――日本は『魔女の世界』への興味を失いつつあったが、経済復興のために必須である事もあり、付き合いは続けているという認識になりつつあった。軍事的にも有用であったからでもある。扶桑の戦争を長期化させている責任も取らなければならないからだ。本来、扶桑は一年でハワイを奪取し、本土の西海岸を一時的に占領したところで手打ちにするはずであったが、日本が専守防衛を押しつけたために、グダグダになってしまったのだから。連合艦隊と空軍の近代化が済んでいないと言い訳したが、既に新鋭艦は高度に近代装備を備えていたし、空軍の精鋭には戦後第二世代以降の水準のジェット機が配備されていたし、64Fには現用機水準のジェット機があった。この構成は皮肉にも、軍縮を取りやめた後の地球連邦軍と同様であった。地球連邦と違い、日本が枷を嵌めてしまったので、組織だっての行動が取れなくなってしまったのが扶桑軍隊であり、日本はその言い訳に終始しており、扶桑に顰蹙を買っていた――
――一部の有力将校に手柄が集中しがちになることは問題視されていたが、魔女はどうしても個人で才覚の差が生ずるし、トップクラスのエースに限って、チートの塊のような能力を持っていること、統合戦闘航空団に在籍経験を持つ者がプリキュア能力者の転生体であったりする場合すらあった。さらに、西沢義子に至っては、ニュータイプに覚醒しつつあったので、さながら能力者のバーゲンセールの様相であった。学園都市亡き後の日本にはそれらに対抗する術はないため、次第に軍事面で口を挟む余地が無くなっていった――
――64Fでも、『吊るし』のストライカーでは西沢の反応速度に追従できなくなったため、吾郎技師による(バイオセンサーの搭載とマグネットコーティングを伴う)チューンナップがなされた他、MSでも、高性能のガンダムタイプが回されるようになった。ニュータイプにはガンダムタイプを充てがう。一時からは考えられないほどに寛容になった地球連邦軍だが、これは異星人との生存競争が現実になったことによる人々の思考原理の変化が作用したこと、ニュータイプを最も理解していた高官であるレビルが返り咲き、元のティターンズ派を排除してきた効果でもあったし、異星出身の地球人が増加したという時代背景も大きい。また、白色彗星帝国が遺した悪影響として、宇宙戦争=生存競争という認識があり、相手の母星のある星系の破壊を躊躇うことも無くなってしまっていた。波動砲(タキオン波動収束砲)を持つ艦艇を数百以上も有する地球連邦だが、とりわけ、武勇伝を数多く持つ『宇宙戦艦ヤマト』は地球へ不満を持つ者たちには恐怖の対象であった。もっとも、宇宙戦艦ヤマトを無敵足らしめる理由は真田志郎の存在であり、彼の祖父の代から『地球の至宝』と謳われる頭脳を誇っているのだから、当然なのだが――
――彼の明晰ぶりは『コズミック・イラ』世界の混沌にも明確な回答を見出していた。ある日、オーブ首長国連邦に招かれた真田志郎は、地球連邦の科学技術省長官(軍籍は維持している)として、見解を述べた。
「コズミック・イラの混沌はコーディネイターがナチュラルを要職から追放するのでは?という恐怖心、伝統宗教の抑えが失われたことによる人々の倫理観のタガが外れていることが原因です。伝統宗教の権威が一定程度でも復活すれば、ある程度は統治しやすくなります」
コズミック・イラの難点は『伝統宗教の衰退で、人々の宗教的抑えが失われたことによる心理的暴走のしやすさ』が大きいため、伝統宗教の一定程度の復興は必須だと、真田志郎は説明した。
「本来はナチュラルだからと、悲観する必要はないのです。我々の世界におけるニュータイプしかり、スーパーロボット乗りしかり。環境と素質次第で超人になれる例もあります」
「ニュータイプ……か」
