ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版   作:909GT

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前回と打って変わって、ゴルシ(大真面目)回です。


第百九十九話「ゴルシとジェンティルドンナ」

――日本の左派は扶桑を(内心で)『都合の良い、合法的な植民地』としか見なさなかった。その考えはアメリカが戦後の日本をそう見ているのと『同じ穴の狢』である。彼らが信じていた優位性が次々と否定されていった結果、軍事的に扶桑に劣位であることが顕になった。特に、『最新兵器が戦艦に有効打を与えられない』事実は『ミサイル兵器を最強と信じる』戦後の人間らには衝撃であった。忘れ去られているが、戦艦は『音速で飛んでくる、鋼鉄の弾丸に耐える』ため、分厚い装甲を持つ。ましてや、扶桑は史実の日本帝国より工業力がだいぶ上であったのだ。故に、日本の記録よりも攻撃に頑強さを発揮した。大正期の建艦で、老朽艦になりつつあった陸奥であろうと。扶桑は本来、紀伊型戦艦をワークフォースとして使用し、大和型は『次世代の砲の実験艦』という位置づけであったが、紀伊型戦艦が想定外の陳腐化を露呈したため、大和型を主力に添えるしか手立てがなかった。地球連邦の手助けで、超大和型に切り替えつつある。それが彼らの誤算であった――

 

 

 

 

 

 

――扶桑も本来は航空主兵論になりつつあったが、史実のメタ情報でそれの破綻を知らされ、大艦巨砲主義が逆に息を吹き返すという結果となっていた。物量合戦では絶対に負ける故、大艦巨砲主義を装うほうが『まだ善戦できる』という身も蓋もない話に、造船官も、航空行政担当者も、皆が一様に落胆した。更に、空母が『艦載機の大型化で、空母は戦艦以上の大きさが必要となる』事は航空関係者を特に愕然とさせた。その進化をストライカーに反映させると、いずれは装甲服型になるだろうという予測は既に出ている。オーバーテクノロジーを用いてだが、日本は過去に装甲服型の強化服を実用化していたからだ――

 

 

 

 

 

 

――連合軍は21世紀世界の介入で、急速に正面戦力を削減されてしまったため、組織だった行動が不可能に陥っていた。これは財政健全化を大義名分にしての軍の大幅削減で、欧州はブリタニア含め、アテにできない有様に陥った。これにより、軍縮で国民の福利厚生費を捻出しようとしていた一部勢力は完全にアテが外れることとなった。各国で削減された人員は人手不足に陥った日本連邦に向かい入れられ、直ちに戦線に参加した。そのため、日本連邦は多国籍軍化していたと言える状態になった。救いは『制海権を日本連邦が握っている』事であったが、海軍が置物と化している事は国民も承知しており、連合艦隊は『張り子の虎』と揶揄されていた。とはいえ、これには理由もある。日本側が雲龍型航空母艦の多くを『使い物にならない』として、他用途に転用してしまった上、空母の性能水準のハードルを一気にスーパーキャリアと同等にしてしまったために、代艦の調達がままならない有様となった。日本は平時における長期間運用しか考えていなかったので、戦時における酷使を想定していなかった。それも、扶桑空軍の天下を醸成した。結局、海軍は単独での空母機動部隊の運用能力を喪失した状態が続き、現場の士気は最低の状態であった。流石にこれは看破できないため、(予算対策上の都合もあり)空母機動部隊の再建が緊急で決められた。だが、ジェット機への適応(前輪式での着陸に対応できるようにしなければならない)教育などに時間を要するため、完全に作戦行動が可能なようになるのは、早く見積もっても、1953年春頃とされた。護衛艦艇が完全に刷新できる最短年数がそのくらいとされたのだ。本来は1946年度からの予定であったが、民需優先で先延ばしにされ続けた結果であった。この時点で、扶桑の事前の戦争計画は完全に破綻していた――

 

 

 

 

 

 

 

 

――カールスラントの海軍整備計画が破棄され、諸外国も戦災復興を優先したため、必然的に日本連邦は世界の安全保障を担わされた。困った日本の政治家達は分担制を提案したが、一笑に付される有様であった。程なくして、太平洋戦線が開かれ、扶桑海軍は準備不足もあり、苦戦を強いられた。日本側が現存艦隊主義に走ったのも大きな理由であった。扶桑は積極攻勢で戦争を早期に終わらせたかったが、日本は同じような事を考え、ミッドウェー海戦で大失敗してジリ貧に陥った過去から、扶桑の軍人をあれこれといちゃもんつけまくって、中央から除きまくったが、それで軍部自体を人手不足としてしまうなど、しまらない様を見せてしまった。史実との環境の差で、外地が戦後も必要となるなど、日本側には予定外の結果も起こった。結局、扶桑は大陸領の大半を諦めざるを得ないが、太平洋の覇権は約束されたようなものであった。太平洋共和国はこの決定に伴い、本国に取り込まれ、独立国家としては消滅する事になった。日本連邦は不本意ながら、戦艦の保有を続ける事になった。怪異にミサイルが有効ではないからであり、日本からすれば『しょうもない』理由であった――

