――扶桑皇国は結局、大日本帝国のアンチテーゼを是とする日本の左派の妨害で、兵力補充に事欠く有様であった。無人兵器はこういう人手不足の解決策として推進されていったが、最後には有人兵器に取って代わろうとするために、常に失敗する…の繰り返しであった。その最初のムーブメントが扶桑の太平洋戦争であった――
――とはいえ、この時は未来世界でのムーブメントと違い、純粋に人の補助という目的で起こったものである。『一部の極限された天才たちのみが活躍するのは、組織の今後には良くない』という理由も存在したからだ。とはいえ、当時は『ベテランと新人の間が抜けたおかげで、あっちこっちの部署や部隊が機能しない』という問題が顕現しており、特に、制空権確保のための部隊の編成にも、一苦労を強いられる始末であった。これは隊の中核を担う中堅となるはずの若手将校や下士官の多くを中央から追放してしまった弊害で、芳佳たちは例外中の例外であり、通常、若手が一人前になるには、かなりの時間が必要であった。米軍のような物量作戦を取れる余裕は扶桑にもないので、必然的に無人兵器はかなり使用されていた。特に、ダイ・アナザー・デイでの魔女狩りの一翼を担った『無人戦闘機・ゴースト』は連邦、ティターンズ(+ネオ・ジオン)の双方が使用していた。有人部隊の機種更新と育成が追いつかないのと、双方の生え抜きの熟練パイロットの温存のためで、M粒子の戦場で旧来式が廃れる一方、自立型人工知能搭載型が持て囃された。とはいえ、シャロン・アップル事件の影響で、研究が止まってしまったが、統合戦争直前の時期のロストテクノロジーの塊であるドラえもんの登場で復興。結局、ひみつ道具時代の日本の研究が評価されるのは、偶発的に自我を得た『アナライザー』の登場が必要であった――
――キングス・ユニオンの戦艦部隊が縮小されたのは、ほとんどが大戦勃発前の旧式艦である上、ライオン級の定数維持も覚束ない財政状態に陥ったためであった。空母の強化を行おうにも、色々と足りないなど、ブリタニア側の不備が露呈したからである。ライオン級も旧式と見なされるようになったため、英国の意向で予備役行きにされていた。大規模海戦を戦える力は、1946年以降のブリタニアには残っていなかったのだ。そのため、日本連邦はこの有様に落胆。ほぼ独力で太平洋戦争を戦う羽目に陥っていた――
――結局、日本の財務当局の目論見に反し、大艦巨砲主義が生き残る世界である『魔女の世界』では、戦後の抑止力的な意味合いでも、戦艦は必要であった。M粒子の影響で、ミサイルに必中性が保障できない状況であり、『核兵器が世界に拡散するよりは……』という政治判断も作用した。ブリタニアの体たらくを責めたかった日本だが、第二次世界大戦前夜の英国は財政的に火の車の状態であったのも事実なので、責めるに忍びなかった。こうして、ブリタニアは事実上、連合国の武器庫として扱われることになった。リベリオンが失われたことから、連合国全体での軍事行動が困難に陥っていたからだ。だが、ブリタニアは太平洋戦争の大艦巨砲主義ぶりをよく観察しており、新造戦艦を定期的に用意する事は怠らなかった。それが後に、ガリアとの明暗を分けることになる――
――日本連邦は核兵器などを使わない代わりに、メーサー兵器などを積極的に用いた。これは物量合戦では絶対勝てないからで、それに大きく落胆する古参の魔女も多かった。それを補うためには、兵器の質を当時の平均より隔絶したレベルに上げなくては……という強迫観念に駆られたせいである。魔女関連装備は(色々な都合で)史実の戦闘機/戦車と同等のスピードでしか進歩できないので、即戦力を求める日本から戦力としてカウントされておらず、雇用維持のための道具扱いであった。仕方がないが、魔女達は対人戦争を想定した教育は受けておらず、悪く言えば、花嫁修業のような扱いであった故で、前世での坂本のような『武士気取り』の者は異端であった。坂本はこの事を『あの時のことは、若気の至りだと思ってくれ』と弁解している。そんなわけで、異能者が歓迎される土壌は整っていたのだ――