ニュータイプの戦闘能力はコーディネイターのトップクラスすら『赤子の手をひねるが如し』のものであり、キラ・ヤマトやアスラン・ザラでようやく『まともに戦える』くらいの戦力差だと、真田は続ける。そのニュータイプの中でも最高の操縦技能とされる『アムロ・レイ』の戦闘映像はオーブ軍の関係者をして絶句させるほどの凄まじさであり、オールレンジ攻撃さえ通用せぬ技能は明らかに常識を超えていた。
「これが彼の……力なのですか、真田長官」
「彼は操縦技能に特化した事例です。他にも……」
Zガンダムがバイオセンサーの発動でサイコフィールドを纏う一瞬が映し出される。MSが搭乗者の感情に呼応し、超常現象を引き起こした事例の奔りである。
「我々は存在そのものが象徴というべきものを多数有しています。先程までのガンダムのみならず……」
ガンダムのみならず、戦艦に至るまで地球連邦の技術力は高い。その割に、大艦巨砲主義そのままの外観の艦艇が幅を効かせているが、地球連邦も(星間国家としては)小規模なので、質で量を補おうとしている故だと説明される。
「そちらの主力艦艇は世代交代の最中なのか?」
「本来はそうなる予定でしたが、上手くいっていないのが現状です」
主力戦艦でも、内惑星用艦艇より外宇宙用は遥かに高価である。特に波動エンジンはコスモナイト鉱石を使うため、他より高価なのだ。
「地球連邦も、せいぜい数百~千近く程度しか艦艇は有していません。内輪揉めと外宇宙からの防衛戦で人材、機材共に消耗していまして。私のような若輩が長官になれたのは、人材不足によるものです。大国は万単位で艦艇を持つので、地球連邦は小国なのですよ」
ガルマン・ガミラスやボラー連邦は一回の会戦に数百~千単位を参加させている。地球連邦は数十単位の規模の艦隊しか編成できないので、星間国家としては小規模である。これは銀河中心殴り込み艦隊の完全な帰還は先であること、中心の機関が波動エンジンになったことによる、コスモナイト鉱石の確保の問題がのしかかったためだ。地球自体は壮年の惑星であることから、積極的に移民が繰り返されたが、移民星が野心を抱く事もあるので、一枚岩ではない実情も語られる。
「移民が進んでも、20世紀頃の日本の有名なSFのように、地球を捨て去る選択はありません。太陽が寿命を迎えない限りは。そこに生きる生き物たちを保護する責任が我々にはありますから」
ハーロックとクイーン・エメラルダスからのメタ情報で『大地球』という惑星の位置も判明したので、ハーロックの知る歴史よりはるかに早く移民が始まっている。それでも、地球が捨てられていないのは『発祥の地』であるからだという。そこも地球人が地球人である事のアイデンティティを保つためのものだと説明する真田。
「しかし、幾度も滅亡しそうになったというのに、なぜ地球に敵は執着を?」
「外宇宙での戦争では、首都星の破壊は常套手段なのですよ、アスハ代表。ですので、我々も相応の手段を取らなければならない。そのための波動砲なのです」
波動砲を以ても心もとないと言わざるを得ないのが地球を狙う星間国家の多さであり、光子魚雷、マクロスキャノンなどの兵器も同時に配備している。それが地球連邦の悩みであり、生存のために波動砲や光子魚雷などの大量破壊兵器を多数持たなければならないのだと。それでも心もとないと言わざるを得ない状況。カガリは、地球連邦が置かれた残酷な状況に思わず同情してしまうのだった。