 

 

 

 

 

 

 

 

――とはいえ、戦艦をデコイとすることで、他国の空母保有を抑制できるという事に気がついた海軍上層部は空母の整備を敢えて遅らせ、対外的には大艦巨砲主義を装った。それは正解であった。航空部隊の物量の抑制に一役買った。扶桑軍は反応兵器による戦局打破を早期に提案していたが、日本側が核戦争の当事者になる事を政治レベルで拒絶し、否決されていた。核の応酬になる事を懸念したのと、非核三原則が日本にあるからであった。そのため、扶桑が太平洋戦争で反応兵器を使う機会があるとすれば、原爆を敵が使った場合の報復措置である(後の対ガリア戦線では、ガリアを交渉のテーブルにつかせるための見せしめとして使われるわけだが、対ガリア戦線の時は日本の関与はない)。太平洋戦線の混迷は日本が積極的に戦争指導に関与した故のものでもあったのである。扶桑は先制核攻撃も辞さなかったが、日本が必死に差止めていたわけだ。(逆に言えば、リベリオンは核を持っていることで、扶桑の先制核攻撃を免れたことになる)その代わりに、普通にオーパーツものの超兵器が使われる戦場となってしまったわけだ。MSもその範疇に入る。それも、グリプス戦役以降のMSが、である。ジェガンが普通に戦場を闊歩し、その上空を可変戦闘機が乱舞する。使用許可が降りている部隊は一握りであるが、反応兵器が事実上『使えない』状況下、戦況を維持するための方策が敵の攻勢を『超兵器で摘み取る』というのは、皮肉にも、追い詰められた大日本帝国とナチス・ドイツが夢想し、未来世界では、ジオン公国がしようとしたもの。それと同じ発想であった――

 

 

 

 

 

 

 

――純然たるガンダムタイプの運用は、64Fの特権である。ただし、νガンダムも(素体の状態では)旧式化しつつある状況である。ドラえもんは『ゼダンの門の跡地から回収し、修復していたものが完成したんで、のび太の家に送る』と、ドラえもんから不意に連絡が入ったゴルシ(キュアビートと入れ替わり中)は野比家の地下秘密格納庫で腰を抜かした――

 

「お、おまっ……ゼダンの門から……なんてもんを」

 

「コアファイターはギアナで保存されてたものを修復して組み込んだよ。他はタイムふろしきで元に戻した。文化財ものだよ、ファーストは」

 

それはRX-78-2。ファーストガンダムそのものであった。ドラえもんはゼダンの門跡地からの物資回収の仕事に入り、そこでファーストガンダムの残骸を発見。タイムふろしきで『在りし日の状態』に戻し、博物館に収蔵させる目的で修復したと、ドラえもんは続けた。

 

「こいつは今の実戦には耐えられないから、博物館の展示品が関の山さ。ジムⅡ以下だしね、今となっちゃ」

 

「そうか、G3とかの個体は戦後に部品が取っ替えられたりしたけど、こいつは当時品のままだもんな」

 

「そう。一年戦争の時期は最高級品でも、未来世界の時間軸的には『何世代も前の旧式部品』だもの。レプリカモデルを使ったほうが、まだいいよ」

 

MS技術が既にひとっ飛びに進化した時代、ファーストガンダムは『歴史的価値がある骨董品』なのである。ファーストはその人気から、機体構造が一年戦争期に近い『ジムⅡ』を素体にしてのレプリカが何機か製造され、デモンストレーション機にされているという。そのほうが一年戦争中のMSより高性能なのだから、如何にMSが急激に発展したかがわかる。

 

「アムロ少佐にも見てもらったけど、博物館に入れてやってくれってさ」

 

「そうだろうなぁ。たしか、主務設計者、あの人の親父さんだろ?それもあるんだろう」

 

アムロいわく、ファーストは青春の思い出としたいとのことだった。しかし、戦争中期に開発された試作機が戦争終結まで最強であり続けたという特異性などから、軍事学的にも注目される存在なのだ。

 

「ゴルシさん、元の姿にまだ戻ってないんだ」

 