――異能者は『魔女の世界』で生まれた言葉である。1944年を境に、異世界との交流が盛んになり、魔法だけが異能でないことが判明したことで、軍にいる特殊能力者を『普通の魔女』と区別する必要があったために便宜的に用いられ始めた。転生については、最高幹部が代替わりで情報を引き継ぐことで、情報の継承の手引きが整えられた。山本五十六や小沢治三郎などは1950年代には『平時に戻れば、法律上は退官になる』年齢だからで、取り急ぎ決める必要があったのだ。ミーナは後の世に『不幸であった』と同情され、名誉回復の名分を得るのだが、その理由の一つに『東條政権による情報の隠匿』があったという不幸中の幸いがあり、彼に責任を被せられたからである。実際、彼はどの世界線でも、保守性と功名心に由来する大失敗をやらかし、国を亡国に導いてしまうらしく、魔女の世界は『生きているだけマシ』であった。彼の率いた統制派、敵対していた皇道派の双方は『亡国を招いたから』ということで、日本の手で解体されたが、今度は『横の繋がりが断たれた事による連携の不備』を露呈するなど、日本的組織の限界も露呈した。ミーナはそのことから、扶桑の大衆の目を逸らさせるための政治的生贄にされた面もあるので、名誉回復の余地はあったのだ――
――結局、連合軍全体での作戦行動が困難に陥ったことで、この期に及んでの派閥抗争に明け暮れるガリアとブリタニアに愛想を尽かした将兵らが、部隊ごと日本連邦に与する事例が相次いだ。ブリタニアは財政的にほぼ死に体であったので、この動きを黙認。東洋艦隊の指揮も扶桑に委託した。ブリタニアとしては、太平洋戦線に参加できる状態でないが、兵力の融通ならできるからである。この動きを糾弾したシャルル・ド・ゴールだが、ペリーヌと国防省に『今のガリアには、独力で国防をする力はない』と断言されたことから、やむなく認めた。だが、本人は東洋に(植民地があるのに)無関心に近く、それが後々、ガリア第四共和政を解体に追い込むこととなる――
――かくして、扶桑一強の連合軍体制は欧州の衰退で決定づけられたと言ってよかった。欧州海軍はリベリオンの一方面艦隊にも満足に抵抗できない程度の力しか残っていなかったし、新鋭戦艦の喪失を恐れたブリタニア議会の圧力でブリタニアは海軍を出せず、覇権国からの転落が決定づけられていた。日本連邦は『兵力を万規模で出せば、無能と叩かれる』ことから、組織だった行動が抑制されてしまうなど、政治の軍への抑え込みが裏目に出るのが常態であった。そのことから、一騎当千の強者が歓迎されるようになった。こうして、異能者は事変時の迫害から反転し、『国家の英雄』と扱われるようになったのだ――
――結局、海軍航空隊出身者は(1943年以降の個人記録がないことから)伝聞や他国の記録を撃墜数のソースにせざるを得なくなり、世間から『ホラ吹き』と罵られるようになっていったことから、戦死率が増大。1949年盛夏の時点では、空軍移籍者を含めても、中堅の四割近くが何かしらの原因で戦死済みという、散々たる有様であった。これはミサイル兵器の実用化による変化に、一般の魔女部隊が対応できなかったのも原因であった。異能者はミサイルに耐えるか、撃ち落とせるので、人材の節約の観点からは大歓迎であったが、失われた人材の穴埋めも必要であったので、ストライカーの完全なジェット化が始まり、対人戦も前提にしての『チャフ/フレアの装備』が急速に当たり前となっていった。F-86ストライカーが一般部隊に完全に受け入れられたのも、この時期である。第一世代宮藤理論からの脱却には、まだ長い時間が必要であった――
