――日本連邦は『衰退を避けたい日本が同位国を植民地同然に扱う』構図を一般の大衆は夢想したが、実際は逆で、扶桑の富で日本が食わせてもらう状態であった。日本はもはや普通に行けば、衰退し始めた国なのだ。軍事力は普通に『自衛隊と警察機関すべてを合わせても、扶桑の一方面軍以下の兵力』。戦艦相手の殴り合いなどはできない。それが判明すると、途端に日本国民はご機嫌取りに必死になった。だが、既に残虐行為を扶桑の要人や軍人に働いた後であったので、扶桑に白い目で見られていた。この禊として、日本はほぼ無償で技術提供を行うしかなかった。逆に、軍人を問答無用で排除し、万博と五輪を強行させた事で、『時間稼ぎ』ができたのも事実であった。思想的に問題ない者のみが開戦後に軍籍に復帰させられ、最前線の任務に従事したが、多くは数年のうちに戦死している。この日本と扶桑の水面下の対立は扶桑の戦争遂行に大きなマイナスとなったが、64Fに異能者が大勢いた事で、逆に戦況が安定するなど、日本の想定外の出来事が起こった。そのため、64Fに軍事的有用性を見出した(2020年代半ばの)日本政府は(連合国が非公式に与えていた)特権を正式に公式化。扶桑の通常の指揮系統から完全に独立させた。このお墨付きは扶桑の天皇の承諾もあらかじめ取られており、扶桑の保守派の軍人達は(戦況もあり)これを認めるしかなくなっていく。扶桑軍の軍閥は一連の変革で一気に衰退、横のつながりが希薄化した。その弊害で『部隊間連携』が取れなくなるという醜態が判明。南洋方面軍の幹部らが本国に呼び出され、昭和天皇に激しく叱責される有様となった――
――太平洋戦争では、有力な部隊で戦況自体を安定させる手段が常態化した。超兵器の調達の権利も次第にそれらの精鋭に限られるようになっていった。その一方で、一般兵器も冷戦時代の水準へ飛躍してきてるのも事実であった。74式戦車の装甲強化型や、203ミリ自走榴弾砲が独自に制作され、量産され始めたからである。航空戦力の更新が滞っているのは、必要機数に生産機数が追いつかない上、ジェット機化で人員の教育自体が遅延していたからである。数ヶ月で機種を更新することなど、ジェットの時代では(米国でも)不可能である。これは史実の米国の更新速度を想定しての方針であったが、『魔女の世界』では杞憂に近く、朝鮮戦争水準の兵器を早めるのが精一杯であった。そのため、センチュリーシリーズ程度の代物でも、充分に制空権を確保できたのである――
――扶桑は国民意識そのものに変化が生じていたが、怪異の存在もあり、軍を軽んじる風潮になりきらなかった。『割に合わない仕事』と認識され始めたものの、『学があまりない人間でも、若いうちに名士になれる』道(戦後日本も、21世紀になると、若いうちの立身出世はあまり望めなくなっている)であったことから、志願数は回復基調に向かい始めた。とはいえ、兵器の高度化の進展から、一定程度の学は必要となったので、坂本が新兵の時代のように『小卒で軍人になる』事は無くなった。むしろ、連合国の高級軍人らが『同位体の言動に怯える』ことが知れ渡り、彼らが嘲笑の対象とされていた。同時に、『日本人を怒らせるな。あらゆる分野で蹂躙されて、再起不能にされかねないからだ』という圧倒的な恐怖が連合国に広がり、以後、日本連邦に真っ向から意見を述べられる国は限られていく事になる。カールスラントの有力将校が理不尽に功績の否定、名誉剥奪からの左遷に次々と遭ったからで、エディタ・ノイマンはその典型例であった。デロス島の一件で極刑が検討されたが、部下たちの嘆願、本人はあくまで『使命感で提案したのであって、遺跡の価値を軽んじているわけではない』という事実により、すんで極刑を免れた。だが、これで軍歴に大きなマイナスがつき、本人もトラウマを負って、鬱病に罹患してしまい、軍からの退役を選んだ。彼女は程なくして、機械加工関連企業を興し、それで生計を立てるようになる。年金は大佐待遇でもらえるので、金に不自由はしないが、そうでもしないと、彼女自身がやってられなかったからである。このような流れで、カールスラント軍は次々と有能な人材を喪失してしまい、気がつけば、目も当てられぬ有様になっていた。