――軍事への口出しが原因で、機能不全に陥った扶桑軍。如何に64Fを使い、戦況を安定させるか。それが上層部に許された、戦況関連の議論であった。全軍を動かせないのは、本土部隊の抽出を日本側が禁じたためで、許されたのは人員の配置転換のみであった。これとて、ダイ・アナザー・デイでの批判を受けての方針転換であった。後のロンド・ベルに繋がる芽というべき『何でも屋というべき精鋭部隊で敵を叩き、戦況を安定させる』という思考は日本連邦の時点で生まれていた事になる。2025年にもなると、扶桑の沖縄への損害補償を兼ねてMATの駐屯が決まり、軍が撤退した後の航空基地を領収した。相当額の見舞金を出さねばならなくなったので日本の公安警察による取り締まりも激化。扶桑にまで行って反軍運動に性を出すような団体は無くなっていった。問題は草の根まである『反日本軍感情』であり、扶桑軍も日本陸軍と共通する軍服の廃止と自衛隊との統一を図っているが、扶桑国内の反対論で凍結されている他、扶桑軍人が日本を軍服で出歩けないという問題もあった。これは日扶の交流が大っぴらになった後に政治問題化している――
――扶桑国内の安全確保の意味もあり、日本ほどの厳格な銃刀法を定められない扶桑。怪異には『ナイフより刀が有効』である事から、扶桑では、大昔の名工の刀があまり宝物扱いされていない(武器として使われ、失われた)。日本はこれを改めさせたが、扶桑の大衆の猛反発を食らった。軍刀が制式装備から外されず、旧型の軍刀が大量に払い下げされたのは、怪異への対抗策を維持させるためと、名刀を保護するためであった。これは黒田の扶桑号も例外ではなく、開戦後に統合参謀本部の指令で没収され、博物館行きにされている。地球連邦軍に扶桑が軍刀の量産を依頼したのは、この指令に対しての対応策のためであった。扶桑軍の魔女の利点は『格闘戦で使える武器を持つ』という点であったが、宮藤芳佳の世代の頃には(簡略化された教育のせいもあって)過去のものと認識されていた。それがダイ・アナザー・デイで覆ってしまったので、現場は大パニックであった――
――結局、魔女の権利が現状維持とはいえ、守られたのは異能者に転じた者の多い64Fの奮戦によるものが大きい。扶桑軍そのものを独自判断で動かせる権限を与えられている英雄級の将校が異能者であり、軍事的に果てしなく有用。しかも定年以外に心配事はないし、現時点(1949年)の年齢も充分に『青年』と言える若さ。当面の間は安全が保証されたも同然であった。黒江は本来の容姿から姿を変えている事は事故が由来だが、ややこしいので『能力由来のもの』と説明された。また、正式なシンフォギア装者ではないが好んで使う事もあり、それに準ずると説明されている。それでいて、より上位の『黄金聖衣の資格者』である事は『チートにチートを重ねて、いったいどうするんだ?』と大衆からのツッコミを受けたが、仮面ライダー三号への対抗と公表されたことで納得された。仮面ライダー三号はスペック値でいえば、機械式改造の最高峰である仮面ライダーZXに対抗しえるほどのものであり、光速にさえ対応できる。それはシンフォギアや聖闘士にも『素で対抗できる』ことを表している。黄金聖闘士へ成長した黒江に尚も優位を保つなど、素体の黒井響一郎のポテンシャルの高さの証明となっている。
――日本の大衆は扶桑の将校に前線指揮を強要しているので、将校の戦死率が異様に高くなっていた。黒江達は確かに(通常の軍隊には)無敵だが、彼女たちのいない戦場では、普通に戦死者は生ずる。そのため、扶桑陸軍の戦前からの将校の多くは重傷で病院行きか、墓の中(戦死)であった。これにより、自衛隊出身者が扶桑軍で幕僚にならざるをえない状況が現実になった。これにより、(異様な戦死率から)扶桑陸軍の戦前からの軍装は『縁起が悪い』と見なされ始めていた。これは日本の政治家や反軍思想の防衛官僚たちの差し金も作用しての不幸であった。とはいえ、扶桑は北方の殆どを失ってしまった直後であり、策略が発覚すれば、扶桑軍は日本の占領をすぐに実行するのは目に見えていた。