――こうした、予てからの陸海空での混乱は、扶桑軍の組織全体での行動を抑制させてしまう結果となっていた。南洋方面軍は緊急措置で、兵器の独自購入に踏み切ったが、それは元来、防衛に必要な規模にすら達していなかったのを増強中であったのを、無知な日本の役人が差し止めた弊害でもあった。日本側は扶桑の状況を把握すると、大抵の場合、目を回したという。戦線を支えるのは、実際には、極限された超人たちと超兵器の働きによるものであった――
――ある日――
「参りますよ、三国志や戦国時代じゃあるまいし……」
「仕方あるまい。日本の政治は戦死者を嫌うのだ。一般人による拳銃の保有すら禁じようとして、怪異の退治の観点から、猛反対に遭ったそうだ。結局、猟友会を作らせることになるそうだが、上手くいくかどうか」
怪異がいるため、扶桑の一般層の武器保有を完全に禁ずる事はできなかった日本。自分たちの猟友会の高齢化問題もあったためで、扶桑の退役軍人などに駆除などをやらせたかったのだ。
「大先輩、それで日本は?」
「うむ。Gフォースの結成で茶を濁しおったわけよ。儂らに頼り切りでは、面子が潰れるとかいってのぉ」
「それで、黒江さんは」
「坊主も苦労しとるのだ。松代大本営跡から、自衛隊が隠匿していた超兵器を引っ張り出したのだからな」
「自衛隊はなんで、あんなに隠してたんですかね?旧軍のも含めて……」
「旧軍のは、敗戦後の接収を防ぐため、あるいは戦後の時代、野党の追求で予算のムダ遣いと言われ、政治スキャンダルになるのを防ぐためだろう。だから、放射性の中和効果を持つ武器を持つスーパーXシリーズがあるのが判明した後、日本の国会は荒れ狂ったというからの」
この会話からは、松代大本営は旧軍と自衛隊の危ない代物の隠し場所にされていたことがわかる。
「スーパーXシリーズに『カドミウム弾』が用意されていた事で問題になった。本来は臨界事故や他国の原潜の事故が国内で起こった時に使うつもりだったそうだが……カドミウムは毒性が強くてのぉ」
カドミウムはイタイイタイ病の原因物質であるように、毒性も強い。だが、20世紀末の技術力では『核分裂を抑制する』には、カドミウムを使うしかなかったのがわかる。大震災の後、スーパーXⅢの存在が明らかになった後、カドミウム弾の存在が問題となったが、開発時に『臨界事故などを想定した装備だった』と説明された事で、批判は一気にトーンダウンした。日本の悲願である放射線の中和に効果があったからだ。開発当時に『発がん性』などは完全にはわかっておらず、かといって、21世紀になっても、核分裂中和効果を持つ物質は他に発見されていない。
「イタイイタイ病の原因物質でもあるから、自衛隊も90年代で調達を打ち切っている。とはいえ、今後に臨界事故が起きれば、在庫分を処分代わりに使うとのことだ」
「それで、日本は?」
「歴史的には、原子炉に代わる手段として、日本は核融合炉の実験を繰り返すそうだ。それで、22世紀にはレーザー核融合炉が量産される。それから100年後には、主流がM式に切り替わる」
「機動兵器の動力として普及したと?」
「量産機でも、平均で5000kwに達する出力になったからの。最新型のミノフスキードライブは高額じゃ。量産には向かん」
ガンダムタイプの動力を刷新する際に用いられているのが、ミノフスキードライブである。旧来の核融合炉より高出力であるが、機体構造の強化が必要なことから、V2以外には、物理的に頑強な構造の旧式大型機の近代化改修に用いられている。これは小型機に積むには『小型機の物理強度の限界』が問題になったからで、V2が如何にイカれた完成度であるかがわかる。