――モントゴメリーのように、同位体と関係ない行動が原因で、失脚する高官も相次いだ連合軍。逆に史実の汚点が希薄であった事で立場を確立した者、ミーナのように、強い同性愛で正常な判断力を無くす者。ミーナは(アニメと違い)幼なじみの戦死後は(トラウマで)同性愛に傾倒したことが判明。坂本は気まずい思いを抱いたという(ミーナを庇う発言が増えていくのは、同位体の協力を得られたことで、名誉回復の道筋を早期に築けるからである)。同時に、ダイ・アナザー・デイで各国の戦力をことごとく潰された事から、連合軍は実質的に形骸化している。地球連邦軍の補助なくば、組織が空中分解する寸前であった――
――扶桑軍が怯えたのは、日本義勇兵らによる士官らへの『お礼参り』であった。実際にリンチで再起不能となった参謀らも大勢生じ、日本の市民団体からは『参謀不要論』も飛び出す有様であった。だが、実際には、指揮官がすべてを監督することなど不可能であるので、幕僚への言い換えが進められ、1948年から正式に参謀は幕僚に取って代わられた。だが、ハードルが以前より上がってしまい、旧来の陸軍大学校や海軍大学校経験者では能力不足とされ、場繋ぎに外国人将校を使い、自衛隊で幕僚教育を受け直した者が現れるまで持たせるという案が採択された。それほどに参謀関連の業務が軽視されていたためで、日本自衛隊の幕僚達は世間に『銀河英雄伝説でも見ろ!』と言いたくなるほどの多忙ぶりに疲労困憊であった。また、指揮官先頭がとかく尊ばれるために、他国での軍官僚タイプが世間に『クズ』扱いされるなどの弊害が起きてしまうなど、武士時代の名残りの風潮が近代軍としての害となる事案も相次いだ。皮肉な事に、東郷平八郎(日露戦争での連合艦隊司令長官)が提督の理想像に、陸軍は児玉源太郎(日露戦争時の参謀総長)が理想像にされたため、扶桑軍は結局、かつての武士経験者(日露戦争時の指導層は青年時代に下級武士であった)達の影に縛られてしまい、チェスター・ニミッツらの行うような『後方からの指揮』はできなくなっていく。ある意味、どの世界でもある『日本型組織の限界』であった――
――地球連邦はコズミック・イラ世界の歴史を(意図せずに)変える事になった。プラントはアムロ・レイ一人に蹂躙され、以後の時代、大規模戦争の遂行が不可能と判定されるほどの損害を被り、地球連合は組織がほぼ空中分解、地球連邦に飲み込まれていく道を辿った。オーブは地球連邦との調整役として、立場を確立し、安全保障の見返りとして、地球連邦から兵器の購入に踏み切った。ファウンデーション王国は蜂起を目論んでいたが、地球連邦の登場で事態が暗転した。地球連邦の派遣部隊には読心対策で『思考と逆の行動を取れる』兵士が多い(ニュータイプ対策の賜物)が、ノビタダが軍を動かし、そのように要員を選んだためで、彼らへメタを張っていたのだ。更に、量産型ゲッタードラゴンを徘徊させることで、オーブの安全を守っている。多くはAI制御だが、いるだけで威圧感たっぷりであった。また、隠し機能で『ゲッター真ドラゴン』への合体機能を持つ。それはコズミック・イラの主要国の重要人物へ知らされており、その圧倒的な力に畏怖を感じずにはいられなかった――
――コズミック・イラ歴の世界の歴史が変わり、地球連邦に地球連合が飲み込まれていく過程にあった中、プラントは『数十年もすれば、現状の国家体制を維持できない』現実と向き合うしかなくなり、それを認めぬザラ派残党が蜂起を目論む。だが、史実でさえ『他力本願』に近かったのに、恒星間国家になっている地球連邦の軍事力に立ち向かうのは無謀であった。だが、大まかな流れ自体は変わらないためか、ブルーコスモス派、ザラ派残党の散発的なテロは起こり、その鎮圧のための枠組みが模索されていた。当時、まともな軍事力を残した国はオーブだけ。地球連合は内乱で衰退、プラントも『二度も地球連邦に蹂躙された』ため、人材不足が更に顕著。イザーク・ジュール(戦犯法廷の容疑者になった経験あり。母親は元・ザラ派)やシン・アスカやルナマリア・ホーク(前政権下で重宝された)らのような(個人意思の有無問わず)問題を起こした経歴持ちの者がエリート層に留っていられるのは、二度の大戦での青壮年層の減少による人材不足が原因なのだ――