「もうしばらくは続ける。あたしら世代はジュニア級だから、レースを走る機会はまだ少ないからな」

 

ちょうど、スカーレット/ウォッカ世代がシニア級を迎えた時期であるので、ゴルシ世代はクラシック級にもなっていない。それも、ゴルシが同期のジェンティルドンナを誘った理由だ。

 

「ゴルシさん。お久しぶりですわね」

 

「よぉ。付き合ってもらうぜ、貴婦人サマ」

 

ジェンティルドンナがやってきた。キュアアクアの体を借りている状態である。その状態でも、ジェンティルドンナ固有の怪力は健在で、普通に列車の突進を止められるという。

 

「あなたも酔狂な事をなさいますのね」

 

「オルフェは付き合わねぇだろ?こういうの。だから、アンタに声をかけた。ジャスには色々貸しがあるしよ」

 

「2025年時点で健在なのを考えると、私とあなたが元の姿を公に見せるのはどうかと思いますが?」

 

「然るべき時には見せるしかないだろ?オグリやテイオーが進学して、トゥインクルシリーズから去ったら、協会は次の世代の英雄を求める。ディープのオジキは早期引退を仄めかしてるし、オルフェは良くも悪くも、模範的な三冠にはならねぇ。あのヤロウ、英雄王みたいなキャラしやがってからに……」

 

オルフェーヴルについては、ゴルシも『英雄王みたいなキャラしてるから、大衆受けはしないだろう』と評している。高飛車どころか、傲慢不遜キャラは日本人の好みではないのだ。

 

「実力はありますが、あの方はシンパは得られても、理解者はお姉さんとバリアシオンさんだけですものね」

 

「バリアシオンのヤツからすりゃ、不本意らしいがな」

 

ウインバリアシオン。オルフェーヴルの同期で、史実でも、オルフェーヴルの二番手に甘んじた事で知られる。ウマ娘としても、オルフェーヴルの二番手に甘んじている現状に鬱屈とした気持ちを抱えているが、オルフェーヴルは『神に愛されし者』なので、彼女は二番手に甘んずる運命にある。これはオグリの影に隠れてしまった(後世で語られることがめっきりなくなった)同世代のクラシック組とも共通する。皮肉にも、彼女はオルフェーヴルを越えようと努力したことで『オルフェーヴルの理解者』と見なされる結果となっている。

 

「ヤツはオルフェの呪縛に囚われてるからな。これは因果レベルだから、あたしらにはどうにもならねぇ。ある意味、運が悪いんだよな」

 

ウインバリアシオンの不幸は『オルフェーヴルの同期かつ、下にもバケモノがひしめき合っている』ことである。それはゴルシにも同情されるほどであった。

 

「因果…ですか」

 

「そうだ。マルゼンの時代から、度々あるんだよ、こういう例がな」

 

マルゼンの時代から度々あった『絶対に越えられない壁』。マルゼンスキーを同世代の誰もが超えられなかったり、オグリが人気ウマ娘になったせいで、同世代のクラシック組が影に隠れ、一世代後に至っては完全に忘却の彼方であった。ウインバリアシオンもその類だと、ゴルシは言う。

 

「バリアシオンはまだいいほうだ。オサイチジョージを調べてみろ、悲惨すぎで声が出ねぇよ」

 

「あの世代の悲惨さは歴代随一と言われてますものね……」

 

「それがあったから、バリアシオンに気分転換を薦めたが、ヤツは『主役』に執着してやがるからな」

 

バリアシオンはオルフェーヴルを越えようとしているが、オルフェーヴルとの間には『個人の努力でどうにもならない』レベルの壁が立ちふさがっている。ゴルシは気分転換を薦めたが、断られたと話す。

 

「あなたは普段が普段だからですわ、ゴルシさん」

 

「違いねぇ。話は変わるが、ドラえもんが置いとくといったのがこれでよ……」

 

「これは……初代のガンダム?」

 

「オリジナルを回収して、修復したものらしい。どこかの軍事博物館に飾るそうだ。こいつは充分に戦ったし、マークⅡすら『時代遅れ』扱いの時代だしな」

 

未来世界はF91も『旧型』と言われだすような時期に突入しており、初代は軍事博物館の目玉として『眠る』ことが相応しい。最も、レプリカ機であろうが、アムロが乗れば、下手な現行機より強いだろうという評もある。それだけの潜在ポテンシャルはあるのだ。

 

「でも、件の彼が乗れば」

 

「そう思わせちまうのが、彼の怖えーとこだぜ」

 

「しかり。サナリィがレプリカを作ったけど、こいつは正真正銘のオリジナル。サナリィもアナハイムも、喉から手が出るほどほしいと思うね」

 

