――日本連邦は政治家の先入観もあり、豊富な軍事力が宝の持ち腐れになることが多かった。他国の介入をアテにしていたことも大きな理由であった。だが、他国の援助がまるでアテにならず、自軍も近代化が遅れている現状は日本側のヒステリーを招いたが、人同士の戦争など、(魔女の世界では)100年近くも起こっていなかったので、装備の近代化の遅れは仕方がなかった。それを補うため、異能者の活用は組織ぐるみで進められた。それに反対していた者は、多くが敵の圧倒的火力に打ちのめされ、軍の近代化の遅れを糾弾する立場に転じていった。皮肉な事に、扶桑軍は機械化の遅れを超兵器で補うようになっていき、連合艦隊も急速にミサイル兵器の普及を見ている。これは敵艦隊を本土外で撃破しろというのを絶対使命とされたからで、日本の政治家の都合に振り回されている感が強かった。また、将官による直接指揮がことさらに尊ばれるため、参謀職が有名無実化してしまうという、軍事的な問題も表面化。大本営に代わる機関とされた統合参謀本部も、現場の人員が命令に従わないという問題に悩まされており、皇室から軍事関連の事柄を無理に引き離そうとした故であった。結局、この問題は『皇室が(形式的に)統帥権を委任する』という儀式を行うことで解決を見る。他国出身者を多数抱え込む事で生ずる『使用言語の問題』もあったし、海軍の下士官以下と士官の待遇差の是正。士官の特権意識をどうやって無くすかなどの議論が行われたため、戦況の議論は二の次とされ、本来なら最重要の戦略会議がおざなりにされた。それが苦戦の理由の一つであった。しょうもないことだが、軍隊の動きを押さえつける事に熱中している戦後日本の人間たちは『現地の世界情勢に無頓着』であったのだ――
――扶桑軍は日本に組織風土、ひいては存在意義さえ否定されたため、不貞腐れる者が続出し、サボタージュする部署が多数発生してしまっていた。結局、北方戦線は放棄が決定されてしまった。負け戦を演じた将兵は引き上げ船の中で多数が自刃していたという。この敗北で事実上、扶桑の(以後の)北方の国境線が確定した。ユーラシア側はウラジオストクと樺太付近に縮小した。元の住民は南洋や台湾などに分散で強制移住させるしかなく、多額の補償金で黙らせる方法が取られた。扶桑の北方領土の縮小は日本としては(警備の必要から)大歓迎であったが、元の住民への補償が面倒だったので、結局は南方地域への移住でお茶を濁した。21世紀日本はあまりに規範が変化しているため、受け入れはできないという事情も絡んでの決定であった。結局、北方戦線の敗北によって『扶桑は負けを学んだ』と妥協した日本の政治家らは(ティターンズの実情が残虐非道であった事もあり)太平洋戦線を勝利する事で、扶桑への禊とする事にし、他地域の人員を引き揚げさせ、すべての軍事的リソースを太平洋に注ぎ込むとする決定を下す。1949年の盛夏のことであった――
――魔女の世界のティターンズ残党がネオ・ジオンやその他の組織の残党の援助で、一定の軍事力を維持していると判明した未来世界。デザリアム戦役後の政府組織の改編の最中にあった。サナリィは(ザンスカール帝国への協力、ブッホ・コンツェルンとの裏取引の発覚)不祥事の露見で世間のバッシングを受け、組織として落日の憂き目に遭い、同社の提唱した『小型モビルスーツ』も規格が衰退を始めてしまった。対照的に、野比財団による組織風土の変革が起こったアナハイム・エレクトロニクス社は前途洋々であった。ビスト家の影響力から脱し、サナリィの衰退も追い風となり、軍需部門の復興に成功。戦災復興のために、民需部門が活気づいたのも、アナハイム・エレクトロニクス社の中興への大きな助けであった。その中で、廃業を余儀なくされたサナリィの支社から流れてきた機体が波紋を呼んでいた――
