原案も開発が続いていた。生産開始から程なくして、マジンガーZなどのスーパーロボットの時代が到来したが、スーパーロボットは民間のワンオフ機であるのが大半であるので、同機の価値はむしろ増していた。技術発展で鈍重さの問題が無くなり、エネルギーの持続問題も解消されたので、サイコガンダムのような『人道的問題を抱えていない』ことから、同機は一定数が量産された。同時期にジム系のキルレートの悪さが指摘されていたのも、量産を促した。実際、装甲をケチっている&武器の威力増などの理由で、ジム系MSは被撃墜率が高い傾向が出ていたので、ガンダムタイプに準じた設計である同機は『量産機を削減しても、生産する価値がある』と判断されたのである。デザリアム戦役後、ジオン残党にエースパイロットはろくに残っておらず、連邦の大型MSを倒せる者はいないのも、量産ペースの加速を促した。扶桑に供与されたのは、その追加生産分の内の10機あまりであった――
――厳密に言えば、『ジークフリート』の名は本来、ジオン側がつけた『識別コード』であったが、それが定着した形であった。最新生産分は技術発展が反映されたモデルであり、スーパーロボットからのスピンオフで、鈍重さの問題も解決された。結局、日本も『通常の戦争では勝てないし、ゲリラ戦術は理解が薄くて、軍全体の戦術にすると、人同士の戦争の認識が『古い』魔女から反発される』事を鑑み、やむなく『超兵器による蹂躙』を認めることになった。地球連邦の事は日本も『正体を強く追求しない』ということにした(仕方がないが、文明レベルが違いすぎるため、薄々と未来人である事は気づいているが、万単位の未来だと思っている)ためだ。また、21世紀中は『企業が国家をいずれ超える』と囁かれていたが、企業の支配力が国家を超えるのを嫌う者たちが『それ』を(統合戦争を利用して)阻止したため、その後に台頭したアナハイム・エレクトロニクス社は色々な手段で影響力を得たが、ビスト家の内紛でオジャンとなり、サナリィも、ザンスカール帝国とコスモ・バビロニア建国戦争への双方の勢力への関わりの不祥事で一気に衰退。企業体の影響力は全体的に20世紀中のバランスに立ち返ることになった。暴走を懸念した者たちの手での民間軍事企業を解体しようとする動きも強まったため、結局、連邦軍は『失業対策』でそれらのパイロットを雇う必要が生ずるなど、シッチャカメッチャカではあった。だが、ガトランティス戦役で熟練パイロットの多くを失っていたので、民間軍事企業の減少自体は歓迎した。その結果、地球連邦の潜在的軍事力自体は減少したが、質は却って向上したのである――
――連合国は21世紀以降の論理で従来の行為を裁かれた結果、有力な士官の多くが人種・障害者差別を疑われ、特高(後、公安)の拷問の末に『潰され』、そのまま犯罪者として、軍を追われる者すら生じた。ルーデルは同位体の逸話と併せて、存在自体が一部で問題視されたが、戦闘力で代えがたい逸材なこと、本人が戦闘キチ◯イかつ、異能者であったという幸運で雇用継続となった(片脚が吹き飛んだ後なので、戦傷者でもある)。これはカールスラント軍将校のほぼ全員が人種差別的言動を(他国軍人の)発奮と実力試しの意図で、わざと口にしていたために起こった事件であった。日本連邦による苛烈な連座式の処罰は現場の萎縮を招いてしまった。だが、逆に、それは日本が戦前から培ってきた『異能者』のクローズアップに繋がっていった――
――プリキュア5の世界――
「日本警察に提出させた資料だが、ドラえもんの世界……スケバン刑事まで内包してやがった」
「はぁ!?えらく懐かしの……本当か?」
「見てみろ。経緯はTV版と漫画版の混合だ」
プリキュア5の世界からの撤収作業中、圭子がドラえもん世界の日本警察から押収した資料には、昭和の頃に活躍し、闇に消えた『スケバン刑事』の記録が残されていた。ドラマ版のように、何人かが『麻宮サキ』を襲名していたこと、初代は漫画版に近い経緯を辿り、バダンの幹部であり、日本のフィクサーとも言われた老人と相打ちになって、若い命を散らし、その亡霊が母校に現れた事が事細かに記されていた。初代の死後、ヨーヨーはその後継となった少女らに受け継がれていったが、『スケバン』の時代が終わる、平成の始まりとともに、スケバン刑事自体が闇に消えたという。
「スケバン自体が時代遅れになる、平成の初め頃……ウインスペクターが出てくる頃だな……には忘れ去られていた……か。と、なると、漫画版とドラマ版の混合だとしたら、初代は1970年代後半、二代目と三代目は80年代の前半から半ば……日本警察も綱渡りな事を」
「宇宙刑事に頼ってばかりだと、沽券に関わる……とかか」
「いや、宇宙刑事ギャバンは1980年だから、おそらくは警察の有志の行動で生まれたんだろう。スケバンが持て囃されたのは、昭和末期の一時期だ。それも、世の規範が変わる平成の始め頃に廃れた、徒花といっていい文化だ。平成以降は学校のいじめも陰湿になってるからな」
「どうして、こんな形で残したんだろうな」
「初代が戦いの末に死んでるからだろう。二代目と三代目は『役目を終えた』後は普通の少女に戻っただろうからか、記録の抹消が試みられた形跡がある」