その事を理解していた彼らは『扶桑の国力をギリギリまで消耗させ、日本を占領できなくさせるプラン』を密かに実行、ティターンズに与していた。ティターンズに『都合の良い金づる』と扱われているので、お互いに利用し合う関係であった。黒江たちは野比財団経由でその事は既に承知しており、野比家、骨川家、出木杉家の力を使い、利敵行為の摘発に務めている。出木杉家には政府の官僚や警察の幹部らもいるので、その人脈を使い摘発をしていた。敵は霊力持ちの暗殺者に魔女を討たせており、霊力が起こした蒼い炎で肉体を塵にされてしまう事例が相次いでいた。そのため、扶桑軍は魔女の人的資源を内外の原因で急速に消耗。出木杉家はその阻止のため、ゴルゴ13を雇い入れていた。
――ゴルゴは依頼を受け、日本国内の官僚の射殺と、魔女討ちを倒すことから始めた。霊力持ちに討たれた魔女は成仏できずに地縛霊になってしまう可能性が大きいので、魂を浄化させてやらないとならなかった。そのため、ゴルゴも除霊の専門家を扶桑から臨時に雇い入れ、暗殺と除霊を同時に行っている。それをのび太はゴルゴから知らされていた――
「Mr.東郷、それは本当か?」
「うむ……敵は大日本帝国時代の資料をかき集め、鬼道衆などの末裔に魔女を討たせている。東條英機は魔女と霊力の軍事への応用を考えたようだが、マリアナで大勢が決した後ではな……」
「21世紀まで生き残っていたと?」
「一族の大半は原爆で広島と長崎の街諸共に死に絶えたという話だが、たまたま、よそで修行中の若い世代が生き残り、細々と生き永らえていたのだろう……」
ドラえもんの世界の東條英機は、戦争が日本の劣勢が目に見えてきた1944年6月、神風を期待し、前近代に名を馳せた異能にすがったという。それが(魔女の世界における彼の政治生命を断つ事になった)彼のオカルト信仰を裏付けたと批判の対象になったが、前近代においては充分に護国の力であった事も事実であった。あまり討たれすぎては土地が霊的にやばくなるため、彼らを利用した悪徳官僚と政治家らを討つしかないと判断された。そして、2025年の春に入る頃からそれは少しづつ行われた。土地の除霊とセットで。この過程で『霊力、魔力をフルに使っている状態で殺されると、青い炎に肉体を瞬時に焼き尽くされてしまう』のが判明したのである。
「東郷、あの青い炎は?」
「おそらくは制御できなくなった魔力、もしくは霊力の暴走による炎だろう。特に、霊力持ちが魔女を討った時に見られるそうだ。そうなれば、討たれた者は成仏できん……。強い霊力を持っていなければ、除霊もままならん」
ゴルゴは明確に鬼道の存在を肯定した。由来を調査中だが、おそらくは何らかの討伐のために、前近代の時代には重宝された一族がいただろうことを伝えた。
「……敵は東條英機が側近に託していた資料で、存在を知ったのだろう。本土決戦の折に、そいつらをゲリラ戦の主軸にする手筈であったとする資料が手に入った。そちらへ送る……」
「わかった。連絡ありがとう」
と、のび太とゴルゴは友人関係かつ、非公式に協力関係にある事がわかる。また終戦間際の頃、本土決戦に魔女や鬼道衆の末裔すら駆り出す計画が東條英機の指示で進んでいた事が判明した。自前の科学技術で勝てないのは明白になった時期の悪あがきにしか見えないが、東條英機は本土決戦での一撃講和を目論んでいた事がわかる。だが、物資不足でもはや本土決戦どころではなくなっていたのも事実である。その真意はなんであろうか。
「のび太さん、今の電話は」
「Mr.デューク東郷……ゴルゴ13からの電話さ」
「ゴ、ゴルゴぉ!?」
「彼とは付き合いがあってね」
野比家の留守番担当になっていた、ミスターシービーを驚かせるのび太。流石に、ミスターシービーも学外の目上の人物には敬語を使うのが分かる。