――のび太の末裔にして、転生体の『ノビ・ノビタダ』。先祖代々共通する容貌はそのままであるが、彼自身は軍人であり、中尉の階級にあった。彼の時代、野比家は『旧・日本地域屈指の名門』。社会的地位はかつての比ではない。アナハイム・エレクトロニクス社の新たな支配者となったからだ。ビスト家が過去の不祥事などの露見により、地位を一挙に失った後、それに代わる存在になったわけである。彼はアナハイム・エレクトロニクス社を動かし、ロンド・ベルに兵器を卸させている他、地球連邦の改革派へ資金援助している。そんな彼が取り組んでいるのが、サナリィとブッホ・コンツェルンの悪事を暴くことで、相対的にアナハイム・エレクトロニクス社を善玉に仕立て上げることである。無論、同社も褒められた立場ではないが、半官営をいいことに、あぐらをかいてきたサナリィのタチの悪さよりはマシと言える――
――彼の財団に流れてきたMSは『ガンドレイド』のペットネームがある、F90の簡易量産型とされたモデルであった。だが、サナリィの悪癖により、ジム系より高コストかつ、格納庫を圧迫するミッションパック式であった。後援者のハウゼリー・ロナ(セシリー・フェアチャイルドのおじ)の暗殺で高コストが問題になり、主力には採用されなかった。結局、エコーズなどの特殊部隊でごく少数が使用されたに留まり、サナリィの経営を圧迫した。その改修型(コンピュータをF90と同系統に換装し、装甲も換装したもの)であった――
「ノビさん。見てくださいよ、これ」
「F80の改修型か?」
「ええ。近代化仕様のようです。サナリィが査察の後、支社のいくつかを切り捨てたでしょ?そのうちの一つで埃を被っていたもので、納入されていなかった個体と思われます」
「高コストだな。ミッションパックは維持費もかかるというのに」
「連中は昔のジオンと同じで、高コストにしがちなんですよ。かと言って、我が社のジェムズガンは手抜きすぎましたが」
ミッションパックが廃れた原因は格納庫のスペースが圧迫されるというもの。地球連邦の艦艇は基本的に、一年戦争~第二次ネオ・ジオン戦争期に設計されたものが多いので、ミッションパック式MSの運用には改修を要する。それも嫌われた理由だ。また、連邦軍は敵の量産機に苦戦することが多くなってきたので、ガンダムタイプに連なる『高性能機』を求めた。それもミッションパック式の衰退の要因となった。コズミック・イラでも露見しつつあるが、パック換装タイプは高機能の汎用型に及ばないのだ。
「こいつはどうも、クロスボーン・バンガードに引き渡される予定だったようですが、コスモ・バビロニアが無くなり、ブッホ・コンツェルンも解体へ向かったことで宙に浮いたままになったようです」
「コズミック・イラの世界でのデスティニーインパルスのデータが伝わった事で、パック方式の限界もわかったからな。その点では、こいつはジーラインより進んでいるよ」
連邦も装備換装式は何度か試しているが、いずれも議会や軍上層部の不満を買って、不採用に終わっている。仕方がないが、連邦軍は旧型の艦艇が多い。特に、末端のパトロール艦隊にはサラミス改が残っている事から、換装型は避けられる傾向が強い。これはジオンが特化型のMSやMAで中庸な連邦軍MSを蹂躙した戦訓によるもの。軍縮傾向が残るため、以前のような『物量作戦』が取れない連邦軍は以前に増して、高性能MSを求めていたのだ。
「どうします、これ」
「ジェイブスもラインに乗った今、こいつに存在意義はないからな。ギャラリーの肥やしになるしかないだろう。とはいえ、サナリィの裏取引の証拠になる。連中を脅しまくれ」
「ハッ」
サナリィは以後、兵器開発の主導権をアナハイム・エレクトロニクス社に奪い返され、政治的にも追い込まれていく。それは半官営でありながら、ブッホ・コンツェルンと裏取引をしまくり、一部の支社がザンスカールに与したことへの罰と言える行く末であった。
「さて、こいつの納入を進めてくれ」
「はい」