「その割に、顔写真は残してんだな」
「それが日本警察なりの誠意なんだろ」
黒江と圭子が執務中に閲覧していた資料ファイルは背表紙等がやけに古ぼけていた。そのことから、最後に記録が作られてから、誰も閲覧することがないまま、おおよそ数十年も資料室の隅で眠っていた事がわかる。最後のページは『1987年』頃の手記であり、ナチ残党との戦いのために『四代目の選定を急ぐ……』との内容であった。そのことから、87年頃に四代目スケバン刑事の選定作業が進められていたが、ナチ残党との戦いは防衛庁(当時)に任せろという当時の警察庁長官の圧力で、担当部署自体が潰され、スケバン華やかりき風潮が昭和の終焉とともに、事実上の終わりを迎えたことで有耶無耶になり、スケバン刑事という枠組み自体が昭和の終わりとともに、歴史の闇へ消えていった事がわかる。ファイルの日付が昭和のうちに終わっている事がそれを補強している。
「昭和の終わった後はコギャルの時代になり、2000年代を超える頃には、コギャルさえも時代遅れになったから、復興させようにも、復興できなかったんだろうな。学生の間でも、年功序列の上下関係すら有耶無耶になる時代だしな」
圭子が『日本警察が平成以降に、スケバン刑事を復活させなかった』理由をそう考察した。実際、2000年代終わりに学生であったのぞみやラブは学年別の上下関係をちきんと意識していたが、時代が更に進むと、上下関係を意識しない関係を好む者も出てきている。のぞみは少女時代が2000年代の割に(母が接客業である理髪店を経営しているのもあり)、世代の割には礼儀正しい面を持っていたのがわかる。
「2000年代を超えると、まともそうな外見でも、裏で陰湿ないじめをしてるってのも日常茶飯事だからな。逆に、ツッパってる外見の奴が子供や障害者とかに優しい場合もある。そんな時代になったから、スケバン刑事も過去のものになったって考えてたかもな、日本警察」
「のび太が小学六年くらいの頃くらいだよな、そんな風な傾向が顕になってきたの」
「親たちの世代が校内暴力の時代の連中になってきて、仕方ないが、教師の力も無くなったしな……。あたしらの頃は張り倒されるやら、ムチでやられる事もあったが、平成の半ばにもなると、親のほうがモンスター化してくるからな」
「俺達の頃は、級長なんかになっちまうと、『答え間違ったら、ムチ打ち』だったからなぁ。それを思えば、のび太やのぞみが羨ましいぜ」
黒江たちの子供時代は大正期であるので、当然ながら、戦前期の教育を受けた世代に当たり、級長などに選ばれたら、『答えられなければ、ムチ打ち』すらあった。本来、生きる時代が半世紀以上離れていた故の差だが、問題の答えを間違っても、小言などで済むのび太たちを羨ましく思った事がある二人。
「品行方正かつ、普通に過ごしてれば、天体観測とかに連れて行ってくれた人もいるが、のび太の時代には『サラリーマン化』が進んでたからな。ま、のび太の小学校の先生は古風だったけど」
「スケバン刑事は元々、校内暴力で学内秩序の失われた時代で必要にされたが、表立ってツッパること事態が時代遅れになった時期には、扱いに困る存在。その意識があったから、昭和が終わったあたりで絶えちまったんだろうな」
「日本警察は何を想定してたんだ?」
「日本という国の中に巣食う、あからさまな巨悪を撃滅することじゃねぇのか?初代スケバン刑事が死んだ理由を考えれば……」
「初代麻宮サキ……いや、この言い方は適切でねぇかもしれん……か」
俗に言う、麻宮サキという人間はたしかにいた。1958年生まれ、1978年の某日に敵と相打ちになり、その若い命を散らしたとの事。その彼女の死後、少なくとも二人の少女が『麻宮サキ』の名をコードネームに用いていた事、初代の遺品であるヨーヨーを二代にわたって継承していた事はファイルに記されている。関係者はこのヨーヨーを『麻宮サキの遺産』と呼んでいたとも。初代の遺体が茶毘に付された後、亡くなった場所から回収された事から、初代は何らかの理由で相打ちになった際に、最後の意思表示も兼ねて、ヨーヨーでトドメを刺したのでは?とも記されている。
「つまり、初代が亡くなった後、公には『いない』ことになった麻宮サキという存在を隠れ蓑に使おうと考えついて、二代、三代と継がせたってことだな。で、四代目を探そうとしたが、それが潰された後、部署も再建される事無く、資料室の奥でコイツが埃を被ってた。連中も、扶桑陸軍を笑えねぇぞ」
「日本警察は何したんだ?」
「おそらく、レスキューポリスに夢中になったんで、お払い箱だろうな。そのレスキューポリスも、景気悪化でポイっと来てる。日本警察は旧軍や、扶桑軍笑ってる場合じゃねぇぞ」
資料から読めたのは、日本警察が1970年代後半、何らかの方法で学生刑事が必要となり、10年ほどは担当部署が維持されたが、その後に(警察庁長官などの代替わりで)お払い箱とされた事、学生刑事という曖昧な立場に置かれた少女が記録では数人いて、その初代は悲劇的な結末を迎えた事。日本警察が自ら忘れ去っていた、ある一人の少女の結末に光が当たることで、日本警察の2020年代時点の『古参の幹部』の一部が『プリキュアに寛容である』理由が判明するという、因果な話であった。