「君にも言っておくよ。僕は政府の裏の仕事も受けている身でね。おかげで、カミさんの属してる公安警察に睨まれた事もある。連中も、政府首脳公認ってことで手を引かされたがね。その縁で、彼と縁が出来たんだ」
「どうりで、ライフルとかが書斎に……」
「表向きはクレー射撃とかの競技、狩猟用で申告している。実際、20代のうちに狩猟免許も取ったからね」
青年期以降ののび太は表向き、射撃競技の五輪強化選手でもあるので、表向きの仕事用の銃器を書斎に置いてある。裏稼業用は別に保管してあり、九九式狙撃銃などを隠し持っている。
「裏の仕事用は保管場所を工夫してあってね。平たく言えば人殺し用のものだから、倅の目に触れないようにしてある。扶桑の放出した、旧式の小銃をカスタマイズしたもの中心だがね」
「いいんですか、私にそんなことを」
「君等に協力した以上、こちらの事情を知ってもらったほうがお互いに気兼ねないだろう?そういうことさ」
「奥さんは公安と言いましたね。それで?」
「カミさんは元々、旅客機のキャビンアテンダント……昔でいうスチュワーデスを目指していたが……、子供の時の冒険もそうだが、中学校に入った年に貿易センタービルのテロに巻き込まれてね。その時に、特捜エクシードラフトに助けられたそうだ」
「特捜エクシードラフト……」
「それで警察官を目指すようになり、見事に合格した。僕は一浪していたから、その次の年に環境省に入った。結婚したのは、その二年後。できちゃった結婚って奴だよ」
のび太と仲間たちは25歳になった年に、一斉に子を儲けている。これは石器時代以来の先祖代々のことで、子孫たちも、平均で25歳から30歳までに子を儲けている。
「カミさんは子どもの頃からかなり血の気が多いし、正義感が強くてね。それを買われたらしいが、僕が成人後に裏稼業してるのを公安の上層部に知られてね。一時は監視がついたけど、政府首脳がやめさせた。先代の総理大臣が僕の腕を買ったらしい。日本連邦ができてからは、カミさんはその反対派の炙り出しに駆り出されててね。倅の面倒を僕が見ることになったわけ。だけど、男手一つじゃ限界があるし、妹や20年来のハウスキーパーにも仕事があるからね。それで、ゴルシちゃんやタイシンちゃんに相談を持ちかけたんだ」
「そういう事だったんですね」
「今は仕事をかなり抑えているよ。若い頃は連チャンだったのは日常茶飯事だったが、倅に苦労はさせたくないから」
のび太はこの時期、表の仕事も昇進で落ち着き、裏稼業も抑えていた。ノビスケが思春期にさしかかる年齢になりつつあるからで、のび太自身もそうだったが、10代を迎える時期というのは『大事な時期』なのだから。
「さっそくだけど、これから僕は表の仕事のテレワークをしなくてはいけなくてね。倅を迎えに行ってくれるかい?例の騒ぎ以来、町内もピリピリしていてね。いや、まだ終わっていないというべきか」
そのことから、ころばし屋Zは地球連邦軍も駆り出しての炙り出し作戦も見事に躱した事が示唆された。のび太とドラえもんの討伐も躱し、地球連邦軍の監視網を突破してのけた事だろう。
「あなたとドラえもんさんを退けたほどのころばし屋……どんなスペックなんですか?」
「ヤツは残忍だ。仕事で第三者に死者が出ても、意に止めないような三下の思考回路をしている割に、普通のころばし屋をあらゆる面で上回る。気をつけておいてくれ。僕達や、地球連邦軍も監視を敷いているが……」
それを掻い潜る力を持つ故に、ここ数週間は気が気でない様子ののび太。地球連邦軍は監視技術自体はドラえもんの時代を超える(隣の恒星系にいる恒星間宇宙船を地球の衛星軌道からの望遠で判別可能な性能を持つ監視衛星等がある)はずだが、それすらも探知できていないということは、なにかかしらの高度なステルス技術が使われているはずだ。