その隣にあるのは、ジーラインのレプリカであった。コンセプトは似ているが、こちらは試作段階までは採用されていた。ジェガンが老朽化してきたので、スタークジェガンの代替機種として再生産された。ただし、外装は変わらないものの、一年戦争当時はセミモノコック構造であったのが、ムーバブルフレーム構造に変更されている。武装も新造されたものが使われており、ジェガンに残る需要である『質量を武器にできる』点は大型機の再生産で賄われる事となった。
「それと、扶桑向けのF-14単座型の生産は?」
「一次生産分の納入は完了しました。あとは現地の空母の建造を待つのみです」
「あそこも、日本が喚くからな。そもそも、大半の国で『レシプロの1943年世代』が最新の状況で、戦後のターボファンエンジン搭載型のジェットが必要になる状況など、まずは起きんというのに」
ノビタダの言う通り、『魔女の世界』の国々の航空分野は史実で言う『1943年』程度の技術にも届いていないところのほうが多い。ダイ・アナザー・デイで、ブリタニアと扶桑の空軍が孤軍奮闘する事になったのは、その二カ国しか、ジェット機を運用できる能力がないからだ。扶桑でF-86が歓迎されたのは、『機動力が(当時としては)最高水準かつ、操縦感覚がレシプロとかけ離れていない』という点であった。カールスラントのMe262の生産が(ドイツの意向で)中止に追い込まれたための代替措置でもあったが、同機は最高の第一世代ジェット戦闘機であったので、予想外の高性能で連合軍の在来式戦闘機を駆逐。ダイ・アナザー・デイ後期の主力機となった。日本は『鹵獲されたら、絶対に短期間でコピーされる』という強迫観念に駆られており、それが主力戦闘機の矢継ぎ早の刷新の原動力になっていた。だが、あまりに早すぎたため、現場が混乱状態にあったのも事実。結局、その強迫観念が消えるのは(ティターンズの補助をしても)第二世代機の登場を早めるのが精一杯と判明するのを待たねばならない。
「ティターンズ共が早めさせようとしても、現地の人間に反対されては、どうもならんからな。扶桑は『国の体制が否定された』未来を見せられたから、それを防ごうとしている。戦後日本の連中は軍隊を諸悪の根源と断じたが、怪異の封印を勝手に解いては、現地に迷惑をかけている。逆占領されても、文句は言えんよ」
扶桑の日本への逆占領。その可能性を理解する者達は扶桑を穏便に改革させる事で融和を図っているが、左派は『扶桑の軍隊は無駄だから解体する。後で伝統を引き継がぬ別組織に仕立て直させる。後は原住民の好きにすればいい』という考えのもとに動いており、考えなしに人員削減の圧力をかけた。その結果が若手~中堅の生え抜き将校の不足なのだ。ノビタダは先祖たちが残した手記から、軍隊を冷遇することへの不満から、扶桑の一部将校が日本占領論を論じ、日本政府は扶桑の不信感の火消しに躍起になった事を知っていた。
「日本はいつ『知った』のです?」
「2025年頃だそうだ。日本は戦後、軍事を穢れ同然に扱ってきた。それを強要しようとする一部勢力が火種になることに気付いたのだ。宇宙に出た我々も、生き残るための力が必要と気付いたのは、ガミラスやゼントラーディなどの到来でのことだから、強く言える立場でもないがね。結果は、直接確かめたほうがわかるだろう」
扶桑軍は日本の一部勢力による妨害工作により、『横のつながり』を断ち切られた。これにより、各部隊にいた有力将校の多くが失職(中には、理不尽な暴力で『再起不能』にされた者もいる)し、残虐な暴力行為で現地民を恐怖させた結果、軍の人材供給が滞る事態となった。自衛隊がGフォースの設立を容認したのは、その償いも兼ねているのだ。