――プラントは公には、ニュータイプを認めていないが、実際にはその戦闘能力を脅威に感じていた。二度の大戦で、ザフト軍の精鋭らが『赤子の手をひねるように』蹂躙されたからである。二次大戦では、HI-νガンダムに、一次大戦で、SガンダムとV2アサルトバスターガンダムに。それぞれが目を覆いたくなるほどの蹂躙であった。記録上では、シン・アスカとルナマリア・ホークは『HI-νガンダムを止めようとしたが、あえなく撃墜され、その時のショックで記憶喪失を伴う重傷を負い、オーブ側に回収されていた』とされている。オーブとしては、そう取り繕うのが最善であったのだ(実際には次元転移していたが)。実際、同機にデスティニーとインパルスが成す術もなく撃墜される様子が、はっきり目撃されていたからだ。アムロが挙げた戦果はザフト軍の隠蔽工作もあり、はっきりとはしないが、ザフト軍の外征能力を『ゼロに近いくらいに落とした』のは事実であった。地球連邦の観測艦のデータによれば、24機のザクファントムが2分10秒で全滅し、それらの母艦もハイパー・メガ・ライフルでまとめて轟沈していったとのことで、この結果で、ザフトはザクシリーズを見限り、より性能の高い次世代機を開発していく。ザフトのトップレベルが当時の最新型に乗っていて、この結果であったからだが、連邦軍はこの映像を解析していたモルゲンレーテ社のエンジニアに『パイロットが強すぎるだけだ』と説明した。レーザーとは異なる原理での核融合炉で、機体のエネルギー変換効率が遥かに高いという事情も、アムロが戦場を蹂躙できた理由だとも。プラントはこれを『機体の性能差』と解釈したが、実際には『パイロットの技量差』であった。(ザクシリーズは稼働時間を抜きに考えれば、総合的にゲルググとジム・コマンドクラスの性能を持つ)――
――オトナプリキュア世界にシンとルナマリアの二人が派遣されているのは、地球連邦の軍人としてであり、ザフトの人間としてではない。白色彗星帝国は人型兵器は持っていないので、MSは『戦闘機では限界のある、対艦攻撃要員』にされるのは決まっている。これはコスモタイガーの雷撃型の撃墜率が高い部類であったからである。ルナマリアは大人のぞみに付き合う形で、ヤマトの資料室にいた。その中には、1975年頃に『アクマイザー3』というヒーローがいたが、敵と相打ちになる形で果てたこと、その魂は消えず、この世で最も輝ける星『破軍星』と融合していた事、その破軍星はアクマイザー3の願いに応え、『超神ビビューン』というヒーローを生み出したという話が残されていた。おそらく、プリキュア達の変身能力にも影響を与えていた存在だろうとも推測されている『破軍星』。未来世界では『おおぐま座η星と同一の星』だという推測が立てられており、実際に、存在が確認されている。この星が一定の周期で地球にエネルギーをもたらし、奇跡をもたらすとされ、プリキュア達の誕生にも一役買っていたことが判明していた――
「破軍星か……。1975年。じいさまの時代だな……。それで、その時代に、アクマイザー3が敵のボスと相打ちになって果てた時、その魂が融合したのをきっかけに、地球に奇跡をもたらすようになったものと思われる」
日本政府がのび太の時代にまとめた記録によれば、北極付近には、恐竜人類と別に『アクマ族』と呼ばれていた種族が住んでいたと思われるが、23世紀まで存続しているかは定かではないという。記述には続きがあり、破軍星が奇跡を度々、起こしてきたことが記されており、プリキュア達の変身能力にも影響を与えている説が浮上していた。
「アクマイザー3の魂は成仏できたんでしょうかね?」
「さぁ。後事を地球のヒーロー達に託したっぽいこと書いてあるから、たぶん」