「とはいえ、地球連邦がそうであるように、MSはお高いんじゃ。ジェガンが未だ現役なのも、そういうことなんじゃ」
「あれ、大型としてのジム系量産機では、最後ですよね」
「扱いやすいんじゃよ、あれは。グリプス戦役の頃の百式と同程度のテックスペックと扱いやすさを両立しておったからの。大型のマスプロ機としての完成形じゃ」
ジェガンは性能面で一線機として見なされなくなりつつあるものの、扱いやすさと、整備性の高さから、未だに現役稼働中である。コズミック・イラ世界の量産機が半年で更新されるのに対し、ジェガンは(艦艇のハンガーの規格の問題もあり)幾度もの戦争を経ても健在であった。赤松も『(良くも悪くも)クセのない機体』として、高く評価しているのがわかる。結果的に、『マスプロ機としての連邦とジオン系技術の融合』の到達点として評価されたのが窺える。だが、元々がコストダウンで生まれた妥協の産物であることから装甲強度に課題があり、部隊単位で『ガンダリウム合金』に装甲とフレームを換装した事例もある。
「サイコフレームも、地球人全体の危機続きで完全には規制されんかったからの。本当は技術自体の封印が提言されたそうじゃが、そもそもミネバ・ザビの言う事じゃし、ジオン公国が法的に生きてることを肯定するようなものじゃから、表向きはジオン共和国と連邦の外交交渉ということにされている」
ミネバはデザリアム戦役で異星人の脅威を認識したが、既にジオン残党は派閥抗争でボロボロであり、ミネバを盲信する者たちはいなくなっていた。また、オードリー・バーンに完全に転じようにも、自分を信じてきた将兵たちのことは忍びなかった。そのため、共和国の旧ダイクン派をダミーにしての外交交渉を行った。それがミネバの公的な動きの最後とされる。
「で、ジオン共和国はムーンクライシス事件と残党の争乱の責任を負う形で解体、ミネバ本人も、共和国の解体後は旧王室の生き残りとしての年金生活に入ったってわけですね」
「公には、旧共和国最後のお情けってことだ。まぁ、別世界の個体が政治的影武者をやってくれたんで、バナージの坊やとイチャコラ生活に入れたんだがね。それはそれで良かったというべきだな」
「いいんですか、もう一人のほうは」
「政治的責めを負うのは、自分の役目だと言ってるからのぉ。連邦としても、スケープゴートになってくれるから、容認したそうだ」
「ややこしいですね」
「それも政治じゃ」
ミネバ・ザビは公には、残党を統率できなかった責任を負い、火星圏で謹慎生活に入ったと発表されている。実際には『平行世界の個体がその手の政治ショーをしてみせ、その裏で、未来世界の個体はオードリー・バーンという人物となり、第二の人生を歩みだしたのである。なんとも複雑な話だ。
「しかし、ティアナ。お前の過去生じゃが、のびの坊主(のび太)が調べたが、なかなかに壮絶じゃな」
「大先輩、ご覧に?」
「タイムテレビでな。まぁ、その姿では、地球人として生きていた頃のお前としては、周囲から見られんだろう」
「どっちでもいいんですけどね。私は名前が変わらなかったんですよ、地球人でも、多分、その末裔としても。まぁ、ローブとチャイルドの両方が使えるってのも、チートだと思いますよ、我ながら」
「その時の姿に戻った感想はどうだ」
「ティアナ・ランスターとして、16年も生きてきて、いきなり、『鴇羽舞衣』に戻れと言われてもって言われても…って思いましたよ。管理局への配慮ったって」
「仕方あるまい。ティアナ・ランスターは空士試験に落第した。これは事実だ。いくら、こちらの訓練と機材で飛べるようになったと言っても、向こうには向こうの面子がある。それに、ミッドの大衆は『後天的な訓練で飛行可能にはならない』と思っておるようだしの」