――太平洋戦争で、扶桑が確立させるドクトリンは間接的に、地球連邦軍(一年戦争以後)に引き継がれる。つまり、有事に万能の精鋭部隊を当たらせ、正規部隊はなるべく動かないというものだ。結局、それはそれで問題になっていくわけだ。扶桑は『政治に睨まれて、大規模外征ができなくなった』故の妥協であったが、日本も扶桑の世論の沸騰を恐れたため、全軍規模の外征を結局は認めざるを得なかった。64Fとその護衛部隊しか戦ってないという声が扶桑の国民から挙がったからだ。仕方がないが、日本は海軍に現存艦隊主義、陸軍は防衛以外に動くなという命令を発しており、遊撃をGフォースに丸投げしていた。その関係で生じた声であった。日本はこれに困惑した。自分たちは過去に『決戦にこだわって、艦隊戦力を無駄死にさせた』という認識を持っていたため、艦隊を死蔵同然にさせるのは正しいと思い込んでいたからである。扶桑の艦隊(大和型含む主力)を港で肥やしにしているのは、あまりにもったいないが、日本は『意気揚々と挑んだ決戦』に連敗した記憶から、艦隊全体を動かす事に恐怖を抱いていた。だが、人員の士気の問題があったので、妥協的に、第二艦隊の名目で、主力艦を弾力的に運用する方針に変更となった。とはいえ、大和は船体の疲労が進行しつつある事から、後継ぎの艦が必要とされた。水戸型と敷島型がそれぞれ代替に要求され、大和自体は1950年度に退役した後、日本へいずれ売却される予定となった――
――日本が扶桑の軍備増強を認めたのは、別個の国家であるという認識を政府は持っていた事、他国が予想以上に軍事的に衰弱していた故であった。他国の戦力が雀の涙程度に衰弱しており、強大なアメリカ海軍との交戦は無謀としか言いようがない状況だとわかったからである。しかし、扶桑とて、空母その他は旧型であり、『季節ごとの新鋭艦の就役』ができるほどの国力は持っていない。そのため、軍備更新計画は長期スケジュールが取られ、1949年に予算成立、1953年に大型艦の竣工とされた。日本主導のスケジュールであり、戦時である扶桑の需要を顧みないものであった。日本としては『信濃の事があるし、工事はきちんとしたい』趣旨での決定だが、扶桑からは猛反対された。結局、日本側が護衛艦の派遣を増強する事で宥める事になった。とはいえ、日本もカツカツの状態であったため、これも決定自体が遅延。結局は64Fの超兵器頼りになってしまった――
――皮肉な事に、日本のマスコミが扶桑軍の兵器を旧型と叩いた事で、扶桑の保有兵器のレベルは冷戦の時代の水準に飛躍した。ステルス機の配備も薦められたが、ダイ・アナザー・デイで誤認が相次いだ事で見送られた。扶桑陸軍は外征用の装備を破棄されたり、後代の電子化されたものを日本側から与えられるなど、完全にシッチャカメッチャカであった。扶桑陸軍は兵員の多くを徴兵で賄っていた上、時代的に、『小卒で軍に入った』者もいるため、あまりに電子化された21世紀以降の兵器は宝の持ち腐れになりかねない。その結果、東西冷戦の時代の通常兵器を(高卒・大卒が人々の間で当たり前になるまで)使うとする了解が扶桑と日本の間で結ばれた。その関係で、21世紀以降の水準の兵器を1949年以降も受領できたのは、特例が認められる『司令部直属の精鋭部隊』のみに限られるようになり、Gフォースに最新兵器を集約するようになっていく。人型兵器も、次第に最前線で旧型兵器を消耗した部隊か、精鋭部隊の増強に配備先を絞っていく。これは日本が『扶桑全軍を動かすと怖いから』と、全軍規模の行動を忌避した関係で、皮肉にも、未来世界の地球連邦軍のネオ・ジオン時代における消極性につながる芽はこの時に生まれていたと言える――