アクマイザー3が倒れた後、彼らの魂は破軍星に宿り、その後の奇跡に噛んでいたであろうとの推測が記されていた『日本政府が後世に残した記録』。60~70年代の単発ヒーローはそれぞれの理由で檜舞台を降りていったのだが、危機が迫る時には誰かが復活してくれるという淡い願いを子どもたちは抱いており、超神ビビューンは、噂によれば、力の拠り所であったアクマイザー3が正式に力をもたらす形で『復活した』ともされるので、アクマイザー3の魂は(彼らの肉体を滅ぼした主が超神に倒されたことで)呪いから解放され、涅槃に旅立ったこと、その際に『地球への最後の置き土産』として、超神ビビューンの三人の力を復活させたとの噂が1980年代前半に流れたとも。
「地球って、常に狙われてません?」
「未来世界にある記録だけでも、膨大だからねぇ。しかも、人々の記憶に残ってる人たちだけで、大昔の電話帳みたいな厚さだよ?見るだけで骨が折れるよ」
日本政府が残した、ヒーロー達の記録はバカみたいな厚さの本になっており、大昔の電話帳のようだと呆れられた。ヤマトは元々、移民船としての用途で建造されたので、記録を守るために、ヤマトに積まれたのでは?とのこと。前半部分のページに貼られている写真は70年代半ば以前に撮られたためか、ずいぶんと色褪せている。分かることは『ヒーローはたとえ死しても、新しいヒーローの肥やしになる』(アクマイザー3は死した後、超神ビビューンを誕生させている)ことだろう。
「これを見る限り、私が『本来起こるはずの争乱で、一時的にプリキュアに戻れるけど、その代償で、事後に死ぬ』って事もありえたってことだよな。縁起悪いけど」
「ええ。どこかには、そういう世界線もあるでしょうね」
「26年しか生きれないってことになるんだよな、それだと。両親には言えないなぁ。」
「それがいいでしょう。平行世界のことなど、普通は知りえませんから」
「それに、自衛隊に転職したってことになってるから、今回のことが終わったら、両親の前で一芝居打ってくれない?」
「構いませんけど、なんでですか?」
「戦後日本じゃ、軍隊に類する仕事ってのは、ゴロツキ同然に見られてんだ。士官学校出てても、一般大学より下劣な教育しか受けてないって言われちまうのさ。この時代でも、ご老人たちは言うだろうから」
大人のぞみは公には『教師であったが、失職した直後に自衛隊に入隊した』という風に公表されているので、令和の老年層からは見下されるだろうと踏んでいた。仕方がないが、戦後日本はそういう風潮が長く存在した上、愛国心も大日本帝国時代の反動で希薄であった時代が長いのである。大人のぞみは教育学部を卒業した教諭であったため、令和の老年層の主流である『団塊の世代』から『聖職を捨てて、ゴロツキになった』と言われかねないことを警戒していた。実際、のび太の少年時代である1990年代からは減少に転じていたが、自衛隊を見下す風潮は未だ残っている。2020年代にもなれば、少数派に転落しているが、老年層には残っているからだろう。
「両親は許してくれるだろうけど、叔父たちがね」
「あ、なるほど」
「もっとも、生きてればだけど」
「うーん。意外に辛辣ですね」
「まぁ、母さんが美容室開く時、親戚の集まりで馬鹿にした親類もいるからね、実際」
「いますよね、そういう人たち。そういうことなら、喜んで」
「頼むよ」
大人のぞみは失職し、住む家も焼け出された上、貯金通帳も失って、事実上の文無し状態に陥っていた。その関係で、同位体の代役を引き受けている。その最初の給金でPCを買い替えたりしていたが、当面はヤマトの士官室が『城』である。
「さて、ここからが本題だ…あった」
大人のぞみはここでようやく、特警ウインスペクターから特捜エクシードラフトに至る『レスキューポリス』のページを見つける。装備は先立って回収されているが、彼ら自体の消息は不明だという。特捜エクシードラフトの時代、いささか荒唐無稽な出来事が起こったからか、公式記録には残されていない。だが、ごく僅かに、当時に起こった異常現象については触れられており、それが遠因となり、エクシードラフトは解散に追い込まれたという説が記されている。しかし、それはエクシードラフトにはどうする事のできないものであったのも事実だ。故に、2000年代前半まで存続していたのだろう…。