赤松はミッドチルダの住民の先入観の存在も、ティアナの復帰に障害となったと説明する。実際、スバル・ナカジマがそうであるように、空戦の才能は個人の脂質の有無による。だが、魔女の世界では『ストライカーユニット』という補助器具や、魔力制御に使い魔が関与するという体系の差により、ある一定の才能があれば、空戦魔女となれるのだ。
「ある意味、異能者になってくれたほうが、管理局としても、波風立たないといったところか」
「なんか、そう言われると……」
「管理局も波風立てたくないんじゃろう。動乱で調停者気取りできなくなった上、もっと強大な異能が存在する事を、儂らが示してしまった以上、それまでの秩序を守るので精一杯になっとる。フェイトの見立てでは、もっても、あと半世紀……」
管理局は急速に制度疲労を起こし始めている。赤松はいう。魔法至上主義を前提に生まれた組織なので、一旦崩れだすと脆いのだろうとも。実際には、魔力もけして、クリーンではないが、純粋科学より安全だという触れ込みであった。だが、実際には、より強大な異能も次元世界には唸るほどあるし、純粋科学が極まれば、特S級の魔獣すら赤子同然の力を持つロボットが生まれる。その事実が部内で『周知の事実』と化した事も、管理局の急速な求心力の低下に繋がった。フェイトが『組織の寿命は(持って)あと半世紀だろう』というのは、かつての戦乱期の記憶もあり、現在の秩序の維持を望む声があるからだろう。
――かくして、時空管理局の組織としての残り寿命はM動乱の時点で確定したといっていい状況になりつつあることで、ティアナの帰属問題も自然と解決に向かった。時空管理局は『店じまい』に向かうからであった。同時に、魔女の世界の魔女たちも『兵科の威光に頼らない』生き方を探る時期に入った。扶桑皇国自体が次の時代への移行期に入ったのもあり、魔女達は次第に、完全に職業軍人となるか、任期満了後に漁師になるか、MATで働くか。その三つのルートに絞られた。扶桑は戦時になると、花嫁修業という考えは消し飛ぶし、諸外国でも、ティターンズの非道ぶりに、魔女経験者の転職が後ろ指をさされるようになった。ビューリングがモデルから軍人に戻ったのは、その事も絡んでのことだ。結局、このような空気により、魔女達は老若を問わず、否応なしに戦うことになっていく。同時に、魔女というだけで威張れる時代も終焉へ向かう。突然変異で現れし、異能者への迫害のツケと言える窮状であると同時に、旧来的な意味での魔女が時代遅れになる時代の到来であった――
――自由リベリオン海軍は設立時に持ち込んだ艦艇で編成されていたが、老朽艦も含んでいたので、その更新も必要であった。米軍の協力も得られたが、いきなり、イージス・システム搭載艦に切り替えるのは無理があるという事により、戦後間もない時期の駆逐艦の設計を与えることにした。そして、日本連邦との規格統一の必要から、モンタナとアイオワ級の主砲の換装なども行われていった。予備戦力の乏しさもあり、扶桑国民へのポーズの一面もあったが、臨戦態勢にあると示せるため、それは扶桑国民へ公開された。大和型に匹敵する性能を持つと宣伝されているモンタナは(扶桑国民に恐怖の対象とされていたことから)ある意味、客寄せパンダ同然の扱いであったが、バックボーンを得られたことから、無理のない改良が行われる事でもあった――
――64Fの基地がある南洋の地域は中間地点の開発がようやく開始され、住宅街の整備がようやく始まった。当初の軍都計画が頓挫した後、日本側の損害補償の一環での造成が始まったものだ。日本の意向で軍と無関係の住宅街としての開発にはなったが、必然的に軍関連の仕事につく者たちが寄り集まった事により、事実上の軍都となった。これは扶桑は日本の予想以上に、軍が国民の暮らしを文字通りに支えていたからで、日本のように『民需のついで』でしていたのではないことによる。ましてや、リベリオンの黒幕が黒幕なので扶桑としては『世界秩序の危機』であり、なりふり構ってもいられなかった。ティターンズは大量殺戮に躊躇しない集団なのだから――