ドラえもんによって蘇った、初代ガンダム。その姿は全てのガンダム伝説の原点である事を示すもの。連邦政府が一年戦争終結からの年月の経過とジオン共和国の法的解体を前にしての記念式典での展示を計画しているとのことだが、ジオン残党のテロが予測されている。なにせ、初代ガンダムはジオンを滅ぼした張本人なのだから。

 

「式典に展示しようって声も出てるんだ。残党が発狂するって意見もあるけど、一年戦争から随分経って、ジオンも過去の存在になってきてる時代だからさ」

 

「独裁国家はいつか破綻するもんだ。ジオンも実際はひどいもんだってのは、アニメでやってて、子どもでも知ってるぜ。行き着く先は宇宙の戦国時代なんだけどな、あれ」

 

 

地球連邦が形骸化しきると、今度はスペースノイド同士の際限なき争いが起きる。そのような世界線がある。そのようなことの抑止の意図も、ジオン系組織の存続に関係していた。だが、ムーンクライシス事件の責を問われ、ジオン共和国はついに解体となった。ゴルシは元々、ガンダムの知識が、ある程度はあるようだった。

 

「詳しいですわね」

 

「ほんのさわりだよ。話を合わせるのに、必要最小限は覚えておかねぇとならねぇしな、あの手のアニオタ界隈。それと、裏の仕事の事もある」

 

ゴルシは情報分析等で個人的に64F、ひいてはロンド・ベルに協力している。単純に『アニメや漫画として存在する場合の世界での情報を与える』というものだ。アニメとはすべてが一致するわけではないが、だいたいの流れは一致したりする。コズミック・イラもそうであり、地球連邦の二度の介入で、もはや大規模戦争の遂行能力が失われたも同然の人的被害を被ったプラント、組織が地球連邦に飲み込まれていく地球連合など、現地国家の多くが地球連邦に飲み込まれていく過渡期になっていたりするなど、変化も大きい。ニュータイプの概念の伝播に反発するコーディネイターが百戦錬磨の地球連邦に無謀にも喧嘩を売り、アムロ・レイ一人に蹂躙されたのが、それだ。

 

「最も、あたしは情報提供と分析が主。今回のはお守りだからな、ブライアンの」

 

「ブライアンさんは何が目的なのですの?」

 

「闘争心の復活だよ。ヤツは色々とショックが続いて、精神的に参ってたからな。それで、全く違う環境に身を置く事で、その復活を賭けたんだ。それで、あたしがお守りを引き受けたんだよ。お前さんを誘ったのは、オルフェよりノリがいいだろうしよ」

 

「あの方は興が乗らないと、ダメでしょうね」

 

「ナカヤマを最初は誘ったんだけど、あいにく、レースの遠征と日程が重なった」

 

ゴルシも友人の何人かに声をかけたが、なんやかんやで、誘う相手がジェンティルドンナに落ち着いた事を明言する。ジェンティルドンナもレースと筋肉トレーニング(ウマ娘は1年半から二年の全盛期が過ぎれば、身体能力がガクンと低下する傾向が強い。それは競走馬の現役期間と一致する)の生活からの気分転換と、先輩たちの受けた『措置』に興味があったので、ゴルシの誘いに応じたのである。

 

「ところでお前、私財投じて、コンコルドを新造してんだって?」

 

「おじの道楽に出資してあげたんです。おじには恩がありますので。それに、あれは現代の技術で改良すれば、プライベートジェットとして最速になるでしょう?」

 

「そりゃそうだが。飛行場は?」

 

「世界各地に、我が家が保有する飛行場がありますから」

 

 

ウマ娘世界では、史実より飛行場が多く建設されていたようである。ウマ娘たちが迅速にレースに赴くことができるようにということで、すんなりと計画が通ったという。また、ジェンティルドンナの言によれば、史実と異なり、コンコルドのグラスコクピット化は試作段階に至っており、その改修機がジェンティルドンナの家の航空会社に流れ、それをレストアする計画に(自身がプライベートジェットに使うつもりで)出資したこと、その航空会社を経営するおじに(勝負服を作る職人を紹介してくれたので)恩義があることに触れる。

 

「戦中に富嶽か何かの基地を目指して、国が買収していた土地を曽祖父が戦後に買い取り、大叔父が航空会社を立ち上げ、それをおじが受け継いだ段階で不景気になり、事実上は自家用飛行場になっていたんですの」

 