――扶桑皇国が悩んだのは、日本が将軍・提督、参謀らを狙い撃ちで失脚させたり、士官らに下士官以下の喧嘩の仲裁を義務付けさせた事で、現場がパニックに陥ったからである。また、文官が武官に絶対の優位に置かれたことへの混乱も大きく、太平洋戦争の戦況は停滞を余儀なくされた。戦後の原則である『文官統制』を徹底させようとしたのだが、それで、却って軍事の混乱を招くという事態に陥った。結局、有事即応部隊の必要性が大衆に至るまで認識されたのが、ダイ・アナザー・デイでのこと。黒江たちの記憶の封印が解けた謎を山本五十六は調べさせていたが、それが解けた日は奇しくも、唐朝以前の古代中国の伝承で『破軍星が地球にもっともエネルギーを送ってくる』日。その破軍星は『アクマイザー3の魂が封じ込まれたカプセルが漂着し、融合した星』であるので、世界を超えた影響力があったのである。山本五十六は未来世界との接触で破軍星、それに宿った『かつての英雄』の存在を知り、異能者の保護を決めていた。軍備を根本から刷新するには時間がかかる。空母にしても、雲龍型が『用無しの役立たずな旧型』と罵られてしまったので、80000トン以上の巨艦で更新するしかないが、魔女閥は『数の低下』を嫌がっており、50000トン前後の空母の量産を具申した。だが、日本側の満足する搭載性能はその大きさでは達成できない。だが、用兵側の強い要望により、妥協で『強襲揚陸艦の量産』が決議されたが、その完成は(早くて)1950年代の半ばと予測されている。山本は減少した戦力を補うため、異能者の正式な保護を決めた。ダイ・アナザー・デイが始まって、一週間経った日のことだった――
――魔女たちは急速に政治力を失っていった。ミーナやノイマンの失脚が直接の原因であった。カールスラントの軍事力の衰弱も重なり、魔女達は(扶桑であろうと)穀潰し同然に見る風潮が生まれた。黒江たち『異能者』が毎日、血みどろの戦闘を繰り広げていたのに、魔女たちはその活動の補助をしなかったからだが、実際に指令を出していたのは、『志賀の同期である扶桑海軍航空隊の参謀』であった。それを山本五十六は連邦軍の連絡機『ディッシュ』でその参謀のいる基地に乗り付け、自ら怒鳴り込んだ。鈴木貫太郎の手紙も添えて。参謀は鈴木貫太郎の怒りを買ったことに恐怖したか、みっともない言い訳を並べ立てたとのこと。結局、そのさらに数日後、64Fが昭和天皇直々に『我が国の誉である』と認定されると、64Fを支援しようとする動きが拡大した。更迭を恐れた幹部層の自己保身であった。だが、ティターンズの超人たちに『付け焼き刃の戦闘方法しか持たぬ』魔女たちは一蹴され、却って足手まとい(歴戦のプリキュアすら負傷させるような強さであったのもあって)となる始末。更に負傷兵らが帰国時に話を広めた事から、魔女たちは瞬く間に鼻つまみ者と見なされていった(黒江たちへの過去の迫害の発覚もまずかった)。これを危惧したのが志賀であり、罪滅ぼしとして、黒江たちへの支援を、軍組織として広めるように具申。この事もあり、彼女は(実際は離脱者だが、坂本の温情で『トレードで再移籍した』と記録されている)同期の良心として知られるようになり、64Fの支援を呼びかけた。彼女の少佐への昇進はそのことへの褒美であった――
――かくして、黒江たちの記憶がある時に復活したからくりに、ドラえもん世界で『自らを犠牲にして、地球を悪の手から守ったヒーロー』の遺志が絡んでいる事を掴んだ山本五十六。その魂が宿った星こそが、古代中国で破軍星と呼ばれた星であり、地球が危機に陥った時に輝ける星になるという調査結果に、複雑な思いを抱いた――
「アクマイザー3……向こうの世界での1975年に存在し、最終的に相打ちで敵を滅ぼし、超神ビビューンを生み出す土壌ともなったヒーロー…。人間と共通の祖を持ちつつ、異なる進化を辿った種族……」