――プリキュアは戦闘力の安定しないヒロイングループでもある。身体能力自体は高まるが、技の破壊力はさほどではないケースもある。また、マジンガーZEROほどの力の存在には無力に等しくなる。のぞみAはZEROと同化する事で、上位存在への無力の問題の解決を図った。その状態は他の同位体にも反映されていき、大人のぞみは(時間経過で)その状態に進化していった。大人のぞみは青春期の後半を空虚感に囚われていたため、(その次元のココの願いと反するが)教え子を戦禍から守れる事から、プリキュアの力が戻った事をすんなり受け入れ、のぞみAの代役を務める事になった。その事を教えられた『その次元のココ』は『プリキュアであることが、のぞみの青春だった』事を告げられ、のぞみがプリキュアの力を自分の一部と考えていた事に衝撃を受け、鬱状態に陥り、宇宙刑事ギャバンの手引きで、未来世界のバード星で療養生活を送ることになった。その大人のぞみは白色彗星帝国残党と戦う事を選択し、のぞみAの代役を務めていく。ある意味、ココが無自覚に奪った『青春時代』を取り戻そうとしているようであるので、事情を知るキュアエトワールやキュアスカーレットから、彼が相当に皮肉られたのは言うまでもない。ある意味、のぞみAのパートナーとなった『彼』が転生後にサムライトルーパーとなり、共に戦う道を選んだとは対照的であり、『オトナ』世界においては、二人の結ばれる可能性が低くなってしまった事の証明であった――
――のぞみAはナリタブライアンと入れ替わっているが、ブライアン曰く『のぞみCの世界の様子を確認しに行ったら、そのまま体育祭に出る羽目になった』と、りんAに伝えた。
「アンタ、そのまま出たの?」
「なりゆきでな。説明してる暇もなくて、そのまま出されたんだよ」
ブライアンが入れ替わっている状態では、鼻テープ+しめ縄でポニーテールにまとめた髪型にしている姿なのだが、事情を知らないりんCに連行され、そのまま出場する事になったとのこと。
「あんた、手加減してても、徒競走で無双するじゃない」
「人にとっての長距離でも、私にとっては、なんてことのないものだからな。慣らしにもならんかった」
ウマ娘の中でも、歴代屈指の上積みであるブライアンの瞬発力であれば、(相当に加減しても)最後尾にいても、ヒト相手なら、追い込みでごぼう抜きできる。ブライアンとしては『慣らしにもならない』という感覚であった。だが、人間としては『プロのアスリートでも不可能な加速だ』と、陸上部で話題になったが、のぞみ自体は部活出禁女王であったので、陸上部の顧問は部員達に当たり散らしていたと、体育祭後の校内新聞の記事になっていた。
「その世界のアンタには、事後に説明するハメになってな。それと、のぞみにもだ。その世界ののぞみは事故での療養の影響で、免疫力が落ちてるらしくて、病気で寝込んでたからな」
ブライアンはのぞみCに『事のあらまし』を説明したが、のぞみCにかなりパニクられたとぼやいた。とはいえ、のぞみAがブライアンの要求に応えられる肉体を手を入れつつある事の証明であった。未来世界でウマ娘の肉体と精神の関係の研究が進み、『強さと脆さ』が同居する種族というのが判明しているが、のぞみAは普通の人類を超える事で、生物学的な概念を超えた変化を遂げつつあるため、ナリタブライアンの要求に素で答えることができる体になりつつある
「それと、かなりパニクられてな。まぁ、仕方がないんだが。あいつの姿で、徒競走を無双しちまったから」
「そりゃそうよ。どう帳尻合わせすんのよ。現地のあの子には無理だって」
「ドラえもんに忘れろ草やメモリーディスクを頼んではいるが、並行して、ある程度の影響があるはずだから、違和感ない程度に特訓させている。幸い、次のレースまで間があったから、現地に赴いている」
「とりあえず、ドラえもんを急かしなさいよ。あんたもそれほど暇じゃない身の上なんだし」
「催促したよ。やれやれ」
りんAは数年の勤務のうちに、地球連邦大学に在学したので、年齢的に一応、ブライアンとタメ口を聞ける立場にある。その関係で、割に気安い関係である。
「あたしは大学在籍中だから、一応学生ってのび太さんのご両親に説明してるけどさ、専攻はまだ決まる段階じゃないから、困ってね」
「大学で専攻が定まるのは、後半の二年だものな。前半は適当に講義を取るもんだと、おふくろも言っていた」