「数週間前、僕がプリキュア5の世界から一時的に戻って――……」
ころばし屋騒動は終わってはいない。それを教えるのび太。元の世界に定期的に戻っているのは、ころばし屋の動向をチェックするためでもあった。
――コズミック・イラ世界でものび太経由でメタ情報が伝えられたため、設立予定の国際組織にリ・ガズィが供与された。未来世界でも(BWS自体の問題等で)あまり出回っていないが、空挺能力などを評価されての配備であった。ムラサメは機体強度(発泡金属製の装甲材の脆弱性)が問題視され、改良モデルも制作中だが、メタ情報でブラックナイトスコード関連の情報が得られた事から、それに優位性を確保できる未来世界の技術を入れたほうが早いとされ、リ・ガズィが一般隊員用に供与されることとなった。(Zガンダム自体の供与も検討されている)――
「Zガンダム……。向こうの世界でも、似たような発想は生まれていたのね。でも、完成当時の技術での量産化は困難であり、可変戦闘機の普及をきっかけに再注目されている……か」
モルゲンレーテ社に渡された資料には、Zガンダムの活躍を収めた写真が載せられている。ムラサメと違い、可変形態は大気圏突入・巡航用と位置づけられていたが、在来式戦闘機の生産量の減少により、空戦能力の付与のため、可変後退翼式のバインダーが制作された事も記されている。地球連邦軍はムラサメのデータを使い、Z系の価格低下と大規模量産化を目論んでいるのがわかる。
「皮肉なことに、ムラサメの運用データで航空可変MSの有用性が認識され、旧型の戦闘機や戦闘爆撃機の代替にしたいというのは、可変型の難点も浮き彫りにしたわね」
エリカ・シモンズ(モルゲンレーテ社の主任エンジニア)は地球連邦軍の試みに同情しつつ、可変型が未来世界で少数派に留まっている理由を察した。とはいえ、在来型より高性能という利点はどこでも同じであり、移動補助用の航空機(ザフトにはあった)を必要としないメリットは宇宙軍や海軍の空母には多大なメリットである。
「ジェットストライカー装備はスペースがかさばる難点がある上、航続距離の問題もある。昔の戦闘機のように、空中給油で補えるものでもない。だから可変機構を入れたのだけど、こちらのほうがすんなり成功したというのは、目的が明確だったせいね。向こうは万能性を求めすぎなのよ」
彼女は外部のエンジニアとして、Z系が地球連邦議会や財務当局に嫌われ者である理由を悟った。彼らは初代ガンダムの見せた万能性を信奉しすぎなのだと。凡庸な装備でありながら、あらゆるフィールドで王者として君臨したのは事実だが、それは当時の時点での最高性能をほぼ達成していた事、パイロットが基礎設計の限界以上のポテンシャルを引き出していた事が原因である。
「可変機構はフレームの強度、柔軟性、変形速度を上手く両立させる必要がある。嫌われ者だったのは、整備を含めた維持費の高額さね……」
Z系の維持費が下がるには、可変戦闘機の普及で(廉価版のマグネットコーティングでも、迅速な変形速度を実現できる)可変機構の整備難度が相対的に下がった事、マグネットコーティング自体の改良で、機体のオーバーホールの間隔が(グリプス戦役当時より)長くなった事、フレーム素材の世代交代による強度向上などが起きるのを必要とした。
「バルキリーの普及で、兵士たちに可変機構への抵抗感が無くなった事、恒星間航行での治安維持には可変MSが必要と判断されての再注目…。当時の開発陣の苦労が報われたってことね」
ロンド・ベルなどの特務部隊に需要が特にあるのもあり、Zガンダム自体の配備も進んだが、エース級でなければ『乗りこなせない』操縦難度の高さはネックであるのは変わらないので、リゼルやリ・ガズィ、Zプラスなどの増産もなされている。そう記されている。