自宅の書斎で、彼は部下からの報告書に貼られていた『アクマイザー3』と『超神ビビューン』の写真を手に取る。アクマイザー3は『アクマ族』という種族から出現したヒーローだが、デーモン族とは別の種族である。元々、地下に移住した原始人の一部族が地下に適応するための改造を繰り返した結果の進化であったので、23世紀まで生き残れているかは不明である。アクマイザー3の倒れた直後に現れた『超神ビビューン』はアクマ族最高の勇士かつ、同族を裏切っても、地上人を守った三人の勇者『アクマイザー3』がその死後に自らの力と魂の一部を地上の三人の青年に与えて生み出した存在。敵を倒した後に力を失ったが、その後に破軍星が復活したので、力が戻ったともされるなど、そのあたりは情報が錯綜している。
「かの世界での英雄たちの意思が、我々の世界の民衆の叫びに答えたのか?それはわからない。わかることは世界が一つにまとまるには、共通の敵が必要であり、事が済んだ後の利権争いを嫌う誰かの意思がティターンズを呼び寄せたことだ。皮肉なものだ。彼らが怪異に代わる敵となることで、覇権国家の代替わりが起きるなど……」
利権争いは突出した国が一つか二つあれば、殆ど起こらない。魔女たちの願いは(太平洋戦争後における、事実上の冷戦の始まりで)一応は叶った事になる。ブリタニアは(史実より遥かに戦時が長くなった事で)緩やかに衰退を始め、扶桑は逆に、史実の日本の最盛期と言える高度経済成長を起こそうとしている。これは扶桑が外征に向けていたエネルギーが(日本の意向で)本土の再開発に方向転換させられたためだ。扶桑は1950年代以降には『覇権国家』として振る舞うことを強いられるであろう時勢が定まりつつある事に皮肉を感じつつ、山本五十六は(史実では迎えなかった)60代後半を迎えようとしている事に『運命のいたずら』を感じつつ、(史実では戦争前半期に戦死したので)他の提督らと違い、英雄扱い(後任の古賀は劣勢の中、事故死。豊田はレイテ沖海戦で出陣しなかった事に批判が強い。小沢は敗戦処理という扱いなので、知名度は低い)である。山本自身も戦術家としては低い評価となっているので、魔女の世界のように、軍政に身を置けたのは『幸運』であった(太平洋戦争時の日本の提督は『戦上手』と言われる事は希少である)。
「リベリオンとの戦争は『彼ら』が飛ばされなくとも、いずれは起こっただろう。だが、彼らが極悪非道であるおかげで、こちらに錦の御旗はある。反応兵器の使用もやむを得ない。使用するとすれば、敵が原爆を使った時だ。日本がなんと言おうが、扶桑の大衆は報復を叫ぶだろう。この戦争さえ終われば、日本は我らへの興味を無くすだろうが、今は忍耐の時だ」
日本の国民は血気盛んな気質の残る扶桑の大衆を疎んじている。それは事実だが、扶桑の過去の戦役の戦勝式典を全て中止させ、慰霊祭に統一させる(扶桑の戦勝日が、日本で不幸が起こった日と偶然に重なったためだが)という行為を身勝手と捉える声がある(日本は最後の勝ち戦が日露戦争であるので、勝ち戦を記念する意識は完全に消えている)。日本はこれに『扶桑独自の記念日を否定しているわけではなく……』と言い訳している。山本五十六はこの後、『リベリオンが原爆を使う場合』を想定し、暴動を起こさせないため、原爆への報復措置(反応弾を使う)を正式に構想させ始める。それは『戦前の日本人は暴動をよく起こしていた』事の証明であり、戦後に(良くも悪くも)熱を無くしていった事も示している。『暴動が軍部の台頭の下地を醸成した』経験や、戦後に過激派が起こした凄惨な事件への嫌悪感も関係している。扶桑と日本は似て非なる者。それをよく認識していた扶桑の重臣たちは『武士時代の名残りである血生臭さを消し去るには、戦争を利用して、国民意識を変えなくてはならない』と考えており、山本五十六はその意見に賛成していた。それが同志の米内光政の遺言であったからで、日本の動きを彼らは国家の変革のために利用していたのである。良くも悪くも、戦後の安定期以降に国家の中枢にいる人間らと、戦前の帝国主義華やかりし時代の首脳たちとでは『器が違う』事の表れであった。