――皮肉にも、ティターンズの存在は日本連邦の軍事力を飛躍させ、魔女の世界の他国からは世代の違う装備が出回る理由とされた。他国への技術流出を恐れた日本が、先進装備の他国軍による使用を締め出したこともあり、太平洋戦争は『日本連邦の戦』と化した。そのため、他国はほとんど断片的にしか情報を得られなかった。この明暗は更に後の時代に分かれ、ガリアは植民地を失い、完全に衰退の様相となるが、それは未来の話だ。日本連邦は狂ったように、軍事技術を飛躍させ、レーザーやビーム兵器すら普通に投入した。そのため、M4中戦車はゴミクズのように破壊されまくった。敵味方ともに、M4くらいは軽く撃破できる武器が使われたからだが、軽戦車が文字通りにブリキ扱いの戦場だからでもあった。ティターンズは白人至上主義的な風潮もあったので、構図としては、北米の南北戦争を逆にしたようなものであった。違うのは、扶桑が日本の想定以上に資源大国であり、工業立国として、早期に成功していた点であった。そのため、欧州に艦艇を派遣できるようにしていたが、(日本が外征を嫌うためもあり)欧州に自軍の艦艇を派遣する機会は次第に減り、以後は太平洋が庭となっていく。連合軍は有名無実化(欧州の衰退で)が進展していくので、全世界が『一致した軍事行動』を取れたのは、この時代が本当に最後となる――
――ミサイルがM粒子で必中性を得られず、また、誘導装置を組み込むと、一発あたりの値段が跳ね上がることが判明したことで、史実ほどの地位は得られなくなったため、日本連邦以外に『積極的に装備する』国は現れなかった。日本連邦は質でどうにかするしかないお国柄なので、旧来の魚雷の殆どを外し、ミサイル装備に置き換える構想であったが、怪異には有効打にならない上、重巡や戦艦への効果が疑問視された事から、結局は保険代わりに双方を装備していくこととなった。64Fの主力がいない場合、自前でスーパーロボットの運用は不可能であるためである。その一方で、日本への示威として、ブラックグレートや量産型ゲッタードラゴンは存在が誇示されていた――
――格納庫で整備を受ける量産型グレートマジンガーやゲッタードラゴン。その風景はプロパガンダ用に撮影された光景だが、複数の『主役級スーパーロボット』が軍用兵器さながらに複数の個体が整備を受けている光景は日本へのこれ以上ない示威であった。スーパーロボットはリアルロボと異なり、量産に当たってのコスト削減(装甲材や構成部材のコスト削減など)はなされていないので、そのままの増産に近い。ゲッタードラゴンもレーザーキャノンなどのオプション装備以外の全機能を引き継いでいる。強いていうなら、ダブルトマホークも『ロングトマホーク』機能を省いた単柄のものとなっている。量産型ゲッタードラゴンは大半が『ゲッター真ドラゴン』の構成素体としての存在だが、その機能を省かれた『純粋な量産型ゲッターロボG』としての個体も製造されており、ゲッターD2の上位機種扱いで生産されている。その個体の整備風景がプロパガンダ用の写真に用いられたのである。扱えるパイロットは超人である幹部層のみであるものの、通常兵器より圧倒的に強いスーパーロボットを使えるというのは、大いなる利点であった。連合軍構成国の離反がダイ・アナザー・デイで相次いだため、その防止のためにも、圧倒的な力が求められた結果である。魔女は(メタ的に)魔力値で宮藤芳佳を超える者は(直系子孫以外に)出現し得ない。かといって、超強度の金属で構成されるスーパーロボットを一撃で倒す力は『魔女の世界』には存在しない。それは連合国構成国の裏切りの抑止に充分に効果があった――