「普通は四年で卒業するからねぇ。医学部は六年。その後はインターンだし」
「医者はだいたい、油の乗り始めるのが30代後半あたりで、全盛期は50代~60の初めくらいと聞いた事がある。医者は21世紀の日本じゃ、割に合わん仕事だとも。」
「あたしだって、医学部のことは詳しく知らないしなぁ…。あんたはどうすんの?」
「大学にいったら、専攻は適当に考えていくつもりだ。家を勘当されたんで経営学を学ぶ必要はなくなったが、妹達に泣かれたんで、一応はやるつもりなんだ」
「どうすんの?」
「しばらくは野比氏の家に厄介になる。いずれ姉貴が家を継げば勘当は解かれるだろうし、親父の独断専行だからな」
妹達は長姉のハヤヒデに勘当を解くように懇願し、ハヤヒデもそのつもりだが、できるとすれば、父が亡くなった後だと述べている。父は昔気質であるので、妻の言うことにも耳を貸さないなど、職人気質が悪い方に作用してしまっている。後年、職人気質が悪い方に出た例として、同業者から囁かれる様になるなど、ブライアンの父親は(何らかの金勘定を契機に)家庭環境を不和に陥らせた悪例として、その後に反面教師の事例として語り継がれる。ブライアンが名声を取り戻すという奇跡はウマ娘世界の常識を超えていた。それ故の悲劇でもあったが、半ば自業自得であったのもあり、周りに同情される事は(ブライアンが競走者として復活したこともあり)殆どなかったという。
――プリキュア5の世界に派生の分岐が多数確認された関係で、他のプリキュアにもそれがありえることが予測された。それは仮面ライダーなどにもいえる事であるが、当面はプリキュアに絞っての調査が行われる事になった。また、2025年のプリキュアが『アイドル』であるため、以前の代のプリキュアも顔出しで芸能活動等をしても構わないという結論に達した連合軍は(ルミナスウィッチーズが扶桑では、色々な理由で公演できないこともあって)プリキュア達を広報業務に従事させるようになった。プリキュア達は戦士としても、一流の資質を持っている事から、戦時になると『全てを犠牲にしがちな』風土がある扶桑でも受け入れられた。『敵ときちんと戦った上で、慰安をしている』ことが、武士の時代の名残りが色濃い扶桑人にも受け入れられたのである――
――黒江たちが過去に迫害されていたのも、この『戦時には全てを犠牲にする』武士時代の名残りの風土を是とする者が扶桑軍の多数派であったのが由来であった。しかし、日本連邦化で個人主義が急速に浸透した事で、扶桑海軍に多数が残っていた『武士気取りの女性将校』は太平洋戦争直前から開戦後にかけて、急速に減少を始める。軍国主義者のレッテルを張られ、理不尽に解雇されていったからである。その代わりに、理想とされたのが集団に尽くした上で、きっちりと個人的な趣味もこなす黒江たちであったのは、個人主義の台頭で起こった『皮肉』であった。また、魔力は女性特有のものではないという事実の判明も、旧来的な魔女閥を衰退させたと言える――
――魔女達は芳佳Aのように、医療従事者になりつつも、戦う時は戦う者、心を癒やすために、戦闘とは関係のない分野で生きる者、坂本Aのように、生涯を軍に捧げる者、あるいは軍以外の組織で戦う者。それらに大別されていくが、太平洋戦争はその過渡期にあたったため、魔女コミュニティ全体の冬の時代と、後世からは評される。第一世代宮藤理論の限界点、それを超えてきた怪異(デュアルコア持ち)、それすらねじ伏せる超兵器と異能の台頭で、旧来的な簡略化された教育のみを受けた魔女は成す術もなかったからである。プリキュア達は(普通の魔女達から見れば)『魔女から分かれた突然変異』と取られた。魔法と明確に関係があるのは、実際には『魔法つかい』のみだが、魔女達からすれば、容姿の変化だけで充分だった。さらに、一般的な魔女には『力の一日あたりの限界使用量』や『貯蔵庫からチビチビと使っている』と例えられる時限性を持つが、プリキュアは『変身時間の限界はなく、全ての能力が飛躍する』。それ故に、ほぼ上位互換と言える。当然、対抗心を抱く魔女は多かったが、完全に上位互換の『魔法つかいプリキュア』の登場により、完全に白旗となった――