そのことから、富嶽はウマ娘世界では、かなり計画が具体化した段階で中止になったこと、その基地の予定地を整備した商用飛行場をジェンティルドンナの大叔父が経営しており、その子の一人であるおじが承継した段階でバブルが弾け、経営難に陥った事から、半ば私用の飛行場になったことの流れを話す。

 

「コンコルドが着陸できるだと、普通なら……」

 

「元が元ですので、あまり公にできなかったそうなんですの。国も欲しがっていたそうなのですが、戦時中、かなりアブナイ手段で土地を切り開いたようでして」

 

 

「軍部のイカれた作戦のせいか……。まったく」

 

つまり、出自が怪しい飛行場がある場合は、旧軍が末期に本土決戦用に土地を無理矢理に徴発して生まれたものである場合があるということだ。それは戦後の時代に公にできないため、有力者に極秘に売却した。ジェンティルの曽祖父もそこそこの実業家であったが、戦後に家が没落したため、父の事業と連続性はない。

 

「ん?と、言うことは親父さんが一代で興したってことだから、戦後に没落したか?」

 

「ええ。そう聞いています。曽祖父と父の事業に連続性はないので、嘘ではありませんでしょう?」

 

「確かに」

 

ジェンティルドンナの父は一代で財を成した。それは本当だ。戦中までの実業家は身分を問わず、敗戦に伴う変革で没落したケースが多いので、戦後の子孫が財を継いだケースは稀である。後継の思想で影響が残っているともとれるが、これは父個人の哲学によるものだとのこと。

 

 

「父は私に継がせるつもりでしょう。時が経ち、私がレースを引退したら、それなりの企業の舵取りせねばならなくなり、個人の時間は持てなくなる。ですので、学生である、今のうちにやりたいことをやっておきたいのです、ゴルシさん」

 

「お前も大変だな」

 

ジェンティルドンナは資産家の令嬢らしい悩みを抱えていたので、同期のゴルシの誘いに乗った事を明言する。ウマ娘の生物学的な謎は『身体的ピークがとても短く、しかも個人差がある』ことだが、これは(前世を持つ場合)前世に由来することだと判明。しかもこれは因果律の問題であるので、個人の努力でどうにも出来ない。ブライアンはそれを知り、賭けに出た。そして勝ったのだ。

 

 

「あの方の復活のからくりを知った以上、これで私も『仲間』という事。私が私人でいられるうちに、子供時代の夢を果たしておきたい。家族には言えませんが……」

 

「カワカミが知ったら、なんていうかな?」

 

「あの方はまだ若い。デビューの遅れた私たちには、本来は『時間』はあまりない」

 

「仕方ねぇさ。だが、その埋め合わせは神様が用意してくれた。だけど、その対価は支払うべきだ。表沙汰にはできねぇが、表向きは『財団の広報事業への協力』になるから、出演料その他の名目で礼金が支払われる。ちゃんと向こうもCM撮影をがんばってくれてるから、あたしらも手抜きなしだぞ」

 

「ええ。まさか……姉に付き合わされて、護身術を習わされていたのが役に立つとは」

 

「さて、歓迎会だよ。グルメテーブルかけで食事は用意するけど、いいね」

 

「おう。頼むぜ、ドラえもん」

 

「あらあら」

 

こうして、二人はブライアンのお目付け役も兼ねて、しばらくはプリキュアの役目を代行していく。クラシック級に上がっていなかったことが幸いしたのだ。いくらタイムマシンがあるとはいえ、練習がない日は(クラシック級の時期は)ほとんどなく、休みも滅多に取れない。ましてや、二人は普通に経験を積めば『当代屈指の猛者』になるのが約束されている俊英。今のうちに『視野を広げるための社会勉強』もしておきたい。そんな打算もあったが、ジェンティルドンナはこの後、(入れ替わったのが、医師でもあるキュアアクアであったため)スポーツ医学に興味を抱くようになるのだった。

 

 

 

 

 

 

――余談だが、のぞみAがブライアンの立場を代行しているのと関係した珍事として、りんAが入院中ののぞみCと面会し、聞き取り調査をしてみたところ、『あるオールスターズの戦いで、自分は運動神経抜群』と思われていたと話し、たいそう困惑していた。そのからくりはどういうことか?それはのぞみたちの(プリキュアの)後輩らのいる学校と、のぞみたちの学校が学園間交流の一環という触れ込みで、共同の体育祭を行った際に起こったとの事で、Cはその時に『インフルエンザで寝込んでいた』はずであったが、なぜか体育祭に現れ、徒競走などの競技の一位を総ナメしていったという。のぞみCには身に覚えのない出来事であったが、その真実はナリタブライアンが知っていた。りんAは彼女に(聞いていた話もあって)問い合わせた。すると……―ー

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