――オトナプリキュア世界。ルナマリア・ホークは旧所属先のザフトに(無理矢理)復帰させられたが、厄介払いも兼ねて、64Fに正式に『出向』とされた。ただし、ザフト部内での扱いであり、ルナマリアの正式な所属先は『地球連邦軍』であった。その都合上、普段は地球連邦の軍服姿であった――
「のぞみ。あんたも大変ねぇ」
「口調、今は変えてんだ」
「対外的には『ルナマリア』としての参戦だから。そんなわけで、ザフトにも復帰させられてさ」
「へ、戦死扱いじゃ?」
「生存が通知された途端に、ザフトに呼び戻しがかかったのよ。アムロ少佐に蹂躙されたせいで、ザフト全体が人手不足なせい。本当なら、問題が露見した『前政権』で重宝されてたから、冷や飯食いにされるのは覚悟してたんだけど……」
ルナマリアは、ザフト在籍時とあまり変化のない振る舞いを見せる。ジャンヌとしての丁寧な口調との使い分けは任意でできることも示唆する。のぞみAと同僚であったので、その記憶を共有した『大人のぞみ』とも気さくな関係である。プラントは二次大戦に介入した地球連邦に『またも』蹂躙されてしまったので、目を覆いたくなる人手不足に陥った。シンやルナマリアのような『世界から行いを否定された政権で重宝されていた人物』でも、(普段の素行に政治的問題がなければ)軍籍を剥奪されなかったことが明確にされる(例として、第一次大戦後、イザーク・ジュールは民間人殺害の容疑で極刑にされかかった事があるが、ギルバート・デュランダルが『イザークが組織への忠誠心のある人材である』のを裏の理由にして、助命した)。
「プラントは第三世代が生まれなくてね。先細りなのよ。あたしと妹は、殆ど調整されてないから良いんだけど」
プラントは実のところ、コーディネイターのみでの国家体制の維持に行き詰まりが見えてきている。第三世代が生まれにくくなっているからで、シーゲル・クラインが『コーディネイターは新たな種ではない』とし、先祖返りと取られる施策を極秘に実験していたように、コーディネイターは『遺伝子をいじくり回しすぎた』弊害で行き詰まっているのだ。
「遺伝子をいじくり回しすぎて、生殖能力が落ちたって奴。暗黒星団帝国みたいなことになってんのよね。今となっちゃ、あんま笑い話にもできないってヤツ」
「実際に見たわけだしね、技術を変な方向に向かわせた結果ってのを。で、どうすんの?」
「一部の良識派がハーフコーディネイターってのを進めてるけど、先祖返りに近いから、プラントじゃ公にできない。したら、今度は差別の対象になる。それに、ラウ・ル・クルーゼってのがいたけど、実際にはナチュラルで、『ニュータイプ』じゃないかってのがザフトのトップエースだった話もある。公には、コーディネイターってされてるけど」
ルナマリアたちの代には戦犯扱いで伝わる『ラウ・ル・クルーゼ』だが、ザフトのトップエースであった事は事実である人物。地球連邦軍による事後調査で『実はニュータイプだった』疑惑が湧き上がっている。ムウ・ラ・フラガの話が本当なら、ムウ・ラ・フラガの実父(資産家)のクローン(試作)であり、天性の才能と血を吐くほどの努力で、ザフトのトップエースにのし上がれたことになる。
「ニュータイプか。あれの中でも、アムロさんは戦闘特化タイプになる。純粋な能力じゃカミーユさん、総合的にはジュドーさんだそうだけど、基本的に機動兵器に乗せると、鬼強い性質なんだよな。ゼータタイプも難なく乗りこなせるし」
「あたしも大変だったわよ。プラントのMSは基本的にジオン系寄りだけど、推力で無理に飛ばしてるのが多いから、ゲタ付きなんて、前大戦の生き残りじゃないと経験してないしさ。戦闘機型への可変なんて、プラントは自前で作ったのは一機種しかないし……」