――それよりも、国際的に問題になったのは『史実で愚行を働いたとされる者らへのあからさまな蔑視』であった。旧ドイツ軍の関係者、日本軍の提督や将軍、参謀、航空隊や戦車隊の幹部、外務省、内務省の官僚の該当者にまで、それは向けられた。この蔑視由来の嵐のような暴力は『文化大革命』当時の紅衛兵にも例えられるほど見境ないもので、旧体制で民衆を弾圧した側であったとされる、官僚、政治家、軍人などへの戦後日本の大衆による残虐行為であった。それは似た例(ドイツに対してのカールスラント)であるカールスラントが国家どころか、『民族そのものの存亡の危機』に陥ったことで、罪悪感を抱いたのか、潮が引くように手を引いていった。太平洋戦争はその直後に起こり、開戦時の扶桑軍は半ば機能不全に陥っていた。地球連邦の手がなければ、戦線の構築すらも、おぼつかなかっただろう。皮肉にも、地球連邦のMSは扶桑の救世主であった。その象徴が地球連邦軍でもごく少数の保有に留まる『単騎城塞攻略用MS』という区分の重MS『ジークフリート』であったのは、日本人が一騎当千の強者へ強い信仰を持つことの証明となり、間接的に地球連邦のガンダム信仰の正当性を証明するものとされた――
――MSの開発の要因はダイ・アナザー・デイでの強さの記録が地球連邦の時代にまで残っており、それを目にしたジオニック社とツイマッド社の技術者がザクとヅダを造り上げたのである。つまりは帳尻合わせだ。それが回りに回ってガンダムタイプを生み、地球連邦、あるいは個別の組織のシンボルとして君臨するという経緯は、アニメとだいたい同じである。地球連邦が魔女の世界と交流を開始した段階では、既にV2ガンダムまでが登場済みの状態であった。だが、小型MSの衰退期に突入していたので、地球連邦軍のMSはビームシールドをそれほど持っていない。外宇宙では『質量を武器にする』ことがあるので、軽量すぎる小型MSは都合が悪かったのである。また、量産機のビームシールドの出力では、外宇宙用艦艇の艦砲は防ぎきれない事の判明もビームシールドの衰退の理由であった。そして、コスモナイト製錬技術の確立とスピンオフによって、ガンダリウム合金の強度が飛躍したのも、ビームシールド衰退の理由であった――
――日本連邦は超兵器で戦況をどうにかする傾向が顕著となり、通常兵器の配備は『ショールームの飾り』と公言する政治家すらいるほどであった。だが、いくら超兵器で火消しをして見せても、通常兵器が無用ということにはならない。それを太平洋戦争は示した。また、扶桑を困らせたのが『兵器は鹵獲されれば、半年以内にコピーを作られてしまう』という強迫観念であった。魔女の世界は人同士の戦争がナポレオン三世の時代を最後に行われていない関係上、通常兵器の関連技術が遅れていたために対抗戦術の編み出しという概念が希薄であった。ティターンズの指導があろうと、リベリオンはこれを早められなかった。これがリベリオン本国軍が会戦のたびに大損害を被る理由であり、なおかつ、鹵獲兵器の再利用という概念が生まれた理由である。日本はコピーを懸念しているが、魔女の世界の他国の技術はせいぜい、史実の1942年の水準。日本連邦の最新兵器は一般兵器であろうと、冷戦の後期以降の水準のもの。戦中の技術レベルでは『解析する』と言えるような差ではないのだが、史実での零戦の鹵獲を引き合いにして、日本の役人は現場を怒鳴りまくるので、一般部隊の士気は低い傾向にあった。日本連邦軍は以後の時代に『情け容赦しない』と恐れられるようになるが、それはかつて、アメリカ合衆国がそういう戦闘を(やむなく)日本相手にしたからで、ある意味では『因果応報』と言える結果であった――