「重装型も開発されたけど、輪にかけて高級志向かつ、火力偏重が仇になって、大規模量産に踏み切れていない……なるほど」
ダブルゼータはジュドーの技量もあり、歴史を動かしたが、機体設計自体は不備も多い。元々が大型MSとして設計がされていたのを(あまり煮詰めずに)無理に通常サイズにダウンサイジングした弊害である。
「単一のパラメータを強くしても、コストパフォーマンスの問題がある。そのいい例ね」
大昔の航空機(戦闘機)開発以来、コストパフォーマンスのバランスと能力の両立は命題である。ダブルゼータは失敗の範疇に入ると見なされているが、戦場での活躍からその高性能は評価された。彼女はオーブ軍の国産推進派の要請でムラサメのアップデートタイプの構想にあたり、地球連邦軍で過去に開発され、成功したとされる『Zプラス』のデータを参考にする事にしたという。また、そのデータ収集のため、既存のムラサメを(未来世界の技術で)改良し、データ収集に使用することにし、あわよくば『新組織に納入する』ことを目指した。
――オーブはこうして、極秘に『対ファウンデーション王国』対策を進めていく。メタ情報は基本的に、カガリやキラ、アスランなどの超重要人物以外には開示されないが、プラントの旧ザラ派対策のため、クライン派にも開示された。ラクスは地球連邦からもたらされた情報で『父親の施策を極秘に引き継いでいる』わけだが、本人は政治に興味のない『普通の少女』である。それが彼女の不幸でもあった。政治になんだかんだで深く関わり、地球連邦の良心とまで謳われる『リリーナ・ドーリアン』外務次官と違い、立場と才能はあれど、自らが『矢面に立つ』事を必ずしも望んでいない点が批判される要因である。本人も(ミーア・キャンベルの死への責任から)表舞台に立つ事を選ぶしか無くなった事に苦しんでいる。だが、カリスマなくば、コズミック・イラの世界はすぐに絶滅戦争をしでかす。それは旧来の伝統宗教の権威が失われ、宗教面の倫理的抑えが失われたからで、未来世界が(スーパーロボットという救世主の登場で)伝統宗教の権威が結果的に守られたのとは対照的である。ラクスも、カガリも、自分たちが世を去った後のことがどうしても気がかりであり、死ぬに死ねないという心境であった。そのため、地球連邦軍の力を以てして、強引に世界を統一してしまえという案がオーブでも出る始末であった。実際、ロゴス亡き後もブルーコスモス派はゴキブリのごとくしぶといし、旧ザラ派は世界遺産も一考だにせずに破壊する有様であった。そのため、『地球連邦政府と同じような統治機構を作り、現在の若年世代が世を去った後も、世界を安定させる』という案はコズミック・イラでは説得力を持っている。
――実際、コーディネイターはC.E.70年代から数十年もすれば、自然に減少する。第三世代が大規模に生まれないからだ。だが、『コーディネイターにナチュラルが駆逐される』という恐怖を抱く人々は(既存宗教が実質的に滅んだ世界なので)未来世界でのクルスト・モーゼス博士(故人)がそうであったように、『新人に滅ぼされた旧人の二の舞いになる』という強迫観念に支配されているといってよく、それが大多数の世論というところに、コズミック・イラの悲劇があった。地球連邦軍がニュータイプの概念をコズミック・イラ世界に公にしたのは、コーディネイターは『進化した種ではない』ことの証左である。実際、遺伝子をいじくり回すのを続けていくと、ある時に突然変異の病原菌に駆逐されてしまうという指摘もある。実際、暗黒星団帝国はその手の事態が起こった故に、種ごとサイボーグ化することでしか生存できなかったのでは?と推測されている。ラクスはその可能性に気づいた故に、父親の極秘施策を引き継いだのだろう……――