ルナマリアはザフト時代に可変MSのシミュレータ自体は経験があるが、実際に動かしたことがなかった事もあり、転移後にアナハイムで働いていた時期に勉強した。未来世界では、可変機=飛行形態への可変であるので、コズミック・イラよりは楽である。
「ウェーブライダーとMS形態の使い分け、難しいじゃない?」
「あたしは元々、魔女としての空戦ノウハウはあったから、そこはあまり苦労しなかった。むしろ、レシプロだったからさ、色々と」
「まぁ、そこは転生した時代故の苦労ってヤツよ。別のアンタだけど」
「そうなんだけどね」
大人のぞみは『記憶と経験を共有しているが、のぞみAと多少の違いがある』状態なので、乗機の適性に違いがある。のぞみAより『汎用型向け』の適性であるようである。
「向こうは生粋の戦闘機乗りっしょ?こちとら、遊園地のジェットコースターにもほとんど乗ってこなかったんだ」
「うっそ。プリキュアだったのに?」
「向こうと違って、私はブランクあんの。運転免許証は大学の時に取ったけど、身分証代わりに取っただけで、ペーパードライバー」
とはいえ、大人のぞみはその状況でありながら、共有現象が起こっただけで、黒江に鍛えられているAに遜色ないレベルの戦闘を即座にこなせている。これは天性の才能という他ない。
「それでよく……共有現象が起こったとはいえ、あんた自身の才能よ、それ」
「英霊を兼ねてるあなたがいうと、説得力あるよ。わたしの本職は教職なんだよ、クビになったけど。当分は向こうの代理で、おまんま食っていくつもりだけど」
誰がなんと言おうと、のぞみは戦士として、超一流の才能を持つ。それが証明されたことになる。
「教え子たちや両親には、提督に偽装を兼ねての連絡を頼んどいた。ココには悪いけど、わたしは戦士なんだね、誰がなんと言おうと」
「大いなる力を持つ者は、否応なしに世界への責任を背負わされるって事よ。私も、どっちの姿でも、歴史を動かす運命にあるのよね」
「力を持った以上、個人的な安穏は許されざる……ってヤツか……ココは許さないだろうけど、わたしにとって、この姿(キュアドリーム)が青春だもの。プリキュア化が『若い時限定の魔法』じゃ……あまりにさ」
「人々が望む限り、英雄は常に求められる。怪人が出現しなかった時代でも、特警ウインスペクター、特救指令ソルブレイン、特捜エクシードラフトみたいな形で、ヒーローは生まれていたもの。彼らみたいな事をすればいい。誰かを助ける事を……ね」
「医療知識ないわけじゃないけど、付け焼き刃なんだよなぁ。佐渡先生と雪さんいるし、ちゃんと勉強すっかな……。後輩に医学部志望もいるし、かれんさんは研修終えたばかりだったな」
プリキュアには、おおよそ数人は医学部志望がいた。このオトナ世界でも、それは同じであり、実際にキュアアクア/水無月かれんは後期研修を終え、正式な勤務医になった矢先であった。
「そういえば、先輩がその3つのヒーローの『遺産を受け取った』……なんて言ってたっけ。ヤマトの資料室にある?その彼らにまつわるものの」
「確か、23世紀には日本政府の機密が解除されてるから、普通にデータベースに載ってるそうよ。公的機関のヒーローだったから」
大人のぞみは今後の活動の参考のため、特警ウインスペクターから特捜エクシードラフト。その三代の『レスキューポリス』にまつわる資料を閲覧しようと思い立ち、ヤマト艦内の資料室に向かうことにした。ルナマリアもそれに同行した。大人のぞみはプリキュア活動を続けるのみならず、活動の幅を広げたいようだ。ドラえもん世界の転じた『未来世界』の日本警察が過去に有し、一時は日本の誇りとまで謳われた『レスキューポリス』。その軌跡を二人は追うことにした。